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JP4457606B2 - 電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物 - Google Patents

電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物 Download PDF

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JP4457606B2 JP2003293583A JP2003293583A JP4457606B2 JP 4457606 B2 JP4457606 B2 JP 4457606B2 JP 2003293583 A JP2003293583 A JP 2003293583A JP 2003293583 A JP2003293583 A JP 2003293583A JP 4457606 B2 JP4457606 B2 JP 4457606B2
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Description

本発明は電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物、該バインダー組成物を含有する電気二重層キャパシタ電極用スラリー組成物、該組成物を用いて製造された電極および該電極を有する電気二重層キャパシタに関する。
分極性電極と電解質界面で形成される電気二重層を利用した電気二重層キャパシタは、メモリバックアップ電源として近年急速に需要が伸びている。また、電気自動車用電源等の大容量を必要とする用途へもその適用が注目されている。
キャパシタ用の電極は、活性炭などの電極活物質がバインダーにより集電体に結着された構造を有している。キャパシタ用バインダーには、一般的にポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系ポリマーが使われているが、使用量が少ないと集電体との結着性が十分ではなく、使用量が多いと電極の内部抵抗が高くなるという問題があった。上記の問題点に対し、非フッ素系ポリマーをバインダーとして用いることにより、平滑性、結着性に優れた電極を提供する試みがなされている。例えば、特許文献1には、特定の組成と粒子径を有するスチレン・ブタジエン系重合体バインダーが提案されている。
特開平11−162794号公報
しかし、上記スチレン・ブタジエン系重合体バインダーを用いたものは、結着性の向上はみられるものの、その結着性は未だ十分ではなかった。また、得られる電極の柔軟性が不十分なため、キャパシタ形状にあわせて巻く、折るなどした時に、電極層が割れたり剥離したりする場合があった。
そこで、本発明は、結着性および柔軟性に優れた電極を与える電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物、該バインダー組成物を含有する電気二重層キャパシタ電極用スラリー組成物、該組成物を用いて製造された高性能な電極および該電極を有する電気二重層キャパシタを提供することを課題とする。
本発明者らは、特定の粒子径としたジエン系バインダーを用いることで、結着性に優れた電極が得られることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
かくして第一の本発明によれば、共役ジエン化合物(a)由来の単量体単位10〜55質量%と、単官能芳香族ビニル化合物(b)由来の単量体単位10〜80質量%とを有する共重合体(A)の水分散体であって、該共重合体(A)の粒子径が115nm以下である電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物が提供される。
前記共重合体(A)は、テトラヒドロフラン(THF)に対する不溶分を30〜98質量%有することが好ましい。
また、前記共重合体(A)のガラス転移温度が、−100〜+100℃であることが好ましい。
第二の本発明によれば、上記のバインダー組成物と、電極活物質とを混合してなる電気二重層キャパシタ電極用スラリー組成物が提供される。
前記スラリー組成物は、電極活物質に対し0.5〜5質量%の増粘剤を含むことが好ましい。
第三の本発明によれば、上記の電極用スラリー組成物を用いて製造された電気二重層キャパシタ用電極が提供される。
第四の本発明によれば、上記の電極を有する電気二重層キャパシタが提供される。
本発明の電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物を含有する電気二重層キャパシタ電極用スラリー組成物を用いて作成した電気二重層キャパシタ用電極は、結着性および柔軟性に優れる。この電気二重層キャパシタ用電極を用いることで、優れた電気二重層キャパシタを製造することができる。
1)電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物
本発明の電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物(以下、単に「バインダー組成物」とも言う。)は、バインダーである共重合体(A)の水分散体であって、該共重合体(A)の粒子径が115nm以下であるものである。ここで、粒子径は、透過型電子顕微鏡写真で無作為に選んだポリマー粒子100個の径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均粒子径である。粒子径が大きすぎると結着力が低下するおそれがある。粒子径をこのような大きさにすることにより、これらの問題を解消し、バインダーの結着性を優れたものとすることができる。粒子径のより好ましい範囲は、60〜110nmであり、さらに好ましい範囲は80〜100nmである。
共重合体(A)を水に分散させる方法は特に限定されない。例えば、スプレードライ法や微粉砕により微粒子状とした共重合体(A)を常法に従い水と混合分散させればよい。また、乳化重合法により共重合体(A)を水分散体として得た場合は、必要に応じて濃縮、希釈などにより濃度を調整し、共重合体(A)を単離せずにそのまま本発明のバインダー組成物として用いることができる。水に分散された共重合体(A)の水中での濃度(固形分量)は、通常20〜70質量%である。バインダー組成物中のアルカリ金属イオンの含有量は、集電体の腐食防止の観点から、共重合体(A)に対して0.2質量%以下であることが好ましい。
以下、本発明に用いられるバインダーである共重合体(A)、およびその構成成分である共役ジエン化合物(a)、単官能芳香族ビニル化合物(b)、必要に応じて添加される他の単量体成分について説明する。
<共役ジエン化合物(a)>
共重合体(A)の原料単量体の一つである共役ジエン化合物(a)としては、具体的には、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘプタジエン等があげられる。中でも、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3−ブタジエンがより好ましい。
共重合体(A)における共役ジエン化合物(a)由来の単量体単位の量は、通常10〜55質量%、好ましくは41〜55質量%、より好ましくは43〜55質量%、最も好ましくは45〜55質量%である。共役ジエン化合物(a)成分の量がこの範囲であると、結着性、柔軟性に優れるので好ましい。
<単官能芳香族ビニル化合物(b)>
共重合体(A)の原料単量体の一つである単官能芳香族ビニル化合物(b)としては、具体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレン等があげられる。
共重合体(A)における単官能芳香族ビニル化合物(b)由来の単量体単位の量は、通常10〜80質量%、好ましくは20〜59質量%、より好ましくは30〜57質量%である。単官能芳香族ビニル化合物(b)成分の量がこの範囲であると、結着性、柔軟性に優れるので好ましい。
<エチレン性不飽和カルボン酸エステル(c)>
共重合体(A)は、共役ジエン化合物(a)および単官能芳香族ビニル化合物(b)由来の単量体単位の他に、エチレン性不飽和カルボン酸エステル(c)由来の単量体単位を含むことが好ましい。エチレン性不飽和カルボン酸エステル(c)としては、具体的には、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリルなどのアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリルなどのメタクリル酸アルキルエステル;クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、クロトン酸プロピル、クロトン酸ブチル、クロトン酸イソブチル、クロトン酸n−アミル、クロトン酸イソアミル、クロトン酸n−ヘキシル、クロトン酸2−エチルヘキシル、クロトン酸ヒドロキシプロピルなどのクロトン酸エステル;等があげられる。
これらエチレン性不飽和カルボン酸エステル(c)は2種以上を併用してもよい。共重合体(A)におけるエチレン性不飽和カルボン酸エステル(c)由来の単量体単位の量は、通常30質量%以下、好ましくは5〜20質量%である。
<その他の単量体(d)>
上記共役ジエン化合物(a)、単官能芳香族ビニル化合物(b)、およびエチレン性不飽和カルボン酸エステル(c)の他に、その他の単量体(d)も用いることができる。その他の単量体(d)の代表的なものとして、エチレン性不飽和カルボン酸や多官能エチレン性不飽和単量体が挙げられる。
エチレン性不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和多価カルボン酸;等が挙げられる。これらを添加することによって、結着性をより向上させることができる。共重合体(A)におけるエチレン性不飽和カルボン酸由来の単量体単位の量は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは2〜7質量%である。
多官能エチレン性不飽和単量体の例としては、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレートなどのジメタクリル酸エステル類;トリメチロールプロパントリメタクリレートなどのトリメタクリル酸エステル類;ジビニルベンゼンなどのジビニル化合物;等が挙げられる。これらを添加することによって、共重合体(A)が電解液により溶解または膨潤するのを抑制することができる。共重合体(A)における多官能エチレン性不飽和単量体由来の単量体単位の量は、通常5質量%以下であり、好ましくは3質量%以下である。
上記エチレン性不飽和カルボン酸および多官能エチレン性不飽和単量体の他にも、その他の単量体(d)成分として、本発明の効果を損なわない範囲において、他の共重合可能な単量体を用いてもよい。上記共重合可能な単量体としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリルアミド系化合物;が挙げられる。これらの単量体は2種以上併用してもよく、これらの単量体由来の単量体単位の量の合計は共重合体(A)中、10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下である。
<共重合体(A)>
本発明に用いられるバインダーである共重合体(A)は、上記共役ジエン化合物(a)、単官能芳香族ビニル化合物(b)および必要に応じて添加される、エチレン性不飽和カルボン酸エステル(c)、その他の単量体(d)を共重合した重合体である。
共重合体(A)の製法は特に限定されず、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法または溶液重合法などの公知の重合法により前記の各単量体を重合して得ることができる。中でも、乳化重合法で製造することが、共重合体(A)の粒子径の制御が容易であるので好ましい。その際、集電体の腐食の原因となるアルカリ金属イオンの混入をなるべく減らすために、重合用脱イオン水中のアルカリ金属イオン含有量を減らしたり、重合開始剤や乳化剤等の重合副資材としてアルカリ金属を含まないものを用いたりすることが好ましい。
共重合体(A)は、THFに対する不溶分を、30質量%以上、好ましくは30〜98質量%、さらに好ましくは40〜95質量%含有することが好ましい。THF不溶分がこの範囲であると、バインダーが電解液により溶解または膨潤することを抑制でき、かつ、バインダーが活物質表面を覆って内部抵抗が増加することを抑制することができる。
ここで、THFに対する不溶分とは、THF20ミリリットルに対して、ポリマー0.2gを温度25℃で72時間浸漬した後、80メッシュの篩で濾過し、篩上成分を乾燥して求めた質量の、元のポリマー質量0.2gに対する百分率で表した値である。共重合体(A)のTHF不溶分量は、多官能エチレン性不飽和単量体や分子量調整剤の使用量、重合温度および重合転化率などの重合条件を適宜変えることにより調整できる。
共重合体(A)のガラス転移温度は、好ましくは−100〜+100℃であり、さらに好ましくは−70〜+30℃であり、特に好ましくは−50℃から−20℃の範囲である。ガラス転移温度が低すぎるとバインダー粒子の凝集が起きやすく、バインダーの不均一化により結着性が低下する場合がある。また、バインダーが活物質表面を覆って内部抵抗が増加する。逆に、ガラス転移温度が高すぎると柔軟性が低下し、捲回時にクラックが生じやすくなる。
2)電気二重層キャパシタ電極用スラリー組成物
本発明の電気二重層キャパシタ電極用スラリー組成物(以下、単に「スラリー」とも言う。)は、本発明のバインダー組成物と電極活物質とを混合してなり、必要に応じて増粘剤および導電性付与材が含まれる。
本発明で用いる電極活物質は、比表面積が100m/g以上、好ましくは500〜5,000m/g、より好ましくは1,000〜3,000m/gの炭素質物質であり、活性炭、ポリアセン、カーボンウィスカ、グラファイト等の粉末あるいは繊維を使用することができる。好ましくは電極活物質は活性炭であり、活性炭としてはフェノール系、レーヨン系、アクリル系、ピッチ系、又はヤシガラ系等を使用することができる。活物質の粒子径が0.1〜100μm、さらに好ましくは1〜20μmであると、キャパシタ用電極の薄膜化が容易で、容量密度も高くできるので好ましい。
本発明のスラリーにおけるバインダーの量は、電極活物質100質量部に対して、好ましくは0.1〜20質量部、より好ましくは0.5〜10質量部である。バインダー量が少なすぎると電極から電極活物質や導電性付与材が脱落しやすくなり、逆に多すぎると電極活物質がバインダーに覆い隠されて電極の内部抵抗が増大するおそれがある。
本発明のスラリーは、増粘剤を含有することが好ましい。増粘剤を添加することにより、スラリーの塗工性や流動性が向上する。増粘剤の種類は特に限定されないが、水溶性のポリマーが好ましい。水溶性ポリマーの具体例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマーおよびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、アクリル酸又はアクリル酸塩とビニルアルコールとの共重合体、無水マレイン酸又はマレイン酸もしくはフマル酸とビニルアルコールとの共重合体、変性ポリビニルアルコール、変性ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプンなどが挙げられる。この中で、好ましく用いられるものはセルロース系ポリマーおよびその塩であり、さらに好ましいのは、セルロース系ポリマーのアンモニウム塩である。これらの水溶性ポリマーの好ましい使用量は、電極活物質に対して0.5〜5質量部である。
本発明のスラリーは、導電性付与材を含有することが好ましい。導電性付与材としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック等の導電性カーボンを使用することができ、これらは上記電極活物質と混合して使用する。導電性付与材を併用することにより、前記活物質同士の電気的接触が一段と向上し、電気二重層キャパシタの内部抵抗が低くなり、かつ容量密度を高くすることができる。導電性付与材の使用量は、電極活物質100質量部に対して通常0.1〜20質量部、好ましくは2〜10質量部である。
その他、本発明のスラリーには、本発明の効果を損なわない範囲でその他の非水溶性のポリマーを少量含んでいても良い。その他の非水溶性のポリマーとしては、例えば、アクリロニトリル・1−オレフィン共重合体;アクリロニトリル・ブタジエンゴムおよびその水素化物などのニトリル系ポリマー;ポリブタジエン、スチレン・ブタジエン系共重合体などのジエン系ポリマー;エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体などのエチレン系ポリマー;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素系ポリマー;等が挙げられる。
本発明のスラリーは、本発明のバインダー組成物および電極活物質と、必要に応じて増粘剤および導電性付与材を、混合機を用いて混合して製造できる。混合機としては、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、ホバートミキサーなどを用いることができる。混合方法や混合順序は特に限定されないが、増粘剤の水溶液と導電性付与材とを混合して導電性付与材を微粒子状に分散させた後、ここに電極活物質とバインダー組成物を添加し、均一に混合するのが好ましい。また、電極活物質と導電性付与材とを擂潰機、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー、オムニミキサーなどの混合機を用いて先ず混合し、次いで増粘剤の水溶液を加えて電極活物質と導電性付与材を均一に分散させて、ここにバインダー組成物を添加して均一に混合するのも好ましい。これらの方法を採ることにより、容易に均一なスラリーを得ることができる。
3)電気二重層キャパシタ用電極
本発明の電気二重層キャパシタ用電極は、前記本発明のスラリーを用いて製造されたものである。電極の製造方法としては、具体的には、集電体に、本発明のスラリーを塗布し、乾燥する方法が挙げられる。集電体は、導電性を有しかつ電気化学的に耐久性のある材料が用いられる。中でも、耐熱性を有するとの観点から、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼、金、白金などの金属材料が好ましく、アルミニウムおよび白金が特に好ましい。集電体の形状は特に制限されないが、通常、厚さ0.001〜0.5mm程度のシート状のものを用いる。
スラリーの集電体への塗布方法は特に制限されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。スラリーの粘度は、塗工機の種類や塗工ラインの形状によっても異なるが、通常100〜100,000Pa・s、好ましくは、1,000〜50,000Pa・s、より好ましくは5,000〜20,000Pa・sである。塗布するスラリー量も特に制限されないが、乾燥した後に形成される、電極活物質、バインダーなどからなる電極層の厚さが、通常、0.005〜5mm、好ましくは0.01〜2mmになる量が一般的である。乾燥方法としては例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。更に、乾燥後の集電体をプレスすることにより電極の活物質の密度を高めてもよい。プレス方法は、金型プレスやロールプレスなどの方法が挙げられる。
4)電気二重層キャパシタ
本発明の電気二重層キャパシタは、上記本発明の電極を有するものである。電気二重層キャパシタは、上記の電極や電解液、セパレーター等の部品を用いて、常法に従って製造することができる。具体的には、例えば、セパレーターを介して電極を重ね合わせ、これをキャパシタ形状に応じて巻く、折るなどして容器に入れ、容器に電解液を注入して封口して製造できる。
セパレーターとしては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン製の微孔膜または不織布、一般に電解コンデンサ紙と呼ばれるパルプを主原料とする多孔質膜など公知のものを用いることができる。また、セパレーターに代えて固体電解質あるいはゲル電解質を用いてもよい。
電解液は、特に限定されないが、非水電解液が好ましく、耐電圧が高い有機溶媒系の電解液が特に好ましい。
電解質としては、従来より公知のものがいずれも使用でき、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレート、トリエチルモノメチルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラエチルアンモニウムヘキサフルオロフォスフェートなどが挙げられる。
これらの電解質を溶解させる溶媒(電解液溶媒)は、一般的に電解液溶媒として用いられるものをいずれも使用できる。具体的には、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリルなどが挙げられ、これらは単独または二種以上の混合溶媒として使用することができる。
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例における部および%は、特に断りがない限り質量基準である。
(実施例1)
攪拌機付き反応容器に、表1に示す組成の単量体混合物100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.7部、イオン交換水250部および過硫酸アンモニウム1.5部を仕込み、十分攪拌した後、80℃で5時間重合し、固形分量が約30%のラテックスを得た。重合転化率は95%であり、重合体の組成比は、単量体仕込み比と一致した。このラテックスにアンモニア水を加えてpHを7にした後に減圧濃縮して残留単量体を除去し、固形分量が40%のラテックス(バインダー水分散体)としてバインダー組成物を得た。アルカリ金属イオンの量はバインダーに対し0.1%であった。
次いで、電極活物質として比表面積2000m/g、平均粒径8μmの高純度活性炭粉末100部、および導電性付与材としてケッチェンブラック1.5部とアセチレンブラック3部とを混合して前記バインダー組成物12.5部に加え、さらに増粘剤としてカルボキシメチルセルロース−アンモニウム塩(CMCダイセルDN−10L:ダイセル化学工業社製)を2部添加した。全固形分の濃度が43%となるように水を加え、プラネタリーミキサーを用いて60分間混合した。その後、固形分濃度が41%になるように水で希釈してさらに10分間混合し、電極用スラリーを得た。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔にドクターブレードを用いて塗布し、80℃で30分送風乾燥機で乾燥した。その後、ロールプレス機を用いてプレスを行い厚さ80μm、電極層の密度0.6g/cmの電極を得た。
上記により製造した電極を直径15mmの円形に切り抜いたものを2枚作成し、150℃で24時間乾燥させた。この2枚の電極の電極層面を対向させ、直径18mm、厚さ40μmの円形セルロース製セパレータを挟んだ。これをポリプロピレン製パッキンを設置したステンレス鋼製のコイン型外装容器(直径20mm、高さ1.8mm、ステンレス鋼厚さ0.25mm)中に収納した。この容器中に電解液を空気が残らないように注入し、ポリプロピレン製パッキンを介して外装容器に厚さ0.2mmのステンレス鋼のキャップをかぶせて固定し、容器を封止して、直径20mm、厚さ約2mmのコイン型電気二重層キャパシタを製造した。なお、電解液としては、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートをプロピレンカーボネートに1モル/リットルの濃度で溶解させた溶液を用いた。
(実施例2〜3、比較例1〜2)
単量体混合物として表1に示す組成のものを用いた他は実施例1と同様にしてバインダー組成物、電極用スラリー、電極および電気二重層キャパシタを製造した。
(試験および評価方法)
(1)バインダーの物性
上記実施例1〜3、および比較例1〜2で使用した、バインダーとして用いた重合体の物性は、以下の方法で測定した。結果を表1に示す。
・重合体の組成比
重合体の各単量体単位含有量(組成比)は、H−および13C−NMR測定により求めた。
・重合体の粒子径
重合体の粒子径は、透過型電子顕微鏡写真で無作為に選んだポリマー粒子100個の径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均粒子径として求めた。
・重合体のガラス転移温度
重合体をポリテトラフルオロエチレン板上に流延し、2日間乾燥後、さらに120℃で15分間乾燥させて重合体フィルムを作製した。そのフィルムを用いて示差走査型熱量計(DSC)を用いて毎分5℃で昇温して測定した。
・重合体のTHF不溶分量
THF20ミリリットルに対して、重合体0.2gを温度25℃で72時間浸漬した後、80メッシュの篩で濾過し、篩上成分を乾燥して求めた質量の、元のバインダー質量0.2gに対する百分率を求めた。
(2)電極および電気二重層キャパシタの性能
上記実施例1〜3および比較例1〜2で作成した電極および電気二重層キャパシタの性能について、以下の評価を行った。結果を表2に示す。
・ピール強度
電極を幅2.5cm×長さ10cmの矩形に切り、電極層面を上にして固定した。電極層面にセロハンテープを貼り付け、テープを50mm/分の速度で180°方向に剥離したときの強度(N/cm)を10回測定し、その平均値をピール強度とした。この値が大きいほど結着強度が高く、電極活物質が集電体から剥離しにくいことを示す。
・耐クラック性
電極を幅3cm×長さ9cmの矩形に切って試験片とする。試験片の集電体側の面を下にして机上に置き、長さ方向の中央(端部から4.5cmの位置)、集電体側の面に直径3mmのステンレス棒を短手方向に横たえて設置する。このステンレス棒を中心にして試験片を電極層が外側になるように180°折り曲げた。10枚の試験片について試験し、各試験片の電極層の折り曲げた部分について、ひび割れまたは剥がれの有無を観察した。10枚のいずれにもひび割れまたは剥がれが全く生じていない場合を○、1枚以上に1箇所以上のひび割れまたは剥がれが生じた場合を×と評価した。電極層にひび割れまたは剥がれが生じないと、電極が柔軟性に優れることを示す。
・内部抵抗
電流密度20mA/cmで直流抵抗を測定し、比較例1を基準として以下の評価基準で評価した。内部抵抗が小さいほどキャパシタとしての性能が良好であることを示す。
(評価基準)
◎:比較例1よりも内部抵抗が20%以上小さい。
○:比較例1よりも内部抵抗が10〜20%小さい。
△:比較例1と内部抵抗が同等である。
×:比較例1よりも内部抵抗が10%以上大きい。
Figure 0004457606
Figure 0004457606
表2から明らかなように、本発明の電極はピール強度、耐クラック性に優れていた。さらに、該電極を用いて製造した電気二重層キャパシタも、内部抵抗が小さく、電気二重層キャパシタとしての性能に優れていた。一方、粒子径が大きすぎるバインダー(比較例1、2)を用いた電極は、ピール強度、耐クラック性いずれも劣っており、それらから得られた電気二重層キャパシタの性能も劣っていた。
以上、現時点において、もっとも実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物、スラリー組成物、および電極ならびに電気二重層キャパシタもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

Claims (7)

  1. 共役ジエン化合物(a)由来の単量体単位41〜55質量%と、
    単官能芳香族ビニル化合物(b)由来の単量体単位10〜80質量%とを有する共重合体(A)の水分散体であって、
    該共重合体(A)の粒子径が115nm以下である電気二重層キャパシタ電極用バインダー組成物。
  2. 前記共重合体(A)のテトラヒドロフランに対する不溶分が30〜98質量%である請求項1記載の電極用バインダー組成物。
  3. 前記共重合体(A)のガラス転移温度が−100〜+100℃である請求項1または2記載の電極用バインダー組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のバインダー組成物と、電極活物質とを混合してなる電気二重層キャパシタ電極用スラリー組成物。
  5. 前記電極活物質に対し0.5〜5質量%の増粘剤をさらに含む、請求項4に記載の電極用スラリー組成物。
  6. 請求項4または5に記載の電極用スラリー組成物を用いて製造された電気二重層キャパシタ用電極。
  7. 請求項6に記載の電極を有する電気二重層キャパシタ。
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