JP4316956B2 - 摺動部品 - Google Patents
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Description
このメカニカルシール用密封環は本発明に係わる関連技術3である。このメカニカルシール用密封環の摺動面には、密封環の径方向を成す長手方向の凹部が放射方向と周方向の交差点に形成されている。その配列は、径方向と周方向に対して千鳥形に点在して配置されていると共に、凹部の長手方向が全て径方向に向いているものである。この凹部は摺動面において長手方向が径方向に向いているために、密封環が回転しているときにだんだん凹部内に被密封流体が保持されて凹部内に発生する動圧が大きくなる。それ故、動圧により凹部内から被密封流体が放出されて摺動面に被密封流体による潤滑液膜が形成されるが、放出される量が勝ると潤滑液が凹部内に蓄えられないので、長期には、更には低速時には、摺動面の摩擦係数がだんだん大きくなる。更に、回転中に潤滑液が凹部の両径方向へ流れるので、シール能力を向上させることが困難である。更に、凹部である動圧発生溝は低速回転時には接触型シールになるから、動圧発生溝の効果が発揮されない。
特に、摺動部品が低速回転しているときに、更には、被密封流体の圧力が低圧のときに、シール能力を向上させると共に、摩擦抵抗を低減することが困難である。
本発明に係わる摺動部品は、静止用摺動部品と回転用摺動部品とが互いに相対摺動する摺動面間の径方向一方側に存在する被密封流体をシールする摺動部品(1)であって、相対する摺動面のうちの少なくとも一方の摺動面(2)に被密封流体側に向かって回転方向へ傾斜するとともに傾斜方向へ長手のディンプル(3)を有し、このディンプル(3)が摺動面(2)に径方向へ複数個に配置されていると共に、摺動面(2)の周面に沿って環状に配列された複数輪のディンプル部(3A、3B、3C、・・)と、各ディンプル部(3A、3B、3C、・・)の複数輪間に環状に形成されたダム部(2A1、2A2、2A3、・・)を有する。
半径方向に隣り合う前記ダム部(2A1、2A2、2A3、・・)の間には、前記ディンプル部(3A、3B、3C、・・)がそれぞれ存在し、
各ディンプル(3)が、同一幅で径方向に対して同一角度で傾斜方向へ直線状に形成され、各ディンプル(3)の傾斜方向の長さは、溝幅の2.5倍以上であり、前記摺動面の径方向幅寸法の1/2以下に形成され、
各ディンプル(3)の長手方向の端部が、円環状に形成された前記ダム部(2A1、2A2、2A3、・・)で区切られていること、を特徴とする。
更に、多数のディンプルの形成により摺動面が損傷しやすくなるのをダムにより補強して摺動面の破損を防止し、且つ、摺動面の摩耗を防止して、摺動面の耐久能力を向上させる。
この溝一端から流入した被密封流体により摺動面の摩擦係数が低減できる。そして、流入した被密封流体をダムにより遮断すると共に、効果的に逆流させてシール能力を発揮させる。この為に、被密封流体の圧力の範囲が低圧では、摩擦係数を低減できると共に、シール能力が向上する。
又、この摺動部品1は、潤滑油を摺動面間に介在させて回転軸と摺動する、又は摺動面の軸方向一方側に潤滑油を密封しながら回転軸と摺動する、軸受等に設けることもできる。
この径方向へ順次拡大した複数輪を成す第1ディンプル部3A、第2ディンプル部3B、第3ディンプル部3Cは、第2ダム部2A2と、第3ダム部2A3とにより仕切られた間に被密封流体側に向かって回転方向へ傾斜した傾斜方向へ長い各長手溝のディンプル3を形成することにより構成される。
この第1ディンプル部3A、第2ディンプル部3B、第3ディンプル部3Cに於ける各ディンプル3の溝形状は、外周側の幅がやや広く形成することもできる。つまり、図2に示すように、螺旋状に形成された一列溝4(各ディンプル3の傾斜方向の一列)は外周側が徐々に広くなる溝幅W(図5の符号Wを参照)に形成されている。この一列溝4の途中を横断して環状を成す第2ダム部2A2と、第3ダム部2B3とで仕切る形にして第1ディンプル部3Aと、第2ディンプル部3Bと、第3ディンプル部3Cに形成する。尚、各ディンプル3の溝幅Wは、図2とは異なり、他の実施例として摺動面2に於ける内外周方向とも同一幅に形成しても良い。
この各ディンプル部3A、3B、3Cの領域の径方向の幅寸法Tは、各一列溝4を横断する第2ダム部2A2及び第3ダム2A3の同方向の幅寸法(R6−R5、R4−R3)より大きく形成されている。尚、第1ダム部2A1の径方向幅は設計に応じて第2ダム部2A2及び第3ダム部2A3の幅寸法より大きく形成する。又、第2ダム部2A2及び第3ダム部2A3は、強度的に各ディンプル3の破損を防止することができる。
この摺動面2には、第1ディンプル部3Aの内周に第1ダム部2A1が形成さ
れている。この第1ダム部2A1は摺動面2と同一平面のものである。又、第2
ディンプル部3Bの外周に第0ダム部2A0が形成されている。この第0ダム部
2A0は、必ず必要とするものではなく、摺動部品1の摩擦係数の向上及びシール能力の機能設計に応じて設定する。更には、第0ダム部2A0の幅を任意に設計する。又、図1に示すように設けない場合もある。
この第1ディンプル部3A、第2ディンプル3Bの各ディンプル3の形状は、外周側がやや広く形成されている。つまり、図4に示すように、螺旋状に形成された一列溝4は外周側が徐々に広くなる溝幅に形成されている。この一列溝4の途中を横断するように円環状を成す第2ダム部2A2を形成し、この第2ダム2A2の径方向両側に傾斜方向が長手になる溝の領域の第1ディンプル部3Aと、第2ディンプル部3Bとを形成する。尚、ディンプル3の傾斜角度βは35°である。
その他の構成は、図1及び図2に示す同一符号の部品と略同一形状であるので説明は省略する。
又、各ディンプル3の形状を決定するための一列溝4は、摺動面2に傾斜させて螺旋状(円弧状)に形成したもの、直線状に形成したもの、S形状に形成したもの、千鳥足状に形成したもの等が本発明では実施している。そして、この一列溝4を横断する第2ダム部2A2、第0ダム部2A0によりディンプル部3A、3Bを形成する形にすると良い。但し、ディンプル3が1列溝4ではなく、傾斜方向に千鳥足形に位置をずらしても同様な効果が奏することが認められる。
この複数条から成る円形のダム2Aは、被密封流体のシール効果と共に、ディンプル3を形成する溝により摺動時に摺動面2が破損しやすくなるのを効果的に防止する。
一方、関連技術1のように摺動面の内外径方向へ各々螺旋溝を形成したものは、被密封流体を摺動面に保持する効果が小さい。更に、被密封流体を摺動面に引き込んでも被密封流体側へ押し戻す能力に欠ける。叉、摺動部品1を炭化珪素などにすると、摺動時に摺動面110Aに螺旋溝から損傷が惹起しやすくなる。この破損が摺動面110Aに惹起すると、次々に各螺旋溝から摺動面110Aの破損が拡大する。しかし、本発明の摺動部品1では、このダム2Aにより被密封流体の侵入を堰き止めてシール能力を向上させる。叉、この摺動面2に惹起するディンプル3溝が原因の破損をダム2Aにより効果的に改善する。
又、摺動面2の第3ディンプル部3Cの外周には、第0ダム部2A0を形成する。そして、摺動面2に於ける全体の形状は、図1と略同様に、第1ダム部2A1、第2ダム部2A2及び第3ダム部2A3を設けている。この全体のダム2Aにより形成される多数のディンプル3の形状は、例えば、長方形の両端が半円状に形成されたものも一実施の態様である。
このサンドブラスト方法は、摺動面2にサンドブラスト用感光性フィルムを貼り付けて、ディンプル3の形状を焼き付けたポジフィルムを密着させてサンドブラスト用感光性フィルムを露光する。その後、サンドブラスト用感光性フィルムを現像し、その面にサンドブラストを行うことによりポジフィルムのパターンと一致したディンプル3に加工して形成する。
メカニカルシール20は、本発明の摺動部品1を回転密封環として取り付けた
ものである。この摺動面2を設けた摺動部品1はOリング25を介して回転軸50に取り付けられる。一方、この摺動部品1に対し、研磨により平面にされた摺動面10Aを対向して密接した炭化珪素材製の固定密封環10をハウジング60に取り付けている。このハウジング60と固定密封環10との間にはOリング25が配置されており、Oリング25によりハウジング60と固定密封環10との間を密封する。
本発明の摺動部品1は、被密封流体が内周側に存在する場合にも利用できる。被密封流体が摺動部品1の内周に存在する場合には、図示省略するが、図1から図8において矢印Nとは逆に回転する形になる。
更に、軸受として利用する場合には、軸を受ける摺動部品1のラジアル又はス
ラスト等の摺動面に利用できる。特に、摺動面の軸方向内方に潤滑油がある場合には潤滑油を潤滑側へポンピングするように、ディンプル3の傾斜角度βを設定
すれば良い。例えば、ディンプル3の傾斜角度βを45°にするとよい。
図10に於いて、摺動部品1の試験機10には、中心部に回転可能な円筒状のハウジング20が設けられている。このハウジング20内の被密封流体室20Aに設けられた取付面には静止用密封環11がゴム材製のOリングを介して密封に嵌着されている。又、回転軸15に固着された保持装置13には、回転用密封環12が軸方向へ移動自在にスプリングにより弾発に保持されている。そして、回転用密封環12のシール面が静止用密封環11の対向シール面に密接して被密封流体室20A内の被密封流体が外部へ漏洩しないようにシールしている。
図示省略の流通路15Aと通路管14の端部は、図示省略の循環パイプに連通し、このパイプに接続したポンプ装置により設定温度と設定圧力に制御された被密封流体を循環するように成されている。尚、モータ16は、図示されていないインバータにより、回転数が制御されている。
但し、W=荷重
Rm=摺動面平均半径である。
1)回転密封環である第1摺動部品1の摺動面2は図1叉は図5に示す形状である。叉、対向する固定密封環は炭化珪素材製で一端に平坦な摺動面を設けている。
この摺動部品1は、図10に示す試験機10により試験した。
2)摺動部品1の形状に関して、
a. 回転用密封環は、炭化珪素材製の摺動部品(内径25mm×外径44mm×長さ12mm)
b. 静止用密封環は、炭化珪素材製の摺動部品(内径28mm×外径50mm×長さ14mm)
c.摺動面の大きさは、内径32mm×外径40mm
d.ディンプル3の配置及び形状は、図1及び図5に示す通りである。
e.ディンプル3の幅は、250×10−6m、
長さは、1600×10−6m、
深さは、8×10−6mである。
f.ディンプル3の傾斜角度βは、30°と42°にしたものである。
3)摺動面2の表面粗さは、Rz0.2×10−6mである。
4)平坦度は、1バンド(ヘリウムライト)以下である。
5)試験時間は、30分である。
6)被密封流体の温度は、30°Cである。
7)被密封流体の圧力は、0.3MPa 、0.5MPa、1.0MPaの3点である。
8)周速度は、0.3m/sである。
9)スプリングの荷重は、20Nである。
10)被密封流体は、出光興産製スーパーマルチオイル10を使用した。
この第2摺動部品1は、図10に示す試験機10により試験をした。
2)第2摺動部品1のその他の試験条件
第2摺動部品1の試験条件は、上述の実施例1と同様である。
1)比較する摺動部品は、本発明の両摺動部品1と同一形状で、同一材質であるが、両摺動面のみは研磨した平坦面である。
2)比較する摺動部品の試験条件は上述の実施例1と同様である。
図11では、P1の棒グラフが第1摺動部品1の摩擦係数のデータ、P2の棒グラフが第2摺動部品1の摩擦係数のデータ、Sの棒グラフが比較する摺動部品の摩擦係数のデータである。この図11において、第1摺動部品1と第2摺動部品1の摩擦係数は略同一である。尚、説明は省略した他の実験の結果から、第1実施の態様から第6実施の態様の各摺動部品1も略同じ摩擦係数のデータが得られる。
1)本発明の第1摺動部品1は摩擦係数の試験をした実施例1と全て同一である。
2)その他の試験条件は摩擦係数の試験をした実施例1と全て同一である。
1)本発明の第2摺動部品1は摩擦係数の試験をした実施例2と全て同一である。
2)その他の試験条件は摩擦係数の試験をした実施例2と全て同一である。
1)本発明の両摺動部品1と外形は同一形状で、同一材質あるが、両摺動面は研磨した平坦面に多数の螺旋状溝のみを付けたものである。摺動面に螺旋状溝を横断するダム2Aは設けられていない。
2)その他の試験条件は上述の試験をした比較例1と同一である。
図12では、P1の棒グラフが本発明の第1摺動部品1の漏れ量のデータ、P2の棒グラフが本発明の第2摺動部品1の漏れ量のデータ、Sの棒グラフが比較例2の漏れ量のデータである。この図12において、第1摺動部品1と第2摺動部品1の漏れ量は略同一である。尚、説明は省略した他の実験の結果から、第1実施の態様から第6実施の態様の各摺動部品1も略同じ漏れ量のデータが得られる。
本発明の第1摺動部品1及び第2摺動部品1と比較例1の摺動部品との被密封流体圧力と摩擦係数とに於ける結果を比較すると、図11から明らかなように、被密封流体の圧力が低い範囲では、特に、本発明の摺動部品1は優れた低摩擦係数を示すことが認められる。又、本発明の第1摺動部品1及び第2摺動部品1と比較例2の摺動部品との各被密封流体圧力に於ける漏洩量を比較すると、図12から明らかなように、被密封流体の圧力が低い範囲では、本発明の各摺動部品1は優れたシール能力を示すことが認められる。尚、一般機械・機器は、この低い圧力範囲で広く使用されている。
更に、摺動部品1の回転数が低速の場合、或いは被密封流体の圧力が低圧の場合には、被密封流体のシール能力と共に、摩擦係数が低減できる。
更に又、多数のディンプル3を配置した摺動面2が損傷しやすくなるのをダム2Aにより防止すると共に、摺動面2の摩耗を効果的に防止する。
2 摺動面
2A ダム
2A1 第1ダム部
2A2 第2ダム部
2A3 第3ダム部
2A0 第0ダム部
3 ディンプル
3A 第1ディンプル部
3B 第2ディンプル部
3C 第3ディンプル部
4 一列溝
N 回転方向
Claims (4)
- 静止用摺動部品と回転用摺動部品とが互いに相対摺動する摺動面間の径方向内外周側の一方側に存在する被密封流体をシールする摺動部品であって、
前記摺動面(2、2)のうちの少なくとも一方の摺動面(2)に径方向側の被密封流体に向かって回転方向へ傾斜するとともに傾斜方向へ長手に形成されたディンプル(3)と、
前記ディンプル(3)が前記摺動面(2)に径の異なる複数の環状に沿って配列された複数輪のディンプル部(3A、3B、3C、・・)とを有し、
前記ディンプル部(3A、3B、3C、・・)の複数輪の間に同心で円環状に形成されたダム部(2A1、2A2、2A3、・・)をそれぞれ有し、
半径方向に隣り合う前記ダム部(2A1、2A2、2A3、・・)の間には、前記ディンプル部(3A、3B、3C、・・)がそれぞれ存在し、
各ディンプル(3)が、同一幅で径方向に対して同一角度で傾斜方向へ直線状に形成され、各ディンプル(3)の傾斜方向の長さは、溝幅の2.5倍以上であり、前記摺動面の径方向幅寸法の1/2以下に形成され、
各ディンプル(3)の長手方向の端部が、円環状に形成された前記ダム部(2A1、2A2、2A3、・・)で区切られていること、を特徴とする摺動部品。 - 前記被密封流体側の前記ディンプル部(3A、3B、3C、・・)の前記ディンプル(3)の溝端が被密封流体に突き抜けていることを特徴とする請求項1に記載の摺動部品。
- 前記摺動面(2)の少なくとも被密封流体側と反対側の端部側摺動面に第1ダム部(2A1)を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の摺動部品。
- 前記各ダム部(2A1,2A2、2A3・・)の径方向幅が前記ディンプル(3)の傾斜方向の長さよりも小さくされていることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の摺動部品。
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