JP4495402B2 - 摺動部品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、メカニカルシール等の摺動部品の技術分野に関する。特に、摺動面の摩擦係数を小さくすると共に、摺動面で被密封流体の漏洩を防止する摺動部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
本発明に係わる摺動部品の関連技術として、図8に示すメカニカルシールが存在する〔例えば、特許文献1参照〕。
【0003】
【特許文献11】
特公平5−69066号公報第(1−3頁)
(対応米国特許第5,080,378号−図1)
【0004】
この図8は、ポンプ及び冷凍機などに用いられているメカニカルシール100の半断面図である。
図8に於いて、回転軸130とケーシング140との間にはメカニカルシール100が配置されている。そして、このメカニカルシール100は、ポンプ又は冷凍機などに用いられて水などの液体をシールするものである。
【0005】
メカニカルシール100は、多孔質炭化珪素焼結製のシールリング101が回転軸130に嵌合している。この回転するシールリング101には、側面にシール面102が設けられている。
更に、シールリング101における内径面の段部103には、回転軸130との間をシールするためにパッキング120A、120Bが設けられている。このパッキング120A、120Bは、押えリング105により押さえられて回転軸130とシールリング101との間をシールする。
更に、ソケットねじ108により回転軸130に固定された支持リング109は、ばね装置106を支持すると共に、ばね装置106により押さリング105を弾発に支持している。
【0006】
又、シール面102と密接摺動する対向シール面111が、固定リング110に設けられている。この固定リング110は、ケーシング140に於ける回転軸130が貫通する孔に、Oリング115、115を介して、固着されている。
この固定リング110の材質はカーボンである。
この様に構成された従来のメカニカルシール100は、シールリング101と固定リング110との密接により高圧P1側と低圧P2側とをシールする。
このシールリング101は、球状をした平均気孔径が0.010から0.04mmの気孔が結晶組織内に点在して摺動抵抗を改良した炭化珪素焼結体である。
【0007】
この炭化珪素焼結体の摺動面に有する気孔は、焼結前にポリスチレンビーズを添加し、仮焼結時に分解・昇華して気孔を形成するものである。この為に、炭化珪素焼結体は、結晶粒内に気孔が点在しているので、製造法に於いても高圧圧縮成形が困難である。この為に、成形した寸法精度に問題が惹起する。また、焼結によりポリスチレンビーズを分解するものであるから、摺動部品としての焼結品の強度に問題がある。
【0008】
次に、上述した摺動部品の強度及びシール面における被密封流体の漏れ量を改善したものとして図9に示すメカニカルシールが存在する(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
【特許文献2】
特開昭57−161368号公報(明細書4−10頁、図2)
【0010】
このメカニカルシールは、図8と同様に構成されている。そして、ハウジングに保持された固定リングと回転軸に固定された図9に示す従動リング5’との摺動面が密接して被密封流体をシールする。
この従動リング5’の摺動面5A’には、凹部6’が多数形成されている。この凹部6’は最小幅が30×10−6mから100×10−6mとし、最大幅を60×10−6mから500×10−6mとすると共に、最小幅に対して最大幅の寸法比率を2倍以上とするものであって、図9に示すように、凹部6’は摺動面5A’の回転方向に対して傾斜するように形成されている。
【0011】
この凹部6’は従動リング5’の摺動面5A’と固定リングの摺動面間に浸入した被密封流体の漏れを阻止する役目をする。すなわち、従動リングの外周側から浸入した被密封流体は内周端側へ至る以前に凹部6’に補足されて蓄えられる。この蓄えられた被密封流体は、その粘性作用と従動リングの回転方向によって凹部6’の外周方向へ移動し、外周部の蓄積容量を越えると凹部6’の外周部から摺動面間を漏洩した後、次の凹部6’に補足される。このようにして、順次繰り返えされた被密封流体は、摺動面の外周端側へ戻される。
【0012】
しかし、このような凹部6’は、図9に示すように、従来の螺旋溝を断続に点在して配置し、その点在する凹部6’の形状を楕円形に設計したものであるから、被密封流体を押し戻すポンピング作用が小さい。しかも、エッチング加工等により凹部6’の製作が容易であると共に、従動リング6’の強度を低下させない材質に構成できる反面、摺動面の摩擦係数や摺動発熱を低減する効果が螺旋溝に比較して大きな効果は期待ができない。
【0013】
更に、他の関連技術としてメカニカルシール用摺動部品が存在する。このメカニカルシール用摺動部品の摺動面には摺動方向と直角の長手方向となる溝状に整列したディンプルが形成されている。このディンプルはディンプル内に発生する動圧が大きくなるために被密封流体による潤滑油膜が形成されるが、潤滑油膜がディンプル内に蓄えられて摺動面の摩擦係数を期待したほど小さくすることはできない。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述のような問題点に鑑み成されたものであって、その発明が解決しようとする課題は、摺動面に被密封流体の潤滑膜を形成して摺動抵抗を低減すると共に、摺動面に浸入した被密封流体を効果的に保持し、被密封流体が摺動面から外部へ漏洩するのを防止して密封能力を向上させることにある。同時に、摺動面の摺動発熱を防止する。更に、摺動部品の強度を保持すると共に、摩耗を防止して耐久能力を向上させることにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述のような技術的課題を解決するために成されたものであって、その解決するための手段は、以下のように構成されている。
【0016】
請求項1に係わる本発明の摺動部品は、静止用摺動部品と回転用摺動部品とが互いに相対摺動する摺動部品であって、摺動部品の摺動面に境界基準線を境に外周側と内周側とが傾斜方向を異にする複数の細長いディンプルを有し、外周側のディンプルが回転方向先端を外周側へ向かって傾斜させると共に内周側のディンプルが回転方向先端を内周側へ向かって傾斜させるものである。
【0017】
この請求項1に係わる本発明の摺動部品では、外周側のディンプルが回転方向の長手先端側を外周側へ向かって傾斜させると共に内周側のディンプルが回転方向の長手先端側を内周側へ向かって傾斜させるものであるから、外周側と内周側とのディンプル間の摺動面に被密封流体の潤滑膜を厚く保持してシール能力を向上される効果が期待できる。又、この摺動面に保持される潤滑膜により摺動面の摩擦係数を低減することが可能になる。この為に、被密封流体をシールする密封環の他に、ピストンリング、軸受け等の摺動部品として利用できる。
【0018】
請求項2に係わる本発明の部品は、静止用摺動部品と回転用摺動部品とが互いに相対摺動する摺動面間で1方側に存在する被密封流体をシールする摺動部品であって、摺動部品の摺動面に境界基準線を境に外周側と内周側とが傾斜方向を異にする複数の細長いディンプルを有し、外周側のディンプルと内周側のディンプルが径方向へ列を成して互いにハ形状に傾斜すると共に、列が周方向に複数列に配置されているものである。
【0019】
この請求項2に係わる本発明の摺動部品では、ディンプルをハ形状に配置できるので、被密封流体の被膜を内外周のディンプルにより境界基準線の近傍にかき集めるようにして集中させ、摺動面間に介在された被密封流体の被膜により、摩擦係数と共に、シール能力を向上させることが期待できる。又、このように構成された摺動部品はメカニカルシール等の密封環として優れている。
【0020】
請求項3に係わる本発明の摺動部品は、内周側のディンプル数と外周側のディンプル数のうち摺動面の被密封流体側のディンプル数が少なく形成されているものである。
【0021】
請求項3に係わる本発明の摺動部品では、外周側に被密封流体が存在する場合、内周側のディンプルの数を多くすると、内周側のディンプルにより被密封流体を外周側に押し戻すことができる。又、内周側に被密封流体が存在する場合、外周側のディンプルの数を多くすると、この外周側のディンプルの数により被密封流体を内周側へ押し戻すことが可能になる。このために、シール能力が飛躍的に向上する。更に、摺動面に介在するこの被密封流体の皮膜は、摺動面の摩擦係数を効果的に低減することができる。
【0022】
請求項4に係わる本発明の摺動部品は、ディンプルは平面が楕円形状又は長方形状を成して幅が50×10−6mから1000×10−6mであると共に長さが幅の2倍以上で摺動面幅の1/2以下で、且つ深さが1×10−6mから25×10−6mmに形成されているものである。
【0023】
この請求項4に係わる本発明の摺動部品では、実験の結果から、摩擦係数が最小になる範囲であると共に、シール能力が最大になる範囲であるために、ディンプル5の形状をこの両効果が共有した範囲に形成することが可能になる。
【0024】
請求項5に係わる本発明の摺動部品は、炭化珪素、炭化チタン、炭化タングステン等の炭化物を含有する摺動材で形成されているものである。
【0025】
この摺動材により摩擦係数を低減できると共に、摺動時に生じる泣きやリンキングを低減することが可能になる。しかも、この摺動部品をカーボン材と対向させて摺動させてもブリスタ現象を防止する効果が期待できる。
【0026】
請求項6に係わる本発明の摺動部品は、摺動部品が鋳鉄叉はステンレス鋼叉は窒化珪素叉は窒化アルミニウムの材質で形成されているものである。
【0027】
この請求項6に係わる本発明の摺動部品では、 摺動部品の材質を鋳鉄、ステンレス鋼、窒化珪素、窒化アルミ等で形成すると共に、摺動面にディンプルが形成されているために、摺動面の摩擦係数が低減される。更に、低温の初動時に発生する摺動面の割れが防止できる。更に、高温時に発生する焼き付きも効果的に防止される。この為に、メカニカルシールの密封環としてだけではなく、摺動部品としてピストンリング、軸受けとしても有用である。
一方で従来は、摺動面が平坦面の場合には、この摺動部品を鋳鉄叉はステンレス鋼の材質で製造にしても摺動面の割れや、焼き付きを防止することができなかった。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態に係わる摺動部材を図面に基づいて詳述する。図1は、本発明に係わる第1実施の形態を示す摺動部品2の摺動面を示す正面図である。又、図2は、摺動面3におけるディンプル5の配置のうち内周側の2個のディンプル5Bと外周側の2個のディンプル5Aとの組み合わせを示す平面図である。図3は、摺動面3の1個のディンプルの平面図である。
図4は、本発明に係わる第2実施の形態を示す摺動部品の摺動面を示す正面図である。
図5は、本発明の摺動部品を取り付けたメカニカルシールの断面図である。
又、図6は、本発明の摺動部品を試験したメカニカルシール型の試験機である。図7は、図6に示す試験機により試験した実施例と比較例に於いて本発明の摺動部品と平面な摺動材との摺動時の摩擦係数を示すグラフである。
【0029】
図1は、本発明の摺動部品2の摺動面3に設けられた全体のディンプル5の配置を示す1実施例である。
この外周側のディンプル5Aと内周側のディンプル5Bとの中間が境界基準線Xであって、外周側に配列されたディンプル5Aのうちの外周半径がr1である。又、内周側に配列されたディンプル5Bの内周半径がr2である。そして、境界基準線Xの半径はrhである。
この境界基準線Xは、摺動面のシール能力を考慮して設計された直径の円周を境にして外周側領域R1と内周側領域R2にわけている。この1実施例では、摺動面3の中央に境界基準線Xが決められており、外周側のディンプル5Aと内周側のディンプル5Bとが同数に設計されている。又、このディンプル5A、5Bは平面から見て長方形又は楕円形に形成されており、そのディンプル5の傾斜角度C、C’は径方向に対し各々60°から80°であり、具体的な実施例では傾斜角度C、C’を60°に傾斜させている。
このディンプル5を設けた摺動部品2は、ディンプル5と材質が協働して摩擦係数を低減する効果を奏する。この材質は、炭化珪素、炭化チタン、炭化タングステン、鋳鉄、ステンレス鋼、窒化珪素、窒化アルミ等が好ましい。更に、高速回転時の摺動面の焼きつきや、低温状態での摺動するときに発生する割れは、ディンプル5と鋳鉄叉はステンレス鋼叉は窒化珪素叉は窒化アルミニウム(以下、窒化アルミと略称する)等の材質との協働作用により、効果的に防止できる。
【0030】
図2に第2実施の形態として境界基準線Xから両側の2個のディンプル5を拡大して示したものである。
この摺動面3に於けるディンプル5の配置は、径方向へ1列に成るように複数個の外周側のディンプル5Aと内周側のディンプル5Bとが回転方向へハ形状に配置されている。そして、この1列のディンプル5A、5Bが摺動面3に沿って等配に多数の列に配置されている。
このディンプル5の形状は、第2実施例として長方形に形成されている。このディンプル5の長方形の幅Aは、50×10−6mから1000×10−6mの範囲に形成されている。又、長手方向の長さBは、幅Aの2倍以上であり、摺動面3の幅の1/2以下に形成されている。そして、ディンプル5の深さは、1×10−6mから25×10−6mの寸法に形成されている。
【0031】
この外周側のディンプル5Aは、摺動部品の回転方向N又は相対回転方向Nに対して回転方向先端5A1が境界基準線Xから回転方向の外周側へ向かって傾斜している。この傾斜角度Cは径方向に対して30°に形成されている(この傾斜角度Cはほぼ最小に近い状態である)。傾斜角度C、C’は、摩擦定数、シール能力等の設計に応じて設定される。この傾斜角度C、C’を小さくするとシール能力が向上する傾向がある。又、傾斜角度C、C’を大きくすると摺動抵抗が小さくなる傾向がある。この外周側におけるディンプル5Aの傾斜角度Cの範囲は30°から85°にすると良く、好ましくは45°から80°の範囲にすると摩擦係数を低減する効果がある。
又、内周側のディンプル5Bは、摺動部品の回転方向N又は相対回転方向Nに対して回転方向先端5B1が境界基準線Xから回転方向の内周側へ向かって傾斜している。この傾斜角度C’は径方向に対して30°に形成されている。又、傾斜角度C’は、摩擦定数、シール能力等の設計に応じて設定される。更に、傾斜角度C’を大きくすると摺動抵抗が低下する傾向にある。又、内周側のディンプル5Bを多数個にするとシール能力が向上する。この内側におけるディンプル5Bの傾斜角度C’の範囲は30°から85°にすると良く、好ましくは45°から80°の範囲にすると摩擦係数を低減する効果が発揮される。
【0032】
図3はディンプル5の第3実施例である。この図3のディンプル5Aの傾斜角度Cはほぼ最小角度30°に近い状態を示すものである。この外周側のディンプル5Aは回転方向先端5A1が円弧状に形成されていると共に、回転方向後端も円弧状に形成されている。更に、図示は省略されているが、第4実施例として平面形状が楕円形に形成されたものがある。これらのディンプル5も第1実施例と同様な寸法に形成されている。この他に図示は省略するが、摺動面3におけるディンプル5の形状を平面から見て瓢箪形状にすることもできる。
このようにディンプル5の形状を工夫することにより摺動面のシール能力、摩擦係数を向上することが可能になる。
更に、ディンプル5の傾斜角度C、C’と個数を設定することにより摩擦係数と共に、シール能力が共に改善される。
【0033】
図4は、本発明の第3実施の形態を示す摺動部品2の摺動面3に於けるディンプル5の配置関係である。このディンプル5の配置は、摺動面の外周側に被密封流体が存在する場合のディンプル5の配置を示すものである。この摺動面3には、内周側のディンプル5Bの個数が6個に形成したものである。そして、外周側のディンプル5Aの数は2個と内周側のディンプル5B数に対して少なくしたものである。このディンプル5の形状も、第1実施例、第2実施例、第3実施例、第4実施例のように形成される。このように、ディンプル5の形状及びディンプル5の外周側と内周側の配列数、並びにディンプル5の形状の傾斜角度C、C’を選択することにより摺動抵抗と共に、シール能力を向上することが可能になる。この第3実施の形態の摺動部品では、内周側のディンプル5Bが多数に形成されているので、この多数のディンプル5Bのポンピング作用によりシール能力が向上する。又、摺動面3に於ける各ディンプル5の配列角度を大きくすることにより摺動抵抗を低減することが可能になる。
【0034】
ディンプル5の形状は摩耗粉により容易に消滅しない形状であることが好ましい。このため、ディンプル5の形状、方向性、更には、被密封流体の潤滑皮膜の厚みを増加させる形状にすることである。
このディンプル5の加工方法はサンドブラスト用感光性フィルムを使用することができる。この方法は、摺動面3にサンドブラスト用感光性フィルムを貼り付ける。そして、このディンプル5の形状を焼き付けたポジフィルムを密着させてサンドブラスト用感光性フィルムを露光する。その後にサンドブラスト用感光性フィルムを現像してサンドブラスト加工を行うことによりポジフィルムのパターンと一致したディンプル5を形成することが可能になる。サンドブラスト用感光性フィルムはCADのデータにより作成されたポジフィルムにより現像して作るので形状の作成が容易である。
この他の加工方法として、固体金属との反応等によるディンプル5の加工をすることもできる。
【0035】
図5は、本発明の摺動部品2を取り付けたメカニカルシール1の断面図である。
メカニカルシール1は、回転軸50とハウジング60との間の取付空間に取り付けられている。摺動部品2は回転用密封環として回転軸50にOリング34を介して軸方向移動自在に嵌合している。又、摺動部品2は、回転軸50に嵌合したOリング押さえ35を介してコイルスプリング37により押圧されている。このコイルスプリング37は、回転軸50に嵌着した支持部36により支持されている。
【0036】
摺動部品2はコイルスプリング37により摺動面3を対向する静止用密封環31の対向シール面31Aと密接するように押圧されている。この静止用密封環31の外周面31Bをハウジング60の取付孔42に嵌着して取り付けられている。又、静止用密封環31と取付孔42との接合面間にはOリング溝43が設けられており、このOリング溝43にOリング33が装着されて静止用密封環31を嵌合した接合間をシールしている。
このようにして、ハウジング60の被密封流体側Aと大気側Bとを摺動部品2のシール面3と静止用密封環31の対向シール面31Aとの密接によりシールする。
【0037】
この摺動部品2は回転用密封環2として用いられているが、静止用密封環31としても用いられる。又、回転用密封環2と静止用密封環31を共に摺動部品2を用いることもできる。
この摺動部品2は、炭化珪素、炭化チタン、炭化タングステン等の炭化物系を含有する摺動材により形成されている。又、炭化タングステン等の超硬合金を用いることもできる。これは、摺動部品2の摺動面3にディンプル5が形成されているので、硬質合金を利用することを可能にする。
【0038】
図6は、本発明の摺動部品2をテストしたメカニカルシール型試験機の断面図である。
図6に於いて、摺動部品2用の試験機10には、中心部に回転可能な円筒状のハウジング20が設けられている。このハウジング20内の被密封流体室20Aに設けられた取付面には静止用密封環11がOリングを介して密封に嵌着されている。又、回転軸15に固着された保持装置13には回転用密封環12が軸方向へ移動自在にスプリングにより弾発に保持されている。そして、回転用密封環12のシール面が静止用密封環11の対向シール面に密接して被密封流体室20A内の被密封流体が外部へ漏洩しないようにシールしている。
【0039】
モータ16により回転する回転軸15の軸心には流通路15Aが設けられている。この流通路15Aには通路管14が貫通して配置されている。この通路管14から導入される被密封流体、例えば、油が被密封流体室20A内に流入すると共に、流通路15Aから流出するように構成されている。この流通路15Aと通路管14の端部は図示省略の循環パイプに連通し、このパイプに接続したポンプ装置により設定温度と設定圧力に制御された被密封流体を循環するように構成されている。尚、モータ16は、図示されていないインバータにより、回転数の制御が可能にされている。
【0040】
静止用密封環11を保持したハウジング20は、ベアリング18に回転可能に保持された軸19に固着されている。そして、静止用密封環11と回転用密封環12との回転時の摺動抵抗により回動するように構成されている。
【0041】
一方、静止用密封環11の対向シール面の近傍1mmの位置には直径2mmの穴が設けられており、図示省略の熱電温度計に結線した白金ロジウム−白金又はアルメル−クロメル等の導線17の他端が穴に結線されている。そして、この熱電温度計により静止用密封環11の摺動面の温度を測定する。
【0042】
又、軸19を支持する支持台にはロードセル21が設けられており、カンチレバー22を介して摺動トルクMを検出できるように成されている。尚、この摺動トルクMの値から摩擦係数Fを算出する。算出する式は、F=M/(W×Rm)である。
但し、W=荷重
Rm=摺動面平均半径 である。
【0043】
本試験機10は、内流・アンバランス型である。そして、被密封流体の圧力とスプリングの弾発力によりシール面を押圧する。又、被密封流体の圧力が0の時は、保持装置13のスプリングのみにより摺動面が押圧される。このようにして測定した試験中の測定項目は、摺動部品2の摺動トルクM、摺動面の温度、被密封流体の温度、更に、摺動面から漏洩する被密封流体の量である。
【0044】
【実施例】
実施例1
実施例1は図1に示す摺動部品2を試験したものである。この摺動部品2は図6に示す試験機10により試験した。
【0045】
その摺動条件は以下の通りである。
1) 摺動部品2
回転用密封環は、炭化珪素摺動部品(内径25mm×外径44mm×長さ12mm)。
静止用密封環は、炭化珪素摺動部品(内径28mm×外径50mm×長さ14mm)。
摺動面の径は、(内径32mm×外径40mm)
この密封環のうちの一方の摺動面3にディンプル5を設けると共に、他方の摺動面3はディンプル5のない平滑な平面である。
ディンプル5の形状は、図1及び図2に示す通りである。すなわち、ディンプル5の幅Aは、150×10−6m、長さBは、600×10−6m、深さHは、8×10−6mである。又、全ディンプルの全摺動面に対する面積比率の割合は8%である。
ディンプル5の外側傾斜角度C及び内側傾斜角度C’は、共に60°(境界基準線Xからは、各々30°である)である。
2)摺動面の表面粗さは、Rz0.2×10−6m。
3)平坦度は、1バンド(ヘリウムライト)。
4)試験時間は、30分。
5)被密封流体の温度は、30°C。
6)被密封流体の圧力は、0.07MPa。
7)周速度1,2,5,10m/s。
8)スプリングの荷重は、20N。
9)境界基準線の半径Rhを18mmとする。
10)被密封流体は、出光興産製スーパーマルチオイル10。
【0046】
そして、これらの条件で試験した結果の摩擦係数は、表1の通りである。又、ディンプル5のない平滑な摺動面同士による摩擦係数に対する上記の摺動部品2の摩擦係数の割合(%)〔摺動部品2の摩擦係数/ディンプルのない摺動面を形成した摺動部品の摩擦係数〕が表2に示す通りである。更に、被密封流体の漏れ量(g/h)が表3の通りである。尚以下の各表で、Aは、摺動部品2の摺動速度(m/s)である。又、Bは、被密封流体の圧力(MPa)である。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
表3の被密封流体の漏れ量(g/h)について検討する。先ず、被密封流体の圧力が0MPaの場合には、被密封流体の漏洩量が0g/hであるのに対し、0.07MPaの場合には、被密封流体の漏洩が圧力との関係で測定不能であるが、微小発生すると思われる。この理由は、被密封流体が0MPaの場合は、外周側のディンプル5Aと内周側のディンプル5Bが対象に形成されているので、ディンプル5のポンピングの作用により発生する圧力が釣り合うために、摺動面3間を横断する被密封流体の流れは発生しないものと考えられる。
又、被密封流体の圧力が0.07MPaの場合では、ディンプル5のポンピング作用により漏洩は発生しないが、被密封流体の圧力の上昇に応じて被密封流体の漏洩が微小発生すると考えられる程度である。
【0051】
この根拠は、平行な静止用密封環と回転用密封環の摺動面間の放射状漏れに関するポアズイユの理論式により、被密封流体の漏洩量は被密封流体の圧力により比例することがわかる。
【0052】
実施例2
次に、実施例2は、図4に示す摺動部品2について試験したものである。この摺動面では、図4に示すように外周側のディンプル5Aの配列幅r1−rhと内周側のディンプル5Bの配列幅rh−r2の比を1/3の値にしたものである。尚、実施例2のその他の条件は実施例1と同じ条件である。
そして、これらの条件で実施例2の摺動部品2を試験した結果の摩擦係数は、表4の通りである。又、ディンプルのない平滑な摺動面同士(摺動面)による摩擦係数と実施例2の摩擦係数の割合(%)〔摺動部品2の摩擦係数/ディンプルのない摺動面を形成した摺動部品の摩擦係数〕が表5の通りである。更に、被密封流体の漏れ量(g/h)が表6の通りである。
【0053】
【表4】
【0054】
【表5】
【0055】
【表6】
【0056】
実施例2の表4の摩擦係数及び表5の摺動部品2とディンプルのない摺動部品との摩擦係数の割合(%)は、共に比較例1の対応する表16、表17に比べて摩擦係数が小さくなる。このために、摩擦を低減する能力に優れている。特に、高速摺動時に摺動発熱が小さいので焼き付きを惹起しない。
又、表6は被密封流体の漏洩量(g/h)であるが、被密封流体の圧力を上昇させても被密封流体の漏洩は認められない。つまり、摺動部品2は摩擦係数が小さく且つシール能力に優れる。
【0057】
実施例3
1)試験条件
実施例3の摺動部品2は、実施例1と同一条件のもとに同一試験機により実験した。
2)摺動部品2
(1)この摺動部品2は図4に示す摺動部品2と摺動面が同一の形状である。つまり、外周のディンプル5の配列幅r1−rhと、内周のディンプルの配列幅rh−r2の比を1/3とした。
(2)回転用密封環の材質及び径は、クロムモリブデン鋳鉄(内径25mm×外径44mm×長さ12mm)
(3)静止用密封環の材質及び径は、クロムモリブデン鋳鉄(内径25mm×外径50mm×長さ14mm)
(4)回転摺動面の径は、(内径32mm×外形40mm)
(5)その他の条件は実施例1と同一である。
【0058】
これらの条件で試験した結果の摩擦係数は、表7の通りである。
又、ディンプルのない平滑な摺動面同士による摩擦係数と、実施例3の摩擦係数の割合(%)〔摺動部品2の摩擦係数/ディンプルのない摺動面を形成した摺動部品の摩擦係数〕を示す結果は、表8の通りである。
更に、被密封流体の漏れ量(g/h)は表9の通りである。尚、鋳鉄FC35でも同様な結果となる。
【0059】
【表7】
【0060】
【表8】
【0061】
【表9】
【0062】
実施例3の表7の摩擦係数及び表8の摺動部品2とディンプルのない摺動部品との摩擦係数の割合(%)は、共に比較例1の対応する表16、表17に比べて摩擦係数が小さくなる。このために、摩擦を低減する能力に優れている。特に、高速摺動時に摺動発熱が小さいので焼き付を惹起しない。
又、表9は被密封流体の漏洩量(g/h)であるが、被密封流体の圧力を上昇させても被密封流体の漏洩は認められない。つまり、摺動部品2は摩擦係数が小さく且つシール能力に優れる。
【0063】
実施例4
1)試験条件
実施例4の摺動部品2は、実施例1と同一条件のもとに同一試験機により実験した。
2)摺動部品2
(1)この摺動部品2は図4に示す摺動部品2の摺動面と同一の形状である。つまり、外周のディンプル5の配列幅r1−rhと、内周のディンプルの配列幅rh−r2の比を1/3とした。
(2)回転用密封環の材質及び径は、ステンレス鋼(SUS420J2 )(内径25mm×外径44mm×長さ12mm)
(3)静止用密封環の材質及び径は、ステンレス鋼(SUS420J2 )(内径25mm×外径50mm×長さ14mm)
(4)回転摺動面の径は、(内径32mm×外形40mm)
(5)その他の条件は実施例1と同一である。
【0064】 これらの条件で試験した結果の摩擦係数は、表10の通りである。
又、ディンプルのない平滑な摺動面同士による摩擦係数と、実施例4の摩擦係数の割合(%)〔摺動部品2の摩擦係数/ディンプルのない摺動面を形成した摺動部品の摩擦係数〕を示す結果は、表11の通りである。
更に、被密封流体の漏れ量(g/h)は表12の通りである。
【0065】
【表10】
【0066】
【表11】
【0067】
【表12】
【0068】
実施例4の表10の摩擦係数及び表11の摺動部品2とディンプルのない摺動部品との摩擦係数の割合(%)は、共に比較例1の対応する表16、表17に比べて摩擦係数が小さい。このために、摩擦を低減する能力に優れている。特に、高速摺動時に摺動発熱が小さいので焼き付が惹起しない。
又、表12は被密封流体の漏洩量(g/h)であるが、被密封流体の圧力を上昇させても被密封流体の漏洩は認められない。つまり、摺動部品2は摩擦係数が小さく且つシール能力に優れる。
【0069】
実施例5
1)試験条件
実施例5の摺動部品2は、実施例1と同一条件のもとに同一試験機により実験した。
2)摺動部品2
(1)図4に示す摺動部品2と摺動面と同一の形状である。つまり、外周のディンプル5Aの配列幅r1−rhと、内周のディンプル5Bの配列幅rh−r2の比を1/3とした。
(2)回転用密封環の材質及び径は、窒化珪素(内径25mm×外径44mm×長さ12mm)
(3)静止用密封環の材質及び径は、窒化珪素(内径25mm×外径50mm×長さ14mm)
(4)回転摺動面の径は、(内径32mm×外形40mm)
(5)その他の条件は実施例1と同一である。
【0070】
これらの条件で試験した結果の摩擦係数は、表13の通りである。
又、ディンプルのない平滑な摺動面同士による摩擦係数と、実施例5の摩擦係数の割合(%)〔摺動部品2の摩擦係数/ディンプルのない摺動面を形成した摺動部品の摩擦係数〕の結果は、表14の通りである。
更に、被密封流体の漏れ量(g/h)は表15の通りである。
【0071】
【表13】
【0072】
【表14】
【0073】
【表15】
【0074】
実施例5の表13の摩擦係数及び表14の摺動部品2とディンプルのない摺動部品との摩擦係数の割合(%)は、共に比較例1の対応する表16、表17に比べて摩擦係数が小さい。このために、摩擦を低減する能力に優れている。特に、高速摺動時に摺動発熱が小さいので焼き付が惹起しない。
又、表15は被密封流体の漏洩量(g/h)であるが、被密封流体の圧力を上昇させても被密封流体の漏洩は認められない。つまり、摺動部品2は摩擦係数が小さく且つシール能力に優れる。
【0075】
比較例1
比較例1として特許第3026252号公報の図1に示すようなメカニカルシール用摺動材について試験したものである。この摺動材は摺動面に摺動方向に対して直角方向へ長手の楕円形状のディンプルを径方向と周方向へ等配に複数配列したものである。この楕円形のディンプルは幅が50×10−6mで、長手方向の長さが200×10−6mであり、深さが8×10−6mである。又、摺動面に於ける配列は摺動する円周方向に対して約400×10−6m、半径方向に対して約200×10−6mの間隔に配列したものである。そして、全ディンプルの全摺動面の面積に対する面積比率を約8%の割合に形成した。
【0076】
そして、これらの条件で比較例1の摺動部品を試験した結果の摩擦係数は、表16の通りである。又、比較例1の摩擦係数に対するディンプル5のない摺動面平面同士の摩擦係数との割合(%)〔比較例1の摩擦係数/ディンプルのない摺動面同士の摩擦係数〕が表17の通りである。更に、被密封流体の漏れ量(g/h)が表18の通りである。
【0077】
【表16】
【0078】
【表17】
【0079】
【表18】
【0080】
以上の試験結果から、実施例1は、比較例1に対し、摩擦係数の割合(%)について同一条件で比較すると全ての点で1/3以下に低減されている。
又、実施例2は、比較例1に対し、被密封流体の漏洩量は同等であるが摩擦係数の割合が最大で28%以下に低減されている。
更に、実施例3は、比較例1に対し、被密封流体の漏洩量(g/h)はほとんど認められない。しかし、比較例1に対して、摩擦係数の割合が最大の値で30%以下に低減されていることが認められる。
更に、実施例4は、比較例1に対し、被密封流体の漏洩量(g/h)はほとんど認められない。しかし、比較例1に対して、摩擦係数の割合が最大の値で29%以下に低減されていることが認められる。
更に、実施例5は、比較例1に対し、被密封流体の漏洩量(g/h)はほとんど認められない。しかし、比較例1に対して、摩擦係数の割合が最大の値で26%以下に低減されていることが認められる。
【0081】
又、以上の試験結果について、実施例1及び2の摺動部品2並びに比較例1の摺動部品の摩擦係数に対するディンプル5のない摺動面同士の摩擦係数の割合(%)をグラフに表したのが図7である。更に、実施例3、4、5についても同様なグラフになるので、グラフの表示は省略する。
この図7のグラフから判断して実施例1、実施例2、実施例3、実施例4及び実施例5とも比較例1に比較して摩擦係数等の全ての値が低減している。
更に、実施例3、実施例4及び実施例5において、この摺動部品2の材質と同じ材質の摺動部品でもディンプル5を設けないと、高速回転時に焼き付きが惹起して使用不能になる。しかし、摺動面3に、本発明のようなディンプル5を設けることにより、焼き付きが防止できる。その上、ディンプル5のない炭化珪素材製の摺動部品では、寒冷地などで低温時には、摺動面に割れが発生することがあるが、ディンプル5を設けた鋳鉄叉はステンレス鋼叉は窒化珪素叉は窒化アルミ等の材製の摺動部品5は、低温時でも、更には摺動面が凍結した場合でも摺動面に割れの発生が認められない。このために、摺動部品の耐久能力が向上する。
尚、本発明の摺動部品2は軸受、シリンダーと摺動するピストンリング等の摺動面を有する摺動部品としての用途にも利用することができる。
【0082】
【発明の効果】
請求項1から請求項3に係わる本発明の摺動部品によれば、外周側のディンプルが回転方向の長手先端側を外周側へ向かって傾斜させると共に、内周側のディンプルが回転方向の長手先端側を内周側へ向かって傾斜させると、外周側と内周側のディンプル間に潤滑膜を形成して摺動面に被密封流体の潤滑膜を保持し、シール能力が向上する効果を奏する。又、この保持される潤滑膜により摺動面の摩擦係数を低減する効果を奏する。そして、摺動面の発熱を効果的に低減する。このために、密封環、ピストンリング、軸受等の摺動面に利用して有用である。
【0083】
又、ディンプルをハ形状に配置できるので、被密封流体の潤滑膜を内外周のディンプルにより境界基準線の近傍にかき集めるようにして集中させ、摺動面間に介在された被密封流体の潤滑膜により、摩擦係数と、シール能力とを共に向上させる効果が発揮される。
【0084】
更に、摺動面の被密封流体と反対側の多数のディンプルにより被密封流体を被密封流体側に押し戻すので、被密封流体のシール能力が飛躍的に向上できる効果を奏する。又、このときの摺動面に介在する被密封流体の潤滑皮膜は、摺動面の摩擦係数を低減する効果を奏する。
【0085】
請求項4に係わる本発明の摺動部品によれば、摩擦係数が最小になる範囲であると共に、シール能力が最大になる範囲であるため、この両効果が共有して発揮される。
【0086】
請求項5に係わる本発明の摺動部品によれば、炭化物より成る摺動材にすると、摩擦係数を低減できると共に、摺動時に生じる泣きやリンキングを低減することが可能になる。しかも、この摺動部品をカーボン材と対向させて摺動させてもブリスタ現象を防止する効果が期待できる。
【0087】
請求項6に係わる本発明の摺動部品によれば、鋳鉄、ステンレス鋼、窒化硅素、窒化アルミ等の材製の摺動部品は、摩擦係数を低減できると共に、低温時に発生する摺動面の割れが防止できるので、シール能力と、耐久能力が共に向上する。更に、高速摺動時に発生する摺動面の焼き付きも効果的に防止できる。叉、軸受、ピストンリング等の摺動部品としても摩擦係数を小さくして、耐久能力を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる第1実施の形態を示す摺動部品の摺動面の正面図である。
【図2】本発明に係わる第2実施の形態を示すディンプルの配列の1部を示す平面図である。
【図3】本発明に係わる実施例3を示すディンプルの平面図である。
【図4】本発明に係わる第3実施の形態を示す摺動部品の摺動面の平面図である。
【図5】本発明に係わる摺動部品を取り付けたメカニカルシールの断面図である。
【図6】本発明に係わる摺動部品の試験機の断面図である。
【図7】本発明に係わる実施例と比較例に於ける摺動部品とディンプルのない摺動面との摩擦係数の対比割合を示すグラフである。
【図8】特許文献のメカニカルシールの断面図である。
【図9】特許文献の摺動部品の摺動面を示す平面図である。
【符号の説明】
1 メカニカルシール
2 摺動部品
3 摺動面
5 ディンプル
5A 外周側のディンプル
5B 内周側のディンプル
5A1 回転方向先端
5B1 回転方向先端
X 境界基準線
N 回転方向
R1 外周側領域
R2 内周側領域
r1 ディンプルの配列の外周の半径
r2 ディンプルの配列の内周の半径
rh 境界基準線の半径
C 外周側のディンプルの傾斜角度
C’ 内周側のディンプルの傾斜角度
Claims (5)
- 静止用摺動部品と回転用摺動部品との摺動面が互いに相対摺動する摺動部品であって、
前記摺動面に境界基準線を境に外周側と内周側とが傾斜方向を異にする複数のディンプルを隣り合う径方向の列に存在するディンプルの周方向端部同士が重ならないように1列に配置し、
前記外周側のディンプルが径方向へ複数の列を成して回転方向先端を外周側へ向かって傾斜させると共に内周側のディンプルが径方向へ複数の列を成して回転方向先端を内周側へ向かって傾斜させて、前記列が周方向に沿って複数列に配置され、
前記ディンプルは平面が楕円形状又は長方形状を成して幅が50×10 −6 mから1000×10 −6 mであると共に長さが前記幅の2倍以上で前記摺動面幅の1/2以下で、深さが1×10 −6 mから25×10 −6 mに形成されていることを特徴とする摺動部品。 - 静止用摺動部品と回転用摺動部品とが互いに相対摺動する摺動面間で1方側に存在する被密封流体をシールする摺動部品であって、
前記摺動面に境界基準線を境に外周側と内周側とが傾斜方向を異にする複数のディンプルを隣り合う径方向の列に存在するディンプルの周方向端部同士が重ならないように1列に配置し、
前記外周側のディンプルと内周側のディンプルが径方向へ複数の列を成して互いにハ形状に傾斜すると共に前記列が周方向に沿って複数列に配置され、
前記ディンプルは平面が楕円形状又は長方形状を成して幅が50×10 −6 mから1000×10 −6 mであると共に長さが前記幅の2倍以上で前記摺動面幅の1/2以下で、深さが1×10 −6 mから25×10 −6 mに形成されていることを特徴とする摺動部品。 - 前記内周側のディンプル数と外周側のディンプル数のうち前記摺動面の被密封流体側の前記ディンプル数が少なく形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の摺動部品。
- 前記摺動部品が炭化珪素、炭化チタン、炭化タングステン等の炭化物を含有する摺動材で形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の摺動部品。
- 前記摺動部品が鋳鉄叉はステンレス鋼叉は窒化珪素叉は窒化アルミニウムの材質で形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の摺動部品。
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