JP4300717B2 - Dc−dcコンバータ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、DC−DCコンバータ及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハイブリッド車を含む電気自動車では走行用モータへは高圧の主バッテリから給電し、種々の補機へは低圧の補機バッテリから給電する二電源方式が種々の点で有益である。通常の内燃機関車においても種々の要因により高圧の主バッテリ及び低圧負荷給電用の補機バッテリの両方を搭載する二バッテリ電源系を搭載する機運が生じている。この二電源方式の車両用電源系では、補機バッテリを小容量とし、主バッテリから降圧型DC−DCコンバータ装置を通じて補機バッテリに送電するのが種々の点で合理的な選択である。
【0003】
この降圧型DC−DCコンバータ装置は、入力直流電圧から単相交流電圧を形成するインバータ、この単相交流電圧の降圧を行うトランス、このトランスの出力電圧を整流する整流器、整流された電圧を平滑するチョークコイル及び平滑コンデンサからなる平滑回路から通常、構成されるが、降圧トランスの二次コイルを中間端子付きとして整流部を単相全波整流方式で構成するのが通常である。
【0004】
DC−DCコンバータは少なくとも車両の低圧負荷供給電力のすべてを賄うために、出力電流が大きくする必要があり、そのため、トランス及びチョークコイルの各コイル、これら各コイルに接続される配線部分はブスバーすなわち長板状導体片により構成される。
【0005】
また、上記大出力DC−DCコンバータの具体構造は通常、次のようになる。
【0006】
まず、インバータのスイッチング素子を構成する半導体素子、整流器、トランスやチョークコイルのコアは、それらの放熱のために、金属製の放熱プレートの表面に良好に密着される。制御用のコントローラやその他の小電流回路素子は放熱プレートに固定されたプリント基板に実装される。トランスやチョークコイルのコイルを、ブスバーをリング状に湾曲させて形成し、各コイルの各ターン間の電気絶縁及び外部からの電気絶縁のために、ブスバー製のコイルを樹脂モールドして電気絶縁を行う。各コイル、整流器、スイッチング素子の主電極を接続するブスバーを上記プリント基板及びその上のコントローラやその他の小電流回路素子に触れないように配線し、コイル、スイッチング素子、整流器の端子に接続する。
【0007】
従来のDC−DCコンバータの一例を図7に示す。ただし、ブスバーは図示省略している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した大電流DC−DCコンバータは、製造工程が複雑であり、作業が簡単でないという問題があった。
【0009】
また、ブスバーの温度は、それ自身の発熱、及び、接続されるコイルや半導体素子からの受熱により増加するが、密閉された回路ケース内では、ブスバーの空気への放熱量が小さく、ブスバーの温度上昇が他の回路素子に悪影響を与えるという問題を生じた。
【0010】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、製造が容易で、放熱性にも優れるDC−DCコンバータ及びその製造方法を提供することを、その目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載のDC−DCコンバータは、金属板状の放熱プレート、入力直流電力を交流電力に変換する複数のスイッチング素子を有するインバータ、コアに巻装された一次コイル及び二次コイルを有して前記交流電力の電圧を変換するトランス、
前記トランスの出力電力を整流する整流器、コアに巻装されたコイルを有して前記整流器の出力電力を平滑するチョークコイル、前記スイッチング素子を制御する制御部、前記インバータの一対の出力端子と前記一次コイルの両端とを個別に接続する一次側ブスバー、及び、前記二次コイルと前記整流器又は前記チョークコイルとを接続する二次側ブスバーを備えるDC−DCコンバータにおいて、
前記各コイル及び前記両ブスバーのほとんどを囲覆する樹脂成形品からなる樹脂プレートを有し、前記樹脂プレートの底面は、前記放熱プレートの表面に密着して前記放熱プレートに固定され、前記樹脂プレートは、前記各コイル及び前記両ブスバーの熱を前記放熱プレートに固体伝熱により放熱することを特徴としている。
【0012】
すなわち、本構成は、DC−DCコンバータの大電流配線部材としてのブスバーと、トランス及びチョークコイルのブスバー製のコイルとのほとんどの部分を、樹脂成形品からなる樹脂成形品である樹脂プレートで囲覆することによって、各コイル及び各ブスバーを一体のブスバーサブアセンブリとした点をその特徴としている。
【0013】
上記構成により、各ブスバー及び各コイルの相互の位置関係があらかじめ決定されているので、所定部位への設置作業、及び、それらの相互接続作業が簡単となり、それらの接続部分が振動などで緩むこともなく、他の回路部品からそれらを電気絶縁するのも容易となる。更に、ブスバーは樹脂プレートを通じて放熱プレートに密着するので、ブスバーは固体伝熱により放熱プレートに放熱することができ、ブスバーの冷却性を向上することができる。
【0014】
請求項2記載の構成は請求項1記載のDC−DCコンバータにおいて更に、前記各コイルの各ターンが、裸のブスバーにより形成され、前記樹脂プレートは、前記各ターン間の電気絶縁材として機能することを特徴としている。
【0015】
すなわち、本構成によれば、トランスの一次コイル、二次コイル及びチョークコイルのコイルは、樹脂インサート成形により同じ樹脂プレートに囲覆され、相互の配置が決定される。
【0016】
このようにすれば、各コイルの隣接ターン間を良好に電気絶縁するとともにトランスのコイルとチョークコイルのコイルとの相互の位置関係を精密に設定することができるので、その後のトランスやコアの組立及び取り付け作業が非常に容易となる。また、樹脂プレートを放熱プレートに固定することにより、トランスのコアやチョークコイルのコアを良好に放熱プレートに密着、固定することができる。
【0017】
請求項3記載の構成は請求項1記載のDC−DCコンバータにおいて更に、前記ブスバーが、前記コイルと同一の導体片により形成されているので、部品点数、接続工程数を減らすことができる。
【0018】
請求項4記載の構成は請求項1乃至3のいずれか記載のDC−DCコンバータにおいて更に、前記コアが、底面が前記放熱プレートの表面に密着する基部と、前記基部から前記樹脂プレートのコア貫通孔を貫通して突出する複数の柱部とを有する下側コア部と、前記各柱部の頂面に接して前記下側コア部とともに閉磁気回路を構成する上側コア部とからなるので、コアの柱部を樹脂プレートのコア貫通孔に挿通し、樹脂プレートを放熱プレートに固定するだけで、コアの固定及び放熱プレートへの密着を良好に実現することができる。
【0019】
請求項5記載の構成は請求項4記載のDC−DCコンバータにおいて更に、前記樹脂プレートは、前記制御部及び小電流回路部品が上面に実装される薄平板状の回路実装基板部を一体に又は分離可能に支持しているので、回路実装基板部の支持構造が簡素化し、ブスバーと回路実装基板部の配線との位置合わせや接続作業も容易となる。なお、従来は、プリント基板すなわち回路実装基板部やブスバーはケースに電気絶縁可能に支持されていた。更に樹脂プレート表面に導体箔を貼付するなどすれば、樹脂プレート自体が回路実装基板部を兼ねることもでき、一層、全体構造及び取り付け作業を簡素化することができる。
【0020】
請求項6記載の構成は請求項5記載のDC−DCコンバータにおいて更に、前記回路実装基板部の前記上面は、前記樹脂プレートの他の部分の上面に対して平坦に形成されているので、この樹脂プレートの上面への回路素子実装が容易となる。
【0021】
請求項7記載の構成は請求項1乃至6のいずれか記載のDC−DCコンバータの製造方法において更に、前記両コイル、前記チョークコイル、前記両ブスバーは、インサート成形されて前記樹脂プレートに埋設されることを特徴としているので、製造工程を簡素化することができる。
【0022】
【発明を実施するための態様】
本発明のDC−DCコンバータを用いた二バッテリ搭載型車両用の降圧型DC−DCコンバータ装置の好適な態様を以下の実施例を参照して説明する。
【0023】
【実施例1】
この実施例の降圧DC−DCコンバータ装置を図1に示すその回路図を参照して以下に説明する。
(回路構成)
1はDC−DCコンバータ、V1は高圧バッテリ、V2は低圧バッテリである。
【0024】
DC−DCコンバータ1において、2はインバータ、3はトランス、41、42は整流部をなす一対のダイオード(整流器)、5は平滑用のチョークコイル、6は平滑コンデンサ、7はコントローラである。
【0025】
トランス3は、フェライト製のコア30、一次コイル31、第一の二次コイル32及び第二の二次コイル33を有している。二次コイル32、33の一端は接地され、他端はダイオード41、42を通じてチョークコイル5に接続されている。
【0026】
インバータ2から出力された高圧交流電圧は、トランス3で降圧される。両二次コイル32、33は異なる半波期間ごとに交互に半波整流電圧をダイオード41、42、チョークコイル5を通じて低圧バッテリV2に出力する。コントローラ7は、低圧バッテリV2の電圧を基準電圧と比較し、その比較結果に基づいて、インバータ2の4つのスイッチング素子(MOSFET又はIGBT)21〜24のPWMデューテイ比を増減し、送出する交流電力をフィードバック制御する。この種のDC−DCコンバータは周知であるので、これ以上の説明は省略し、この実施例の特徴部分を以下に説明する。
【0027】
トランス3のコイル31〜33及びチョークコイル5のコイル52は、ブスバーを巻回して構成されている。チョークコイル5は、フェライト製のコア51にコイル52を巻装して構成されている。
【0028】
81は一次側ブスバー、82は二次側ブスバーである。一次側ブスバー81は、ブスバー811〜814からなる。ブスバー811は一次コイル31の一端とブスバー813とを接続し、ブスバー813は一対のスイッチング素子23、24の接続点(交流出力端)に接続され、ブスバー812は一次コイル31の他端とブスバー813とを接続し、ブスバー814は一対のスイッチング素子21、22の接続点(交流出力端)に接続されている。ブスバー811、812は一次コイル31を延長して構成されている。
【0029】
二次側ブスバー82は、ブスバー821〜826からなる。ブスバー821は二次コイル32の一端とダイオード41のアノードとを接続し、ブスバー822は二次コイル33の一端とダイオード42のアノードとを接続している。ブスバー823はベースプレート51に接続されている。一端がダイオード41、42のカソードに接続されたブスバー824、825の各他端は、チョークコイル5のコイル52を延長して形成されたブスバー824に接続されている。
【0030】
8は、上記した各ブスバーと、コイル31〜33及び52を囲覆、固定する樹脂プレートである。
【0031】
この樹脂プレート8は、開口(孔)81から84を有している。孔81はトランス3のコア32が貫通する孔であり、孔82、83にはダイオード41、42が配置され、孔84はチョークコイル5のコア51が貫通する孔である。
【0032】
したがって、ブスバーを巻回してなるコイル31〜33、52と各ブスバー811〜814、821〜826は、それらのほとんどを囲覆する樹脂プレート8とともに、一つのブスバーサブアセンブリと名付けた部品を構成している。
【0033】
ブスバー814の両端部は樹脂プレート8から突出してスイッチング素子21、22の主電極に接続されている。ブスバー823の先端部は樹脂プレート8から突出して後述するアルミ板製の放熱プレート9に接続されている。コイル52の一端を延長してなるブスバー827は樹脂プレート8から突出して、平滑コンデンサ6に接続されている。
【0034】
ブスバー821、822の出力側の端部は孔82、83に突出してダイオード41、42のアノードに接続されている。ブスバー824、825の一端部は孔82、83に突出してダイオード41、42のカソードに接続されている。
【0035】
このDC−DCコンバータの縦断面を図2に示す。
【0036】
アルミ板製の放熱プレート9の上面には樹脂プレート8の下面が密着している。各ブスバーは樹脂プレート8の内部において、できるだけ樹脂プレート8の下面に近接配置されて、各ブスバーから放熱プレート9への放熱性の向上を図っている。
【0037】
トランス3のコア30は、図2に示すように、断面E字形の下側コア部301と、上側コア部302を接着してなる。下側コア部301は、放熱プレート9の浅い凹部に着座した底板部と、この底板部から上方に突出する3本の支柱部とからなる。中央の支柱部には、ブスバーを巻回してなる一次コイル31及び二つの二次コイル32、33が巻装されている。なお、これら一次コイル31及び二つの二次コイル32、33の各ターンは互いに所定間隔を隔てて配置され、各ターン間には樹脂プレート8の樹脂が充填されているが、図2ではその詳細図示を省略する。
【0038】
樹脂プレート8のトランス3のコイル31〜33内蔵部分近傍を図3に示す。81a、81b、81cはE字形の下側コア部301の上記3本の支柱部が上下に貫通する孔であり、これら孔81a、81b、81cは、図1に示すコア貫通孔81を構成している。
【0039】
チョークコイル5のコア51も、図2に示すように、断面E字形の下側コア511と、上側コア部512とを接着してなる。下側コア部511は、放熱プレート9の浅い凹部に着座した底板部と、この底板部から上方に突出する3本の支柱部とからなる。中央の支柱部には、ブスバーを巻回してなるコイル52が巻装されている。トランス3と同様に、コイル52の各ターンは互いに所定間隔を隔てて配置され、各ターン間には樹脂プレート8の樹脂が充填されているが、図2ではその詳細図示を省略する。樹脂プレート8のチョークコイル5内蔵部分近傍を図4に示す。
【0040】
図1、図2では図示を省略したが、樹脂プレート8以外の放熱プレート9の上方には、プリント基板が配置され、このプリント基板には制御部7をなすICやその他の小回路部品が実装されている。
【0041】
(変形態様)
変形態様を図5に示す。この態様は、図1において、ダイオード41、42に通電方向を逆に配置したものであり、樹脂プレート8がコイル31〜33、コイル52及び各ブスバーを囲覆する点、樹脂プレート8の底面を放熱プレート9の上面に密着する点については、実施例1と同じである。本態様によれば、二次側ブスバーの構造を簡素化することができる。
【0042】
なお、上記樹脂プレート8を含むブスバーサブアセンブリは樹脂インサート成形により形成され、放熱プレート9にネジにより締結される。
【0043】
【実施例2】
実施例2を図6を参照して以下に説明する。図6は、樹脂プレート8のチョークコイル近傍を示す縦断面図である。
【0044】
この実施例の特徴は、実施例1で説明した樹脂プレート8が、ブスバーやコイルを囲覆する厚い主部8aの側端縁から放熱プレート9の上面に平行に薄い配線基板部8bをもつ点にある。すなわち、この実施例では、樹脂プレート8は、従来のプリント基板を兼ねる。
【0045】
配線基板部8bにおいて、インサート成形時に、回路部品10、11のリード端子を挿入するリード孔が形成され、回路部品10、11のリード端子が挿入されてはんだ付けされる。
【0046】
配線基板部8bの上面又は下面には銅箔をパターニングした一体の導体パターンが貼着され、貼着後にこの導体パターンの連結部分が配線基板部8bとともにパンチにより切除されて、配線基板部8b上に必要数の導体パターンが必要形状に配置される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1の車両用降圧型DC−DCコンバータ装置を示す回路図である。
【図2】 図1の縦断面図である。
【図3】 図2の部分平面図である。
【図4】 図1の縦断面図である。
【図5】 図1の変形態様を示す回路図である。
【図6】 実施例2を示す縦断面図である。
【図7】 従来のDC−DCコンバータを示す模式斜視図である。
【符号の説明】
2 インバータ
3 トランス
41、42 ダイオード(整流器)
5 チョークコイル
Claims (7)
- 金属板状の放熱プレート、
入力直流電力を交流電力に変換する複数のスイッチング素子を有するインバータ、
コアに巻装された一次コイル及び二次コイルを有して前記交流電力の電圧を変換するトランス、
前記トランスの出力電力を整流する整流器、
コアに巻装されたコイルを有して前記整流器の出力電力を平滑するチョークコイル、
前記スイッチング素子を制御する制御部、
前記インバータの一対の出力端子と前記一次コイルの両端とを個別に接続する一次側ブスバー、及び、
前記二次コイルと前記整流器又は前記チョークコイルとを接続する二次側ブスバー、
を備えるDC−DCコンバータにおいて、
前記各コイル及び前記両ブスバーのほとんどを囲覆する樹脂成形品からなる樹脂プレートを有し、
前記樹脂プレートの底面は、前記放熱プレートの表面に密着して前記放熱プレートに固定され、前記樹脂プレートは、前記各コイル及び前記両ブスバーの熱を前記放熱プレートに固体伝熱により放熱することを特徴とするDC−DCコンバータ。 - 請求項1記載のDC−DCコンバータにおいて、
前記各コイルの各ターンは、裸のブスバーにより形成され、前記樹脂プレートは、前記各ターン間の電気絶縁材として機能することを特徴とするDC−DCコンバータ。 - 請求項1記載のDC−DCコンバータにおいて、
前記ブスバーは、前記コイルと同一の導体片により形成されていることを特徴とするDC−DCコンバータ。 - 請求項1乃至3のいずれか記載のDC−DCコンバータにおいて、
前記コアは、
底面が前記放熱プレートの表面に密着する基部と、前記基部から前記樹脂プレートのコア貫通孔を貫通して突出する複数の柱部とを有する下側コア部と、
前記各柱部の頂面に接して前記下側コア部とともに閉磁気回路を構成する上側コア部と、
からなることを特徴とするDC−DCコンバータ。 - 請求項4記載のDC−DCコンバータにおいて、
前記樹脂プレートは、前記制御部及び小電流回路部品が上面に実装される薄平板状の回路実装基板部を一体に又は分離可能に支持していることを特徴とするDC−DCコンバータ。 - 請求項5記載のDC−DCコンバータにおいて、
前記回路実装基板部の前記上面は、前記樹脂プレートの他の部分の上面に対して平坦に形成されていることを特徴とするDC−DCコンバータ。 - 請求項1乃至6のいずれか記載のDC−DCコンバータの製造方法において、
前記両コイル、前記チョークコイル、前記両ブスバーは、インサート成形されて前記樹脂プレートに埋設されることを特徴とするDC−DCコンバータの製造方法。
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