上述したOSDA装置は、ウェハの広範囲にわたって表面近傍欠陥の数や分布を短時間に検出することは可能であるが、欠陥の種類までは明らかにできない。
また、注目する所望の欠陥について電子顕微鏡を用いて詳細に解析しようとしても、以下の問題点のために所望の欠陥を的確に解析することは困難であった。
(1)欠陥種同定の問題
OSDA装置によれば短時間にウェハの広範囲にわたって表面近傍欠陥の数や分布などの情報が得られるものの、欠陥の種類や形状までは同定できない。そのため、複数種ある欠陥のうち特定の欠陥種についての発生原因の追及や、それらを低減させるための対策が打てないという問題点を抱えている。
(2)透過型電子顕微鏡(TEM)試料の作製上の問題
OSDA装置による計測の空間分解能が10μm程度であるため、OSDA装置によって検出された欠陥を高分解能のTEMで解析しようとしても、サブμmの大きさの注目する表面近傍欠陥の位置をうまく特定することができない。特にOSDAで評価するウェハ表面は何ら印やパターンのない平滑面であるため、OSDAによって欠陥のおおよその位置が明らかになっても、TEM試料にするための手がかりがない。
また、ウェハ表面に平行な薄片をTEMで観察する従来の平面TEM観察法は、観察可能な面積が広いので、所望の欠陥部分を観察視野内に捉えうる確率は高くなるが、平面方向からのみの観察となるため、表面近傍欠陥を角度を変えて観察することができない。例えば断面方向からの形状観察ができれば、欠陥種を的確かつ正確に判断できるが、断面試料を作製する方法がない。
つまり従来技術では、特定の表面近傍欠陥を含む平面TEM試料を作製して、TEMもしくはSTEM観察することが、表面近傍欠陥を解析する上で有効な方法となるが、欠陥位置を正確に捉えた平面TEM試料を作製する方法、また、平面TEM観察で得られた欠陥について断面観察もできる試料の作製方法がなかった。
このような問題点も含んで、OSDA法によって短時間に得られた欠陥位置情報を利用して、特定位置の所望の欠陥について欠陥種同定ができる試料作製方法および試料作製装置が望まれていた。
上述の諸課題に鑑み、本発明の第1の目的は、ウェハの表面近傍欠陥検査で検出した表面近傍欠陥のうち、注目する欠陥を容易に観察もしくは解析できる試料作製方法を提供することにある。また、第2の目的は、上記第1の目的を実現する試料作製装置を提供することにある。
上記第1の目的である欠陥解析方法を実現するために、本発明においては次の構成からなる方法または装置が提供される。
(1)ウェハの表面近傍欠陥を検出する欠陥検出工程と、上記欠陥検出工程によって検出した表面近傍欠陥のうち所望の表面近傍欠陥の近傍に識別用のマークを施すマーキング工程とを含む試料作成方法。
(2)ウェハの表面近傍欠陥を検出して、上記表面近傍欠陥の座標情報を記憶する欠陥検出工程と、上記座標情報をもとに所望の表面近傍欠陥を識別するマークを施すマーキング工程と、上記マークをもとに上記所望の表面近傍欠陥に対して観察または計測または分析のうちのいずれかを施すのに適した試験片に加工する加工工程とを含む試料作製方法を用いることにより、ウェハ表面近傍欠陥のうち注目する欠陥を確実に捉えて形状観察できる試料を作製する。
(3)上記(1)または(2)における上記欠陥検出工程は、上記ウェハ表面の広範囲に、かつ上記ウェハに対して相対的にレーザ光を走査し、上記ウェハ表面近傍から発生する散乱光を受光して上記表面近傍欠陥の存在位置を検出する工程である。
(4)上記(3)の工程は、波長の異なる複数本のレーザ光を上記ウェハに対して相対的に走査して、上記ウェハの表面近傍から発生する散乱光によって上記表面近傍欠陥の存在位置を検出する工程とすることで、ウェハ表面近傍欠陥をより確実に検出することができる。
(5)上記(1)または(2)における上記マーキング工程は、レーザ光、イオンビーム、電子ビーム、メカニカルプローブのうちの少なくともいずれかを用いて行う。
(6)特に上記(5)において、イオンビームのうち集束イオンビームまたは投射イオンビームの照射による描画もしくは加工のいずれかによって上記ウェハの表面の一部に凹部もしくは損傷領域を形成する加工か、または(7)電子ビーム照射によって試料面に上に上記試料周辺の雰囲気を構成する成分を含む付着物を形成する加工か、または(8)先鋭化した金属プローブもしくはダイヤモンドによる機械的な凹部もしくは損傷領域を形成する加工を含む工程とすることによって、所望の表面近傍欠陥を識別するためのマークを確実に施すことができる。
(9)上記(2)における試験片は、透過型電子顕微鏡または走査型透過電子顕微鏡による観察または計測のための試験片として加工することで、検出した表面近傍欠陥の同定を確実にできる。(10)特に上記(9)において、上記試験片における観察または計測する面を、上記ウェハの表面に対して垂直にするか、もしくは(11)観察または計測する面を、上記ウェハの表面に対して平行にすることで、注目する表面近傍欠陥を多面的に観察することができる。さらに、(12)上記(10)における上記試験片をダイシング装置による上記ウェハの切断加工と、集束イオンビームによる加工によって作製すると所望の試験片が得られる。
(13)上記(2)における加工工程は、上記マークを基準にして上記所望の表面近傍欠陥を含む微小試料を集束イオンビームによって上記ウェハから摘出する摘出工程と、上記微小試料を解析用試料ホルダに移送して固定する固定工程と、上記微小試料に対してさらに上記集束イオンビームによる加工を施して解析しやすい形状にする仕上げ工程とを含む工程であることによって、ウェハを割断することなく注目する表面近傍欠陥を含む試料片を作製することができる。
(14)上記(2)における加工工程は、上記マークを基準にして上記ウェハを切断もしくは劈開して上記マークを含む小片とする工程と、上記小片についてウェハ裏面から研磨またはイオンシンニングのうちの少なくともいずれかを施してウェハ表面に略平行な薄片部を有する薄片試料を作製する薄片化工程を含む工程であれば、注目する表面近傍欠陥を含む平面試料片を作製することができる。
(15)上記(14)において、上記薄片化工程の後、さらに上記薄片部を透過型電子顕微鏡または走査型透過電子顕微鏡の観察によって上記マークと上記所望の表面近傍欠陥の相対位置関係を求める工程と、上記位置関係をもとに上記薄片部のうち上記表面近傍欠陥を含む一部を摘出して解析のための試料ホルダに固定する工程と、上記表面近傍欠陥を含んで上記ウェハ面に略垂直な薄片に加工する断面加工工程とを含むことで、注目する表面近傍欠陥を確実に含む断面試料片を作製することができる。
(16)上記(2)の加工工程を、上記マークを基準にして上記ウェハを切断もしくは劈開して上記マークを含む小片とし、上記小片についてウェハ裏面から研磨またはイオンシンニングのうちの少なくともいずれかを施してウェハ面に略平行な薄片部を有する薄片試料を作製する工程と、上記薄片部を透過型電子顕微鏡または走査型透過電子顕微鏡の観察によって上記マークと上記所望の表面近傍欠陥の相対位置関係を求める工程と、上記薄片試料に対してさらに集束イオンビームまたは電子ビームによって所望の表面近傍欠陥の位置を詳細に識別する第2のマークを施す第2マーキング工程を伴う工程とすることで、注目する表面近傍欠陥を含む試料片をより正確に作製することができる。
(17)上記(16)の第2マーキング工程は、パルスレーザ、集束イオンビーム、投射イオンビーム、電子ビームのうちの少なくともいずれかを用いる工程であれば微細な箇所に確実にマーキングを施すことができる。
(18)上記(16)または(17)における第2のマークが、直線状または格子点状に配置したドットもしくは線分、記号の集合のいずれかであると、試料にもともと存在する欠陥を識別しやすくする上で好適である。
(19)上記(16)から(18)のいずれかにおいて、第2のマークを施した上記薄片試料を、透過型電子顕微鏡または走査型透過電子顕微鏡で観察して、所望の上記表面近傍欠陥と上記第2のマークとの相対位置関係を明らかにして、上記表面近傍欠陥の存在位置を特定する位置決定工程を伴うことで、所望の箇所を的確に見分けられるマークを付けることができる。
(20)上記(19)において、上記位置決定工程の後に、上記所望の表面近傍欠陥を含んで、上記表面近傍欠陥を断面方向から透過型電子顕微鏡または走査型透過電子顕微鏡で観察するための断面薄片試料に加工する断面薄片化工程を有する試料作製方法によって、注目する表面近傍欠陥を確実に含む試料片を作製することができる。
(21)また、半導体ウェハにおける表面近傍欠陥の解析方法は、(a)レーザビーム照射によってウェハの表面近傍欠陥を検出する欠陥検出工程と、(b)上記表面近傍欠陥の座標情報を記憶する記憶工程と、(c)上記表面近傍欠陥のうち注目する表面近傍欠陥の近傍に集束イオンビーム(FIB)照射によってマークを付けるマーキング工程と、(d)上記ウェハを上記注目する欠陥と上記マークを含んだ小片に割断もしくは切断する工程と、(e)上記小片を裏面から薄片化して薄片試料に加工する工程と、(f)上記薄片試料を上記マークを基準に上記注目する表面近傍欠陥を透過型電子顕微鏡または走査型透過電子顕微鏡観察する観察工程の手順に従う方法によって、半導体ウェハにおける表面近傍欠陥を同定するための試料作製が実現できる。
(22)上記(21)において、さらに、(a)上記透過型電子顕微鏡または走査型透過電子顕微鏡観察による観察結果をもとに集束イオンビームによるさらに詳細な第2のマークを施す第2マーキング工程と、(b)上記第2のマークを施した試料を透過型電子顕微鏡または走査型透過電子顕微鏡観察する観察工程と、c)上記透過型電子顕微鏡または走査型透過電子顕微鏡観察をもとに上記注目する欠陥を含む観察領域を決定する工程と、(d)上記決定した観察領域を含む微小試料を摘出する工程と、(e)上記微小試料をFIBによって上記所望の表面近傍欠陥を含む断面薄片試料に加工する断面薄片化工程と、(f)上記断面薄片試料を透過型電子顕微鏡または走査型透過電子顕微鏡観察する工程、の手順を追加する方法によっても半導体ウェハにおける表面近傍欠陥を同定するための試料作製が実現できる。
(23)上記(22)または(23)において、上記欠陥検出工程によって得た欠陥のうち、所望の欠陥について上記ウェハの表面に垂直方向と断面方向から透過型電子顕微鏡または走査型透過電子顕微鏡によって観察し、上記表面近傍欠陥を解析する表面近傍欠陥の解析方法によって注目する表面近傍欠陥を多面的に観察することができる。
また、本発明によれば、表面近傍欠陥の少ない良品のウェハを使って歩留よく半導体装置を製造するために、あらかじめ良品の半導体ウェハを選別する次のようなウェハの管理方法が可能となる。
(24)半導体ウェハの表面近傍欠陥の検出によって得られた表面近傍欠陥の位置、数、分布、種類のうちの少なくともいずれかと、上記表面近傍欠陥の電子顕微鏡観察による形状観察結果と、上記ウェハに形成された半導体装置の動作不良の発生位置、発生数、不良の形態のうちの少なくともいずれかとの相関関係をデータベース化しておき、半導体装置の製造時に半導体ウェハの表面近傍欠陥の検出を定期的に行なって得られる検出結果と上記データベースに基づいて、上記半導体ウェハのスクリーニングを行なう半導体装置製造方法。
上記の試料作製方法または上記表面近簿欠陥の解析方法、さらには上記ウェハの管理方法あるいは半導体装置の製造方法を実現するための試料作製装置は、以下のような構成を有する。
(25)ウェハの表面近傍欠陥を検出する欠陥検出部と、上記表面近傍欠陥のうち所望の欠陥の近傍にマークを付けるマーキング部とを少なくとも有する試料作製装置。
(26)ウェハの表面近傍欠陥を検出する欠陥検出部と、上記表面近傍欠陥のうち所望の表面近傍欠陥の近傍にマークを付けるマーキング部と、上記欠陥検出部によって検出した欠陥のうち少なくとも注目する欠陥を含む微小試料を摘出して分析装置または観察装置または計測装置のうちの少なくともいずれかに搭載するのに適する形状に加工する試料加工部とを少なくとも有する試料作製装置。
(27)ウェハの表面近傍欠陥を検出する欠陥検出部と、上記表面近傍欠陥のうち所望の欠陥の近傍にマークを付けるとともに、上記マークをもとにして上記表面近傍欠陥のうち所望の表面近傍欠陥を含む微小試料を摘出して、分析装置または観察装置または計測装置のうちの少なくともいずれかに適する形状の試料片に加工する試料加工部を有する試料作製装置。
(28)上記(26)または(27)の試料加工部は、摘出した上記微小試料を別の部材に移動させる試料移動手段を有する構造とすることで、透過型電子顕微鏡など解析装置専用の試料ホルダに確実にしかも真空雰囲気中で搭載することができる。
(29)上記(25)から(28)のいずれかにおいて、上記欠陥検出部と上記マーキング部、もしくは上記欠陥検出部と上記マーキング部と上記試料加工部、もしくは上記欠陥検出部と上記試料加工部のいずれかの相互間のウェハの出し入れを行なうウェハハンドラを設けた構成または(30)上記(25)から(28)のいずれかにおいて、欠陥検出部と上記マーキング部、もしくは上記欠陥検出部と上記マーキング部と上記試料加工部、もしくは上記欠陥検出部と上記試料加工部の少なくともいずれかの相互間を上記ウェハが移動する搬送路を設けることで、欠陥検査からマーキングまたは試料作製までを効率よく実施できる。
(31)上記(25)から(30)のいずれかにおいて、少なくとも上記欠陥検出部において検出した欠陥の座標情報を記憶する計算処理部を設けることで、マーキング部の位置出しを正確かつ迅速に行うことができる。
(32)上記(25)から(31)のいずれかの上記欠陥検出部は、レーザを発生して上記ウェハに照射するレーザ光照射手段と、上記ウェハからの散乱光を検知する光検知手段とを少なくとも有する構成であるか、または、(33)互いに異なった波長のレーザを発生して上記ウェハに照射する複数のレーザ発生手段と、上記ウェハからの散乱光を波長ごとに検知する複数の光検知手段とを少なくとも有する構成の試料作製装置であると表面近傍欠陥の存在位置を正確に検出できる。
(34)上記(25)から(32)のいずれかのマーキング部は、レーザ光照射光学系、イオンビーム照射光学系、電子ビーム照射光学系、メカニカルプローブのうちの少なくともいずれかを有する構成とすることで、欠陥と明確に区別できるマークを付けることができる。
(35)上記(34)のイオンビーム照射光学系を集束イオンビーム照射手段または投射イオンビーム照射手段のいずれかとする構造とすることで、欠陥と明確に区別できるマークを付けることができる。
(36)ウェハの表面近傍欠陥を検出して検出した欠陥の座標情報を記憶する表面近傍欠陥検出装置と、ウェハから所望の欠陥を含む微小試料片を摘出して、分析装置または観察装置または計測装置のうちの少なくともいずれかに適する形状の試料片に加工する試料作製装置と、欠陥の形状、構造を解析するTEMもしくはSTEMと、ウェハ名称、欠陥座標、欠陥分布、試料片名称、欠陥画像のうちの少なくともいずれかのデータを蓄えたコンピュータとを相互にネットワークによって接続して表面近傍欠陥解析システムを構成することで、表面近傍欠陥を効率よく解析する装置を構成できる。
(37)少なくとも一種類の波長のレーザを発生してウェハに照射するレーザ光照射部と、上記ウェハからの散乱光を検知する光検知部と、上記散乱光の発生した座標情報を記憶する計算処理手段とを少なくとも有する表面近傍欠陥検出装置において、上記ウェハの一部に集束イオンビームを照射する液体金属イオン源または電界電離ガスイオン源を搭載した集束イオンビーム照射手段を有した表面近傍欠陥検出装置によれば、表面近傍欠陥検出装置で欠陥の近傍に確実に正確にマークを施すことができる。
(38)少なくとも一種類の波長のレーザを発生してウェハに照射するレーザ光照射部と、上記ウェハからの散乱光を検知する光検知部と、上記散乱光の発生した座標情報を記憶する計算処理手段と、所望の上記散乱光の発生部の上記座標情報をもとに発光部の近傍にレーザマークを施すレーザマーク用のレーザ光照射手段を有する表面近傍欠陥検出装置によって実現できる。
(39)ウェハの一部にイオンビームを照射するイオンビーム装置において、少なくとも一種類の波長のレーザを発生して上記ウェハに照射するレーザ光照射部と、上記ウェハからの散乱光を検知する光検知手段と、散乱光の発生した座標情報を記憶する計算処理手段とを少なくとも有する表面近傍欠陥検出部を有した構成の集束イオンビーム装置によって検出したウェハ表面近傍欠陥の近傍に確実にマーキングすることができる。
本発明によれば、ウェハの広範囲にわたって検出した表面近傍欠陥に、容易にマーキングすることができ、かつその表面近傍欠陥を含んだ部分を容易に摘出し、薄片化できる。このため、注目した表面近傍欠陥を短時間で詳細に解析できる。
本発明による試料作製方法は、ウェハの表面近傍欠陥を検出する欠陥検出工程と、上記欠陥検出工程によって検出した表面近傍欠陥のうち所望の表面近傍欠陥の近傍に識別用のマークを施すマーキング工程とを含む方法とする。また、この試料作製方法を実現する装置は、ウェハの表面近傍欠陥を検出する欠陥検出部と、上記表面近傍欠陥のうち所望の表面近傍欠陥の近傍にマークを付けるマーキング部とを少なくとも有する構成とする。
<実施例1>
本実施例では、特に表面近傍欠陥検出部によって検出したウェハの欠陥のうち、所望の欠陥をウェハ面からTEM観察するための試料、いわゆる平面TEM試料の試料作製方法について説明する。
平面TEM試料を作製するためには、まず、欠陥を識別するマークを付けることが重要である。加工前のウェハ表面は、目印になるような配線などのパターンがない平滑面であるため、注目する欠陥を識別できる的確なマークを付することは非常に難しい。そこで、本方法では以下のようなマーキング工程を含む試料作製方法を用いる。
まず、欠陥検出部によってウェハの表面近傍欠陥の検出を行なって、得られた表面近傍欠陥の少なくとも座標情報、分布パターンなどを計算処理部に記憶させる。この時の欠陥の座標はウェハに事前に設けた基準位置を原点としている。その後、計測したウェハをマーキング部に移設して先の欠陥の座標情報をもとにマーキングを行なう。
表面近傍欠陥検出の対象とするウェハは半導体製造の加工前で、何らパターンがなく平滑である。電子ビーム走査による二次電子像(Scanning Electron Microscopy:以下、SEM像)または、FIB走査によって得られた二次電子像(Scanning Ion Microscopy:以下、SIM像と略記)では、試料の表面形状を観察できるが、試料内部を見ることができない。また、ウェハ表面に目印になるような特異パターンがない試料に対して注目する欠陥の位置特定は困難である。
つまり、表面近傍欠陥の近傍にマーキングしようとしてもSEM像やSIM像からは正確な位置の判断がつかない。また、欠陥の寸法が0.1μm程度と小さく、手作業でのメカニカルなポインティングによるマーキングでは位置出しの精度が全くない。一方、FIB走査での観察は高倍率で観察でき、その場で加工が可能なことから、欠陥座標が明らかであればマーキングの手段としてFIBを用いることができる。
マーキング部は、ウェハを載置する試料ステージを有し、ウェハの基準位置を原点にして指示した座標を視野内に出せるように上記試料ステージを移動できる。欠陥検出時とマーキング時とにおいて、ウェハ上の同じ基準位置を原点に用いているが、欠陥検出時の座標の設定の仕方と、マーキング部の座標設定の仕方が異なる場合でも、事前に相互の座標系統一のための座標変換方法を決めて計算処理機に組み込んでおくことにより、相互の座標情報は共通化できる。
図3はウェハ5の表面にFIBによるマークを施した例である。図3(a)はマークをメッシュ状に配置した例であり、マーク41aの間隔は約5μm、線幅約0.1μmで、縦横10本で構成した(図3(a)はその一部)。図3(b)は格子点状のドット41bによるマーキング例である。マーキングのパタンは、他に図3(c)のような短い線分41cでもよいし、図3(d)のような適宜の記号41dの集合であってもよい。
SIM像観察の際には、注目する表面近傍欠陥42Aは観察するできないが、上記マーク近傍の領域42の内部には存在する。この領域42は表面近傍欠陥検査部の空間分解能で決まる領域である。試料表面に施すマーク41は要するに人工的な形状や配置であれば、欠陥と明確に区別できる。
なお、マークは所定の座標に微小電流FIBで形成する。FIBの電流が大きいと試料の破損領域が大きくなり、この後ウェハを薄片に加工する際、試料に大きな損傷を与え、本来観察すべき表面近傍欠陥42Aの原型を損ねる可能性が高いからである。この実施例に示した程度の領域42であると、低倍率のTEM観察によって、マーク41と注目する表面近傍欠陥42Aを同一視野で観察することができる。マーク41は低電流のFIBでウェハ5表面に軽い損傷を与える程度の浅い加工でも、TEM観察で十分識別できる。
また、図4のように、光学顕微鏡で識別可能な大きめの大マーク43も作る。
図4は光学顕微鏡用の大マーク43と欠陥との相対位置を示すためのマーク41の位置関係の例を示す。この大マーク43はウェハ5を割断して小片5Aとする際の目印となるもので、数10μm程度の大きさでよい。また、大マーク43自体は、試料に適度の深さの凹部を形成するだけで光学顕微鏡では光の反射の仕方で明確に確認できる。
次に、このウェハ5をダイヤモンドカッタやダイシングソーなどを利用して上記マーク41と大マーク43を含んで、大マーク43の中間が小片5Aのほぼ中央になるように1mm平方程度に切断する。次いで切断して得た小片5Aを、そのウェハ表面側を接着面にして、研磨治具に固定する。上記研磨治具には種々の形態があるが、基本的にはマイクロメータヘッドなど、μmオーダの寸法が計れる機器が設置された研磨治具を用い、試料の平面性を調節しながら研磨盤に押し当てて裏面から研磨し、厚さ10μm程度の研磨試料を作る。
次いで、研磨治具から外した上記研磨試料を単孔メッシュに固定し、イオンシンニング装置に装着する。イオンシンニングでは、上記単孔メッシュを回転させながら裏面のみにアルゴンイオンを斜め照射し、上記研磨試料をさらに薄片化する。イオンシンニングは、通常、試料の表裏面からイオン照射を行なうが、本例は表面近傍欠陥を観察することが目的であるため、表面側からのイオン照射は行なわない。最終的に上記マーク41がある中央付近を100nm程度以下まで薄くして平面TEM試料5Bとする。
この平面TEM試料5Bは単孔メッシュと共にTEMステージに装着してTEM解析する。平面TEM試料5Bの観察では低倍率で数10μm平方の広領域を一度に観察でき、先にFIB加工したマーク41は人工的な形状と配列であるため容易に探し出すことができる。このマーク41を基準にして注目する表面近傍欠陥42Aを特定し、平面方向から高倍率でTEM観察できる。
このように、本発明による試料作製方法は、欠陥検出によって得た座標もしくはその近傍にFIBによってマークを施し、そのマークを基準に注目する欠陥を間違いなく探し出せる試料作製方法である。
なお、本実施例では、マークを付ける方法としてFIBを用いた例を示したが、パルスレーザ光照射によるウェハ表面のアブレーションを利用したマーキングでもよい。さらに、電子ビーム照射によって試料近傍の雰囲気に含まれる例えば炭素などの不純物をウェハ上に堆積させてマークとしてもよいし、また、高精度に駆動するメカニカルな金属プローブやダイヤモンドプローブによる押し当てや引っ掻きなどによってマークとしてもよい。いずれの方法もTEM観察では欠陥との区別がつくので好適である。このように本発明の試料作製方法によって、表面近傍欠陥検出によって得られた欠陥のうち、注目する欠陥を平面方向から間違いなく観察することができるため、欠陥の解析を効率よく間違いなく行なうことができる。
なお、上記実施例では欠陥検出部とマーキング部を別々に構成して、対象とする試料を欠陥検出部からマーキング部に移設する例を説明したが、装置構成として欠陥検出部とマーキング部を別にする構成に限定されることはなく、欠陥検出を行なった場所でマーキングを行なってもよい。
<実施例2>
本実施例は、実施例1で作製した平面TEM試料をTEM観察して検出した注目する表面近傍欠陥について、さらに断面方向からもTEM観察するための試料作製方法である。この方法については、上記実施例1に継続する工程として説明する。
図5(a)は平面TEM試料5Bの平面TEM像44であり、マーク41cと表面近傍欠陥42Aが確認でき、マーク41cと表面近傍欠陥42Aのおおよその相対位置関係がわかる。まず、上記の注目する表面近傍欠陥42Aを含む平面TEM像44を低倍率像から高倍率像まで複数の領域を計算処理機に記憶させるか、写真など記録紙に残す。この時、基準のマーク41cも表面近傍欠陥42Aと同じ画面内に入るようにしておくことが重要である。好ましくは複数個のマーク41cが一緒に画像内に入っていると、注目する表面近傍欠陥42Aの位置出しが非常に容易になる。
次に、TEM観察した平面TEM試料5Bをメッシュに搭載したまま試料作製装置に移動させ、平面TEM試料5Bから注目する表面近傍欠陥42Aを含むμmレベルの微小試料を摘出する操作を行なう。平面TEM試料5Bから注目する欠陥を含む微小試料を摘出するには、注目部の位置を正確に把握しなければならない。
先に記したマークでは、マークの間隔が大きく、注目する欠陥との位置関係が正確に把握できなので、欠陥の位置を正確に識別するために、図5(b)のように、平面TEM画像をもとに再度さらに細かなマーキングを施す(以下、ここでのマークを第2マーク46と呼ぶ)。
第2マーク46の形状は図3に例示したものと同様のパターンでよいが、全体寸法をさらに小さくする。具体的な寸法例として、先のマーク41cよりはるかに小さい幅約0.05μm、長さ0.3μmの短い線分を0.5μm間隔で4辺に配置する。形成する第2マーク46をなるべく小さくするためには、FIBの電流を極力小さく、照射時間も極力短くする。マークは薄片を貫通しなくても、人工的な配置をした損傷領域として残り、人工的形状のため欠陥とは容易に区別ができる。
このような第2マーク46を施した平面TEM試料5Bを再度TEMで平面観察すると、第5(b)のように、上記第2マーク46との相対位置関係から表面近傍欠陥42Aの位置がさらに詳しくわかる。このTEM像を計算処理機に記憶させるか写真など記録紙に残し、これをもとに、マーキング部で注目する表面近傍欠陥42Aを含む微小領域を平面TEM試料から摘出して、表面近傍欠陥42Aを含む垂直方向の薄片に加工して断面観察用のTEM試料を形成できる。
以下に、注目する表面近傍欠陥42Aを含む試料5Cの摘出について図6を用いて詳しく説明する。
まず、先の第2マーク46と注目する表面近傍欠陥42Aが同一視野にあるTEM像をもとに、表面近傍欠陥42Aの位置が表面観察で認別するための位置特定用マークキング61を施す。具体的には図6(b)のように、表面近傍欠陥42Aを挟むような配置にFIB62で加工を施す。位置特定用マーク61はさらに精密な加工位置合わせを実現するために線幅の細いマーク部61’も有している。本実施例では、観察領域を挟んで5μmと1μm間隔で線分マークを4個、FIB照射によって施した。
次に、図6(c)に示すように上記2個の位置特定用マーク61を結ぶ線分を覆うように試料保護ための保護膜63を形成する。保護膜63はデポジション用ガスを供給しつつFIB62を矩型に走査することで走査領域に金属膜を形成することによってなされる。本実施例では幅約2μm、長さ14μm、高さ1μm程度のタングステン膜を形成した。ただし、保護膜63はタングステンに限ることはなく、炭素膜やプラチナ膜、シリコン膜などで形成してもよい。
次に微小試料の摘出工程に入る。図6(d)のように、保護膜63を囲むように、FIB62によってコの字状に切り込みを入れることでカンチレバー65ができる。寸法例として、おおよそ幅4μm、長さ18μm、試料厚さ0.1μmである。
次に、図6(e)のように、カンチレバー65にプローブ66を接触させる。
プローブ66は微小試料の移送手段の先端に固定したもので、移送手段の駆動部(図示せず)には、不注意なプローブ66の押し付けによるカンチレバー65やプローブ66の破損を避けるために、プローブ66が試料に接触した時点で+Z方向駆動を停止させる機能を有している。プローブ66の接触後、プローブ66をカンチレバー65に固定するために、プローブ66がカンチレバー65に接触した状態でプローブ66先端を含む約2μm平方の領域にデポジション膜67を形成する。デポジション膜67は保護膜63と同じ方法で形成し、同じ成分でよい。こうようにしてプローブ66とカンチレバー65(摘出すべき試料)とが接続できる(図6(f))。
その後、図6(g)のようにカンチレバー65の支持部68にFIB62を照射してスパッタ加工し、カンチレバー65を切断する。切断後、プローブ66を徐々に上昇させると、図6(h)のように微小薄片試料5Cを元の平面TEM試料5Bから分離摘出できる。
以下は図7を用いて欠陥42Aを断面方向から見るための断面TEM試料を作る加工手順を説明する。
まず、図7(a)のように摘出した微小薄片試料5Cを平面TEM試料5Bから上昇した状態で停止させ、試料ステージを試料ホルダ70が微小薄片試料5Cの真下に来るように相対的に移動させ、次いで(図7(b)のようにプローブ66を降下させて微小薄片試料5Cを試料ホルダ70に接触させる。微小薄片試料5Cが試料ホルダ70に接触した時、プローブ66の降下は自動停止される。
次いで、微小薄片試料5Cを試料ホルダ70に固定するためにデポジション膜71を微小薄片試料5Cと試料ホルダ70にまたがるように形成する。本実施例でのデポジション膜71は、微小薄片試料5Cの長手方向の端辺に2μm平方程度の大きさである(図7(c))。その後、デポジション膜67にFIB62照射して微小薄片試料5Cからプローブ66を分離し、プローブ66破損を防止するためにプローブ66をさらに試料ホルダ70から遠避けて待機させる。さらに微小薄片試料5Cを試料ホルダ70に確実に固定するために、微小薄片試料70の長手方向の他端辺にも2μm平方程度のデポジション膜71’を形成する(図7(d))。
次に、試料ホルダ70に固定された微小薄片試料5Cに対してFIB62を照射して、試料ホルダ70とともに側面を除去して凹部72を形成する。本実施例では凹部72の間口は約10μm、奥行約2μm、深さは約3μmとした(図7(e))。さらに、反対側の側面に、中央部に厚さが約0.1μmの薄壁が残るように凹部72’を加工する(図7(f))。
図7(g)が完成した薄片試料の断面試料で、中央の薄壁部73の上部74が注目する表面近傍欠陥42A(図示せず)が含まれた微小薄片試料5Cの断面試料で、高さ約0.1μm、幅約0.1μm、長さ約10μmの細線状である。参考のために、TEM観察時の入射する電子線の方向を矢印75で示した。このように、電子線は微小薄片試料の表面にほぼ平行に入射する。
このように、図6と図7で示した手順によって、表面近傍欠陥42Aを断面方向から観察するための試料を作成できた。本実施例の方法によると高精度に欠陥部位の位置出しができる。しかもこれらの工程をすべて真空雰囲気中で行なえるため、不要な微粉末の付着などが殆どなく加工できる。
このように作製した上記断面試料をTEMに導入する。その後のTEM観察技術についてはよく知られているのでここでは説明を省略する。
このように平面TEM像と注目部の断面TEM観察で得られた断面TEM像とを複合的に解釈することで、注目する表面近傍欠陥42Aの立体構造を推測することができる。例えば本実施例の場合、欠陥像が平面TEM観察では正方形で、断面TEM観察では菱形であったとすると、両TEM像を複合的に解釈して欠陥は八面体構造であると解釈できる。このように、平面のみ、もしくは断面のみのTEM観察では解釈のつきにくい欠陥構造であっても、同一欠陥を90°異なった方向から観察することによって、構造を正確に解釈できるようになった。
なお、マーキング方法については、FIB以外にも、予めマーク形状の開口パターンを設けたステンシルマスクを用い、投射イオンビームによって複数のマークパターンを一気に形成してもよい。特に投射イオンビームでは観察視野の大きさに関わらず一定のマークパターンを付けることができるので、高倍率の視野についてもマークの数や配置が相似形のマーキングを行なうことができる。
<実施例3>
本実施例は、上記試料作製方法を実現するための試料作製装置に関する実施例である。
図1は、本発明による試料作製装置の一実施例で、全体の概略構成を説明するための平面図である。試料作製装置1は、欠陥検出部2とマーキング部3がウェハハンドリング部4を介して連結された構造である。マーキング部3はウェハ5を真空容器内に導入するためのロードロック室16を備える。ウェハハンドリング部4はウェハ5を欠陥検出部2とマーキング部3へに出し入れするための機構であり、伸縮アーム4Aと回転機構4Bなどを含む構成である。
ウェハ5の移動は通常、ウェハトレイ6に設置した状態で行なう。欠陥検出部2で注目すべき欠陥が検出された場合に、ウェハ5を欠陥検出部2からマーキング部3に移送したり、また、マーキング部3からウェハ5を搬出し、再度欠陥検出部2で検査することもできる。欠陥検出部2とマーキング部3の制御ならびにデータの収集や処理は計算処理部15で信号線15A、15Bを介して行なう。
欠陥検出部2の詳細な構成を図8で説明する。欠陥検出部2はウェハ5表面の表面近傍欠陥を計測する部分で、対象とするウェハ5はウェハトレイ6に設置し固定できる。このウェハトレイ6ごと高速に回転および並進運動ができる試料ステージ7に設置する。
ウェハ5に照射するレーザ光8A、8Bは、半導体励起YAGレーザ9A(波長532nm)と半導体レーザ9B(波長810nm)から出射される。各々のレーザビームの経路中にはビーム平行化用レンズ10A、10B、反射板11A、11’A、11B、11’B等が配置され、ウェハ5に対して入射角75°で集束入射できる。レーザ光8A、8Bは、ウェハ5を回転させることで、ウェハ表面をスパイラル状に走査する。ビーム径はおよそ5μm×25μmである。
装置構成としてさらに、表面近傍欠陥があればレーザ光の走査に伴って欠陥からパルス的に発生する散乱光12を集める集光レンズ13、反射板11C,11’C、波長別に散乱光12A、12Bを検出する光電子増倍管14A、14B、散乱光が発生した位置と二波長の信号強度を記憶させる計算処理機15などを有している。このような構成で得られたデータによって、欠陥のウェハ面内分布、欠陥の深さ位置分布、欠陥の粒径分布などを求めることができる。
一方、マーキング部3は、ウェハ5を載置したウェハトレイ6ごとロードロック室16を介して真空容器17に導入できる構造である(図1参照)。真空容器17にはウェハ5などを観察してマークを付けるFIB照射部18とウェハ5を載置する試料ステージ19、二次電子または二次イオンを検出する二次粒子検出器20を含んでいる。計算処理部15は欠陥検査部2の計算処理部15と兼用で、FIB照射部18、試料ステージ19、二次粒子検出器20などを信号線15Bを介して制御する。
FIB照射部18は、例えば液体金属イオン源、ビーム制限アパチャ、集束レンズ、対物レンズなどから構成され、液体金属イオン源から放出されたイオンビームを10nm程度から数100nm径のFIBに形成する。FIBは偏向器の電圧印加方法により種々の形状に走査でき、局所的な加工ができる。FIB照射時に試料から発生する二次電子または二次イオンを二次粒子検出器20で検出することで、試料のSIM像もしくは二次イオン像をディスプレイに表示でき、顕微鏡としての役割も果たす。上記SIM像は必要に応じて計算処理部15に記憶させる。
計算処理部15は欠陥検出部2で得た欠陥座標の情報を受け取って処理でき、検出した表面近傍欠陥の座標のうち、欠陥の深さや大きさを考慮して、注目する欠陥の座標を指示することで、試料ステージ19が動作し、上記注目する欠陥をFIBの視野内に停止させることができる。また、計算処理部15に事前にマーク形状を記憶させておくことで、マーキングの命令を計算処理部15に与えることにより、瞬時に実施例1で説明したようなマークを付けることができる。
このような試料作製装置1を用いることによって、検出した欠陥のうち注目する欠陥の近傍にマークを付けることができ、マークを付けた試料を解析することによって、注目する欠陥の形態などの詳細を明らかにできる。
なお、本実施例では、マークを付ける手段としてFIB照射部18を設置したが、FIB照射部18のかわりに、試料表面のアブレーションを利用してマーキングを行なうために、エキシマレーザなどのパルスレーザ光照射部あるいは半導体レーザ光照射系を設置してもよいし、試料近傍の雰囲気に含まれる不純物を付着させてマークとするために、電子ビーム照射系を設置してもよい。また、機械的な押し当てや引っ掻きなどによってマークするために高精度で駆動できメカニカルな金属プローブやダイヤモンドプローブを設置してもよい。ただし、メカニカルプローブの場合、顕微手段が必要で、走査型電子顕微鏡などが併用される。
また、FIB照射光学系のかわりに、投射イオンビーム光学系を用いてもよい。
いずれの方法でもTEM観察では欠陥と人工的なマークとの区別がつくので、欠陥の位置を特定し易く好適である。
<実施例4>
図9を用いて欠陥検査部2で検出した欠陥のうち、注目する欠陥を含むμmレベルの微小試料を摘出し、断面方向からTEM観察するための試料に加工する装置を説明する。
図9の試料作製部23は、図1におけるマーキング部3の役割も果たし、マーキング部3の基本構成に微小試料を試料ホルダに移し変える試料移送部24を少なくとも加えた構成で、局所的にデポジション膜を形成するためのガスを供給するデポジション用ガス源25を搭載する場合もある。勿論、試料作製部23は試料に対してマークを付けることも可能である。
試料移送部24を駆動するための試料移送制御部24’、デポジション用ガス源25を駆動するためのデポジション源制御部25’、FIB49を照射するFIB照射部18を動作させるFIB制御部18’や試料ステージ19の位置を制御するためのステージ制御部19’は計算処理部15によって制御する。符号22は試料5の表面状態。計算処理機15の計算結果や各種制御装置への指示、動作状態などの表示部である。
試料ホルダ(図示略)はTEMの試料ステージにサンプルを搭載するための治具で、ウェハトレイ6の一部に着脱可能な構造で、必要に応じて微小試料を搭載した試料ホルダをウェハトレイ6から離脱させてTEMやSEM、その他解析装置に導入できる。本実施例で用いた試料ホルダの寸法は長さ2.6mm、上部幅30μm、下部幅200μm、高さ0.7mm(シリコンウェハ厚)の平板形状で、摘出した微小試料の固定面をシリコンウェハ面または劈開面とすることで、摘出した微小試料を固定面に固着してTEM観察しても固定面の凹凸が電子線照射を阻害することはない。また、試料ホルダの形状や寸法はこれに限ることはないが、固定面をウェハ面もしくはへき開面にすることと固定面幅をできる限り薄くすることが、TEM試料に短時間で加工するためと、TEM観察しやすくするために必要である。
また、ホルダカセット27は上記試料ホルダを搭載する治具であり、ウェハトレイ6に付属して搭載されている。1個のホルダカセット27に搭載する試料ホルダは1個でも複数個でもよく、特に複数個であれは試料ホルダの着脱や管理に便利である。また、ウェハトレイ6に設置するホルダカセット27が複数個であってもよい。例えば1個の試料ホルダに摘出した微小試料を1個搭載するとして、1個のホルダカセット27に10個の試料ホルダが搭載でき、このホルダカセット27がウェハトレイ6に5個搭載されているとすると、1枚のウェハから50個の微小試料を連続的に摘出することができ、種々の条件での表面近傍欠陥を効率よく摘出でき、欠陥の解析を系統立って実施できる。
試料移送部24はXYZの3軸に動く粗動機構部24AとZ方向に微動する微動機構部24Bから構成され、いずれも試料移送制御部24’によって動作する。先端には微小試料を摘出するためのプローブ28が接続されている。
試料移送部24は、ウェハ5が大口径であってもその任意の箇所から素早くサンプリングできるようにするために、移動速度が早くストロークが大きい粗動機構部24Aと、粗動部の移動分解能と同等のストロークを有して高い移動分解能の微動部24Bとで構成し、試料移送部24全体を試料ステージ7と独立して設置して、サンプリング位置の大きな移動は試料ステージ移動に分担させた。
上記粗動機構部24AのXYZ方向の駆動はモータやギヤ、圧電素子などで構成し、数mm程度のストロークで、1μm以下の移動分解能を有している。上記Z方向の微動機構部24Bは、対物レンズと試料との間隔などの機械的制約から、できるだけコンパクトであることや、精密移動することが要求されるため、バイモルフ圧電素子を用いてサブμmの移動分解能が達成される。
微動機構部24Bの先端に微小試料を摘出する際に用いるプローブ28を備えている。ただし、試料移送部24の構成はここに示した構成に限定されることはなく、3軸とも高精度に動作する機構を設置することで上記Z軸の微動機能を省略してもよいし、回転機構を追加してもよい。
この試料移送部24に類似した従来技術として特開平5−52721号公報(公知例2)がある。この従来技術によれば、分離試料を搬送する搬送手段はバイモルフ圧電素子3個をXYZ軸に対応して構成していて、その搬送手段の設置位置は、上記公報からステージ上に設置されていると読み取れる。この従来例のように搬送手段が試料ステージに設置されていると、注目する分離箇所が例えば直径300mmのウェハの中心部にある場合では、搬送手段先端の移動ストロークが、搬送手段位置から試料の所望箇所までの距離に比べて遥かに小さいため、試料ステージに設置された搬送手段では注目する分離箇所に届かないという致命的問題点を有することになる。本実施例では上述のような不具合を避けるため、試料移送部24を試料ステージと独立して設けたことも特徴の一つである。
デポジション用ガス源25は先端のノズル29から有機金属ガスなど噴射できる構造で、有機金属ガスを試料に噴射しつつFIB走査することで走査領域にガス成分のデポジション膜を形成することができる。このデポジション膜は試料表面の保護や部材同士の接着の役割を果たす。
試料5であるウェハはロードロック室16を介して試料室内の真空度を損なうことなく試料ステージ19上に導入できる。
このような装置を用いることで、平面TEM試料における注目する欠陥をTEM観察するための試料を確実に加工することができ、同一の表面近傍欠陥を平面と断面の2方向からTEM観察することができ、これまで不明な点が多かった表面近傍欠陥の形態を多面的に解析できるようになった。
なお、本実施例4では、マーキング部と試料作製部とを兼用としたが、分離してもよく、例えば、マーキング部には電子ビームを利用したマーキング法を採用し、試料作製部は上述のFIBを利用した構成としてもよい。また、ここで示した試料作製部を用いた微小試料の摘出方法については実施例2で詳述した。
<実施例5>
実施例3では、欠陥検出部2とマーキング部3をまとめて備えた試料作製装置を示し、実施例4ではマーキング部を兼ねた試料作製部23と欠陥検出部2を有した試料作製装置としたが、図10のように、専らウェハ5の表面近傍欠陥を検出する表面近傍欠陥検出装置80と、専らウェハ5にマークを施すマーキング装置81が機械的に独立した構成としてもよい。本実施例の場合、表面近傍欠陥検出装置80とマーキング装置81の座標系を共通化し、それぞれの座標情報を共有し、各々の装置の試料ステージの駆動系を制御する命令を出したり、ウェハ5の情報を蓄える計算処理機82を有し、各々の装置とネットワーク83で結合された構成とする。
対象とするウェハ5をマーキング装置81に導入すると共に、表面近傍欠陥検出装置80で検出した注目する欠陥の座標情報を指定することで、マーキング装置81のステージを駆動させ、注目する欠陥部を素早く視野内に捉えられるようにすることができる。また、予め計算処理機82に登録しておいたマーク形状をもとに、連続して加工できる構成としてもよい。さらには、このマーキング装置81が試料作製装置を兼ねていてもよく、マーキング装置と試料作製装置を独立させて、上記3つの装置を共通の計算処理機によって制御、データ収集を行なう構成でもよい。
さらに、従来の集束イオンビーム装置に波長の異なるレーザがウェハに照射でき、散乱光を集束して分光し、検出器に送る機構を組み込んだ構成とし、各波長の散乱光から得られる表面近傍欠陥の存在座標を記憶する計算機が、集束イオンビーム制御や試料ステージの制御を兼ねる構成とすることで、検出した表面近傍欠陥のおおよそ近傍に集束イオンビームを照射することができる。
さらにまた、前記の表面近傍欠陥検出装置(例えばOSDA装置)において、試料ステージを真空容器内に設置できるようにしておき、またその真空容器には少なくとも集束イオンビーム照射光学系、二次電子検出器、デポジション用ガス供給源を設置し、検出した欠陥のうち注目する欠陥を集束イオンビームの照射領域内に試料ステージで移動できる制御系ならびに計算処理機を設けることで、注目する欠陥の近傍に集束イオンビームによってマークを付けることができる。
<実施例6>
本実施例は、半導体ウェハの表面近傍欠陥を製造の初期段階で検出し、その検出結果をもとに、そのウェハが半導体装置の製造に使用できるか否かを判定する、すなわちスクリーニングを行なう半導体ウェハ管理方法に関するものである。
まず、データベースを作製しなければならない。数多くの半導体ウェハについて、表面欠陥検出装置を用いて表面近傍欠陥の数、面内および深さ分布、位置、形状、種類のうちの少なくともいずれかを計算処理機に記憶させる。一方、表面近傍欠陥に関して、すでに述べた本発明の方法によって作成した試料について、TEMないしSTEMによる形状観察を行い、その結果をなるべく多くの条件、例えば、ウェハ表面からの深浅度、密集度の高低、ウェハ周辺と中心部、欠陥寸法の大小等を計算処理機に記憶させる。このように記憶された多くのデータから、表面欠陥検出装置で得られた結果とTEMないしSTEMによる形状観察結果の相関をとる。例えば「ある深さに分布する欠陥は八面体空孔が多い」などの傾向をデータベース化して計算処理部に記憶させる。
一方、半導体装置の製造に先立ち、使用するウェハについて表面欠陥検出を行なう。その時に得られる表面近傍欠陥の数、面内および深さ分布、位置、形状、種類のうちの少なくともいずれかをウェハの識別番号と共に計算処理部に記憶させる。また、最終的に仕上がった半導体装置をプローバ検査等のデバイス動作計測装置によって動作確認する。このとき得られる動作が良好なチップと不良動作するチップについて、表面欠陥検出で得られた対応する場所の各評価項目との相関をとる。さらに不良動作するチップについては、欠陥検出の結果と、欠陥と電子顕微鏡観察の結果との相関、および不良動作の原因、例えば絶縁膜の耐圧不良等とを対応付けて記憶させる。
このようにして、多くのウェハに対する表面欠陥検出結果と、欠陥の電子顕微鏡観察結果と、半導体装置の動作良好、不良の結果、不良部の原因との相関をデータベースとして計算処理部に蓄えておく。
このようなデータベースをもとに、半導体装置の製造現場においては、望ましくは製造に用いるウェハの全数について表面欠陥検出を行なう。このとき得られた表面近傍欠陥の数、面内および深さ分布、位置、形状、種類のうちの少なくともいずれかのデータを計算処理機に取り込んで、これまでに蓄えたデータベースと比較すると、計測したウェハを用いてこの後半導体装置製造プロセスを継続した場合の、ウェハ1枚あたりの良品取得の歩留りがおおよそ推測できる。ウェハ1枚の製造に関わるコストと製造によって得られる予測利益の比較から、ある水準以上の欠陥の多さや分布では、製造すれば損害が生じることが明らかになるので、製造の初期の段階で不良ウェハをスクリーニングできる。このスクリーニングよって、最終的な良品の半導体装置の取得歩留りが向上する。
1…試料作製装置、2…欠陥検出部、3…マーキング部、4…ウェハハンドリング部、5…ウェハ、6…ウェハトレイ、7…試料ステージ、8…レーザ光、9A、9B…光源、15…計算処理機、16…ロードロック室、17…真空容器、18…FIB照射部、19…試料ステージ、22…ディスプレイ、23…試料作製部、24…試料移送部、27…ホルダカセット、28…プローブ、41…マーク、42A…表面近傍欠陥、44…平面TEM試料像、46…第2マーク、5A…ウェハ小片、5B…平面TEM試料、5C…微小薄片試料、63…保護膜、66…プローブ、70…試料ホルダ、74…断面試料。