JP4359315B2 - 車両の全輪操舵装置 - Google Patents
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Description
図1に示すように、全輪操舵装置100は、前輪1L・1Rを転舵させる操向ハンドル3による操舵を補助する電動パワーステアリング装置110、前輪1L・1Rの転舵角と車速に応じて後輪2L・2Rをそれぞれ独立に転舵させる後輪転舵装置120L・120R、電動パワーステアリング装置110及び後輪転舵装置120L・120Rを制御する操舵制御装置(以下、「操舵制御ECU(Electronic Control Unit)」と称する。)130、車速センサSV、ヨーレートセンサSY、横加速度センサSGSなど各種センサを含んで構成されている。
電動パワーステアリング装置110は、図2に示すように操向ハンドル3が設けられたメインステアリングシャフト3aと、シャフト3cと、ピニオン軸7とが、2つのユニバーサルジョイント(自在継手)3bによって連結され、また、ピニオン軸7の下端部に設けられたピニオンギア7aは、車幅方向に往復運動可能なラック軸8のラック歯8aに噛合し、ラック軸8の両端には、タイロッド9、9を介して左右の前輪1L・1Rが連結されている。この構成により、電動パワーステアリング装置110は、操向ハンドル3の操舵時に車両の進行方向を変えることができる。ここで、ラック軸8、ラック歯8a、タイロッド9、9は転舵機構を構成する。なお、ピニオン軸7はその上部・中間部・下部を軸受3d・3e・3fを介してステアリングギアボックス6に支持されている。
TM *=TM−(cmdθm/dt+Jmd2θm/dt2)i2・・・(1)
この式より、出力トルクTM *と電動機回転角θmとの関係は、電動機4の回転子の慣性モーメントJmと粘性係数cmとによって規定され、車両特性や車両状態に無関係である。
Tp=Ts+AH
=Ts+kA(V)×Ts
となる。これより、操舵トルクTsは、
Ts=Tp/(1+kA(V))・・・(2)
と表現される。
Ts=J・d2θS/dt2+C・dθS/dt+K(θS−θF)・・・(3)
となることがわかっている。
ここで、θSは操舵回転角であり、θFは、電動機回転角θmを減速機構の回転比nMで除した値である。また、Jはステアリング系の慣性係数(イナーシャ)であり、Cはステアリング系の粘性係数(ダンパ)であり、Kはベース信号係数である。この式も(1)式と同様に車両特性や車両状態に無関係である。
ここで、比Evは、
Ev=Tdet/Ts=K(θS−θF)/Ts・・・(4)
である。これにより、TsからTdet=K(θS−θF)までの伝達関数のゲイン特性をEv0以下とするような補償器H(S)を求めることができる。
例えば、零点・極をそれぞれ4個ずつ持つように、伝達関数Hf(S)を、
Hf(S)=8.88(S+140)(S+65.1)(S+30.1)(S+1.77)/{(S+1730)(S+209)(S+37.1)(S+15.6)}
に設定することができる。なお、伝達関数Hf(S)のゲイン特性は微分特性を備えている。
操舵制御ECU130の機能構成については、電動パワーステアリング装置110の制御および後輪転舵装置120L・120Rの制御とまとめて後記する。
次に、図3及び図4を参照しながら後輪転舵装置の構成を説明する。
図3は左後輪側の後輪転舵装置を示す平面図であり、図4は後輪転舵装置のアクチュエータの構造を示す概略断面図である。
電動機31は、正逆両方向に回転可能なブラシモータやブラシレスモータなどで構成されている。
減速機構33は、例えば、2段のプラネタリギア(図示せず)などが組み合わされて構成されている。
送りねじ部35は、円筒状に形成されたロッド35aと、スクリュー溝35bが形成されてロッド35aの内部に挿入されるナット35cと、スクリュー溝35bと噛合してロッド35aを軸方向に移動可能に支持するスクリュー軸35dとを備えて構成されている。スクリュー軸35dは、減速機構33および電動機31とともに細長形状のケース本体34内に収容され、減速機構33の一端が電動機31の出力軸と連結され、他端がスクリュー軸35dと連結されている。
電動機31からの動力が、減速機構33を介してスクリュー軸35dに伝達されてスクリュー軸35dが回転することで、ロッド35aがケース本体34に対して図示左右方向(軸方向)に伸縮自在に動作するようになっている。また、アクチュエータ30にはブーツ36が取り付けられて、外部からの埃や水などの異物が浸入しないようなっている。
後輪転舵駆動制御ECU37には、車両に搭載された図示しないバッテリなどの電源から電力が供給される。また、操舵制御ECU130、電動機駆動回路23にも前記とは別系統でバッテリなどの電源から電力が供給される(図示せず)。
次に、図5から図8を参照しながら操舵制御ECUの機能を説明する。
図5は操舵制御ECUと後輪転舵駆動制御ECUとの機能関係も示す操舵制御ECU全体の機能ブロック図であり、図6はベース信号演算部およびダンパ補償信号演算部の特性を示す図であり、図7は図5におけるヨーレートフィードバックトルク補正演算部の詳細な機能ブロック図であり、図8はヨーレートフィードバックトルク補正演算部の特性を示す図である。
図5に示すように操舵制御ECU130は、電動パワーステアリング装置110を制御する前輪転舵角制御部130aと、後輪2L・2Rのトー角を制御する後輪転舵角制御部130bを備えている。
まず、図5、図6を参照しながら適宜図2を参照して前輪転舵角制御部130aについて説明する。
前輪転舵角制御部130aは、ベース信号演算部51と、ダンパ補償信号演算部52と、イナーシャ補償信号演算部53と、Q軸(トルク軸)PI制御部54と、D軸(磁極軸)PI制御部55と、2軸3相変換部56と、PWM変換部57と、3相2軸変換部58と、電動機速度算出部67と、励磁電流生成部59とを備える。
また、一般に車両は、走行速度に応じて路面の負荷(路面反力)が異なるため、車速信号VSによりゲインが調整される。車速ゼロの据え切り操作時が最も負荷が重く中低速では比較的負荷が軽くなる。このため、ベース信号演算部51は、車速Vが大きく高速になるにしたがってゲイン(G1、G2)を低く、かつ、不感帯N1を大きく設定して、マニュアルステアリング領域を大きくとって路面情報を運転者に与える。すなわち、車速Vの増大に応じてしっかりとした操舵トルクTsの手応え感が付与される。このとき、マニュアルステアリング領域においてもイナーシャ補償がなされることが必要である。
なお、ベース信号演算部51とダンパ補償信号演算部52と加算器61とでアシスト制御が行われる。
Hf(S)=8.88(S+140)(S+65.1)(S+30.1)(S+1.77)/{(S+1730)(S+209)(S+37.1)(S+15.6)}
である。
また、FF(Front engine Front wheel drive)やFR(Front engine Rear wheel drive)車、RV(Recreation Vehicle)やセダンなどの車両特性や車速、路面などの車両状態によって異なる操舵特性に対して、実用上十分な特性が付与される。
加算器63は、出力信号IM1に対して、ヨーレートフィードバックトルク補正演算部72から出力される、現在の前輪の転舵角(タイヤ角とも言う)δとヨーレートγなどに応じて設定されるヨーレートゲインを反映し、ヨーレートγ、車速Vにもとづいて算出されるヨーレートフィードバックトルク補正値IY(以下、単に「補正値IY」と称する場合がある。)を減算して、出力信号IM2を加算器64に出力する。
ヨーレートフィードバックトルク補正演算部72の詳細な説明は後記する。
加算器65は、励磁電流生成部59の出力信号からD軸電流IDを減算するものである。D軸(磁極軸)PI制御部55は、加算器65の出力信号が減少するようにPI帰還制御を行う。
なお、2軸3相変換部56、及びPWM変換部57は、電動機4(図2参照)の角度信号θが入力され、回転子の磁極位置に応じた信号が出力される。
次に、図5、図7及び図8を参照しながら後輪転舵角制御部130bについて説明する。図5に示すように後輪転舵角制御部130bは、前輪転舵角演算部68、後輪目標転舵角診断部73、後輪目標転舵角演算部71、ヨーレートフィードバックトルク補正演算部72を有する。
前輪転舵角演算部68は、レゾルバ25から出力される回転角から前輪の転舵角δを算出し、後輪目標転舵角演算部71とヨーレートフィードバックトルク補正演算部72に入力する。
後輪目標転舵角演算部71は、車速信号VSと、前輪1L・1Rの転舵角δとその転舵角速度に比例する電動機4の回転速度ωとから後輪2L・2Rのそれぞれのトー角の目標値を生成する。この目標値生成は、予め設定された後輪転舵角テーブル71aを転舵角δ、車速VS、回転速度ωとにもとづいて参照することによって行なわれる。
車速が所定の低速の範囲では、転舵角δに応じて後輪2L・2Rが逆位相に、小回りがしやすいように各後輪のトー角の目標値が生成される。
なお、後輪目標舵角演算部71で生成されるトー角の目標値は、アッカーマン・ジャントのジオメトリに従うようになっている。
ヨーレートフィードバックトルク補正演算部72の詳細な構成を、図7を参照しながら説明する。ヨーレートフィードバックトルク補正演算部72は、ヨーレートゲイン算出部72a、ヨーレートフィードバックトルク補正値算出部72b、ヨーレートフィードバックマップ72cを備えている。
ヨーレートγが正方向に増加して所定の範囲内を超えた場合には、ヨーレートフィードバックトルク補正値IYは増加することなく一定の値を維持するように設定する。このように設定することで、電動機4(図2参照)のトルクに対する過度の補正を抑制し、パワーステアリング装置110によるアシスト制御の機能を確保する。
次に後輪目標転舵角診断部73について説明する。後輪目標転舵角診断部73は後輪転舵装置120L・120Rの後輪転舵駆動制御ECU37の後記する自己診断部81d(図9参照)から失陥信号αを受信したとき、後輪転舵装置120R・120Lが失陥状態にあると判断する。そして、後輪目標転舵角診断部73はその判断に応じて、ヨーレートフィードバックトルク補正演算部72に対し、失陥信号αとともに、ヨーレートフィードバックトルクの補正演算をして、補正信号(補正値IY)を出力するように指令する。また、後輪目標転舵角診断部73は、失陥信号αをベース信号演算部51にも送信し、後輪転舵装置120R・120Lの失陥状態に応じたベース信号DTに関する演算をすることが可能である。
次に、図9の機能ブロック図を参照しながら後輪転舵駆動制御ECUの詳細について説明する。
図9に示すように、後輪転舵駆動制御ECU37はアクチュエータ30を駆動制御する機能を有し、制御部81と電動機駆動回路83とで構成されている。また、各後輪転舵駆動制御ECU37は、操舵制御ECU130と通信線を介して接続され、他方の後輪転舵駆動制御ECU37とも通信線を介して接続されている。
目標電流算出部81aは、操舵制御ECU130の後輪目標転舵角演算部71から入力される後輪2L(または後輪2R)のトー角の目標値の信号にもとづいて、目標電流信号を算出して、加算器81eを介して電動機制御信号生成部81cに出力する。目標電流信号とは、アクチュエータ30を所望の作動量(後輪2L・2Rを所望のトー角にする伸縮量)に設定するのに必要な電流信号であり、参照信号として補正電流設定部81bにも入力される。
補正電流設定部81bは、トー角の目標値信号とストロークセンサ38から入力される位置情報と参照信号である目標電流信号とにもとづいて、目標電流が指示するトー角に対する偏差から目標電流信号を補正するための補正電流信号を加算器81eに出力する。加算器81eは、補正電流信号を目標電流信号から減算し、補正後の目標電流信号を電動機に出力する。
このように目標電流算出部81aからの目標電流信号を補正することにより、後輪2L(または2R)の転舵に要する電流値が車速V、路面環境、車両の運動状態、タイヤの磨耗状態などによって変化するのをフィードバックして、目標のトー角に設定制御することができる。
電動機駆動回路83は、FET(Field Effect Transistor)のブリッジ回路などで構成され、電動機制御信号に基づいて電動機31に電動機電圧を印加する。
以上説明したように、本実施形態によれば、電動パワーステアリング装置110を用いた全輪操舵装置100を適用した車両において、後輪転舵装置120R・120Lが失陥状態にあって車両が不安定になったとしても、電動パワーステアリング装置110によるその失陥状態に応じたアシスト制御を行うことで車両の安定化を達成することができる。ヨーレートフィードバックトルク補正演算部72において、後輪転舵装置120R・120Lが失陥状態にあるときのヨーレートゲインGYを算出して学習しておき、そのヨーレートゲインGYを用いて算出したヨーレートフィードバックトルク補正値IYを加算器63に入力し、電動パワーステアリング装置110によるアシスト力の反力として作用するように制御するからである。
2L、2R 後輪
3 操向ハンドル
4 電動機
SGS 横加速度センサ
ST 操舵トルクセンサ
SV 車速センサ
SY ヨーレートセンサ
11 リアサイドフレーム
12 クロスメンバ
13 トレーリングアーム
13a 車体側アーム
13b 車輪側アーム
13c 回転軸
16、17 ボールジョイント
23 電動機駆動回路
30 アクチュエータ
31 電動機
33 減速機構
34 ケース本体
35 送りねじ部
35a ロッド
35b スクリュー溝
35c ナット
35d スクリュー軸
36 ブーツ
37 後輪転舵駆動制御ECU
38 ストロークセンサ
100 全輪操舵装置
110 電動パワーステアリング装置
120L、120R 後輪転舵装置
130 操舵制御ECU
130a 前輪転舵角制御部
130b 後輪転舵角制御部
61、62、63、64、65 加算器
68 前輪転舵角演算部
71 後輪目標転舵角演算部
72 ヨーレートフィードバックトルク補正演算部
72a ヨーレートゲイン算出部
72b ヨーレートフィードバックトルク補正値算出部
72c ヨーレートフィードバックマップ
73 後輪目標転舵角診断部
Claims (1)
- 少なくとも操舵トルクに応じて、電動機が補助トルクを発生し、該補助トルクを前輪のステアリング系に伝達する電動パワーステアリング装置と、少なくとも前輪の転舵角及び車速に基づいて左右の後輪の転舵角を制御する後輪転舵装置と、並びに前記電動パワーステアリング装置及び前記後輪転舵装置を制御する操舵制御装置とを備える車両の全輪操舵装置において、
前記操舵制御装置は、
前記車両のヨーレートを検知する手段と、
前記後輪転舵装置の失陥状態を判断する手段と、
前記前輪の転舵角、前記ヨーレート及び前記車速に基づいて、前記失陥状態におけるヨーレートゲインを算出する手段と、
前記ヨーレート、前記車速及び前記失陥状態におけるヨーレートゲインに基づいて前記失陥状態におけるヨーレートフィードバックトルク補正値を算出する手段と、
前記補助トルクの目標値を、前記ヨーレートフィードバックトルク補正値で修正する手段と、
を備えることを特徴とする車両の全輪操舵装置。
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