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JP4237659B2 - 非水電解質電池 - Google Patents

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Description

本発明は、非水電解質電池に関するものである。
近年、エレクトロニクス分野における急速な技術発展により、電子機器の小型・軽量化が進んでいる。その結果、電子機器のポータブル化、コードレス化が進行し、その駆動源となる二次電源にも小型、軽量、高エネルギー密度化が切望されている。このような要望に応えるべく、高エネルギー密度なリチウム二次電池が開発され、最近では、アルミラミネートフィルムから形成された容器を用いた超薄型・軽量二次電池も開発・商品化されている。
このアルミラミネートフィルム製容器を用いた二次電池において、負極にリチウムイオンを吸蔵・放出する炭素材料を使用すると、充放電に伴う負極の体積膨張・収縮による電池厚さの変化量が大きくなり、電池がよれたり、電極間が広がって、内部抵抗が大きくなり、電池特性の低下を招く。
このような問題を回避できる材料系として、特許文献1では、チタン酸リチウムを負極活物質に利用した電池が提案されている。チタン酸リチウムは、充放電に伴う体積変化が殆ど無く、その結果、電池厚さの変化が極めて小さい。この化合物を負極活物質に利用することで、上述した問題が解決される。
チタン酸リチウムは、リチウムの吸蔵放出反応が約1.55Vで進行するため、正極活物質に、例えば、LiCoO2を用いた場合には、その電池電圧は2.3Vとなる。この電位は、広く商用化されているリチウムイオン二次電池である炭素負極/LiCoO2正極の電池電圧3.8Vに比べて低く、エネルギー密度の低下を招く。
特開平9−199179号公報
本発明は、エネルギー密度が向上された非水電解質電池を提供することを目的とする。
本発明に係る非水電解質電池は、空間群がCmcaである結晶構造を有すると共にリチウムイオンを吸蔵・放出する活物質を含む負極と、正極と、非水電解質とを備えることを特徴とするものである。
本発明によれば、エネルギー密度が向上された非水電解質電池を提供することができる。
本発明では、負極活物質として、空間群がCmcaである結晶構造を有すると共にリチウムイオンを吸蔵・放出する金属酸化物を用いているため、負極において金属リチウムの電位に対して1Vよりも貴で、かつチタン酸リチウムの場合よりも卑な電位でリチウムの吸蔵放出反応を進行させることができ、平均放電電圧を大きくすることができ、エネルギー密度を向上させることができる。また、この負極活物質を含む負極を備えた非水電解質二次電池は、チタン酸リチウムを使用する場合と同等もしくはそれ以上の充放電サイクル寿命を実現することができる。
この負極活物質が下記(1)式で表わされる組成を有することによって、エネルギー密度と充放電サイクル寿命をより向上することができるばかりか、LiCoO2を含む正極と組み合わせた場合に平均放電電圧を2.4〜2.6Vの範囲にすることができるため、既存の乾電池やニッケル水素二次電池2直列との互換性を持たせることができる。
Li2+xAT614 (1)
但し、AはNa、K、Mg、Ca、Ba及びSrよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、TはTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、B、Al、Ga及びInよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、xは0≦x≦5である。
Li4Ti1512のようなチタン酸リチウムを負極活物質として用い、例えば、LiCoO2を含む正極と組み合わせると、チタン酸リチウムのリチウム吸蔵放出電位が1.55Vであるため、電池電圧が2.3Vと低くなり、エネルギー密度が小さくなる。
前述した(1)式で表わされる負極活物質を用いた場合、単位重量あたりの容量はチタン酸リチウムと同等であるが、リチウムの吸脱放出反応が1.3〜1.4V(vs.Li/Li+)で進行する。LiCoO2を含む正極と組み合わせた場合、電池電圧は2.45〜2.55Vとなり、エネルギー密度を約10%増加させることができる。また、この電圧は、既存の乾電池やニッケル水素電池2直列と互換性をもたせることができ、商用的価値も極めて大きい。このようにリチウムの吸脱放出反応電位がチタン酸リチウムに比べて卑側にシフトする要因として、空間群がCmcaである結晶構造を有する負極活物質では、A元素の添加によりリチウムイオンの吸蔵・放出サイトが、チタン酸リチウムの場合と異なるものになることが考えられる。
前述した(1)式で表わされる負極活物質を構成する元素Tは、サイクル寿命の観点からTiを主成分とすることが好ましい。Tiを主成分とすることで、結晶構造の安定性を高くすることができるため、良好なサイクル寿命を実現することができる。
空間群がCmcaである結晶構造を有する負極活物質が下記(2)式で表わされる組成を有することによって、高エネルギー密度と優れた充放電サイクル寿命を実現しつつ、大電流特性(負荷特性)を向上することができる。
Li2+xATi6-yy14 (2)
但し、AはNa、K、Mg、Ca、Ba及びSrよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、B、Al、Ga及びInよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、xは0≦x≦5で、yは0<y<6である。
元素Mの原子比yを前記範囲に限定するのは、元素Mを添加すると大電流特性(負荷特性)を改善することができるものの、原子比yの増加に伴って放電容量が低下する恐れがあるからである。Tiが有する良好なサイクル特性と、M元素添加による大電流特性を両立させるためには、yは0.001≦y≦3であることがより好ましく、さらに好ましくは0.01≦y≦1である。
本発明は、二次電池のみならず、一次電池にも適用することができる。以下、本発明に係る非水電解質電池の一実施形態を詳細に説明する。まず、正極、負極及び非水電解質について説明する。
1)正極
この正極は、正極集電体と、前記正極集電体の片面もしくは両面に担持され、活物質及び結着剤を含む正極層とを有する。
前記正極集電体は、たとえば、アルミニウム、アルミニウム合金から形成することができる。
前記正極活物質としては、種々の酸化物、硫化物などが挙げられる。例えば、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、リチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn24またはLixMnO2)、リチウムニッケル複合酸化物(例えばLixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(例えばLiNi1-yCoy2)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(例えばLixMnyCo1-y2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2-yNiy4)、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物(LixFePO4、LixFe1-yMnyPO4、LixCoPO4など)、硫酸鉄(Fe2(SO43)、バナジウム酸化物(例えばV25)などが挙げられる。 また、ポリアニリンやポリピロールなどの導電性ポリマー材料、ジスルフィド系ポリマー材料、イオウ(S)、フッ化カーボンなどの有機材料および無機材料も挙げられる。より好ましい二次電池用の正極活物質としては、電池電圧が高いリチウムマンガン複合酸化物(LixMn24)、リチウムニッケル複合酸化物(LixNiO2)、リチウムコバルト複合酸化物(LixCoO2)、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(LiNi1-yCoy2)、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物(LixMn2-yNiy4)、リチウムマンガンコバルト複合酸化物(LixMnyCo1-y2)、リチウムリン酸鉄(LixFePO4)などが挙げられる(なお、x,yは0〜1の範囲であることが好ましい。)
前記結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムなどが挙げられる。
前記正極層には導電剤が含有されていても良い。導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。
前記正極活物質と導電剤と結着剤の配合比は、正極活物質80〜95重量%、導電剤3〜18重量%、結着剤2〜17重量%の範囲にすることが好ましい。
2)負極
負極は、負極集電体と、この集電体の片面もしくは両面に担持され、負極活物質を含有する負極層とを備えるものである。
負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵・放出し、かつ空間群がCmcaである結晶構造を有するものを含む。
空間群がCmcaである結晶構造を有する負極活物質の組成としては、前述した(1),(2)式で表わされるものの他に、Sr4Mn310、CuLaO4が挙げられる。
前述した(1),(2)式で表わされる組成において、リチウムの原子比は、充放電でリチウムが吸蔵放出されることで変動し、xは0≦x≦5まで取り得る。xを5以下としたのは、この構造の物質において、リチウムイオンが入りうるサイトに全て入りきった場合、x=5となるためである。
前述した(1),(2)式で表わされる組成において、元素Aの中でもアルカリ土類金属(Mg、Ca、Ba、Sr)が好ましい。NaやKのようなアルカリ金属を用いると、結晶構造の安定性が低下するためにリチウム金属との交換反応が起きやすく、これにより特性劣化して放電容量の低下を招く恐れがあるからである。
前述した(1)式で表わされる組成のうち、物質重量あたりのエネルギー密度の観点から、Li2+xMgT614、Li2+xCaT614が好ましい。元素AをMgあるいはCaとすることで、単位重量あたりの容量を増加させることができる。
負極活物質には、空間群がCmcaである結晶構造を有するもののみを使用しても良いが、リチウムを吸蔵放出する他の活物質を併用しても良い。他の活物質としては、例えば、炭素質物、合金、酸化物、窒化物、炭化物などを挙げることができる。
負極活物質の平均粒子径は、0.1〜10μmであることが好ましい。これは以下に説明する理由によるものである。平均粒子径を0.1μm未満にすると、集電性能を確保するために導電剤の量を増やす必要があり、実効的な負極容量が低下する恐れがある。また、製造上の作業性が格段に低下する可能性がある。一方、平均粒子径が10μmを超えると、集電性能が低下する恐れがある。平均粒子径のさらに好ましい範囲は、0.5〜5μmである。
負極活物質のBET法による比表面積は、5m2/g〜100m2/gの範囲にすることが好ましい。これは以下に説明する理由によるものである。比表面積を5m2/g未満にすると、集電性能が低下する恐れがある。一方、比表面積が100m2/gを超えると、導電剤の量を増やす必要があり、実効的な負極容量が低下する恐れがある。また、製造上の作業性が格段に低下する可能性がある。
負極集電体の形成材料としては、たとえば、アルミニウム、アルミニウム合金を挙げることができる。
負極は、負極活物質と導電剤と結着剤とを適当な溶媒に懸濁させ、この懸濁物をアルミニウム箔などの集電体に塗布、乾燥、プレスして帯状電極にすることにより作製される。
前記導電剤としては、例えばアセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛等を挙げることができる。
前記結着剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴムなどが挙げられる。
前記負極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、負極活物質70〜96重量%、導電剤2〜28重量%、結着剤2〜28重量%の範囲にすることが好ましい。導電剤量が2重量%未満であると、集電性が欠如して大電流特性が低下する恐れがある。また、結着剤量が2重量%未満であると、負極層と集電体の結着性が欠如してサイクル性能が低下する可能性がある。一方、高容量化の観点から、導電剤および結着剤量は各々28重量%以下であることが好ましい。
3)非水電解質
非水電解質としては、例えば、電解質を有機溶媒に溶解させた非水電解液、リチウム塩と常温溶融塩を含むものなどを使用することができる。
まず、非水電解液について説明する。
前記電解質としては、例えば、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、ビストリフルオロメチルスルホニルイミトリチウム[LiN(CF3SO22]などのリチウム塩が挙げられる。前記電解質は、有機溶媒に対して、0.5〜2mol/Lの範囲で溶解させることが好ましい。
前記有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ジエチルカーボネート(DEC)などの鎖状カーボネート、テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)などの環状エーテル、ジメトキシエタン(DME)などの鎖状エーテル、γ−ブチロラクトン(BL)、アセトニトリル(AN)、スルホラン(SL)等を挙げることができる。これらの有機溶媒は、単独または2種以上の混合物の形態で用いることができる。
次いで、リチウム塩と常温溶融塩とを含む非水電解質について説明する。
常温溶融塩とは、常温において少なくとも一部が液状を呈する塩をいい、常温とは電源が通常作動すると想定される温度範囲をいう。電源が通常作動すると想定される温度範囲とは、上限が120℃程度、場合によっては60℃程度であり、下限は−40℃程度、場合によっては−20℃程度である。
リチウム塩としては、リチウム二次電池に一般的に利用されているような、広い電位窓を有するリチウム塩が用いられる。たとえば、LiBF4、LiPF6、LiClO4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO2),LiN(CF3SC(C25SO23などを挙げられるが、これらの限定されるものではない。これらは、単独で用いても、2種類以上を混合して用いても良い。
非水電解質中のリチウム塩の含有量は、0.1〜3mol/Lであることが望ましい。これは以下に説明する理由によるものである。リチウム塩の含有量を0.1mol/L未満にすると、非水電解質のイオン伝導性が低下して高い大電流・低温放電特性を得られない恐れがある。一方、リチウム塩の含有量が3mol/Lを超えると、非水電解質の融点が上昇して常温で液状を保つのが困難になる可能性がある。リチウム塩含有量のさらに好ましい範囲は、1〜2mol/Lである。
常温溶融塩としては、たとえば、化1の式(A)で示される骨格を有する4級アンモニウム有機物カチオンを有するもの、あるいは、化2の式(B)で示される骨格を有するイミダゾリウムカチオンを有するものである。
Figure 0004237659
Figure 0004237659
但し、式(B)において、R1とR2は、それぞれ、Cn2n+1(n=1〜6)であり、また、互いに同じでも異なっていても良く、R3はHまたはCn2n+1(n=1〜6)である。
式(A)で示される骨格を有する4級アンモニウム有機物カチオンとしては、ジアルキルイミダゾリウムやトリアルキルイミダゾリウムなどのイミダゾリウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、アルキルピリジニウムイオン、ピラゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオンなどが挙げられる。特に、式(B)で示される骨格を有するイミダゾリウムカチオンが好ましい。
なお、テトラアルキルアンモニウムイオンとしては、トリメチルエチルアンモニウムイオン、トリメチルエチルアンモニウムイオン、トリメチルプロピルアンモニウムイオン、トリメチルヘキシルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、アルキルピリジウムイオンとしては、N−メチルピリジウムイオン、N−エチルピリジニウムイオン、N−プロピルピリジニウムイオン、N−ブチルピリジニウムイオン、1−エチルー2メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムイオン、1−ブチル−2,4ジメチルピリジニウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、これらのカチオンを有する常温溶融塩は、単独で用いてもよく、または2種以上混合して用いても良い。
式(B)で示される骨格を有するイミダゾリウムカチオンについて説明する。ジアルキルイミダゾリウムイオンとしては、1,3−ジメチルイミダゾリウムイオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムイオンなどが挙げられ、一方、トリアルキルイミダゾリウムイオンとしては、1,2,3−トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−エチルイミダゾリウムイオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムイオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムイオンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、これらのカチオンを有する常温溶融塩は、単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いても良い。
上述した正極と負極の間にはセパレータを配置することができる。
セパレータには、例えば、多孔質セパレータが用いられる。
多孔質セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロースまたはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む多孔質フィルム、合成樹脂製不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレンか、あるいはポリプロピレン、または両者からなる多孔質フィルムは、二次電池の安全性を向上できるため、好ましい。
正極、負極及び非水電解質が収容される容器には、金属製容器や、ラミネートフィルム製容器を使用することができる。
金属製容器としては、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、ステンレスなどからなる金属缶で角形、円筒形の形状のものが使用できる。また、容器の板厚は、0.5mm以下にすることが望ましく、さらに好ましい範囲は0.2mm以下である。
ラミネートフィルムとしては、例えば、金属箔を樹脂フィルムで被覆した多層フィルムなどを挙げることができる。樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子を用いることができる。また、ラミネートフィルムの厚さは0.2mm以下にすることが好ましい。
本発明に係る非水電解質二次電池の一例を図1に示す。
図1に示すように、電極群1は、正極2及び負極3をその間にセパレータ4を介在させて偏平形状に捲回した構造を有する。前記電極群1は、正極2及び負極3をその間にセパレータ4を介在させて偏平形状に捲回した後、加熱プレスを施すことにより作製される。電極群1における正極2、負極3及びセパレータ4は、接着性を有する高分子により一体化されていても良い。帯状の正極端子5は、正極2に電気的に接続されている。一方、帯状の負極端子6は、負極3に電気的に接続されている。この電極群1は、ラミネートフィルム製容器7内に正極端子5と負極端子6の端部を容器7から突き出させた状態で収納されている。なお、ラミネートフィルム製容器7は、ヒートシールにより封止がなされている。
[実施例]
以下に例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、発明の主旨を超えない限り本発明は以下に掲載される実施例に限定されるものでない。
(実施例1)
<正極の作製>
まず、正極活物質としてリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)粉末90重量%、アセチレンブラック3重量%、グラファイト3重量%及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)4重量%をN−メチルピロリドン(NMP)に加えて混合してスラリーとし、このスラリーを15μmのアルミニウム箔からなる集電体の両面に塗布した後、乾燥し、プレスすることにより電極密度が3.0g/cm3の正極を作製した。
<負極の作製>
負極活物質としての空間群がCmcaである結晶構造を有するLi2MgTi614と、導電材としての平均粒径が1μmでBET法による比表面積が8m2/gのアセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを重量比が90:5:5になるようにN−メチルピロリドン(NMP)溶液に加えて混合し、得られたスラリーを厚さが15μmのアルミニウム箔に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより負極を作製した。
なお、負極活物質であるリチウムチタン含有複合酸化物の結晶構造の同定は、粉末X線回折測定によって行なった。
<電極群の作製>
前記正極、厚さ25μmのポリエチレン製の多孔質フィルムからなるセパレータ、前記負極、前記セパレータの順番に積層した後、渦巻き状に捲回した。これを90℃で加熱プレスすることにより、幅が30mmで、厚さが3.0mmの偏平状電極群を作製した。得られた電極群を、厚さが40μmのアルミニウム箔と前記アルミニウム箔の両面に形成されたポリプロピレン層とから構成された厚さが0.1mmのラミネートフィルムからなるパックに収納し、80℃で24時間真空乾燥を施した。
<液状非水電解質の調製>
エチレンカーボネート(EC)、γ−ブチロラクトン(BL)の混合溶媒(体積比率25:75)に電解質としての四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)を1.5mol/L溶解することにより液状非水電解質(非水電解液)を調製した。
前記電極群を収納したラミネートフィルムパック内に前記液状非水電解質を注入した後、前記パックをヒートシールにより完全密閉し、前述した図1に示す構造を有し、幅が35mmで、厚さが3.2mm、かつ高さが65mmの非水電解質二次電池を作製した。
(実施例2〜7)
下記表1に示す組成を有する空間群がCmcaである結晶構造のリチウムチタン含有複合酸化物を負極活物質として用いること以外は、実施例1と同様な構成の非水電解質二次電池を製造した。
(比較例1)
下記表1に示す組成で、かつ空間群Fd3-m(3-は3の上に-があることを示す)に属するスピネル構造のチタン酸リチウムを負極活物質として用いること以外は、実施例1と同様な構成の非水電解質二次電池を製造した。
実施例1〜7及び比較例1の二次電池に対して、初回充放電を0.2C電流で行い、電池の平均作動電圧から電池のエネルギー密度を算出した。次いで、容量確認を終えた電池に対して、1C/1C充放電サイクルを500サイクル繰り返し、500サイクル後の電池容量を初回容量と比較した。結果を表1にまとめた。
Figure 0004237659
表1から明らかなように、空間群がCmcaである結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物を含む負極を備えた実施例1〜7の電池は、チタン酸リチウムを負極活物質に用いた比較例1の電池に比較して電池電圧が高く、エネルギー密度が大きくなることが分かった。
(実施例8)
負極活物質として空間群がCmcaである結晶構造を有するLi2BaTi6-yAly14を用いること以外は、実施例1と同様な構成の非水電解質二次電池を作製した。このとき、yの値を0、0.001、0.01、0.1、1、3、5に調整した7種の負極活物質を用いて、7種の非水電解質二次電池を作製した。7種類の負極活物質の組成を下記表2に示す。
作製した実施例8の7種の電池に対して、0.2C電流と2C電流で容量確認を行い、0.2C放電でのエネルギー密度と、2C/0.2Cの放電容量比を求めた。次いで、容量確認を終えた電池に対して、1C/1C充放電サイクルを500サイクル繰り返し、500サイクル後の電池容量を初回容量と比較した。結果を表2にまとめた。また、比較例1の電池についても2C/0.2Cの放電容量比を測定し、その結果を下記表2に併記する。
Figure 0004237659
表2から明らかなように、空間群がCmcaである結晶構造のLi2BaTi614に第3元素を添加することにより、大電流特性(負荷特性)が高められることが分かった。
(実施例9〜21)
下記表3に示す組成で表わされ、かつ空間群がCmcaである結晶構造を有する負極活物質を用いること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な構成の非水電解質二次電池を作製した。
得られた実施例9〜21の二次電池について、0.2C電流と2C電流で容量確認を行い、2C/0.2Cの放電容量比を求め、その結果を下記表3に示す。
Figure 0004237659
表3の結果から、空間群がCmcaである結晶構造を有し、かつ組成が前述した(2)で表わされる負極活物質を使用することにより、高い大電流特性を得られることを確認することができた。
(実施例22)
空間群がCmcaである結晶構造を有するSr4Mn310を負極活物質として用いること以外は、前述した実施例1で説明したのと同様な構成の非水電解質二次電池を作製した。得られた実施例22の二次電池に初回充放電を0.2C電流で行い、電池の平均作動電圧から電池のエネルギー密度を算出したところ、140Wh/Lと比較例1よりも高かった。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
本発明に係る非水電解質電池の一実施形態である薄型非水電解質二次電池を示す部分切欠斜視図。
符号の説明
1…電極群、2…正極、3…負極、4…セパレータ、5…正極端子、6…負極端子、7…容器。

Claims (5)

  1. 空間群がCmcaである結晶構造を有すると共にリチウムイオンを吸蔵・放出する活物質を含む負極と、正極と、非水電解質とを備えることを特徴とする非水電解質電池。
  2. 前記活物質は、下記(1)式で表わされる組成を有することを特徴とする請求項1記載の非水電解質電池。
    Li2+xAT614 (1)
    但し、AはNa、K、Mg、Ca、Ba及びSrよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、TはTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、B、Al、Ga及びInよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、xは0≦x≦5である。
  3. 前記活物質は、下記(2)式で表わされる組成を有することを特徴とする請求項1記載の非水電解質電池。
    Li2+xATi6-yy14 (2)
    但し、AはNa、K、Mg、Ca、Ba及びSrよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、B、Al、Ga及びInよりなる群から選ばれる少なくとも1種類の元素で、xは0≦x≦5で、yは0<y<6である。
  4. 前記活物質は、平均粒子径が0.1μm〜10μmであることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の非水電解質電池。
  5. 前記活物質は、比表面積が5m2/g〜100m2/gであることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の非水電解質電池。
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