JP2014208905A - アルミニウム合金ブレージングシート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】心材の少なくとも一方の面にろう材をクラッドしたアルミニウム合金ブレージングシート、または心材の一方の面にろう材をクラッドし、心材の他方の面に犠牲材をクラッドしたアルミニウム合金ブレージングシートであって、破断伸びが0.5%以上であり、加工硬化指数n値が0.05未満であることを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。
【選択図】図2
Description
とりわけ、アルミニウム合金ブレージングシートは、チューブ折り曲げ部の肩R部と平坦な部品に囲まれた隙間部の容積が大きいと、ろう材が十分に充填されずに、隙間空間が残存し、ろう付不良が生じる。そこで、隙間部の容積を狭小化して、ろう付性の改良を図るための技術が求められていた。
以下、各構成について説明する。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの心材を構成するアルミニウム合金としては、2000系、3000系、5000系、6000系アルミニウム合金のいずれであっても使用することができる。これらのアルミニウム合金であれば、自動車用熱交換器などの用途に使用されるアルミニウム合金ブレージングシートとして、物性の面で十分に使用し得るものである。心材は、厚さ40μm以上とすることが好ましい。心材厚さが40μm未満では、ろう付後の強度が不十分となる。
本発明のアルミニウム合金ブレージングシートのろう材を構成するアルミニウム合金としては、従来から汎用されているJIS規定の4343、4045、4047、4005などの4000系アルミニウム合金などを使用することができる。
本発明に係るアルミニウム合金ブレージングシートにおいては、前記の心材の一方の面に前記ろう材を備え、他方の面には犠牲材をクラッドして、この面の側からの耐食性を向上させることができる。このような犠牲材を備えたブレージングシートでろう付接合構造体を作製する際は、犠牲材を備えた面を腐食環境側となるように部品を成形する。
なお、犠牲材はこれらに限定されるものではなく、他に、Al−Mg−Si−Zn合金、Al−Si−Mn−Zn系合金、Al−Mg−Zn系合金などを用いても良い。
(破断伸び:0.5%以上)
破断伸びは、ブレージングシートから引張方向が圧延方向と平行となるように、JIS Z2201の5号試験片を採取し、JIS Z2241の規定に準じて、室温にて、クロスヘッド速度5mm/分にて、試験片が破断するまで一定の速度で引張試験を行って、得られたS−Sカーブから測定する。
アルミニウム合金ブレージングシートの破断伸びが0.5%未満の場合、材料のチューブ成形時に割れが生じ易い。そのため、本発明では、アルミニウム合金ブレージングシートの破断伸びを0.5%以上にすることが必要である。破断伸びは、後記する仕上げ冷間圧延の条件等によって制御することができる。
加工硬化指数n値とは、成形性の目安となる特性値である。加工硬化指数n値は、以下に述べる方法で測定される。
ブレージングシートの試験片から引張方向が圧延方向と平行となるように、JIS Z2201の5号試験片を採取して、JIS Z2241の規定に準じて、室温にて引張試験を実施する。このときのクロスヘッド速度は、5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行う。真ひずみと真応力を計算し、横軸をひずみ、縦軸を応力とした対数目盛上にプロットし、0.2%耐力点から引張強さ点までを結ぶ直線の勾配を測定して、加工硬化指数n値とした。
次に、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの製造方法について説明する。本発明のブレージングシートは、代表的な製造方法の例として、以下の製造方法によって製造することができる。
まず、心材用アルミニウム合金、犠牲材用アルミニウム合金およびろう材用アルミニウム合金を連続鋳造法によって、溶解、鋳造して鋳塊を製造する。この鋳塊に面削(表面平滑化処理)および均質化熱処理を行うことによって、心材用鋳塊(心材用部材)、犠牲材用鋳塊、ろう材用鋳塊を製造する。その後、犠牲材用鋳塊およびろう材用鋳塊は、それぞれ所定厚さに熱間圧延して、犠牲材用部材、ろう材用部材とする。
なお、心材用鋳塊には均質化処理を行なわなくてもよく、ろう材用鋳塊、および、犠牲材用鋳塊には、熱間圧延を行なわず、面削により厚さを調整してそれぞれ、ろう材用部材、犠牲材用部材としてもよい。また、重ね合わせ材に熱処理を行なわなくてもよい。
仕上げ冷間圧延工程における圧延率が15%未満であれば、材料が加工硬化し易くなり、n値が0.05以上となり易い。また、仕上げ冷間圧延工程における圧延率が90%を超えると、材料が加工硬化し易くなり、n値が0.05以上となり易い。そのため、仕上げ冷間圧延の圧延率は、15%以上で90%以下とすることが好ましい。
冷間圧延工程は、室温で行われる工程であるが、加工発熱によって圧延後の材料温度は上昇する。詳細なメカニズムは明確ではないが、以下のように考えている。仕上げ冷間圧延工程において、1パスの冷間圧延の巻き取り温度が80℃未満の場合は、加工によって導入されるひずみの蓄積量が多くなるため、伸びが小さくなり、材料の成形が困難となり易い。一方、1パスの冷間圧延の巻き取り温度が150℃を超えると、材料の回復が進行し、n値が0.05以上となり易い。そのため、仕上げ冷間圧延工程における、1パス毎の巻き取り温度は、80℃以上で150℃以下とすることが好ましい。巻き取り温度は、巻き取った直後のコイルの端面に接触式の温度計を当てて測定した。
<供試材の作製>
表1に示した組成(心材No.1〜12)を有する心材、Siの含有量が10質量%のAl−Si合金のろう材、Znの含有量が4.0質量%であるAl−Zn合金の犠牲材を、DC鋳造によりそれぞれ造塊し各々所望の厚さまで両面を面削した。ろう材および犠牲材には、それぞれ均質化処理を施し、ろう材―心材―犠牲材の順で組み合わせて、530℃×4hの加熱を施した後、板厚3.0mmまで熱間圧延した。なお、ろう材および犠牲材のクラッド率は15%とした。熱間圧延後、冷間圧延、350℃×2hの中間焼鈍を行い、その後、表2に示した条件により仕上げ冷間圧延を行い、板厚0.25mmの板材とした(供試材No.1〜16、19〜22)。尚、表1の中で「−」で示された金属元素は、添加していないことを示している。
供試材から引張方向が圧延方向と平行となるように、JIS Z2201の5号試験片を採取して、JIS Z2241の規定に準じて、室温にて引張試験を実施した。このときのクロスヘッド速度は、5mm/分で、試験片が破断するまで一定の速度で行った。加工硬化指数n値は、真ひずみと真応力を計算し、横軸をひずみ、縦軸を応力とした対数目盛上にプロットし、0.2%耐力点から引張強さ点までを結ぶ直線の勾配を測定してn値とした。一方、破断伸びは0.5%以上を○、0.5%未満を×とした。
図1は、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートの曲げプレス機による90°曲げ試験方法を説明するための断面図である。
まず、供試材から長手方向が圧延方向と垂直となるように30W×70Lの寸法の板を切り出す。図1に示すように、下金型側に切り出した板を取り付けた後、(板厚+0.05mm)の隙間を開けて、上金型を上下することによって、板の端部を約2mm幅で、約90°の角度となるように、折り曲げた。上金型の角部の曲率半径R0は、ほぼ0mmである。このとき、折り曲げ線は、供試材の短手方向と平行であり、圧延方向と平行となるようにした。また、図1の断面図において、供試材の圧延方向が曲げ方向と垂直となるようにした。その後、肩R部付近(図1の破線の円)を切り出し、樹脂に埋め込んで、板幅方向の中心部まで断面を研磨し、断面を光学顕微鏡により観察し、折り曲げ部の肩R部の外表面の曲率半径を測定した。曲率半径が450μm以下のものを非常に良好(◎)、450μmを超えて500μm以下のものを良好(○)、500μmを超えるものを不良(×)とした。また、90°曲げ試験時に割れが発生して、曲率半径を測定することができなかったものは、「割れ」と記載した。
図2は、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートを用いたろう付性評価用テストピースの斜視図である。また、図3は、本発明のアルミニウム合金ブレージングシートのろう付性の評価部位を説明するための断面図である。図3(a)は、図2のろう付性評価用テストピースを左側側方から見たときのA−A面における断面図である。図3(b)は、図3(a)の破線の四角で囲われた部分を拡大した断面図である。
各供試材から長手方向が圧延方向と平行となるように所定のサイズへ切り出し、図2およびに図3に示した形状となるようにプレス加工を行った。このとき、ろう材面が外側となるようにした。プレートとしては、板厚が1.5mmの3003アルミニウム合金製圧延板を作製し、所定のサイズへ切り出した。フィンとしては、板厚が0.1mmの3003アルミニウム合金製圧延薄板を作製し、図2となるようにプレス加工した。プレートとチューブにフラックス(森田化学工業株式会社製、フラックスFL−7)をそれぞれ10g/mm2塗布した後、図2のように各部材を組み付け、窒素ガス雰囲気にて600℃で3分間保持することによって、ろう付加熱を行った。その後、プレートとチューブの接合部(図3(b)の破線の円で囲った箇所)の断面を観察するため、樹脂に埋め込んで、所定の位置まで研磨した。ろう付け状態の観察位置は、フィン側のプレート表面から0.5mmと1.0mmの位置の2カ所とした。それぞれのろう付接合状態を目視で観察して、2カ所とも空洞がなければ◎、1カ所は空洞があり他の1カ所は空洞がなしであれば○、2カ所とも空洞があれば×と判定した。90°曲げ試験時に割れが発生して、ろう付性を評価することができなかったものは、「−」と記載した。
Claims (3)
- 心材の少なくとも一方の面にろう材をクラッドしたアルミニウム合金ブレージングシートであって、
破断伸びが0.5%以上であり、加工硬化指数n値が0.05未満であることを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。 - 心材の一方の面にろう材をクラッドし、前記心材の他方の面に犠牲材をクラッドしたアルミニウム合金ブレージングシートであって、
破断伸びが0.5%以上であり、加工硬化指数n値が0.05未満であることを特徴とするアルミニウム合金ブレージングシート。 - 前記心材は、2000系、3000系、5000系および6000系アルミニウム合金のいずれかであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアルミニウム合金ブレージングシート。
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