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JP4207769B2 - 垂直磁気記録媒体およびその製造方法 - Google Patents

垂直磁気記録媒体およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、コンピュータの外部記録装置をはじめとする各種磁気記録装置に搭載される垂直磁気記録媒体およびその製造方法に関するものである。
磁気記録媒体の記録密度は、驚異的な伸びで増加しており、この流れが弱まる傾向は見えない。従来の長手記録方式では、記録密度の増加に必要な磁性粒子の微細化および磁性層膜厚の薄膜化に伴う磁化の熱擾乱が問題となり、記録密度に限界があると考えられている。近年は、その問題点を解決する為に、垂直磁気記録媒体の研究が急速に進んでいる。しかし、これら垂直磁気記録媒体においても、さらなる高密度化のためには低ノイズ化および熱安定性の向上が不可欠である。そのためには垂直磁気異方性エネルギーKuを大きくする必要がある。加えて記録層膜厚の薄膜化も必要不可欠となることから、薄い記録層膜厚でも高垂直磁気異方性エネルギーKuを有する材料の選択が重要となってくる。
従来のCoCrを主体とする合金薄膜において、特に磁性粒子粒界に酸化物等の非磁性物質を析出させたグラニュラー合金では、磁性粒子間が非磁性物質の介在によりほぼ完全に磁気的に絶縁されている。該合金においては、磁気的に絶縁された個々の粒子が最小の磁化単位となり、粗大クラスターの形成を抑制することで顕著なノイズ低減の効果が確認されている。
しかし、上述のグラニュラー型磁気記録媒体では極微小な粒子が非磁性物質により、ほば完全に孤立化されていることから、磁性粒子の体積が極端に小さくなり、磁気異方性エネルギーの大きさが熱エネルギーの大きさに近いものとなる。磁気異方性エネルギーと熱エネルギーとの大きさが同程度になった場合を考えると、熱擾乱によりスピンの向きは常に揺らいだものとなり、もはや記録状態を安定に保つことができなくなる。このために、グラニュラー合金を用いる媒体では記録情報の熱安定性や長期保存性が問題となり、その実用化は困難視されている。
こうした問題を解決するには、本質的に磁性体の磁気異方性エネルギーを高める必要があり、その方法としてCoPtやFePtなどのL10型(CuAu型)構造の高い結晶磁気異方性を有する規則合金を用いる検討が行われている。しかし、これら材料は準安定相として不規則fcc構造を有し、たとえばFePtの場合には約600℃以上の加熱処理によって規則化を行ってL10型規則構造を形成することが必要である。特に、記録の高密度化に対応して磁気記録層の膜厚を減少させる場合に、膜厚の減少に伴って合金の結晶性が低下するので、この規則化工程が重要である。この高温加熱処理プロセスは、量産には向かないということと、高温で熱処理を施す過程で結晶粒の粗大化により粒間相互作用が増大することという問題があり、規則化温度の低減が重要な課題である。
現在、このような規則化合金薄膜の規則化温度の低温化に関して、NaCl型結晶構造もしくはLiCl型結晶構造を有する下地層を有する基板を500℃に加熱して、L10規則合金膜を積層することが報告されている(特許文献1参照)。また、ミラー指数(100)の結晶面が基板と平行である下地層上に、Arガス圧およびターゲット基板間距離を特定の範囲内に規定したスパッタ法を用いることによって、400〜500℃の基板温度を用いることによりL10規則合金(FePt)膜を形成する方法が報告されている(特許文献2参照)。
さらに、FePt膜にMgOを添加するといった、規則合金膜への金属元素添加により、規則化温度の低減を図ることが報告されている(特許文献3参照)。これらの金属元素添加により、規則化温度は400℃近傍にまで低減されたが、磁気異方性エネルギーKu値の低下を招くという問題がある。今後は、このKu値の低下を抑制しながら、規則合金の合成温度の低減が課題であり、現在盛んに検討が行われている。
特開2001‐189010号公報 特開平11‐353648号公報 特開2002‐123920号公報
磁気記録媒体の高密度化のために3nmから15nmの膜厚を有する磁気記録層用材料が求められる現状において、熱安定性向上および低ノイズ化の両立に必要な高い磁気異方性エネルギーKuを有するL10型規則合金を、より低温にて形成する方法が強く求められている。より詳細には、高温熱処理による基板材料の制約を排除し、粒間相互作用の増大を抑制するために、より低温(たとえば400℃以下)においてL10型規則合金の規則化を可能とする方法を提供することが強く求められている。
我々は、鋭意検討した結果、Co(もしくはFe)とPtとを、単原子層膜厚(Co=約1.77Å、Fe=約1.43Å、Pt=約1.96Å)でスパッタ法により交互に積層させることで、上述の規則化合金の規則化温度の低減という問題を解決することができた。より詳細には、低温域においても原子拡散による準安定fcc構造からL10型規則fct構造への変換が促進され、磁気特性を著しく劣化させることなしに規則化温度を大幅に低下させることができた。すなわち、従来は600℃以上の温度処理が必要であったが、本発明の方法を用いることによって、室温から400℃の温度においての規則化が可能となる。
これにより、高温熱処理による結晶粒の肥大化を抑制し、かつ規則化温度を400℃以下とすることが可能となるので、本発明の磁気記録媒体およびその製造方法は、基板材料の制約も受けない。さらに、本発明の磁気記録媒体の製造方法は、量産化において問題のない低温にて実施することが可能である。また、非磁性基体と非磁性下地層の間に、優先結晶配向面が(100)面となる非磁性シード層を付与すると、さらなる効果がある。その非磁性シード層としては、NaCl型構造を有するMgO、NiO、TiO、またはTiの炭化物もしくは窒化物等が挙げられる。
以下に詳細に記載する本発明の規則化合金の積層手法を用いることで、CoPtもしくはFePt等の規則化温度は、従来のCoPtあるいはFePt合金ターゲット使用のスパッタ法、あるいはCo(もしくはFe)とPtとの同時スパッタによるco-sputter法に比べ、大きく低減することができた。このことから、基板材料の制約を無くし、熱プロセスによる粒成長(粒間相互作用の増大)を抑制することができる。
また、本発明を用いて、300℃の熱処理を行えば、例えば磁気記録層が5nmと非常に薄い場合であっても、保磁力Hcおよび垂直磁気異方性エネルギーKu値が、従来の垂直媒体に用いられているCoCrPt系磁性層垂直媒体よりも遥かに大きい値が得られる。したがって、今後より高記録密度化に向けて必要不可欠となる、記録層の薄膜化および高Ku値の確保を十分に満たすことができる。さらに、後加熱処理ではなく量産化などに有利な磁気記録層成膜時の加熱を用いることによっても、優れた特性を有する磁気記録媒体を得ることができる。
以下、本発明の好ましい形態について説明する。図1は本発明の垂直磁気記録媒体の断面模式図である。図1(a)は本発明の垂直磁気記録媒体の断面図であり、非磁性基体1上に非磁性シード層2、非磁性下地層3、磁気記録層4および保護膜5が順次形成された構造を有しており、さらにその上に液体潤滑層6が形成されている。
また図1(b)は、本発明の最大の特徴であるCo(もしくはFe)とPtとをそれぞれ1単原子層膜厚ずつ積層させた磁気記録層4の積層方法を説明するための断面図である。図1(b)においては、1つの例として各4層ずつを積層した磁気記録層4を示したが、所望される磁気記録層の膜厚は、積層数を適宜変更してコントロールすることができる。
非磁性基体1としては、通常の磁気記録媒体に用いられる、NiPメッキを施したAl合金や強化ガラス、結晶化ガラスをはじめ、表面酸化Siウェハ、溶融石英基体等を用いることができるほか、ポリカーボネート、ポリオレフィンやその他のプラスチック樹脂を射出成形することで作製したプラスチック樹脂基体も用いることができる。
非磁性シード層2は、結晶格子面のミラー指数(100)が基板と平行になる(すなわち優先結晶配向面が(100)面である)ように制御されたMgO,NiO,TiOまたは、Tiの炭化物もしくは窒化物からなる。これらの材料は、通常の条件で積層することによって(100)面が優先結晶配向面となる材料であるが、さらに膜厚あるいは成膜プロセス(成膜圧力など)を最適化することによって(100)配向性を向上させることが可能である。この非磁性シード層2上に、本発明における層構造、即ち非磁性下地層3と磁気記録層4を順次形成することにより、磁気記録層4中のL10形規則合金相の結晶格子面のミラー指数(001)を他の隣接層および基板と平行になるように制御することができる。これら非磁性シード層2は、その材料によって最適膜厚が異なるが、3nm以上15nm以下であることが大変望ましい。非磁性シード層2は、蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、レーザアブレーション、またはイオンビーム蒸着などの当該技術において慣用の方法により積層することができる。
次に非磁性下地層3は、主に磁気記録層の結晶配向や結晶粒径等の制御の目的で使用される。したがって、磁気記録層の規則合金膜における所望の配向面にあった適切な材料および構造の膜であればよい。例えばfcc構造を有するAg,Al,Au,Cu,Ir,Ni,Pt,Pdのうち少なくとも1種を含む金属または合金、あるいはbcc構造を有するCrまたはCr合金等を適宜用いることができる。これらの金属または合金を用いることにより、非磁性下地層3の表面は(200)面となり、その上に積層される磁気記録層4のL10型規則合金の優先結晶配向面を(001)面とすることが可能となる。また、磁気記録層4のL10型規則合金の結晶粒径を5nm以下に制御するためには、非磁性下地層と磁気記録層の膜厚および成膜プロセスの最適化が必要となり、それは非磁性下地層の薄膜化のような手段により達成することができる。非磁性下地層の膜厚は特に制限されるものではないが、磁気記録層の構造制御のためには、一般に5nm程度以上50nm程度以下であることが望ましい。非磁性下地層3は、蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、レーザアブレーション、またはイオンビーム蒸着などの当該技術において慣用の方法により積層することができる。
磁気記録層4は、Co(もしくはFe)層とPt層とを、単原子層膜厚(Co=約1.77Å、Fe=約1.43Å、Pt=約1.96Å)に相当する膜厚にて交互に積層することにより形成される。本発明の磁気記録層4を構成するそれぞれの層は、被覆すべき区域全体に原子が配列された連続層であることが好ましい。しかしながら、層の磁気的特性を低下させることがないことを条件として、原子が配列されていない区域を含む不連続層であってもよい。あるいはまた、層の磁気的特性を低下させることがないことを条件として、層の一部に2原子が堆積されていてもよい。磁気記録層4の形成には、蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、レーザアブレーション、またはイオンビーム蒸着などを用いることができ、特に好ましくは、DCマグネトロンスパッタ法を用いることができる。これら別個の元素を1チャンバー内で交互に積層する手法としては、たとえばそれら元素からなるロータリーカソードを用いるスパッタ法を挙げることができ、該方法により好適に所望の積層膜を形成することができる。
本明細書における膜厚とは、エリプソメトリ、触針法など当該技術において知られている方法で測定することができる平均膜厚を意味する。そして、Co、FeおよびPtのそれぞれについて、下記の膜厚は「単原子層膜厚に相当する膜厚」とみなすべきものである。Co層を積層する場合、1回の積層膜厚は0.1nm以上0.3nm以下、好ましくは0.17nm以上0.20nm以下であるべきである。同様に、Fe層を積層する場合、1回の積層膜厚は0.1nm以上0.3nm以下、好ましくは0.14nm以上0.16nm以下であるべきである。一方、Pt層を積層する場合、1回の積層膜厚は0.15nm以上0.35nm以下、好ましくは0.19nm以上0.21nm以下であるべきである。磁気記録層4の全膜厚は、それら元素の積層回数にて適宜コントロールすることができる。磁気記録層4の全膜厚は3nm以上15nm以下、好ましくは3nm以上5nm以下である。
磁気記録層4として成膜したCoPtまたはFePt合金の規則化は、成膜時の非磁性基体の加熱、あるいは積層後もしくは後述する保護膜および液体潤滑層の形成後の加熱処理によって達成することができる。成膜時の加熱により規則化を行う場合には、磁気記録媒体の既に形成されている他の層に悪影響を及ぼさないことを条件として、任意の非磁性基体温度において成膜および規則化を実施することができる。用いることができる非磁性基体温度は、400℃以下、好ましくは200℃以上400℃以下、より好ましくは300℃以上400℃以下である。あるいはまた、非磁性基体としてNiPメッキを施したAl基板を用いる場合、NiPの結晶化を防止するために、300℃以下、好ましくは200℃以上300℃以下、より好ましくは250℃以上300℃以下の非磁性基体温度を用いることが好ましい。上記のような非磁性基体温度において成膜を行うことによって、充分に規則化されたL10型規則合金層を形成することができる。磁気記録層を積層後もしくは後述する保護膜および液体潤滑層の形成後の加熱処理によって規則化を行う場合には、たとえば200℃以下のような任意の非磁性基体温度において成膜を実施してもよい。
磁気記録層を積層後あるいは後述する保護膜および液体潤滑層の形成後に、CoPtまたはFePt合金の規則化を行う場合には、400℃以下、好ましくは200℃以上400℃以下、より好ましくは300℃以上400℃以下の温度において、0.5〜2時間、好ましくは0.5〜1時間にわたって加熱処理を実施する。この加熱処理により、非磁性基体を加熱せずに成膜された磁気記録層を、充分に規則化されたL10型規則合金層とすることができる。なお、非磁性基体としてNiPメッキを施したAl基板を用いる場合、NiPの結晶化を防止するために、この加熱処理を300℃以下、好ましくは200℃以上300℃以下、より好ましくは250℃以上300℃以下の温度にて実施してもよい。
加熱処理によって得られるCoPt規則合金は、7×10J/m以上3×10J/m以下(7×10erg/cm以上3×10erg/cm以下)、好ましくは1×10J/m以上3×10J/m以下(1×10erg/cm以上3×10erg/cm以下)の垂直磁気異方性エネルギーKuを示す。一方、加熱処理によって得られるFePt規則合金は、7×10J/m以上7×10J/m以下(7×10erg/cm以上7×10erg/cm以下)、好ましくは1×10J/m以上7×10J/m以下(1×10erg/cm以上7×10erg/cm以下)の垂直磁気異方性エネルギーKuを示す。このように高いKu値を有することによって、薄膜化および結晶粒子の微細化によって各粒子の体積が微小化した際にも、磁気記録層4は高い熱安定性を維持し、かつノイズの少ない記録を行うことが可能となる。
磁気記録層4を構成する結晶粒子の構造および規則化の程度は、一般的なX線回折装置で確認することができる。fct−(001)、(002)または(003)面を表すピークのいずれかを観察できれば、fct構造が存在し、かつc軸が膜面に垂直に配向しているといえる。fct−(001)、(002)または(003)面を表すピークの強度は、具体的にはバックグラウンドレベルに対して有意なピークとして観察される強度であればよい。また、面内配向を示すfct−(111)のピークが観察されても、fct−(001)、(002)または(003)面を表すピークがより大きな強度で観察できれば、c軸が膜面に垂直に配向しているといえる。合金の結晶粒子が完全に無規則である場合、fct−(001)のピーク強度I(001)と、fct−(111)のピーク強度I(111)との比I(001)/I(111)の値は、0.3程度となる。本発明において、I(001)/I(111)の値は1.0以上であれば、結晶粒子のc軸が膜面に垂直に配向しているとみなされる。より好ましくはI(001)/I(111)の値は10以上である。
保護膜5は、たとえばダイヤモンドライクカーボン(DLC)のような、カーボンを主体とする薄膜が用いられる。シリコンカーバイド(SiC)、酸化ジルコニウム(ZrO)またはカーボンナイトライド(CN)のような、磁気記録媒体の保護膜として一般的に用いられる様々な薄膜材料を使用しても良い。保護膜5は、蒸着、スパッタ、イオンプレーティング、レーザアブレーション、CVDまたはイオンビーム蒸着などの当該技術において慣用の方法により積層することができる。保護膜5は、好ましくは1から5nm、より好ましくは2から4nmの厚さを有する。
液体潤滑層6は、フルオロカーボン系潤滑剤、たとえばパーフルオロポリエーテル系潤滑剤を用いて形成することができる。その他、磁気記録媒体の液体潤滑層材料として一般的に用いられる様々な潤滑材料を使用しても良い。液体潤滑層6は、ディップコート、吹付、スピンコート、ナイフコートなどの当該技術において慣用の方法により積層することができる。液体潤滑層6は、0.5から5nm、好ましくは1から2nmの厚さを有する。
非磁性基体として直径2.5インチの強化ガラスディスク基板を用いた。これを洗浄後スパッタリング装置内に導入し、Arガス圧0.67Pa(5mTorr)下でMgOをターゲットとして用いるRFスパッタリングにより、膜厚5nmの非磁性シード層を形成した。続いてPtからなる、Arガス圧0.67Pa(5mTorr)下でPtをターゲットとするDCスパッタリングにより、膜厚20nmの非磁性下地層を形成した。その後、Arガス圧2Pa(15mTorr)下のDCマグネトロンスパッタ装置中で、CoターゲットとPtターゲットとを交互に用いて、ターゲット電位400V、RF出力200W、ターゲット基板間距離8cmにおいて、それぞれ単原子層膜厚(0.177nm)のCo層および単原子層膜厚(0.196nm)のPt層を交互に積層して、磁気記録層4を形成した。
ここで、積層回数を調整することにより、磁気記録層膜厚δをδ=5nmから30nmまで変更した媒体を作製した。―方、同様の手法により、それぞれ単原子層膜厚(0.143nm)のFe層および単原子層膜厚(0.196nm)のPt層を交互に積層して、FePt規則合金からなる磁気記録層を有する磁気記録媒体を形成した。
その後、Arガス圧0.67Pa(5mTorr)下でカーボンをターゲットとして用いるDCスパッタリングにより、膜厚5nmのカーボン保護膜を形成した。最後に、パーフルオロポリエーテル系潤滑剤をディップコートして膜厚5nmの液体潤滑層を形成した。全ての層を形成した後に、基板温度が300℃となる条件で1時間保持し、熱処理を行った。
第1表は、このように作製したCoPt及びFePt規則合金媒体の、薄膜X線回折装置によって測定した、fct−(001)回折ピークとfct−(111)回折ピークとの強度比(I(001)/I(111))の磁気記録層膜厚依存性である。第1表から分かるように、記録層膜厚が増大するに従ってピーク強度比すなわち規則化の程度も増大する傾向にある。これは、記録層膜厚が増大するに従って結晶性が向上しているためと考えられる。本実施例の磁気記録層膜厚のそれぞれにおけるピーク強度比は、ほぼ100近傍にあり、加熱処理温度が300℃においても充分な規則化を達成できることが分かった。以上のことから、単原子層膜厚に相当する膜厚で構成原子を交互に積層することによって、L10型規則合金の規則化温度を著しく低減できたといえる。
Figure 0004207769
図2は、本実施例のCoPt規則合金媒体における保磁力Hcおよび垂直磁気異方性エネルギーKuの磁気記録層膜厚依存性を示すグラフである。Hcは試料振動型磁力計(VSM)によって測定し、Ku値は磁気トルクメーターにより測定した。この図を見ると、ピーク強度比の変化と同様に、膜厚が増大するに従ってHcおよびKu値ともに増加しており、特に薄い膜厚5nmの媒体においてもHc=370kA/m(4.6kOe)、Ku=7.8×10J/m(7.8×10erg/cc)と非常に大きな値を得るに至った。
磁気記録層の膜厚を10nmに固定し、全層形成後の加熱処理温度Tsを室温(加熱処理をしない、すなわちas−deposited)から500℃まで変更した以外は、実施例1と同様にして、垂直磁気記録媒体を作製した。
第2表に、このように作製したCoPt及びFePt規則合金媒体のI(001)/I(111)の加熱処理温度依存性を示した。なお、加熱処理時間は、実施例1と同様に1時間とした。第2表から分かるように、CoPtおよびFePtのいずれを用いた場合にも、加熱処理温度の上昇に伴い規則化の度合いも増大し、400℃では、ほとんどfct−(111)のピークが確認できなくなった。
Figure 0004207769
また、室温(第2表中の25℃、as−deposited)においても、fct−(001)ピークが確認できたと同時に、ピーク強度比I(001)/I(111)は、あまり大きくないものの、ランダム配向時のピーク強度比0.3よりも大きく(001)面が優先配向しているといえる。結晶性があまり良くないことと、膜全面が均一に規則化していないことから、ピーク強度比が小さいと考えられるが、シード層および下地層の配向を完全に制御することと、磁気記録層におけるプロセスの最適化等により、加熱処理温度が200℃以下でも充分に規則化がなされると考えられる。
図3は、本実施例のFePt規則合金を用いた磁気記録媒体における垂直磁気異方性エネルギーKuおよび保磁力Hcの熱処理温度依存性を示すグラフである。ピーク強度比の変化と同様に、加熱処理温度が上昇するに従って、HcおよびKu値ともに増加しており、特に室温(as−deposited)においてもHc=250kA/m(3.2kOe)、Ku=6.9×10J/m(6.9×10erg/cc)と非常に大きな値を得るに至った。
図4は、本実施例のCoPtおよびFePt規則合金を用いた磁気記録媒体の、Ku値の加熱処理温度依存性を比較したグラフである。図4から分かるように、ともに室温(as−deposited)にて大きなKu値を有していることがわかる。また、高温熱処理領域で、CoPtおよびFePt規則合金媒体のKu値が大きく異なるのは、CoPt規則合金ではKu値がバルクで3.0×10J/m(3.0×10erg/cc)、一方FePt規則合金では同バルクにて7.0×10J/m(7.0×10erg/cc)であり、FePt規則合金の方が垂直磁気異方性が大きいことによるためである。
磁気記録媒体を形成する全ての層の形成後に熱処理を行う代りに、磁気記録層の成膜時にヒーターを用いて非磁性基体を300℃に加熱したことを除いて実施例1と同様にして、CoPt規則合金からなる膜厚10nmの磁気記録層を有する磁気記録媒体を形成した。また、同様の手法により、FePt規則合金からなる膜厚10nmの磁気記録層を有する磁気記録媒体を形成した。
上記のように作製したCoPt及びFePt規則合金媒体と、全ての層の形成後に1時間にわたって300℃の加熱処理を行った媒体との特性を比較した。結果を第3表に示す。
Figure 0004207769
磁気記録層形成時の非磁性基体加熱により規則化を行った本実施例の媒体の特性は、CoPtおよびFePtいずれの規則合金においても、後加熱処理を行った実施例1の媒体のピーク強度比および磁気異方性値Kuに関して、若干の数値の低下は見られるものの、大きな劣化は見られなかった。以上の結果から、後加熱処理を用いることなく成膜時の加熱を用いることにより、特性の優れたCoPtおよびFePt規則合金の磁気記録層が得られることが明らかとなった。本実施例の方法は、磁気記録媒体の量産化において特に有用である。
本発明による磁気記録媒体の構成を示し、(a)は磁気記録媒体の模式断面図であり、(b)は磁気記録層の積層構造を示す模式断面図である。 各層形成後にTs=300℃、1時間の熱処理を施した媒体における、垂直磁気異方性エネルギーKuおよび保磁力Hcの磁気記録層膜厚依存性を示すグラフである。 磁気記録層膜厚をδ=10nmに固定した媒体における、垂直磁気異方性エネルギーKuおよび保磁力Hcの熱処理温度依存性を示すグラフである。 それぞれの磁気記録層膜厚をδ=10nmに固定した媒体における、CoPt規則合金媒体およびFePt規則合金媒体における垂直磁気異方性エネルギーKuの熱処理温度依存性の比較を示すグラフである。
符号の説明
1 非磁性基体
2 非磁性シード層
3 非磁性下地層
4 磁気記録層
5 保護膜
6 液体潤滑層
11 Co(またはFe)層
12 Pt層

Claims (13)

  1. 非磁性基体上に少なくとも非磁性シード層、非磁性下地層、磁気記録層、保護膜、液体潤滑層が順次形成されてなる垂直磁気記録媒体において、
    前記磁気記録層が、0.1nm以上0.3nm以下の膜厚のFeと、0.15nm以上0.35nm以下の膜厚のPtとを交互に積層することにより形成されており、L10型規則構造である領域を含むFePtを主体とする合金からなり、
    前記非磁性シード層がNaCl型構造を有するMgO、NiO、TiO、またはTiの炭化物もしくは窒化物であり、かつその優先結晶配向面が(100)面である
    ことを特徴とする垂直磁気記録媒体。
  2. 前記磁気記録層の膜厚が3nm以上15nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
  3. 前記磁気記録層中のL10型規則構造である領域の(001)結晶格子面が、前記磁気記録層の膜面と平行に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
  4. 前記非磁性下地層が、fcc構造を有するAg、Al、Au、Cu、Ir、Ni、PtおよびPdからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属または合金、もしくはbcc構造を有するCrまたはCr合金からなることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
  5. 前記非磁性下地層が5nm以上50nm以下の膜厚を有することを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
  6. 前記非磁性シード層が3nm以上15nm以下の膜厚を有することを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
  7. 前記非磁性基体が、Al基板、表面酸化Siウエハ、溶融石英基体、ガラス基体、およびプラスチック樹脂基体から成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
  8. 前記磁気記録層の垂直磁気異方性エネルギー値Kuが、7×10J/m以上7×10J/m以下であることを特徴とする、請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
  9. 前記磁気記録層はDCマグネトロンスパッタリング法により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の垂直磁気記録媒体。
  10. 非磁性基体上に非磁性シード層を設ける工程であって、前記非磁性シード層がNaCl型構造を有するMgO、NiO、TiO、またはTiの炭化物もしくは窒化物であり、かつその優先結晶配向面が(100)面である工程と
    非磁性シード層上に非磁性下地層を設ける工程と
    前記非磁性下地層の上に、0.1nm以上0.3nm以下の膜厚のFeと、0.15nm以上0.35nm以下の膜厚のPtとを交互に積層して、L10型規則構造である領域を含むFePtを主体とする合金からなる磁気記録層を形成する工程と、
    前記磁気記録層上に保護膜を設ける工程と、
    前記保護膜上に液体潤滑層を設ける工程と
    を具えたことを特徴とする垂直磁気記録媒体の製造方法。
  11. 前記磁気記録層を、DCマグネトロンスパッタリング法にて形成することを特徴とする請求項10に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
  12. 前記磁気記録層の形成後に、400℃以下の温度条件で加熱処理を行う工程をさらに具えたことを特徴とする請求項10に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
  13. 前記磁気記録層を形成する工程において、前記非磁性基体の温度が400℃以下であることを特徴とする請求項10に記載の垂直磁気記録媒体の製造方法。
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