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JP4298556B2 - 透明ガスバリアフィルム - Google Patents

透明ガスバリアフィルム Download PDF

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JP4298556B2
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Description

本発明は、ガスバリア機能を備えた積層体に関する。また本発明は、上記の積層体を用いたディスプレイ素子に関する。
情報化社会の著しい発達に伴い、膨大な情報を表示する技術、すなわちディスプレイ技術も急速に進展しつつある。従来まで大きな市場を持っていたCRT(Cathode Ray Tube)は省スペース化、低電力化の流れを受け、各種のFPD(Flat Panel Display)、すなわち、液晶(LCD)やプラズマディスプレイパネル(PDP)、さらには有機ELディスプレイ(OELD)にとって替わられつつある。特に、有機ELディスプレイは、
「自発光であるために視野角依存性が少ない。」、
「応答速度が非常に早いので動画表示に適している。」、
「製造プロセスが単純であるために低コスト化が可能である。」
などの理由から次世代のディスプレイとして注目が高まっている。また、有機ELディスプレイは構造が簡単であるために非常に薄く、軽くできることが魅力の一つである。一方では従来の有機ELディスプレイは、ガラスを基板とした物が多く、形状設計の自由度という点では制限があった。このような視点から今まで用いられてきたガラス基板をプラスチック基板に置き換え、フレキシブル化を図る試みがなされている。ただ、ガラスに比してプラスチックは一般的に酸素、水蒸気透過性が高く、一方で有機EL素子は、酸素、水蒸気によって劣化しやすいという傾向がある。このためガスバリア性に優れたプラスチックフィルムが求められている。
従来、ガスバリア能を有するプラスチックフィルムとしては、食品包装等の分野を中心にプラスチックフィルムにアルミニウム、もしくはその酸化物などの薄膜を形成する方法が一般的であり、特開昭58-217344(特許文献1)などにその報告があるが、達成される水蒸気バリア能は0.5〜2 g/day/m2程度のものであり、10-5g/day/m2以下の非常に高い水蒸気バリア能が必要といわれている有機ELディスプレイ用途の基板においては十分とは言えない。また、ポリ塩化ビニリデンやポリテトラフルオロエチレンなどのバリア性の高いプラスチックや、ポリビニルアルコールなどの樹脂を塗布した基材フィルムを用いる例もあるが、樹脂はその構造上、自由体積を有し、熱によりガスバリア性の変化が比較的大きいため使用温度が制限されることが多い。
他の例としては、有機樹脂により平滑化されたプラスチック表面に無機層をできるだけ緻密に製膜する方法が特開平9-76400(特許文献2)などに報告されており、高ガスバリア能を達成する上で非常に有効な方法であるとされている。しかしながら、市場からは民生用途への展開へ向けて、種々の形状に加工できかつ広い温度範囲においても優れたガスバリア性を有する樹脂フィルムを求める声がある。このため、変形させてもガスバリア性能を維持できる耐屈曲性、耐熱性、耐薬品性、耐久性に優れるガスバリアフィルムが求められていた。
特開昭58−217344公報 特開平9−76400公報
本発明者らが検討した結果、表面平滑化のために樹脂層を形成した従来のガスバリアフィルムは、経時的に無機薄膜層の劣化が起こり、耐久性が十分とは言えないことを見出した。また、その原因が、樹脂層が吸水することにより、無機薄膜層の破壊が起こるためであることを突き止めた。
従って本発明の課題は、従来の性能を維持したまま耐久性に優れた透明ガスバリアフィルムを提供することにある。さらには上記の透明ガスバリアフィルムを用いたディスプレイ用素子を提供することにある。
上記の課題を解決するため本発明者らが検討した結果、透明樹脂基材と、特定の組成を持ち、表面が親水化処理された有機樹脂層と、無機薄膜層とを含む積層構造を有するフィルムがガスバリア性、密着性、耐熱性に優れ、かつ吸水性が低いことを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、
1)透明樹脂基材(A)と、
3級炭素を有する置換基および/または炭素−炭素多重結合を有する置換基を含む有機樹脂層(B)と、無機薄膜層(C)とが、(A)/(B)/(C)の順の積層構造を持ち、
有機樹脂層(B)の無機薄膜層(C)側表面が親水化処理され、かつ無機薄膜層(C)側表面の1μm四方の平均粗さ(Ra)が0.7nm以下、最大粗さ(Ry)が7nm以下である透明ガスバリアフィルムであり、
2)好ましくは前記有機樹脂層(B)が、アクリレート樹脂および/またはメタクリレート樹脂を含む有機樹脂層(B1)であることを特徴とする透明ガスバリアフィルムであり、
3)好ましくは有機樹脂層(B)の無機薄膜層(C)側表面の、水との接触角の親水化処理前後での差が、30°以上であることを特徴とする透明ガスバリアフィルムであり、
4)好ましくは無機薄膜層(C)が少なくともインジウムの酸化物を含む透明ガスバリアフィルムであり、
5)上記の透明ガスバリアフィルムを用いたディスプレイ用光学素子、である。
本発明の透明ガスバリアフィルムは、少なくとも透明プラスチックフィルムと有機樹脂層と無機薄膜層を含む構造を有し、該有機樹脂層は、吸水性が低く、且つ表面は親水性を有しているために、耐屈曲性、耐熱性、耐薬品性、耐久性に優れたガスバリアフィルムを提供することができる。
本発明のガスバリアフィルムは、透明樹脂基材(A)と、特定の有機樹脂層(B)と、無機薄膜層(C)とが、(A)/(B)/(Cの順の積層構造を有している。上記(A)/(B)/(Cの順の積層構造を有していれば、透明樹脂基材(A)、特定の有機樹脂層(B)、無機薄膜層(C)は、2層以上含まれていても良い。例えば、有機樹脂層(B)と無機薄膜層(C)とは必要に応じて二層以上交互に積層されていてもよいし、基材(A)、有機樹脂層(B)、無機薄膜層(C)を含むフィルムを2枚以上、例えば、粘着剤層(D)を介して積層させても良い。また、本発明のガスバリアフィルムは、本発明の目的に反しない範囲で、基材(A)、有機樹脂層(B)、無機薄膜層(C)以外の層を含んでいても良い。この様な層としては、帯電防止層、調光層、表面保護層、防汚層、耐溶剤、光取り出し効率向上層などの機能透明層(E)が挙げられる。尚、本発明においては、粘着材層とは接着材層の意を含むことがある。
本発明において、透明とは、可視光線透過率が50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは、80%以上であることを言う。可視光線透過率の上限値は、100%であるが、実際には表面反射や、材料による吸収があるので95%以下である場合が多い。
先ず、各層について説明する。
<透明樹脂基材(A)>
本発明にかかる透明樹脂基材(A)としては、透明性を有するフィルムであれば特に制限はない。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリエステル、ポリメチルメタアクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアセテート、ポリアミド、ポリ4−メチル1−ペンテン、セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、アクリロニトリル系樹脂、フェノール樹脂、フェニレンオキサイド系樹脂、環状ポリオレフィン等の透明性を有する樹脂からなるフィルムを例示できる。
本発明の透明樹脂基体(A)の厚さも特に制限はないが、フィルムの自立性、ハンドリング性、強度等を考慮すると、10μm〜250μm、好ましくは50μm〜200μmであることが好ましい。
<有機樹脂層(B)>
本発明にかかる有機樹脂層(B)は、炭素、水素の他、必要に応じて酸素、窒素、硫黄等の所謂ヘテロ原子により構成される。本発明に係る有機樹脂層(B)は、吸水率が低いことが好ましいので、ヘテロ原子は少ないことが好ましい、一方で、前記の基材(A)がPETなど、ヘテロ原子を有する物を用いる場合は、基材(A)と有機樹脂層(B)との密着性を高めるためにヘテロ原子を含む有機樹脂層(B)とすることが好ましい。
本発明の有機樹脂層(B)は、3級炭素を有する置換基および/または炭素−炭素多重結合を有する置換基を含んでいる。これらの置換基は、疎水性であり、かつ、プラズマ処理などでラジカルを発生しやすい構造である。このため、有機樹脂層(B)の吸水率を低くでき、且つ、その表面を容易に親水化し、後述する無機薄膜層(C)との密着性を高めることが出来る。
従来、ガスバリアフィルムにおいて有機樹脂層は一般に無機薄膜層と基材との密着性の向上、基材フィルム表面を平滑化(ガスバリア性の欠陥の原因となる凹凸の除去)に用いられる。このため無機薄膜層を製膜する時に、核発生密度を増加させるようにヒドロキシル基やカルボキシル基、ウレタン結合等の無機物と相互作用しやすいサイトを多く含む樹脂が用いられることが多い。しかし、これらのような極性基を有機樹脂層に多く含ませると、樹脂が経時的に吸水膨張し易く、隣接する無機層を破壊することがあることを本発明者らは見出した。
これに対し、本発明にかかる有機樹脂層(B)は、吸水率が低いにも関わらず、少なくとも後述する無機薄膜層(C)側の表面が親水化されているので、無機薄膜層(C)との密着性が高い。このため、有機樹脂層(B)は経時的に安定で、無機薄膜層(C)と高い密着性を長期にわたって維持できる、すなわち高い耐久性を有すると考えられる。
本発明にかかる有機樹脂層(B)に含まれる3級炭素を有する置換基や、炭素−炭素二重結合を有する置換基は、公知の物を制限なく用いることが出来る。尚、本発明において3級炭素を有する置換基とは、3級炭素が炭素以外の元素と結合している置換基のことを指す。例えば、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸t-アミル等のt-ブチル基、t-アミル基が挙げられる。また、3,3−ジメチル3−クロロ1−ペンチル基のような一般には1級置換基と呼ばれる物であっても、置換基内に炭素以外の元素と結合する3級炭素を有するものであっても良い。
本発明に係る3級炭素を有する置換基や、炭素−炭素二重結合を有する置換基として特には、炭素と水素のみで構成される炭化水素基であることが、有機樹脂層(B)の疎水性と親水化処理のし易さ両立する上で好ましい。これらの置換基として具体的には、t-ブチル基、t-アミル基等の3級炭素を有する基、ベンジル基、α-フェネチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基等の芳香族基を有する炭化水素基、アリル基、メチルアリル基等の内部オレフィンやビニル基等の炭素−炭素2重結合を有する基等を例示することが出来る。これらの基は、疎水性を示す基であり、かつ、ラジカルが発生し易い性質を有する。
本発明の有機樹脂層(B)は、公知の重合法によって製造する事が出来る。例えば、上記の置換基を有するモノマーを重合することで得ることが出来る。この様なモノマーとしては、上記の置換基を有している限り、特に制限はないが、モノマーを合成する自由度、コスト、重合効率を鑑みると、アクリレート、メタクリレートを好ましい例として挙げることが出来る。すなわち本発明の有機樹脂層(B)は、アクリル樹脂やメタクリル樹脂を含むことが好ましい。これらのモノマーは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、他の公知のモノマーと組み合わせて用いることも可能である。
本発明に係る有機樹脂層(B)は、上記の置換基を3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上含んでいることが好ましい。また、上記の置換基を有するモノマーを用いて有機樹脂層(B)を形成する場合、上記モノマーは、全モノマーの10質量%以上が好ましく、さらに好ましくは20質量%以上である。加えて上記の置換基は樹脂を形成する高分子の主鎖ではなく側鎖に形成されていることが好ましい。これらの事項は、公知の分析法、例えば赤外分光法(IR)や核磁気共鳴スペクトル(NMR)のシグナルや緩和時間などから決定することが出来る。
本発明にかかる有機樹脂層(B)の製造には、樹脂層の架橋度を高め、耐熱性や強度を高める目的で多官能性のモノマーを用いることが好ましい。より好ましい例としては、5官能以上のモノマーが挙げられる。特に好ましくはジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートやジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、もしくはそれらの混合物を例示することができる。これらのモノマーは、重量比にして50質量%〜90質量%含まれていることが好ましい。
さらに上記の他、耐薬品性を高めるために、凝集力の高いウレタンアクリレートもしくはウレタンメタクリレートを有するモノマーを併用してもよい。本発明におけるウレタンアクリレートもしくはウレタンメタクリレートを有するモノマーは、公知のものを制限なく用いることができる。これらの化合物は、硬化させる時の架橋度を増すために多官能性の(メタ)アクリレート、特には三官能以上の多官能(メタ)アクリレートであることが望ましい。このようなウレタンアクリレートまたはウレタンメタクリレートは、例えばイソシアネートとヒドロキシル基を有するアクリレートまたはメタクリレートにとから容易に合成することができる。上記ウレタンアクリレートもしくはウレタンメタクリレートを有するモノマーの使用量は特に制限はないが、ウレタン構造は吸水性の高い構造であるため、多量に用いるとウレタン部分で吸水する可能性が高くなるため、重量比にして40質量%以下、好ましくは20質量%以下であることが望まれる。
また、本発明で用いる有機樹脂層(B)は必要に応じて、金属アルコキシドもしくは金属アルコキシドを導入した有機化合物を含んでいても良い。具体的には、金属アルコキシドとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジアルコキシジルコニウム、ジアルコキシチタンなどの2官能性のアルコキシド、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリアルコキシアルミニウム、トリアルコキシジルコニウム、トリアルコキシチタンなどの3官能性金属アルコキシド、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、テトラアルコキシジルコニウム、テトラアルコキシチタンなどの4官能性金属アルコキシドを例示できる。また金属アルコキシドを導入した重合性の有機化合物としてはγ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルフェニルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルフェニルジメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルフェニルジエトキシシランなどを例示することができる。これらの金属アルコキシドを導入した有機化合物の添加量は特に制限はないが、前述した樹脂の吸水膨張を防ぐ観点から、樹脂全体量に対し、重量比にして好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下であることが望ましい。
本発明において、上記モノマーの重合方法は、公知の方法を制限なく用いることが出来る。その中でも、重合雰囲気の影響の少ないラジカル重合が好ましい例として挙げられる。ラジカル重合は、熱、光、プラズマ等の様々な手段によって行うことが可能であるが、この際、重合開始剤を併用することが好ましい。本発明において、重合開始剤は、熱、光、プラズマなどにより、容易にラジカルが発生する物であれば特に限定されない。具体例を挙げると、熱重合開始剤としては、α, α’-アゾイソブチロニトリル、α, α’-アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系重合開始剤、過酸化ベンゾイル等の過酸化物系重合開始剤、レドックス系重合開始剤等が挙げられる。光開始剤としては、ベンゾフェノン、アセトフェノンなどの公知の化合物を制限なく用いることが出来る。
本発明における有機樹脂層(B)の膜厚は、各種用途により要求される製造コストや表面平滑性などの要件に応じて適宜決定されるので特に制限はないが、一般的には0.1〜20μm、より好ましくは0.1〜10μmである。
本発明における有機樹脂層(B)は、上記の樹脂を合成した後、公知の方法で膜状に形成しても良いが、好ましくは、モノマーやオリゴマーの状態で基材(A)に塗布した後、熱、紫外線、放射線、電子線、プラズマなどによって重合、硬化させる方法が、表面平滑性を高める観点などから好ましい例として挙げられる。この際、必要に応じて溶媒を併用いても良い。
上記の塗布する方法としては、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレーコート、スピンコート等の公知の方法を制限なく用いることができる。
本発明の有機樹脂層(B)は、平滑であることが好ましい。具体的には、後述する本発明の透明ガスバリアフィルムの表面と同様の平滑性を有することが好ましい。
本発明の有機樹脂層(B)の組成や構造は、前記のIR、NMR等の公知の方法で調べることが出来る。また、X線光電子分光法(XPS)やオージェ電子分光法(AES)や2次イオン質量分析(SIMS)は局所分析、深さ方向の分析が可能である。このため、膜厚をも調べることができる。
<有機樹脂層(B)の表面親水化処理>
本発明にかかる有機樹脂層(B)の表面親水化処理としては、例えばラジカル発生を伴う公知の方法を制限なく用いることができる。好ましい例としては、酸素などのガスの存在下に、プラズマ放電を行うプラズマ処理を挙げることが出来る方法。この方法では、樹脂表面に選択的にラジカルが発生し、発生したラジカル部分と酸素との結合により極性の高いヒドロキシル基やカルボキシル基が生成する。処理時間と電力においては特に制限はないが、著しく大きな電力量で処理した場合、表面の劣化と粗さの増大を引き起こすため、電力量は好ましくは1kJ〜10kJであり、特に好ましくは2kJ〜5kJである。
有機樹脂層(B)の無機薄膜層(C)側表面の水による接触角は、親水化処理の前後での差が30°以上となる事が好ましい。より好ましくは、35°以上、特に好ましくは、40°以上である。また、本発明に係る親水化処理されている有機樹脂層(B)の無機薄膜層(C)側表面は、後述する親水化処理後の水滴との接触角が好ましくは40°以下、より好ましくは30°以下になることが、無機薄膜層(C)との密着性向上の為に望ましい。
<無機薄膜層(C)>
本発明にかかる無機薄膜層(C)に関しては、透明でガスバリア性を有する物であれば特に制限はないが、例えば、珪素、インジウム、錫、亜鉛、セリウム、チタン、アルミニウム等の一種類以上の金属を含む酸化物、もしくは窒化物、もしくは酸化窒化物などを用いることができる。具体的な例として、窒化珪素薄膜や酸化窒化珪素薄膜、酸化インジウムやインジウムとすずと酸素とからなるITO薄膜等のインジウムを含む酸化物薄膜が好ましく、特にはインジウムを含む酸化物薄膜が好ましい。また、可視光域における透明性、かつ所望のガスバリア性能を満たす範囲内であれば、これら無機薄膜に水素や炭素等が含有されていても、なんら本発明を阻害するものではない。
本発明における無機薄膜層(C)の膜厚は、ガスバリア性能、およびガスバリア性能に対する耐屈曲性の観点から、好ましくは5〜500nm、より好ましくは10〜200nmであり、各種用途に応じて設定される反射特性や製造コスト等に応じて適宜選択される。
本発明における無機薄膜層(C)は、1層である必要ではなく、構成する化合物の種類、屈折率、膜厚等の異なる2層以上から構成されていても良い。また、ITO薄膜をはじめとする導電性を持つ無機薄膜層を用いることで、該無機薄膜層を透明導電層として用いることも可能である。
本発明において、窒化珪素薄膜や酸化窒化珪素薄膜、さらにはITO薄膜を代表例とする無機薄膜層(C)は、公知の成膜方法で、好ましくは有機樹脂層上に形成することが出来る。具体的には、スパッタやプラズマCVD(化学気相堆積)法により成膜を行う方法を例示することが出来る。なかでもスパッタリング法は電力、ガス圧等を変えることで膜質を制御でき、またガスバリアフィルムに適した緻密な膜を形成できるために好ましく、具体的には酸化インジウムと酸化すずの焼結体等をターゲットとし、スパッタガスにアルゴン等の不活性ガス、もしくはアルゴンと酸素の混合ガスを用い、直流(DC)あるいは高周波(RF)マグネトロン方式でプラズマ発生させる方法を例として挙げることができる。
無機薄膜は適当な製膜条件を選ぶことにより、金属/酸素/窒素組成比や所望のガスバリア性能ならびに屈折率を有する膜を得ることができる。例えば、ITO膜は、ターゲットである酸化すずと酸化インジウムとの質量比、スパッタガスのアルゴン、酸素、水素等のガスの分圧を調整することによって、所望のガスバリア性能を得るとともに屈折率を2.0〜2.4の範囲で制御することが可能である。この様な方法で形成したITO薄膜層は、高いガスバリア能を有するだけでなく、例えば透明電極として用いることが出来る導電性のほか、反射防止能を付与することができる。これは、通常有機樹脂層(B)の屈折率が通常2未満、多くは1.7以下であるためである。
<粘着剤層(D)>
本発明において、必要に応じて用いることが出来る粘着剤層(D)は、透明樹脂基材(A)に有機樹脂層(B)、無機薄膜層(C)を積層した透明ガスバリアフィルムを複数枚貼り合せたり、透明樹脂基材(A)、有機樹脂層(B)、無機薄膜層(C)の他に後述する機能性透明層(E)を積層する場合等に、必要に応じて用いられる。
本発明の粘着材層としては、透明であれば、公知の粘着材を制限無く用いることが出来る。具体的には、特開平10−217380号公報や特開2002−323861号公報等に記載されているものを採用することが出来る。
本発明における粘着材層としては、接着剤層を用いることもできる。接着剤としては透明であれば公知の物を用いることができる。具体的にはエポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シアノアクリレート系の瞬間接着剤、変性アクリレート系接着剤などを例としてあげることができる。
本発明の粘着材層(D)は、無機薄膜層(C)と接触させる場合、吸水性の低いものであることが好ましい。
<機能性透明層(E)>
本発明において、必要に応じて用いることが出来る機能性透明層(E)としては、防眩層やハードコート層、防汚層、帯電防止層、調色層、反射防止層、光取り出し効率向上層等が採用できる。これらの層は上記の透明ガスバリアフィルムの一方の面もしくは両面、もしくは内部に用いることができる。また本発明で用いられる有機樹脂層(B)もしく粘着剤層(D)に無機微粒子等の適当な添加剤を加えたものを機能性透明層(E)とすることもできる。
これらの機能性透明層については、より詳細には特開平10−217380号公報や特開2002−323861号公報等に記載されているものを採用することが出来る。
<透明ガスバリアフィルムの構成>
本発明の透明ガスバリアフィルムは、上記の透明樹脂基材(A)と、有機樹脂層(B)と、無機薄膜層(C)とが、(A)/(B)/(C)の順の積層構造を有することを特徴とする。図1は本発明の透明ガスバリアフィルムの構成の一例を示す断面図である。図1で示される透明ガスバリアフィルムは、例えば下記のような方法で製造することが出来る。PET等の透明プラスチックフィルム10上に、有機樹脂層11としてアクリルウレタン樹脂等をスピンコートした後、紫外線(UV)で硬化させる。この有機樹脂層11表面を酸素存在下のプラズマ処理で親水化させる。最後にITO等の無機薄膜層12を真空成膜法などで形成する。
また、本発明の透明ガスバリアフィルムは、本発明の目的の範囲であれば、上記の3種3層構造である必要はなく、(A)/(B)/(C)の順となる組合せが存在すれば、より多層の積層構造であっても構わない。例えば(A)/(B)/(C)/(B)/(C)のように有機樹脂層、無機薄膜層を二層ずつ交互に積層することも可能であるし、粘着剤層(D)を用いて(A)/(B)/(C)/(D)/(A)/(B)/(C)のように二枚以上の透明ガスバリアフィルムを貼り合せてもよい。また、必要に応じて機能性透明層(E)を直接、または粘着剤層(D)を介して形成することができる。これらの場合、各層で使用される有機樹脂層(B)や無機薄膜層(C)は同じ物質、同じ膜厚でなくても構わない。例えば、無機薄膜層として構造の異なる(C1)、(C2)を用い、(A)/(B)/(C1)/(B)/(C1)/(B)/(C2)や、(A)/(B)/(C1)/(C2)のような4層以上の積層構造のフィルムとすることもできる。この際、(C1)としてインジウム酸化物、窒化珪素、酸化窒化珪素等のガスバリア能に優れた緻密な膜を形成し、(C2)としてはITO等の導電性に優れた膜を形成することで、非常に高いガスバリア性を有する透明電極としてとすることが可能である。また、透明樹脂基材(A)、有機樹脂層(B)、無機薄膜層(C)のそれぞれの層の屈折率を制御することによって反射防止性能を付与することも可能である。ただし、層数が増加することで製造コストが高くなったり、透明性、色、反射等の性能の制御、歩留まりの保持等が困難になることがあるので、各層の層数の上限は、好ましくは10層以下、より好ましくは7層以下である。
本発明の透明ガスバリアフィルムは、無機薄膜層(C)側表面の1μm四方の平均粗さ(Ra)が0.7nm以下、好ましくは0.5nm以下であり、最大粗さ(Ry)が7nm以下、好ましくは5nm以下である。上記の平均粗さ、最大粗さは、AFM等の走査型プローブ顕微鏡を用いた表面凹凸像から測定され、任意の3点の測定値の平均値である。これは、例えば、主に有機樹脂層(B)を平滑に形成することによって実現することが出来る。
通常、有機樹脂層の平均粗さは、透明ガスバリアフィルムの無機薄膜層(C)側表面の平均粗さとほぼ同じ、もしくは少々大きな値となる傾向がある。無機薄膜層(C)を真空成膜法で形成すると、よりその傾向が強い。このため、有機樹脂層(B)の表面粗さの値を本発明の透明ガスバリアフィルムの表面粗さの値として代用しても差し支えはないことが多い。
本発明の透明ガスバリアフィルムは、表面が非常に平滑であるので、ガスバリア性に優れると共に耐屈曲性にも優れている。また、有機樹脂層(B)を架橋樹脂などにすることにより、耐薬品性などに優れている。また、有機樹脂層(B)の吸水率が比較的低く出来るので、無機薄膜層が破壊され難く、長期にわたって良好なガスバリア性を維持することが出来ると考えられる。このため種々のガスバリア用途に好適に用いることが出来る。特に今後、急速な普及が期待されている有機EL素子等のディスプレイ用光学素子の基体などに好適に用いることが出来る。
本発明の透明ガスバリアフィルムを用いたディスプレイ用光学素子、例えば有機EL素子は、光学素子として優れた性能を長期にわたって示すだけでなく、形状の自由度が大きい等の利点を有するため、様々なディスプレイ用途に用いることが出来ると期待される。
以下に、本発明の実施形態例を示す。尚、当然のことながら本発明は係る実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術範囲において、種々の形態に変更することが可能である。
実施例1
下記のように、図1と同様の構成のガスバリアフィルムを作製した。
(1)有機樹脂層の塗布、硬化
厚みが125μmのPETフィルム(帝人・デュポン(株)社製)上に、アクリルウレタン系UV硬化樹脂(三井化学(株)製 商品名RA1353)100質量部に対しベンジルメタクリレート20質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティケミカルズ製 イルガキュアー184)を4質量部を加え、酢酸ブチルで5倍に希釈した溶液をスピンコート(2000rpm、10秒)により厚み1μmとなるように塗布した。塗布したフィルムを60℃、80℃、120℃でそれぞれ一時間ずつ乾燥後、1000mJ/cmでUV照射を行い、プラスチック上に硬化樹脂層形成した。
(2)有機樹脂層の酸素プラズマ処理
(1)で得られた積層フィルムを酸素プラズマ処理(100W、酸素分圧10mTorr、30秒)し、表面親水化を行った。
(3)無機薄膜の製膜
(2)で得られた積層フィルムの親水化された硬化樹脂層表面に直流マグネトロンスパッタリング法(アルゴンガス分圧:2mTorr)によってITO薄膜層を膜厚75nmとなるように形成し、透明ガスバリアフィルムを得た。
ここで、インジウムとスズとの酸化物からなる薄膜層の形成には、ターゲットとして、酸化インジウム・酸化スズ焼結体〔In23:SnO2=90:10(質量比)〕を用いた。また、膜厚は、予めスパッタリング時間とITO薄膜の膜厚との関係を調べた上で、スパッタリング時間によって制御した。
得られた透明ガスバリアフィルムの性能は、後述する方法で評価した。
実施例2
ベンジルメタクリレートに換えてtert-ブチルアクリレート20質量部を用いた他は実施例1と同様にして透明ガスバリアフィルムを作製し、評価を行った。
以下、本発明の比較形態例を示す。
比較例1
アクリルウレタン系UV硬化樹脂(三井化学(株)製 商品名RA1353)とベンジルメタクリレートの代わりにジペンタエリスリトールペンタアクリレートを100重量部用いた以外は実施例1と同様に透明ガスバリアフィルムを作製し、評価を行った。
比較例2
硬化樹脂層を形成せず、PETフィルムに直接ITO薄膜層を形成した以外は実施例1と同様にして透明ガスバリアフィルムを作製し、評価を行った。
(評価)
上記の実施例、比較例で作製した透明ガスバリアフィルムを以下の方法で評価した。それぞれの結果を表1にまとめた。
(硬化樹脂層表面と水との接触角の測定)
実施例1,2、および比較例1において、硬化樹脂層表面と水との接触角を、酸素プラズマ処理前と後に協和界面科学社製固体表面エナジー測定装置を用いて測定した。
(透明ガスバリアフィルムの表面粗さの測定)
上記の実施例および比較例で作製した透明ガスバリアフィルムのITO層側表面の任意の3箇所(1μm×1μm)の平均粗さ(Ra)と最大粗さ(Ry)を原子間力顕微鏡(AFM:Nanoscope III デジタルインスツルメンツ社製)を用いて測定した。
(透明ガスバリアフィルムの水蒸気透過率の測定)
モダンコントロール社製PERMATRAN−W600により、温度40℃、相対湿度100%における透湿度測定を行った。本測定の測定限界は0.02g/day/m2である。
(透明ガスバリアフィルムの耐屈曲性の測定)
条件1:得られた透明ガスパリアフィルムを20mmφのステンレス棒に沿って180°の角度で10回屈曲した後、上記の透湿度測定を行うことで、耐屈曲性を評価した。
条件2:ステンレス棒の径を10mmφとした以外は条件1と同様とした。
(樹脂の吸水率の測定)
実施例1,2、および比較例1における硬化樹脂と同様の樹脂で5×5cm、厚さ3mmの硬化樹脂シートを作製し、JIS−K7209に従って吸水率の試験を行った。硬化樹脂シートはプラズマ処理しなかった。
Figure 0004298556
本発明における透明ガスバリアフィルムの一例を示す断面図である。
符号の説明
10 透明プラスチックフィルム
11 有機樹脂層
12 無機薄膜層


Claims (5)

  1. 透明樹脂基材(A)と、
    t−ブチル基またはベンジル基を含む有機樹脂層(B)と、無機薄膜層(C)とが、(A)/(B)/(C)の順の積層構造を持ち、
    有機樹脂層(B)の無機薄膜層(C)側表面が親水化処理され、かつ無機薄膜層(C)側表面の1μm四方の平均粗さ(Ra)が0.7nm以下、最大粗さ(Ry)が7nm以下である透明ガスバリアフィルム。
  2. 前記有機樹脂層(B)が、アクリレート樹脂および/またはメタクリレート樹脂を含む有機樹脂層(B1)であることを特徴とする請求項1に記載の透明ガスバリアフィルム。
  3. 有機樹脂層(B)の無機薄膜層(C)側表面の、水との接触角の親水化処理前後での差が、30°以上であることを特徴とする請求項1に記載の透明ガスバリアフィルム。
  4. 無機薄膜層(C)が少なくともインジウムの酸化物を含む請求項1に記載の透明ガスバリアフィルム。
  5. 請求項1に記載した透明ガスバリアフィルムを用いたディスプレイ用光学素子。
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