JP4264440B2 - 電子写真感光体および画像形成装置 - Google Patents
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Description
電子写真装置では、以下のような電子写真プロセスを経て画像が形成される。まず、装置に備わる電子写真感光体(以下、単に感光体とも称する)の感光層を帯電させた後、露光して静電潜像を形成する。形成された静電潜像を現像してトナー像を形成し、形成されたトナー像を記録紙などの転写材上に転写して定着させて、転写材に所望の画像が形成される。
無機感光体は、感光体としての基礎特性をある程度は備えているけれども、感光層の成膜が困難で、可塑性が悪く、製造原価が高いなどの欠点を有する。その上、無機光導電性材料は一般に毒性が強く、製造上および取扱い上、大きな制約がある。
このように無機光導電性材料およびそれを用いた無機感光体には多くの欠点があることから、有機光導電性材料の研究開発が進んでいる。
一方、積層型の機能分離型感光体では、電荷発生物質がバインダ樹脂に分散されて成る電荷発生層と電荷輸送物質がバインダ樹脂に分散されて成る電荷輸送層とが積層された積層型の感光層が設けられる。
最近では、縮合多環式炭化水素系をその中心母核に持つ化合物、たとえばピレン誘導体、ナフタレン誘導体、ターフェニル誘導体(例えば、特許文献9参照)なども開発されている。
(1)光および熱に対して安定であること、
(2)感光体の表面を帯電させる際のコロナ放電によって発生するオゾン、窒素酸化物(一般式:NOx)および硝酸などの活性物質に対して安定であること、
(3)電荷輸送能力に優れていること、
(4)有機溶剤およびバインダ樹脂との相溶性に優れていること、
(5)製造が容易で安価であること
などが要求されている。
たとえば、複写機およびプリンタなどの電子写真装置に対する小型化および画像形成速度の高速化に伴い、感光体特性として高感度化が要求されており、感光体の高感度化を実現する手段として、電荷輸送物質の電荷輸送能力の向上が求められている。
また高速の電子写真プロセスでは、露光から現像までの時間が短いので、光応答性の良い感光体が求められている。しかしながら、感光体の光応答性が悪いと、露光による感光層の表面電位の減衰速度が遅くなり、残留電位が上昇し、表面電位が充分に減衰していない状態で繰返し使用されることになる。このため、消去されるべき部分の表面電荷が露光によって充分に消去されず、画像濃度の低下などの問題が早期に生じる。
したがって、感光体の耐久性には、感光体の最外層の耐刷性が大きく影響する。
通常、感光体が電子写真装置に搭載されて使用される際、感光体の最外層は、クリーニングブレード、帯電ローラなどの接触部材によって摺擦され、その一部が削り取られることを余儀なくされる。摺擦による感光体の最外層の削り取られた量、すなわち膜減り量が多いと、感光体の帯電保持能が低下し、画質が低下するという問題が生じる。このため、感光体の最外層には、上記の接触部材によって削り取られにくいこと、すなわち耐刷性に優れることが求められる。
しかしながら、バインダ樹脂の含有率を高くすると、相対的に電荷輸送層中の電荷輸送物質の含有率が低下するので、電荷輸送層の電荷輸送能力が低下し、光応答性が低下するという問題が生じる。
また、電荷輸送物質とバインダ樹脂との相溶性が悪い場合には、成膜時に電荷輸送物質が結晶化し、均一な電荷輸送層が得られず、画像欠陥を引起すという問題もある。
このため、応答性などの電気特性と耐久性とが両立された感光体を実現することは困難である。
その具体例としては、主鎖または側鎖にトリアリールアミン構造を有するポリカーボネート樹脂(例えば、特許文献10〜15参照)、主鎖にトリアリールアミン構造を有するポリエーテル樹脂(例えば、特許文献16参照)などが挙げられる。
しかしながら、特許文献17〜20などに開示のトリアリールアミン系化合物は、電荷輸送能が充分でなく、これらを重合させて得られる特許文献11〜16などに開示のトリフェニルアミン構造を有する樹脂も、電荷輸送能および機械的強度などの点で充分に満足できる水準にはない。
また、特許文献22に開示の感光体では、電荷輸送層中の電荷輸送物質と、表面保護層を構成するシロキサン系樹脂の電荷輸送機能を有する構造単位との不適合によって、表面保護層と電荷輸送層との界面に電位障壁が形成され、電荷の注入が不充分になり、感度および光応答性が低下するという問題も生じる。
で示される非対称ビスヒドロキシ化合物(以後、非対称ビスヒドロキシ化合物(1)と称す)を含有することを特徴とする電子写真感光体が提供される。
で示される非対称ビスヒドロキシ化合物(以後、非対称ビスヒドロキシ化合物(2)と称す)である電子写真感光体が提供される。
で示される非対称ビスヒドロキシ化合物(以後、非対称ビスヒドロキシ化合物(3)と称す)である電子写真感光体が提供される。
で示される非対称ビスヒドロキシ化合物(以後、非対称ビスヒドロキシ化合物(4)と称す)である電子写真感光体が提供される。
で示される非対称ビスヒドロキシ化合物(以後、非対称ビスヒドロキシ化合物(5)と称す)である電子写真感光体が提供される。
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
帯電された前記電子写真感光体を露光する露光手段と、
露光によって形成された静電潜像を現像する現像手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置が提供される。
また、本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物は、いずれも溶媒への溶解性およびバインダ樹脂との相溶性に優れているので、感光層または表面保護層においても結晶化せず、均一な状態で分散される。
また、本発明による電子写真感光体は、高速の電子写真プロセスに用いられた場合であっても、その優れた光応答性により、高品質の画像を提供することができる。
すなわち、本発明による電子写真感光体は、本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物を感光層または表面保護層に含有するので、帯電性、感度および光応答性などの電気特性および耐久性に優れる。また、本発明による電子写真感光体の感光層または表面保護層には、本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物が結晶化せずに、均一に分散されている。
また、本発明による電子写真感光体は光応答性に優れ、高速の電子写真プロセスにおいても高品質の画像を提供することができるので、本発明による画像形成装置では画像形成速度の高速化が可能である。
さらに、原材料のコスト、入手の容易性、合成の容易および合成の収率の観点から、Ar4がフェニレン基である場合、すなわち一般式(3)の場合がより好ましく、さらにAr4がp−フェニレン基である場合、すなわち一般式(4)および(5)の場合がさらに好ましい。
これらの中でも、フェニルおよびメトキシフェニルなどが好ましい。
さらに、同様に、Ar5で示される、任意に置換基を有してもよいアルキル基としては、チエニル基を有し得る、メチルなどのアルキル基が挙げられる。
また、同様に、任意に置換基を有してもよいアリール基としては、炭素数1〜4のアルキル基および炭素数1〜4のアルコキシ基から選ばれる置換基を有し得るフェニルなどのアリール基が挙げられる。
また、同様に、任意に置換基を有してもよい複素環基としては、置換基として炭素数1〜4のアルコキシ基を有し得るチエニルが挙げられ、アラルキル基としては、ベンジルなどのアラルキル基が挙げられる。
同様に、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基としては、ジメチルアミノなどのジアルキルアミノ基が挙げられる。
また、上記の置換基を有してもよいアリール基としては、炭素数1〜4のアルキル基および炭素数1〜4のアルコキシ基から選ばれる置換基を有し得るフェニル、トリル、メトキシフェニルおよびナフチルなどの、アリール基が挙げられる。
一般式(6)で表されるアミン中間体のビスホルミル化は、たとえば、当業者に周知のビルスマイヤー反応に従って実施できる。具体的には、アミン中間体(6)とビルスマイヤー試薬とを撹拌下に加熱した後、加水分解を行うことによって実施される。
ビルスマイヤー試薬調製用のホルムアミド類としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジブチルホルムアミド等の他に、N−メチル−N−フェニルホルムアミド、N,N−ジフェニルホルムアミドなどが挙げられる。
この反応は、たとえば、撹拌下に、60〜110℃で、2〜8時間加熱して行われる。
また、アミン中間体(6)のビスアシル化は、たとえば、当業者に周知のフリーデル−クラフツ反応に従って実施できる。具体的には、適当な溶媒中にてアミン中間体(6)とフリーデル−クラフツ反応試薬とを反応させ、さらに反応生成物を加水分解することによって実施される。
X−CO−R1
(式中、R1は上記で定義したとおりであり、Xはハロゲン原子である)
で表されるハロゲン化アシル化合物(以後、ハロゲン化アシル化合物と称する)とルイス酸とを反応させて得られるものが挙げられる。
上記の反応は、たとえば、−40〜80℃の温度で、2〜8時間撹拌下に行われる。
反応終了後は、上記のビスカルボニル中間体(7a)の場合と同様に、アルカリ加水分解して、ビスカルボニル中間体(7)のうち、2つのR1が水素原子以外の基である化合物(以後、ビスカルボニル中間体(7b)と称する)が得られる。
なお、ウィッティッヒ試薬(8a)および(8b)において、Ar4で示される置換基が有する水酸基が、置換基R5で保護されている。
ビスカルボニル中間体(7)とウィッティッヒ試薬(8a)とを反応させることにより、エーテル化合物(8a)が得られ、さらに保護R5基を脱保護することによって、非対称ビスヒドロキシ化合物(1)においてn=0である化合物(以後、非対称ビスヒドロキシ化合物(1a)と称する)が得られる。
ビスカルボニル中間体(7)に対するウィッティッヒ−ホルナー反応は当業者に周知の方法に従って実施できる。
すなわち、適当な溶媒中にて、金属アルコキシドなどの塩基性触媒の存在下に、ビスカルボニル中間体(7)とウィッティッヒ試薬(8a)または(8b)とを反応させることにより目的物質を得ることができる。
また、溶媒の使用量は特に制限されず、反応基質の使用量、反応温度、反応時間などの反応条件に応じて、反応が円滑に進行する量を適宜選択できる。
エーテル化合物(9a)または(9b)の脱保護は、公知の方法に従って実施できる。
すなわち、エーテル化合物(9a)または(9b)と脱保護剤とを適当な溶媒中で反応させることにより実施できる。
脱保護剤は、上記の化合物1種を単独で、または2種以上を併用して使用できる。
脱保護剤の使用量は特に制限されないが、反応を円滑に進行させること、反応終了後の目的化合物を容易に単離精製できることなどを考慮すると、エーテル化合物(9a)または(9b)1当量に対して、2.0〜3.0当量程度、さらに2.2〜2.6当量程度使用するのが好ましい。
なお、上記の溶媒は、脱保護剤の種類に応じて適宜選択して使用できる。
また、三臭化ホウ素を用いる場合は、塩化メチレンが好ましく、エタンチオールナトリウム塩を用いる場合は、ホルムアミド類が好ましい。
溶媒の使用量は特に制限されず、反応基質および脱保護剤の種類、使用量、反応温度などの反応条件に応じて広い範囲から適宜選択できる。
このようにして得られる本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物は、抽出、クロマトグラフィー、遠心分離、再結晶化、洗浄などの一般的な精製手段により、反応終了後の反応混合物中から容易に単離精製できる。
たとえば、本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物を、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などのモノマーとして用いることによって、優れた電荷輸送機能を有し、光導電性材料として有用な高分子光導電性材料を得ることができる。
たとえば、ポリカーボネート樹脂は、原料化合物として、本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物の1種または2種以上と、カーボネート化合物の1種または2種以上とを用いる以外は、従来のポリカーボネート樹脂と同様に製造できる。
また、カーボネート化合物としてビスアリールカーボネート類を用いる場合には、エステル交換法によってポリカーボネート樹脂が得られる。
したがって、本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物を原料化合物として用いることにより、重合反応を円滑に進行させることができ、前記のように光導電性材料として有用な高分子材料を容易に得ることができる。
図1〜4に示す電子写真感光体11〜14は、感光層2が、一層からなる単層型感光層2であることを特徴とする単層型電子写真感光体である。
図1に示す電子写真感光体11は、導電性支持体(電子写真感光体用素管)1と、導電性支持体1の表面に形成される感光層2とを含む。
図2に示す電子写真感光体12は、導電性支持体1と、導電性支持体1の表面に形成される感光層2と、感光層2の表面に形成される表面保護層5とを含む。
図3に示す電子写真感光体13は、導電性支持体1と、導電性支持体1の表面に形成される中間層6と、中間層6の表面に形成される感光層2とを含む。
図4に示す電子写真感光体14は、導電性支持体1と、導電性支持体1の表面に形成される中間層6と、中間層6の表面に形成される感光層2と、感光層2の表面に形成される表面保護層5とを含む。
図6に示す電子写真感光体16は、導電性支持体1と、導電性支持体1の表面に形成される電荷発生層3と、電荷発生層3の表面に形成される電荷輸送層4と、電荷輸送層4の表面に形成される表面保護層5とを含む。
図7に示す電子写真感光体17は、導電性支持体1と、導電性支持体1の表面に形成される中間層6と、中間層6の表面に形成される電荷発生層3と、電荷発生層3の表面に形成される電荷輸送層4とを含む。
図8に示す電子写真感光体18は、導電性支持体1と、導電性支持体1の表面に形成される中間層6と、中間層6の表面に形成される電荷発生層3と、電荷発生層3の表面に形成される電荷輸送層4と、電荷輸送層4の表面に形成される表面保護層5とを含む。
[導電性支持体]
導電性支持体1は、たとえば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼、チタンなどの金属材料により構成される。また、これらの金属材料に限定されることなく、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエステル、ポリオキシメチレン、ポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙、ガラスなどからなる基体表面に金属箔をラミネートしたもの、金属材料を蒸着したもの、導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の層を蒸着もしくは塗布したものなどを用いることもできる。
導電性支持体1の形状は、図1〜8に示す感光体11〜18ではシート状であるけれども、これに限定されることなく、円筒状、円柱状、無端ベルト状などであってもよい。
乱反射処理は、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスにおいて本発明による電子写真感光体を用いる場合に特に有効である。すなわち、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているので、電子写真感光体の表面で反射されたレーザ光と電子写真感光体の内部で反射されたレーザ光とが干渉を起こし、この干渉による干渉縞が画像に現れて画像欠陥の発生することがある。
しかしながら、導電性支持体1の表面に前記のような乱反射処理を施すことによって、この波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
単層型感光層である感光層2は、電荷発生物質と本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物とバインダ樹脂とを含んで構成される。感光層2において、本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物は、電荷輸送物質として機能する。感光層2は、必要に応じて、本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物以外の電荷輸送物質、酸化防止剤などの添加剤などを含有してもよい。
上記の電荷発生物質1種を単独または2種以上を組合せて使用することもできる。
X型無金属フタロシアニンおよび金属フタロシアニン、特にオキソチタニウムフタロシアニンは、高い電荷発生効率と電荷注入効率とを有するので、光を吸収することによって多量の電荷を発生するとともに、発生した電荷を分子内に蓄積することなく、感光層2または7に含有される電荷輸送物質である本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物に効率よく注入する。
したがって、光吸収によって電荷発生物質で発生する電荷は、電荷輸送物質として用いられる本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物に効率的に注入されて円滑に輸送されるので、高感度かつ高解像度の電子写真感光体を得ることができる。
たとえば、感光層2の電気特性をさらに向上させるために、本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物以外の電荷輸送物質を、用いることもできる。
そのような電荷輸送物質には、ホール輸送物質および電子輸送物質が包含される。
バインダ樹脂には、本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物との相溶性に優れるものが好ましく用いられる。
そのような樹脂の具体例としては、たとえば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリアミド、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル、ポリアクリルアミド、ポリフェニレンオキサイドなどの熱可塑性樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、これらの樹脂の部分架橋物などが挙げられる。
本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物100重量部に対するバインダ樹脂の使用量が100重量部未満であると、摩耗量が多く保護層としての役割が担えないことがある。
一方、該バインダ樹脂の使用量が2000重量部を超えると、電荷輸送物質に対するバインダ樹脂の相対量比が高くなり、感度が低下するなどの現象を呈することがある。
本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物100重量部に対するバインダ樹脂の使用量が50重量部未満であると、摩耗量が多くなり、一方、該バインダ樹脂の使用量が300重量部を超えると、感度が低下することが認められた。
酸化防止剤の使用量は特に制限されないけれども、好ましくは、電荷輸送物質100重量部に対して0.1〜10重量部である。酸化防止剤の使用量が0.1重量部未満では、後述する感光層形成用塗布液の安定性および電子写真感光体の耐久性を向上効果が不充分になり、また、10重量部を超えると、電子写真感光体の電気特性に悪影響を及ぼす。
本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物は、溶媒への溶解性およびバインダ樹脂との相溶性に優れるので、塗布液中に溶解するか、または均一に分散され、さらに感光層2を形成する過程においても結晶化しない。
したがって、本発明では、結晶化部分のない均質な感光層2を形成することができる。
積層型感光層である感光層7は、電荷発生層3と電荷輸送層4とを含んで構成される積層体である。
電荷発生層3は、電荷発生物質およびバインダ樹脂を含有する。
電荷発生物質としては、感光層2に含まれるものと同様の電荷発生物質の1種または2種以上を使用できる。
電荷発生物質の割合が10重量%未満では、感度が低下するおそれがあり、逆に電荷発生物質の割合が99重量%を超えると、電荷発生層3の膜強度が低下するだけでなく、電荷発生物質の分散性が低下して粗大粒子が増大し、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷が減少するので、画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像のかぶりが多く発生する。
予備粉砕は、たとえば、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル、超音波分散機などの一般的な粉砕機を用いて実施される。
電荷発生層3の膜厚は特に制限されないけれども、好ましくは0.05〜5μm、さらに好ましくは0.1〜1μmである。これは、電荷発生層の膜厚が0.05μm未満では、光吸収の効率が低下し、感度が低下するが、逆に電荷発生層の膜厚が5μmを超えると、電荷発生層内部での電荷移動が電子写真感光体表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感度が低下するからである。
電荷輸送層4は、電荷発生物質で発生した電荷を受入れ輸送する能力を有する本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物とバインダ樹脂とを含有する。さらに、電荷輸送層4は、必要に応じて、本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物以外の電荷輸送物質、酸化防止剤などの添加剤を含むことができる。
また、本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物以外の電荷輸送物質、バインダ樹脂および酸化防止剤としては、感光層2において用いられるものと同様のものを同様の使用量でそれぞれ使用できる。
電荷輸送層4を形成する過程においても本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物の結晶化は生じないので、本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物が均一に分散された電荷輸送層4を形成することができる。
電荷輸送層形成用塗布液の電荷発生層3表面への塗布方法としては特に制限はなく、たとえば、浸漬塗布、ロール塗布、インクジェット塗布などが挙げられる。また、乾燥は、塗布液中に含まれる有機溶媒を除去し、かつ均一な表面を有する電荷輸送層4を形成できる温度を適宜選択して実施すればよい。
表面保護層5は、電子写真感光体の耐久性を向上させる機能を有する。表面保護層5は、本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物とバインダ樹脂とを含有する。さらに、表面保護層5は、必要に応じて、本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物以外の電荷輸送物質を含んでもよい。
中間層6は、導電性支持体1から感光層2、7への電荷の注入を防止する機能を有する。その結果、感光層2、7の帯電性の低下が抑制され、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少が抑えられ、かぶりなどの画像欠陥の発生が防止される。
特に、反転現像プロセスによる画像形成の際に、白地部分にトナーからなる微小な黒点が形成される黒ポチと呼ばれる画像かぶりが発生するのが防止される。また、中間層6で導電性支持体1表面を被覆することにより、導電性支持体1表面の欠陥である凹凸の度合を軽減して表面を均一化し、感光層2、7の成膜性を高め、導電性支持体1と感光層2、7との密着性を向上させることができる。
樹脂材料を溶解または分散させる溶媒としては、たとえば、水、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのグライム類、これらの溶媒を2種以上混合した混合溶媒などが挙げられる。
また、樹脂材料含有量(E)と金属酸化物粒子含有量(F)との比率(E/F)は、好ましくは1/99〜90/10(=0.01〜9.0、重量比)であり、さらに好ましくは5/95〜70/30(=0.05〜2.33、重量比)である。
なお、導電性支持体1の表面にアルマイトを含む層(アルマイト層)を形成し、中間層6とすることができる。
次いで、露光手段28から、電子写真感光体21の表面に対して画像情報に応じた光28aが照射される。電子写真感光体21は、この露光によって、光28aが照射された部分の表面電荷が除去され、光28aが照射された部分の表面電位と光28aが照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、静電潜像が形成される。
電子写真感光体21に対する露光と同期して、電子写真感光体21と転写器26との間に、転写紙30が供給される。転写器26によって、供給された転写紙30にトナーと逆極性の電荷が与えられ、電子写真感光体21の表面に形成されたトナー像が、転写紙30上に転写される。
分子量測定装置:LC−MS(サーモクエスト社製、フィネガン LCQ Deca マススペクトロメーターシステム)。
LCカラム GL-Sciences Inertsil ODS-3 2.1×100mm
カラム温度 40℃
溶離液 メタノール:水=90:10
サンプル注入量 5μl
検出器 UV 254nmおよびMS ESI
サンプル量: 約2mgを精秤
ガス流量(ml/分):He=1.5、O2=1.1、N2=4.3
燃焼管温度設定:925℃
還元管温度設定:640℃
なお、元素分析は、差動熱伝導度法による炭素(C)、水素(H)および窒素(N)同時定量法に分析した。
無水N,N−ジメチルホルムアミド(略称DMF)100ml中に、氷冷下、オキシ塩化リン18.4g(2.4当量)を徐々に加えて約30分間撹拌し、ビルスマイヤー試薬を調製した。この溶液中に、氷冷下、N-α−ナフチル-N−フェニル-p-トルイジン(6a)15.5g(1.0当量)を徐々に加えた。その後、徐々に加熱して反応温度を110℃まで上げ、110℃を保つように加熱しながら3時間撹拌した。反応終了後、この反応溶液を放冷し、冷4N水酸化ナトリウム水溶液800ml中に徐々に加え、生じた沈殿を濾取し、充分に水洗した後、エタノールと酢酸エチルとの混合溶剤(エタノール:酢酸エチル=8:2〜7:3)で再結晶を行うことによって、黄色粉末状化合物14.6gを得た。
また、LC−MS測定時のHPLCの分析結果から、得られたアミン−ビスアルデヒド中間体(7aa)の純度は97.2%であった。
アミン−ビスアルデヒド中間体(7aa)7.26g(1.0当量)およびジエチル−p−メトキシベンジルホスホネート(8aa)12.41g(2.4当量)を、無水DMF80mlに溶解させ、その溶液中にカリウムt−ブトキシド5.6g(2.5当量)を0℃で徐々に加えた。その後室温で1時間放置し、さらに50℃まで加熱し、50℃を保つように加熱しながら5時間撹拌した。反応混合物を放冷した後、過剰のメタノール中に注いだ。析出物を回収し、トルエンに溶解させてトルエン溶液とした。このトルエン溶液を分液ロートに移し、水洗した後、有機層を取出し、取出した有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥後、固形物を除去した有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことによって、黄色結晶9.75gを得た。
得られた黄色結晶をLC−MSで分析した結果、化学構造式(9aa)で表される化合物(分子量の計算値:573.27)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが574.5に観測された。このことから、該結晶が、例示化合物No.1の前駆体である非対称ビスアルコキシアミン化合物(9aa)であることが判った(収率:85%)。また、LC−MS測定時のHPLCの分析結果から、得られた化合物の純度は97.7%であった。
非対称ビスアルコキシアミン化合物(9aa)5.7g(1.0当量)およびエタンチオールナトリウム塩6.39g(7.0当量)をN,N−ジメチルホルムアミド130mlに懸濁させ、窒素ガス気流下、撹拌しながら徐々に加熱すると、130℃で発泡が始まった。発泡がおさまった後、さらに温度を上げて、4時間加熱環流した。室温まで放冷した後、反応混合物を氷水600ml中に注入し、撹拌下に濃塩酸3.2mlを加えて中和した。これを酢酸エチル400mlで抽出し、抽出液を水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過でこれを除去した後、溶媒を留去して粗結晶6.71gを得た。これを、エタノールと酢酸エチルとの混合溶剤(エタノール:酢酸エチル=8:2〜7:3)で再結晶を行うことによって、黄色粉末状化合物5.04gを得た。
この黄色粉末状化合物の元素分析値は以下のとおりであった。
理論値 C:85.84%、H:5.73%、N:2.57%
実測値 C:84.95%、H:5.18%、N:2.22%
また、得られた黄色粉末状化合物をLC−MSで分析した結果、目的とする化学構造式(1aa)で表される化合物(分子量の計算値:545.24)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが546.8に観測された。
元素分析およびLC−MSの分析結果から、得られた黄色粉末状化合物が、例示化合物No.1の非対称ビスヒドロキシ化合物(1aa)であることが判った(収率:88%)。また、LC−MS測定時のHPLCの分析結果から、得られた化合物(1aa)の純度は99.0%であった。
例示化合物No.2、3、4、7、18、20、22、23および57の合成
製造例1において、一般式(6)で表されるアミン化合物、一般式(8a)あるいは、一般式(8b)で表されるウィッティッヒ試薬として下記表2に示す各原料化合物を用いて全く同様の操作を行ない、例示化合物No.2、3、4、7、18、20、22、23および57をそれぞれ製造した。なお、表2には、例示化合物No.1の原料化合物も合わせて示す。
比較用対称ビスヒドロキシエナミン化合物の合成
アミン化合物として、ジフェニルアミンとジフェニルアセトアルデヒドより合成されるエナミン化合物16.9g(1.0当量)を用いる以外は製造例1と同様にして、特開2004−269377号公報の実施例1に記載の例示化合物(EA−14)である下記化学構造式(11)で表される対称ビスヒドロキシエナミン化合物(以後、「対称ビスヒドロキシエナミン化合物(11)」と称す)4.21gを得た。
<対称ビスヒドロキシエナミン化合物(11)の元素分析値>
理論値 C:86.42%、H:5.70%、N:2.40%
実測値 C:85.97%、H:5.38%、N:2.27%
また、得られた対称ビスヒドロキシエナミン化合物(11)をLC−MSで分析した結果、目的とする化学構造式(11)で表される化合物(分子量の計算値:583.73)にプロトンが付加した分子イオン[M+H]+に相当するピークが584.9に観測された。
以下のようにして、製造例1で製造した本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物である例示化合物No.1を電荷輸送層の電荷輸送物質として用いた電子写真感光体を作製した。導電性支持体には、厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(略称PET)フィルムの表面にアルミニウムを蒸着したもの(以後、「アルミニウム蒸着PETフィルム」と称す)を用いた。
1重量部およびブチラール樹脂(商品名:#6000−C、電気化学工業株式会社製)1重量部を、メチルエチルケトン98重量部に混合し、ペイントシェーカにて分散処理して電荷発生層形成用塗布液50gを調製した。この電荷発生層形成用塗布液を、前記の中間層と同様の方法で、先に設けた中間層表面に塗布し、自然乾燥して膜厚0.4μmの電荷発生層を形成した。
本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物である例示化合物No.1に変えて例示化合物3、18、22および23を用いた以外は実施例1と全く同様にして導電性支持体に中間層、電荷発生層および電荷輸送層が順次積層された積層構造を有する本発明による積層型電子写真感光体を作製した。
製造例1で製造した本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物である例示化合物No.1を表面保護層の電荷輸送物質として用いた電子写真感光体の作製
厚さ100μmのPETフィルムの表面にアルミニウムを蒸着してなる導電性支持体のアルミニウム表面に、実施例1と同様にして、膜厚1μmの中間層および膜厚0.4μmの電荷発生層を順次形成した。
次いで、本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物である例示化合物No.1に代えて、下記化学構造式(12)で表されるブタジエン化合物(1,1−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、商品名:T405、株式会社高砂ケミカル製)を用いる以外は実施例1と全く同様にして、電荷輸送層を形成した。
なお以下では、化学構造式(12)で表されるブタジエン化合物を「ブタジエン化合物(12)」と称する。
本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物である例示化合物No.1に変えて例示化合物2、4、7、20および57を用いた以外は実施例6と全く同様にして導電性支持体に中間層、電荷発生層、電荷輸送層および表面保護層が順次積層された積層構造を有する本発明による積層型電子写真感光体を作製した。
電荷輸送層の形成に際し、本発明による非対称ビスヒドロキシ化合物である例示化合物No.1に代えて、製造例11で製造した対称ビスヒドロキシエナミン化合物(11)を用いる以外は実施例1と同様にして、積層型電子写真感光体を作製した。
実施例1〜11および比較例1で得られた各電子写真感光体について、静電紙試験装置(商品名:EPA−8200、株式会社川口電機製作所製)を用いて、以下のようにして電気特性を評価した。
感光体にマイナス(−)5kVの電圧を印加することによって感光体表面を帯電させ、このときの感光体の表面電位を帯電電位V0[V]として測定した。次に、帯電された感光体表面に対して露光を施し、感光体の表面電位を帯電電位V0から半減させるのに要した露光量を半減露光量E1/2[μJ/cm2]として測定した。また、露光開始から10秒間経過した時点の感光体の表面電位を残留電位Vr[V]として測定した。なお、露光には、モノクロメータにて分光して得られた波長780nm、強度1μW/cm2の光を用いた。
実施例1〜11および比較例1で得られた各電子写真感光体について、以下のようにして形成される画像の状態を評価した。
市販のデジタル複写機(商品名:LIBRE AR−451、シャープ株式会社製)から感光体ドラムを取出し、該感光体ドラムの感光層の一部を剥離し、感光層の剥離された部分に実施例1、2または比較例1で得られた電子写真感光体(PETフィルム)のアルミニウム蒸着面と導電性支持体の間をアルミニウム箔で導通させ、現像装置でのリークを防止するため、その導通部分の表面をセロハンテープ等で保護して貼付し、再度、前記複写機AR−451に搭載した。
また、実施例1〜11においては、画像状態は良好であり、黒点、白抜け、黒帯、画像ぼけなどの画像欠陥は発生していなかった。
一方、これに対し、対称ビスヒドロキシエナミン化合物(11)を電荷輸送層に用いた比較例1では、画像に黒点が多数発生した。これは、対称ビスヒドロキシエナミン化合物(11)が、化学構造的な対称性が高いので、溶媒への溶解性が低く、溶媒への不溶部分が結晶状態で電荷輸送層中に残り、その部分が画像に黒点として発現したものと考えられる。
2、7 感光層
3 電荷発生層
4 電荷輸送層
5 表面保護層
6 中間層
11〜18,21 電子写真感光体
20 画像形成装置
24 帯電器
25 現像器
26 転写器
27 クリーナ
28 露光手段
30 転写紙
31 定着器
Claims (8)
- 導電性支持体上に、感光層と表面保護層がこの順で積層されてなり、該感光層および表面保護層の少なくともいずれか一つが、請求項1〜4のいずれか1つに記載の非対称ビスヒドロキシ化合物を含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 前記感光層が、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、請求項1〜4のいずれか1つに記載の非対称ビスヒドロキシ化合物とを含有する電荷輸送層との積層構造からなることを特徴とする請求項5に記載の電子写真感光体。
- 請求項5または6に記載の電子写真感光体と、
前記電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、
帯電された前記電子写真感光体を露光する露光手段と、
露光によって形成された静電潜像を現像する現像手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。 - 前記画像形成装置が帯電手段として接触帯電を備えることを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
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