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JP4253540B2 - 医療器械 - Google Patents

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JP4253540B2
JP4253540B2 JP2003201065A JP2003201065A JP4253540B2 JP 4253540 B2 JP4253540 B2 JP 4253540B2 JP 2003201065 A JP2003201065 A JP 2003201065A JP 2003201065 A JP2003201065 A JP 2003201065A JP 4253540 B2 JP4253540 B2 JP 4253540B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、生体組織に対して凝固・止血あるいは切開などの外科的処置を行なう医療器械に関する。
【0002】
【従来の技術】
生体組織に対して凝固・止血あるいは切開などの外科的処置を行なうため、互いに開閉し、生体組織を把持する1対のジョーと、これらのジョーを開閉させるための操作部とを備えた医療器械が一般に知られている。この医療器械の一方または両方のジョーには、通電により発熱する発熱素子が設けられている。このような医療器械のジョー間で生体組織を把持したときに発熱素子を発熱させると、生体組織の凝固や凝固した生体組織の切開などの加熱処置を行える。このため、この医療器械は通常、生体組織に含まれる血液の止血や、生体組織の表層の病変部や出血部の焼灼、凝固、また避妊を目的とした卵管の閉塞など多様な手術症例に用いられる。
【0003】
なお、この医療器械で生体組織の止血、焼灼、凝固、閉塞あるいは切開などの様々な外科的処置を行なう場合には、それに先立って予め剥離鉗子などの手術器具によって機械的に目的組織や周辺組織の圧排、把持、剥離などを行っておく。そして、内視鏡の作業(挿入)領域や術者の視野や医療器械の作業領域を確保する手術操作を行っておく。
【0004】
例えば特許文献1には、互いに開閉する1対のジョーの少なくとも一方にセラミックヒーターなどの発熱素子を設けた医療器械が開示されている。この医療器械には、少なくとも一方のジョーに生体組織に接触する刃物形状に突出した発熱板(処置部)が設けられている。この発熱板には、発熱素子で発生させた熱を発熱板に伝熱させるように、熱源部である発熱素子が固定されている。このため、発熱板に接触あるいは押し付けられた生体組織の加熱処置を行なえる。
【0005】
また、特許文献2には、1対のジョーの一方にセラミックヒーターなどの発熱素子を設けた医療器械が開示されている。他方のジョーには、発熱素子と接触する断熱部材が配設されている。このため、一方のジョーが他方のジョーに接触しているときには、発熱素子から熱が逃げ難く、処置の伝熱効率を向上させることができる。
【0006】
また、例えば特許文献3には、ピンセット型の高周波電気手術用医療器械が開示されている。この医療器械は、弾性を有するピンセット型アームの先端の電極部以外をそれぞれ電気的に絶縁している。そして、アームの対向する1対の電極の間に生体組織を挟みこんだ状態でその間に双極型高周波電流を流す。すると、生体組織を電気的に凝固したり、切開することができる。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−198137号公報
【0008】
【特許文献2】
特開2001−340349号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平8−294494号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記特許文献1および特許文献2に開示された医療器械では、発熱素子で発生させた熱は処置を目的とした生体組織に伝えられると同時に発熱素子を保持・固定する部材(ジョー)にも伝熱して逃げてしまう。このため、医療器械による加熱処置効率は、ジョーの熱伝導率が高いほど低い状態にある。
【0011】
この医療器械の加熱処置効率を向上させるため、発熱素子とジョーとの間に断熱部材を設けて発熱素子を断熱部材で保持、固定する必要がある。すなわち、発熱素子を断熱部材とジョーとの二重構造で覆う必要がある。
【0012】
しかし、上述したように、発熱素子を断熱部材とジョーとの二重構造で覆うと、強度を確保するためにジョーを大型化することが避けられず、生体組織を繊細に処置することが難しくなる。また、特にこの医療器械を内視鏡下外科手術の処置具として使用する場合には、処置部がいっそう小型・細径であることが求められる。
【0013】
また、上記特許文献3に開示されたピンセット型の医療器械は、生体組織を摘まんで切開または凝固する際に焼灼された壊死状態の生体組織の一部が弾性アームの先端部に焦げ付いて付着することがある。弾性アームの先端部の焦げ付きによる付着物は、高周波電流の通電の抵抗となってしまい、処置効率が低下するという問題がある。さらに、付着物を除去するため、手間がかかるという問題がある。
【0014】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的の1つは、ジョーを大型化することなく、発熱手段で発生した熱を無駄なく目的組織へ伝えることができる医療器械を提供することにある。
【0015】
また、他の目的は、安定した凝固能力および切開能力を発揮し、かつ、先端の処置部に生体組織が付着し難く、再出血を防止することができる、安全で、構造が簡単な医療器械を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、この発明の医療器械は、互いに開閉可能な1対のジョー本体と、これらジョー本体を開閉操作する操作部とを有する。そして、この医療器械は、少なくとも一方のジョー本体に設けられ、他方のジョー本体に面する対向面から反対側外周表面まで貫通する窓部と、この窓部内に配設されるとともに、前記外周表面に滑らかに設けられた断熱部材と、前記断熱部材に一部が覆われ、通電すると発熱する発熱手段と、前記発熱手段に接触した状態に設けられ、前記発熱手段により発生させた熱を他方のジョー本体に向けて伝熱する伝熱手段とを備えていることを第1の特徴とする。
このような構成によって、発熱手段で発生させた熱を無駄なく目的組織に伝えることができる。また、対向する把持部本体に向けて発熱させるとともに、その反対側には伝熱し難くなっているので、生体組織の付着が防止される。また、断熱部材の背中側表面は、把持部本体の背中側表面と段差なく滑らかに繋げられる。このため、組織の剥離を行ったりするなどの手術操作を安全に行なうことができる。また、窓部に断熱部材を備えたので、ジョーの大型化が防止される。
【0017】
また、前記ジョー本体は、好ましくは前記断熱部材と一体的に形成されていることを第2の特徴とする。
このような構成を有するので、さらに断熱性を向上させるとともに、成形性を向上させることができる。
【0018】
また、前記窓部内の断熱部材は、好ましくは前記ジョー本体の外周面側で、前記窓部の縁部またはその近傍に厚肉部を有することを第3の特徴とする。
このような構成によって、発熱手段から発せられた熱を断熱するのに十分な断熱性を断熱部材に備えることができる。
【0019】
さらに、医療器械は、通電すると発熱する発熱部材と、この発熱部材を保持し、断熱部材で形成された第1のジョーと、断熱部材で形成され、前記発熱部材に対向する受部を備えた第2のジョーと、前記第1および第2のジョーに接続され、第1および第2のジョーの開閉操作を行なう操作部とを備えていることを第4の特徴とする。
【0020】
このような構成によって、発熱手段で発生させた熱を無駄なく目的組織に伝えることができる。また、対向する把持部本体に向けて発熱させるとともに、その反対側には伝熱し難くなっているので、生体組織の付着が防止される。また、第1のジョーが断熱部材で一体成形されているので、成形性を向上させることができ、ジョーの背中側表面と段差なく滑らかに形成することができる。このため、組織の剥離を行ったりするなどの手術操作を安全に行なうことができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態について説明する。まず、第1の実施の形態について図1ないし図6を用いて説明する。
図1に示すように、この実施の形態に係わる医療器械における熱凝固切開鉗子1は、処置具2と電源装置3とを備えている。処置具2と電源装置3とは長い接続コード4で電気的に接続されている。電源装置3には術者が足で電源装置3のON/OFFや、電力(出力)調整などを制御するためのフットスイッチ5が接続コード4aを介して接続されている。
【0024】
処置具2は、手元側の操作部7と、この操作部7に基端部が連結された挿入部8と、この挿入部8の先端に設けられた処置部(把持部)9とを備えている。操作部7は、操作部本体11を備えている。この操作部本体11には、固定ハンドル12aが一体的に設けられている。この固定ハンドル12aは、枢支軸13を備え、この枢支軸13に可動ハンドル12bが回動(開閉)自在に枢支されている。すなわち、固定ハンドル12aには、可動ハンドル12bが枢支軸13で枢支されている。
【0025】
操作部本体11には、上述した挿入部8を支持する挿入部固定部材15が固定ハンドル12aの上端部に設けられている。この挿入部固定部材15の先端側には、挿入部8を軸まわり方向に回動させる回転操作部(円盤)16が設けられている。この回転操作部16の周縁部には、好ましくは周方向に沿って複数の凹部を並設した滑り止め16aが形成されている。
【0026】
図2に示すように、挿入部8は、細径のパイプ状部材17と、このパイプ状部材17に内挿され、前後に進退自在に貫通された駆動軸(駆動パイプ)18とを備えている。図3(A)に示すように、この駆動軸18には、駆動軸18の軸方向に沿って孔部19が形成されている。この孔部19は、駆動軸18の先端部から基端部まで貫通されている。すなわち、駆動軸18はパイプ状に形成されている。
【0027】
図4に示すように、このパイプ状部材17の先端部には、前方側に突出し、後述する第2のジョー33bに連結される突出部17aが一体的に形成されている。図2に示すように、パイプ状部材17の手元側には、筒状の挿入部本体21が外装されている。この挿入部本体21は、上述した操作部7の挿入部固定部材15に着脱可能かつ回動自在に装着されている。挿入部本体21の後端部には、駆動軸18の外周をシールするシール部材22が設けられている。駆動軸18は、このシール部材22を貫通してさらに後方に延出されている。このため、挿入部本体21に対して駆動軸18が軸方向に進退してもシール部材22によって挿入部本体21と駆動軸18との間が水密および気密に保たれる。
【0028】
挿入部本体21の先端側には、上述した円盤状の回転操作部16が配設されている。この回転操作部16の先端側には、パイプ状部材17の内部と駆動軸18の外部との間の空間に連通する例えば洗浄用などのポート24が設けられている。
【0029】
また、駆動軸18には、その手元側に可動ハンドル12bへの取付部26が形成されている。この取付部26は、可動ハンドル12bに設けられた駆動軸固定部材27(図1参照)によって着脱可能に枢支連結されている。このため、枢支軸13を支点とする固定ハンドル12aに対する可動ハンドル12bの回動操作により、駆動軸18がその軸方向に沿って所定の範囲内で移動する(進退する)。
【0030】
図1および図2に示すように、駆動軸18の後方には、柔軟なチューブ28が連結されて後方側に延出されている。このチューブ28の後端には、電気コネクタ29が配設されている。この電気コネクタ29は、接続コード4を介して電源装置3に接続されている。そして、チューブ28と駆動軸18との連結部の外周には、弾性部材からなる折れ止め31aが配設されている。この折れ止め31aは、チューブ28を適当な長さ分覆っていることが好ましい。このチューブ28と電気コネクタ29との連結部の外周には、同様に弾性部材からなる折れ止め31bが配設されている。このため、2つの折れ止め31a,31bによってチューブ28が曲げられ難く、また、曲げられても破損を防止するように保護されている。
【0031】
図4に示すように、挿入部8(駆動軸18)の先端には、処置部9が配設されている。この処置部9は、1対のジョー33a,33b(一方を第1のジョー33aとし、他方を第2のジョー33bとする)を備えている。第1および第2のジョー33a,33bは、これらのジョー33a,33bの基端部側で共通の枢支軸35によって互いに連結されている。このため、第1および第2のジョー33a,33bは、枢支軸35を中心として互いに対して回動して開閉される。
【0032】
図3(A)および図4に示すように、第1のジョー33aは、第2のジョー33bに近接する側が略刃物形状の刃部(伝熱部材)48として形成されている。図3(A)ないし図3(D)に示すように、第1のジョー33aの背側、すなわち、第2のジョー33bに離隔する側は、滑らかな曲面状に段差なく形成されている。このため、第1のジョー33aの背側で例えば生体組織などを引っ掛けることが防止される。一方、図4に示すように、第2のジョー33bは、第1のジョー33aの刃部48を受ける受部として形成されている。
【0033】
図3(A)に示すように、第1のジョー33aの基端部には、上述した駆動軸18および第2のジョー33bに連結される基部37が設けられている。この基部37の基端部は、駆動軸18の軸方向(進退方向)に対して直交する方向に設けられた駆動ピン38で駆動軸18の先端部に枢支されている。このため、駆動ピン38を枢軸として第1のジョー33aが駆動軸18の先端部で回動される。
【0034】
図4に示すように、第2のジョー33bの基端部には、第1のジョー33aの基部37に連結される基部40が設けられている。ところで、上述したように、パイプ状部材17の先端部には、突出部17aが設けられている。第2のジョー33bの基部40は、パイプ状部材17の先端部で軸方向に対して直交し、上述した駆動ピン38に平行に設けられたピン41でパイプ状部材17の突出部17aに枢支されている。このため、第2のジョー33bは、ピン41を枢支軸としてパイプ状部材17の突出部17aに対して回動される。なお、このピン41は、基部40とジョー本体(把持部本体)42の基端部とを固定する。このため、このピン41は、それぞれ第2のジョー33bの基部40とジョー本体42とを固定する固定ピンである。
【0035】
第2のジョー33bのジョー本体42には、上述した第1のジョー33aの刃部48の縁部48aが当接される受部43が設けられている。この受部43は、シリコーンゴム材やフッ素樹脂材など断熱性や耐熱性を有するとともに柔らかい材料で形成されている。このため、第1のジョー33aの刃部(伝熱手段)48が例えば前後左右に多少傾いていても、両ジョー33a,33bを強く閉じることで刃部48の全長が受部43に当接される。
【0036】
そして、1対のジョー33a,33bの両基部37,40には、両基部37,40を枢支する枢支軸35が上述した駆動ピン38およびピン41に平行に設けられている。この枢支軸35は、第1のジョー33aの基部37の先端側で、かつ、第2のジョー33bの基部40の基端部に設けられている。このため、1対のジョー33a,33bは、枢支軸35で互いのジョー33a,33bに対して回動して開閉する。また、1対のジョー33a,33bは、所定の位置以上にそれぞれ上下方向に回動することが防止される。
【0037】
図3(A)ないし図3(D)に示すように、第1のジョー33aは、外枠としてジョー本体(把持部本体)50を基部37の先端側に備えている。このジョー本体50は、例えばステンレスやチタンなどの金属材やFRPなどの硬質プラスチック材等で形成されている。
【0038】
図3(B)に示すように、このジョー本体50の略中央部には、第2のジョー33bに近接する側と第1のジョー33aの背側との上下に貫通した窓部75が形成されている。この窓部75には、適当な高さと厚み(厚肉部)を有するとともに、背側が略ドーム型の断面形状を有する断熱部材(断熱枠)55が配設されている。断熱部材55としては、例えば、フッ素樹脂材、シリコーンゴム材、セラミックス材等が使用される。このため、断熱部材55は、後述する発熱体80から発生する熱を断熱し、伝熱部材(刃部)48への伝熱効率を高めることができる。
【0039】
ジョー本体50の窓部75に断熱部材55を配設するために、断熱部材55とジョー本体50とには、それぞれ凹凸部76が形成されている。両者の凹凸部76によってジョー本体50と断熱部材55とは互いに組み合わせられる。このとき、断熱部材55の背側表面と、ジョー本体50の背側表面とは段差なく滑らかに繋げられる。
【0040】
断熱部材55の第2のジョー33bに近接する側(図3(B)中の下側)には、逆U字型のU字溝78が設けられている。このU字溝78には、後述する発熱体80から熱を受け取って生体組織に加熱処置を行なう伝熱部材(刃部)48が配設されている。この伝熱部材48は、銅、銅合金、アルミニウム合金、タングステンあるいはモリブデン等、熱を効率良く伝える材料で形成されている。なお、伝熱部材48の外表面には、生体組織や血液が付着することを防ぐためにフッ素樹脂など、薄く非粘着性があるとともに耐熱性を有する皮膜が被覆されている。
【0041】
この伝熱部材48は、断熱部材55のU字溝78内では、断面が略矩形状に形成されている。このU字溝78の外部では、第2のジョー33bに近接する縁部48aに向かうにつれて細く略刃形状(V字状)またはテーパ状に形成されている。この縁部48aは、第2のジョー33bに近接する側が真直ぐに形成されている。このため、伝熱部材48は、外部との接触面積を小さく抑えて熱が逃げることを防止するとともに、熱を伝熱部材48の縁部48aに集中させることができる。
【0042】
この伝熱部材48の断熱部材55に近接する側には、断面が略矩形状の空間(略U字状の凹部)79が形成されている。この空間79には、伝熱部材48に接触して配置され、通電すると発熱して伝熱部材48に熱を伝達する発熱体(発熱手段)80が配設されている。発熱体80には、例えば薄膜抵抗加熱素子や厚膜抵抗加熱素子等の熱発生素子やニクロム線など電気を熱に変換する部材が用いられる。また、発熱体80は、他に、セラミックヒーター、カートリッジヒーター、PTCヒーター等が用いられる。この発熱体80は、伝熱部材48との接触面積ができるだけ大きくなるように、断面が矩形状に形成されて伝熱部材48の空間79内に配設されている。
【0043】
また、伝熱部材48と断熱部材55との間には、例えば断面が矩形状の小空間81が設けられている。この小空間81内には、発熱体80に電気的に接続された複数のリード線70(70a,70b)が配設されて後方に延出されている。各リード線70は、耐熱非導電性チューブに覆われている。なお、発熱体80は、図3(A)に示すように、第1のジョー33aの長手方向に沿って複数並設されていることが好適である。
【0044】
図3(A)に示すように、第1のジョー33aのジョー本体50の先端部および基端部には、それぞれ凹陥状の受部52,53が設けられている。ジョー本体50の受部52,53は、断熱部材55のそれぞれ先端部および基端部に設けられた係合凸部56,57に組み付けられる。この断熱部材55の先端部および基端部には、それぞれピン穴が設けられ、これらピン穴にそれぞれピン58,59が配設されて刃部48の先端部および基端部が断熱部材55に装着されている(図3(C)参照)。
【0045】
図3(C)に示すように、ピン59と断熱部材55との間には、空間61が形成されている。この空間61内には、リード線70が配設されて後方に延出されている。図3(A)、図3(C)および図3(D)に示すように、刃部48の下端には、刃部48、断熱部材55およびジョー本体50の基端部を固定する固定部材65が配設されている。図3(D)に示すように、固定部材65は、ジョー本体50にピン67で固定されている。このピン67の上部であって、ジョー本体50の内周に接触する位置には、空間68が形成されている。この空間68には、複数のリード線70を覆うチューブ71が固定金具72aで固定されている。これらリード線70a,70bは、刃部48の後端近傍で1つに束ねられている。なお、図3(A)に示すように、この固定部材65には、第1のジョー33aの基部37が一体的に取り付けられている。
【0046】
図3(A)に示すように、リード線70を内装する上述したチューブ71は、固定ピン41、枢支軸35および駆動ピン38の脇(上側)を通り抜けて手元側に延びている。このチューブ71の他端は、上述した駆動軸18の孔部19の内周に固定金具72bで固定されている。そして、リード線70は駆動軸18の孔部19、チューブ28(図1および図2参照)を通してコネクタ29に導かれている。このため、電源装置3で接続コード4、電気コネクタ29およびリード線70を通して発熱体80に通電すると、発熱体80が発熱される。
【0047】
なお、図5は生体組織の切開時、凝固時および凝固切開時の発熱体80の温度変化曲線を示し、横軸が時間t(秒)、縦軸が温度T(℃)である。図1に示す電源装置3は、図5に示す例えば曲線A,B,Cに示すように発熱体80の温度を上昇させることができる制御機構を備えていることが好適である。すなわち、電源装置3は、曲線Aに示すように、切開時は短時間(t )にT まで急激に発熱体80の温度を上昇させる設定、凝固時は曲線Bに示すように、徐々に(時間t で)T まで温度を上昇させて数秒(t −t )間維持する設定、凝固切開時は徐々にT まで温度を上昇させた後、曲線Cに示すように、温度をT まで急激に(時間t −t で)上昇させるように設定される。 なお、この温度T は、例えば200℃であり、温度T は、例えば180℃である。
【0048】
次に、上述した熱凝固切開鉗子1の作用について説明する。
術者が図1に示す処置具2の操作部7の固定ハンドル12aおよび可動ハンドル12bの枢支軸13を中心として可動ハンドル12bを回動させる。すなわち、可動ハンドル12bを固定ハンドル12aに対して図1中の矢印a,b方向に接離させる。すると、駆動軸18の手元側の取付部26を前後に移動させて駆動軸18を前後動させる。この駆動軸18の前後動に従って、駆動軸18の先端の駆動ピン38がパイプ状部材17に対して前後に移動する(進退する)。
【0049】
図1に示すように、1対のジョー33a,33bが閉じた状態から可動ハンドル12bを固定ハンドル12aに対して矢印a方向に開く。そして、駆動軸18をパイプ状部材17に対して前進させる。すると、駆動軸18の先端で駆動ピン38に枢支された第1のジョー33aの基部37が駆動軸18の前進に伴って図6中に破線で示すように前進する。
【0050】
このとき、第2のジョー33bの基部40の固定ピン41の位置は、パイプ状部材17に対して変化しない。すなわち、このピン41は、パイプ状部材17に対して上下動および前後動することがない。なお、枢支軸35と固定ピン41との間の距離は変化しない。
【0051】
そして、第1のジョー33aの基部37が前方に移動すると、枢支軸35も前方に移動する。このとき、固定ピン41はその場で回動し、その位置は移動しない。このため、枢支軸35が前方に移動すると、この枢支軸35は固定ピン41を中心として回動して固定ピン41の上側に向かう。すなわち、第2のジョー33bの基部40が固定ピン41を枢軸として回動する。このとき、固定ピン41のその場での回動によって枢支軸35を前方かつ上側に移動させる。そうすると、第2のジョー33bが下側に向かって回動する。
【0052】
一方、駆動ピン38の前進に伴い、このように枢支軸35が固定ピン41に対して前方かつ上側に移動されると、第1のジョー33aの基部37は駆動ピン38を枢軸として前方かつ上側に向かって回動する。そうすると、第1のジョー33aが前方に移動しながら上側に向かって回動する。つまり、図4に示すように、第1のジョー33aおよび第2のジョー33bは枢支軸35を支点として互いに開く。なお、1対のジョー33a,33bを閉じるときは、図1に示す可動ハンドル12bを固定ハンドル12aに対して矢印b方向に閉じる。すると、パイプ状部材17に対して駆動軸18を後退させて逆の作用をする。
【0053】
1対のジョー33a,33bを開閉すると、第1のジョー33aと駆動軸18の孔部19との間に設けられた弾性チューブ71はジョー33a,33bの開閉に応じて湾曲する。このため、この弾性チューブ71内に配設されたリード線70は弾性チューブ71内で保護され、無理な力がかかることが防止される。
【0054】
なお、操作部7を固定した状態で挿入部本体21の先端側に設けられた回転操作部16を挿入部8の軸回り方向に回動させると、パイプ状部材17と駆動軸18および処置部9が挿入部8の軸回り方向に回動する。
【0055】
また、操作部本体11の挿入部固定部材15と可動ハンドル12bの駆動軸固定部材27とを取り外すと、操作部7に対して挿入部8および処置部9を外して交換することができる。
【0056】
次に、上述したように構成した熱凝固切開鉗子1で生体組織の凝固切開部位を凝固・切開するときの作用について説明する。
まず、発熱体80が図5に示す曲線Bに沿うように温度上昇させる設定を電源装置3に行っておく。
【0057】
術者が操作部7を把持し、固定ハンドル12aに対して可動ハンドル12bを図1中の矢印a方向に回動させる。すると、駆動軸18が前進して1対のジョー33a,33bが開く。この状態で熱凝固切開鉗子1を前進させて、生体組織の凝固切開部位をジョー33a,33b間に介在させる。そして、可動ハンドル12bを図1中の矢印b方向に回動させる。すると、駆動軸18が後退してジョー33a,33bが閉じる方向に回動する。
【0058】
そして、生体組織の凝固切開したい部位を凝固処置に適した比較的小さい適正な加圧力で圧迫して把持する。すなわち、刃部(伝熱部材)48が生体組織の凝固切開したい部位に接触している。この状態でフットスイッチ5を操作すると、フットスイッチ5からの電気信号がコード4aを通して電源装置3に入力される。すると、電源装置3からコード4を介して処置具2に所定の電流が通電される。したがって、コネクタ29からリード線70を通して第1のジョー33aに設けられた発熱体80に電源装置3で設定された電流が通電される。通電された発熱体80は、例えば図5の曲線Bに示すように所定の温度まで発熱する。
【0059】
発熱体80の発熱に伴ってこの発熱体80に接触した伝熱部材48が次第に温度上昇し、発熱体80の温度を適当な時間維持させると、伝熱部材48の温度も維持される。この状態で伝熱部材48を接触させた生体組織の部位(組織)を凝固させる。このとき、発熱体80は窓部75で適当な厚さを有する断熱部材55に覆われているため、発熱体80の発熱によって第1のジョー33aのジョー本体50に熱が逃げ難い。したがって、発熱体80から伝熱部材48に効率良く熱が伝熱され、生体組織を効率良く焼灼(凝固)させることができる。
【0060】
続いて、フットスイッチ5を操作すると、発熱体80には電源装置3で設定された電流が通電される。このとき、図5の曲線Cに示すように、発熱体80の温度をT まで急激に上昇させる。そして、可動ハンドル12bをさらに矢印b方向、すなわちジョー33a,33bを閉じる方向に回動させる。すると、駆動軸18が後退してジョー33a,33bがさらに閉じ、伝熱部材48を接触させた部位の生体組織が切開される。
【0061】
以上説明したように、この実施の形態によれば、以下のような効果が得られる。
第1のジョー33aのジョー本体50の窓部75に断熱部材55を配設し、断熱部材55で発熱体80の一部を覆った。このため、発熱体80で発生させた熱がジョー本体50に逃げることが防止され、発熱体80で発生させた熱を効率良く(無駄なく)生体組織に伝えることができる。
【0062】
また、断熱部材55は第1のジョー33aの背中側に露出する高さと厚み、すなわち、細く小さなジョーであっても断熱部材55に厚肉部を有するので、発熱体80から発せられた熱を断熱するのに十分な断熱性を有する。したがって、発熱体80で発生した熱が第1のジョー33aのジョー本体50に逃げることを防止することができる。すなわち、発熱体80から伝熱部材48への伝熱効率をさらに向上させることができる。
【0063】
さらに、断熱部材55の背中側表面は、第1のジョー33aのジョー本体50の背中側表面と段差なく滑らかに繋げられている。このため、ジョー33a,33bを閉じた状態で滑らかな背中側表面で、組織を剥離させる操作を行っても引っ掛かることがない。したがって、手術操作を安全に行なうことができる。また、ジョー33aの先端で血管や神経などの索状組織を扱うなどの手術操作を行なう場合であっても安全に行なうことができる。
【0064】
また、第1のジョー33aのジョー本体50の窓部75には、ほぼ全長にわたってジョー本体50と断熱部材55とが組み合わせられる凹凸部76が形成されている。このため、ジョー33a,33bの開閉やジョー33a,33bによる組織の剥離操作を行っても、第1のジョー33aを貫通する窓部75が存在することによってジョー33aの背中側にずれてしまうことを防止することができる。また、凹凸部76でジョー本体50と断熱部材55とが常に接触しているので、第1のジョー33aの変形が防止される。このため、第1のジョー33aが破損し難くなる。したがって、ジョー33a,33bの開閉やジョー33a,33bによる組織の剥離操作に必要なジョー33a,33bの剛性を確保することができる。
【0065】
したがって、この実施の形態の熱凝固切開鉗子1によれば、発熱体80で発生させた熱を無駄なく目的組織に伝えることができる。また、熱凝固切開鉗子1で発熱手段をしっかりと保持・固定することができるので、生体組織を強く把持しても大きな変形や破損が生じ難くすることができる。すなわち、この熱凝固関し1は、耐久性を備えているので、安全に使用することができる。
【0066】
この実施の形態では、断熱部材55を第1のジョー33aに配設したが、さらに第2のジョー33bの受部43を断熱部材にしても良い。また、このときの第2のジョー33bの受部43の断熱部材は、例えば横断面がU字状やコ字状など、外部に露出した伝熱部材48全体を覆える形状であることが好適である。このため、発熱体80で発生させた熱をさらに効率良く生体組織に伝達することができる。
【0067】
また、この実施の形態では、第1のジョー33aのジョー本体50を金属材やプラスチック材としたが、ジョー本体50を例えば断熱部材で一体成形することが好適である。そうすると、ジョー本体50に窓部を形成する必要がなくなるので成形しやすく、かつ、部品数を減らすことができる。このため、第1のジョー33a自体を小型化することができる(大型化することを防止することができる)。また、さらに断熱性を高めることができ、伝熱部材48への伝熱効率を上昇させることができる。
【0068】
なお、この実施の形態では、挿入部8を構成するパイプ状部材17と駆動軸18とを硬質部材として形成した。他に、パイプ状部材17と駆動軸18とを軟性部材として、挿入部8の湾曲や折れ曲がりが可能な、操作性の良い軟性処置具としても良い。
【0069】
次に、第1の実施の形態で説明したパイプ状部材17および駆動軸18の変形例について図7を用いて説明する。
【0070】
図7(A)ないし図7(C)に示すように、パイプ状部材17と駆動軸18との間には、空間(隙間)91a−91c(以下、代表して主に符号91を付す)が設けられている。この空間91は、挿入部本体21に設けられたポート24(図1および図2参照)に連通されている。
【0071】
この熱凝固切開鉗子1の使用後、ポート24から洗浄液を強く流し込むと、洗浄液は、パイプ状部材17と駆動軸18との間の空間91を洗浄しながらパイプ状部材17の先端方向に向かって流れる。パイプ状部材17の後端側は、図1および図2に示すシール部材22でシールされている。このため、洗浄液は、図7(B)および図7(C)に示す隙間91から汚れとともに外部に流れ出す。その後、ポート24から隙間91内に送気するなどして隙間91内を乾燥させる。
【0072】
したがって、従来の熱凝固切開鉗子では洗浄し難かったパイプ状部材17と駆動軸18との間の空間91をきれいに洗浄することができる。
【0073】
次に、第2の実施の形態について図8ないし図10を用いて説明する。この実施の形態に係わる医療器械100は、第1の実施の形態で説明した処置具2の変形例である。
【0074】
図8(A)に示すように、医療器械100は、細長い挿入部102と、この挿入部102の手元側に設けられた操作部103とを備えている。挿入部102の先端側には、処置部104が設けられている。また、操作部103の後端からは、長い接続コード105が手元側に延び、図示しない電源に接続されている。
【0075】
処置部104には、1対のアーム107a,107bが設けられ、アーム107a,107bの手元側は連結部109で一体化されている。また、アーム107a,107bそれぞれの先端近傍およびその内側には、互いに接触したり(図8(B)参照)、間隔を開けて開く(図8(C)参照)ように接離する対向面111a,111bが形成されている。両アーム107a,107bの中間または手元側はバネ性を有する弾性部材112a,112bで形成されている。
【0076】
一方、操作部103は、略筒状で下方側に貫通孔を有するハウジング114を備えている。このハウジング114の内部の空間115には、駆動体(駆動軸)116が設けられている。この駆動体116は、ハウジング114の内部の空間115の中で前後に移動自在(進退自在)である。ハウジング114の一部と駆動体116の一部とは、略U字型のバネ118で連結されている。このバネ118の一端(先端)は駆動体116に接続され、他端(基端)はハウジング114に接続されている。このバネ118は、駆動体116をハウジング114に対して先端方向に付勢している。バネ118の前後は、術者が指を掛けて保持する指掛け部119a,119bとして形成されている。このため、指掛け部119a,119bを強く握ってバネ118を圧縮すると、駆動体116が手元側へ移動する。
【0077】
この駆動体116と、上述した連結部109とは、駆動ワイヤ(駆動軸)121で連結されている。この駆動ワイヤ121は、駆動体116の運動(進退動作)を連結部109へ伝達する。この駆動ワイヤ121の外周は、操作部103のハウジング114に連結された管状部材123で駆動ワイヤ121を進退可能に覆っている。この管状部材123の先端は、アーム107a,107bのガイド部(偏向手段)125として形成されている。このため、駆動ワイヤ121の進退に伴ってアーム107a,107bがこのガイド部125に接触して開閉しながら前後に進退(移動)する。
【0078】
図9(A)は処置部104を拡大した概略的な断面図を示す。一方のアーム107aの対向面111aには、通電すると発熱する発熱体(発熱手段)127が1つあるいは複数(ここでは2つ)設けられている。この発熱体127は、例えば薄膜抵抗加熱素子や厚膜抵抗加熱素子等の熱発生素子やニクロム線など電気を熱に変換する部材が用いられる。また、発熱体127は、他に、セラミックヒーター、カートリッジヒーター、PTCヒーター等が用いられる。発熱体127が設けられた対向面111aには、他のアーム107bの対向面111bに向けて露出する伝熱面128が発熱体127に接触した状態に設けられている。この伝熱面128は、銅、銅合金、アルミニウム合金、タングステンあるいはモリブデン等、熱を効率良く伝える金属材で形成されている。
【0079】
図9(B)に示すように、対向面111aの伝熱面128は、他のアーム107bの対向面111b側に近づくにつれてテーパ状に細く形成されている。これは、外部との接触面積を小さくして伝熱効率を上昇させるとともに、熱を一部に集中させて切開性を向上させるためである。この伝熱面128の外表面には、生体組織や血液が付着することを防ぐためにフッ素樹脂などの薄く非粘着性の皮膜が被覆されている。
【0080】
また、図9(A)に示すように、発熱体127には、複数のリード線129がアーム107a、連結部109および駆動ワイヤ121の内部を通して手元側の駆動体116まで延びている。なお、リード線129は、絶縁被覆され、かつ、アーム107a、連結部109および駆動ワイヤ121もリード線129の電気的影響や熱の影響を防止するため、樹脂などの耐熱非導電体で形成されていることが好ましい。そして、リード線129の端部は接続コード105によって図示しない電源に接続される。このため、発熱体127は、電源から接続コード105およびリード線129を通して通電されて発熱する。この発熱体127および伝熱面128は断熱材130で覆われている。断熱材130の材質は、フッ素樹脂やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などが考えられる。このため、発熱体127が発熱すると、断熱材130から熱が逃げ難いので効率良く伝熱面128に伝熱される。なお、電源は、第1の実施の形態で図6を用いて説明したように、発熱体127の温度制御が可能であることが好適である。
【0081】
反対側のアーム107bの対向面111bには、閉じたときに発熱体127が装着された伝熱面128に接触する受取面131が設けられている。この受取面131は、耐熱性と断熱性とを備えた材料で形成されている。この受取面131の材料には、例えば、シリコーンゴム材やフッ素樹脂材などが使用される。なお、アーム107bには、この受取面131の代わりに、アーム107aと同じ発熱体127、伝熱面128およびリード線129が組み込んであっても良い。
【0082】
次に、上述した医療器械100の作用について説明する。
図8(A)に示す指掛け部119a,119bを強く握ってバネ118を圧縮保持し、駆動体116を手元側に引っ張るとともに駆動ワイヤ121を手元側に引っ張る。すると、連結部109がガイド部125の内部の奧まで引き込まれる。これに伴ってアーム107a,107bがガイド部125に押されて管状部材123の内側に片寄り、対向面111a,111b同士が接触する(図8(B)参照)。すなわち、対向面111a,111bが閉じる。
【0083】
また、図8(A)に示す指掛け部119a,119bを離す。このようにして駆動体116を先端側に付勢させ、駆動ワイヤ121を手元側先端側に押し出すと連結部109がガイド部125の近くまで前進する。これに伴ってアーム107a,107bはガイド部125によって管状部材123の内側に閉じられることなく、自らの弾性によって外側に移動して対向面111a,111bが間隔を開けて開いた状態となる(図8(C)参照)。
【0084】
処置部104を管状部材123のガイド部125に対して突没させてアーム107a,107bを開閉する。すなわち、操作部103に設けられたバネ118の握持およびその解放によってアーム107a,107bをガイド部(偏向手段)125に対して突没(進退)させながら開閉して偏向させる。アーム107a,107bが開いた状態で生体組織を接触させた後、アーム107a,107bを閉じて適当な力で生体組織をアーム107a,107b間に挟む。そして、電源から接続コード105およびリード線129を通して発熱体127に通電して発熱体127を所定の温度まで発熱させて伝熱面128に熱を伝熱する。このため、伝熱面128で生体組織が熱凝固される。また、発熱体127の温度をさらに上昇させると、生体組織が切開される。
この実施の形態では、処置部104のアーム107a,107bが2本の場合について説明した。他に、アームが例えば1本あるいは3本以上(複数)とした場合もその効果は同様である。例えばアームを等間隔に3本としたときには、アームは蕾状に形成されて開閉される。
【0085】
以上説明したように、この実施の形態によれば、構造が簡単であるにも関わらず、安定した凝固能力および切開能力を発揮でき、挿入部102や、処置部104が更に細くて小さな医療器械として形成することができる。また、発熱体127および伝熱面128は断熱材130で覆われている。このため、発熱体127が発熱しても断熱材130の温度変化が少なく、処置部104(断熱材130)に生体組織が付着することを防止することができる。このため、処置効率の低下を防止することができるとともに、掃除の手間を減少させることができる。
【0086】
また、高周波電流などを使用しないので、電源を簡素化・小型化することができる。さらに、発熱体127を温度制御する、すなわち電源から所望の電流が流れるように設定することによって、用途に応じた熱凝固具合を得ることができる。
【0087】
なお、図10に示すように、医療器械140の管状部材142は、図8(A)に示す処置具100の管状部材123とは異なり、その先端部近傍から基端部にかけて内周が厚肉に形成されている。このため、バネ118の指掛け部119a,119bを強く握って処置部104を内部に引き込むと、処置部104の管状部材142の厚肉部の先端部で処置部104の連結部109が当接される。そうすると、術者が当接による引っ掛かりを感じて余計な力をかける必要がなくなる。また、このように当接された位置で処置部104の先端部が管状部材142の先端部よりも基端部側にひきこまれた状態にあることが好適である。
【0088】
これまで、いくつかの実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。
上記説明によれば、下記の事項の発明が得られる。また、各項の組み合わせも可能である。
【0089】
[付記]
(付記項1) 対向配置され、互いに対して開閉可能に生体組織を把持する1対の把持部本体と、
前記把持部本体の少なくとも一方に配設され、発熱する発熱手段と、
前記発熱手段の少なくとも一部を覆う断熱部材と、
前記発熱手段が配設された把持部本体に対して対向する把持部本体に向けて前記発熱手段により発生させた熱を伝熱する伝熱手段と
を具備することを特徴とする医療器械。
【0090】
(付記項2) 前記発熱手段が配設された前記把持部本体は、この把持部本体の外周面から対向配置された他方の把持部本体に面する対向面に対して貫通する窓部を備え、この窓部には、少なくとも断熱部材が配設されていることを特徴とする付記項1に記載の医療器械。
【0091】
(付記項3) 前記発熱手段を備えた把持部本体は、断熱部材で形成されていることを特徴とする付記項1に記載の医療器械。
【0092】
(付記項4) 前記把持部本体は、手元側に開閉操作部を備えたことを特徴とする付記項1に記載の医療器械。
【0093】
(付記項5) 第1のジョー本体と、この第1のジョー本体に設けられた断熱部材と、この断熱部材に少なくとも一部が覆われた状態で発熱する発熱手段と、この発熱手段により発生させた熱を伝熱する伝熱手段とを有する第1のジョーと、
この第1のジョーの伝熱手段を受ける第2のジョーと、
これら第1および第2のジョーの基端部を開閉可能に枢支する枢支軸と、
これら第1および第2のジョーを開閉させる開閉手段と、
この開閉手段を操作する操作部と、
前記発熱手段に電力を供給する電源と
を具備することを特徴とする医療器械。
【0094】
(付記項6) 前記第1のジョー本体は、このジョー本体の外周面から第2のジョー本体に面する対向面に対して貫通する窓部を備え、この窓部に前記断熱部材が少なくとも配設されていることを特徴とする付記項5に記載の医療器械。
【0095】
(付記項7) 前記第1のジョー本体と断熱部材との境界には、噛合凹凸部が設けられていることを特徴とする付記項6に記載の医療器械。
【0096】
(付記項8) 前記伝熱手段は、前記発熱手段から熱を受ける位置の断面が前記第2のジョーに近接する位置の断面よりも小さく形成されていることを特徴とする付記項5ないし付記項7のいずれか1に記載の医療器械。
【0097】
(付記項9) 先端部に生体組織を把持する1対の把持部を備え、前記把持部の少なくとも一方に熱を発生させ、他方側に向けて熱を伝達させる熱源部を備え、手元側に前記把持部を開閉させる操作部を備えた医療器械において、
前記熱源部の少なくとも一部を断熱部材で覆ったことを特徴とする医療器械。
【0098】
(付記項10) 通電によって発熱する発熱部材と、
該発熱部材を保持し、断熱部材よりなる第1のジョーと、
該発熱部材に対向する受部を有し、断熱部材よりなる第2のジョーと、
前記第1および第2のジョーに接続され、前記第1および第2のジョーの開閉操作を行なう操作部と
からなる医療機器。
【0099】
(付記項11) 互いに開閉可な一対のジョーと、
ジョーの手元側に設けられた操作部と、
少なくとも一方のジョーに設けられ、他方のジョーに面する対向面から反対側外周表面まで貫通する窓と、
窓内に固定された断熱部材と、
少なくとも一部分が前記断熱部材に覆われ、通電により発熱する発熱手段と、
発熱手段に接続された通電手段と、
からなることを特徴とする医療器械。
【0100】
(付記項12) 付記項11において、
窓の縁部または近傍に少なくとも1つの厚肉部を設けたことを特徴とする医療器械。
【0101】
(付記項13) 弾性を有し、先端近傍に発熱手段が設けられた1つあるいは複数のアームとからなる処置部と、
前記発熱手段に連結された通電手段と、
処置部の手元側に設けられた操作部と、
処置部の近傍にあって、前記アームを一定の方向に偏向させるガイド手段と、
からなることを特徴とする医療器械。
【0102】
(付記項14) 付記項13において、
処置部と操作部の間に細長の挿入部が設けられ、
操作部が管状部材と管状部材の中を貫通し長軸方向に移動可能な駆動軸とを有し、
前記アームが前記駆動軸に連結され、前記ガイド手段が前記管状部材に連結されていることを特徴とする医療器械。
【0103】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、発熱手段で発生した熱を無駄なく目的組織へ伝えることができる医療器械を提供することができる。
【0104】
また、安定した凝固能力および切開能力を発揮し、かつ、先端の処置部に生体組織が付着し難く、再出血を防止することができる安全で、構造が簡単な医療器械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施の形態に係わる熱凝固切開鉗子の構成を示す概略図。
【図2】 第1の実施の形態に係わる熱凝固鉗子における処置具を示す概略的な部分断面図。
【図3】 第1の実施の形態に係わる熱凝固鉗子における処置具を示し、(A)は第1のジョーの概略的な断面図、(B)は(A)の3B−3B線に沿う断面図、(C)は(A)の3C−3C線に沿う断面図、(D)は(A)の3D−3D線に沿う断面図。
【図4】 第1の実施の形態に係わる熱凝固鉗子における処置具の処置部を示す概略的な断面図。
【図5】 第1の実施の形態に係わる熱凝固鉗子における電源装置で制御する発熱体の温度を示すグラフ。
【図6】 第1の実施の形態に係わる熱凝固鉗子における処置具の挿入部と処置部の境界部近傍を示す断面図。
【図7】 (A)は第1の実施の形態に係わる熱凝固鉗子の変形例における処置具の挿入部と処置部の境界部近傍を示す断面図、(B)は(A)の7B−7B線に沿う断面図、(C)は(A)の7C−7C線に沿う断面図。
【図8】 (A)は第2の実施の形態に係わる熱凝固鉗子の処置具の概略的な断面図、(B)は(A)の処置具の処置部が閉じた状態を示す概略的な断面図、(C)は(A)の処置具の処置部が開いた状態を示す概略的な断面図。
【図9】 (A)は第2の実施の形態に係わる熱凝固鉗子の処置具の処置部が開いた状態を示す概略的な側面図、(B)は(A)の9B−9B線に沿う断面図。
【図10】 第2の実施の形態に係わる熱凝固鉗子の変形例における概略的な部分断面斜視図。
【符号の説明】
1…熱凝固切開鉗子、2…処置具、8…挿入部、9…処置部、33a…第1のジョー、33b…第2のジョー、35…枢支軸、37…基部、38…駆動ピン、40…基部、41…固定ピン、42…ジョー本体、43…受部、48…伝熱部材(刃部)、50…ジョー本体、55…断熱部材、70(70a.70b)…リード線、75…窓部、76…凹凸部、78…U字溝、79…空間、80…発熱体、81…小空間

Claims (4)

  1. 互いに開閉可能な1対のジョー本体と、これらジョー本体を開閉操作する操作部とを備えた医療器械において、
    少なくとも一方のジョー本体に設けられ、他方のジョー本体に面する対向面から反対側外周表面まで貫通する窓部と、
    この窓部内に配設されるとともに、前記外周表面に滑らかに設けられた断熱部材と、
    前記断熱部材に一部が覆われ、通電すると発熱する発熱手段と、
    前記発熱手段に接触した状態に設けられ、前記発熱手段により発生させた熱を他方のジョー本体に向けて伝熱する伝熱手段と
    を具備することを特徴とする医療器械。
  2. 前記ジョー本体は、前記断熱部材と一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療器械。
  3. 前記窓部内の断熱部材は、前記ジョー本体の外周面側で、前記窓部の縁部またはその近傍に厚肉部を有することを特徴とする請求項1に記載の医療器械。
  4. 前記他方のジョー本体には、前記一方のジョー本体に設けられた前記伝熱手段を覆う状態に受ける断熱性を有する受部が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1に記載の医療器械。
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