JP4248834B2 - 低屈折率薄膜の製造方法、および反射防止膜の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低屈折率薄膜の製造方法、および反射防止膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ワープロ、コンピュータ、テレビ等の各種ディスプレイや各種光学レンズ、光学物品、自動車、電車等の窓ガラスの表面における光の反射防止をするために、これらの物品の表面に反射防止膜を設けることが行われている。
例えば、特許文献1には、基材上に、ゾル−ゲル法により形成された高屈折率層と交互吸着法により形成された低屈折率層とを交互に積層してなる多層ヘテロ構造膜が記載されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−350015号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
反射防止膜の反射防止性能は、これを構成する層の屈折率を変化させることによって向上させることができるが、一般に、層の屈折率は材料によってほぼ決まってしまうため、材料を変えなくても屈折率を変化させることができる方法が求められていた。
特に、多層ヘテロ構造膜からなる反射防止膜にあっては、隣接する層の屈折率差を構造的に変化させることができれば、材料の屈折率の許容範囲が広くなり、光学設計の自由度が拡大されるので好ましい。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、材料を変えなくても構造的に屈折率を変化させることができる低屈折率薄膜の製造方法、および該低屈折率薄膜の製造方法を用いた反射防止膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決すべく、本発明者等が鋭意研究を重ねた結果、正の電荷を有する帯電層と、負の電荷を有する帯電層とを交互に積層して形成した低屈折率薄膜に酸処理またはアルカリ処理することにより、該低屈折率薄膜に空隙を形成できること、および該空隙は低屈折率薄膜の屈折率を構造的に低減させることができることを見出して、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の低屈折率薄膜の製造方法は、正の電荷を有する帯電層と、負の電荷を有する帯電層とが交互に積層された積層膜を、酸性溶液および/またはアルカリ性溶液に浸漬して、正の電荷を有する帯電層および/または負の電荷を有する帯電層の一部を解離させることにより、前記積層膜に空隙を形成して低屈折率薄膜を得ることを特徴とする。
【0007】
前記積層膜を交互吸着法により形成した後、負の電荷を有する帯電層を交互吸着法に用いた溶液のpHよりも低いpHを有する酸性溶液に浸漬することおよび/または正の電荷を有する帯電層を交互吸着法に用いた溶液のpHよりも高いpHを有するアルカリ性溶液に浸漬することが好ましい。
前記正の電荷を有する帯電層を構成する電解質または前記負の電荷を有する帯電層を構成する電解質の少なくとも一方として弱電解質を用いることが好ましい。
【0008】
本発明の低屈折率薄膜の製造方法においては、正の電荷を有する帯電層と、負の電荷を有する帯電層とが交互に積層された積層膜に、平面形状における直径が200nm未満で、深さが200nm未満の空隙を複数形成することが好ましい。
本発明によれば、屈折率が1.45以下である低屈折率薄膜が得られる。
【0009】
本発明の反射防止膜の製造方法は、低屈折率薄膜が、該低屈折率薄膜よりも屈折率が高い層である高屈折率層の上に積層された構成を有する反射防止膜の製造方法であって、前記高屈折率層の上に、正の電荷を有する帯電層と、負の電荷を有する帯電層とが交互に積層された積層膜を形成した後、請求項1〜5のいずれかに記載の低屈折率薄膜の製造方法を用いて、正の電荷を有する帯電層および/または負の電荷を有する帯電層の一部を解離させることにより、前記積層膜に空隙を形成して前記積層膜から前記低屈折率薄膜を得ることを特徴とする。
前記低屈折率薄膜を、前記高屈折率層としてのフィルム基材に直接、またはフィルム基材に前記高屈折率層を介して、形成することが好ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明における正の電荷を有する帯電層は、溶液中で正に帯電し得る電解質または荷電微粒子を含み、膜形成能を有する材料を用いて形成することができる。正の電荷を有する帯電層の材料としては、溶液中で電離して正に帯電し得る正の高分子化合物を用いることができる。例えば、4級アンモニウム基、アミノ基など、溶液中で正の荷電を帯びることができる官能基を有する高分子化合物であって、水溶性または水分散性を有するもの、または水と有機溶媒との混合溶媒に対して可溶性または分散性を有するものを用いることができ、有機高分子化合物が好ましく用いられる。正の電解質高分子の具体例としては、ポリピロール、ポリアニリン、ポリパラフェニレン(+)、ポリパラフェニレンビニレン、ポリエチルイミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH:poly-allylaminehydrochloride)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジンなどを挙げることができる。
【0011】
本発明における負の電荷を有する帯電層は、溶液中で負に帯電し得る電解質または荷電微粒子を含み、膜形成能を有する材料を用いて形成することができる。負の電荷を有する帯電層の材料としては、溶液中で電離して負に帯電し得る負の高分子化合物を用いることができる。例えば、スルホン酸、硫酸、カルボン酸など、溶液中で負の荷電を帯びることができる官能基を有する高分子化合物であって、水溶性または水分散性を有するもの、または水と有機溶媒との混合溶媒に対して可溶性または分散性を有するものを用いることができ、有機高分子化合物が好ましく用いられる。負の電解質高分子の具体例としては、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリビニル硫酸(PVS)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、ポリマレイン酸、ポリフマル酸ポリパラフェニレン(−)、ポリチオフェン−3−アセティックアシド、ポリアミック酸などを挙げることができる。
【0012】
または、本発明における正の電荷を有する帯電層および負の電荷を有する帯電層の材料として、導電性高分子、ポリ(アニリン−N−プロパンスルホン酸)(PAN)などの機能性高分子イオン、種々のデオキシリボ核酸(DNA)やリボ核酸(RNA)、ペクチンなどの荷電を有する多糖類など、荷電を有する生体高分子を用いることもできる。
また、水溶性の材料以外にも、例えばフェライト微粒子など、水不溶性の荷電微粒子を用いることもできる。
さらに、高分子材料以外にも、例えばルテニウム錯体モノマー(Ru(bpy)3(PF6)2)2+を正の帯電膜の材料として用い、前記PAAを負の帯電膜の材料として用いるのも好ましい。
【0013】
本発明に係る低屈折率薄膜を製造するには、まず、正の電荷を有する帯電層と、負の電荷を有する帯電層とが交互に積層された積層膜を形成する。かかる積層膜を形成する方法は、特に交互吸着法が好適であるが、交互吸着法以外にも、例えばゾル−ゲル法、スピンコート法、ラングミュア−ブロジェット(Langmuir-Blodgett)法等の方法により形成することが可能である。
交互吸着法は、基材を、正の帯電層の材料を含む溶液および負の帯電層の材料を含む溶液に交互に浸漬させることによって、基材上に積層膜を形成する方法であり、周知の具体的手法を適宜用いることができる。基材表面が負に帯電している場合は、該基材上にまず正の帯電層を形成し、基材表面が正に帯電している場合は、該基材上にまず負の帯電層を形成する。最上層を、正の帯電層と負の帯電層のどちらにするかは任意である。
積層膜を構成する正の帯電層と負の帯電層の層数および膜厚は光学設計に必要とされる厚みに応じて設定される。
また、本発明において、正の帯電層を構成する電解質または負の帯電層を構成する電解質の少なくとも一方として、弱電解質を用いると、後述するように積層膜に空隙を形成し易いので好ましい。
【0014】
交互吸着法による場合、正の帯電層の材料を含む溶液のpH、および負の帯電層の材料を含む溶液のpHを最適値に制御することが好ましい。ここでの正の帯電層の材料を含む溶液のpHの最適値および負の帯電層の材料を含む溶液のpHの最適値は、該溶液に含まれている、帯電層を構成する材料が完全に解離しない値となるように設定される。
【0015】
次に、形成した積層膜に対して酸処理またはアルカリ処理を行って、該積層膜に空隙を形成する。 具体的には、積層膜をアルカリ性溶液または酸性溶液に浸漬させて該処理を行うことができる。
積層膜を構成している正の帯電層のpHよりも高いpHを有するアルカリ性溶液を用いて処理を行うと、正の帯電層に空隙を形成することができ、負の帯電層のpHよりも低いpHを有する酸性溶液を用いて処理を行うと、負の帯電層に空隙を形成することができる。酸処理とアルカリ処理の両方を任意の順序で行えば、積層膜を構成している正の帯電層と負の帯電層の両方に空隙を形成することができる。
ここで、積層膜を構成している正の帯電層のpHおよび負の帯電層のpHとは、該積層膜を交互吸着法で形成した場合は、該交互吸着法に用いた正の帯電層の材料を含む溶液のpH、および負の帯電層の材料を含む溶液のpHであり、積層膜を交互吸着法以外の方法で形成した場合は、正の帯電層に使用する材料の等電位点より高いpH、負の帯電層に使用する材料の等電位点より低いpHである。
【0016】
このような酸処理またはアルカリ処理によって形成される空隙は、空気が侵入可能な空洞構造を有していればよく、多孔質状、または繊維の束が集まった状態の繊維質構造であってもよい。
空隙は、低屈折率薄膜の表面を平面視したときの該空隙の直径が200nm未満で、深さが200nm未満であることが好ましく、この範囲の大きさの空隙が形成されるように酸処理またはアルカリ処理の処理条件を調整することが好ましい。
空隙の直径が200nm未満であれば、光散乱を効果的に抑えることができる。光散乱が大きくなるほど透過率が低下してしまう。
また、薄膜自身の強度を確保するうえで、空隙の深さを200nm未満とすることが好ましい。
【0017】
本発明においては、正の帯電層と負の帯電層とが交互に積層された積層膜は、正に帯電した電解質または荷電微粒子と、負に帯電した電解質または荷電微粒子とが電気的な力で結合しているので、酸処理またはアルカリ処理を行うことにより、積層膜中の電解質または荷電微粒子が容易に解離して移動し、空隙が形成される。
そして、積層膜に、このような空隙を形成して積層膜の構造を変化させることにより、低屈折率薄膜全体の屈折率(バルクの屈折率)を、空隙を形成する前の積層膜の屈折率よりも低くすることができる。すなわち、積層膜中にこのような空隙を形成すると、積層膜中に微細な空気層が多数混在した状態となり、通常、空気の屈折率は積層膜を構成している材料の屈折率よりも低いので、空隙を含む積層膜全体の屈折率(低屈折率薄膜のバルクの屈折率)は、空気層が混在したことにより低減される。これにより、例えば、低屈折率薄膜の屈折率を1.45以下、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下に低減させることが可能である。反射防止効果を得ようとする中心波長において良好な反射防止効果が得られるように、反射防止膜を構成する各層の屈折率を適宜設定するのが好ましい。
また、正の帯電層と負の帯電層とが交互に積層されてなる低屈折率薄膜は、各層が電気的な力によって結合しているので、層間の接着力が強く、粘着テープなどを用いても容易に剥離されない。
【0018】
本発明においては、正の帯電層を構成する電解質および負の帯電層を構成する電解質は強電解質でも弱電解質でもよいが、弱電解質の方が空隙が形成されやすい。この理由は定かではないが、弱電解質は電離が容易なので深部まで電離されやすいためと推定される。したがって、正の帯電層を構成する電解質および負の帯電層を構成する電解質の少なくとも一方として弱電解質を用いることが好ましい。正に帯電する弱電解質の例としては、ポリアニリン等が挙げられ、負に帯電する弱電解質の例としては、ポリアクリル酸等が挙げられる。
【0019】
本発明の反射防止膜は、本発明の低屈折率薄膜、すなわち前記空隙が形成された積層膜を備えてなることを特徴とする。
本発明の低屈折率薄膜は、CRT、液晶、プラズマディスプレイやレンズなどの表面に直接設ける場合は、単独で反射防止膜を形成することもできるが、前記低屈折率薄膜が、該低屈折率薄膜よりも屈折率が高い層上に積層されている構成としてもよい。
【0020】
本発明の反射防止膜における低屈折率薄膜や高屈折率薄膜の各層の膜厚はnd=λ/4(nは中心波長の屈折率、dは膜厚、λは中心波長)に近くなるように設計されることが好ましい。このように設計されることによって、各層の表面で反射される反射光と各層の内部端面で反射される反射光とが打ち消し合い、反射防止効果が効率よく発現される。
そして、該低屈折率薄膜よりも屈折率が高い層は、基材であってもよいし、基材上に高屈折率薄膜を形成し、その上に本発明にかかる低屈折率薄膜を形成してもよい。また、低屈折率薄膜上に、防汚層や帯電防止層、ハードコート層などを任意に形成してもよい。
基材は、可視光帯域において透明なものであればよく、反射防止が要求される対象によって、ヘイズやレタデーション値などを考慮の上、適宜選定され、例えばガラス、PC(ポリカーボネイト)フィルムやPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が好ましく用いられる。形状は任意であり、現存のディスプレイなどの表面へ直接コーティングも本発明方法であれば、可能となる。
【0021】
高屈折率薄膜は、その上に形成される低屈折率薄膜のバルクの屈折率よりも、屈折率が高ければよく、その材料や製法は特に限定されない。例えば、高屈折率薄膜としてITO(Indium Tin Oxide)薄膜やTiO2(酸化チタン)薄膜など無機材料からなる薄膜を用いることができる。または、有機バインダー中にTiO2を分散させた分散体を用いて高屈折率薄膜を形成することもできる。製法としては、例えばコーティング法やスパッタ法を適用することができる。
基材の厚さおよび高屈折率薄膜の厚さは、特に限定されないが、上述したように高屈折率薄膜の厚さは、低屈折率薄膜の厚さと同様、使用波長帯域で良好な反射防止効果が得られるように適宜設定されることが好ましい。
【0022】
防汚層の材料としては、シリコーンや光触媒等を用いることができる。製法は特に限定されないが、例えばウエットコート法や真空蒸着法を用いることができる。反射防止膜の最上層として防汚層を形成することにより、汚れがつきにくくなり、防汚性を向上させることができる。これにより、例えば指紋等の汚れが付着し難くなる。防汚層の膜厚は反射防止膜の光学的特性に影響を与えない範囲で設定される。例えば50nm以下が好ましく、10nm以下がより好ましい。
また、ハードコート層や帯電防止層などは最上層でなくても機能を付与することが出来る。
【0023】
一般的に、高屈折率薄膜上に低屈折率薄膜を積層した構成の反射防止膜において、高屈折率薄膜の屈折率と低屈折率薄膜の屈折率との差が大きいほど該反射防止膜の反射率は小さくなる。したがって、本発明によれば、低屈折率薄膜に微細な空隙が形成されており、空隙が形成されたことによって低屈折率薄膜の屈折率が低減されているので、これにより反射防止膜の性能が向上する。それと併せて、低屈折薄膜の屈折率が下がることにより、高屈折率薄膜の材料の選択肢が広範なものとなる。
【0024】
また、従来の低屈折率層として用いられる材料はSiO2(n=1.45)やMgF2(n=1.38)、フッ素樹脂(n=1.24〜1.45)などがあるが、材料により屈折率は決まってしまい、反射防止膜を形成する光学設計が限定される。
さらにフッ素樹脂は非常に高価であるため、それを用いた反射防止膜は非常に高価となってしまう。
従来は、限定された低屈折率材料で、要求を満たす反射防止性能を有する反射防止膜を、低屈折率層単層では実現することができず、多層構成による反射防止膜で実現していた。
これに対して、本発明の低屈折率薄膜を用いれば、単層でも十分な反射防止性能が実現可能である。
本発明の低屈折率薄膜は任意に屈折率を変えることが可能であり、光学設計の自由度が増し、より高度な反射防止膜の形成が可能となる。
本発明の低屈折率薄膜は、シリカなどの従来の低屈折率材料より屈折率を低くすることができるために、単独でガラスやフィルム基材などにコーティングしても反射防止性能を出すことができる。また、多層構成にするなどして、さらに高性能な反射防止性能を出すことも可能である。
【0025】
【実施例】
以下、具体的な実施例を示して本発明の効果を明らかにする。
(実施例1)
正の電解質高分子としてポリアリルアミン塩酸塩(PAH、分子量=55000)を用意し、負の電解質高分子としてポリアクリル酸(PAA、分子量=90000)を用意した。いずれも10−2mol/リットルの濃度の水溶液を作製してそれぞれ反応槽に収容した。
これとは別に、リンス浴に利用する純水として、比抵抗が18MΩ・cm以上の超純水を用意した。
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(帝人・デュポン社製、商品名:メリネックス)上に、高屈折率材料として、酸化チタン(シーアイ化成社製、商品名:チタニアA−11)を用いて、nd=λ/4(nは中心波長の屈折率、dは膜厚、λは中心波長)となるように、λ=550nm、d=75nmとして、高屈折率層を作製した。高屈折率薄膜の屈折率は約1.8である。そして、形成した高屈折率薄膜の表面を水酸化カリウム水溶液処理により親水処理した。
次いで、高屈折率薄膜が形成された基材を、まずPAH溶液(pH=7.5)中に15分間浸漬させてPAHからなる膜を成膜した後、それをPAA溶液(pH=3.5)中に15分間浸漬させてPAAからなる膜を成膜した。このようにしてPAHからなる膜とPAAからなる膜を交互に成膜して、合計で8層からなる厚さ約90nmの積層膜を形成した。
続いて、積層膜が形成された基材を、pH約2.5に調整した塩酸中に2分間浸漬した後、比抵抗が18MΩ・cm以上の超純水で洗浄することによって、積層膜に微細な空隙を形成して低屈折率薄膜とした。これにより基材上に高屈折率薄膜および低屈折率薄膜が順に積層された構成の反射防止膜を得た。
【0026】
図1は得られた反射防止膜の断面図である。図中符号1は基材、2は高屈折率薄膜、3は低屈折率薄膜、4は空隙をそれぞれ示す。
この図に示されるように、低屈折率薄膜には微細な空隙が多数形成されており、該空隙の、平面形状における直径は200nm未満であった。また低屈折率薄膜を貫通している空隙は、空隙の深さは低屈折率薄膜の厚さ、すなわち110nm未満であった。先に積層した厚み90nmより大きくなっているのは、塩酸中に浸積することにより、膜が空気を含み膨らんだことを意味している。すなわち、第三成分を混合させて蒸発させることによって空隙を作成する方法と異なり、高分子を酸・アルカリに浸漬させることで、膜の構造を変化させ、空隙を作製することになる。このことは第三成分を取り除くと言う方法と異なり、第三成分が残るということがないために、新規で汚染のない多孔質体を作成する方法である。
【0027】
得られた反射防止膜の反射防止効果を次のようにして評価した。すなわち、反射防止膜の基材の裏面に対して、スチールウールなどを用いて表面を荒らした後、黒インキを塗布して、この裏面における光の反射を無くした状態で、反射防止膜の最高反射率と最低反射率を測定した。測定は、日本分光株式会社製 紫外可視分光器 V-570を用いて、入射光の波長を350nm〜800nmの範囲で2nm単位で変化させつつ、入射角5°で正反射率を測定し、得られた測定チャートより最高反射率と最低反射率を読み取った。また反射防止膜を構成している低屈折率薄膜の部分の屈折率を上記測定方法によって得られた反射率波形から、既知の光干渉法により屈折率を算出した。
得られた測定チャートを図2に実線で示す。この結果、該波長範囲における最高反射率は2.2%であり、最低反射率は0.41%であった。低屈折率薄膜部分の屈折率は1.18であり、反射防止膜の視感度平均反射率(Y値)は0.51であった。
ここで視感度平均反射率(Y値)とは、人間の目の感度を各波長におけるパラメータとして、XYZ表色系(CIE1931 表色系)による色刺激値のY値であり、この値が高いほどまぶしく感じ、低いほど目に見える反射率が低いと言うことになる。具体的には、上記分光光度計(上記紫外可視分光器 V-570)付属のデータ処理ツール(カラー測定ソフト)にて、C光源に対する三刺激値の一つであるYを計算し、これをもって視感度平均反射率(Y値)とした。
【0028】
(比較例1)
実施例1において、積層膜を形成した後に塩酸に浸漬しない他は同様にして反射防止膜を形成した。
得られた反射防止膜の反射防止効果を実施例1と同様にして評価した。得られた測定チャートを図2に実線で示す。その結果、最高反射率は4.67%であり、最低反射率は0.3%であった。低屈折率薄膜部分の屈折率は1.483であり、反射防止膜の視感度平均反射率(Y値)は0.72であった。
【0029】
実施例1と比較例1の評価結果より、積層膜に塩酸処理を行った実施例1の方が、低屈折率薄膜部分の屈折率が低く、Y値も低くなった。また、図2の測定データより、中心波長から低波長側および高波長側で反射率が低くなっている。このことから、可視光領域全体で反射率を下げる効果もあることが分かった。以上の結果より、反射防止膜として性能が高いことが認められた。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、正の電荷を有する帯電層と、負の電荷を有する帯電層とが交互に積層された積層膜からなる薄膜の屈折率を、構造的に低減させることができる。これにより反射防止膜の反射防止性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る反射防止膜の例を示す図である。
【図2】実施例および比較例に係る反射率の測定チャートである。
【符号の説明】
1…基材、2…高屈折率薄膜、3…低屈折率薄膜、4…空隙。
Claims (7)
- 正の電荷を有する帯電層と、負の電荷を有する帯電層とが交互に積層された積層膜を、酸性溶液および/またはアルカリ性溶液に浸漬して、正の電荷を有する帯電層および/または負の電荷を有する帯電層の一部を解離させることにより、前記積層膜に空隙を形成して低屈折率薄膜を得ることを特徴とする低屈折率薄膜の製造方法。
- 前記積層膜を交互吸着法により形成した後、負の電荷を有する帯電層を交互吸着法に用いた溶液のpHよりも低いpHを有する酸性溶液に浸漬することおよび/または正の電荷を有する帯電層を交互吸着法に用いた溶液のpHよりも高いpHを有するアルカリ性溶液に浸漬することを特徴とする請求項1記載の低屈折率薄膜の製造方法。
- 前記正の電荷を有する帯電層を構成する電解質または前記負の電荷を有する帯電層を構成する電解質の少なくとも一方として弱電解質を用いることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の低屈折率薄膜の製造方法。
- 正の電荷を有する帯電層と、負の電荷を有する帯電層とが交互に積層された積層膜に、平面形状における直径が200nm未満で、深さが200nm未満の空隙を複数形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の低屈折率薄膜の製造方法。
- 前記低屈折率薄膜の屈折率が1.45以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の低屈折率薄膜の製造方法。
- 低屈折率薄膜が、該低屈折率薄膜よりも屈折率が高い層である高屈折率層の上に積層された構成を有する反射防止膜の製造方法であって、
前記高屈折率層の上に、正の電荷を有する帯電層と、負の電荷を有する帯電層とが交互に積層された積層膜を形成した後、
請求項1〜5のいずれかに記載の低屈折率薄膜の製造方法を用いて、正の電荷を有する帯電層および/または負の電荷を有する帯電層の一部を解離させることにより、前記積層膜に空隙を形成して前記積層膜から前記低屈折率薄膜を得ることを特徴とする反射防止膜の製造方法。 - 前記低屈折率薄膜を、前記高屈折率層としてのフィルム基材に直接、またはフィルム基材に前記高屈折率層を介して、形成することを特徴とする請求項6に記載の反射防止膜の製造方法。
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