ところで、光ディスクであるDVDには、従来からの赤色レーザ光で記録/再生可能なDVDと、普及しつつある青色レーザ光で記録/再生可能なHD(Hi−Definition)−DVDとが知られている。しかしながら、特許文献1に示す従来技術は、ディスク厚みの違いによって、光ピックアップ装置の球面収差の影響によるフォーカスぼけ量が大きく変わる点を利用して光ディスクの種類を判別しているが、DVDとHD−DVDは情報面の厚みが同じであるので、挿入されている光ディスクがDVDであるかHD−DVDであるかを判別することができないという課題が生じる。
また、特許文献2に示す従来技術は、光ピックアップからのレーザ光による光スポットの移動距離に対する光ディスク上のトラック横断回数に基づいてトラックピッチを判断し、このトラックピッチの違いにより、光ディスクの種類を判別しているが、ディスク判別するまでに光ピックアップを一定時間移動させなければならないので、ディスク判別に時間が多く要するという課題が生じる。
また、特許文献3に示す従来技術は、光ピックアップからのレーザ光による光スポットが光ディスク上のトラック横断時に発生するトラッキングエラー信号の発生回数に基づいてトラックピッチを判断し、このトラックピッチの違いにより、光ディスクの種類を判別しているが、光ディスクが偏芯している場合には、タイミングによって密度の濃い部分と薄い部分とがあるトラッキングエラー信号が発生するときがあるので、トラッキングエラー信号の発生回数だけでトラックピッチを判断するのは難しい場合があり、このためディスク判別の精度が劣るという課題が生じる。
また、特許文献4に示す従来技術は、光ピックアップを上下動させながらフォーカスエラー信号のピーク値を取得し、CDとDVDのディスク判別を行っているが、DVDとHD−DVDは情報面の厚みが同じであるので、挿入されている光ディスクがDVDであるかHD−DVDであるかを判別することができないという課題が生じる。
また、特許文献5に示す従来技術では、液晶収差補正素子の球面収差補正量を利用して、1層の光ディスクであるか2層の光ディスクであるかのディスク判別を行っている。即ち、この従来技術は、球面収差補正量から光ディスクの情報面深さを検出し、この情報面深さからディスク判別を行っているが、DVDとHD−DVDは情報面の厚みが同じであるので、挿入されている光ディスクがDVDであるかHD−DVDであるかを判別することができないという課題が生じる。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、DVDとHD−DVDのように情報面の厚みが同じであり、トラックピッチが異なる光ディスクであっても、ディスク判別することができ、しかもディスク判別を高速にできる光ディスク装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、光ディスクに対してレーザ光をスポット照射し、光ディスクに対して光学的に情報を書き込み/読み出しを行う光ピックアップを有し、光ディスクに記録された情報の再生、または光ディスクに対して情報の記録/再生を行う光ディスク装置において、光ディスクが挿入された後、スピンアップの実行時に、前記挿入された光ディスクの判別を行う際に、光ピックアップの青色発光のレーザダイオードを駆動させるダイオード駆動手段と、前記レーザダイオードが駆動された後、光ディスクに対して光ピックアップからのレーザ光のフォーカスをオンさせるフォーカスオン手段と、前記フォーカスがオンされた後、光ピックアップの球面収差補正素子を駆動させ、光ピックアップのレンズ系の球面収差を補正する球面収差補正手段と、前記球面収差が補正された後、光ピックアップの出力信号により生成されたトラッキングエラー信号の振幅の大きさに基づいてトラッキングエラー信号増幅回路系のAGC(自動利得制御)のゲイン値を設定するAGC設定手段と、前記AGCのゲイン値が設定された後、光ピックアップのフォトディテクタが受光している全光量と光ピックアップのレーザダイオードの発光パワーとトラッキングエラー信号の振幅のAGCゲイン値とを測定する全光量/発光パワー/AGCゲイン測定手段と、前記球面収差補正素子への制御量を変化させ球面収差を変化させる球面収差変化手段と、前記全光量と発光パワーとAGCゲイン値が測定された後、前記球面収差補正手段により球面収差が補正された第1段階から前記球面収差変化手段により球面収差が変化した所定段階までの最大トラッキングエラー信号の振幅を測定する最大トラッキングエラー振幅測定手段と、前記最大トラッキングエラー信号の振幅の測定が所定回数行われた後、前記所定回数測定が行われた最大トラッキングエラー信号の振幅を、前記測定された全光量と発光パワーとAGCゲイン値との値で正規化する正規化手段と、前記正規化された最大トラッキングエラー信号の振幅の変化を測定することによって近似直線を求め該近似直線の傾きを算出する近似直線傾き算出手段と、前記挿入されている光ディスクを、前記近似直線の傾きがディスク判別用の閾値よりも小さいときにHD−DVDと判別し、前記近似直線の傾きがディスク判別用の閾値よりも大きいときにDVDと判別するディスク判別手段と、を有するシステムコントローラを備えたことを特徴とする光ディスク装置を提供する。
この構成において、光ディスクが装置に挿入され、スピンアップが開始すると、ダイオード駆動手段は、光ピックアップのレーザダイオードを駆動させる。レーザダイオードが駆動された後、フォーカスオン手段は、光ピックアップから出射されるレーザ光による光スポットが光ディスクのトラックに対して焦点が合うようにフォーカスオンさせる。次に、前記フォーカスオンされた後、球面収差補正手段は、光ピックアップの球面収差補正素子を駆動させ、光ピックアップのレンズ系の球面収差を補正する。
前記球面収差が補正された後、AGC設定手段は、トラッキングエラー信号の振幅の大きさに基づいてトラッキングエラー信号増幅回路系のAGCゲイン値を設定する。前記AGCゲイン値が設定された後、全光量/発光パワー/AGCゲイン測定手段は、光ピックアップのフォトディテクタが受光している全光量と光ピックアップのレーザダイオードの発光パワーとトラッキングエラー信号の振幅のAGCゲイン値とを測定する。
前記全光量と発光パワーとAGCゲイン値が測定された後、最大トラッキングエラー振幅測定手段は、球面収差補正手段により球面収差が補正された第1段階から球面収差変化手段により球面収差が変化した所定段階までの最大トラッキングエラー信号の振幅を測定する。次に、球面収差変化手段は、球面収差補正素子への制御量を変化させ、球面収差を第2段階の球面収差に変化させる。ここで再び、最大トラッキングエラー振幅測定手段は、最大トラッキングエラー信号の振幅を測定(2回目の測定)する。
更に、球面収差変化手段は、球面収差補正素子への制御量を変化させ、球面収差を第3段階の球面収差に変化させる。ここで再び、最大トラッキングエラー振幅測定手段は、球面収差が第3段階の球面収差に更に変化したときの最大トラッキングエラー信号の振幅を測定(3回目の測定)する。そして、正規化手段は、例えば、3回測定が行われた最大トラッキングエラー信号の振幅を、前記測定された全光量と発光パワーとAGCゲインとの値で正規化する。これにより、反射率などが違う光ディスクでもディスク判別を行うことができる。
次に、近似直線傾き算出手段は、前記正規化された最大トラッキングエラー信号の振幅の変化を測定することによって近似直線を求め、この近似直線の傾きを算出する。そして、ディスク判別手段は、前記挿入されている光ディスクを、前記近似直線の傾きがディスク判別用の閾値よりも小さいときにHD−DVDと判別し、前記近似直線の傾きがディスク判別用の閾値よりも大きいときにDVDと判別する。
この構成によれば、光ピックアップのレンズ系の球面収差の変動に対するトラッキングエラー信号の振幅の変化を測定して、トラッキングエラー信号の振幅の変化を示す近似直線を求め、この近似直線の傾きに基づいて、ディスク判別を行うので、DVDとHD−DVDのように情報面の厚みが同じであり、トラックピッチが異なる光ディスクであっても、ディスク判別することができ、しかも光ピックアップの球面収差補正素子を制御するだけで、前記近似直線の傾きを算出するまでの処理が実行されるので、ディスク判別を高速に行うことができる。
請求項2の発明は、光ディスクに対してレーザ光をスポット照射し、光ディスクに対して光学的に情報を書き込み/読み出しを行う光ピックアップを有し、光ディスクに記録された情報の再生、または光ディスクに対して情報の記録/再生を行う光ディスク装置において、光ディスクが挿入された後、スピンアップの実行時に、前記挿入された光ディスクの判別を行う際に、光ピックアップのレーザダイオードを駆動させるダイオード駆動手段と、前記レーザダイオードが駆動された後、光ディスクに対して光ピックアップからのレーザ光のフォーカスをオンさせるフォーカスオン手段と、前記フォーカスがオンされた後、光ピックアップの球面収差補正素子を駆動させ、光ピックアップのレンズ系の球面収差を補正する球面収差補正手段と、前記球面収差が補正された後、光ピックアップの出力信号により生成されたトラッキングエラー信号の振幅の大きさに基づいてトラッキングエラー信号増幅回路系のAGCのゲイン値を設定するAGC設定手段と、前記AGCのゲイン値が設定された後、光ピックアップのフォトディテクタが受光している全光量と光ピックアップのレーザダイオードの発光パワーとトラッキングエラー信号の振幅のAGCゲイン値とを測定する全光量/発光パワー/AGCゲイン測定手段と、前記球面収差補正素子への制御量を変化させ球面収差を変化させる球面収差変化手段と、前記全光量と発光パワーとAGCゲイン値が測定された後、前記球面収差補正手段により球面収差が補正された第1段階から前記球面収差変化手段により球面収差が変化した所定段階までの最大トラッキングエラー信号の振幅を測定する最大トラッキングエラー振幅測定手段と、前記最大トラッキングエラー信号の振幅の測定が所定回数行われた後、前記所定回数測定が行われた最大トラッキングエラー信号の振幅を、前記測定された全光量と発光パワーとAGCゲインとの値で正規化する正規化手段と、前記正規化された最大トラッキングエラー信号の振幅の変化を測定することによって近似直線を求め該近似直線の傾きを算出する近似直線傾き算出手段と、前記挿入されている光ディスクの種類を前記近似直線の傾きにより判別するディスク判別手段と、を有するシステムコントローラを備えたことを特徴とする光ディスク装置を提供する。
この構成において、光ディスクが装置に挿入され、スピンアップが開始すると、ダイオード駆動手段は、光ピックアップのレーザダイオードを駆動させる。レーザダイオードが駆動された後、フォーカスオン手段は、光ピックアップから出射されるレーザ光による光スポットが光ディスクのトラックに対して焦点が合うようにフォーカスオンさせる。次に、前記フォーカスオンされた後、球面収差補正手段は、光ピックアップの球面収差補正素子を駆動させ、光ピックアップのレンズ系の球面収差を補正する。
前記球面収差が補正された後、AGC設定手段は、トラッキングエラー信号の振幅の大きさに基づいてトラッキングエラー信号増幅回路系のAGCのゲイン値を設定する。前記AGCのゲイン値が設定された後、全光量/発光パワー/AGCゲイン測定手段は、光ピックアップのフォトディテクタが受光している全光量と光ピックアップのレーザダイオードの発光パワーとトラッキングエラー信号の振幅のAGCゲイン値とを測定する。
前記全光量と発光パワーとAGCゲイン値が測定された後、最大トラッキングエラー振幅測定手段は、球面収差補正手段により球面収差が補正された第1段階から球面収差変化手段により球面収差が変化した所定段階までの最大トラッキングエラー信号の振幅を測定する。次に、球面収差変化手段は、球面収差補正素子への制御量を変化させ、球面収差を第2段階の球面収差に変化させる。ここで再び、最大トラッキングエラー振幅測定手段は、最大トラッキングエラー信号の振幅を測定(2回目の測定)する。
更に、球面収差変化手段は、球面収差補正素子への制御量を変化させ、球面収差を第3段階の球面収差に変化させる。ここで再び、最大トラッキングエラー振幅測定手段は、球面収差が第3段階の球面収差に更に変化したときの最大トラッキングエラー信号の振幅を測定(3回目の測定)する。そして、正規化手段は、例えば、3回測定が行われた最大トラッキングエラー信号の振幅を、前記測定された全光量と発光パワーとAGCゲインとの値で正規化する。これにより、反射率などが違う光ディスクでもディスク判別を行うことができる。
次に、近似直線傾き算出手段は、前記正規化された最大トラッキングエラー信号の振幅の変化を測定することによって近似直線を求め、この近似直線の傾きを算出する。そして、ディスク判別手段は、前記挿入されている光ディスクを、前記近似直線の傾きがディスク判別用の閾値よりも小さいときに例えばHD−DVDと判別し、前記近似直線の傾きがディスク判別用の閾値よりも大きいときにDVDと判別する。
この構成によれば、光ピックアップのレンズ系の球面収差の変動に対するトラッキングエラー信号の振幅の変化を測定して、トラッキングエラー信号の振幅の変化を示す近似直線を求め、この近似直線の傾きに基づいて、ディスク判別を行うので、例えば、DVDとHD−DVDのように情報面の厚みが同じであり、トラックピッチが異なる光ディスクであっても、ディスク判別することができ、しかも光ピックアップの球面収差補正素子を制御するだけで、前記近似直線の傾きを算出するまでの処理が実行されるので、ディスク判別を高速に行うことができる。
請求項3の発明では、請求項2の発明において、前記レーザダイオードは青色発光のレーザダイオードであることを特徴とする。したがって、青色発光のレーザダイオードを用いることにより、トラックピッチが短いHD−DVDなどのような光ディスクのディスク判別が可能になる。
請求項4の発明では、請求項2の発明において、前記挿入されている光ディスクがDVDまたは該DVDのトラックピッチよりも短い他の光ディスクである場合、前記ディスク判別手段は、前記近似直線の傾きがディスク判別用の閾値よりも小さいときに前記他の光ディスクと判別し、前記近似直線の傾きがディスク判別用の閾値よりも大きいときにDVDと判別することを特徴とする。したがって、挿入されている光ディスクがDVDまたは該DVDのトラックピッチよりも短く情報面が同じである他の光ディスクであっても、これらのディスク判別が可能になる。
請求項5の発明では、請求項4の発明において、前記他の光ディスクはHD−DVDであることを特徴とする。したがって、挿入された光ディスクがHD−DVDであってもディスク判別が可能になる。
以上のように本発明によれば、光ピックアップのレンズ系の球面収差の変動に対するトラッキングエラー信号の振幅の変化を測定して、トラッキングエラー信号の振幅の変化を示す近似直線を求め、この近似直線の傾きに基づいて、ディスク判別を行うので、DVDとHD−DVDのように情報面の厚みが同じであり、トラックピッチが異なる光ディスクであっても、ディスク判別することができ、しかも光ピックアップの球面収差補正素子を制御するだけで、前記近似直線の傾きを算出するまでの処理が実行されるので、ディスク判別を高速に行うことができる。
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の一実施形態に係る光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
図1において、光ディスク装置は、光ピックアップ2、前置増幅器3、等化器4、データスライサ5、データ抽出部6、データ処理部7、フィードモータサーボ回路8、トラッキング信号生成回路9、フォーカスエラー信号生成回路10、システムコントローラ11、トラッキングサーボ回路12、フォーカスサーボ回路13、ディスクサーボ回路14、球面収差補正素子制御回路15、スピンドルモータ16、本体操作部17、受光部18、リモコン19、ダイオード駆動回路20、メモリ31などを含み構成されている。
光ディスク1はDVDまたはHD−DVDなどであり、スピンドルモータ16により回転駆動される。光ピックアップ2は、青色発光のレーザダイオード21、ビームスプリッタ22、対物レンズ23、球面収差補正素子としての液晶素子(エキスパンダーレンズでも可)24、集光レンズ25、円筒レンズ26、およびフォトディテクタ27を含み光学系を構成している。なお、球面収差補正素子としての液晶素子24は、対物レンズ24の前に設けているが、集光レンズ25の前に設けても良い。
この光ピックアップ2は、フィードモータ(図示せず)により光ディスク1の半径方向へ移動制御される。光ピックアップ2から出力された高周波である変調信号は、前置増幅器3を介して等化器4に入力され、波形等化される。波形等化された変調信号は、データスライサ5に入力されて2値化される。この2値化された信号は、データ抽出部6に供給される。データ抽出部6は、位相同期ループ回路(PLL回路)を用いたデータ同期クロック発生器を含む。これにより、データ抽出部6では、データクロックが生成されると共に、このデータクロックを用いて変調信号がサンプリングされる。したがって、データ抽出部6からは、光ディスク1に記録されていたデジタルデータの抽出が行われ、このデジタルデータは、エラー訂正回路(ECC回路)、同期信号を分離するシンクセパレータなどを含むデータ処理部7に供給される。
データ処理部7内のデータクロックおよびシンクセパレータで得られた同期信号などは、システムコントローラ11を介してディスクサーボ回路14に入力される。ディスクサーボ回路14では、データクロックに同期化した同期信号を取り込み、同期信号の周波数および位相に基づいてスピンドルモータ16の回転を制御する。そして、通常再生が行われているときは、同期信号の所定の周波数および位相が得られるように、ディスクサーボ回路14はスピンドルモータ16の回転制御を行う。
前置増幅器3の出力信号は、トラッキングエラー信号生成回路9およびフォーカスエラー信号生成回路10に入力される。トラッキングエラー信号生成回路9およびフォーカスエラー信号生成回路10は、光ピックアップ2のフォトディテクタ27からの出力信号を用いて、トラッキングエラー信号およびフォーカスエラー信号をそれぞれ生成する。
システムコントローラ11は、トラッキングエラー信号生成回路9からのトラッキングエラー信号を入力してトラッキングサーボ回路12を駆動させ、これにより、トラッキングサーボ回路12は、トラッキングエラー信号に従って光ピックアップ2の図示しないトラッキング駆動部を制御する。また、システムコントローラ11は、フォーカスエラー信号生成回路10からのフォーカスエラー信号を入力してフォーカスサーボ回路13を駆動させ、これにより、フォーカスサーボ回路13は、フォーカスエラー信号に従って光ピックアップ2の図示しないフォーカス駆動部を制御する。
特に、本実施形態のシステムコントローラ11は、光ディスク1が挿入された後、光ディスク1を立ち上げ、光ピックアップ2が初期位置に設定されるまでの処理であるスピンアップの実行時に、前記挿入された光ディスク1の判別を行う際に、光ピックアップ2の青色発光のレーザダイオード21を駆動させるダイオード駆動手段と、レーザダイオード21が駆動された後、光ピックアップ2に対するフォーカスをオンさせるフォーカスオン手段と、前記フォーカスがオンされた後、光ピックアップ2の球面収差補正素子としての液晶素子24を駆動させ、光ピックアップ2のレンズ系(この例の場合、対物レンズ23)の球面収差を補正する球面収差補正手段と、前記球面収差が補正された後、光ピックアップ2の出力信号により生成されたトラッキングエラー信号の振幅の大きさに基づいてトラッキングエラー信号増幅回路系(この例の場合、前置増幅器3)のAGCのゲイン値を設定するAGC設定手段と、前記AGCのゲイン値が設定された後、光ピックアップ2のフォトディテクタ27が受光している全光量とレーザダイオード21の発光パワーとトラッキングエラー信号の振幅のAGCゲイン値とを測定する全光量/発光パワー/AGCゲイン測定手段と、液晶素子24への制御量を変化させ球面収差を変化させる球面収差変化手段と、前記全光量と発光パワーとAGCゲイン値が測定された後、前記球面収差補正手段により球面収差が補正された第1段階から前記球面収差変化手段により球面収差が変化した所定段階までの最大トラッキングエラー信号の振幅を測定する最大トラッキングエラー振幅測定手段と、前記最大トラッキングエラー信号の振幅の測定が所定回数行われた後、前記所定回数測定が行われた最大トラッキングエラー信号の振幅を、前記測定された全光量と発光パワーとAGCゲインとの値で正規化する正規化手段と、前記正規化された最大トラッキングエラー信号の振幅から近似直線の傾きを算出する近似直線傾き算出手段と、前記挿入されている光ディスク1を、前記近似直線の傾きがディスク判別用の閾値よりも小さいときにHD−DVDと判別し、前記近似直線の傾きがディスク判別用の閾値よりも大きいときにDVDと判別するディスク判別手段とを有する。これらの手段は、システムコントローラ11に含まれるマイクロコンピュータ(図示せず)により実現される。
図2は本実施形態においてDVDへのスポットと1次回折光の位置を説明するためのディスク構成図である。図3は本実施形態においてDVDに青色レーザ光を照射した場合にフォトディテクタ上で検出される0時次光と1次回折光との関係を説明するための光分布図である。図4は本実施形態においてHD−DVDへのスポットと1次回折光の位置を説明するためのディスク構成図である。図5は本実施形態においてHD−DVDに青色レーザ光を照射した場合にフォトディテクタ上で検出される0時次光と1次回折光との関係を説明するための光分布図である。図6は本実施形態においてDVDにレーザ光を照射したときの球面収差とフォトディテクタの各領域での検出光量との関係をグラフで示した図である。図7は本実施形態においてHD−DVDにレーザ光を照射したときの球面収差とフォトディテクタの各領域での検出光量との関係をグラフで示した図である。図8は本実施形態においてDVDとHD−DVDの球面収差に対するトラッキングエラー信号の振幅の比較をグラフで示した図である。図9は本実施形態においてDVDとHD−DVDに対するフォトディテクタ上の光スポットの様子を示す図である。図10は本実施形態において液晶収差補正素子の制御量と正規化済みトラッキングエラー信号の振幅との関係をグラフで示した図である。
以下、図2〜図10を参照して説明する。DVDとHD−DVDは、図2と図4に示すようにトラックピッチに差があり、トラックピッチ差により1次回折光の角度が異なる。したがって、DVDにレーザ光を照射したときのフォトディテクタの領域A,Bへの0次光と1次回折光の分布は図3に示すようになり、球面収差に対する各領域A,Bでの検出光量は図6に示すようになる。HD−DVDにレーザ光を照射したときのフォトディテクタの領域A,Bへの0次光と1次回折光の分布は図5に示すようになり、球面収差に対する各領域A,Bでの検出光量は図7に示すようになる。また、球面収差に対するトラッキングエラー信号の振幅(TE振幅)は、DVDではラインn1で示すような曲線となり、HD−DVDではラインn2で示すような曲線となる。
また、DVDとHD−DVDに対する1次回折光の角度が異なることによって、図9(2)と図9(4)に示すように、DVDとHD−DVDでフォトディテクタ上の0次光と±1次回折光の位置が後で説明するように異なる。DVDにおいては0次光の中心と1次回折光の外周との距離をD、HD−DVDにおいては0次光の中心と1次回折光の外周との距離をHとすると、D<Hとなる。
図9(2)はDVDにレーザ光を照射して戻り光をフォトディテクタで受光したときの光スポットの様子を示す。この図9(2)において、実線円で示す領域D1は、フォトディテクタ上の領域A,Bで受光される0次光の強度の半値幅(0次光のスポットサイズ)を示す。実線の略半円で示す領域D2は、フォトディテクタ上の領域A,Bで受光される±1次回折光のスポットサイズを示す。実線と破線との間の領域D3は、球面収差により減少する領域を示す。斜線で示す領域D4は、0次光と1次回折光が干渉している領域を示す。
図9(4)はHD−DVDにレーザ光を照射して戻り光をフォトディテクタで受光したときの光スポットの様子を示す。この図9(4)において、実線円で示す領域H1は、フォトディテクタ上の領域A,Bで受光される0次光の強度の半値幅(0次光のスポットサイズ)を示す。実線の略半円で示す領域H2は、フォトディテクタ上の領域A,Bで受光される±1次回折光のスポットサイズを示す。実線と破線との間の領域H3は、球面収差により減少する領域を示す。斜線で示す領域H4は、0次光と1次回折光が干渉している領域を示す。
前述したように、DVDとHD−DVDに対する1次回折光の角度が異なることによって、前記図9(2)と図9(4)で説明したように、DVDとHD−DVDでフォトディテクタ上の0次光と±1次回折光の位置が異なることになる。また、DVDとHD−DVDでフォトディテクタ上の0次光と±1次回折光の位置が異なることによって、0次光と±1次回折光が干渉する面積(領域D4と領域H4)に差(D4>H4)が出る。
DVDに対して球面収差量が適正値の場合は、図9(1)に示すような光スポットとなり、球面収差が発生すると、図9(2)中の領域D1で示すように光スポットの外周部が減少し、これに伴って0次光と±1次回折光が干渉する領域D4が減少する。したがって、球面収差補正時は、DVDとDH−DVDともにトラッキングエラー信号の振幅は大きく出るが、球面収差有りの場合は、0次光と1次回折光の干渉する領域D4が小さくなり、トラッキングエラー信号の振幅が小さくなる。しかし、図2および図4に示したように、DVDのトラックピッチはHD−DVDのトラックピッチに比べ長いため、デトラックと反対方向の1次回折光が発生せず(発生しても弱い)、トラッキングエラー信号の振幅は比較的大きいままである。
また、測定されたトラッキングエラー信号の振幅は、光ディスクの反射率、レーザダイオードの出力パワー、トラッキングエラー信号のAGCゲイン値の差による影響を低減するために、正規化を行う。もし正規化をしなかった場合には、AGCでトラッキングエラー信号の振幅が大きく上げられると、その振幅が小さくなったときに、AGCゲイン値を上げると、液晶収差補正素子の制御量に対するトラッキングエラー信号の振幅の変化を示すラインの傾きが無くなり、DVDとHD−DVDのディスク判別が難しくなる。
したがって、液晶収差補正素子の制御量に対するトラッキングエラー信号の振幅の変化を示すラインの傾きを知るために正規化を行う。そして、図10に示すような、DVDに対する正規化済みのトラッキングエラー信号の振幅曲線L1から振幅の変化率に相当する近似直線L3を求め、また、HD−DVDに対する正規化済みのトラッキングエラー信号の振幅曲線L2から振幅の変化率に相当する近似直線L4を求め、近似直線L3と近似直線L4との傾きの差を利用して、DVDとHD−DVDのディスク判別を行う。
図11は本実施形態において挿入された光ディスクがHD−DVDであるかDVDであるかを判別する処理を説明するためのフローチャートである。このフローチャートおよび図1〜図10を参照して挿入された光ディスクがHD−DVDであるかDVDであるかを判別する処理について説明する。
先ず、リモコン19または本体操作部17の電源キーがユーザによって押下されることによって、装置の電源がオンされた後、リモコン19のトレイ開閉キー(本体操作部17のトレイ開閉キーでも可)が押下されると、リモコン19からはトレイ操作の光信号が送信され、この光信号は受光部18で電気信号のトレイ操作信号に変換されて、システムコントローラ11に入力される。これにより、システムコントローラ11は、トレイ駆動機構(図示せず)を開動作させ、トレイをオープンさせる。そして、ユーザによってトレイに光ディスク1が載置され、リモコン19のトレイ開閉キーが押下されると、システムコントローラ11は、トレイ駆動機構(図示せず)を閉動作させ、トレイをクローズさせる。このときに、システムコントローラ11は、光ディスク1が装置に挿入されたことを検知し(ステップS1)、スピンアップを開始させる(ステップS2)。
スピンアップが開始すると、システムコントローラ11のダイオード駆動手段は、ダイオード駆動回路20を動作させ、光ピックアップ2のレーザダイオード21を駆動させる(ステップS3)。レーザダイオード21が駆動された後、システムコントローラ11のフォーカスオン手段は、フォーカスサーボ回路13を動作させ、光ピックアップ2から出射されるレーザ光による光スポットが光ディスク1のトラックに対して焦点が合うようにフォーカスオンさせる(ステップS4)。
次に、前記フォーカスがオンされた後、システムコントローラ11の球面収差補正手段は、球面収差補正素子制御回路15を動作させることにより、光ピックアップ2の球面収差補正素子である液晶素子24を駆動させ(ステップS5)、光ピックアップ2の対物レンズ23の球面収差を補正する(ステップS6)。即ち、球面収差補正手段は、球面収差補正素子制御回路15を介して液晶素子24を制御し、対物レンズ23の球面収差が出来る限り無くなるように補正する。
前記球面収差が補正された後、システムコントローラ11のAGC設定手段は、トラッキングエラー信号生成回路9で生成されたトラッキングエラー信号の振幅の大きさに基づいてトラッキングエラー信号増幅回路系(この例の場合、前置増幅器3)のAGCのゲイン値を設定する(ステップS7)。前置増幅器3のAGCのゲイン値を設定することにより、トラッキングエラー信号の振幅の測定が容易になる。
前記AGCのゲイン値が設定された後、システムコントローラ11の全光量/発光パワー/AGCゲイン測定手段は、光ピックアップ2のフォトディテクタ27が受光している全光量と光ピックアップ2のレーザダイオード21の発光パワーとトラッキングエラー信号の振幅のAGCゲイン値とを測定する(ステップS8)。なお、フォトディテクタ27が受光している全光量の測定は、前置増幅器3の出力信号を測定することにより可能である。レーザダイオード21の発光パワーの測定は、ダイオード駆動回路20の出力パワーを測定することにより可能である。トラッキングエラー信号の振幅のAGCゲイン値の測定は、トラッキング信号生成回路9の出力信号レベル、または前置増幅器3のトラッキングエラー信号生成回路9への出力信号レベルを測定することにより可能である。これらの測定結果は、メモリ31に格納され、後の処理に利用される。
前記全光量と発光パワーとAGCゲイン値が測定された後、システムコントローラ11の最大トラッキングエラー振幅測定手段は、球面収差補正手段により球面収差が補正された第1段階から球面収差変化手段により球面収差が変化した所定段階までの最大トラッキングエラー信号の振幅を測定する。即ち、先ず、最大トラッキングエラー振幅測定手段は、球面収差補正手段により球面収差(第1段階の球面収差)が補正されたときの最大トラッキングエラー信号(TE)の振幅を測定(1回目の測定)する(ステップS9)。
次に、球面収差変化手段は、球面収差補正素子制御回路15を制御し、液晶素子24への制御量を変化させ(ステップS11)、球面収差を第2段階の球面収差に変化させる。ここで再び、最大トラッキングエラー振幅測定手段は、球面収差変化手段により球面収差(第2段階の球面収差)が変化したときの最大トラッキングエラー信号(TE)の振幅を測定(2回目の測定)する(ステップS9)。
更に、球面収差変化手段は、球面収差補正素子制御回路15を制御し、液晶素子24への制御量を変化させ(ステップS11)、球面収差を第3段階の球面収差に変化させる。ここで再び、最大トラッキングエラー振幅測定手段は、球面収差変化手段により球面収差(第3段階の球面収差)が更に変化したときの最大トラッキングエラー信号(TE)の振幅を測定(3回目の測定)する(ステップS9)。
そして、システムコントローラ11は、最大トラッキングエラー信号の振幅測定を3回測定したことを検知すると(ステップS10)、システムコントローラ11の正規化手段は、3回測定が行われた最大トラッキングエラー信号(TE)の振幅を、前記測定されメモリ31に格納された全光量と発光パワーとAGCゲイン値で正規化する(ステップS12)。これにより、反射率などが違う光ディスクでもディスク判別を行うことができる。
次に、近似直線傾き算出手段は、前記正規化された最大トラッキングエラー信号の振幅の変化を測定することによって近似直線(例えば、図10中のラインL3やラインL4)を求め、この近似直線の傾きを算出する(ステップS13)。そして、システムコントローラ11のディスク判別手段は、前記挿入されている光ディスク1を、前記近似直線の傾きがディスク判別用の閾値よりも小さいときにHD−DVDと判別し(ステップS15)、前記近似直線の傾きがディスク判別用の閾値よりも大きいときにDVDと判別する(ステップS16)。
以上説明したように本実施形態によれば、光ピックアップの対物レンズの球面収差の変動に対するトラッキングエラー信号の振幅の変化を測定して、トラッキングエラー信号の振幅の変化を示す近似直線を求め、この近似直線の傾きに基づいて、ディスク判別を行うので、DVDとHD−DVDのように情報面の厚みが同じであり、トラックピッチが異なる光ディスクであっても、ディスク判別することができ、しかも光ピックアップの球面収差補正素子を制御するだけで、前記近似直線の傾きを算出するまでの処理が実行されるので、ディスク判別を高速に行うことができる。
なお、本実施形態では、DVDとHD−DVDとのディスク判別について説明したが、HD−DVDよりも更にトラックピッチが狭いブルーレイディスクに対しても球面収差を与えると、HD−DVDよりもトラッキングエラー信号の振幅が更に大きく変化するので、DVDとHD−DVDとブルーレイディスクとのディスク判別も可能になる。