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JP4111006B2 - 誘電体セラミックおよびその製造方法ならびに積層セラミックコンデンサ - Google Patents

誘電体セラミックおよびその製造方法ならびに積層セラミックコンデンサ Download PDF

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JP4111006B2
JP4111006B2 JP2003055359A JP2003055359A JP4111006B2 JP 4111006 B2 JP4111006 B2 JP 4111006B2 JP 2003055359 A JP2003055359 A JP 2003055359A JP 2003055359 A JP2003055359 A JP 2003055359A JP 4111006 B2 JP4111006 B2 JP 4111006B2
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dielectric
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mol
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成 加藤
和夫 武藤
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Murata Manufacturing Co Ltd
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、誘電体セラミックおよびその製造方法、ならびにこの誘電体セラミックを用いて構成される積層セラミックコンデンサに関するもので、特に、積層セラミックコンデンサにおける誘電体セラミック層の薄層化を有利に図り得るようにするための改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
積層セラミックコンデンサは、以下のようにして製造されるのが一般的である。
【0003】
まず、その表面に、所望のパターンをもって内部電極となる導電材料を付与した、誘電体セラミック原料粉末を含むセラミックグリーンシートが用意される。誘電体セラミックとしては、たとえば、BaTiO3 を主成分とするものが用いられる。
【0004】
次に、上述した導電材料を付与したセラミックグリーンシートを含む複数のセラミックグリーンシートが積層され、熱圧着され、それによって一体化された生の積層体が作製される。
【0005】
次に、この生の積層体は焼成され、それによって、焼結後の積層体が得られる。この積層体の内部には、上述した導電材料をもって構成された内部電極が形成されている。
【0006】
次いで、積層体の外表面上に、内部電極の特定のものに電気的に接続されるように、外部電極が形成される。外部電極は、たとえば、導電性金属粉末およびガラスフリットを含む導電性ペーストを積層体の外表面上に付与し、焼き付けることによって形成される。
【0007】
このようにして、積層コンデンサが完成される。
【0008】
上述した内部電極のための導電材料として、近年、積層セラミックコンデンサの製造コストをできるだけ低くするため、たとえばニッケルまたは銅のような比較的安価な卑金属を用いることが多くなってきている。しかしながら、卑金属をもって内部電極を形成した積層セラミックコンデンサを製造しようとする場合、焼成時における卑金属の酸化を防止するため、中性または還元性雰囲気中での焼成を適用しなければならず、そのため、積層セラミックコンデンサにおいて用いられる誘電体セラミックは、耐還元性を有していなければならない。
【0009】
上述のような耐還元性を有する誘電体セラミックであって、これをもって構成した積層セラミックコンデンサの容量温度特性がJIS規格のB特性を満足するものとして、たとえば、BaTiO3 を主成分とし、これに希土類元素の酸化物やMn、Fe、Ni、Cuなどの酸化物および焼結助剤などを添加したものが用いられている。
【0010】
このような誘電体セラミックに関して、たとえば特開平5−9066号公報(特許文献1)、特開平11−302071号公報(特許文献2)および特開2000−58377号公報(特許文献3)では、高い誘電率を有し、高温負荷寿命が長い、誘電体セラミックの組成が提案されている。
【0011】
また、誘電体セラミックの構造および組織に着目すると、特開平6−5460号公報(特許文献4)、特開2001−220224号公報(特許文献5)および特開2001−230149号公報(特許文献6)では、いわゆるコア−シェル構造の誘電体セラミックが提案されている。
【0012】
また、特開平9−270366号公報(特許文献7)においては、セラミックの粒界構造を制御することにより、高い誘電率と優れた絶縁性とを有するようにされた誘電体セラミックが提案されている。
【0013】
また、特開平10−74666号公報(特許文献8)では、セラミックの偏析相の大きさを制御することにより、優れた信頼性を有するようにされた誘電体セラミックが提案されている。
【0014】
【特許文献1】
特開平5−9066号公報
【特許文献2】
特開平11−302071号公報
【特許文献3】
特開2000−58377号公報
【特許文献4】
特開平6−5460号公報
【特許文献5】
特開2001−220224号公報
【特許文献6】
特開2001−230149号公報
【特許文献7】
特開平9−270366号公報
【特許文献8】
特開平10−74666号公報
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
近年のエレクトロニクス技術の発展に伴い、電子部品の小型化が急速に進行し、積層セラミックコンデンサについても、小型化かつ大容量化の傾向が顕著になってきている。積層セラミックコンデンサの小型化かつ大容量化を図る有効な手段として、誘電体セラミック層の薄層化が挙げられる。誘電体セラミック層の厚みは、商品レベルでは2μm以下、実験レベルでは1μm以下となってきている。
【0016】
しかしながら、前述した特許文献1に記載された誘電体セラミックは、高い電気絶縁性を示すものの、誘電体セラミック層を薄層化したとき、具体的には、5μm以下、特に3μm以下というように薄層化したときの信頼性に関しては、必ずしも、市場の要求を十分満たし得るものではない。
【0017】
同様に、特許文献2および3に記載される誘電体セラミックも、誘電体セラミック層が厚み2μm以下というように薄層化されるに従って、容量温度特性および信頼性が悪化するという問題がある。
【0018】
また、特許文献4、5および6に記載される、いわゆるコアシェル型の誘電体セラミックも、誘電体セラミック層の薄層化に従って、信頼性が低下するという問題もある。
【0019】
また、特許文献7に記載の誘電体セラミックは、BaTiO3 などの主成分に添加する添加剤を、焼成過程において溶融させるため、主成分と添加剤との反応が不安定であり、特に誘電体セラミック層を薄層化した際の信頼性を安定して確保できないという問題がある。
【0020】
また、特許文献8に記載の誘電体セラミックは、誘電体セラミック層が薄層化されるに従って、具体的には3μm以下に薄層化されたとき、信頼性が低下するという問題がある。また、LiおよびB(ホウ素)といった揮発成分を多く含むため、誘電体セラミック層が薄層化された場合、信頼性を含めた電気的特性の安定性に問題が生じる。
【0021】
以上のようなことから、積層セラミックコンデンサの小型化かつ大容量化に対応することを目的として、誘電体セラミック層を薄層化した場合、直流定格電圧を薄層化する前と同じにすると、誘電体セラミック層の1層あたりに印加される電界強度が大きくなるため、信頼性が著しく低下してしまう。
【0022】
そこで、誘電体セラミック層を薄層化しても、信頼性に優れた、積層セラミックコンデンサを提供することができる、誘電体セラミックの実現が望まれるところである。
【0023】
この発明の目的は、上述のような要望を満たし得る、誘電体セラミックおよびその製造方法、ならびにこの誘電体セラミックを用いて構成される積層セラミックコンデンサを提供しようとすることである。
【0024】
【課題を解決するための手段】
本件発明者は、上述の課題を解決するための研究を行なった結果、三重点の大きさと、本来、三重点に存在する成分の状態とを制御することが重要であることを見出した。
【0025】
通常、三重点は、たとえば特許文献7に記載されるように、非晶質であることが多く、ここには、余剰となったBaなどのアルカリ土類元素やSiなどが存在し、10nm2 以上の断面積となっている。ABO3 ペロブスカイト型化合物の焼結体において、ABO3 ペロブスカイト型化合物とは異なる、上述のような10nm2 以上の非晶質の存在は、信頼性の低下につながることがわかった。
【0026】
他方、Baなどのアルカリ土類元素やSiなど含む化合物は、結晶性粒子として存在した場合、信頼性の向上に寄与することを見出した。
【0027】
これらの知見に基づいて、研究を進めた結果、次のような特徴的構成を備える誘電体セラミックに係る発明をなすに至ったものである。
【0028】
すなわち、この発明に係る誘電体セラミックは、結晶粒子と結晶粒子間を占める結晶粒界および三重点とを備え、結晶粒子として、ABO3 (Aは、BaおよびCa、またはBa、CaおよびSrであり、Bは、Ti、またはTiならびにその一部が置換されたZrおよびHfの少なくとも1種である。)で表わされるペロブスカイト型化合物からなるペロブスカイト型化合物粒子と、少なくともBa、TiおよびSiを含む結晶性酸化物からなる結晶性酸化物粒子とを備え、上記三重点のうち、80%以上の個数の三重点については、その断面積が8nm2 以下であることを特徴としている。
【0029】
なお、本件明細書において、「結晶粒界」とは、2つの結晶粒子により形成される領域を指し、「三重点」とは、3つ以上の結晶粒子により形成される領域を指している。
【0030】
この発明に係る誘電体セラミックにおいて、ペロブスカイト型化合物粒子におけるCaの濃度は、ABO3 で表わされるペロブスカイト型化合物のA元素中の1〜20モル%であることが好ましい。
【0031】
また、この発明に係る誘電体セラミックは、R(Rは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYのうちの少なくとも1種である。)およびM(Mは、Mn、Ni、Co、Fe、Cr、Cu、Mg、Al、V、MoおよびWのうちの少なくとも1種である。)を含む酸化物をさらに含むことが好ましい。この場合には、RおよびMの濃度は、ABO3 100モルに対して、それぞれ、元素に換算して、0.01〜1.5モルおよび0.1〜2モルとされることが好ましい。
【0032】
この発明は、また、上述のような誘電体セラミックを製造する方法にも向けられる。
【0033】
すなわち、この発明に係る誘電体セラミックの製造方法は、ABO3 (Aは、BaおよびCa、またはBa、CaおよびSrであり、Bは、Ti、またはTiならびにその一部が置換されたZrおよびHfの少なくとも1種である。)で表わされるペロブスカイト型化合物を作製する工程と、少なくともBa、TiおよびSiを含む結晶性酸化物を作製する工程と、これらペロブスカイト型化合物と結晶性酸化物とを混合した配合物を得る工程と、この配合物を焼成する工程とを備えることを特徴としている。
【0034】
上記配合物を得る工程において、必要に応じて、R(Rは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYのうちの少なくとも1種である。)およびM(Mは、Mn、Ni、Co、Fe、Cr、Cu、Mg、Al、V、MoおよびWのうちの少なくとも1種である。)を含む酸化物をさらに混合してもよい。
【0035】
また、上記配合物を得る工程において、必要に応じて、焼結助剤をさらに混合してもよい。
【0036】
この発明は、さらに、上述のような誘電体セラミックを用いて構成される積層セラミックコンデンサにも向けられる。
【0037】
この発明に係る積層セラミックコンデンサは、積層された複数の誘電体セラミック層および複数の誘電体セラミック層間の特定の界面に沿いかつ積層方向に重なり合った状態で形成された複数の内部電極を含む、積層体と、内部電極の特定のものに電気的に接続されるように積層体の外表面上に形成される外部電極とを備えるもので、誘電体セラミック層が、上述のような誘電体セラミックからなることを特徴としている。
【0038】
上述の積層セラミックコンデンサにおいて、内部電極が卑金属を含む場合や、外部電極が卑金属を含む場合において、この発明が特に有利に適用される。
【0039】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサ1を図解的に示す断面図である。
【0040】
積層セラミックコンデンサ1は、積層体2を備えている。積層体2は、積層される複数の誘電体セラミック層3と、複数の誘電体セラミック層3の間の特定の複数の界面に沿ってそれぞれ形成される複数の内部電極4および5とをもって構成される。内部電極4および5は、積層体2の外表面にまで到達するように形成されるが、積層体2の一方の端面6にまで引き出される内部電極4と他方の端面7にまで引き出される内部電極5とが、積層体2の内部において交互に配置されている。
【0041】
積層体2の外表面上であって、端面6および7上には、導電性ペーストを塗布し、次いで焼き付けることによって、外部電極8および9がそれぞれ形成されている。また、外部電極8および9上には、必要に応じて、第1のめっき層10および11がそれぞれ形成され、さらにその上には、第2のめっき層12および13がそれぞれ形成されている。
【0042】
このようにして、積層セラミックコンデンサ1において、複数の内部電極4および5は、積層体2の積層方向に互いに重なり合った状態で形成され、それによって、隣り合う内部電極4および5間で静電容量を形成する。また、内部電極4と外部電極8とが電気的に接続されるとともに、内部電極5と外部電極9とが電気的に接続され、それによって、これら外部電極8および9を介して、上述の静電容量が取り出される。
【0043】
誘電体セラミック層3は、この発明の特徴となる、次のような誘電体セラミックから構成される。
【0044】
すなわち、結晶粒子と結晶粒子間を占める結晶粒界および三重点とを備え、結晶粒子として、ABO3 (Aは、BaおよびCa、またはBa、CaおよびSrであり、Bは、Ti、またはTiならびにその一部が置換されたZrおよびHfの少なくとも1種である。)で表わされるペロブスカイト型化合物からなるペロブスカイト型化合物粒子と、少なくともBa、TiおよびSiを含む結晶性酸化物からなる結晶性酸化物粒子とを備え、上記三重点のうち、80%以上の個数の三重点については、その断面積が8nm2 以下であることを特徴とする、誘電体セラミックから誘電体セラミック層3が構成される。
【0045】
上述した条件を満足しない場合には、高温負荷寿命試験などにおいて、優れた信頼性を示さないという不都合を招く。
【0046】
好ましくは、上述の誘電体セラミックに含まれるペロブスカイト型化合物粒子におけるCaの濃度は、ABO3 で表わされるペロブスカイト型化合物のA元素中の1〜20モル%となるようにされる。
【0047】
上述した条件を満足すると、誘電体セラミックの誘電率を高く維持することができる。
【0048】
また、誘電体セラミックは、R(Rは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYのうちの少なくとも1種である。)およびM(Mは、Mn、Ni、Co、Fe、Cr、Cu、Mg、Al、V、MoおよびWのうちの少なくとも1種である。)を含む酸化物をさらに含み、これらRおよびMの濃度は、ABO3 100モルに対して、それぞれ、元素に換算して、0.01〜1.5モルおよび0.1〜2モルとされることが好ましい。
【0049】
上述した濃度をもってRおよびMが含まれることにより、高い誘電率を維持しながら、さらなる信頼性の向上を図ることができる。
【0050】
次に、誘電体セラミックないしは図1に示した積層セラミックコンデンサ1の製造方法について説明する。
【0051】
まず、誘電体セラミック層3を構成する誘電体セラミックの原料粉末が用意される。この原料粉末は、以下のようにして作製されることが好ましい。
【0052】
すなわち、所望のA(Aは、BaおよびCa、またはBa、CaおよびSrである。)およびB(Bは、Ti、またはTiならびにその一部が置換されたZrおよびHfの少なくとも1種である。)を選択するとともに、これらの含有量を所望のように選択し、ABO3 で表わされるペロブスカイト型化合物が作製される。
【0053】
他方、少なくともBa、TiおよびSiを含む結晶性酸化物が作製される。この酸化物には、アルカリ土類元素や遷移金属元素などの元素が添加されてもよい。この酸化物が結晶性であることを確認するには、たとえばX線回折法(XRD)を用いればよい。
【0054】
次に、上述したペロブスカイト型化合物と、少なくともBa、TiおよびSiを含む結晶性酸化物とが混合され、さらに、必要に応じて、前述のR(La等)およびM(Mn等)を含む酸化物ならびにSiなどを含む焼結助剤などの化合物が混合される。そして、このようにして得られた配合物が誘電体セラミックの原料粉末とされる。
【0055】
このように作製された原料粉末を用い、これを後述するように成形しかつ焼成することによって、結晶粒子として、ABO3 で表わされるペロブスカイト型化合物からなるペロブスカイト型化合物粒子と、少なくともBa、TiおよびSiを含む結晶性酸化物からなる結晶性酸化物粒子とを備え、三重点のうち、80%以上の個数の三重点については、その断面積が8nm2 以下である、誘電体セラミックを容易に得ることができる。
【0056】
これは、本来余剰となり三重点に集まろうとする成分が、焼成過程において、少なくともBa、TiおよびSiを含む結晶性酸化物に吸収されるため、三重点が非常に小さいものになるためであると考えられる。
【0057】
なお、上記のような原料作製プロセスによる場合だけでなく、たとえば、焼成条件の調整によっても、前述のような条件を満足する誘電体セラミックを得ることができる。
【0058】
次に、上述のようにして得られた誘電体セラミックのための原料粉末に、有機バインダおよび溶剤を添加し、混合することによって、スラリーが作製され、このスラリーを用いて、誘電体セラミック層3となるセラミックグリーンシートが成形される。
【0059】
次いで、特定のセラミックグリーンシート上に、内部電極4または5となるべき導電性ペースト膜がたとえばスクリーン印刷によって形成される。この導電性ペースト膜は、ニッケル、ニッケル合金、銅または銅合金のような卑金属を導電成分として含んでいる。なお、内部電極4および5は、スクリーン印刷法のような印刷法によるほか、たとえば、蒸着法、めっき法などによって形成されてもよい。
【0060】
次いで、上述のように導電性ペースト膜を形成した複数のセラミックグリーンシートが積層されるとともに、これらセラミックグリーンシートを挟むように、導電性ペースト膜が形成されないセラミックグリーンシートが積層され、圧着された後、必要に応じてカットされることによって、積層体2となるべき生の積層体が得られる。この生の積層体において、導電性ペースト膜は、その端縁をいずれかの端面に露出させている。
【0061】
次いで、生の積層体は、還元性雰囲気中において焼成される。これによって、図1に示すような焼結後の積層体2が得られ、積層体2において、前述のセラミックグリーンシートが誘電体セラミック層3を構成し、導電性ペースト膜が内部電極4または5を構成する。
【0062】
次いで、内部電極4および5の露出した各端縁にそれぞれ電気的に接続されるように、積層体2の端面6および7上に、それぞれ、外部電極8および9が形成される。
【0063】
外部電極8および9の材料としては、内部電極4および5と同じ材料を用いることができるが、銀、パラジウム、銀−パラジウム合金なども使用可能であり、また、これらの金属粉末に、B2 3 −SiO2 −BaO系ガラス、B2 3 −Li2 O−SiO2 −BaO系ガラスなどからなるガラスフリットを添加したものも使用可能である。積層セラミックコンデンサ1の用途、使用場所などを考慮に入れて適当な材料が選択される。
【0064】
また、外部電極8および9は、通常、上述のような導電性金属の粉末を含むペーストを、焼成後の積層体2の外表面上に塗布し、焼き付けることによって形成されるが、焼成前の生の積層体の外表面上に塗布し、積層体2を得るための焼成と同時に焼き付けることによって形成されてもよい。
【0065】
その後、外部電極8および9上に、ニッケル、銅などのめっきを施し、第1のめっき層10および11を形成する。そして、この第1のめっき層10および11上に、半田、錫などのめっきを施し、第2のめっき層12および13を形成する。なお、外部電極8および9上に、このようなめっき層10〜13のような導体層を形成することは、積層セラミックコンデンサ1の用途によっては省略されることもある。
【0066】
以上のようにして、積層セラミックコンデンサ1が完成される。
【0067】
なお、誘電体セラミックの原料粉末の作製や、積層セラミックコンデンサ1のその他の製造工程のいずれかの段階において、Na等が不純物として混入する可能性があるが、このような不純物の混入は、積層セラミックコンデンサ1の電気的特性上、問題となることはない。
【0068】
また、内部電極4および5の材料として、前述したように、ニッケルまたは銅が用いられることが好ましい。このような場合、積層セラミックコンデンサ1を得るための焼成工程などにおいて、内部電極4および5に含まれる成分が、誘電体セラミック層3を構成する誘電体セラミックの結晶粒子内または結晶粒界に拡散して存在する可能性があるが、このことは、積層セラミックコンデンサ1の電気的特性上、問題となることはない。
【0069】
次に、この発明による効果を確認するために実施した実験例について説明する。
【0070】
【実験例】
(実験例1)
実験例1は、表1に示すように、主成分として、Ba、CaおよびTiを含むABO3 が(Ba0.93Ca0.07)TiO3 の組成を有するものを用い、添加成分として、BaCO3 、TiO2 およびSiO2 またはBa−Ti−Si−Oの結晶性酸化物を用い、この発明の範囲内にある実施例1−1および1−2ならびにこの発明の範囲外にある比較例1−1および1−2を評価しようとするものである。
【0071】
1.誘電体セラミック原料粉末の作製
(1)実施例1−1
まず、主成分の出発原料として、BaCO3 、CaCO3 およびTiO2 を準備して、(Ba0.93Ca0.07)TiO3 の組成となるように秤量し、次いで、ボールミルによって混合し、1050℃で熱処理することによって、(Ba0.93Ca0.07)TiO3 を得た。この平均粒径は0.3μmであった。
【0072】
他方、添加成分を得るため、BaCO3 、TiO2 およびSiO2 を、9:1:10のモル比になるように秤量し、次いで、ボールミルによって混合し、1000℃で熱処理することによって、Ba−Ti−Si−Oの結晶性酸化物を得た。この酸化物が結晶性であることを、XRDで確認した。また、この平均粒径は0.15μmであった。
【0073】
次に、上記(Ba0.93Ca0.07)TiO3 とBa−Ti−Si−O結晶性酸化物とを、表1に示すように、重量比で98:2となるように秤量し、次いで、ボールミルによって混合することにより、実施例1−1に係る誘電体セラミック原料粉末を得た。
【0074】
(2)実施例1−2
上記実施例1−1の場合と同様の方法によって、(Ba0.93Ca0.07)TiO3 およびBa−Ti−Si−O結晶性酸化物を得た後、これら(Ba0.93Ca0.07)TiO3 とBa−Ti−Si−O結晶性酸化物とを、表1に示すように、重量比で95:5となるように秤量し、次いで、ボールミルによって混合することにより、実施例1−2に係る誘電体セラミック原料粉末を得た。
【0075】
(3)比較例1−1
比較例1−1は、実施例1−1に対応するものである。
【0076】
実施例1−1の場合と同様の方法により、(Ba0.93Ca0.07)TiO3 を得た。
【0077】
次に、BaCO3 、TiO2 およびSiO2 を準備し、実施例1−1におけるBa−Ti−Si−O結晶性酸化物と同じ組成となるように秤量した。そして、上記(Ba0.93Ca0.07)TiO3 とBaCO3 、TiO2 およびSiO2 の混合物とが、表1に示すように、重量比で98:2となるように秤量し、次いで、ボールミルによって混合することにより、比較例1−1に係る誘電体セラミック原料粉末を得た。
【0078】
(4)比較例1−2
比較例1−2は、実施例1−2に対応するものである。
【0079】
実施例1−2の場合と同様の方法により、(Ba0.93Ca0.07)TiO3 を得た。
【0080】
次に、比較例1−1の場合と同様に、BaCO3 、TiO2 およびSiO2 を秤量し、上記(Ba0.93Ca0.07)TiO3 とBaCO3 、TiO2 およびSiO2 の混合物とが、表1に示すように、重量比で95:5となるように秤量し、次いで、ボールミルによって混合することにより、比較例1−2に係る誘電体セラミック原料粉末を得た。
【0081】
【表1】
Figure 0004111006
【0082】
2.積層セラミックコンデンサの作製
次に、上述の実施例1−1および1−2ならびに比較例2−1および2−2の各々に係る誘電体セラミック原料粉末に、ポリビニルブチラール系バインダおよびエタノール等の有機溶剤を加え、ボールミルを用いた湿式混合を実施することによって、セラミックスラリーを作製した。
【0083】
次に、セラミックスラリーを、ドクターブレード法によって、焼成後の誘電体セラミック層の厚みが1.5μmになるような厚みをもってシート状に成形し、矩形のセラミックグリーンシートを得た。
【0084】
次に、セラミックグリーンシート上に、ニッケルを主体とする導電性ペーストをスクリーン印刷し、内部電極となるべき導電性ペースト膜を形成した。
【0085】
次いで、導電性ペースト膜が引き出されている側が互い違いとなるように、導電性ペースト膜が形成されたセラミックグリーンシートを含む複数のセラミックグリーンシートを積層し、生の積層体を得た。
【0086】
次に、生の積層体を、窒素雰囲気中において300℃の温度に加熱し、バインダを燃焼させた後、酸素分圧10-10 MPaのH2 −N2 −H2 Oガスからなる還元性雰囲気中において、1200℃の温度にて2時間焼成し、焼結した積層体を得た。
【0087】
次いで、積層体の両端面上に、B2 3 −Li2 O−SiO2 −BaO系のガラスフリットを含有するとともに銅を導電成分とする導電性ペーストを塗布し、窒素雰囲気中において800℃の温度で焼き付け、内部電極と電気的に接続された外部電極を形成した。
【0088】
このようにして得られた積層セラミックコンデンサの外形寸法は、幅1.2mm、長さ2.0mmおよび厚さ1.0mmであり、内部電極間に介在する誘電体セラミック層の厚みは、1.5μmであった。また、有効誘電体セラミック層の数は100であり、1層あたりの対向電極面積は1.4mm2 であった。
【0089】
3.誘電体セラミックの構造および組成分析
実施例1−1および1−2ならびに比較例1−1および1−2の各々に係る積層セラミックコンデンサについて、その誘電体セラミック層を構成する誘電体セラミックの断面に現れた任意の結晶粒子について、TEM−EDXによって組成分析した。
【0090】
その結果、結晶粒子が、ABO3 で表わされるペロブスカイト型化合物からなるペロブスカイト型化合物粒子ではなく、少なくともBa、TiおよびSiを含む酸化物からなる粒子である場合には、TEMの電子線回折によって、その粒子が結晶性であるかどうかを確認した。そして、TEM観察により、任意の20個の三重点を画像解析処理し、それぞれの断面積を求めた。
【0091】
このようにして求めた誘電体セラミックの構造および組成分析結果が表2に示されている。
【0092】
【表2】
Figure 0004111006
【0093】
表2において、「結晶粒子」の欄に「Ba−Ti−Si−O結晶性酸化物」と表示されているのは、Ba−Ti−Si−O結晶性酸化物からなる結晶性酸化物粒子が存在していたことを示している。
【0094】
また、表2において、「8nm2 以下の三重点」の欄には、その断面積が8nm2 以下である三重点の個数の割合を示している。
【0095】
前述したTEM−EDXによる分析の結果、実施例1−1および1−2による誘電体セラミック中には、(Ba0.93Ca0.07)TiO3 からなる結晶粒子とBa−Ti−Si−O結晶性酸化物からなる結晶粒子とが存在し、三重点では、結晶粒子の接合が非常に良好であり、明瞭な余剰成分の「たまり」が見られないことがわかった。
【0096】
図2には、実施例1−1についてのTEM−明視野像をトレースして作成した図面が示されている。図2に示すように、(Ba0.93Ca0.07)TiO3 からなる結晶粒子21とBa−Ti−Si−O結晶性酸化物からなる結晶粒子22とが存在していることがわかる。なお、図示しないが、実施例1−2についても同様の結果が得られた。
【0097】
また、実施例1−1についての(Ba0.93Ca0.07)TiO3 からなる結晶粒子のTEM−EDXによる分析結果が図3に示され、Ba−Ti−Si−O結晶性酸化物からなる結晶粒子のTEM−EDXによる分析結果が図4に示されている。なお、図示しないが、実施例1−2についても同様の結果が得られた。
【0098】
これらに対して、比較例1−1および1−2では、表2に示すように、誘電体セラミック中に、Ba−Ti−Si−O結晶性酸化物が見られず、結晶粒子としては、(Ba0.93Ca0.07)TiO3 からなる結晶粒子のみが存在していた。
【0099】
4.電気的特性の測定
また、前述のようにして得られた実施例1−1および1−2ならびに比較例2−1および2−2の各々に係る積層セラミックコンデンサの各種電気的特性を測定した。
【0100】
まず、各積層セラミックコンデンサの誘電体セラミック層を構成する誘電体セラミックの誘電率を、温度25℃、1kHz、および0.5Vrms の条件下で測定した。
【0101】
また、温度変化に対する静電容量の変化率を求めた。この温度変化に対する静電容量の変化率については、JIS規格のB特性すなわち20℃での静電容量を基準とした−25℃での変化率および85℃での変化率と、EIA規格のX7R特性すなわち25℃での静電容量を基準とした−55℃での変化率および125℃での変化率とを評価した。
【0102】
また、絶縁抵抗を、温度25℃において、6.3Vの直流電圧を60秒間印加した後に測定し、その測定結果からCR積を求めた。
【0103】
また、高温負荷寿命試験を実施した。高温負荷寿命試験は、温度125℃において電界強度が10kV/mmになるように15Vの電圧を印加しながら、その絶縁抵抗の経時変化を測定し、1000時間経過するまでに絶縁抵抗値が200kΩ以下になった試料を不良と判定し、100個の試料について、この不良が発生した試料数の比率(不良率)を求めたものである。
【0104】
以上の誘電率、容量温度特性、CR積および高温負荷寿命試験不良率が、表3に示されている。
【0105】
【表3】
Figure 0004111006
【0106】
5.評価
実施例1−1および1−2では、表2に示すように、結晶粒子として、(Ba0.93Ca0.07)TiO3 からなる結晶粒子とBa−Ti−Si−O結晶性酸化物からなる結晶粒子とを備え、かつ、断面積が8nm2 以下である三重点の個数が90%であった。その結果、表3に示すように、実施例1−1および1−2によれば、高温負荷寿命試験において、不良を示した試料がなかった。
【0107】
これに対して、比較例1−1および1−2では、表2に示すように、結晶粒子として、(Ba0.93Ca0.07)TiO3 からなる結晶粒子のみが存在し、Ba−Ti−Si−O結晶性酸化物からなる結晶粒子が存在せず、かつ、断面積が8nm2 以下である三重点の個数が、それぞれ、70%および35%であった。なお、その他の三重点のほとんどは、断面積が10nm2 以上と大きく、非晶質であった。また、これら三重点の成分は、Ba、TiおよびSiを含むものであった。その結果、表3に示すように、比較例1−1および1−2によれば、高温負荷寿命試験において信頼性が非常に低いものであった。
【0108】
(実験例2)
実験例2では、ABO3 で表わされるペロブスカイト型化合物からなるペロブスカイト型化合物粒子におけるCaの濃度の好ましい範囲について評価しようとするものである。
【0109】
まず、主成分の出発原料として、BaCO3 、CaCO3 、SrCO3 、TiO2 およびHfO2 を準備して、表4の「主成分組成」の欄に示す各組成となるように秤量し、次いで、ボールミルによって混合し、1160℃で熱処理し、表4に示すように、AサイトのCa置換量が0〜22モル%の範囲で変えられた種々の組成を有する主成分を得た。この平均粒径は0.3μmであった。
【0110】
【表4】
Figure 0004111006
【0111】
他方、BaCO3 、TiO2 、NiOおよびSiO2 を、8.5:1:0.5:10のモル比になるように秤量し、次いで、ボールミルによって混合し、950℃で熱処理することによって、Ba−Ti−Ni−Si−Oの結晶性酸化物を得た。この酸化物が結晶性であることをXRDで確認した。また、この平均粒径は0.15μmであった。
【0112】
次に、前述のようにして得られた主成分100モルに対して、焼結助剤としてのSiO2 を2モル加えるとともに、これら主成分および焼結助剤の合計と前述のようにして得られたBa−Ti−Ni−Si−O結晶性酸化物とが重量比で99.9:0.1となるように、Ba−Ti−Ni−Si−O結晶性酸化物を加え、これらをボールミルによって混合し、実施例2−1〜2−6ならびに比較例2の各々に係る誘電体セラミック原料粉末を得た。
【0113】
次に、上述の実施例2−1〜2−6ならびに比較例2の各々に係る誘電体セラミック原料粉末を用いて、実験例1の場合と同様の方法によって、積層セラミックコンデンサを作製し、また、得られた積層セラミックコンデンサについて、その誘電体セラミック層を構成する誘電体セラミックの構造および組成分析を行なうとともに、各種電気的特性を測定した。
【0114】
誘電体セラミックの構造および組成分析結果が表5に、電気的特性の測定結果が表6にそれぞれ示されている。
【0115】
【表5】
Figure 0004111006
【0116】
【表6】
Figure 0004111006
【0117】
まず、表5からわかるように、実施例2−1〜2−6ならびに比較例2のいずれについても、結晶粒子として、ABO3 で表わされるペロブスカイト型化合物からなるペロブスカイト型化合物粒子と、Ba−Ti−Ni−Si−O結晶性酸化物からなる結晶性酸化物粒子とを備えていた。また、実施例2−1〜2−6ならびに比較例2のいずれについても、断面積が8nm2 以下の三重点の個数が80%であった。
【0118】
また、実施例2−1〜2−6では、表4に示すように、ABO3 で表わされる主成分原料におけるAサイトのCa置換量は1〜22モル%の範囲で変えられている。その結果、表6に示すように、実施例2−1〜2−6によれば、高温負荷寿命試験において不良が発生しなかった。しかしながら、実施例2−6では、表4に示すように、ABO3 で表わされる主成分原料において、Ca置換量が22モル%と多いため、表6に示すように、誘電率が若干低くなった。このことから、Ca置換量は、1〜20モル%の範囲にあることが好ましいことがわかる。
【0119】
他方、比較例2では、表4に示すように、ABO3 で表わされる主成分原料においてCaを置換していないため、表6に示すように、高温負荷寿命試験での信頼性が低く、また、誘電率も低くなった。
【0120】
(実験例3)
実験例3は、R(La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYのうちの少なくとも1種)およびM(Mn、Ni、Co、Fe、Cr、Cu、Mg、Al、V、MoおよびWのうちの少なくとも1種)を含む酸化物の添加に関して評価しようとするものである。
【0121】
まず、主成分の出発原料として、BaCO3 、CaCO3 、TiO2 およびZrO2 を準備して、(Ba0.98Ca0.02)(Ti0.995 Zr0.005 )O3 の組成となるように秤量し、次いで、ボールミルによって混合し、1150℃で熱処理し、(Ba0.98Ca0.02)(Ti0.995 Zr0.005 )O3 を得た。この平均粒径は0.25μmであった。
【0122】
他方、BaCO3 、SrCO3 、TiO2 、MnO2 、MgOおよびSiO2 を、8.0:1.0:0.5:0.5:0.5:10のモル比になるように秤量し、次いで、ボールミルによって混合し、900℃で熱処理し、Ba−Sr−Ti−Mn−Mg−Si−Oの結晶性酸化物を得た。この酸化物が結晶性であることをXRDで確認した。また、この平均粒径は0.1μmであった。
【0123】
次に、前述のようにして得られた(Ba0.98Ca0.02)(Ti0.995 Zr0.005 )O3 100モルに対して、表7に示した添加成分としての種々のRおよび種々のMを、この表の「組成比」の欄に示したモル比をもって加えるとともに、焼結助剤としてのSiO2 を2モル加え、さらに、前述のようにして得られたBa−Sr−Ti−Mn−Mg−Si−O結晶性酸化物を、主成分と添加成分としてのRおよびMと焼結助剤との合計99.9重量部に対して、重量比で0.1重量部となるように加え、次いで、ボールミルによって混合し、実施例3−1〜3−19の各々に係る誘電体セラミック原料粉末を得た。
【0124】
【表7】
Figure 0004111006
【0125】
次に、実施例3−1〜3−19の各々に係る誘電体セラミック原料粉末を用いて、実験例1の場合と同様の方法によって、積層セラミックコンデンサを作製し、得られた積層セラミックコンデンサについて、その誘電体セラミック層を構成する誘電体セラミックの構造および組成を分析するとともに、各種電気的特性を測定した。なお、高温負荷寿命試験については、実験例1の場合と同様の1000時間の試験だけでなく、2000時間の試験も行なった。
【0126】
誘電体セラミックの構造および組成分析の結果、実施例3−1〜3−19のいずれにおいても、結晶粒子として、(Ba0.98Ca0.02)(Ti0.995 Zr0.00 5 )O3 からなる結晶粒子と、Ba−Sr−Ti−Mn−Mg−Si−O系の結晶性酸化物からなる結晶粒子とが存在し、また、これらの存在比率については、前者が99.8%、後者が0.2%であった。
【0127】
また、断面積が8nm2 以下である三重点の個数の比率については、表8に示すような結果が得られた。
【0128】
【表8】
Figure 0004111006
【0129】
表8からわかるように、実施例3−1〜3−19のいずれにおいても、断面積が8nm2 以下である三重点の個数の比率は80%以上であった。
【0130】
また、電気的特性の評価結果は表9に示されている。
【0131】
【表9】
Figure 0004111006
【0132】
まず、表9から、実施例3−1〜3−19によれば、1000時間の高温負荷寿命試験において優れた信頼性を示していることがわかる。さらに、2000時間の高温負荷寿命試験の結果を見ると、次のことがわかる。
【0133】
すなわち、添加成分であるRおよびMの添加量に関して、表7に示すように、主成分であるABO3 100モルに対して、元素に換算して、Rが0.01〜1.5モル、かつMが0.1〜2モルの範囲にある実施例3−2〜3−5および3−7〜3−19によれば、表9に示すように、2000時間の高温負荷寿命試験においても、優れた信頼性を示すことがわかる。
【0134】
これに対して、表7に示すように、実施例3−1では、添加成分であるRを含まず、また、実施例3−6では、添加成分であるMを含んでいないため、表9に示すように、2000時間の高温負荷寿命試験の結果、実施例3−1では3個、実施例3−6では5個について不良が発生した。
【0135】
また、表7に示すように、主成分であるABO3 100モルに対して、実施例3−5では、Rを、元素に換算して、1.5モルを超えて含有し、また、実施例3−12では、Mを、元素に換算して、2モルを超えて含有しているため、表9に示すように、他の試料に比べて、誘電率の低下が認められた。
【0136】
これらのことから、RおよびMを含有することが好ましく、また、それらの濃度については、ABO3 100モルに対して、元素に換算して、Rが0.01〜1.5モルとなり、Mが0.1〜2モルとなるように選ばれることが好ましいことがわかる。
【0137】
【発明の効果】
以上のように、この発明に係る誘電体セラミックによれば、これをもって構成される誘電体セラミック層を薄層化しても、積層セラミックコンデンサに対して、優れた信頼性を与えることができる。したがって、この誘電体セラミックを用いて積層セラミックコンデンサの誘電体セラミック層を構成すれば、高い信頼性を有する積層セラミックコンデンサを実現することができるとともに、誘電体セラミック層の薄層化による積層セラミックコンデンサの小型化かつ大容量化を図ることができる。
【0138】
この発明に係る誘電体セラミックにおいて、ペロブスカイト型化合物粒子におけるCaの濃度が、ABO3 で表わされるペロブスカイト型化合物のA元素中の1〜20モル%の範囲に選ばれると、より優れた信頼性を与えることができるとともに、誘電率についても高く維持することができる。
【0139】
また、この発明に係る誘電体セラミックにおいて、R(La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYのうちの少なくとも1種)およびM(Mn、Ni、Co、Fe、Cr、Cu、Mg、Al、V、MoおよびWのうちの少なくとも1種)を含む酸化物をさらに含み、これらRおよびMの濃度が、ABO3 100モルに対して、それぞれ、元素に換算して、0.01〜1.5モルおよび0.1〜2モルとされると、信頼性を一層向上させることができるとともに、誘電率を高く維持することができる。
【0140】
次に、この発明に係る誘電体セラミックの製造方法によれば、上述したようなこの発明に係る誘電体セラミックを容易かつ確実に製造することができる。
【0141】
また、この発明に係る誘電体セラミックは、還元性雰囲気での焼成が可能であるので、これを用いて積層セラミックコンデンサを構成したとき、内部電極材料として卑金属を有利に用いることができる。また、誘電体セラミック層の焼成と同時に、外部電極を焼成によって形成する場合には、外部電極材料として卑金属を有利に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態による積層セラミックコンデンサ1を図解的に示す断面図である。
【図2】この発明の範囲内にある実施例1についての(Ba0.93Ca0.07)TiO3 からなる結晶粒子21およびBa−Ti−Si−O結晶性酸化物からなる結晶粒子22を示すTEM−明視野像をトレースして作成した図である。
【図3】図2に示した(Ba0.93Ca0.07)TiO3 からなる結晶粒子21についてのTEM−EDXによる組成分析結果を示す図である。
【図4】図2に示したBa−Ti−Si−O結晶性酸化物からなる結晶粒子22についてのTEM−EDXによる組成分析結果を示す図である。
【符号の説明】
1 積層セラミックコンデンサ
2 積層体
3 誘電体セラミック層
4,5 内部電極
8,9 外部電極
21 (Ba0.93Ca0.07)TiO3 からなる結晶粒子
22 Ba−Ti−Si−O結晶性酸化物からなる結晶粒子

Claims (9)

  1. 結晶粒子と結晶粒子間を占める結晶粒界および三重点とを備え、
    前記結晶粒子として、ABO3 (Aは、BaおよびCa、またはBa、CaおよびSrであり、Bは、Ti、またはTiならびにその一部が置換されたZrおよびHfの少なくとも1種である。)で表わされるペロブスカイト型化合物からなるペロブスカイト型化合物粒子と、少なくともBa、TiおよびSiを含む結晶性酸化物からなる結晶性酸化物粒子とを備え、
    前記三重点のうち、80%以上の個数の三重点については、その断面積が8nm2 以下である、誘電体セラミック。
  2. 前記ペロブスカイト型化合物粒子におけるCaの濃度は、前記ABO3 で表わされるペロブスカイト型化合物のA元素中の1〜20モル%である、請求項1に記載の誘電体セラミック。
  3. R(Rは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYのうちの少なくとも1種である。)およびM(Mは、Mn、Ni、Co、Fe、Cr、Cu、Mg、Al、V、MoおよびWのうちの少なくとも1種である。)を含む酸化物をさらに含み、前記Rおよび前記Mの濃度は、前記ABO3 100モルに対して、それぞれ、元素に換算して、0.01〜1.5モルおよび0.1〜2モルとされる、請求項1または2に記載の誘電体セラミック。
  4. 請求項1または2に記載の誘電体セラミックを製造する方法であって、
    ABO3 (Aは、BaおよびCa、またはBa、CaおよびSrであり、Bは、Ti、またはTiならびにその一部が置換されたZrおよびHfの少なくとも1種である。)で表わされるペロブスカイト型化合物を作製する工程と、
    少なくともBa、TiおよびSiを含む結晶性酸化物を作製する工程と、
    前記ペロブスカイト型化合物と前記結晶性酸化物とを混合した配合物を得る工程と、
    前記配合物を焼成する工程と
    を備える、誘電体セラミックの製造方法。
  5. 前記配合物を得る工程は、R(Rは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYのうちの少なくとも1種である。)およびM(Mは、Mn、Ni、Co、Fe、Cr、Cu、Mg、Al、V、MoおよびWのうちの少なくとも1種である。)を含む酸化物をさらに混合する工程を備える、請求項4に記載の誘電体セラミックの製造方法。
  6. 前記配合物を得る工程は、焼結助剤をさらに混合する工程を備える、請求項4または5に記載の誘電体セラミックの製造方法。
  7. 積層された複数の誘電体セラミック層および複数の前記誘電体セラミック層間の特定の界面に沿いかつ積層方向に重なり合った状態で形成された複数の内部電極を含む、積層体と、前記内部電極の特定のものに電気的に接続されるように前記積層体の外表面上に形成される外部電極とを備える、積層セラミックコンデンサであって、
    前記誘電体セラミック層が、請求項1ないし3のいずれかに記載の誘電体セラミックからなる、積層セラミックコンデンサ。
  8. 前記内部電極は、卑金属を含む、請求項7に記載の積層セラミックコンデンサ。
  9. 前記外部電極は、卑金属を含む、請求項7または8に記載の積層セラミックコンデンサ。
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