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JP4192579B2 - プラスチック成形金型用鋼 - Google Patents

プラスチック成形金型用鋼 Download PDF

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JP4192579B2 JP2002348314A JP2002348314A JP4192579B2 JP 4192579 B2 JP4192579 B2 JP 4192579B2 JP 2002348314 A JP2002348314 A JP 2002348314A JP 2002348314 A JP2002348314 A JP 2002348314A JP 4192579 B2 JP4192579 B2 JP 4192579B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラスチックの射出成形等に使用される金型用鋼に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用インストルメントパネルやバンパー、家電用テレビやエアコンの筺体等のような大型のプラスチック製品を射出成形するのに用いられる金型には、JIS G 4051に規定されるS55Cクラスの汎用鋼が使用されている。
【0003】
プラスチック成形金型に要求される特性としては、被削性が良好なこと、熱伝導率が高いこと、等である。
【0004】
被削性を向上させた鋼としては特許文献1および2に示される鋼があり、熱伝導率を高めた鋼としては特許文献3および4に示される鋼がある。
【0005】
即ち、特許文献1に示される鋼は、硫化物の量を多くするとともに、Siの含有量を0.5%以上とした鋼である。また、特許文献2に示される鋼は、Siの含有量を0.30%以上にするとともに、金属組織をフェライトが15〜40面積%のフェライトとパーライトの2相組織とした鋼である。さらに、特許文献3および4に示される鋼は、C以下の各成分の含有量をバランスさせるとともに、金属組織をマルテンサイト単相またはマルテンサイトとベイナイトの2相組織とした鋼である。
【0006】
しかし、特許文献1および2に示される鋼は、熱伝導率については全く考慮されておらず、熱伝導率が低いという欠点を有している。また、特許文献3および4に示される鋼は、金属組織がマルテンサイト単相またはマルテンサイトとベイナイトの2相組織であるために、被削性が十分でないという欠点を有している。
【0007】
このように、被削性と熱伝導率とを両立させることは困難であり、これを両立させた安価な金型用鋼の開発が望まれていた。
【0008】
【特許文献1】
特許第3141735号公報
【特許文献2】
特開2002-12941号公報
【特許文献3】
特開平8-209298号公報
【特許文献4】
特開平10-96049号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の実状に鑑みてなされたもので、被削性と熱伝導率とを両立させた安価なプラスチック成形金型用鋼を提供することを目的とする。具体的には、硬さがJIS Z 2243に規定されるHBW(10/3000)で180〜210であり、下記の条件のフライス加工による切削試験における工具最大摩耗量VBmax(mm)が0.40mm以下で、且つ100℃における熱伝導率λ(W/m・℃)が45以上であるプラスチック成形金型用鋼を提供することを目的とする。
【0010】
切削試験の条件;回転数(N):2720rpm、送り速度(F):600mm/min、切り込み深さ(Ad):5mm、切り込み幅(Rd):25mm、切削長さ(L):3m、使用工具:JIS B 4053に規定されるP30の一枚刃。なお、工具最大摩耗量VBmax(mm)とは、工具の逃げ面の最大摩耗幅のことである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記(1)および(2)のプラスチック成形金型用鋼にある。
【0012】
(1)質量%で、C:0.25〜0.45%、0.15 0.25 、Mn:0.5〜2%、S:0.01〜0.05%、sol.Al:0.02%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、金属組織が面積%で15〜30%のフェライトと残部パーライトの2相組織で、且つJIS G 0551に規定されるオーステナイト結晶粒度番号が3以上であるプラスチック成形金型用鋼。
【0013】
(2) 上記(1)に記載の成分に加えて、さらに、質量%で、Cr:0.1〜0.5%およびV:0.03%以上で0.2%未満のうちの1種以上を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、金属組織が面積%で15〜30%のフェライトと残部パーライトの2相組織で、且つJIS G 0551に規定されるオーステナイト結晶粒度番号が3以上であるプラスチック成形金型用鋼。
【0014】
本発明者らは、上記の課題を達成するために、前記の汎用鋼S55Cをベースに種々実験を行い、次のことを知得し、上記の本発明を完成させた。
【0015】
(a)合金元素の増量は、いずれの元素も熱伝導率λを低下させる。従って、いずれの元素も熱伝導率λを向上させる観点からは、その含有量はできるだけ低くするのがよい。なかでも、Siの影響が特に大きく、Si含有量は0.25 %以下に制限する必要がある。
【0016】
図1は、後述する実施例の結果を、Si含有量と熱伝導率λについて整理して示した図である。この図から明らかなように、Siが熱伝導率λに大きな影響を及ぼす元素であることがわかる。
【0017】
(b) また、C、Mnおよびsol.Alの含有量は、それぞれ、0.25〜0.45%、0.5〜2%および0.02%以下に制限する必要がある。
【0018】
)被削性は、金属組織をフェライトとパーライトの2相組織とした方がよく、特にフェライト率が15〜30面積%のフェライト・パーライト2相組織で、且つJIS G 0551に規定されるオーステナイト結晶粒度番号が3以上の金属組織にすると、被削性が格段に向上する。
【0019】
表1は、後述する実施例に供した鋼のうちの鋼No.1を対象に、そのフェライト・パーライト組織(フェライト面積率22%)のオーステナイト結晶粒度番号を種々異ならせて前記条件のフライス加工による切削試験を行って工具最大摩耗量VBmax を調べた結果を示す表である。表1から明らかなように、オーステナイト結晶粒度番号が3以上の場合に工具最大摩耗量VBmaxが0.40mm以下となり、良好な被削性が確保されることがわかる。
【0020】
【表1】
Figure 0004192579
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のプラスチック成形金型用鋼を上記のように定めた理由について詳細に説明する。なお、以下において、「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
【0022】
1.化学組成について、
C:0.25〜0.45%
Cは、強度を確保する上で重要な元素であり、最低でも0.25%の含有量が必要である。一方、その含有量が0.45%を超えると、パーライト量が増加し、後述する量のフェライト量が得られなくなくなり、所望の被削性が確保できなくなる。このため、C含有量は0.25〜0.45%とする。好ましいのは0.28〜0.45%、より好ましいのは0.35〜0.43%である。
【0023】
Si:0.15 0.25
Siは、被削性を向上させる反面、熱伝導率を著しく低下させる元素であるが、組成によりその特性値が事実上決まる熱伝導率を向上させ、所望の被削性と熱伝導率を確保するためには、前述したように、Siは0.25 %以下にする必要がある。なお、熱伝導率を向上させる観点のみからはSi含有量は少ないほどよいが、あまり少なくしすぎると被削性の確保が困難になる場合があるので、その含有量は0.15 0.25 とする
【0024】
Mn:0.5〜2%
Mnは、上記のCと同様に、強度を確保する上で重要な元素であり、最低でも0.5%の含有量が必要である。一方、その含有量が2%を超えると、靱性低下を引き起こす。このため、Mn含有量は0.5〜2%とする。好ましい範囲は0.8〜1.5%、より好ましい範囲は1〜1.3%である。
【0025】
S:0.01〜0.05%
Sは、被削性を確保するうえで重要な元素であり、最低でも0.01%の含有量が必要である。一方、その含有量が0.05%を超えると、靱性、延性および溶接性が低下する。従って、S含有量は0.01〜0.05%とする。好ましいのは0.02〜0.04%、より好ましいのは0.025〜0.04%である。
【0026】
sol.Al:0.02%以下
Alは、脱酸剤として添加される。また、AlはAlNを形成して細粒化に寄与する元素でもある。これらの効果を十分に発揮させるためには、sol.Al含有量で0.001%以上とするのが望ましい。しかし、過剰なAlはアルミナ系の酸化物を形成し、鋼の清浄度を悪くして地疵の問題を招くだけでなく、被削性および熱伝導率をも低下させる。従って、被削性と熱伝導率の両方を向上させた鋼の提供を目的とする本発明においては、Alの含有量は少ないほどよく、上記のSiまたは/およびMnによって脱酸が十分に行われ場合には、鋼中には必ずしも含まれなくてもよい。このため、Alの含有量はsol.Alで0.02%以下とした。好ましい上限は0.01%、より好ましい上限は0.005%である。
【0027】
残部は実質的にFe、言い換えれば残部はFeおよび不純物であるが、本発明のプラスチック成形金型用鋼は、上記の成分に加えて、下記の元素のうちの1種以上を含有させた鋼であってもよい。
【0028】
Cr、V:
CrおよびVは、いずれも、鋼の焼入れ性を高めて強度を向上させる作用を有する。このため、その効果を得たい場合には1種以上を添加することができ、前記の効果は、Crでは0.1%以上、Vでは0.03%以上の含有量で得られる。しかし、Crは、0.5%を超えると、パーライトの強度が高くなりすぎて被削性が低下するだけでなく、熱伝導率も低下する。また、Vは、0.2%以上になると、Vの炭化物量が増加するとともに、フェライトの強度が高くなりすぎて、被削性が低下するだけでなく、熱伝導率も低下する。特に、VはCrに比べ、被削性を低下させる作用が著しい。このため、添加する場合のこれら元素の含有量は、Crは0.1〜0.5%、好ましくは0.1〜0.35%、Vは0.03%以上で0.2%未満、好ましくは0.03〜0.1%とするのがよい。
【0029】
2.金属組織について、
組織は、前述したように、面積%で、フェライトが15〜30、残部がパーライトのフェライト・パーライトの2相組織でなければならない。これは、次の理由による。
【0030】
パーライトは旧オーステナイトの粒内に生じ、フェライトは旧オーステナイトの粒界に生じる。また、パーライトはフェライトに比べて剪断変形しにくい。このため、旧オーステナイト粒が大きいと、パーライトの塊が大きくなり、剪断変形しにくくなる。一方、旧オーステナイト粒が小さいと、パーライトの塊が小さくなり、パーライトの周辺のフェライトが変形し、剪断変形しやすくなる。言い換えれば、被削性が向上する。
【0031】
しかし、フェライト量が15面積%未満では、パーライトが多く、硬度が高すぎて被削性が低下する。一方、30面積%を超えると、強度の確保が困難になるだけでなく、硬度が不足して金型に必要な耐摩耗性の確保が困難になる。このため、本発明では、その金属組織をフェライトが15〜30面積%、残部がパーライトのフェライト・パーライトの2相組織とした。
【0032】
なお、本発明にいうフェライトの面積%とは、次のようにして求められる値のことである。
【0033】
任意な大きさの試料を、JIS G 0552に規定される方法に準じて処理し、処理後の試料の処理表面を、JIS G 0552に規定される方法に従って顕微鏡観察してデジタルカメラで撮影し、得られた画像中の黒色部分(パーライト)を例えば「1」、白色部分(フェライト)を例えば「0」とする二値化画像処理し、撮像面積から「1」と判定された部分の総面積を差し引いた値を撮像面積で除して求められた値に100を乗じて求められる値のことである。
【0034】
また、結晶粒度は、前述したように、JIS G 0551に規定されるオーステナイト結晶粒度番号で3以上の細粒でなければならない。これは、前記の表1に示すように、オーステナイト結晶粒度番号が3未満では、目標とする工具最大摩耗量VBmaxが確保されず、所望の被削性が確保できないからである。なお、結晶粒度は細粒であるほど好ましいので、その上限は規定しない。
【0035】
本発明で規定する上記の金属組織は、本発明で規定する化学組成を有する鋼に、例えば、鍛造温度1100〜1300℃、鍛造終止温度1000℃以下、鍛錬比3以上の熱間加工を施した後、850〜1000℃に加熱し、オーステナイト化した後に450℃/h以下の冷却速度で冷却する焼準処理を施し、次いで、500〜700℃で焼戻す熱処理により得られ、結晶粒度の調整は、鍛錬比、鍛造終止温度および焼準処理温度の調整により行えばよい。
【0036】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【0037】
【実施例】
表2に示す化学組成を有する27種類の鋼を高周波溶解炉を用いて溶製し、得られた鋳塊を1200℃に加熱後、鍛錬比2〜5、終止温度800〜1000℃で熱間鍛造し、厚さと幅がいずれも110mmの試験材とした。
【0038】
得られた試験材は、実機のプラスチック射出成形金型の製造を想定し、850〜1000℃に1〜3時間加熱保持した後に90℃/hの冷却速度で冷却する焼準と、580℃に4時間加熱保持する焼戻しの熱処理を施し、オーステナイト結晶粒度番号、フェライト率、組織、硬さ(HBW)、および熱伝導率λが表2に示す値の試験材に調整した。
【0039】
調整後の試験材は、前述したのと同じ条件のフライス加工による切削試験に供して工具最大摩耗量VBmax(mm)を調べ、その結果を表2に併せて示した。
【0040】
なお、フェライト率は前述した方法により測定し、熱伝導率λは100℃における値をレーザフラッシュ法により測定した。
【0041】
表2に示すように、本発明で規定する条件を満たす鋼No.1〜4の本発明鋼は、いずれも、熱伝導率λが45以上、工具最大摩耗量VBmaxが0.40mm以下で、熱伝導率および被削性ともに良好である。
【0042】
これに対し、化学組成、オーステナイト結晶粒度番号、フェライト率および組織のいずれか1つ以上が本発明で規定する範囲を外れる鋼No.5〜27の比較鋼は、熱伝導率λまたは/および工具最大摩耗量VBmaxが本発明の目標値に達しておらず、高い熱伝導率と良好な被削性の両方を兼ね備えていない。
【0043】
【表2】
Figure 0004192579
【0044】
【発明の効果】
本発明のプラスチック成形金型用鋼は、高い熱伝導率と良好な被削性を有している。また、本発明の金型用鋼は、CrやVの合金元素の添加を必ずしも必要としないので安価である。従って、本発明のプラスチック成形金型用鋼によれば、大型の金型を1つの材料で製作することが可能で、金型の製作コストおよび原単位を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Si含有量と熱伝導率との関係を示す図である。
【図2】フェライト率と工具最大摩耗量との関係を示す図である。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.25〜0.45%、Si:0.15 0.25 、Mn:0.5〜2%、S:0.01〜0.05%、sol.Al:0.02%以下を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、金属組織が面積%で15〜30%のフェライトと残部パーライトの2相組織で、且つJIS G 0551に規定されるオーステナイト結晶粒度番号が3以上であることを特徴とするプラスチック成形金型用鋼。
  2. 請求項1に記載の成分に加えて、さらに、質量%で、Cr:0.1〜0.5%およびV:0.03%以上で0.2%未満のうちの1種以上を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、金属組織が面積%で15〜30%のフェライトと残部パーライトの2相組織で、且つJIS G 0551に規定されるオーステナイト結晶粒度番号が3以上であることを特徴とするプラスチック成形金型用鋼。
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