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JP4158506B2 - 静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法及び画像形成方法 - Google Patents

静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法及び画像形成方法 Download PDF

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JP4158506B2 JP2002351152A JP2002351152A JP4158506B2 JP 4158506 B2 JP4158506 B2 JP 4158506B2 JP 2002351152 A JP2002351152 A JP 2002351152A JP 2002351152 A JP2002351152 A JP 2002351152A JP 4158506 B2 JP4158506 B2 JP 4158506B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法及び画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
今日、電子写真法に代表される静電潜像現像法は、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成方法に広く用いられている。
【0003】
この理由は高速で高品質な画像が安定して得られる完成度の高い方法である為だが、なお、いくつかの問題点も残っている。
【0004】
例えば、粉砕法で調製された従来のトナーではトナー中に分散された材料が破断面に不均一に存在し、トナー同士の表面性が一定になりにくく、転写工程でのバラツキが発生しやすく、カラー画像としての色再現性が低下する問題がある。
【0005】
一方、静電潜像現像用トナーは高画質の観点から小粒径化が望まれている。小粒径トナーを製造する方法として近年重合法トナーの開発が盛んである。この重合法トナーには樹脂粒子と必要に応じて着色剤粒子とを会合あるいは塩析、凝集、融着させて不定形化したトナーを調製する方法や、ラジカル重合性モノマーと着色剤とを分散し、ついで水系媒体等に所望のトナー粒径になるように液滴分散し、懸濁重合する方法等がある。
【0006】
しかしながら、懸濁重合法を適用して作製されたトナー粒子は球形で表面性が均一なトナーを形成することができるため、トナー間での均一性は高くなるが、形状が球形なため、潜像担持体に対する付着性が高くなるため、転写性が低下する問題があった。
【0007】
このような問題点に対応するために、界面活性剤を含む水系媒体中で重合した樹脂粒子を該樹脂粒子の臨界凝集濃度以上の凝集剤と、水に対して無限溶解する有機溶媒で処理されて造られたことを特徴とする非球形粒子(例えば、特許文献1参照。)が開示されている。
【0008】
上記の技術では、凝集剤として2価または3価金属塩を使用することで、形状の均一性、帯電量の均一性に優れ、鮮鋭性の高い画像が得られるが、2価または3価金属塩の存在により界面活性剤のクラフト点が上昇し、水に難溶の析出物が形成される。この析出物が、着色粒子すなわちトナーを水系媒体から分離したのちもトナーに付着した状態で存在し、細線再現性が低下しやすい、文字つぶれ等が起きやすい等の問題点があった。
【0009】
また、乳化重合の乳化剤としては、従来、アルキルベンゼン硫酸塩が一般的に用いられているが、水系媒体中で反応を行っている最中に、他の金属元素等と難溶性の副生成物を生成してしまい、トナー中へ混入し、画像上へのカブリ、OHP透過性等のトナー性能に悪影響を及ぼす等の問題点があり、それらへの対応が要望されている。
【0010】
【特許文献1】
特開平11−194540号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、低カブリであり、且つ、OHP透過性の良好な静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法及び画像形成方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、下記の構成1〜5により達成された。
【0013】
1.水系媒体中で樹脂粒子と着色剤粒子とを融着させる工程を経て製造された静電荷像現像用トナーにおいて、前記一般式(1)で表される化合物を含み、且つ、該化合物の含有量が、1ppm〜1000ppmであることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0014】
2.多価の金属元素を250ppm〜20000ppm含有することを特徴とする前記1に記載の静電荷像現像用トナー。
【0015】
3.前記1または2に記載の静電荷像現像用トナーを製造するに当たり、重合性単量体を水系媒体中で重合して樹脂を製造する工程を有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0016】
4.前記1または2に記載の静電荷像現像用トナーを製造するに当たり、トナー粒子が、樹脂粒子を水系媒体中で凝集、融着させる工程を経て製造されることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0017】
5.静電荷像担持体上に静電荷像を形成する工程、静電荷像現像用トナーを含む現像剤で該静電荷像を現像してトナー画像を形成する工程、及びトナー画像を転写体上に転写する工程を含む画像形成方法において、該静電荷像現像用トナーとして前記1または2に記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者等は、上記記載の問題点を種々検討した結果、請求項1に記載のように、水系媒体中で樹脂粒子と着色剤粒子とを融着させる工程を経て製造された静電荷像現像用トナーにおいて、前記一般式(1)で表される化合物(界面活性剤ともいう)を1ppm〜1000ppm含むように調整することにより、画像カブリ、OHP透過性のトナー性能を改善した静電荷像現像用トナーを得ることができた。
【0019】
その理由としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩のアルキルの炭素数の割合を特定の範囲に限定したことにより、他の金属元素等との難溶性の副生成物の抑制に成功し、その結果として、画像上へのカブリ、OHP透過性の向上効果が得られたものと考えている。
【0020】
《一般式(1)で表される化合物(界面活性剤)》
前記一般式(1)で表される化合物は、本発明の静電荷像現像用トナーに係る樹脂粒子の分散液の調製、前記樹脂粒子と着色剤粒子とを融着させる工程時に用いられ、最終的にトナー形成した後もトナー中に存在することが特徴である。
【0021】
一般式(1)で表される化合物(界面活性剤ともいう)について説明する。
一般式(1)において、R1は、脂肪族炭化水素基を表すが、本発明に記載の効果を好ましく得る観点から、炭素数6〜22の脂肪族炭化水素基が好ましく、更に好ましくは、炭素数8〜20の脂肪族炭化水素基であり、特に好ましくは炭素数9〜16の脂肪族炭化水素基である。
【0022】
1で表される炭素数6〜22の脂肪族炭化水素基としては、例えば、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ドコサデシル基等のアルキル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、ペンタデセニル基、5−(3−ペンテニル)−3,6,8−デカトリエン−1−イニル基、6−(1,3−ペンタジエニル)−2,4,7−ドコデカトリエン−9−イニル基、6−(1−ペンテン−3−イニル)−2,4,7,9−ウンデカテトラエニル基等の不飽和脂肪族炭化水素基(アルケニル基、アルカジエニル基、アルカトリエニル基およびアルカポリエニル基);オクチルシクロヘキシル基、ノニルシクロヘキシル基などの環状脂肪族炭化水素基等が挙げられる。これら脂肪族炭化水素基は、直鎖状でも分岐状でもよい。
【0023】
2で表されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等が挙げられる。
【0024】
2で表されるアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プレニル基、オクテニル基等が挙げられる。
【0025】
2で表されるアルキニル基としては、例えば、プロパルギル基、エチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。
【0026】
2で表されるアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、p−トリル基、m−クロロフェニル基、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル基等が挙げられる。
【0027】
2で表されるアルコキシル基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
【0028】
2で表されるアルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等が挙げられる。
【0029】
2で表されるアリールチオ基としては、例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0030】
2で表される複素環基としては、例えば、ピリジル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、イミダゾリル基、フリル基、ピロリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、セレナゾリル基、スルホラニル基、ピペリジニル基、ピラゾリル基、テトラゾリル基等が挙げられる。
【0031】
2で表される複素環オキシ基としては、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基、ピリジルオキシ基、チアゾリルオキシ基、オキサゾリルオキシ基、イミダゾリルオキシ基等が挙げられる。
【0032】
2で表される基は、更に置換基を有してよいが、本発明では、少なくとも一つのスルホ基または該スルホ基の塩を置換基として有することが好ましく、更に好ましくは、前記スルホ基の塩を置換基として有することである。
【0033】
ここで、前記スルホ基の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、カルシウム塩、アンモニウム基等が挙げられる。
【0034】
SO3Mで表される基において、Mで表される1価の金属元素としては、ナトリウム、カリウム、リチウムが挙げられる。中でも、ナトリウムが好ましく用いられる。
【0035】
SO3Mで表される基において、Mで表される2価の金属元素としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム等が挙げられるが、中でも、カルシウムが好ましく用いられる。
【0036】
本発明に係る一般式(1)で表される化合物(界面活性剤)において、R2で表される基またはSO3Mで表される基が2価の金属元素により塩形成する場合には、R2で表される基とSO3Mとで分子内塩を形成してもよいし、また、各々が他の一般式(1)で表される分子との間で、分子間塩を形成してもよい。
【0037】
以下に、一般式(1)で表される化合物(界面活性剤)の具体例を示すが本発明はこれらに限定されない。
【0038】
化合物(1) :(n)C613−(C64)p−SO3Na
化合物(2) :(n)C817−(C64)p−SO3Na
化合物(3) :(t)C817−(C64)p−SO3Na
化合物(4) :(n)C919−(C64)p−SO3Na
化合物(5) :(n)C1225−(C64)p−SO3Na
化合物(6) :(t)C1225−(C64)p−SO3Na
化合物(7) :(n)C1837−(C64)p−SO3Na
化合物(8) :(t)C1837−(C64)p−SO3Na
化合物(9) :(n)C2245−(C64)p−SO3Na
化合物(10):(i)C613−(C64)p−SO3Na
上記例示化合物において、−(C64)p−は、パラフェニレン基を表す。
【0039】
【化2】
Figure 0004158506
【0040】
ここで、化合物(1)〜(12)は、上記記載の構造式の化合物を主成分(混合物中の50質量%以上の含有量を示す物を主成分とする)を表すものであり、実際はアルキル基の炭素数が各々異なる化合物の混合物である。尚、表1には、上記記載の化合物を用いてトナーが作製された後、トナー中に残存する炭素数6〜22を有する一般式(1)で表される全化合物中の含有量を記載した。また、上記化合物は、フェニレン基の置換基の位置がp、即ち、パラ置換体である。
【0041】
トナーの高温高質条件下でのカブリ発生を抑え、OHP画像の透過性向上の観点から、本発明の静電荷像現像用トナーは、前記一般式(1)で表される界面活性剤を含有する、即ち、一般式(1)で表される化合物はトナー中に混合物として存在し、且つ、前記混合物中において、Rで表される炭化水素基の炭素数の数が6〜22の範囲にある化合物の割合が、50質量%〜90質量%であることが本発明では必須である。
【0042】
上記記載の割合については、好ましくは、60質量%〜70質量%の範囲であり、更に好ましくは、65質量%〜70質量%の範囲である。
【0043】
また、本発明の静電荷像現像用トナー中における、一般式(1)で表される化合物の含有量としては、1ppm〜1000ppmであることが必須であるが、好ましくは、5ppm〜500ppmであり、更に好ましくは7ppm〜100ppmである。
【0044】
本発明の静電荷像現像用トナー中における、前記一般式(1)で表される化合物の含有量を上記記載の含有量に調製する為の手段としては、
(a)ラテックスの調製、着色剤の分散時の使用量、(b)着色粒子の作製時の洗浄条件の調製、(c)着色粒子作製後、トナーの作製または現像剤作製後に後添加する等の中から、適切なものを選択することにより、調整可能である。
【0045】
本発明のトナーに、前記一般式(1)で表される化合物(界面活性剤ともいう)を上記記載の範囲で含有させることにより、本発明に記載の効果を得ることはもちろんであるが、本発明の静電荷像現像用トナーの帯電性は環境の影響に左右されず、常に均一、且つ、安定に付与、維持するという副次的効果をも得ることが出きる。
【0046】
本発明の静電荷像現像用トナー中の上記に記載の一般式(1)で表される界面活性剤の含有量の測定方法は以下の通りである。
【0047】
トナー1gを50mlのクロロホルムに溶解させ、100mlのイオン交換水でクロロホルム層より界面活性剤を抽出、このクロロホルム層を100mlのイオン交換水でもう一度抽出、計200mlの抽出液(水層)を500mlまで希釈、この希釈液を試験液としてJIS 33636項に規定の方法に従いメチレンブルーで呈色させ、吸光度を測定し、別途作成した検量線より、トナー中の含有量を測定した。
【0048】
また、一般式(1)で表される界面活性剤の構造は、上記の抽出物を1H−NMRを用いて分析し、構造決定した。
【0049】
本発明においては、水系媒体中で調製した樹脂粒子の分散液から、樹脂粒子を塩析、凝集、融着する工程において、金属塩が凝集剤として好ましく用いられるが、更に好ましくは2価または3価の金属塩を凝集剤として用いることである。その理由は、1価の金属塩より2価、3価の金属塩のほうが臨界凝集濃度(凝析値あるいは凝析点)が小さいからである。
【0050】
本発明に係る、凝集剤または凝集停止剤として用いられる金属塩について説明する。
【0051】
金属塩としては、1価の金属、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩、2価の金属、例えばカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩、マンガン、銅等の2価の金属塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属塩等が挙げられる。これら金属塩の具体例を以下に示す。
【0052】
1価の金属の金属塩の具体例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム等が挙げられる。2価の金属の金属塩としては、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられる。3価の金属塩としては、塩化アルミニウム、塩化鉄等が挙げられる。これらは目的に応じて適宜選択される。
【0053】
上記の臨界凝集濃度とは、水性分散液中の分散物の安定性に関する指標であり、凝集剤を添加し、凝集が起こる点の濃度を示している。この臨界凝集濃度は、ラテックス自身及び分散剤により大きく変化する。例えば、岡村誠三他著、高分子化学17,601(1960)等に記述されており、これらの記載に従えばその値を知ることが出来る。
【0054】
また、別の方法として、目的とする粒子分散液に所望の塩を濃度を変えて添加し、その分散液のζ電位を測定し、ζ電位が変化し出す点の塩濃度を臨界凝集濃度とすることも可能である。
【0055】
本発明に係る上記記載の金属塩を用いて臨界凝集濃度以上の濃度になるように重合体微粒子分散液を処理する。この時、当然の事ながら、金属塩を直接加えるか、水溶液として加えるかは、その目的に応じて任意に選択される。水溶液として加える場合には、重合体粒子分散液の容量と金属塩水溶液の総容量に対し、添加した金属塩が重合体粒子の臨界凝集濃度以上になる必要がある。
【0056】
凝集剤として用いられる金属塩の濃度は、臨界凝集濃度以上であれば良いが、好ましくは臨界凝集濃度の1.2倍以上、更に好ましくは1.5倍以上添加される。
【0057】
尚、複合樹脂粒子(粒子が多層構成になっていたり、粒子中に添加剤等のような他の構成成分が含まれる場合を複合樹脂粒子と呼ぶ)や着色剤粒子が分散している分散液中に凝集剤を添加する際の当該分散液の温度は、複合樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以下であることが好ましく、具体的には5〜55℃の範囲であることが好ましく、更に好ましくは10℃〜45℃とされる。
【0058】
凝集剤を添加するときの分散液の温度が、複合樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以上となる場合には、粒径の制御を行うことが困難となり巨大粒子が生成されやすい。
【0059】
この塩析、凝集、融着する工程においては、複合樹脂粒子と着色剤粒子とが分散されてなる分散液の温度が、当該複合樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以下のときに、当該分散液を攪拌しながら凝集剤を添加し、その後速やかに当該分散液の加熱を開始して、複合樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以上の温度とすることが好ましい。
【0060】
また、本発明においては樹脂粒子と着色剤を水系媒体中において塩析、凝集、融着させて着色粒子(本発明では、トナー粒子と呼ぶ)を得た後、前記トナー粒子を水系媒体から分離するときに、水系媒体中に存在している界面活性剤のクラフト点以上の温度で行うことが好ましく、更に好ましくは、クラフト点〜(クラフト点+20℃)の温度範囲で行うことである。
【0061】
上記のクラフト点とは、界面活性剤を含有した水溶液が白濁化しはじめる温度であり、クラフト点の測定は下記のように行われる。
【0062】
《クラフト点の測定》
塩析、凝集、融着する工程で用いる水系媒体すなわち界面活性剤溶液に、実際に使用する量の凝集剤を加えた溶液を調製し、この溶液を1℃で5日間貯蔵した。次いで、この溶液を攪拌しながら透明になるまで徐々に加熱した。溶液が透明になった温度をクラフト点として定義する。
【0063】
トナー粒子への過剰帯電を抑え、均一な帯電性を付与するという観点から、特に環境に対して帯電性を安定化し、維持する為に、本発明の静電荷像現像用トナーは、上記に記載の金属元素(形態として、金属、金属イオン等が挙げられる)をトナー中に250〜20000ppm含有することが好ましく、更に好ましくは800〜5000ppmである。
【0064】
また、本発明においては、凝集剤に用いる2価(3価)の金属元素と後述する凝集停止剤として加える1価の金属元素の合計値が350〜35000ppmであることが好ましい。
【0065】
トナー中の金属イオン残存量の測定は、蛍光X線分析装置「システム3270型」〔理学電気工業(株)製〕を用いて、凝集剤として用いられる金属塩の金属種(例えば、塩化カルシウムに由来するカルシウム等)から発する蛍光X線強度を測定することによって求めることができる。具体的な測定法としては、凝集剤金属塩の含有割合が既知のトナーを複数用意し、各トナー5gをペレット化し、凝集剤金属塩の含有割合(質量ppm)と、当該金属塩の金属種からの蛍光X線強度(ピーク強度)との関係(検量線)を測定する。次いで、凝集剤金属塩の含有割合を測定すべきトナー(試料)を同様にペレット化し、凝集剤金属塩の金属種からの蛍光X線強度を測定し、含有割合すなわち「トナー中の金属イオン残存量」を求めることが出来る。
【0066】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法について説明する。
本発明のトナーは、着色剤の不存在下において複合樹脂粒子を形成し、当該複合樹脂粒子の分散液に着色剤粒子の分散液を加え、当該複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析、凝集、融着させることにより調製されるものである。
【0067】
このように、複合樹脂粒子の調製を着色剤の存在しない系で行うことにより、複合樹脂粒子を得るための重合反応が阻害されることない。このため、本発明のトナーによれば、優れた耐オフセット性が損なわれることはなく、トナーの蓄積による定着装置の汚染や画像汚れを発生させることはない。
【0068】
また、複合樹脂粒子を得るための重合反応が確実に行われる結果、得られるトナー粒子中に単量体やオリゴマーが残留するようなことはなく、当該トナーを使用する画像形成方法の熱定着工程において、異臭を発生させることはない。
【0069】
さらに、得られるトナー粒子の表面特性は均質であり、帯電量分布もシャープとなるため、鮮鋭性に優れた画像を長期にわたり形成することができる。
【0070】
本発明のトナーを構成する「複合樹脂粒子」とは、樹脂からなる核粒子の表面を覆うように、当該核粒子を形成する樹脂とは分子量および/または組成の異なる樹脂からなる1または2以上の被覆層が形成されている多層構造の樹脂粒子をいうものとする。
【0071】
また、複合樹脂粒子の「中心部(核)」とは、複合樹脂粒子を構成する「核粒子」をいう。
【0072】
また、複合樹脂粒子の「外層(殻)」とは、複合樹脂粒子を構成する「1または2以上の被覆層」のうち最外層をいう。
【0073】
また、複合樹脂粒子の「中間層」とは、中心部(核)と外層(殻)の間に形成される被覆層をいうものとする。
【0074】
複合樹脂粒子の分子量分布は単分散ではなく、また、複合樹脂粒子は、通常、その中心部(核)から外層(殻)にかけて分子量勾配を有している。
【0075】
本発明において、複合樹脂粒子を得るために「多段重合法」を用いることが、分子量分布制御の観点から、すなわち定着強度、耐オフセット性を確保する観点から好ましい。本発明において、複合樹脂粒子を得るための「多段重合法」とは、単量体(n)を重合処理(第n段)して得られた樹脂粒子(n)の存在下に、単量体(n+1)を重合処理(第n+1段)して、当該樹脂粒子(n)の表面に、単量体(n+1)の重合体(樹脂粒子(n)の構成樹脂とは分散および/または組成の異なる樹脂)からなる被覆層(n+1)を形成する方法を示す。
【0076】
ここに、樹脂粒子(n)が核粒子である場合(n=1)には、「二段重合法」となり、樹脂粒子(n)が複合樹脂粒子である場合(n≧2)には、三段以上の多段重合法となる。
【0077】
多段重合法によって得られる複合樹脂粒子中には、組成および/または分子量が異なる複数の樹脂が存在することになる。従って、当該複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析、凝集、融着させることにより得られるトナーは、トナー粒子間において、組成・分子量・表面特性のバラツキがきわめて小さい。
【0078】
このようなトナー粒子間における組成・分子量・表面特性が均質であるトナーによれば、接触加熱方式による定着工程を含む画像形成方法において、画像支持体に対する良好な接着性(高い定着強度)を維持しながら、耐オフセット性および巻き付き防止特性の向上を図ることができ、適度の光沢を有する画像を得ることができる。
【0079】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法の一例を具体的に示すと、
(1)離型剤及び/又は結晶性ポリエステルが、最外層以外の領域(中心部または中間層)に含有されるように調製された複合樹脂粒子を得るための多段重合工程(I)、
(2)複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析、凝集、融着させてトナー粒子を得る塩析、凝集、融着する工程(II)、
(3)トナー粒子の分散系からトナー粒子を濾別し、トナー粒子から界面活性剤などを除去する濾過、洗浄工程、
(4)洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程、
(5)乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程から構成される。
【0080】
以下、各工程について説明する。
《多段重合工程(I)》
多段重合工程(I)は、樹脂粒子(n)の表面に、単量体(n+1)の重合体からなる被覆層(n+1)を形成する多段重合法により、複合樹脂粒子を製造する工程である。ここで、製造の安定性、および得られるトナーの破砕強度の観点から三段重合以上の多段重合法を採用することが好ましい。
【0081】
以下に、多段重合法の代表例である二段重合法および三段重合法について説明する。
【0082】
《二段重合法の説明》
二段重合法は、離型剤を含有する高分子量樹脂から形成される中心部(核)と、低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。すなわち、二段重合法で得られる複合樹脂粒子は核と一層の被覆層から構成される。
【0083】
この方法を具体的に説明すると、先ず、離型剤を単量体(H)に溶解させて得られた単量体溶液を水系媒体(界面活性剤の水溶液)中に油滴分散させた後、この系を重合処理(第1段重合)することにより、離型剤を含有する高分子量の樹脂粒子(H)の分散液を調製する。
【0084】
次いで、この樹脂粒子(H)の分散液に、重合開始剤と、低分子量樹脂を得るための単量体(L)とを添加し、当該樹脂粒子(H)の存在下に単量体(L)を重合処理(第二段重合)することにより、当該樹脂粒子(H)の表面に、低分子量の樹脂(単量体(L)の重合体)からなる被覆層(L)を形成する。
【0085】
《三段重合法の説明》
三段重合法は、高分子量樹脂から形成される中心部(核)と、離型剤を含有する中間層と、低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。すなわち、三段重合法で得られる複合樹脂粒子は核と2層の被覆層から構成される。
【0086】
この方法を具体的に説明すると、先ず、常法に従った重合処理(第1段重合)により得られた樹脂粒子(H)の分散液を、水系媒体(界面活性剤の水溶液)に添加するとともに、当該水系媒体中に、離型剤を単量体(M)に溶解させてなる単量体溶液を油滴分散させた後、この系を重合処理(第二段重合)することにより、当該樹脂粒子(H)(核粒子)の表面に、離型剤を含有する樹脂(単量体(M)の重合体)からなる被覆層(M)(中間層)を形成してなる複合樹脂粒子〔高分子量樹脂(H)−中間分子量樹脂(M)〕の分散液を調製する。
【0087】
次いで、得られた複合樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と、低分子量樹脂を得るための単量体(L)とを添加し、当該複合樹脂粒子の存在下に単量体(L)を重合処理(第三段重合)することにより、当該複合樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体(L)の重合体)からなる被覆層(L)を形成する。
【0088】
この三段重合法において、樹脂粒子(H)の表面に被覆層(M)を形成する際に、当該樹脂粒子(H)の分散液を水系媒体(界面活性剤の水溶液)に添加するとともに、当該水系媒体中に、離型剤を単量体(M)に溶解させてなる単量体溶液を油滴分散させた後、この系を重合処理(第二段重合)する方法を採用することにより、離型剤を微細かつ均一に分散させることができる。
【0089】
尚、樹脂粒子(H)の分散液の添加処理および、単量体溶液の油滴分散処理については、下記に記載のように何れを先行して実施してもよいし、同時に行ってもよい。
【0090】
(a)複合樹脂粒子を構成する中間層を形成する際に、複合樹脂粒子の中心部(核)となる樹脂粒子を界面活性剤の水溶液中に添加した後、当該水溶液中に、離型剤/結晶性ポリエステルを含有する単量体組成物を分散させ、この系を重合処理する態様、
(b)複合樹脂粒子を構成する中間層を形成する際に、離型剤/結晶性ポリエステルを含有する単量体組成物を界面活性剤の水溶液中に分散させた後、当該水溶液中に、複合樹脂粒子の中心部(核)となる樹脂粒子を添加し、この系を重合処理する態様、
(c)複合樹脂粒子を構成する中間層を形成する際に、複合樹脂粒子の中心部(核)となる樹脂粒子を界面活性剤の水溶液中に添加すると同時に、当該水溶液中に、離型剤/結晶性ポリエステルを含有する単量体組成物を分散させ、この系を重合処理する態様が含まれる。
【0091】
離型剤を含有する樹脂粒子(核粒子)または被覆層(中間層)を形成する方法としては、離型剤を単量体に溶解させ、得られる単量体溶液を水系媒体中に油滴分散させ、この系を重合処理することにより、ラテックス粒子として得る方法を採用することができる。
【0092】
ここで、「水系媒体」とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
【0093】
離型剤を含有する樹脂粒子または被覆層を形成するために好適な重合法としては、臨界ミセル濃度以下の濃度の界面活性剤を溶解してなる水系媒体中に、離型剤を単量体に溶解してなる単量体溶液を、機械的エネルギーを利用して油滴分散させて分散液を調製し、得られた分散液に水溶性重合開始剤を添加して、油滴内でラジカル重合させる方法(以下、「ミニエマルジョン法」という)を挙げることができる。なお、水溶性重合開始剤を添加することに代えて、または、当該水溶性重合開始剤を添加するとともに、油溶性の重合開始剤を前記単量体溶液中に添加してもよい。
【0094】
機械的に油滴を形成するミニエマルジョン法によれば、通常の乳化重合法とは異なり、油相に溶解させた離型剤が脱離することがなく、形成される樹脂粒子または被覆層内に十分な量の離型剤を導入することができる。
【0095】
ここに、機械的エネルギーによる油滴分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリンおよび圧力式ホモジナイザーなどを挙げることができる。また、分散粒子径としては、10〜1000nmとされ、好ましくは50〜1000nm、更に好ましくは30〜300nmとされる。
【0096】
尚、離型剤を含有する樹脂粒子または被覆層を形成するための重合法として、乳化重合法、懸濁重合法、シード重合法などの公知の方法を採用することもできる。また、これらの重合法は、複合樹脂粒子を構成する樹脂粒子(核粒子)または被覆層であって、離型剤及び結晶性ポリエステルを含有しないものを得るためにも採用することができる。
【0097】
この重合工程(I)で得られる複合樹脂粒子の粒子径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定される重量平均粒径で10〜1000nmの範囲にあることが好ましい。
【0098】
また、複合樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は48〜74℃の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは52〜64℃である。複合樹脂粒子の軟化点は95〜140℃の範囲にあることが好ましい。
【0099】
《塩析、凝集、融着する工程(II)》
この塩析、凝集、融着する工程(II)は、多段重合工程(I)によって得られた複合樹脂粒子と、着色剤粒子とを塩析、凝集、融着させる(塩析と融着とを同時に起こさせる)ことによって、不定形(非球形)のトナー粒子を得る工程である。
【0100】
この塩析、凝集、融着する工程(II)においては、複合樹脂粒子および着色剤粒子とともに、荷電制御剤などの内添剤粒子(数平均一次粒子径が10〜1000nm程度の微粒子)を塩析、凝集、融着させてもよい。
【0101】
着色剤粒子は、表面改質されていてもよい。ここに、表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができる。
【0102】
着色剤粒子は、水性媒体中に分散された状態で塩析、凝集、融着処理に供される。着色剤粒子が分散される水性媒体は、臨界ミセル濃度(CMC)以上の濃度で界面活性剤が溶解されている水溶液を挙げることができる。
【0103】
ここに界面活性剤としては、多段重合工程(I)で使用した界面活性剤と同一のものを使用することができる。
【0104】
着色剤粒子の分散処理に使用する分散機は特に限定されないが、好ましくは、高速回転するローターを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)、超音波分散機、機械的ホモジナイザー、マントンゴーリン、圧力式ホモジナイザー等の加圧分散機、ゲッツマンミル、ダイヤモンドファインミル等の媒体型分散機が挙げられる。
【0105】
複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析、凝集、融着させるためには、複合樹脂粒子および着色剤粒子が分散している分散液中に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を添加するとともに、この分散液を、複合樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以上に加熱することが好ましい。
【0106】
更に好ましくは、凝集剤により複合樹脂粒子が所望の粒径に達した段階で凝集停止剤が用いられる。その凝集停止剤としては、1価の金属塩、中でも塩化ナトリウムが好ましく用いられる。
【0107】
塩析、凝集、融着させるために好適な温度範囲としては、(Tg+10)〜(Tg+50℃)とされ、特に好ましくは(Tg+15)〜(Tg+40℃)とされる。また、融着を効果的に行なわせるために、水に無限溶解する有機溶媒を添加してもよい。
【0108】
ここに、塩析、凝集、融着の際に使用する「凝集剤」としては、前述のようなアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩を挙げることができる。
【0109】
本発明に係る塩析、凝集について説明する。
本発明において、「塩析、凝集、融着」するとは、塩析(粒子の凝集)と融着(粒子間の界面消失)とが同時に起こること、または、塩析と融着とを同時に起こさせる行為をいう。
【0110】
塩析と融着とを同時に行わせるためには、複合樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度条件下において粒子(複合樹脂粒子、着色剤粒子)を凝集させることが好ましい。
【0111】
本発明の静電荷像現像用トナーは、着色剤の不存在下において複合樹脂粒子を形成し、当該複合樹脂粒子の分散液に着色剤粒子の分散液を加え、当該複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析、凝集、融着させることにより調製されることが好ましい。
【0112】
このように、複合樹脂粒子の調製を着色剤の存在しない系で行うことにより、複合樹脂粒子を得るための重合反応が阻害されることない。このため、本発明のトナーによれば、優れた耐オフセット性が損なわれることはなく、トナーの蓄積による定着装置の汚染や画像汚れを発生させることはない。
【0113】
また、複合樹脂粒子を得るための重合反応が確実に行われる結果、得られるトナー粒子中に単量体やオリゴマーが残留するようなことはなく、当該トナーを使用する画像形成方法の熱定着工程において、異臭を発生させることはない。
【0114】
さらに、得られるトナー粒子の表面特性は均質であり、帯電量分布もシャープとなるため、鮮鋭性に優れた画像を長期にわたり形成することができる。このようなトナー粒子間における組成・分子量・表面特性が均質であるトナーによれば、接触加熱方式による定着工程を含む画像形成方法において、画像支持体に対する良好な接着性(高い定着強度)を維持しながら、耐オフセット性および巻き付き防止特性の向上を図ることができ、適度の光沢を有する画像を得ることができる。
【0115】
本発明のトナーに用いられる離型剤について説明する。
本発明の静電荷像現像用トナーを構成する離型剤の含有割合としては、通常1〜30質量%とされ、好ましくは2〜20質量%、更に好ましくは3〜15質量%とされる。
【0116】
離型剤は低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=1500〜9000)や低分子量ポリエチレン等を添加してもよく、好ましい離型剤は下記一般式で表されるエステル系化合物が好ましい。
【0117】
一般式
1−(OCO−R2n
式中、nは1〜4の整数を表し、好ましくは2〜4、更に好ましくは3〜4であり、特に好ましくは4である。
【0118】
1、R2は置換基を有しても良い炭化水素基を示す。
1:炭素数=1〜40、好ましくは1〜20、更に好ましくは2〜5
2:炭素数=1〜40、好ましくは16〜30、更に好ましくは18〜26以下に、上記一般式で表されるエステル化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0119】
【化3】
Figure 0004158506
【0120】
【化4】
Figure 0004158506
【0121】
上記記載の離型剤、一般式で表される定着改良剤の添加量としては、静電荷像現像用トナー全体に1質量%〜30質量%、好ましくは2質量%〜20質量%、さらに好ましくは3質量%〜15質量%である。
【0122】
本発明の静電荷像現像用トナーを構成する樹脂成分の好ましい分子量、分子量範囲、ピーク分子量等について説明する。
【0123】
本発明のトナーは、ピークまたはショルダーが100,000〜1,000,000、および1,000〜50,000に存在することが好ましく、さらにピークまたはショルダーが100,000〜1,000,000と、25,000〜150,000と、1,000〜50,000の範囲に存在することがさらに好ましい。
【0124】
トナーの樹脂の分子量は、100,000〜1,000,000の領域にピークもしくは肩(ショルダー)を有する高分子量成分と、1,000〜50,000未満の領域にピークもしくは肩(ショルダー)を有する低分子量成分の両成分を少なくとも含有する樹脂が好ましい。さらに好ましくは、ピーク分子量で15,000〜100,000の部分にピークまたは肩を有する中間分子量体の樹脂を使用することである。
【0125】
上記の分子量の測定は、THF(テトラヒドロフラン)をカラム溶媒として用いるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて分子量測定を行う。
【0126】
具体的には、測定試料を1mgに対してTHFを1ml加え、室温下にてマグネチックスターラーを用いて撹拌を行い、充分に溶解させる。ついで、ポアサイズ0.45〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後に、GPCへ注入する。GPCの測定条件は、40℃にてカラムを安定化させ、THFを毎分1mlの流速で流し、1mg/mlの濃度の試料を約100μl注入して測定する。カラムとしては、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組合せや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、TSK guard columnの組合せなどをあげることができる。
【0127】
検出器としては、屈折率検出器(IR検出器)、あるいはUV検出器が好ましく用いられる。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いることが好ましい。
【0128】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造に係る、濾過・洗浄工程について説明する。
【0129】
この濾過・洗浄工程では、上記の工程で得られたトナー粒子の分散系からトナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や凝集剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。
【0130】
ここに、濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
【0131】
《乾燥工程》
この工程は、洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する工程である。
【0132】
この工程で使用される乾燥機としては、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができ、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0133】
乾燥処理されたトナー粒子の水分は、5質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは2質量%以下とされる。
【0134】
尚、乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
【0135】
本発明に係る重合性単量体について説明する。
(1)疎水性単量体
単量体成分を構成する疎水性単量体としては、特に限定されるものではなく従来公知の単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
【0136】
具体的には、モノビニル芳香族系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等を用いることができる。
【0137】
ビニル芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体およびその誘導体が挙げられる。
【0138】
アクリル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0139】
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
【0140】
ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0141】
モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
【0142】
ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0143】
(2)架橋性単量体
樹脂粒子の特性を改良するために架橋性単量体を添加しても良い。架橋性単量体としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
【0144】
(3)酸性極性基を有する単量体
酸性極性基を有する単量体としては、(a)カルボキシル基(−COOH)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物及び(b)スルホン基(−SO3H)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。
【0145】
(a)の−COO基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステル、およびこれらのNa、Zn等の金属塩類等を挙げることができる。
【0146】
(b)スルホ基(−SO3H基)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としてはスルホン化スチレン、そのNa塩、アリルスルホコハク酸、アリルスルホコハク酸オクチル、そのNa塩等を挙げることができる。
【0147】
本発明に係る重合性単量体の重合に用いられる開始剤(重合開始剤ともいう)について説明する。
【0148】
本発明に用いられる重合開始剤は水溶性であれば適宜使用が可能である。例えば過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、過酸化水素、ベンゾイルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物等が挙げられる。
【0149】
更に上記重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合わせレドックス系開始剤とする事が可能である。レドックス系開始剤を用いる事で、重合活性が上昇し重合温度の低下が図れ、更に重合時間の短縮が期待できる。
【0150】
重合温度は、重合開始剤の最低ラジカル生成温度以上であればどの温度を選択しても良いが、例えば50℃から80℃の範囲が用いられる。又、常温開始の重合開始剤、例えば過酸化水素−還元剤(アスコルビン酸等)の組み合わせを用いる事で室温またはそれに近い温度で重合する事も可能である。
【0151】
本発明に用いられる連鎖移動剤について説明する。
本発明においては、重合性単量体が重合して生成する樹脂粒子の分子量を調整することを目的として、従来公知の一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることが可能である。
【0152】
連鎖移動剤としては、特に限定されないが、特に、メルカプト基を有する化合物は分子量分布がシャープであるトナーが得られ、保存性、定着強度、耐オフセット性に優れるために好ましく用いられる。例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプト基を有する化合物が用いられる。
【0153】
また、好ましいものとしては、例えば、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸プロピル、チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸t−ブチル、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸オクチル、チオグリコール酸デシル、チオグリコール酸ドデシル、エチレングリコールのチオグリコール酸エステル、ネオペンチルグリコールのチオグリコール酸エステル、ペンタエリスリトールのチオグリコール酸エステル等を挙げることが出来る。
【0154】
中でも、トナー加熱定着時の臭気を抑制する観点から、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステルが好ましく用いられる。
【0155】
本発明に係る着色剤について説明する。
本発明の静電荷像現像用トナーに係る着色剤は、トナーの帯電の均一性向上の観点から、トナー製造時、上記記載の複合樹脂粒子の塩析、凝集、融着時に樹脂粒子と共に塩析、凝集、融着され、トナー粒子中に含有されることが好ましい。
【0156】
本発明のトナーを構成する着色剤(複合樹脂粒子との塩析、凝集、融着に供される着色剤粒子)としては、各種の無機顔料、有機顔料、染料を挙げることができる。無機顔料としては、従来公知のものを用いることができる。具体的な無機顔料を以下に例示する。
【0157】
黒色の顔料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0158】
これらの無機顔料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0159】
磁性トナーとして使用する際には、前述のマグネタイトを添加することができる。この場合には所定の磁気特性を付与する観点から、トナー中に20〜120質量%添加することが好ましい。
【0160】
有機顔料及び染料としても従来公知のものを用いることができる。具体的な有機顔料及び染料を以下に例示する。
【0161】
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
【0162】
オレンジまたはイエロー用の顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156等が挙げられる。
【0163】
グリーンまたはシアン用の顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0164】
また、染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いる事ができ、またこれらの混合物も用いる事ができる。
【0165】
これらの有機顔料及び染料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量は重合体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0166】
本発明の静電荷像現像用トナーを構成する着色剤(着色剤粒子)は、表面改質されていてもよい。ここに、表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を好ましく用いることができる。
【0167】
シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のアルコキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等のシロキサン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0168】
チタンカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクト」と称する商品名で市販されているTTS、9S、38S、41B、46B、55、138S、238S等、日本曹達社製の市販品A−1、B−1、TOT、TST、TAA、TAT、TLA、TOG、TBSTA、A−10、TBT、B−2、B−4、B−7、B−10、TBSTA−400、TTS、TOA−30、TSDMA、TTAB、TTOP等が挙げられる。
【0169】
アルミニウムカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクトAL−M」等が挙げられる。
【0170】
これらの表面改質剤の添加量は、着色剤に対して0.01〜20質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜5質量%とされる。
【0171】
着色剤粒子の表面改質法としては、着色剤粒子の分散液中に表面改質剤を添加し、この系を加熱して反応させる方法を挙げることができる。
【0172】
表面改質された着色剤粒子は、濾過により採取され、同一の溶媒による洗浄処理と濾過処理が繰り返された後、乾燥処理される。
【0173】
本発明のトナーを構成するトナー粒子には、荷電制御剤など、離型剤以外の内添剤が含有されていてもよい。
【0174】
トナー粒子中に含有される荷電制御剤としては、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩またはその金属錯体等が挙げられる。
【0175】
本発明のトナーに用いられる外添剤について説明する。
外添剤として使用できる無機微粒子としては、従来公知のものを挙げることができる。具体的には、シリカ微粒子、チタン微粒子、アルミナ微粒子等を好ましく用いることができる。これら無機微粒子は疎水性であることが好ましい。
【0176】
シリカ微粒子の具体例としては、日本アエロジル(株)製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト(株)製のHVK−2150、H−200、キャボット(株)製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
【0177】
チタン微粒子の具体例としては、例えば、日本アエロジル(株)製の市販品T−805、T−604、テイカ(株)製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン(株)製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産(株)製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
【0178】
アルミナ微粒子の具体例としては、例えば、日本アエロジル(株)製の市販品RFY−C、C−604、石原産業(株)製の市販品TTO−55等が挙げられる。
【0179】
外添剤として使用できる有機微粒子としては、数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の微粒子を挙げることができる。かかる有機微粒子の構成材料としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体などのを挙げることができる。
【0180】
外添剤として使用できる滑剤としては、高級脂肪酸の金属塩を挙げることができる。かかる高級脂肪酸の金属塩の具体例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸銅、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩;オレイン酸亜鉛、オレイン酸マンガン、オレイン酸鉄、オレイン酸銅、オレイン酸マグネシウム等のオレイン酸金属塩;パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム等のパルミチン酸金属塩;リノール酸亜鉛、リノール酸カルシウム等のリノール酸金属塩;リシノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウムなどのリシノール酸金属塩等が挙げられる。
【0181】
外添剤の添加量としては、トナーに対して0.1〜5質量%程度であることが好ましい。
【0182】
外添剤の添加工程に着いて説明する。
この工程は、乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程である。
【0183】
外添剤を添加するために使用される装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシエルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を挙げることができる。
【0184】
本発明の静電荷像現像用トナーの粒径について説明する。
本発明のトナーの粒径は、個数平均粒径で3〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは3〜8μmとされる。この粒径は、後に詳述するトナーの製造方法において、凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成によって制御することができる。
【0185】
個数平均粒径が3〜10μmであることにより、定着工程において、飛翔して加熱部材に付着しオフセットを発生させる付着力の大きいトナー微粒子が少なくなり、また、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
【0186】
トナーの個数平均粒径は、コールターカウンターTA−II、コールターマルチサイザー、SLAD1100(島津製作所社製レーザー回折式粒径測定装置)等を用いて測定することができる。
【0187】
本発明においては、コールターマルチサイザーを用い、粒度分布を出力するインターフェース(日科機製)、パーソナルコンピューターを接続して使用した。前記コールターマルチサイザーにおけるアパーチャーとしては100μmのものを用いて、2μm以上(例えば2〜40μm)のトナーの体積分布を測定して粒度分布および平均粒径を算出した。
【0188】
本発明のトナー粒子の形状係数について説明する。
本発明のトナーの形状係数は、下記式により示されるものであり、トナー粒子の丸さの度合いを示す。
【0189】
形状係数=((最大径/2)2×π)/投影面積
ここに、最大径とは、トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。また、投影面積とは、トナー粒子の平面上への投影像の面積をいう。
【0190】
本発明では、この形状係数は、走査型電子顕微鏡により2000倍にトナー粒子を拡大した写真を撮影し、ついでこの写真に基づいて「SCANNING IMAGE ANALYZER」(日本電子社製)を使用して写真画像の解析を行うことにより測定した。この際、100個のトナー粒子を使用して本発明の形状係数を上記算出式にて測定したものである。
【0191】
前記構成の(1)および(9)においては、この形状係数が1.0〜1.6の範囲にあるトナー粒子が65個数%以上とすることが好ましく、より好ましくは、70個数%以上である。さらに好ましくは、この形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子が65個数%以上とすることであり、より好ましくは、70個数%以上である。
【0192】
この形状係数が1.0〜1.6の範囲にあるトナー粒子が65個数%以上であることにより、現像剤搬送部材などでの摩擦帯電性がより均一となり、過度に帯電したトナーの蓄積が無く、現像剤搬送部材表面よりトナーがより交換しやすくなるために、現像ゴースト等の問題も発生しにくくなる。さらに、トナー粒子が破砕しにくくなって帯電付与部材の汚染が減少し、トナーの帯電性が安定する。
【0193】
また、前記構成の(16)においては、この形状係数が1.2〜1.6の範囲にあるトナー粒子が65個数%以上とすることが必要であり、好ましくは、70個数%以上である。
【0194】
この形状係数を制御する方法は特に限定されるものではない。例えばトナー粒子を熱気流中に噴霧する方法、またはトナー粒子を気相中において衝撃力による機械的エネルギーを繰り返して付与する方法、あるいはトナーを溶解しない溶媒中に添加し旋回流を付与する方法等により、形状係数を1.0〜1.6、または1.2〜1.6にしたトナーを調製し、これを通常のトナー中へ本発明の範囲内になるように添加して調整する方法がある。また、いわゆる重合法トナーを調整する段階で全体の形状を制御し、形状係数を1.0〜1.6、または1.2〜1.6に調整したトナーを同様に通常のトナーへ添加して調整する方法がある。
【0195】
本発明のトナーとしては、トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおいて、最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上であるトナーであることが好ましい。
【0196】
相対度数(m1)と相対度数(m2)との和(M)が70%以上であることにより、トナー粒子の粒度分布の分散が狭くなるので、当該トナーを画像形成工程に用いることにより選択現像の発生を確実に抑制することができる。
【0197】
本発明において、前記の個数基準の粒度分布を示すヒストグラムは、自然対数lnD(D:個々のトナー粒子の粒径)を0.23間隔で複数の階級(0〜0.23:0.23〜0.46:0.46〜0.69:0.69〜0.92:0.92〜1.15:1.15〜1.38:1.38〜1.61:1.61〜1.84:1.84〜2.07:2.07〜2.30:2.30〜2.53:2.53〜2.76・・・)に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムであり、このヒストグラムは、下記の条件に従って、コールターマルチサイザーにより測定されたサンプルの粒径データを、I/Oユニットを介してコンピュータに転送し、当該コンピュータにおいて、粒度分布分析プログラムにより作成されたものである。
【0198】
《測定条件》
(1)アパーチャー:100μm
(2)サンプル調製法:電解液〔ISOTON R−11(コールターサイエンティフィックジャパン社製)〕50〜100mlに界面活性剤(中性洗剤)を適量加えて攪拌し、これに測定試料10〜20mgを加える。この系を超音波分散機にて1分間分散処理することにより調製する。
【0199】
本発明に係る『角のないトナー粒子』について図1を用いて説明する。
本発明に係るトナーにおいては、トナーを構成するトナー粒子中、角がないトナー粒子の割合は50個数%以上であることが好ましく、更に好ましくは、70個数%以上である。
【0200】
角がないトナー粒子の割合が50個数%以上であることにより、転写されたトナー層(粉体層)の空隙が減少して定着性が向上し、オフセットが発生しにくくなる。また、摩耗、破断しやすいトナー粒子および電荷の集中する部分を有するトナー粒子が減少することとなり、帯電量分布がシャープとなって、帯電性も安定し、良好な画質を長期にわたって形成できる。
【0201】
ここに、「角がないトナー粒子」とは、電荷の集中するような突部またはストレスにより摩耗しやすいような突部を実質的に有しないトナー粒子を言い、具体的には以下のトナー粒子を角がないトナー粒子という。すなわち、図1(a)に示すように、トナー粒子Tの長径をLとするときに、半径(L/10)の円Cで、トナー粒子Tの周囲線に対し1点で内側に接しつつ内側をころがした場合に、当該円CがトナーTの外側に実質的にはみださない場合を「角がないトナー粒子」という。「実質的にはみ出さない場合」とは、はみ出す円が存在する突起が1箇所以下である場合をいう。また、「トナー粒子の長径」とは、当該トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。なお、図1(b)および(c)は、それぞれ角のあるトナー粒子の投影像を示している。
【0202】
角がないトナー粒子の割合の測定は次のようにして行った。先ず、走査型電子顕微鏡によりトナー粒子を拡大した写真を撮影し、さらに拡大して15,000倍の写真像を得る。次いでこの写真像について前記の角の有無を測定する。この測定を100個のトナー粒子について行った。
【0203】
角がないトナーを得る方法は特に限定されるものではない。例えば、形状係数を制御する方法として前述したように、トナー粒子を熱気流中に噴霧する方法、またはトナー粒子を気相中において衝撃力による機械的エネルギーを繰り返して付与する方法、あるいはトナーを溶解しない溶媒中に添加し、旋回流を付与することによって得ることができる。
【0204】
本発明に用いられる現像剤について説明する。
本発明のトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよい。
【0205】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものがあげられ、いずれも使用することができる。
【0206】
また、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0207】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0208】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0209】
本発明の画像形成方法について説明する。
本発明のトナーは、トナー像が形成された画像形成支持体を、定着装置を構成する加熱ローラーと加圧ローラーとの間に通過させて定着する工程を含む画像形成方法(本発明の画像形成方法)に好適に使用される。
【0210】
図2は、本発明の画像形成方法において使用する定着装置の一例を示す断面図であり、図2に示す定着装置は、加熱ローラー10と、これに当接する加圧ローラー20とを備えている。なお、図2において、Tは転写紙(画像形成支持体)上に形成されたトナー像である。
【0211】
加熱ローラー10は、フッ素樹脂または弾性体からなる被覆層12が芯金11の表面に形成されてなり、線状ヒーターよりなる加熱部材13を内包している。
【0212】
芯金11は、金属から構成され、その内径は10〜70mmとされる。芯金11を構成する金属としては特に限定されるものではないが、例えば鉄、アルミニウム、銅等の金属あるいはこれらの合金を挙げることができる。
【0213】
芯金11の肉厚は0.1〜15mmとされ、省エネルギーの要請(薄肉化)と、強度(構成材料に依存)とのバランスを考慮して決定される。例えば、0.57mmの鉄よりなる芯金と同等の強度を、アルミニウムよりなる芯金で保持するためには、その肉厚を0.8mmとする必要がある。
【0214】
被覆層12を構成するフッ素樹脂としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)およびPFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などを例示することができる。
【0215】
フッ素樹脂からなる被覆層12の厚みは10〜500μmとされ、好ましくは20〜400μmとされる。
【0216】
フッ素樹脂からなる被覆層12の厚みが10μm未満であると、被覆層としての機能を十分に発揮することができず、定着装置としての耐久性を確保することができない。一方、500μmを超える被覆層の表面には紙粉によるキズがつきやすく、当該キズ部にトナーなどが付着し、これに起因する画像汚れを発生する問題がある。
【0217】
また、被覆層12を構成する弾性体としては、LTV、RTV、HTVなどの耐熱性の良好なシリコーンゴムおよびシリコーンスポンジゴムなどを用いることが好ましい。
【0218】
被覆層12を構成する弾性体のアスカーC硬度は、80°未満とされ、好ましくは60°未満とされる。
【0219】
また、弾性体からなる被覆層12の厚みは0.1〜30mmとされ、好ましくは0.1〜20mmとされる。
【0220】
被覆層12を構成する弾性体のアスカーC硬度が80°を超える場合、および当該被覆層12の厚みが0.1mm未満である場合には、定着のニップを大きくすることができず、ソフト定着の効果(例えば、平滑化された界面のトナー層による色再現性の向上効果)を発揮することができない。
【0221】
加熱部材13としては、ハロゲンヒーターを好適に使用することができる。
加圧ローラー20は、弾性体からなる被覆層22が芯金21の表面に形成されてなる。被覆層22を構成する弾性体としては特に限定されるものではなく、ウレタンゴム、シリコーンゴムなどの各種軟質ゴムおよびスポンジゴムを挙げることができ、被覆層12を構成するものとして例示したシリコーンゴムおよびシリコーンスポンジゴムを用いることが好ましい。
【0222】
被覆層22を構成する弾性体のアスカーC硬度は、80°未満とされ、好ましくは70°未満、更に好ましくは60°未満とされる。
【0223】
また、被覆層22の厚みは0.1〜30mmとされ、好ましくは0.1〜20mmとされる。
【0224】
被覆層22を構成する弾性体のアスカーC硬度が80°を超える場合、および被覆層22の厚みが0.1mm未満である場合には、定着のニップを大きくすることができず、ソフト定着の効果を発揮することができない。
【0225】
芯金21を構成する材料としては特に限定されるものではないが、アルミニウム、鉄、銅などの金属またはそれらの合金を挙げることができる。
【0226】
加熱ローラー10と加圧ローラー20との当接荷重(総荷重)としては、通常40〜350Nとされ、好ましくは50〜300N、さらに好ましくは50〜250Nとされる。この当接荷重は、加熱ローラー10の強度(芯金11の肉厚)を考慮して規定され、例えば0.3mmの鉄よりなる芯金を有する加熱ローラーにあっては、250N以下とすることが好ましい。
【0227】
また、耐オフセット性および定着性の観点から、ニップ幅としては4〜10mmであることが好ましく、当該ニップの面圧は0.6×105Pa〜1.5×105Paであることが好ましい。
【0228】
図2に示した定着装置による定着条件の一例を示せば、定着温度(加熱ローラー10の表面温度)が150〜210℃とされ、定着線速が80〜640mm/secとされる。
【0229】
本発明において使用する定着装置には、必要に応じてクリーニング機構を付与してもよい。この場合には、シリコーンオイルを定着部の上ローラー(加熱ローラー)に供給する方式として、シリコーンオイルを含浸したパッド、ローラー、ウェッブ等で供給し、クリーニングする方法が使用できる。
【0230】
シリコーンオイルとしては耐熱性の高いものが使用され、ポリジメチルシリコーン、ポリフェニルメチルシリコーン、ポリジフェニルシリコーン等が使用される。粘度の低いものは使用時に流出量が大きくなることから、20℃における粘度が1〜100Pa・sのものが好適に使用される。
【0231】
但し、本発明による効果は、シリコーンオイルを供給しない、または、シリコーンオイルの供給量がきわめて低い定着装置により、画像を形成する工程を含む場合に特に顕著に発揮される。従って、シリコーンオイルを供給する場合であっても、その供給量は2mg/A4以下とすることが好ましい。
【0232】
シリコーンオイルの供給量を2mg/A4以下とすることにより、定着後の転写紙(画像支持体)に対するシリコーンオイルの付着量が少なくなり、転写紙へ付着したシリコーンオイルによるボールペン等の油性ペンの記入しずらさがなく、加筆性が損なわれることはない。
【0233】
また、シリコーンオイルの変質による耐オフセット性の経時的な低下、シリコーンオイルによる光学系や帯電極の汚染などの問題を回避することができる。
【0234】
ここに、シリコーンオイルの供給量は、所定温度に加熱した定着装置(ローラー間)に転写紙(A4サイズの白紙)を連続して100枚通過させ、通紙前後における定着装置の質量変化(Δw)を測定して算出される(Δw/100)。
【0235】
【実施例】
以下、実施例にて本発明を詳細に説明するが本発明はこれらに限定されない。
【0236】
実施例1
下記のようにして、ラテックス1HML、ラテックス2L(シェリング用)、着色剤分散液を調製し、それらを用いて着色粒子1を作製した。
【0237】
《ラテックスの調製》
(ラテックス1HMLの調製)
(1)ラテックス(1H)の調製(第一段重合:核粒子の調製)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5000mlのセパラブルフラスコに、一般式(1)の化合物(5)を4.0g、イオン交換水3000gに溶解させた界面活性剤溶液(水系媒体)を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
【0238】
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)10gをイオン交換水400gに溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、スチレン560g、n−ブチルアクリレート200g、メタクリル酸40gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、攪拌することにより重合(第一段重合)を行い、ラテックス(高分子量樹脂からなる樹脂粒子の分散液)を調製した。これを「ラテックス(1H)」とする。
【0239】
(2)ラテックス(1HM)の調製(第二段重合:中間層の形成)
攪拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン95g、n−ブチルアクリレート36g、メタクリル酸9g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル0.59gからなる単量体混合液に、結晶性物質として、上記式19)で表される化合物(以下、「例示化合物(19)」という。)77gを添加し、90℃に加温し溶解させて単量体溶液を調製した。
【0240】
一方、一般式(1)の化合物(5)を1.0g、イオン交換水1560mlに溶解させた界面活性剤溶液を98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、核粒子の分散液である前記ラテックス(1H)を固形分換算で28g添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により、前記例示化合物(19)の単量体溶液を8時間混合分散させ、分散粒子径(284nm)を有する乳化粒子(油滴)を含む分散液(乳化液)を調製した。
【0241】
次いで、この分散液(乳化液)に、重合開始剤(KPS)5gをイオン交換水200mlに溶解させた開始剤溶液とを添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第二段重合)を行い、ラテックス(高分子量樹脂からなる樹脂粒子の表面が中間分子量樹脂により被覆された構造の複合樹脂粒子の分散液)を得た。これを「ラテックス(1HM)」とする。
【0242】
前記ラテックス(1HM)を乾燥し、走査型電子顕微鏡で観察したところ、ラテックスに取り囲まれなかった例示化合物(19)を主成分とする粒子(400〜1000nm)が観察された。
【0243】
(3)ラテックス1HMLの調製(第三段重合:外層の形成)
上記の様にして得られたラテックス(1HM)に、重合開始剤(KPS)6.8gをイオン交換水265mlに溶解させた開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下に、スチレン249g、n−ブチルアクリレート88.2g、メタクリル酸24.3g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル7.45gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱攪拌することにより重合(第三段重合)を行った後、28℃まで冷却しラテックス(高分子量樹脂からなる中心部と、中間分子量樹脂からなる中間層と、低分子量樹脂からなる外層とを有し、前記中間層に例示化合物(19)が含有されている複合樹脂粒子の分散液)を得た。このラテックスを「ラテックス1HML」とする。
【0244】
このラテックス1HMLを構成する複合樹脂粒子は、138,000、80,000および13,000にピーク分子量を有するものであり、また、この複合樹脂粒子の重量平均粒径は122nmであった。
【0245】
(ラテックス2Lの調製:シェリング用)
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5000mlのセパラブルフラスコに、一般式(1)の化合物(5)を4.0g、イオン交換水3000gに溶解させた界面活性剤溶液(水系媒体)を仕込み、窒素気流下230rpmの攪拌速度で攪拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
【0246】
この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)10gをイオン交換水400gに溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、スチレン560g、n−ブチルアクリレート200g、メタクリル酸40g、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル25gからなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、攪拌することにより重合を行った。これを「ラテックス2L」とする。
【0247】
《着色剤の分散》
一般式(1)の化合物(5)を97g、イオン交換水1600mlに攪拌溶解した。この溶液を攪拌しながら、C.I.ピグメントレッド122、420.0gを徐々に添加し、次いで、攪拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて分散処理することにより、着色剤粒子の分散液(以下、「着色剤分散液1」という。)を調製した。この着色剤分散液1における着色剤粒子の粒子径を、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、110nmであった。
【0248】
《着色粒子1の作製》
(ラテックス1HMLの複合樹脂粒子と着色剤粒子の凝集・融着、会合)
ラテックス1HML420.7g(固形分換算)と、イオン交換水900gと「着色剤分散液1」200gとを、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、攪拌装置を取り付けた反応容器(四つ口フラスコ)に入れ攪拌した。容器内の温度を30℃に調整した後、この溶液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8〜11.0に調整した。
【0249】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物12.1gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を、攪拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて90℃まで昇温した。その状態で、「コールターカウンターTA−II」にて会合粒子の粒径を測定し、個数平均粒径が4〜7μmになった時点で、塩化ナトリウム40.2gをイオン交換水1000mlに溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させ、さらに、熟成処理として液温度98℃にて6時間にわたり加熱攪拌することにより融着を継続させた。
【0250】
(シェリング操作)
上記記載の、凝集・融着、会合処理後、更に、ラテックス2L(樹脂粒子の分散液)96gを添加し、3時間にわたり加熱攪拌を継続し、ラテックス(1HML)の凝集粒子表面にラテックス2Lを融着させた。ここで、塩化ナトリウム40.2gを加え、8℃/分の条件で30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを2.0に調整し、攪拌を停止した。生成した塩析、凝集、融着粒子を濾過し、着色粒子の固形分量の100倍量にあたる45℃イオン交換水を用いて洗浄し、その後、40℃の温風で乾燥することにより、着色粒子1を得た。
【0251】
《着色粒子2の作製》
着色粒子1の作製において、ラテックス(1H)、ラテックス(1HM)、ラテックス2Lの化合物(5)を化合物(6)に変更する以外は同様にして、着色粒子2を作製した。
【0252】
《着色粒子3の作製》
着色粒子1の作製において、ラテックス(1H)、ラテックス(1HM)、ラテックス2Lの化合物(5)を化合物(7)に変更する以外は同様にして、着色粒子3を作製した。
【0253】
《着色粒子4の作製》
着色粒子1の作製において、ラテックス(1H)、ラテックス(1HM)、ラテックス2Lの化合物(5)を化合物(8)に変更する以外は同様にして、着色粒子4を作製した。
【0254】
《着色粒子5の作製》
着色粒子1の作製において、着色剤分散液1の化合物(5)量を150gに変更する以外は同様にして、着色粒子5を作製した。
【0255】
《着色粒子6の作製》
着色粒子1の作製において、ラテックス(1HM)の化合物(5)量を0.5gにし、洗浄水量を着色粒子の固形分量の500倍量にあたる45℃イオン交換水を用いた以外は同様にして、着色粒子6を作製した。
【0256】
《着色粒子7の作製》
着色粒子1の作製において、凝集・融着工程における塩化マグネシウム・6水和物量を50gに変更する他は同様にして、着色粒子7を作製した。
【0257】
《着色粒子8の作製》
着色粒子1の作製において、凝集・融着工程における塩化マグネシウム・6水和物量を5gに変更する他は同様にして、着色粒子8を作製した。
【0258】
《着色粒子9の作製》
着色粒子1の作製において、凝集・融着工程における塩化マグネシウム・6水和物量を35gに変更する他は同様にして、着色粒子9を作製した。
【0259】
《着色粒子10の作製》
着色粒子1の作製において、凝集・融着工程における塩化マグネシウム・6水和物量を25gに変更する他は同様にして、着色粒子10を作製した。
【0260】
《着色粒子11の作製》:比較用
着色粒子1の作製において、ラテックス(1H)、ラテックス(1HM)、ラテックス2Lの作製に各々用いた化合物(5)を比較化合物1に変更し、着色剤分散液1の化合物(5)を150gの比較化合物1に変え、凝集・融着工程における塩化マグネシウム・6水和物量を20gに変更した以外は同様にして、比較用の着色粒子11を作製した。
【0261】
ここで、比較化合物1は、化合物(5)の主成分を構成する炭素数12の直鎖のアルキル基を有する化合物を有しているが、化合物(5)との違いは、表1に記載のように、炭素数6〜22を有する化合物の割合が異なるトナーが生成することである。
【0262】
《着色粒子12の作製》:比較用
着色粒子1の作製において、ラテックス(1H)、ラテックス(1HM)、ラテックス2Lの作製に各々用いた化合物(5)を比較化合物2に変更し、着色剤分散液1の化合物(5)を150gの比較化合物2に変え、凝集・融着工程における塩化マグネシウム・6水和物量を20g変更した以外は同様にして、比較用の着色粒子12を作製した。
【0263】
ここで、比較化合物2は、化合物(6)の主成分を構成する炭素数12の分岐のアルキル基を有する化合物を有しているが、化合物(6)との違いは、表1に記載のように、炭素数6〜22を有する化合物の割合が異なるトナーが生成することである。
【0264】
《着色粒子13の作製》:比較用
着色粒子1の作製において、ラテックス(1HM)の作製に用いた化合物(5)を5g、着色剤分散液1の作製に用いた化合物(5)の使用量を200gに変更した以外は同様にして、比較用の着色粒子13を作製した。
【0265】
《静電荷像現像用トナー1〜10、比較用トナー1〜3の作製》
上記で作製した、着色粒子1〜10、比較用の着色粒子11〜13に、各々疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm、疎水化度=68)を1質量%及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒子径=20nm、疎水化度=63)添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、静電荷像現像用トナー1〜10、比較用トナー1〜3を各々得た。
【0266】
尚、形状及び粒径等の物性に関しては着色粒子及びトナーのいずれも差異は無い。
【0267】
《現像剤の作製》
静電荷像現像用トナー1〜10、比較用トナー1〜3の各々に対してシリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアを混合し、トナー濃度が6%になるように現像剤を調製した。これらを、現像剤1〜10、比較用現像剤1〜3とする。
【0268】
得られた現像剤の各々について下記のように実写を行い、カブリ、OHP画像の透過性評価を行った。
【0269】
《カブリ評価》
市販のデジタル複写機コニカSitios7075を評価機として使用し、高温高湿環境下(温度33℃、相対湿度80%)において、画像を連続して5000枚印字した後、電源をオフにして72時間放置後に再度印字し、形成画像を逐次観察して、画像汚れ(カブリ)の個数を数え、下記のようにランク評価した。
【0270】
◎:0〜4個未満
○:4個〜10個未満
×:10個以上
本発明においては、画像汚れ(カブリ)の個数が、0〜10個未満であれば、良好(実用可)と判断した。
【0271】
《OHP画像の透過性》
OHP画像の透過性については、透過画像(OHP画像)を作製し、以下に示す方法で評価した。なお、トナー付着量は0.7±0.05(mg/cm2)の範囲で評価した。定着された画像について、日立製作所製「330型自記分光光度計」によりトナーが担持されていないOHPシートをリファレンスとして画像の可視分光透過率を測定し、マゼンタトナーでは650nmと550nmでの分光透過率の差を求め、OHP画像の透過性の尺度とした。この値が70%以上である場合、良好な透過性であると判断し得る。
【0272】
◎:90%以上
○:70〜90%未満
×:70%未満
得られた結果を表1に示す。
【0273】
【表1】
Figure 0004158506
【0274】
表1から、比較と比べて本発明の試料は、低カブリであり、且つ、OHP画像の透過性が良好であることが明らかである。
【0275】
【発明の効果】
本発明により、低カブリであり、且つ、OHP透過性の良好な静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法及び画像形成方法を提供することが出来た。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、角のないトナー粒子の投影像を示す説明図であり、(b)および(c)は、それぞれ角のあるトナー粒子の投影像を示す説明図である。
【図2】本発明において使用する定着装置の一例を示す断面図を表す。
【符号の説明】
8 記録材
10 加熱ローラ
11 芯金
12 被覆層
13 加熱部材
20 加圧ロール
21 芯金
22 被覆層
T 記録材上に形成されたトナー像

Claims (5)

  1. 水系媒体中で樹脂粒子と着色剤粒子とを融着させる工程を経て製造された静電荷像現像用トナーにおいて
    記一般式(1)で表される化合物を含み、且つ、該化合物の含有量が、1ppm〜1000ppmであることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
    Figure 0004158506
    〔式中、R1は脂肪族炭化水素基を表すが、該一般式(1)で表される全化合物中、50質量%〜90質量%を占める化合物の前記R1の炭素数は6〜22の範囲である。R2は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環オキシ基または複素環基を表す。mは1〜5の整数、nは0〜4の整数を表す。Mは一価の金属元素、2価の金属元素またはアンモニウムイオンを表す。〕
  2. 多価の金属元素を250ppm〜20000ppm含有することを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
  3. 請求項1または2に記載の静電荷像現像用トナーを製造するに当たり、重合性単量体を水系媒体中で重合して樹脂を製造する工程を有することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
  4. 請求項1または2に記載の静電荷像現像用トナーを製造するに当たり、トナー粒子が、樹脂粒子を水系媒体中で凝集、融着させる工程を経て製造されることを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
  5. 静電荷像担持体上に静電荷像を形成する工程、静電荷像現像用トナーを含む現像剤で該静電荷像を現像してトナー画像を形成する工程、及びトナー画像を転写体上に転写する工程を含む画像形成方法において、該静電荷像現像用トナーとして請求項1または2に記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
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