JP4148824B2 - 軽量盛土の施工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、軽量盛土として、発泡ポリスチレンブロックと硬質ポリウレタンフォームとを併用した軽量盛土工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
軟弱地盤や地滑り地などでの盛土工法の一つとして、例えば、軽量盛土材として発泡ポリスチレンブロックを多段に積み上げていく軽量盛土工法が知られている。この工法は、地盤改良にかかる経費の節減、工期の短縮などにおいて優れた効果を発揮するものである。
【0003】
また、別の盛土工法としては、軽量盛土材として硬質ポリウレタンフォームを発泡充填していく軽量盛土工法が知られている。この工法は、軟弱地盤や地滑り地の形状に関係なく施工でき、更に、地山や地盤、そして壁体との密着性に優れているため、軽量盛土の滑動が生じないだけの安全性を確保できるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記発泡ポリスチレンブロックを多段に積み上げていく軽量盛土工法は、例えば地震が発生した時に発泡ポリスチレンブロックが地山や地盤から剥離する、つまり滑動や転倒が生じる可能性があり、所要の安全性を確保することが難しいという問題がある。また、上記硬質ポリウレタンフォームを発泡充填していく軽量盛土工法は、硬質ポリウレタンフォーム自体の材料費が高く、施工コストが大きくなってしまう問題がある。
そこで、所要の安全性を確保できるとともに、施工コストを低減するために、発泡ポリスチレンブロックと硬質ポリウレタンフォームとを併用するものが提案されてきている。しかし、発泡ポリスチレンブロックと硬質ポリウレタンフォームとを併用すると、硬質ポリウレタンフォームを発泡充填した際に発生する反応熱がフォーム内部に蓄熱され、その熱により発泡ポリスチレンブロックが変形してしまう問題がある。
【0005】
この発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、発泡ポリスチレンブロックと硬質ポリウレタンフォームとを併用した場合に、上記問題を解決するとともに、所要の安全性を確保でき、施工コストを低減することができる軽量盛土の施工方法を提供するものである。
【0006】
【特許文献】
特開平5−148839号公報
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記従来技術が有する課題を解決するため、本発明の請求項1記載の軽量盛土の施工方法は、壁体と地山、又は対向する壁体との間に軽量盛土を構築する方法であって、発泡ポリスチレンブロックを設置した後、その設置された発泡ポリスチレンブロックに硬質ポリウレタンフォームを線状或いは点状に吹き付け、その吹き付けた硬質ポリウレタンフォームに仕切部材を貼着させて空間を形成し、仕切部材と地山又は壁体との間に硬質ポリウレタンフォームを発泡充填したことを特徴とする軽量盛土の施工方法である。この軽量盛土の施工方法によれば、発泡ポリスチレンブロックと硬質ポリウレタンフォームとの間に、仕切部材と空間とを有するため、仕切部材と地山或いは壁体との間に硬質ポリウレタンフォームを発泡充填し、その際に発生する反応熱を、発泡ポリスチレンブロックに伝えにくくでき、発泡ポリスチレンブロックの変形を防ぐことができる。さらに、壁体や地山、そして地盤に対する密着性が優れているため、所要の安全性を確保できるとともに、施工コストを低減することができる。
【0008】
また、本発明の軽量盛土の施工方法における空間は、設置された発泡ポリスチレンブロックに硬質ポリウレタンフォームを線状或いは点状に吹き付け、その吹き付けた硬質ポリウレタンフォームに仕切部材を貼着させ形成したものであり、発泡ポリスチレンブロックと仕切部材とが一体化されるため、より一層軽量盛土としての安全性が確保できるものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の軽量盛土の施工方法の一実施の形態について図面に基づき詳細に説明する。尚、図1〜図6は、この発明の軽量盛土の施工方法の一実施の形態にかかり、図1は、壁体10を立設させた状態を示す説明図、図2は、発泡ポリスチレンブロック30を設置した状態を示す説明図、図3は、空間50を形成する方法を示す説明図、図4は、空間50を形成すると共に仕切部材40を設置した状態を示す説明図、図5は、仕切部材40と地山11との間に硬質ポリウレタンフォーム20を発泡充填させた状態を示す説明図、図6は、最終工程の状態を示す説明図である。
【0010】
本発明の軽量盛土の施工方法は、例えば地山の谷側に道路を拡幅する場合、図1に示すように、地山11の法面(傾斜面)とこれに続く軽量盛土を構築する地盤を掘削するなどで基礎工事を行い、拡幅すべき道路の幅に応じて、軽量盛土の壁面を形成する壁体10を立設させる。
【0011】
本発明の壁体は拡幅すべき道路に必要な高さに構築され、例えば、支柱としてH型鋼、C型鋼、L型鋼等の鋼材を用い、これら支柱の外側に壁材としてPC板や軽量押出成形セメント板等を取り付けて構築され、従来の重量構造物に対する大掛かりな基礎とこれに立設される強固な壁体に比べ、簡易で軽量な壁体となっている。
【0012】
次に、図2で示すように壁体10側に、発泡ポリスチレンブロック30を設置し、その後、図3で示すように発泡ポリスチレンブロック30に硬質ポリウレタンフォームを線状或いは点状、若しくは線状と点状とを組み合わせて吹き付け、その吹き付けた硬質ポリウレタンフォーム21に仕切部材40を貼着させ、空間50を形成する。次に、仕切部材40と地山11との間に硬質ポリウレタンフォーム20を発泡充填する。そして、この上に同様の工程を繰り返し、最終的に図6に示すように、所定高さの軽量盛土を形成する。
【0013】
本発明の発泡ポリスチレンブロックは、壁体側や地山側の一方に寄せて、或いは略中央に設置される。設置される発泡ポリスチレンブロックの量は、本発明の軽量盛土としての安全性を確保できる量であれば、硬質ポリウレタンフォームを発泡充填する量より多くてもよい。また、発泡ポリスチレンブロックは、所定の位置に単独或いは2個以上からなるブロックで積み上げる。そして、ブロックを積み上げる際、通常、ブロックとブロックとの側面は、密着性をよくするために接しているものであるが、例えば積み上げ最中に雨が降り、その雨による水が積み上げた発泡ポリスチレンブロック中に侵入してきた場合、所定の位置に設置されているブッロクがずれてしまう虞があるため、ブロックとブロックとの側面同士に排水するためのすき間を設けながらブロックを積み上げてもよい。
【0014】
本発明の空間は、仕切部材と地山或いは壁体との間に硬質ポリウレタンフォームを発泡充填し、その際に発生する反応熱を、対流効果ないし煙突効果により放散させ、発泡ポリスチレンブロックの変形を防ぐことができる間隔を有するものであればよい。
【0015】
本発明の空間を形成する方法として、例えば、図3で示すように、発泡ポリスチレンブロック30を設置した後、発泡ポリスチレンブロック30に硬質ポリウレタンフォームを線状に吹き付け、その吹き付けた硬質ポリウレタンフォームに仕切部材40を貼着させることにより形成される。ここで、線状或いは点状、若しくは線状と点状とを組み合わせて吹き付ける量とは、発泡ポリスチレンブロックが変形しない量であればよい。
【0016】
本発明の空間50aの幅としては、特に限定されるものではないが、通常、10〜500mmであり、好ましくは20〜100mmである。空間50aの幅が10mm以下であると、仕切部材と地山(或いは壁体)との間に発泡充填する硬質ポリウレタンフォーム20の反応熱が、発泡ポリスチレンブロックに伝わり易く、発泡ポリスチレンブロックが変形してしまう場合がある。また、空間50aの幅が500mmより大きいと、軽量盛土としての安全性を確保することが難しく、また、その空間50に硬質ポリウレタンフォームを発泡充填すると、その発泡充填した硬質ポリウレタンフォーム自体の反応熱によって、発泡ポリスチレンブロックの変形や倒れが生じる場合がある。
【0017】
本発明の仕切部材としては、例えば硬質ポリウレタンフォームの反応熱に耐えられる部材が好ましく、例えば発泡ウレタンボード、発泡フェノールボード、などのプラスチックボード、或いは、合成木材板や無機材料からなるボード等があり、好ましくは、特に耐熱性と軽量性に優れている発泡ウレタンボードである。
【0018】
また、本発明の仕切部材は、上記プラスチックボード単独、或いは少なくとも軽量盛土としての硬質ポリウレタンフォームと接する側の面又は両面に面材を使用したプラスチックボードでもよい。該面材としては、軽量盛土中に侵入してくる水により悪影響を受けにくいもの、つまり、耐水性に優れたのものが好ましく、例えば金属面材、プラスチック面材、ガラス繊維や不織布を使用した面材が好適である。
【0019】
また、仕切部材40の高さは、現場発泡の硬質ポリウレタンフォームの0.5〜1.5mの発泡充填厚さに対応するように設置され、0.5〜1.5mの発泡層の厚さと同等乃至それ以上とし、好ましくは現場での吹き付け後の発泡により膨らんでも乗り越えないように余裕のある高さとされ、例えば、発泡厚さの1.0〜1.5倍の高さが好ましい。
【0020】
本発明の仕切部材と地山或いは壁体との間に発泡充填する硬質ポリウレタンフォームの1回に注入する量は、30〜500mm程度の厚さで層状に発泡成形し、これを繰り返して0.5〜1.5m形成される。
【0021】
本発明の硬質ポリウレタンフォームとしては、発泡ポリスチレンブロックに対して接着性を有し、イソシアネート化合物により発泡・硬化させられるものであればよい。例えばポリオール成分として、ポリオールに触媒,減粘剤,難燃剤,発泡剤等を予め配合し、これとポリイソシアネート成分とが混合されて発泡・硬化するものであり、その密度は30〜50kg/m3、JIS−K7220に準拠した1%歪時の圧縮強度は約5N/cm2以上とするものである。
【0022】
本発明で用いられるポリオールには、エステル型とエーテル型とがあるが、耐久性、特に耐加水分解性の点からポリエーテルポリオールが好適に用いられる。また、フェノール要性したものでもよい。
ポリイソシアネート成分としては特に制限されないが、一般にはクルードMDI等の有機ジイソシアネートが用いられる。
発泡剤としては、特に制限されないが、水や炭酸ガス、HFC−245faやHFC−365mfc等のHFC系の発泡剤から選ばれる少なくとも1種を使用することができる。また、これらの発泡剤は、ポリオール成分中に混合してもいし、第三成分として混合使用してもよい。
【0023】
こうして0.5〜1.5mの高さに相当する硬質ポリウレタンフォーム、発泡ポリスチレンブロック、仕切部材などで軽量盛土が完成され、図示省略したが、この上に同様の工程を繰り返し、最終的に図4に示すように、所定高さの軽量盛土を形成する。その後、溶接鉄筋が入れられたコンクリート床版、路盤、表層などが形成されて道路の拡幅が完成する。
【0024】
また、上記実施の形態では、軽量盛土の一方のみが壁体で構成される場合で説明したが、これに限らず両方が壁体とする場合にも同様にこの施工方法を適用することができる。
【0025】
また、上記実施の形態では、基礎工事をした後、軽量盛土を施工する場合で説明したが、これに限らず壁体と地山、又は対向する壁体との間の地盤上に、例えば合成樹脂繊維をへちま状にした排水シートを一定間隔で敷設したり、不織布や孔の開いたホース、パイプ等の管状体と砂利等を敷設したり、これらを組み合わせて敷設してもよいし、仕切部材と地山或いは壁体との間に発泡充填する硬質ポリウレタンフォームと仕切部材とを施工する所定の場所にのみ、予め上記のような管状体を設置してもよい。この場合、この硬質ポリウレタンフォームを発泡充填し、その際に発生した反応熱を煙突効果によりその管状体を伝い、本発明の空間から発散させることができる、つまり、その管状体から空間へと反応熱を移動させ、空間に吸い込まれる空気によりその反応熱を空間から発散させることができ、発泡ポリスチレンブロックの変形をより一層防ぎ易くすることができる。
【0026】
また、上記実施の形態では、仕切部材と地山或いは壁体との間や、発泡ポリスチレンブロックと仕切部材との間に硬質ポリウレタンフォームを発泡充填したが、これに限らず、例えば、発泡ポリスチレンブロックを地山側に設置した場合、発泡ポリスチレンブロックと地山との間に生じる隙間に、硬質ポリウレタンフォームを発泡充填したり、発泡ポリスチレンブロックを多段に積み上げる(設置する)際に、発泡ポリスチレンブロックと発泡ポリスチレンブロックとの間に硬質ポリウレタンフォームを吹き付け、密着性を向上させてもよい。
【0027】
【発明の効果】
以上、本発明の軽量盛土の施工方法によれば、仕切部材と地山或いは壁体との間に硬質ポリウレタンフォームを発泡充填し、その際に発生する反応熱を、発泡ポリスチレンブロックに伝えにくくし、発泡ポリスチレンブロックの変形を防ぐことができる。さらに、壁体と地山、そして地盤に対する密着性が優れるため、所要の安全性を確保できるとともに、施工コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】壁体を立設させた状態を示す説明図
【図2】発泡ポリスチレンブロックを設置した状態を示す説明図
【図3】空間50を形成する方法を示す説明図
【図4】空間50を形成すると共に仕切部材を設置した状態を示す説明図
【図5】硬質ポリウレタンフォーム20を発泡充填させた状態を示す説明図
【図6】図6は、最終工程の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
10 壁体
11 地山
12 基礎コンクリート
20,21 硬質ポリウレタンフォーム
30 発泡ポリスチレンブロック
40 仕切部材
50 空間
Claims (1)
- 壁体と地山、又は対向する壁体との間に軽量盛土を構築する方法であって、発泡ポリスチレンブロックを設置した後、その設置された発泡ポリスチレンブロックに硬質ポリウレタンフォームを線状或いは点状に吹き付け、その吹き付けた硬質ポリウレタンフォームに仕切部材を貼着させて空間を形成し、仕切部材と地山又は壁体との間に硬質ポリウレタンフォームを発泡充填したことを特徴とする軽量盛土の施工方法。
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