JP4147022B2 - N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの回収方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、低極性溶媒を用いたN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの回収方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンは、側鎖に疎水性で嵩高いtert−ブチル基を有するため、不斉触媒のリガンドや、抗AIDS薬等のペプチド系医薬原料として有用な化合物である(Tetrahedron Asymmetry 6 2851 (1995)等)。
N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンは、tert−ロイシンとN−アルコキシカルボニル化剤とを水性媒体中で反応させることにより、合成することができる。また前記反応の多くは、塩基性物質存在下で行われる。
【0003】
ところで、合成したN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンは、反応生成液から酢酸エチル等の高極性溶媒を用いて抽出回収することが一般的である(Collect.Czech.Chem.Commun.42,1069 (1977)、特開平6−206857号公報、特開平7−89935号公報、特開平8−59610号公報、特表平9−509940号公報、特表平11−511177号公報、特表平11−514996号公報、特表2000−515147号公報等)。また、合成したN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの抽出に高極性溶媒を用いることを必須とした報告もある(特開平7−101927号公報等)。
このように、従来は、合成したN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの抽出回収には、高極性溶媒を使用する必要があり、炭化水素等の低極性溶媒は使用できないという考えが一般的であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、合成したN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを、高極性溶媒を用いて抽出回収する場合には、以下のような問題点があった。
目的のN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンが結晶化合物の場合等においては、抽出回収により得られるN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの高極性溶媒溶液から目的化合物を単離するためには、該溶液を高濃度溶液になるまで濃縮する、得られる高極性溶媒溶液の溶媒を非極性溶媒に置換する等の、煩雑な操作が必要であった。
また、抽出操作により、90%以上の高い回収率で、目的の化合物を回収できるにもかかわらず、単離操作後の収率が50%程度と低くなってしまうという問題点もあった。
【0005】
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、後の単離操作を簡略化することができると共に、単離操作後に高い収率を得ることが可能なN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの回収方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、高極性溶媒を用いずに、簡易な操作で、かつ、高い回収率でN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを回収することが可能な回収方法について鋭意検討を行った結果、以下のようなことを見出し、本発明を完成した。上述のように、従来は、低極性溶媒である芳香族炭化水素溶媒は、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの回収に適さないと考えられていた。しかしながら、本発明者は、芳香族炭化水素溶媒が、20〜30℃の室温付近では、ほとんどN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを反応生成液より回収できないが、40℃以上に加温して回収を行うことにより、90%以上の高い回収率で、非常に効率良くN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを回収できることを見出した。すなわち、芳香族炭化水素溶媒によるN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの回収率は、温度に対して直線的に依存するのではなく、40℃以上で急激に上昇することを見出した。このような現象は過去に全く報告されておらず、本発明者がはじめて見出した現象である。
【0007】
また、40℃以上の温度に保持しながら、低極性溶媒である芳香族炭化水素溶媒を用いてN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを回収する場合には、得られるN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの芳香族炭化水素溶媒溶液から、簡易な操作で目的の化合物を単離できることを見出した。例えば、目的のN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンが結晶化合物の場合においては、得られるN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの芳香族炭化水素溶媒溶液を冷却するだけで、簡易に目的の化合物を単離できることを見出した。さらに、単離操作後に、85%以上の高い収率が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明のN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの回収方法は、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを含む溶液から、温度を40℃以上に保持しながら、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレンから選ばれる少なくとも1種である芳香族炭化水素溶媒中に回収し、得られるN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの芳香族炭化水素溶媒溶液から、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを単離することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの回収方法において、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンとしては、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシン、N−エトキシカルボニル−tert−ロイシン、N−ベンジルオキシカルボニル−tert−ロイシン、N−tert−ブトキシカルボニル−tert−ロイシン等を例示することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの回収方法は、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを含む溶液から、温度を40℃以上に保持しながら、生成したN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを芳香族炭化水素溶媒中に回収することを特徴としている。
ここで、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンとしては、特に限定されるものではないが、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシン、N−エトキシカルボニル−tert−ロイシン、N−ベンジルオキシカルボニル−tert−ロイシン、N−tert−ブトキシカルボニル−tert−ロイシン等を例示することができる。
また、本発明において、「N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを含む溶液」としては、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの合成反応後の反応生成液を例示できるが、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを含む溶液であれば、これに限定されない。
【0011】
以下、本発明のN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの回収方法を含む、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの製造方法について説明する。
N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの合成反応は、公知のα−アミノ酸のN−アルコキシカルボニル化方法により行うことができる。
すなわち、水、あるいは水とアルコール、ジオキサン等の水溶性有機溶媒との混合溶媒等の水性媒体中で、塩基性化合物存在下、tert−ロイシンとN−アルコキシカルボニル化剤とを反応させ、tert−ロイシンのN−アルコキシカルボニル化反応を進行させることにより、目的とするN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを合成することができる。
ここで、塩基性化合物としては、トリエチルアミン等の有機塩基化合物を用いても良いし、水酸化ナトリウム等の無機塩基化合物を用いても良い。
また、N−アルコキシカルボニル化剤は、目的のN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの構造に応じて、クロロギ酸メチル、クロロギ酸ベンジル等のクロロギ酸エステルや、ジ−tert−ブチルジカーボネート等のジアルキルジカーボネート等の中から、適宜選択される。
【0012】
以上のようにして、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを合成した後、得られる反応生成液を、温度を40℃以上に保持しながら、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを低極性溶媒である芳香族炭化水素溶媒中に回収する。
また、回収操作の操作性向上の観点から、温度を40℃以上〜用いる芳香族炭化水素溶媒の沸点以下に保持しながら、回収操作を行うことがより好ましい。
ここで、芳香族炭化水素溶媒としては、特に限定されるものではないが、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレンから選ばれる少なくとも1種を用いることが好適である。
【0013】
また、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを合成することにより得られる反応生成液から、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを芳香族炭化水素溶媒溶液中に回収する操作としては、特に限定されるものではないが、溶媒による抽出操作等が好適である。
溶媒による抽出操作により、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを回収する場合、温度以外の条件については特に限定されるものではないが、抽出効率向上の観点から、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの合成後、得られた反応生成液に酸性物質を添加し、該反応生成液を酸性にした状態で、回収操作を行うことが好ましい。
ここで、反応生成液を酸性にするために添加する酸性物質としては、特に限定されるものではないが、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸が好適である。なお、抽出操作後に水相が酸性になるように抽出操作を行えば良いので、酸性物質の添加は、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの合成後に得られる反応生成液に、芳香族炭化水素溶媒を添加する前又は添加した後のいずれで行っても良い。また、抽出操作に使用する芳香族炭化水素溶媒の量については特に限定されるものではないが、後の単離操作を簡略化するために、生成したN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを1質量部とした時、0.3〜5質量部とすることが好ましい。
【0014】
抽出操作は、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの合成反応後に得られる反応生成液と芳香族炭化水素溶媒とを、撹拌混合又は振とう混合した後、温度を40℃以上に保持しながら混合液を静置し、有機相と水相とに分離することにより行うことができる。なお、このとき、連続抽出を行うことも可能である。
抽出操作の条件については特に限定されるものではないが、操作効率向上等の観点から、撹拌あるいは振とう時間を0.1〜24時間、抽出操作の回数を1〜3回、混合液の静置時間を0.1〜24時間とすることが好ましい。
【0015】
以上のようにして、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを芳香族炭化水素溶媒中に回収した後、得られるN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの芳香族炭化水素溶媒溶液(以下、単に「芳香族炭化水素溶媒溶液」と称すことがある。)から、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを単離する。N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの単離は、溶媒の溜去、晶析等の公知の操作により簡易に行うことができる。
【0016】
例えば、目的とするN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンが結晶化合物の場合、回収操作により得られる芳香族炭化水素溶媒溶液を濃縮することなく、冷却するだけで、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシン結晶を析出させることができ、極めて簡易な操作で、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを単離することができる。
但し、必要に応じて、回収操作により得られる芳香族炭化水素溶媒溶液を濃縮する、得られる芳香族炭化水素溶媒溶液にヘプタン等の低極性溶媒や種晶を添加するなどの操作を行ってから、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシン結晶を析出させても良い。
【0017】
以上のようにして析出させたN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシン結晶は、ろ過、遠心分離等の公知の方法により回収することができる。なお、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの単離操作前に、純度向上や、単離収率向上を目的として、回収操作により得られる芳香族炭化水素溶媒溶液に対して、少量の水で洗浄する、共沸脱水等の脱水処理を行うなどの操作を行っても良い。
【0018】
本発明のN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの回収方法によれば、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを合成することにより得られる反応生成液から、芳香族炭化水素溶媒を用い、温度を40℃以上に保持しながら、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを回収することを特徴としているので、簡易な操作で、かつ、90%以上の高い回収率で、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを回収することができる。
また、本発明のN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの回収方法によれば、低極性溶媒である芳香族炭化水素溶媒を用いてN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを回収するため、得られるN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの芳香族炭化水素溶媒溶液から、簡易な操作で、かつ85%以上の高い収率で目的の化合物を単離することができる。
【0019】
【実施例】
次に、本発明に係る実施例及び比較例について説明する。
(実施例1)
特表平11−511177号公報に記載された方法に基づき、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシンを合成した。
すなわち、tert−ロイシン20g、3N水酸化ナトリウム水溶液79mL及びジオキサン12mLの混合溶液に、クロロギ酸メチル21.5gを2.5時間かけて滴下した後、60℃で12時間加熱し、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシンを合成した。
反応終了後、減圧下でジオキサンを除去した後、36質量%塩酸水溶液を反応生成液のpHが1.5になるまで添加した。pH調整後、トルエン80gを添加し、70℃で0.5時間、撹拌混合し、分相することにより、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシンをトルエン中に抽出回収した。得られたトルエン溶液は108gであり、この溶液中にN−メトキシカルボニル−tert−ロイシンは28g含まれていた。N−メトキシカルボニル−tert−ロイシンの回収率は97%であった。
なお、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシンの定量分析は、以下の条件でHPLC分析により行った。
<HPLC分析条件>
カラム:イナートシル ODS−3V(4.6φ×250mm)GLサイエンス社製
移動相:0.1質量%のリン酸水溶液−アセトニトリル(60:40)
流速:1mL/min
検出:UV(210nm)
次に、得られたトルエン溶液を10gの水で洗浄した後、5℃で8時間冷却し、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシン結晶を析出させた。次いで、得られた結晶を減圧ろ過により回収した後、少量のトルエンで洗浄した。残結晶を減圧乾燥したところ、25.9gのN−メトキシカルボニル−tert−ロイシン乾燥結晶が得られた。収率は90%であった。
以上の結果から、抽出溶媒としてトルエンを用い、抽出温度を70℃とすることにより、97%という高い回収率で、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシンを回収することができることが判明した。また、得られたトルエン溶液から、濃縮する等の煩雑な操作を行うことなく簡易に、かつ90%という高い収率で、目的の化合物を単離できることが判明した。
【0020】
(参考例2)
抽出温度を20〜80℃の範囲の種々の温度に設定した以外は、実施例1と同様にして、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシンをトルエン中に抽出回収した。
各抽出温度におけるN−メトキシカルボニル−tert−ロイシンの有機相への回収率を表1に示す。なお、表1には、実施例1において得られたデータも合わせて示している。
【表1】
表1に示す結果から、抽出溶媒としてトルエンを用いる場合、抽出温度が40℃未満では、回収率が5%以下であり、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシンをほとんど回収できないのに対し、抽出温度が40℃以上では、回収率が95%以上であり、抽出温度を40℃以上とすることにより、回収率が急激に上昇することが判明した。
【0021】
(参考例3)
抽出溶媒として、トルエンの代わりに、ベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレンを用いた以外は、実施例1と同様にして、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシンを芳香族炭化水素溶媒中に抽出回収した。
各抽出溶媒を用いた時のN−メトキシカルボニル−tert−ロイシンの有機相への回収率を表2に示す。なお、表2には、実施例1において得られたデータも合わせて示している。
【表2】
表2に示す結果から、抽出溶媒を、ベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレンに変えても、トルエンを用いた時と同様、91%以上の高い回収率で、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシンを回収できることが判明した。なお、本発明者は、抽出溶媒をエチルベンゼンに変えても同様の結果が得られることを確認している。
【0022】
(参考例4)
N−アルコキシカルボニル化剤として、クロロギ酸メチルの代わりに、クロロギ酸エチル、クロロギ酸ベンジルを用い、実施例1と同様にして、N−エトキシカルボニル−tert−ロイシン、N−ベンジルオキシカルボニル−tert−ロイシンを合成した。
反応終了後、実施例1と同様にして、得られたN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンをトルエン中に抽出回収した。但し、100gのトルエンを用いて60℃で抽出操作を行った。抽出操作後の各化合物の回収率を、実施例1と同様に、HPLC分析により分析した。得られた結果を表3に示す。なお、移動相としては、0.1質量%のリン酸水溶液とアセトニトリルとを質量比で40:60に混合した溶液を用いて、分析を行った。また、表3には、参考例2において得られたデータも合わせて示している。
【表3】
表3に示す結果から、N−エトキシカルボニル−tert−ロイシン、N−ベンジルオキシカルボニル−tert−ロイシンを回収する場合においても、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシンと同様、95%以上の高い回収率で回収できることが判明した。
【0023】
(実施例5)
Org.Synthesis 63,160 (1985)に記載された方法に基づき、N−tert−ブトキシカルボニル−tert−ロイシンを合成した。
すなわち、tert−ロイシン39.5g、水150mL及びジオキサン150mLの混合溶液に、10質量%水酸化ナトリウム水溶液300gを添加し、さらに、15〜25℃に保持しながら、ジ−tert−ブチルジカーボネートを滴下した後、30℃で3時間撹拌し、N−tert−ブトキシカルボニル−tert−ロイシンを合成した。
反応終了後、36質量%塩酸を添加し、溶液のpHを8に調整した後、減圧下でジオキサンを溜去し、400gになるまで濃縮した。濃縮液に再び36質量%塩酸を添加し、pHを4に調整した後、トルエン130gを添加し、40℃で1時間、撹拌混合し、分相することにより、N−tert−ブトキシカルボニル−tert−ロイシンをトルエン中に抽出回収した。なお、得られたトルエン溶液は195gであり、この溶液中にN−tert−ブトキシカルボニル−tert−ロイシンは63g含まれていた。N−tert−ブトキシカルボニル−tert−ロイシンの回収率は96%であった。
次に、得られたトルエン溶液を、減圧下で110gになるまで濃縮し、濃縮液にn−ヘプタン100gを添加した後、5℃で5時間冷却することにより、N−tert−ブトキシカルボニル−tert−ロイシン結晶を析出させた。次いで、得られた結晶を減圧ろ過により回収した後、少量のn−ヘプタンで洗浄した。残結晶を減圧乾燥したところ、56.0gのN−tert−ブトキシカルボニル−tert−ロイシン乾燥結晶が得られた。収率は87%であった。
以上の結果から、N−tert−ブトキシカルボニル−tert−ロイシンを回収する場合においても、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシン等と同様、96%という高い回収率で回収できることが判明した。また、得られたトルエン溶液を濃縮した後、晶析することによっても、トルエン溶液から、87%という高い収率でN−tert−ブトキシカルボニル−tert−ロイシンを単離できることが判明した。
【0024】
(比較例)
実施例1と同様にして、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシンを合成し、ジオキサンを除去した後、塩酸を添加し、pHを1.5に調整した。
次に、抽出溶媒として酢酸エチル80gを添加した後、50℃で撹拌混合し、分相することにより、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシンを酢酸エチル中に抽出回収した。なお、得られた酢酸エチル溶液は105gであり、この溶液中にN−メトキシカルボニル−tert−ロイシンは27g含まれていた。N−メトキシカルボニル−tert−ロイシンの回収率は94%であった。
次に、得られた酢酸エチル溶液を減圧下で、60gになるまで濃縮した後、5℃で12時間冷却し、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシン結晶を析出させた。次いで、得られた結晶を減圧ろ過により回収した後、少量のn−ヘプタンで洗浄した。残結晶を減圧乾燥したところ、14.4gのN−メトキシカルボニル−tert−ロイシン乾燥結晶が得られた。収率は50%であった。
以上の結果から、抽出溶媒として高極性溶媒である酢酸エチルを用いる場合には、94%という高い回収率で、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシンを抽出回収することができるものの、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシンを単離するためには、得られた酢酸エチル溶液を高濃度に濃縮する操作が必要であり、単離操作が煩雑になると共に、目的とする乾燥結晶の収率が実施例1や実施例5に比較して著しく低くなることが判明した。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの回収方法によれば、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを含む溶液から、温度を40℃以上に保持しながら、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを芳香族炭化水素溶媒中に回収することを特徴としているので、簡易な操作で、かつ、90%以上の高い回収率で、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを回収することができる。
また、本発明のN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの回収方法によれば、低極性溶媒である芳香族炭化水素溶媒を用いてN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを回収するため、得られるN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの芳香族炭化水素溶媒溶液から、簡易な操作で、かつ85%以上の高い収率で目的の化合物を単離することができる。
Claims (2)
- N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを含む溶液から、温度を40℃以上に保持しながら、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレンから選ばれる少なくとも1種である芳香族炭化水素溶媒中に回収し、得られるN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの芳香族炭化水素溶媒溶液から、N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンを単離するN−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンの回収方法。
- N−アルコキシカルボニル−tert−ロイシンが、N−メトキシカルボニル−tert−ロイシン、N−エトキシカルボニル−tert−ロイシン、N−ベンジルオキシカルボニル−tert−ロイシン、N−tert−ブトキシカルボニル−tert−ロイシンのうちいずれかである請求項1に記載の回収方法。
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