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JP4022852B2 - 燃料噴射弁 - Google Patents

燃料噴射弁

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JP4022852B2
JP4022852B2 JP2001363660A JP2001363660A JP4022852B2 JP 4022852 B2 JP4022852 B2 JP 4022852B2 JP 2001363660 A JP2001363660 A JP 2001363660A JP 2001363660 A JP2001363660 A JP 2001363660A JP 4022852 B2 JP4022852 B2 JP 4022852B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の各気筒の燃焼室内に燃料を噴霧する内燃機関用燃料噴射弁に関するもので、例えば直接噴射式ディーゼルエンジン等の内燃機関の各気筒の燃焼室内に、高圧供給ポンプにより加圧された高圧燃料を噴射供給する内燃機関用燃料噴射ノズルに係わる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば直接噴射式ディーゼルエンジン等の内燃機関用燃料噴射ノズルから噴射される燃料噴霧の形状および燃料噴射量は、内燃機関の運転状態および噴射初期・噴射後期で最適な状態がある。それを実現する方法として、例えば特開平5−99099号公報に記載の内燃機関用燃料噴射ノズル(第1従来例)と実開平2−12067号公報に記載の内燃機関用燃料噴射ノズル(第2従来例)がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前者(第1従来例)の内燃機関用燃料噴射ノズルは、図9(a)に示したように、ノズルボデーのシート面の弁座よりも上流側に突起部101を設けて噴孔102への燃料流れを偏向させて、ノズルニードルの低リフト域(低負荷域・低噴射領域)で、噴孔102内で旋回流を形成し、広噴霧角の燃料噴霧を実現させたものである。具体的には、図9(b)に示したように、噴孔102に対して突起部101の有り側と無し側とがあり、突起部101の無し側(図示左側)は燃料の流速が早いが、突起部101の有り側(図示右側)は燃料の流速が遅い。したがって、噴孔102の中心に対して図示左右で燃料の流速に大小が生じて流速大側の影響で、図9(b)に示したように、噴孔102内において図示左回転方向(反時計回り)に旋回流が生じる。
【0004】
ところが、前者(第1従来例)の内燃機関用燃料噴射ノズルは、次のような問題がある。ノズルボデーのシート面は、燃料のシール性確保のために形状精度・面粗さ等高精度の加工技術が必要であり、そのようなシート面に突起部を形成するには更に高精度の加工技術が必要となり、コストアップとなる。また、突起部をノズルニードル側に形成することも考えられるが、噴孔と突起部の位置関係が重要であるために、ノズルニードルの回転を防止する機構が必要となり、同様にコストアップとなる可能性がある。
【0005】
また、後者(第2従来例)の内燃機関用燃料噴射ノズルは、シート面下流のサック部に微小間隔で設けた微小噴孔で燃料の微粒化の促進を実現したものであるが、次のような問題がある。シート面上ではなくサック部内に噴孔を形成するために、噴孔内への偏った流れを形成することができない。これにより、噴孔内で旋回流が形成されず、前者(第1従来例)のような広噴霧角の燃料噴霧を実現することができなかった。
【0006】
【発明の目的】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、低噴射領域では噴孔内で旋回流を形成することで広噴霧角の燃料噴霧を実現してエンジン排出ガスを浄化することのできる燃料噴射弁を低コストで提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明によれば、複数の噴孔のうちで隣接する2つの噴孔の、ノズルボデーのシート面側で開口する各噴孔入口部を、燃料の流れ方向に対して直交するように、かつ、ノズルニードルの中心軸の軸方向に直交する方向に対して概略同一平面内において近接して配置することにより、各噴孔入口部で偏った流れが形成され、噴孔内で旋回流を形成できる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、複数の噴孔のうちで隣接する2つの噴孔の、ノズルボデーの外周側で開口する各噴孔出口部を、隣接する2つの噴孔から噴射された燃料噴霧が重ならない範囲まで離間させた位置に配置することにより、各噴孔入口部で偏った流れが形成され、噴孔内で旋回流となり、各噴孔出口部から広噴霧角の燃料噴霧を噴射することができるので、空気との混合が促進されて、燃焼が改善されるため、エンジン排出ガスを浄化できる。
【0009】
請求項3に記載の発明によれば、ノズルボデーの軸方向孔には、ノズルニードルを摺動自在に保持するための摺動孔が設けられている。そして、軸方向孔と摺動孔との間には、摺動孔よりも孔径が拡げられた油溜まりが設けられている。そして、ノズルニードルは、ノズルボデーの軸方向孔との間に所定のクリアランスを保って往復移動自在に収容されている。そして、そのクリアランスは、油溜まりからシート面へ延びる燃料通路を形成している。
【0010】
請求項4に記載の発明によれば、高圧供給ポンプからの燃料の圧送によって燃料通路内の燃料圧力が、第1付勢手段の付勢力に打ち勝つ圧力に達すると、ノズルニードルがノズルボデーのシート面より離脱して1段目リフトまでリフトする。このような低噴射領域では、各噴孔入口部が近接して配置されているので、各噴孔入口部に偏った流れが生じ、噴孔内で旋回流が形成されるために、低貫徹力で広噴霧角の燃料噴霧を噴射することができる。更に燃料通路内の燃料圧力が、第1付勢手段の付勢力と第2付勢手段の付勢力との和よりも大きくなると、ノズルニードルがフルリフトまでリフトする。このような高噴射領域では、各噴孔入口部が近接して配置されていても、偏った流れが生じることなく、噴孔内で整流化されて、高貫徹力の燃料噴霧を噴射することができるため、内燃機関の気筒内に渡って燃料噴霧を分散させることができ、燃焼が改善され、エンジン排出ガスを浄化できる。
【0011】
請求項5に記載の発明によれば、隣接する2つの噴孔の噴孔径を同一径(D)としたとき、近接して配置される各噴孔入口部間の距離(L)は、L<D×(π−1)の関係を満足することを特徴としている。また、請求項6に記載の発明によれば、隣接する2つの噴孔の噴孔径を互いに異なる径(D1、D2)としたとき、近接して配置される各噴孔入口部間の距離(L)は、L<{(D1+D2)/2}×(π−1)の関係を満足することを特徴としている。
【0012】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。
[第1実施例の構成]
図1ないし図7は本発明の第1実施例を示したもので、図1は内燃機関用燃料噴射ノズルの全体構造を示した図である。
【0013】
本実施例の内燃機関用燃料噴射ノズル(以下燃料噴射ノズルと略す)は、図示しないディーゼルエンジン等の内燃機関(以下エンジンと言う)の各気筒毎に搭載されて、図示しない高圧供給ポンプによって高圧に加圧された高圧燃料を、直接燃焼室内に霧状に噴射供給する直接噴射タイプの燃料噴射弁である。
【0014】
この燃料噴射ノズルは、ノズルニードル1を収容するノズルボデー2と、図示しない第1、第2付勢手段としての第1、第2スプリングを収容するノズルホルダー(図示せず)と、ノズルボデー2の密着面とノズルホルダーの密着面との間に配置されたチップパッキン(図示せず)と、このチップパッキンを介してノズルボデー2の密着面とノズルホルダーの密着面とを所定の締結軸力によって締め付け固定するためのリテーニングナット(図示せず)とから構成されている。
【0015】
なお、ノズルボデー2には、密着面から油溜まり4へ延びる燃料送出路(以下燃料孔と言う)3が設けられている。また、ノズルホルダーには、継手部から密着面へ延びる燃料供給路(図示せず)が設けられている。また、チップパッキンには、ノズルボデー2の燃料孔3とノズルホルダーの燃料供給路とを連通する燃料中継路(図示せず)が設けられている。また、チップパッキンの端面には、ノズルニードル1の最大リフト量を規制する規制面が設けられている。そして、本実施例では、図示しない電磁式アクチュエータ(ノズルニードル1を開弁方向に駆動するニードル駆動手段)としての電磁弁によってノズルニードル1の背後(例えばノズルホルダーの後端部)に形成される制御室(図示せず)内の油圧力を制御することにより、ノズルニードル1が軸方向に往復移動するように構成されている。
【0016】
ノズルニードル1は、略丸棒形状に形成されて、ノズルホルダー内に収容された第1、第2スプリングの付勢力によって複数の噴孔(後述する)8、9を閉じる方向に常に付勢されており、先端部がノズルボデー2のシート面10の弁座に着座、離脱して、複数の噴孔(噴射孔)8、9を閉塞、開放するものである。このノズルニードル1は、単純な円柱面形状の軸方向部11とこの軸方向部11よりも外径が小さい単純な円柱面形状の軸方向部12との間に径小部13を有している。
【0017】
なお、軸方向部11は、ノズルボデー2の軸方向孔6の図示上部側に設けられる摺動孔7内において摺動自在に保持されている。また、軸方向部11の図示上端面より軸方向に突出した凸状部17の周りには、ノズルニードル1が最もリフトした際にチップパッキンの規制面に当接する円環状の肩部18が形成されている。そして、ノズルニードル1は、軸方向部12とノズルボデー2の軸方向孔6との間に所定のクリアランスを保って往復移動自在に収容されている。そのクリアランスは、油溜まり4からシート面10へ延びる燃料通路5を形成している。ノズルボデー2の軸方向孔6には、ノズルニードル1を摺動自在に保持するための摺動孔7が設けられている。
【0018】
ノズルニードル1の燃料の流れ方向の下流側(図1および図2において図示下端側)の先端部には、概略2段の円錐形状面が設けられており、それらの円錐形状面間に設けられる円環状の稜線(エッジ)には、ノズルボデー2の先端部に形成されたシート面10の弁座に液密的に接触(着座)して燃料通路5と燃料通路14との連通状態を遮断するためのシート部15が形成されている。なお、ノズルニードル1のシート部15よりも先端側には、図2に示したように、先端円錐面16が形成されている。また、ノズルニードル1の開弁方向の移動(リフト)によって、シート部15をノズルボデー2のシート面10の弁座から離脱(リフト)させた場合には、燃料通路5と燃料通路14とは連通状態(開放状態)となり、燃料通路5側から供給される燃料を複数の噴孔8、9側の燃料通路14へと通過させる。
【0019】
ノズルボデー2は、先端部に燃料を噴射するための噴孔8、9を複数個備えている。そして、ノズルボデー2の中央部には、密着面より複数の噴孔8、9側へと延びる軸方向孔6が設けられ、その軸方向孔6の図示上端側には、軸方向孔6よりも孔径が窄められて、ノズルニードル1を摺動自在に保持するための摺動孔7が設けられ、軸方向孔6と摺動孔7との間には、軸方向孔6および摺動孔7よりも孔径が拡げられた油溜まり4が設けられている。
【0020】
そのノズルボデー2は、図示上端側から図示下端側に向かって、円筒壁部21、この円筒壁部21よりも外径の小さい円筒壁部22、およびこの円筒壁部22よりも外径が小さく、略逆円錐形状のテーパー壁部23が順に設けられている。なお、円筒壁部21内には、チップパッキンを介してノズルホルダーの密着面に液密的に当接する密着面(ノズルボデー2の密着面)から油溜まり4へ斜めに延びる燃料孔3が設けられている。また、円筒壁部22内には、摺動孔7よりも孔径が拡げられた軸方向孔6が形成され、その軸方向孔6とノズルニードル1の軸方向部12との間には、油溜まり4から複数の噴孔8、9側へ軸方向に真っ直ぐ延びる燃料通路5が形成されている。
【0021】
そして、ノズルボデー2のテーパー壁部23の内周面には、燃料噴射終了時にノズルニードル1のシート部15が着座する弁座を有する逆円錐面形状のシート面10が形成されている。そして、複数の噴孔8、9は、テーパー壁部23のシート面10の弁座よりも燃料の流れ方向の下流側からテーパー壁部23の外周までを斜めに貫通する燃料噴射孔である。それらの噴孔8、9は、それぞれ同一の噴孔径で、且つ概略円周方向にドリル等の工具によってノズルボデー2のテーパー壁部23を貫通するように穿設されている。そして、隣接する2つの噴孔8、9のうちの一方の噴孔8の、シート面10で開口する噴孔入口部31と他方の噴孔9の、シート面10で開口する噴孔入口部32とは、図2および図3に示したように、燃料の流れ方向に対して概略直交するように、すなわち、ノズルニードル1の中心軸に直交するように概略同一平面上で近接して配置され、且つノズルボデー2のテーパー壁部23のシート面10で開口している。
【0022】
ここで、各噴孔入口部31、32を、燃料の流れ方向に対して概略直交するように概略同一平面上で近接して配置する理由は、図4に示したように、ノズルニードル1の低リフト域(低負荷域・低噴射領域)で、各噴孔8、9の噴孔入口部31、32の中心に対して図示左右に燃料の流速差(流量差)を持たせることで、各噴孔8、9内で旋回流を形成するためである。なお、図5(a)に示したように、燃料の流れ方向に対して斜めに各噴孔8、9の噴孔入口部31、32を近接して配置した場合には、各噴孔8、9の噴孔入口部31、32の中心に対して図示左右の燃料の流速(流量)差が小さく、各噴孔8、9内で燃料が旋回し難くなる。また、図5(b)に示したように、燃料の流れ方向に対して同一方向(直線方向)に各噴孔8、9の噴孔入口部31、32を近接して配置した場合には、各噴孔8、9の噴孔入口部31、32の中心に対して図示左右の流速(流量)差がなく、各噴孔8、9内で燃料が旋回しない。
【0023】
しかるに、各噴孔入口部31、32が近接して配置される隣接する2つの噴孔8、9の、ノズルボデー2のテーパー壁部23の外周側で開口する噴孔出口部33、34同士は、隣接する2つの噴孔8、9から噴射された燃料噴霧が重ならない範囲まで離間させた位置に配置されており、多くの場合は、概略円周方向に等間隔に配置されている。したがって、各噴孔8、9の中心軸とノズルボデー2の中心軸とは交差せず、各噴孔8、9の中心軸は、ノズルニードル1の中心軸およびノズルボデー2の中心軸に対して所定の傾斜角度だけ傾斜している。
【0024】
すなわち、各噴孔8、9の中心軸は、図2に示したように、ノズルニードル1の中心軸およびノズルボデー2の中心軸に対して直交する垂直線より所定の傾斜角度だけ図示下方に傾斜するように穿設されている。また、各噴孔8、9の中心軸は、図3に示したように、ノズルニードル1の中心軸より放射状に形成されているのではなく、ノズルニードル1の中心軸から外径側に所定距離だけ偏心した位置(F)から、ノズルニードル1の径方向に延びる放射線(G)を中心にして所定の傾斜角度(θ)を持って均等にしかも噴孔出口部33、34同士が離れるように穿設されている。
【0025】
ここで、近接した噴孔径が同一の2つの噴孔8、9の各噴孔入口部31、32の中心間距離(l)は、図6(a)、(b)に示したように、燃料通路5から噴孔8、9内に安定して燃料が流れ込むようにするために、噴孔全周長(πD)が必要である。このため、各噴孔入口部31、32の中心間距離(l)は、l≦(πD/2)+(πD/2)=πDとなる。また、近接した噴孔径が同一の2つの噴孔8、9の各噴孔入口部31、32間の距離(L)は、L≦l−(D/2)×2=πD−D=D×(π−1)となる。したがって、近接した2つの噴孔8、9間で燃料の流れを奪い合う必要があるため、近接した噴孔径が同一の2つの噴孔8、9の各噴孔入口部31、32間の距離(L)は、L<D×(π−1)の関係を満足するように設定することが望ましい。但し、各噴孔8、9は同一の噴孔径(例えばφ0.1〜φ0.3)であるために、各噴孔8、9の噴孔径をDとした場合である。
【0026】
[第1実施例の作用]
次に、本実施例の燃料噴射ノズルの作用を図1ないし図7に基づいて簡単に説明する。
【0027】
高圧供給ポンプから所定量の燃料が所定の時期に圧送され、この高圧燃料がいずれも図示しない噴射管、燃料噴射装置を経由して燃料孔3に供給される。この高圧燃料は、燃料孔3、油溜まり4を経由して、ノズルニードル1の軸方向部12とノズルボデー2の軸方向孔6との間に形成される燃料通路5内に蓄えられる。その燃料通路5内の燃料圧力が増大して、ノズルホルダー内に収容された第1スプリングの付勢力に打ち勝つ圧力に達すると、ノズルニードル1はノズルボデー2のシート面10の弁座から離脱(リフト)して1段目リフト(HD1)まで軸方向の図示上方側へリフトする。このノズルニードル1の開弁方向の移動(リフト)によって、ノズルニードル1のシート部15がノズルボデー2のシート面10の弁座から離脱(リフト)するため、燃料通路5と燃料通路14とは連通状態(開放状態)となり、燃料孔3、油溜まり4および燃料通路5から供給される燃料が複数の噴孔8、9側の燃料通路14へと流れ込む。
【0028】
この軸方向の図示上方側への1段目リフト(HD1)では、各噴孔8、9の噴孔入口部31、32とノズルニードル1の先端円錐面16との隙間が狭く(約30〜100μm)、且つ噴孔入口部31、32が近接しているために、噴孔入口部31、32が近接している所(B)の燃料を各噴孔8、9が奪い合い流量が少なく、流速が遅い。逆に、各噴孔8、9の噴孔入口部31、32が近接していない側(C)は奪い合う噴孔8、9がないために流量が多く、流速が速い。この流量差(流速差)によって、噴孔入口部31、32で偏った流れが形成され、各噴孔8、9内での旋回流(E)となる(図3、図4および図7参照)。したがって、ノズルニードル1が1段目リフト(HD1)までリフトして、各噴孔8、9の噴孔入口部31、32とノズルニードル1の先端円錐面16との隙間が狭い低噴射領域では、低貫徹力で広噴霧角の燃料噴霧をエンジンの各気筒の燃焼室内に噴射することができるため、空気との混合が促進されて燃焼が改善する。
【0029】
更に、ノズルニードル1の軸方向部12とノズルボデー2の軸方向孔6との間に形成される燃料通路5内の燃料圧力が増加すると、ノズルホルダー内に収容された第1スプリングと第2スプリングとの付勢力の和よりも大きくなり、ノズルニードル1がフルリフト(HD2)までリフトする。例えばノズルニードル1の肩部18がチップパッキン等の規制部材に到達するまでリフトする。このフルリフトでは、噴孔入口部31、32とノズルニードル1の先端円錐面16との隙間が広い(約250〜400μm)ために、噴孔入口部31、32近傍の燃料の流速が低下(圧力は高い)する。
【0030】
それによって、隣接する2つの噴孔8、9の各噴孔入口部31、32が近接していても、偏った燃料流れが生じることはなく、各噴孔8、9内で整流化される。したがって、ノズルニードル1がフルリフト(HD2)までリフトして、各噴孔入口部31、32とノズルニードル1の先端円錐面16との隙間が広い高噴射領域では、高貫徹力の燃料噴霧を噴射することができるため、エンジンの各気筒の燃焼室内に渡って燃料噴霧を分散させることができ、燃焼を改善できる。そして、高圧供給ポンプからの燃料圧送が終わりに近づくと、燃料通路5内の燃料圧力が低下するため、第1スプリングおよび第2スプリングの付勢力により、ノズルニードル1がシート面10方向に付勢され、シート部15がシート面10の弁座に着座すると燃料噴射は終了する。
【0031】
[第1実施例の効果]
以上のように、本実施例の燃料噴射ノズルにおいては、ノズルボデー2のテーパー壁部23のシート面10側で開口する各噴孔入口部31、32を燃料の流れ方向に対して概略直交するように、隣接する2つの噴孔8、9を近接して配置し、ノズルボデー2のテーパー壁部23の外周側で開口する各噴孔出口部33、34は所定の間隔を隔てて離間するように、隣接する2つの噴孔8、9を同一噴孔径で形成している。
【0032】
それによって、ノズルニードル1の低リフト域(低負荷域・低噴射領域)では近接した噴孔8、9の各噴孔入口部31、32の中心の図示左右で各噴孔入口部31、32内に流れ込む燃料の流速(流量)差を生じさせることで、図7に示したように、各複数の噴孔8、9内で旋回流が形成されるために、各噴孔出口部33、34から低貫徹力・広噴霧角の燃料噴霧を実現でき、且つノズルニードル1の高リフト域(高噴射領域)では高貫徹力の燃料噴霧を実現できる。これにより、エンジンの各気筒の燃焼室内での燃焼状態を改善できるので、エンジン排出ガスを浄化することができる。
【0033】
ここで、ノズルボデー2のテーパー壁部23のシート面10は、燃料のシール性確保のために形状精度・面粗さ等高精度の加工技術が必要であり、そのようなシート面10に突起部(101)を形成するには更に高精度の加工技術が必要となり、コストアップとなっていたが、本実施例の燃料噴射ノズルでは、上記のような突起部(101)を設けることなく、ノズルニードル1の低リフト域(低負荷域・低噴射領域)で、複数の噴孔8、9内で旋回流を形成することができるので、コストダウンとなる。
【0034】
[第2実施例]
図8は本発明の第2実施例を示したもので、図8は燃料噴射ノズルの主要構造を示した図である。
【0035】
本実施例の燃料噴射ノズルは、隣接する2つの噴孔8、9の噴孔径を異なるものとしている。ここで、近接した噴孔径が異なる2つの噴孔8、9の各噴孔入口部31、32間の距離(L)は、L<{(D1+D2)/2}×(π−1)の関係を満足するように設定される。但し、噴孔8の噴孔径をD1、噴孔9の噴孔径をD2とする。本実施例においても、第1実施例と同様な作用効果を達成することができる。
【0036】
[変形例]
本実施例では、本発明の燃料噴射弁を、列型燃料噴射ポンプや分配型燃料噴射ポンプ等の高圧供給ポンプから油溜まり4および燃料通路5内に直接圧送され、燃料通路5内の燃料圧力が第1、第2スプリング等の第1、第2付勢手段の付勢力よりも大きくなるとノズルニードル1が開弁して、エンジンの各気筒の燃焼室内に燃料噴射する燃料噴射装置に使用される燃料噴射ノズルに適用した例を説明したが、本発明の燃料噴射弁を、高圧供給ポンプから圧送された高圧燃料をコモンレール(蓄圧配管)内に蓄圧し、このコモンレール内に蓄圧した高圧燃料を、エンジンの各気筒の燃焼室内に噴射供給する蓄圧式燃料噴射装置(コモンレール式燃料噴射システム)に使用されるインジェクタ(電磁式燃料噴射弁)の燃料噴射ノズルに適用しても良い。
【0037】
本実施例では、本発明の燃料噴射弁を、直接噴射式ディーゼルエンジンのシリンダヘッドに取り付けて燃料を燃焼室内に直接噴射する直接噴射タイプの燃料噴射ノズルに適用した例を説明したが、本発明の燃料噴射弁を、副燃焼室式ディーゼルエンジンのシリンダヘッドに取り付けて燃料を副燃焼室内に噴射するタイプの燃料噴射ノズルに適用しても良い。
【0038】
本実施例では、各噴孔入口部31、32が近接して配置される複数の噴孔8、9の開口形状を円形状としたが、各噴孔入口部31、32が近接して配置される複数の噴孔8、9の開口形状を多角形状、長円形状、楕円形状としても良い。また、本実施例では、ノズルニードル1のシート部15よりも先端側を単純な円錐面形状(先端円錐面16)としたが、複数段の円錐面形状としても良い。また、ノズルボデー2のシート面10を単純な円錐面形状としたが、ノズルニードル1のシート部(稜線、エッジ部)15がシート面10側のエッジ部に接触しなければ、複数段の円錐面形状としても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料噴射ノズルの全体構造を示した断面図である(第1実施例)。
【図2】燃料噴射ノズルの主要構造を示した断面図である(第1実施例)。
【図3】図2のA−A断面図である(第1実施例)。
【図4】隣接する2つの噴孔間の燃料の流速差が大きい例を示した説明図である(第1実施例)。
【図5】(a)は隣接する2つの噴孔間の燃料の流速差が小さい例を示した説明図で、(b)は燃料の流速差が無い例を示した説明図である(比較例)。
【図6】(a)、(b)は噴孔全周長(πD)、各噴孔入口部間の距離(L)、各噴孔入口部の中心間距離(l)を示した説明図である(第1実施例)。
【図7】燃料噴射ノズルの燃料噴射状態を示した説明図である(第1実施例)。
【図8】燃料噴射ノズルの主要構造を示した断面図である(第2実施例)。
【図9】(a)、(b)は燃料の流れを示した説明図である(第1従来例)。
【符号の説明】
1 ノズルニードル
2 ノズルボデー
3 燃料孔(燃料送出路)
4 油溜まり
5 燃料通路(クリアランス)
6 軸方向孔
7 摺動孔
8 噴孔
9 噴孔
10 シート面
15 シート部
16 先端円錐面
23 テーパー壁部
31 噴孔入口部
32 噴孔入口部
33 噴孔出口部
34 噴孔出口部

Claims (6)

  1. 軸方向孔を有し、且つ軸方向の先端側に複数の噴孔を有するノズルボデーと、このノズルボデーの軸方向孔内において往復移動可能に収容されて、軸方向の先端部に前記ノズルボデーの弁座に着座、離脱するシート部を有するノズルニードルとを備えた燃料噴射弁であって、
    前記弁座は、燃料噴射終了時に前記ノズルニードルのシート部が着座するシート面の途中に設けられ、
    前記複数の噴孔は、前記シート面の前記弁座よりも燃料の流れ方向の下流側を貫通するように設けられ、
    これらの噴孔のうちで隣接する2つの噴孔の、前記シート面側で開口する各噴孔入口部は、燃料の流れ方向に対して直交するように、かつ、前記ノズルニードルの中心軸の軸方向に直交する方向に対して概略同一平面内において近接して配置されていることを特徴とする燃料噴射弁。
  2. 請求項1に記載の燃料噴射弁において、
    前記複数の噴孔のうちで隣接する2つの噴孔の、前記ノズルボデーの外周側で開口する各噴孔出口部は、隣接する2つの噴孔から噴射された燃料噴霧が重ならない範囲まで離間させた位置に配置されていることを特徴とする燃料噴射弁。
  3. 請求項1または請求項2に記載の燃料噴射弁において、
    前記軸方向孔には、前記ノズルニードルを摺動自在に保持するための摺動孔が設けられ、
    前記軸方向孔と前記摺動孔との間には、前記摺動孔よりも孔径が拡げられた油溜まりが設けられており、
    前記ノズルニードルは、前記ノズルボデーの軸方向孔との間に所定のクリアランスを保って往復移動自在に収容されており、
    前記クリアランスは、前記油溜まりから前記シート面へ延びる燃料通路を形成することを特徴とする燃料噴射弁。
  4. 請求項3に記載の燃料噴射弁において、
    前記ノズルニードルを閉弁方向に付勢する第1付勢手段と、前記ノズルニードルを閉弁方向に付勢する第2付勢手段とを備え、
    前記ノズルニードルは、高圧供給ポンプからの燃料の圧送によって前記燃料通路内の燃料圧力が、前記第1付勢手段の付勢力に打ち勝つ圧力に達すると、前記ノズルボデーのシート面より離脱して1段目リフトまでリフトし、
    更に前記燃料通路内の燃料圧力が、前記第1付勢手段の付勢力と前記第2付勢手段の付勢力との和よりも大きくなると、フルリフトまでリフトすることを特徴とする燃料噴射弁。
  5. 請求項1ないし請求項4のうちいずれかに記載の燃料噴射弁において、
    前記隣接する2つの噴孔の噴孔径を同一径(D)としたとき、
    近接して配置される前記各噴孔入口部間の距離(L)は、
    L<D×(π−1)
    の関係を満足することを特徴とする燃料噴射弁。
  6. 請求項1ないし請求項4のうちいずれかに記載の燃料噴射弁において、
    前記隣接する2つの噴孔の噴孔径を互いに異なる径(D1、D2)としたとき、
    近接して配置される前記各噴孔入口部間の距離(L)は、
    L<{(D1+D2)/2}×(π−1)
    の関係を満足することを特徴とする燃料噴射弁。
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