JP4003289B2 - 燃料蒸発ガスパージシステム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料タンク内の燃料が蒸発して生じた燃料蒸発ガス(エバポガス)を内燃機関の吸気管にパージ(放出)する燃料蒸発ガスパージシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、燃料蒸発ガスパージシステムにおいては、燃料タンク内から発生する燃料蒸発ガスが大気中に漏れ出すことを防止するため、燃料タンク内の燃料蒸発ガス通路を通してキャニスタ内に吸着すると共に、このキャニスタ内に吸着されている燃料蒸発ガスを内燃機関の吸気管へパージするパージ通路の途中にパージ制御弁を設け、内燃機関の運転状態に応じてパージ制御弁の開閉を制御することによって、キャニスタから吸気管へパージする燃料蒸発ガスのパージ流量を制御するようになっている。この燃料蒸発ガスパージシステムから大気中に燃料蒸発ガスが漏れる異常が長期間放置されるのを防止するために、燃料蒸発ガスの漏れを早期に検出する必要がある。
【0003】
そこで、例えば特開平5−125997号公報に示すように、燃料蒸発ガスのパージ系内に大気圧又は吸気管負圧を導入・密閉したときの該パージ系の圧力又はその後の圧力変化量に基づいて該パージ系の圧力漏れ等の異常の有無を診断するようにしたものがある。
【0004】
このものでは、異常診断の際にパージ系内に吸気管負圧を導入すると、キャニスタから燃料蒸発ガスが吸気管内に流入するため、燃料蒸発ガス発生量が多い場合には、空燃比がリッチ側にずれてドライバビリティやエミッションに悪影響を及ぼしてしまう。
【0005】
そこで、特開平6−42415号公報、特開平6−74104号公報に示すように、燃料タンク内圧、燃料温度、空燃比フィードバック補正量に基づいて燃料蒸発ガス発生量を求め、燃料蒸発ガス発生量が多い場合には、異常診断(パージ系内への吸気管負圧の導入)を禁止するようにしたものがある。
【0006】
しかしながら、外気温が高くなる夏季には、燃料蒸発ガス発生量が多くなるため、上記公開公報のシステムのように、燃料蒸発ガス発生量が多いときに常に異常診断を禁止すると、夏季には異常診断の実行頻度が極端に少なくなってしまう。このため、夏季には実際にパージ系にリーク等の異常が発生していても、その異常の発見が遅れてしまい、その間に故障箇所から燃料蒸発ガスが大気中に放散されてしまうおそれがある。
【0007】
そこで、夏季等の燃料蒸発ガス発生量が多い時でも、異常診断を実施できるようにするために、特開平9−68112号公報に示すように、パージ系内に吸気管負圧を導入する際にキャニスタから離脱する燃料蒸発ガスのパージ流量に応じて燃料噴射量を補正することが提案されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、通常のパージ実行時には、キャニスタに設けられた大気閉塞弁を開放してキャニスタを大気に連通させるため、燃料タンク内には吸気管負圧が導入されない。このため、燃料タンク内の燃料蒸発ガスがパージされることはなく、キャニスタから離脱した燃料蒸発ガス成分のみがパージされる。これに対し、異常診断時にパージ系内に吸気管負圧を導入する場合には、キャニスタの大気閉塞弁を閉塞して燃料タンク内にも吸気管負圧を導入するため、燃料タンク内に充満した高濃度の燃料蒸発ガスも吸気管にパージされてしまう。
【0009】
しかし、上記公報では、吸気管負圧導入時の燃料噴射量の補正を、キャニスタから離脱する燃料蒸発ガスのパージ流量に基づいて行っているため、燃料タンクからの燃料蒸発ガスのパージによる影響が考慮されておらず、燃料タンクからの燃料蒸発ガスのパージによって空燃比がずれてしまう。特に、アイドル時には、吸入空気量が少ないため、燃料タンクからの燃料蒸発ガスのパージによる影響が相対的に大きくなり、空燃比がリッチ側に大きくずれてエミッションやドライバビリティが悪化してしまう。
【0010】
このような事情から、従来は、走行中に異常診断を行うようにしているが、走行中の異常診断のみでは、異常診断の頻度が少なくなり、異常の発見が遅れてしまうおそれがある。従って、異常の早期発見のためには、走行中のみだけでなく、アイドル中にも異常診断を行うことが望ましい。
【0011】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、アイドル中にパージ系の異常診断を行っても、空燃比がリッチ側に大きくずれることがなく、アイドル中でも、エミッションやドライバビリティを悪化させずにパージ系の異常を早期発見することができる燃料蒸発ガスパージシステムを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の燃料蒸発ガスパージシステムでは、少なくともアイドル中の異常診断時にパージ系内に吸気管負圧を導入する際に、吸気管負圧導入に伴う空燃比のずれを抑えるように燃料噴射量を見込み補正手段によって見込み補正する。つまり、吸気管負圧導入時に燃料タンクからの燃料蒸発ガスのパージによる影響も考慮して燃料噴射量を見込み補正する。これにより、アイドル中にパージ系の異常診断を行っても、燃料タンクからの燃料蒸発ガスのパージによる影響を見込み補正によって少なくすることができて、空燃比がリッチ側に大きくずれることを防止でき、エミッションやドライバビリティを悪化させずに、パージ系の異常を早期発見することができる。
【0013】
更に、燃料タンク内の雰囲気温度に応じて燃料タンク内の燃料蒸発ガスの濃度が変化することを考慮し、請求項1に係る発明では、燃料タンク内の雰囲気温度に基づいて吸気管負圧導入時の見込み補正量を設定している。このようにすれば、燃料タンク内の雰囲気温度から燃料タンク内の燃料蒸発ガスの濃度を推定して見込み補正量を設定することができ、燃料タンクからパージされる実際の燃料蒸発ガスの濃度に応じた精度の良い見込み補正を行うことができる。
【0014】
また、燃料タンク内の雰囲気温度は、燃料タンク内に設置した温度センサによって直接検出するようにしても良いが、吸気温、外気温、冷却水温に応じて燃料タンク内の雰囲気温度が変化することを考慮し、請求項1に係る発明では、吸気温、外気温、冷却水温の少なくとも1つを検出する温度検出手段を設け、始動時に検出した温度に基づいて始動時の燃料タンク内の雰囲気温度を推定し、この推定温度を始動後の車両走行状態と始動後経過時間の少なくとも一方に基づいて補正して現在の燃料タンク内の雰囲気温度を求めるようにしている。このようにすれば、車両に従来から搭載されている吸気温センサ、外気温センサ、冷却水温センサの出力信号から燃料タンク内の雰囲気温度を推定することができ、燃料タンク内に新たに温度センサを設置する必要がなく、低コスト化の要求を満たすことができる。
【0015】
また、請求項2のように、吸気管負圧導入中の見込み補正量を、空燃比フィードバック補正量の偏差又は空燃比フィードバック補正量のなまし値の偏差に基づいて補正するようにしても良い。このようにすれば、吸気管負圧導入中(見込み補正実施中)の空燃比のずれを精度良く修正することができ、異常診断時の空燃比制御を更に安定させることができる。
【0016】
また、請求項3のように、パージ中の吸入空気量とパージ流量との比率(以下「パージ率」という)1%当りの空燃比フィードバック補正量偏差を算出し、このパージ率1%当りの空燃比フィードバック補正量偏差とパージ率との乗算により燃料噴射量補正量(以下「エバポ濃度補正量」という)をエバポ濃度補正量算出手段によって算出し、パージ系内に吸気管負圧を導入する際に前記見込み補正量と前記エバポ濃度補正量とによって燃料噴射量を補正するようにしても良い。このようにすれば、異常診断時にパージ系内に吸気管負圧を導入する際に、燃料タンクからの燃料蒸発ガスのパージ流量とキャニスタから離脱した燃料蒸発ガスのパージ流量の双方を考慮して、燃料噴射量を見込み補正することができ、燃料タンクを含むパージ系全体の燃料蒸発ガスのパージ流量に応じた精度の良い見込み補正を行うことができる。
【0017】
或は、請求項4のように、エバポ濃度補正量に基づいて見込み補正量を設定するようにしても、ほぼ同様の効果が得られる。
【0018】
また、吸気管負圧導入開始後に燃料タンク内の燃料蒸発ガスが配管を通って吸気管に到達するまでに時間遅れがあることを考慮し、請求項5のように、見込み補正を吸気管負圧導入開始から所定期間遅延して開始し又は吸気管負圧導入開始後に見込み補正量を徐々に増加させるようにしても良い。このようにすれば、燃料タンク内の燃料蒸発ガスが吸気管に到達するタイミングに合わせて見込み補正を開始することができ、見込み補正の精度を更に向上できる。
【0019】
また、本発明は、請求項6のように、少なくともアイドル中の異常診断時にパージ系内に吸気管負圧を導入する際又はその前に、異常診断時回転数増加制御手段によって内燃機関の回転数を増加させて吸入空気量を増加させながら、燃料噴射量を見込み補正するようにしても良い。このようにすれば、アイドル中にパージ系の異常診断(燃料タンク内への吸気管負圧の導入)を行っても、吸入空気量を増加させることで、燃料タンクからの燃料蒸発ガスのパージによる影響を少なくすることができて、空燃比がリッチ側に大きくずれることを防止でき、エミッションやドライバビリティを悪化させずに、パージ系の異常を早期発見することができる。しかも、吸入空気量の増加と見込み補正との相乗効果によって異常診断時の空燃比のずれを更に少なくすることができる。
【0020】
ところで、燃料タンクからパージされる燃料蒸発ガスの濃度が高くなるほど、空燃比のリッチ側へのずれ量が大きくなるため、吸入空気量の増加量を多くして空燃比のリッチ側へのずれ量を少なくする必要がある。燃料タンクからパージされる燃料蒸発ガスの濃度は、吸気温、外気温、冷却水温に応じて変化し、また、この燃料蒸発ガスの濃度は、燃料蒸発ガス濃度学習値や、空燃比フィードバック補正量偏差によって推定することが可能である。
【0021】
このような事情を考慮し、請求項7のように、吸気管負圧導入の際又はその前に実施する機関回転数の増加(吸入空気量の増加)を、吸気温、外気温、冷却水温、燃料蒸発ガス濃度学習値、空燃比フィードバック補正量偏差、空燃比フィードバック補正量のなまし値の偏差の少なくとも1つに基づいて設定するようにしても良い。このようにすれば、燃料タンクからパージされる実際の燃料蒸発ガスの濃度に応じた適正な吸入空気量の増加量を設定することができ、異常診断時の空燃比のずれを少なくすることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
[実施形態(1)]
以下、本発明の実施形態(1)を図1乃至図21に基づいて説明する。まず、図1に基づいてシステム全体の概略構成を説明する。エンジン11の吸気管12の上流側にはエアクリーナ13が設けられ、このエアクリーナ13を通過した空気がスロットルバルブ14を通してエンジン11の各気筒に吸入される。スロットルバルブ14の開度は、アクセルペダル15の踏込み量によって調節される。また、吸気管12には、各気筒毎に燃料噴射弁16が設けられている。各燃料噴射弁16には、燃料タンク17内の燃料(ガソリン)が燃料ポンプ18により燃料配管19を介して送られてくる。燃料タンク17には、燃料タンク17内の圧力を検出する半導体圧力センサ等の圧力センサ20が設けられている。
【0024】
次に、パージ系21の構成を説明する。燃料タンク17には、連通管22を介してキャニスタ23が接続されている。このキャニスタ23内には、エバポガスを吸着する活性炭等の吸着体24が収容されている。また、キャニスタ23の底面部には、大気に連通する大気連通管25が設けられ、この大気連通管25にはキャニスタ閉塞弁26が取り付けられている。
【0025】
このキャニスタ閉塞弁26は、電磁弁により構成され、オフ状態では、スプリング(図示せず)により開弁状態に維持され、キャニスタ23の大気連通管25が大気に開放された状態に保たれる。そして、このキャニスタ閉塞弁26に所定電圧が印加されると、キャニスタ閉塞弁26が閉弁状態に切り換わり、大気連通管25が閉塞された状態になる。
【0026】
一方、キャニスタ23と吸気管12との間には、吸着体24に吸着されている燃料蒸発ガスを吸気管12にパージ(放出)するためのパージ通路30a,30bが設けられ、このパージ通路30a,30b間にパージ流量を調整するパージ制御弁31が設けられている。このパージ制御弁31は、電磁弁により構成されている。
【0027】
このパージ制御弁31のソレノイドコイル(図示せず)には、パルス信号にて電圧が印加され、このパルス信号の周期に対するパルス幅の比率(デューティ比)を調整することによって、パージ制御弁31の開閉周期に対する開弁時間の比率を調整して、キャニスタ23から吸気管12への燃料蒸発ガスのパージ流量を制御するようになっている。
【0028】
また、燃料タンク17の給油口17aには、リリーフ弁付きの燃料キャップ38が装着され、燃料タンク内圧が−40mmHg〜150mmHg(リリーフ圧)を越える内圧となった場合にリリーフ弁が開放して圧抜きすようになっている。従って、燃料タンク17からキャニスタ23までの区間は、常にこのリリーフ圧範囲内の圧力に抑えられている。
【0029】
次に、制御系の構成を説明する。制御回路39は、CPU40、ROM41、RAM42、入出力回路43等をコモンバス44を介して相互に接続して構成されている。また、入出力回路43には、スロットルセンサ45、アイドルスイッチ46、車速センサ47、吸気管圧力センサ49、冷却水温センサ50(温度検出手段)、吸気温センサ51(温度検出手段)等、エンジン運転状態を検出する各種センサが接続され、これら各種センサから入出力回路43を介して入力される信号及びROM41やRAM42内に記憶されたプログラムやデータ等に基づいて、燃料噴射制御、点火制御、燃料蒸発ガスパージ制御、パージ系21の異常診断等を実行し、燃料噴射弁16、点火プラグ52、キャニスタ閉塞弁26、パージ制御弁31等に入出力回路43を介して駆動信号を出力すると共に、パージ系21の異常を検出した時には警告ランプ53を点灯して運転者に知らせる。以下、制御回路39が実行する各種制御について説明する。
【0030】
[空燃比フィードバック制御]
空燃比フィードバック(F/B)制御ルーチンは、図2のフローチャートに従って、例えば4msec毎の割込み処理により実行される。本ルーチンの処理が開始されると、まず、ステップ101で、フィードバック実行条件が成立しているか否かを判定する。ここで、フィードバック実行条件としては、(1)エンジン始動時でないこと、(2)燃料カット中でないこと、(3)冷却水温THW≧40℃であること、(4)燃料噴射量TAU>TAUminであること(但しTAUminは燃料噴射弁16の最小燃料噴射量)、(5)排出ガスの酸素濃度を検出する酸素センサ(図示せず)が活性状態であること等があり、これら(1)〜(5)の条件を全て満たす場合に、フィードバック実行条件が成立し、1つでも満たさない条件があれば、フィードバック実行条件が不成立となる。もし、フィードバック実行条件が不成立であれば、ステップ102に進み、空燃比補正係数FAF(空燃比フィードバック補正量に相当)を「1.0」に設定して本ルーチンを終了する。
【0031】
一方、フィードバック実行条件が成立している場合には、ステップ103に進み、酸素センサの出力を所定の判定レベルと比較して、それぞれ所定時間H,I(msec)だけ遅らせて空燃比フラグXOXRを操作する。具体的には、酸素センサ出力がリッチからリーンに反転してからH(msec)後にXOXR=0(リーンを意味)にセットし、酸素センサ出力がリーンからリッチに反転してからI(msec)後にXOXR=1(リッチを意味)にセットする。
【0032】
次のステップ104で、上記空燃比フラグXOXRに基づいて空燃比補正係数FAFの値を次のように操作する。即ち、空燃比フラグXOXRが「0」→「1」または「1」→「0」に変化したときに、空燃比補正係数FAFの値を所定量スキップさせ、空燃比XOXRが「1」または「0」を継続しているときに、空燃比補正係数FAFの積分制御を行なう。この後、ステップ105で、空燃比補正係数FAFの値の上下限チェック(ガード処理)を行い、続くステップ106で、空燃比補正係数FAFを基に、スキップ毎又は所定時間毎になまし(平均化)処理を行なって空燃比補正係数のなまし値FAFAVを算出し、本ルーチンを終了する。
【0033】
[パージ率制御]
パージ率制御は、図3のフローチャートに従って例えば32msec毎の割込み処理により実行される。処理が開始されると、まず、ステップ201で冷却水温THWが80℃以上であるか否かを判定すると共に、ステップ202で空燃比フィードバック中であるか否かを判定する。このとき、エンジン暖機後(THW≧80℃)で且つ通常の空燃比フィードバックが実行されていれば(図2のステップ101の条件成立時)、ステップ201,202が共に「Yes」と判定され、ステップ205に進む。
【0034】
このステップ205で、パージ実施フラグXPRGに「1」をセットした後、ステップ206〜209で、最終パージ率PGR(吸入空気量に対するパージ流量の比率)を次のようにして演算する。まず、ステップ206で、吸気管圧力PMとエンジン回転数NEに基づいて図4の二次元マップから全開パージ率PGRMXを読み込む。次のステップ207で、目標TAU補正量KTPRGをエバポガス濃度平均値FGPGAVで除算して目標パージ率PGROを算出する(PGRO=KTPRG/FGPGAV)。
【0035】
ここで、目標TAU補正量KTPRGとは、燃料噴射量TAUを減量補正する際における最大補正量に相当する。また、エバポガス濃度平均値FGPGAVは、キャニスタ23内のエバポガス吸着量に対応しており、後述の処理によって推定され、随時更新されつつRAM42に書き込まれている。従って、目標パージ率PGROは、目標TAU補正量KTPRGまで一杯に燃料噴射量を減量することを想定したとき、どれだけのエバポガスをパージによって補充したらよいかに対応する。この場合、同じ運転状態であれば、目標パージ率PGROはエバポガス濃度平均値FGPGAVが大きいほど小さな値となる。尚、本実施形態では、目標TAU補正量KTPRGを例えば30%に設定している。
【0036】
目標パージ率PGROの算出後、ステップ208で、パージ率徐変値PGRDを読み込む。ここで、パージ率徐変値PGRDとは、パージ率をいきなり大きく変更すると、補正が追いつかず最適な空燃比を保てなくなってしまうため、これを避けるために設けられた制御値である。このパージ率徐変値PGRDの設定方法は後述するパージ率徐変制御にて説明する。
【0037】
このようにして全開パージ率PGRMX、目標パージ率PGRO、パージ率徐変値PGRDが求められたら、ステップ209に進み、これらのうちで最小値を最終パージ率PGRとして決定する。この最終パージ率PGRにてパージ制御が実施される。この場合、通常はパージ率徐変値PGRDにて最終パージ率PGRが制御され、このパージ率徐変値PGRDが増え続ければ、最終パージ率PGRは全開パージ率PGRMX又は目標パージ率PGROによって上限ガードされることになる。
【0038】
一方、前記ステップ201でTHW<80℃のとき、或は、ステップ202で空燃比フィードバック中でないときには、ステップ210に進み、パージ実施フラグXPRFを「0」にクリアすると共に、続くステップ211で、最終パージ率PGRを「0」にリセットして、本ルーチンを終了する。この最終パージ率PGRが「0」とということは、エバポガスパージを実施しないことを意味する。つまり、エンジン11の暖機前等、冷却水温が低い場合(THW<80℃)には水温補正によってパージ以外の燃料増量が実施され、パージ率制御は実行されない。
【0039】
[パージ率徐変制御]
パージ率徐変制御は、図5のフローチャートに従って例えば32msec毎の割込み処理により実行される。処理が開始されると、まずステップ301で、パージ実施フラグXPRGが「1」であるか否かを判定し、XPRG=0の場合、つまりパージ率制御が実行されない場合には、ステップ306に進み、パージ率徐変値PGRDを「0」として本ルーチンを終了する。
【0040】
一方、XPRG=1の場合には、ステップ302に進み、空燃比補正係数FAFのズレ量|1−FAFAV|を検出する。このとき、|1−FAFAV|≦5%であれば、ステップ303に進み、前回の最終パージ率PFR(i-1) に「0.1%」加算した値を今回のパージ率徐変値PFRDとする。また、5%<|1−FAFAV|≦10%であれば、ステップ304に進んで、前回の最終パージ率PGR(i-1) を今回のパージ率徐変値PGRDとする。|1−FAFAV|>10%であれば、ステップ305に進んで、前回の最終パージ率PGR(i-1) から「0.1%」減算した値を今回のパージ率徐変値PGRDとする。パージ率を大きく変更すると補正が追いつかず、最適な空燃比を保てなくなってしまうため、パージ率徐変値PGRDによってこの様な問題を避けることは前述した通りである。
【0041】
[燃料蒸発ガス濃度検出]
燃料蒸発ガス濃度検出は、図6のフローチャートに従って例えば4msec毎の割込み処理により実行される。処理が開始されると、まずステップ401で、キースイッチ投入時であるか否かを判定する。キースイッチ投入時であれば、ステップ412〜414で各データを初期化し、燃料蒸発ガス濃度FGPG=1.0、燃料蒸発ガス濃度平均値FGPGAV=1.0、初回濃度検出終了フラグXNFGPG=0にリセットする。ここで、燃料蒸発ガス濃度FGPG=1.0,燃料蒸発ガス濃度平均値FGPGAV=1.0は、燃料蒸発ガス濃度が「0」であること(換言すればキャニスタ23に燃料蒸発ガスが全く吸着されていないこと)を意味する。エンジン始動時には初期化により吸着量が「0」に仮定される。初回濃度検出終了フラグXNFGPG=0は、エンジン始動後に未だ燃料蒸発ガス濃度が検出されていないことを意味する。
【0042】
キースイッチ投入後は、ステップ402に進み、パージ実施フラグXPRGが「1」であるか否か、即ちパージ制御が開始されているか否かを判定する。ここで、XPRG=0(パージ制御開始前)の場合には、そのまま本ルーチンを終了する。一方、XPRG=1(パージ制御開始後)の場合には、ステップ403に進み、車両が加減速中であるか否かを判定する。ここで、加減速中であるか否かの判定は、アイドルスイッチ46のオフ、スロットルバルブ14の弁開度変化、吸気管圧力変化、車速変化等の検出結果によって行われる。そして、加減速中であると判定されると、そのまま本ルーチンを終了する。つまり、加減速中(エンジン運転の過渡状態)では燃料蒸発ガス濃度検出が禁止され、誤検出防止が図られる。
【0043】
また、上述したステップ403で、加減速中でないと判定されると、ステップ404に進み、初回濃度検出終了フラグXNFPGが「1」であるか否か、即ち燃料蒸発ガス濃度の初回検出が終了しているか否かを判定する。ここで、XNFGPG=1(初回濃度検出後)であれば、ステップ405に進み、XNFPG=0(初回濃度検出前)であればステップ405を飛び越してステップ406に進む。
【0044】
最初は、燃料蒸発ガス濃度検出が終了していないので(XNFGPG=0)、ステップ404からステップ406に進み、空燃比補正係数のなまし値FAFAVが基準値(=1)に対して所定値ω(例えば2%)以上の偏差を有するか否かを判定する。つまり、燃料蒸発ガスパージによる空燃比のズレ量が小さすぎると燃料蒸発ガス濃度が正しく検出できない。そのため、空燃比のズレ量が小さければ(|1−FAFAV|≦ω)、そのまま本ルーチンを終了する。また、空燃比のズレ量が大きければ(|1−FAFAV|>ω)、ステップ407に進み、次の(1)式により燃料蒸発ガス濃度FGPGを検出する。
FGPG=FGPG(i-1) +(FAFAV−1)/PGR ……(1)
上式において、(FAFAV−1)は空燃比フィードバック補正量偏差に相当し、PGRは、図3のステップ209で算出された最終パージ率である。
【0045】
前述のごとく燃料蒸発ガス濃度FGPGの初期値は「1」であり、上式により、空燃比がリッチ寄りかまたはリーン寄りかに応じて燃料蒸発ガス濃度FGPGが徐々に更新される。この場合、実際の燃料蒸発ガス濃度が高いほど(キャニスタ23の吸着量が多いほど)、燃料蒸発ガス濃度FGPGの値は「1」を基準に減じられる。また、燃料蒸発ガス濃度FGPGの値は、実際の燃料蒸発ガス濃度の低下分(キャニスタ23のパージ量)に応じて増加させられる。具体的には、空燃比がリッチであれば(FAFAV−1<0)、燃料蒸発ガス濃度FGPGの値は、「FAFAV−1」を最終パージ率PGRで除算した値だけ小さくなる。また、空燃比がリーンであれば(FAFAV−1>0)、燃料蒸発ガス濃度FGPGの値は、「FAFAV−1」を最終パージ率PGRで除算した値だけ大きくなる。
【0046】
その後、ステップ408に進み、初回濃度検出終了フラグXNFGPGが初回濃度検出終了を意味する「1」であるか否かを判定する。ここで、XNFGPG=0(初回濃度検出前)であれば、ステップ409に進み、燃料蒸発ガス濃度FGPGの前回検出値と今回検出値との変化が所定値(例えば3%)以下の状態が例えば3回以上継続したか否かによって、燃料蒸発ガス濃度FGPGが安定したか否かを判定する。燃料蒸発ガス濃度FGPGが安定すると、次のステップ410に進み、初回濃度検出終了フラグXNFGPGに「1」をセットした後、ステップ411に進む。
【0047】
一方、上記ステップ408で、XNFGPG=1の場合、又はステップ409で燃料蒸発ガス濃度FGPGが安定していないと判定された場合、ステップ411へジャンプし、今回の燃料蒸発ガス濃度FGPGを平均化するために、所定のなまし演算(例えば1/64なまし演算)を実行し、燃料蒸発ガス濃度平均値FGPGAVを求める。
【0048】
このようにして初回濃度検出が終了すると(XNFGPG=1がセットされると)、ステップ404が常に「Yes」と判定され、ステップ405に進んで、最終パージ率PGRが所定値β(例えば0%)を越えるか否かを判定する。そして、PGR>βの場合のみ、ステップ406以降の燃料蒸発ガス濃度検出を実行する。つまり、パージ実施フラグXPRGがセットされていても最終パージ率PGRが「0」となり、実際にはエバポパージが実施されていないことがある。そのため、初回濃度検出時以外は、最終パージ率PGR=0の場合に燃料蒸発ガス濃度の検出を行なわないようにしている。
【0049】
尚、最終パージ率PGRが小さい場合、即ちパージ制御弁31が低流量側で制御されている場合は開度制御の精度が比較的低く、燃料蒸発ガス濃度検出の信頼性が低い。そこで、ステップ405の所定値βをパージ制御弁31の低開度域に設定し(例えば0%<β<2%)、初回検出時以外は、精度の良い検出条件が揃った場合のみ、燃料蒸発ガス濃度検出を行うようにしても良い。
【0050】
[燃料噴射量制御]
燃料噴射量制御は、図7のフローチャートに従って例えば4msec毎の割込み処理により実行される。処理が開始されると、まずステップ501で、燃料カットフラグXFCが燃料カット不実行を意味する「0」であるか否かを判別し、XFC=1(燃料カット実行)であれば、ステップ507に進んで、燃料噴射量TAUを「0」にして本ルーチンを終了する。これにより、燃料カットが実行される。
【0051】
一方、XFC=0(燃料カット不実行)であれば、ステップ502に進み、ROM41内にマップとして格納されているデータに基づき、エンジン回転数NEと負荷(例えば吸気管圧力PM)に応じた基本噴射量TPを算出する。そして、次のステップ503で、エンジン11の運転状態に関する各種の補正係数Ka(冷却水温補正係数、始動後補正係数、吸気温補正係数等)を算出する。
【0052】
その後、ステップ505で、空燃比フィードバック補正係数FAF、空燃比学習値KGj、見込み補正係数FLEAKを用いて次の(3)式により空燃比補正係数Kmを求める。
Km=1+(FAF−1)+(KGj−1)−FLEAK ……(3)
【0053】
ここで、見込み補正係数FLEAKは、パージ系21の異常診断時にパージ系21内に吸気管負圧を導入する際に、燃料タンク17を含むパージ系21から燃料蒸発ガスが吸気管12にパージされることによる空燃比のずれを見込み補正するためのものである。この見込み補正係数FLEAKの算出方法については後述する。また、空燃比学習値KGjはRAM42に記憶保持されるバックアップデータであり、各エンジン運転領域毎に設定される係数である。
【0054】
この後、ステップ506で、空燃比補正係数Kmと上記各種補正係数Kaを基本噴射量TPに乗算して燃料噴射量TAUを求める。
TAU=TP×Km×Ka
そして、CPU40は、所定の燃料噴射タイミングで燃料噴射量TAUに基づいて燃料噴射弁16による燃料噴射を実行する。上記ステップ505,506の処理が特許請求の範囲でいう見込み補正手段としての役割を果たす。
【0055】
[パージ制御弁の制御]
パージ制御弁31の制御は、図8のフローチャートに従って例えば100msec毎に割込み処理により実行される。処理が開始されると、まずステップ601で、パージ実施フラグXPRGがパージ実施を意味する「1」であるか否かを判定し、XPRG=0(パージ不実施)であれば、ステップ602に進み、パージ制御弁31を駆動させるための制御値Dutyを「0」とする。また、XPRG=1(パージ実施)であれば、ステップ603に進み、最終パージ率PGR及びその時点での運転状態に見合った全開パージ率PGRMXに基づき、次の(4)式により制御値Dutyを算出する。
Duty=(PGR/PGRMX)・(100−Pv)・Ppa+Pv……(4)
【0056】
この式で、パージ制御弁31の駆動周期は100msecに設定されている。また、Pvはバッテリ電圧の変動に対する電圧補正値(駆動周期補正用の時間相当量)であり、Ppaは大気圧の変動に対する大気圧補正値である。上記(4)式で算出された制御値Dutyに基づき、パージ制御弁31の駆動パルス信号のデューティ比が設定される。
【0057】
[異常診断]
パージ系21の異常診断は、キースイッチ(図示せず)が投入されると、図9及び図10のフローチャートに従って所定時間毎(例えば256msec毎)に繰り返し実行される。この異常診断ルーチンが特許請求の範囲でいう異常診断手段としての役割を果たす。本ルーチンの処理が開始されると、まず、図9のステップ701で、異常診断実行条件が成立しているか否かを判定する。ここで、異常診断実行条件は、エンジン運転状態が安定しているときに成立する。アイドル中であっても、エンジン運転状態が安定していれば、異常診断実行条件が成立する。
【0058】
もし、この異常診断実行条件が不成立であれば、異常診断を禁止し、図10のステップ741に進んで、キャニスタ閉塞弁26を全開し、続くステップ742で、パージ制御弁31を通常の制御状態にした後、ステップ731に進み、第1〜第4の各フラグF1,F2,F3を「0」にリセットして本ルーチンを終了する。
【0059】
一方、上記ステップ701で、異常診断実行条件成立と判定されれば、図9のステップ710〜712に進み、現在の処理がどの段階まで進んでいるか否かを判定しつつ、種々のステップへ分岐する。処理は第1〜第4段階の4つであり、第1〜第3の各フラグF1〜F3の設定状態から処理段階を判断できるようになっている。全てのフラグF1〜F3が「0」に設定されているとき、即ちステップ710〜712が全て「No」のときが第1段階であり、ステップ713に進む。
【0060】
第1段階では、まずステップ713で、パージ制御弁31を全閉にした後、ステップ714で、キャニスタ閉塞弁26を全閉にして燃料タンク17から吸気管12までのパージ系21を密閉状態にする。即ち、図11に示すように、まずキャニスタ閉塞弁26が開放状態のときに時刻T1でパージ制御弁31を全閉にすることで、燃料タンク17からパージ制御弁31までのパージ経路を大気連通管25を介して大気圧と同じ圧力に保ち、やや遅れて時刻T2でキャニスタ閉塞弁26を全閉にすることで、大気圧に保たれた密閉パージ経路を形成する。
【0061】
そして、次のステップ715で、図11の時刻T2での燃料タンク内圧P1aを読み込み、タイマTをリセットスタートさせた後、ステップ716に進み、タイマTのカウント値が10秒以上になったか否かを判定する。10秒経過前であれば、ステップ717に進み、第1フラグF1を「1」にセットして本ルーチンを終了する。
【0062】
これ以後、第2段階の処理となる。この第2段階では、ステップ710で「Yes」と判定されるようになり、ステップ701→ステップ710→ステップ716→……と処理を繰り返す。この間、圧力センサ20の検出値は、図11の時刻T2から時刻T3の間において、燃料タンク17内での燃料蒸発ガスの発生量に応じて0mmHgから上昇する。
【0063】
その後、時刻T2(P1aの検出時点)から10秒が経過すると、図9のステップ718に進み、圧力センサ20からの入力信号を読み込んで、このときの燃料タンク内圧P1bを記憶し、続くステップ719で、10秒間の圧力変化量ΔP1を算出した後、ステップ720で、第1フラグF1をリセットする。これによって第2段階の処理が終了し、第3段階へ移る。
【0064】
この第3段階では、まずステップ721で、パージ制御弁31を全閉から全開状態に切り換え吸気管負圧導入制御を開始すると同時に、ステップ722で、タイマTをリセットスタートする。ここで、パージ制御弁31が全開されることにより、それ以前の大気圧下のパージ系21内に吸気管負圧を導入し始める(図11の時刻T3)。従って、パージ系21に圧力漏れ等による異常がなければ、圧力センサ20の検出値は下降し始める。
【0065】
次のステップ723では、この圧力センサ20からの入力信号に基づいて燃料タンク内圧PTが−20mmHg以下になったか否かを判定し、PT>−20mmHgであれば、ステップ732に進み、パージ制御弁31の全開後10秒が経過したか否かを判定する。10秒経過前であれば、ステップ737に進み、第2のフラグF2を「1」にセットする。この後、ステップ738〜740で、パージ系21への吸気管負圧の導入が安定した状態で行われているか否かを判定する。具体的には、まずステップ738で、燃料噴射量補正値FAFLEAKが上限ガード値KFLEAKMX以上であるか否かを判定し、FAFLEAK≧KFLEAKMXであれば、ステップ739に進み、空燃比フィードバック補正係数FAFが±15%以上であるか否かを判定する。そして、FAF≧±15%であれば、ステップ740に進んで、パージ制御弁31を駆動するための制御値Dutyが8%より小さいか否かを判定する。
【0066】
これらステップ738〜740の判定が全て「Yes」の場合、つまり吸気管負圧の導入が不安定の場合には、異常診断を禁止し、キャニスタ閉塞弁26を全開して(ステップ741)、パージ制御弁31を通常の制御状態に戻し(ステップ742)、第1〜第4の各フラグF1,F2,F3を「0」にリセットして(ステップ731)、本ルーチンを終了する。
【0067】
一方、ステップ738〜740のいずれかが「No」と判定された場合、つまり燃料噴射量補正値FAFLEAKが上限ガード値KFLEAKMXより小さいとき、或は、空燃比フィードバック補正係数FAFが±15%より小さいとき、或は、パージ制御弁31を駆動するための制御値Dutyが8%以上のときには、吸気管負圧の導入が安定しており、本ルーチンを終了する。
【0068】
尚、吸気管負圧導入制御が、Dutyではなく、パージ率PGRで行われている場合には、ステップ740の判定処理を「PGR<0.2%?」に代え、PGR<0.2%であるとき、異常診断を禁止するようにしても良い。
【0069】
前述したステップ737で、第2のフラグF2が「1」にセットされることで、次回以降の本ルーチン実行時には、ステップ710で「No」、ステップ711で「Yes」と判定されるようになり、ステップ701〜711→ステップ723→……と処理を繰り返す。この状態は、ステップ723又はステップ732が「Yes」となると終了する。ステップ732の方が先に「Yes」となった場合には、燃料タンク17から吸気管12までのパージ系21のどこかに閉塞部分があることを意味し、ステップ733で、パージ系詰りフラグFclose を「1」に設定し、続くステップ734で、警告ランプ53を点灯する。
【0070】
一方、ステップ723の方が先に「Yes」となった場合には、ステップ724に進んで、第2のフラグF2をリセットし、続くステップ725で、パージ制御弁31を再び全閉にした後、ステップ726で、圧力センサ20からの入力信号を読み込んで、パージ系21を負圧密閉状態にした直後の燃料タンク内圧P2aを記憶すると共にタイマTをリセットスタートする。これによって、第3段階から第4段階に移行する。
【0071】
上記ステップ724〜726の処理が実行されることにより、図11に示すように、時刻T4でパージ系21は−20mmHgの負圧状態で密閉された状態となる。これ以後、圧力センサ20の検出値は、時刻T4から時刻T5の間で燃料タンク17内での燃料蒸発ガスの発生量に応じて−20mmHgから上昇していくことになる。
【0072】
そして、次のステップ727で、P2aの読み込み後、10秒が経過したか否かを判定し、10秒経過前は、ステップ735に進み、第3のフラグF3を「1」に設定して本ルーチンを終了する。これにより、次回以降の本ルーチン実行時には、ステップ710,711で「No」、ステップ712で「Yes」と判定されるようになり、ステップ701〜712→ステップ727→……と処理を繰り返す。
【0073】
この後、P2aの読み込みから10秒が経過すると、ステップ728に進み、圧力センサ20からの入力信号を読み込んで、時刻T6での燃料タンク内圧P2bを記憶し、密閉後10秒間の圧力変化量ΔP2 (=P2b−P2a)を計算する。この後、ステップ730で、次の(5)式で示されたリーク判定条件に基づいてリークがあるか否かを判定する。
ΔP2 >α・ΔP1 +β ……(5)
【0074】
ここで、αは大気圧と負圧の違いによる燃料蒸発量の差を補正する係数、βは圧力センサ20の検出精度、キャニスタ閉塞弁26の圧力漏れなどを補正する係数である。上記(5)式を満たせば、「リーク有り」と判定される。即ち、燃料タンク17からパージ制御弁31までの密閉区間にリーク原因があるならば、正圧下では密閉区間から大気中への流出が起こる一方、負圧下では大気中から密閉区間への空気の流入が起こる。従って、「(大気圧下の圧力変化量ΔP1 )=(燃料タンク17からの燃料蒸発ガスの発生量)−(密閉区間から大気中への流出量)」よりも「(負圧下の圧力変化量ΔP2 )=(燃料タンク17からの燃料蒸発ガスの発生量)+(大気中から密閉区間への流入量)」の方が大きくなる。この関係から、上記(5)式のリーク判定条件が導き出されたものである。
【0075】
上記(5)式のリーク判定条件を満足する場合、つまりステップ730で「リーク有り」と判定された場合には、燃料タンク17から吸気管12までのパージ経路のどこかにリーク原因となる部分があることを意味し、ステップ736で、パージ経路リークフラグFleakを「1」に設定し、続くステップ734で、警告ランプ53を点灯する。一方、ステップ730で「No」と判定された場合、つまりリークが発生していない場合には、ステップ731に進み、第1〜第3の各フラグF1〜F3を強制的にリセットして本ルーチンを終了する。
【0076】
[見込み補正係数算出]
前述した図7の燃料噴射量制御ルーチンのステップ505で用いる見込み補正係数FLEAKは、次のいずれかの方法で算出される。
【0077】
《見込み補正の第1例》
図12のフローチャートに従って例えば4msec毎の割込み処理により次のようにして見込み補正係数FLEAKが算出される。まず、ステップ511で、後述する第2のフラグF2が吸気管負圧導入中を意味する「1」であるか否かを判定し、F2=0の場合(吸気管負圧導入中でない場合)には、見込み補正は不要であるので、ステップ512に進み、見込み補正係数FLEAKを0に維持して、本ルーチンを終了する。
【0078】
これに対し、上記ステップ511で、F2=1(吸気管負圧導入中)の場合には、ステップ513に進み、吸気温センサ51で検出した吸気温を読み込んだ後、ステップ514に進み、図13に示す吸気温をパラメータとする見込み補正係数FLEAKのテーブルを検索して、その時の吸気温に応じた見込み補正係数FLEAKを求めて、見込み補正を実施する。
【0079】
この場合、吸気温に応じて燃料タンク17内の雰囲気温度ひいては燃料タンク17内の燃料蒸発ガスの濃度が変化し、燃料蒸発ガスの濃度によって吸気管負圧導入時の空燃比のずれ量が変化することを考慮し、吸気温から見込み補正係数FLEAKを求めるものである。
【0080】
その後、吸気管負圧導入が終了すると(F2=0になると)、ステップ512に進み、見込み補正係数FLEAKを0にセットして見込み補正を終了する。
【0081】
本例では、図14に示すように、異常診断実行条件成立時にキャニスタ閉塞弁26を全閉にし、パージ制御弁31を開放して、パージ系21内に吸気管負圧の導入を開始すると同時に、見込み補正係数FLEAKを、吸気温に応じた値に設定して、空燃比補正係数Kmを見込み補正係数FLEAKの分だけリーン側にオフセットさせる。これにより、吸気管負圧導入時には、燃料噴射量が見込み補正係数FLEAKの分だけリーン側に補正され、燃料タンク17からの燃料蒸発ガスのパージによる空燃比のリッチ側へのずれが抑えられる。この結果、アイドル中にパージ系21の異常診断を行っても、空燃比がリッチ側に大きくずれることが防止され、エミッションやドライバビリティを悪化させずに、パージ系21の異常を早期発見することができる。
【0082】
尚、見込み補正係数FLEAKを求めるパラメータとして、吸気温に代えて、外気温又は冷却水温を用いても良く、或は、吸気温、外気温、冷却水温のうちから2つ以上を用いても良い。
また、見込み補正係数FLEAKを変化させずに常に固定値(例えば平均的な値)を用いるようにしても良い。
【0083】
《見込み補正の第2例》
上記第1例では、吸気温から直接、見込み補正係数FLEAKを求めたが、第2例では、図15のフローチャートに従って燃料タンク17内の雰囲気温度を推定して、この雰囲気温度から見込み補正係数FLEAKを求める。以下、図15のルーチンの処理内容を具体的に説明する。
【0084】
本ルーチンも、例えば4msec毎の割込み処理により実行される。処理が開始されると、まずステップ521で、燃料タンク17内の雰囲気温度を次式により推定する。
【0085】
雰囲気温度=始動時雰囲気温度To+始動後上昇温度ΔT
ここで、始動時雰囲気温度Toは、始動時の吸気温、外気温、冷却水温、過去の最低吸気温の少なくとも1つから推定した始動時の燃料タンク17内の雰囲気温度である。この始動時雰囲気温度Toは、始動時に算出されてRAM42に記憶され、その後は、RAM42の記憶値が用いられる。
【0086】
始動後上昇温度ΔTは、始動後に生じた燃料タンク17内の雰囲気温度の上昇量である。この始動後上昇温度ΔTは、例えば次の▲1▼又は▲2▼のいずれかの方法で算出される。
【0087】
▲1▼図16(a)のテーブルを検索して始動後の経過時間に応じて燃料温度上昇量ΔT1を算出すると共に、図16(b)のテーブルを検索して平均車速に応じて燃料温度上昇量ΔT2を算出する。この後、2つの燃料温度上昇量ΔT1,ΔT2を加算して始動後上昇温度ΔTを求める(ΔT=ΔT1+ΔT2)。尚、図16(b)のテーブルのパラメータとして、平均車速に代えて、平均エンジン回転数、平均負荷、その他の車両走行状態データのいずれかを用いても良く、或は、これらの中から2つ以上のパラメータを用いても良い。
【0088】
▲2▼現在の車速と、その車速が継続する時間とをパラメータとして、図17の二次元マップから温度上昇量を求め、この温度上昇量を始動時から積算して始動後上昇温度ΔTを求める。この場合も、車速に代えて、エンジン回転数、負荷等の他の車両走行状態データを用いても良い。
【0089】
以上のようにして、ステップ521で、燃料タンク17内の雰囲気温度を推定した後、ステップ522で、F2=1(吸気管負圧導入中)と判定されれば、ステップ524に進み、図18に示す雰囲気温度をパラメータとする見込み補正係数FLEAKのテーブルを検索し、上記ステップ521で推定した雰囲気温度に応じた見込み補正係数FLEAKを求めて、見込み補正を実施する。その後、吸気管負圧導入が終了すると(F2=0になると)、ステップ523に進み、見込み補正係数FLEAKを0にセットして見込み補正を終了する。
【0090】
上記燃料タンク17内の雰囲気温度を推定するステップ521の処理は、特許請求の範囲でいう雰囲気温度推定手段としての役割を果たす。
【0091】
《見込み補正の第3例》
吸気管負圧導入の際に、図19に示す燃料蒸発ガス濃度学習値をパラメータとする見込み補正係数FLEAKのテーブルを検索して、その時の燃料蒸発ガス濃度学習値に応じた見込み補正係数FLEAKを求める。ここで、燃料蒸発ガス濃度学習値は、前述した図6の燃料蒸発ガス濃度検出ルーチンによって検出された燃料蒸発ガス濃度を学習して求められる。
【0092】
《見込み補正の第4例》
上述したいずれかの方法で算出した見込み補正係数FLEAKを、吸気管負圧導入中に、空燃比フィードバック補正係数FAFの偏差(FAF−1)によって次式により補正する。
FLEAK=FLEAK−(FAF−1)
【0093】
このようにして求めた見込み補正係数FLEAKを用いた場合の制御例を図20に基づいて説明する。吸気管負圧の導入を開始すると同時に、見込み補正係数FLEAKがステップ的に入り、その後は、見込み補正係数FLEAKが空燃比フィードバック補正係数の偏差(FAF−1)に応じて補正される。このようにすれば、吸気管負圧導入中(見込み補正実施中)に、空燃比がずれ始めたとしても、その空燃比のずれに応じて見込み補正係数FLEAKが適正化され、空燃比のずれが修正される。
【0094】
《見込み補正の第5例》
空燃比フィードバック補正係数FAFの偏差(FAF−1)に代えて、前記図2のステップ106で算出した空燃比フィードバック補正係数なまし値FAFAVの偏差(FAFAV−1)を用いて、吸気管負圧導入中に見込み補正係数FLEAKを次式により補正する。
FLEAK=FLEAK−(FAFAV−1)
【0095】
この場合も、図21に示すように、吸気管負圧導入中に、空燃比がずれ始めたとしても、その空燃比のずれに応じて見込み補正係数FLEAKが適正化され、空燃比のずれが修正される。
【0096】
[参考例(1)]
次に、図22及び図23に基づいて参考例(1)を説明する。この参考例(1)では、図22の燃料噴射量制御ルーチンによって次のようにして燃料噴射量TAUを算出する。本願発明の実施形態(1)と同じく、ステップ501〜503において、XFC=0(燃料カット不実行)の場合に、基本噴射量TPを算出し、エンジン11の運転状態に関する各種の補正係数Kaを算出する。
【0097】
この後、ステップ504で、図6のルーチンで算出した燃料蒸発ガス濃度FGPGAVと図3のルーチンで算出した最終パージ率PGRとを用いてパージ補正係数FPGを次式により算出する。
FPG=(FGPGAV−1)・PGR
【0098】
このパージ補正係数FPGは、パージ率制御処理によって決定された条件でパージを実行することによってキャニスタ23から補充される燃料量を意味し、この係数の相当量が基本噴射量TPから減量補正されることになる。上式において、「FGPGAV−1」は、特許請求の範囲でいう「パージ率1%当りの空燃比フィードバック補正量偏差」に相当し、パージ補正係数FPGは、特許請求の範囲でいうエバポ濃度補正量に相当する。従って、パージ補正係数FPGを算出するステップ504の処理は、特許請求の範囲でいうエバポ濃度補正量算出手段としての役割を果たす。
【0099】
パージ補正係数FPGの算出後、ステップ505で、空燃比フィードバック補正係数FAF、空燃比学習値KGj、パージ補正係数FPG、見込み補正係数FLEAKから次式により空燃比補正係数Kmを求める。
Km=1+(FAF−1)+(KGj−1)+FPG−FLEAK
その他の処理は、前記実施形態(1)で説明した図7の処理と同じである。
【0100】
以上説明した参考例(1)では、図23に示すように、吸気管負圧導入開始後に、見込み補正係数FLEAKに加え、パージ補正係数FPGによる補正も加えられる。このため、吸気管負圧導入開始後に、キャニスタ23から離脱する燃料蒸発ガスのパージによる影響も考慮され、空燃比のリッチ側へのずれが効果的に抑えられる。
【0101】
[参考例(2)]
上記実施形態(1),参考例(1)では、いずれも、吸気管負圧の導入開始と同時に見込み補正を開始するようにしたが、図24乃至図26に示す参考例(2)では、吸気管負圧導入開始後に燃料タンク17内の燃料蒸発ガスが配管を通って吸気管12に到達するまでに時間遅れがあることを考慮し、吸気管負圧導入開始から所定の遅延時間遅延して見込み補正を開始する。
【0102】
この処理は、図24の見込み補正係数算出ルーチンによって次のように行われる。吸気管負圧の導入が開始されると(F2=1になると)、ステップ531からステップ532に進み、吸気管負圧導入開始から所定の遅延時間経過しているか否かを判定し、所定の遅延時間経過していなければ、ステップ534に進み、見込み補正係数FLEAKを0に維持して、見込み補正を開始しない。
【0103】
ここで、遅延時間は、一定時間でも良いが、本実施形態(3)では、図25に示す燃料蒸発ガス濃度学習値をパラメータとする遅延時間のテーブルを検索し、その時の燃料蒸発ガス濃度学習値に応じた適切な遅延時間を設定する。尚、遅延時間を設定するパラメータとして、燃料蒸発ガス濃度学習値に代えて、吸気温、外気温、冷却水温、燃料タンク17内の雰囲気温度のいずれかを用いても良く、或は、これらの中から2つ以上を用いても良い。
【0104】
そして、吸気管負圧導入開始から所定の遅延時間経過した時点で、ステップ532からステップ533に進み、前記実施形態(1)で説明したいずれかの見込み補正係数算出方法で見込み補正係数FLEAKを算出し、見込み補正を開始する。
その後、吸気管負圧導入が終了すると(F2=0になると)、ステップ534に進み、見込み補正係数FLEAKを0にセットして見込み補正を終了する。
【0105】
以上説明した参考例(2)では、図26に実線で示すように吸気管負圧導入開始から所定の遅延時間遅延して見込み補正を開始するため、燃料タンク17内の燃料蒸発ガスが吸気管12に到達するタイミングに合わせて見込み補正を開始することができ、見込み補正の精度を更に向上できる。
【0106】
尚、参考例(2)のように、吸気管負圧導入開始と同時(パージ制御弁31が開き始めると同時)に遅延時間の計時を開始しても良いが、パージ制御弁31の制御値Dutyが所定値以上(所定開度以上)になってから遅延時間の計時を開始するようにしても良い。
【0107】
また、見込み補正を遅延させる処理に代えて、図26に点線で示すように、吸気管負圧導入開始後に見込み補正係数FLEAKを徐々に増加させる徐変処理を実施するようにしても良く、この場合も、遅延処理とほぼ同様の効果を得ることができる。徐変処理の開始タイミングは、▲1▼吸気管負圧導入開始と同時(パージ制御弁31が開き始めると同時)、▲2▼パージ制御弁31の制御値Dutyが所定値以上になった時、▲3▼所定の遅延時間経過後のいずれであっても良い。徐変パターン(見込み補正係数FLEAKの増加率)は、一定でも良いが、上述した遅延時間の設定と同様に、燃料蒸発ガス濃度学習値、吸気温、外気温、冷却水温、燃料タンク17内の雰囲気温度のいずれか1つ以上を用いて設定しても良い。
【0108】
[参考例(3)]
上記実施形態(1)、上記参考例(1)〜(2)では、吸気管負圧導入中に燃料噴射量を見込み補正するようにしたが、参考例(3)では、異常診断時にパージ系21内に吸気管負圧を導入する際又はその前に、エンジン回転数NEを増加させて吸入空気量を増加させることで、燃料タンク17からの燃料蒸発ガスのパージによる影響を少なくする。
【0109】
この制御は、図27に示す異常診断時回転数増加制御ルーチンによって例えば4msec毎の割込み処理にて実行される。本ルーチンの処理が開始されると、まずステップ801で、異常診断実行条件が成立しているか否かを判定し、異常診断実行条件が不成立であれば、以降の処理を行うことなく、本ルーチンを終了する。
【0110】
その後、異常診断実行条件が成立した時に、ステップ801からステップ802に進み、エンジン回転数NEを増加させるタイミングであるか否かを判定する。ここで、エンジン回転数NEを増加させるタイミングは、図29に示すように、▲1▼キャニスタ閉塞弁26の閉弁時、▲2▼パージ制御弁31の開弁時(吸気管負圧導入開始時)、▲3▼キャニスタ閉塞弁26の閉弁前のいずれかで良い。尚、▲3▼の場合には、異常診断実行条成立後に、エンジン回転数NEを増加させてから、キャニスタ閉塞弁26を閉弁する。
【0111】
上記ステップ802で、まだ、エンジン回転数NEを増加させるタイミングに達していないと判定されれば、そのまま本ルーチンを終了する。その後、エンジン回転数NEを増加させるタイミングに達した時点で、ステップ803に進み、エンジン回転数NEを増加させる。この際、エンジン回転数NEの増加量は、一定量でも良いが、本参考例(3)では、図28に示す燃料蒸発ガス濃度学習値をパラメータとする回転数増加量のテーブルを検索し、その時の燃料蒸発ガス濃度学習値に応じた適切な回転数増加量を設定する。
【0112】
尚、回転数増加量を設定するパラメータとして、燃料蒸発ガス濃度学習値に代えて、吸気温、外気温、冷却水温、燃料タンク17内の雰囲気温度のいずれかを用いても良く、或は、これらの中から2つ以上を用いても良い。図27の異常診断時回転数増加制御ルーチンは特許請求の範囲でいう異常診断時回転数増加制御手段としての役割を果たす。
【0113】
以上説明した参考例(3)では、異常診断時にパージ系21内に吸気管負圧を導入する際又はその前に、エンジン回転数NEを増加させて吸入空気量を増加させるようにしたので、アイドル中にパージ系21の異常診断(吸気管負圧の導入)を行っても、燃料タンク17からの燃料蒸発ガスのパージによる影響を少なくすることができて、空燃比がリッチ側に大きくずれることを防止でき、エミッションやドライバビリティを悪化させずに、パージ系21の異常を早期発見することができる。
【0114】
尚、吸気管負圧導入中に、空燃比フィードバック補正係数の偏差(FAF−1)に応じて、図30のテーブルから回転数増加量の補正量を求めて、回転数増加量を補正するようにしても良い。このようにすれば、吸気管負圧導入中の空燃比のずれを精度良く修正することができる。この場合、空燃比フィードバック補正係数の偏差(FAF−1)に代えて、空燃比フィードバック補正係数のなまし値の偏差(FAFAV−1)を用いても良い。
【0115】
[参考例(4)]
本参考例(4)では、実施形態(1)、参考例(1)〜(2)で採用した見込み補正と、参考例(3)で採用した回転数増加制御とを組み合わせて実施することで、吸気管負圧導入中の空燃比のずれを防止する。見込み補正と回転数増加制御との組み合せは次のような態様が考えられる。
【0116】
《第1例》
見込み補正実施後にエンジン回転数NEを増加させる。この際、エンジン回転数NEの増加量は、前記参考例(3)と同様の方法で設定したり、或は、空燃比フィードバック補正係数の偏差(FAF−1)又は空燃比フィードバック補正係数のなまし値の偏差(FAFAV−1)に応じて設定しても良い。
【0117】
《第2例》
エンジン回転数NEを増加させてから見込み補正を実施する。この際、見込み補正係数FLEAKは前記実施形態(1)、参考例(1)〜(2)のいずれかの方法で設定したり、或は、空燃比フィードバック補正係数の偏差(FAF−1)又は空燃比フィードバック補正係数のなまし値の偏差(FAFAV−1)に応じて設定しても良い。図31に示す例は、キャニスタ閉塞弁26の閉弁前からエンジン回転数NEを増加させ、吸気管負圧導入開始後に、空燃比フィードバック補正係数の偏差(FAF−1)に応じて見込み補正を実施する。
【0118】
《第3例》
エンジン回転数NEを増加させてから見込み補正を実施し、更に、空燃比フィードバック補正係数の偏差(FAF−1)又は空燃比フィードバック補正係数のなまし値の偏差(FAFAV−1)に応じて回転数増加量を補正する。
【0119】
《第4例》
吸気管負圧導入開始時にエンジン回転数NEの増加と見込み補正を同時に開始する。この際、エンジン回転数NEの増加量と見込み補正係数FLEAKは、吸気管負圧導入中に空燃比フィードバック補正係数の偏差(FAF−1)又は空燃比フィードバック補正係数のなまし値の偏差(FAFAV−1)に応じて補正しても良い。
【0120】
尚、上記実施形態、参考例では、アイドル時、走行時を問わず、異常診断実行条件が成立した時(つまりエンジン運転状態が安定している時)に異常診断を実行し、見込み補正やエンジン回転数増加を実行するようにしたが、走行時は、アイドル時と比較して、吸入空気量が多く、燃料蒸発ガスのパージによる影響が少なくなるため、アイドル中の異常診断時のみに、見込み補正やエンジン回転数増加を実行し、走行中の異常診断時には、通常のパージ補正のみで対応し、見込み補正やエンジン回転数増加を行わないようにしても良い。
【0121】
その他、本発明は、燃料タンク17に、雰囲気温度を検出する温度センサを設置しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態(1)を示すシステム全体の概略構成図
【図2】 空燃比フィードバック制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図3】 パージ率制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図4】 全開パージ率マップの一例を示す図
【図5】 パージ率徐変制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図6】 エバポガス濃度検出ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図7】 燃料噴射量制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図8】 パージ制御弁制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図9】 異常診断ルーチンの処理の流れを示すフローチャート(その1)
【図10】異常診断ルーチンの処理の流れを示すフローチャート(その2)
【図11】エバポガス濃度変化量の測定方法を説明するタイムチャート
【図12】見込み補正の第1例に用いる見込み補正係数算出ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図13】 吸気温から見込み補正係数FLEAKを算出するテーブルを示す図
【図14】 見込み補正の第1例を示すタイムチャート
【図15】 見込み補正の第2例で用いる見込み補正係数算出ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図16】 (a)は始動後経過時間から燃料温度上昇量ΔT1を算出するテーブルを示す図、(b)は平均車速から燃料温度上昇量ΔT2を算出するテーブルを示す図
【図17】 車速と、その車速が継続する時間とから温度上昇量を算出する二次元マップを示す図
【図18】 燃料タンク内の雰囲気温度から見込み補正係数FLEAKを算出するテーブルを示す図
【図19】 燃料蒸発ガス濃度学習値から見込み補正係数FLEAKを算出するテーブルを示す図
【図20】 見込み補正の第4例を示すタイムチャート
【図21】 見込み補正の第5例を示すタイムチャート
【図22】 本発明の参考例(1)で用いる燃料噴射量制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図23】 参考例(1)の見込み補正を示すタイムチャート
【図24】 本発明の参考例(2)で用いる見込み補正係数算出ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図25】 燃料蒸発ガス濃度学習値から遅延時間を算出するテーブルを示す図
【図26】 参考例(2)の見込み補正を示すタイムチャート
【図27】 本発明の参考例(3)で用いる異常診断時回転数増加制御ルーチンの処理の流れを示すフローチャート
【図28】 燃料蒸発ガス濃度学習値から遅延時間を算出するテーブルを示す図
【図29】参考例(3)の異常診断時回転数増加制御を示すタイムチャート
【図30】空燃比フィードバック補正係数の偏差(FAF−1)から回転数増加量の補正量を算出するテーブルを示す図
【図31】 本発明の参考例(4)の制御の一例を示すタイムチャート
【符号の説明】
11…エンジン(内燃機関)、12…吸気管、14…スロットルバルブ、16…燃料噴射弁、17…燃料タンク、18…燃料ポンプ、20…圧力センサ、21…エバポガスパージシステム、22…連通管、23…キャニスタ、24…吸着体、26…キャニスタ閉塞弁、30a,30b…パージ通路、31…パージ制御弁、39…制御回路(異常診断手段,見込み補正手段,雰囲気温度推定手段,エバポ濃度補正量算出手段,異常診断時回転数増加制御手段)、46…アイドルスイッチ、47…車速センサ、49…吸気管圧力センサ、50…冷却水温センサ(温度検出手段)、51…吸気温センサ(温度検出手段)、53…警告ランプ。
Claims (7)
- 燃料タンクと内燃機関の吸気管とを連通する通路に、前記燃料タンク内の燃料が蒸発して生じた燃料蒸発ガスを吸着するキャニスタと、このキャニスタから前記吸気管への燃料蒸発ガスのパージを制御するパージ制御弁とを設け、異常診断時に少なくとも前記燃料タンクと前記キャニスタとを含むパージ系内に吸気管負圧を導入して密閉したときの該パージ系の圧力又はその後の圧力変化量を検出してその検出値に基づいて前記パージ系の異常の有無を診断する異常診断手段を備えた燃料蒸発ガスパージシステムにおいて、
少なくともアイドル中の異常診断時に前記パージ系内に吸気管負圧を導入する際に吸気管負圧導入に伴う空燃比のずれを抑えるように前記内燃機関への燃料噴射量を見込み補正する見込み補正手段と、
吸気温、外気温、冷却水温の少なくとも1つを検出する温度検出手段と、
始動時に前記温度検出手段により検出した温度に基づいて始動時の燃料タンク内の雰囲気温度を推定し、この推定温度を始動後の車両走行状態と始動後経過時間の少なくとも一方に基づいて補正して現在の燃料タンク内の雰囲気温度を求める雰囲気温度推定手段とを備え、
前記見込み補正手段は、前記現在の燃料タンク内の雰囲気温度に基づいて吸気管負圧導入時の見込み補正量を設定することを特徴とする燃料蒸発ガスパージシステム。 - 前記見込み補正手段は、吸気管負圧導入中の見込み補正量を空燃比フィードバック補正量の偏差又は空燃比フィードバック補正量のなまし値の偏差に基づいて補正することを特徴とする請求項1に記載の燃料蒸発ガスパージシステム。
- パージ中の吸入空気量とパージ流量との比率(以下「パージ率」という)1%当りの空燃比フィードバック補正量偏差を算出し、このパージ率1%当りの空燃比フィードバック補正量偏差とパージ率との乗算により燃料噴射量補正量(以下「エバポ濃度補正量」という)を算出するエバポ濃度補正量算出手段を備え、
前記見込み補正手段は、前記パージ系内に吸気管負圧を導入する際に前記見込み補正量と前記エバポ濃度補正量とによって燃料噴射量を補正することを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の燃料蒸発ガスパージシステム。 - パージ率1%当りの空燃比フィードバック補正量偏差とパージ率との乗算によりエバポ濃度補正量を算出するエバポ濃度補正量算出手段を備え、
前記見込み補正手段は、前記エバポ濃度補正量に基づいて前記見込み補正量を設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の燃料蒸発ガスパージシステム。 - 前記見込み補正手段は、吸気管負圧導入開始から所定期間遅延して見込み補正を開始し又は吸気管負圧導入開始後に見込み補正量を徐々に増加させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の燃料蒸発ガスパージシステム。
- 少なくともアイドル中の異常診断時に前記パージ系内に吸気管負圧を導入する際又はその前に機関回転数を増加させて吸入空気量を増加させる異常診断時回転数増加制御手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載の燃料蒸発ガスパージシステム。
- 前記異常診断時回転数増加制御手段は、前記機関回転数の増加量を、吸気温、外気温、冷却水温、燃料蒸発ガス濃度学習値、空燃比フィードバック補正量偏差、空燃比フィードバック補正量のなまし値の偏差の少なくとも1つに基づいて設定することを特徴とする請求項6に記載の燃料蒸発ガスパージシステム。
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