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JP4001371B2 - インクセット、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、カートリッジ、インクジェット記録物 - Google Patents

インクセット、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置、カートリッジ、インクジェット記録物 Download PDF

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JP4001371B2
JP4001371B2 JP2002358814A JP2002358814A JP4001371B2 JP 4001371 B2 JP4001371 B2 JP 4001371B2 JP 2002358814 A JP2002358814 A JP 2002358814A JP 2002358814 A JP2002358814 A JP 2002358814A JP 4001371 B2 JP4001371 B2 JP 4001371B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微粒子を含有する処理液と、樹脂被覆された色材を含有する記録液とを組み合わせたことを特徴とするインクセット、該インクセットのための特定された処理液、該インクセットのための特定された記録液、これら処理液と記録液を被記録材に付着させて画像を形成するインクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置、これら処理液と記録液を収納するカートリッジ、このインクジェット記録装置を用いて作製されるインクジェット記録物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
色材を含有した記録液を液滴として画像記録を行なうインクジェット記録方法は、その印字機構が簡単で、しかも騒音が発生しない点で優れている。
しかしその一方で、この画像記録方法は、記録媒体との組み合わせによっては文字滲み(以下、フェザリングという)に代表される画像欠陥が発生しやすく、画像品質が大きく低下するという問題を有する。この問題についてはインクの浸透性を抑えることでフェザリングを低減する試みがなされているが、この場合、インクの乾燥性が悪いため、印刷後に印刷物に触れるとインクが手に付いてしまったり、画像汚れが生じてしまう。
【0003】
また、カラー画像を印字する場合には、色の異なるインクが次々と重ねられるため、色境界部分でカラーインクが滲んだり、混ざり合いが発生し(以下、カラーブリードと言う)、画像品質が大きく低下する問題も有する。この問題についてはインクの浸透性を高めることでカラーブリードを低減する試みがなされているが、この場合、色材が記録媒体の内部に入り込んでしまうために画像濃度が低下してしまったり、被記録材裏側へのインクの浸み出しが多くなり両面印刷が良好に行なえなくなってしまう。
したがって、これら問題を同時に解決して画像品質を高める画像形成方法が望まれている。
【0004】
これらの問題に対して、記録液と共に微粒子を含有する処理液を併用する方法が提案されている。例えば、シリカ微粒子を含有する無色の液体を被記録材に付着させた後に、オイルブラックを含む非水系記録液を付着させるインクジェット記録方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、顔料及び樹脂を含む記録液を吐出する前に樹脂微粒子又は二酸化チタン微粉子、又はそれら微粒子及びバインダーポリマーを含有する溶液を塗布あるいは噴射するインクジェット記録方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。また、アニオン性金属酸化物コロイドを含有する無色のインクジェット用処理液と、色材を含有し樹脂分を含有しないインクとを別々に吐出した後に混ぜ合わせて被記録材上に画像を形成する画像形成方法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
しかしながら、これらの提案がなされているものの、前記特許文献1及び特許文献3においては、いずれもアニオン性色材を含有する記録液とアニオン性微粒子を含有する処理液とを組み合わせているため、色材の凝集、吸着効果が得られず、フェザリング抑制、カラーブリード抑制の点で効果が得られない。また、前記特許文献2においては、アニオン性色材に対してカチオン性の二酸化チタンを組み合わせているため、色材の凝集、吸着において一定の効果があるものの、フェザリング抑制、カラーブリード抑制の点で充分な効果が得られていない。
【0006】
また、色材を液滴中における単分子状態で微粒子表面に吸着させる工程と、色材を表面に吸着した微粒子同士の凝集を引き起こさせる工程を有する画像形成方法が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。また、インクと液体組成物を略1対1の重量比で混合したときの混合液のpHが、色材の凝集を引き起こすpHとなるインクセットが開示されている(例えば、特許文献5参照。)。また、水性インクに対して逆極性に表面が帯電している微粒子を分散状態で含まれる液体組成物が開示されている(例えば、特許文献6参照。)。しかし、いずれも色材の凝集、吸着において一定の効果があるものの、フェザリング、カラーブリード抑制の点で充分な効果が得られていない。
【0007】
また、微粒子を含有する処理液を用いたこれらの提案は記録液の定着性の点でも問題を有する。すなわち、処理液と記録液が被記録材に付着しビヒクルが被記録材に浸透すると、微粒子と色材の混合物が被記録材の表面に堆積する。この堆積層は機械的に弱いため、指でこすったりすると容易に取れてしまうため、ユーザーの手をインクが汚したり、印刷物同士が重なった際に印刷物の裏面をインクが汚したりする耐擦性の不具合が生じる。
【0008】
耐擦性不足に対し、ポリマー微粒子、及び/または、インク組成物と接触したときに凝集物を生じさせる反応剤を含有する第一の液と、ポリマー微粒子を含有するインク組成物とを被記録材付着させて印字を行なうインクジェット記録方法が開示されている(例えば、特許文献7参照。)。この構成では色材自体に耐擦性を向上させる機能がないため、充分な耐擦性を得るにはポリマー粒子を大量に入れる必要がある。しかし、ポリマー粒子を大量に入れようとすると、吐出安定性の低下、保存安定性の低下、粘度上昇等の副作用が生じてしまい問題の解決には至っていない。
また、無機酸化物顔料、分散剤および/または高分子化合物、水溶性有機溶剤、水からなる半透明白色インクを予め被記録材に固着させ、水溶性染料インクで画像を記録するインクジェットプリントによる記録方法が開示されている(例えば、特許文献8参照。)。この構成においても、色材自体に耐擦性を向上させる機能がないため、充分な耐擦性を得るにはポリマー粒子を大量に入れる必要があり、問題の解決には至っていない。
【0009】
また、記録媒体上に1分子当り2個以上のカチオン性基を含有する無色又は淡色の液体を付着した後、その液体が記録媒体に浸透し、媒体中に存在し、かつ、媒体表面からなくなった直後に、液体の付着した部分に、アニオン染料を含有するインクを付着させて画像を形成せしめるインクジェット記録方法が開示されている(例えば、特許文献9参照。)。また、記録媒体上に多価金属塩を含有する無色又は淡色の液体を付着した後、その液体が記録媒体に浸透し、該媒体中に存在し、かつ、媒体表面からなくなった直後に、液体の付着した部分に、酸性基を有する染料を含有するインクを付着させて画像を形成せしめるインクジェット記録方法が開示されている(例えば、特許文献10参照。)。また、記録媒体上に炭素数が4以上のアルキル基、アルケニル基およびアリール基よりなる群から選らばれた1種以上の基を分子中に有する第四級アンモニウム塩又はアミン塩を含有する無色又は淡色の液体を付着した後、付着液が記録媒体に浸透し、記録媒体表面に見かけ上液がなくなった直後に、その液体の付着部分に、酸性基を有する水溶性染料を含有するインクを付着させて画像を形成せしめるインクジェット記録方法が開示されている(例えば、特許文献11参照。)。
しかしながら、これらに記載される方法では、微粒子を含有しない処理液を用いているために画像濃度向上、文字滲み低減、色混じり低減が不充分である。また、色材に樹脂被覆型ではない染料を用いているため、画像形成部の耐擦性が不充分である。
【0010】
【特許文献1】
特開平4−259590号公報(第2頁第1欄第1行目〜第7行目の特許請求の範囲、[0010]、[0015]、[0022])
【特許文献2】
特開平6−92010号公報(第2頁第1欄第2行目〜第8行目の請求項1、[0010])
【特許文献3】
特開平11−228890号公報(第2頁第1欄第1行目〜第27行目の特許請求の範囲)
【特許文献4】
特開2001−199149号公報(第2頁第1欄第13行目〜第21の請求項2)
【特許文献5】
特開2001−199150号公報(第2頁第1欄第2行目〜第9行目の請求項1)
【特許文献6】
特開2001−199151号公報(第2頁第1欄第2行目〜第7行目の請求項1)
【特許文献7】
特表WO00/06390号公報(第2頁第2行目〜第6行目の請求項1)
【特許文献8】
特開2001−171095号公報(第2頁第1欄第2行目〜第7行目の請求項1)
【特許文献9】
特許第2667401号公報(第1頁第1欄第2行目〜第7行目の請求項1)
【特許文献10】
特許第2675001号公報(第1頁第1欄第2行目〜第7行目の請求項1)
【特許文献11】
特許第2711098号公報(第1頁第1欄第2行目〜第9行目の請求項1)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、普通紙に印字した場合でも、フェザリングやカラーブリードがない品質の高い画像を得ることができ、耐擦性に優れた印刷物を得ることができ、また、記録液が紙の奥深くまで浸透することなく高い画像濃度が得られ、また、画像印字面と反対の面から見たときの画像濃度が小さく、両面印字を良好に行なうことができ、また、記録液の乾燥不良による画像汚れが生じない、印刷物に適度な光沢感を与えるインクセット及びこれを用いた記録方法、記録装置、記録物を提供することであり、また、本発明の別の目的は、記録媒体上で得られる画像の耐水性を向上させ、長期保存時においても処理液と記録液中に黴等が繁殖することなく、経時安定性に優れるインクセット及びこれを用いた記録方法、記録装置、記録物を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく鋭意検討の結果、微粒子を含有する処理液と、樹脂被覆された色材を含有する記録液とを組み合わせたことを特徴とするインクセットを用いることで上記目的を効果的に達成できる本発明に至った。
【0013】
上記課題は、本発明の(1)「樹脂被覆された色材を含有する記録液と、該樹脂被覆された色材と反応性を有する微粒子を含有する処理液とを組み合わせたことを特徴とするインクセット」、(2)「前記処理液と記録液が接触した際に凝集物を生成することを特徴とする前記第(1)項に記載のインクセット」により達成される。
【0014】
また、上記課題は、本発明の(3)「前記第(1)項に記載のインクセットに用いられる処理液であって、該処理液に含有される微粒子がカチオン性化合物であることを特徴とする処理液」、(4)「前記カチオン性化合物がカチオン性無機化合物であることを特徴とする前記第(3)項に記載の処理液」、(5)「前記カチオン性無機化合物がカチオン性シリカであることを特徴とする前記第(4)項に記載の処理液」、(6)「前記処理液が水、水溶性溶剤を含有することを特徴とする前記第(3)項乃至第(5)項の何れか1に記載の処理液」、(7)「前記水溶性溶剤が湿潤剤、及び/または浸透剤であることを特徴とする前記第(6)項に記載の処理液」、(8)「前記処理液が防腐防黴剤を含有することを特徴とする前記第(3)項乃至第(5)項の何れか1に記載の処理液」、(9)「前記処理液がカチオン性界面活性剤を含有することを特徴とする前記第(3)項乃至第(5)項の何れか1に記載の処理液」、(10)「前記第(1)項に記載のインクセットに用いられる記録液であって、該色材が顔料であることを特徴とする記録液」、(11)「前記第(1)項に記載のインクセットに用いられる記録液であって、該記録液が色材、水、水溶性溶剤を含むことを特徴とする記録液」、(12)「前記水溶性溶剤が湿潤剤、及び/または浸透剤であることを特徴とする前記第(11)項に記載の記録液」、(13)「前記記録液が防腐防黴剤を含有することを特徴とする前記第(11)項に記載の記録液」により達成される。
【0015】
また、上記課題は、本発明の(14)「前記第(1)項または第(2)項に記載のインクセット、あるいは、前記第(3)項乃至第(9)項の何れか1に記載の処理液と前記第(10)項乃至第(13)項の何れか1に記載の記録液との組み合わせを用いて画像を形成するインクジェット記録方法であって、処理液を被記録材に付着させる工程と、記録液を被記録材に付着させる工程とを有し、被記録材に画像を形成することを特徴とするインクジェット記録方法」により達成される。
【0016】
また、上記課題は、本発明の(15)「前記第(1)項または第(2)項に記載のインクセット、あるいは、前記第(3)項乃至第(9)項の何れか1に記載の処理液と前記第(10)項乃至第(13)項の何れか1に記載の記録液との組み合わせを用いて画像を形成するインクジェット記録装置であって、記録材を搬送する搬送部と、処理液を被記録材に付着させる付着部と、記録液を被記録材に付着させる付着部とを有し、被記録材に画像を形成することを特徴とするインクジェット記録装置」により達成される。
【0017】
また、上記課題は、本発明の(16)「前記第(1)項または第(2)項に記載のインクセットに用いられる処理液、あるいは前記第(3)項乃至第(9)項の何れか1に記載の処理液を収納する処理液カートリッジ」、(17)「前記第(1)項または第(2)項に記載のインクセットに用いられる記録液、あるいは前記第(10)項乃至第(13)項の何れか1に記載の記録液を収納する記録液カートリッジ」により達成される。
【0018】
さらにまた、上記課題は、本発明の(18)「前記第(15)項に記載のインクジェット記録装置を用いて作製されることを特徴とするインクジェット記録物」により達成される。
【0019】
次に、本発明をより詳細に説明する。
本発明にて画像品質が向上するメカニズムは以下のように考えられる。ただし、本発明は以下の説明によって制限を受けるものではない。
微粒子を含有する処理液と樹脂被覆された色材を含有する記録液とを被記録材に付着させると、微粒子と樹脂被覆された色材の混合物が被記録材の表面に堆積し、ビヒクルは被記録材に浸透する。このとき、被記録材に堆積した樹脂被覆された色材はそれ自身樹脂成分を有するため、周囲の微粒子と結着する。そのため、機械的に強い膜を形成し、耐擦性が良好となる。さらに表面に樹脂層を形成するために光沢度が増す。
記録液にも処理液にも樹脂成分が含まれていない場合、微粒子と色材から成る堆積層は機械的に非常に弱い層となり、何かが接触すると容易に除去される。その結果、ユーザーの手をインクで汚したり、重なった印刷物の裏面をインクで汚したりしてしまう。
また、記録液、あるいは処理液にポリマー粒子が含有されていても、色材自身が樹脂成分を有さず耐擦性向上の機能が備わっていない場合、充分な耐擦性向上を得るために色材の周囲をポリマー粒子で埋めようとすると、大量のポリマー粒子を添加する必要がある。大量のポリマー粒子を添加した処理液、あるいは記録液は吐出安定性、保存安定性が低下し、また粘度上昇も招いてしまう。吐出安定性、保存安定性を維持し、適正な粘度に抑えるにはポリマー粒子の添加量を少量にする必要があるが、その場合、充分な耐擦性が得られなくなり問題の解決には至らない。
また、処理液中の反応剤が微粒子ではなく水溶性樹脂であると水溶性樹脂は被記録材上で非浸透性の膜を形成してしまい、ビヒクルの浸透を妨げる。その結果、乾燥性の低下とカラーブリードの悪化が生じてしまう。
【0020】
顔料か樹脂で被覆された樹脂被覆型顔料と高分子分散型顔料を見分けるには、樹脂に選択的に吸着する物質を記録液に混ぜて、色材成分を透過型電子線顕微鏡(TEM)などの分析装置を使って観察し、被覆状態を判断する方法が良い。樹脂被覆型の場合、全体的に樹脂に覆われているが、高分子分散型の場合は樹脂に覆われていない部分が多い。
また、顔料と樹脂(高分子)の重量比からも樹脂被覆型と高分子分散型を見分けることができる。具体的な方法は、記録液のpHを変えるなどして顔料と樹脂を析出させ、さらに析出した成分に有機溶剤を加えて樹脂を抽出する。この操作によって顔料と樹脂の重量比が求められる。樹脂が顔料表面を覆うには、樹脂/顔料の比が重量比で0.01以上であれば良い。
【0021】
また、記録液が乾燥した後に指や布で擦ってみると、樹脂被覆型の場合はしっかりと樹脂で紙に固定されるために色落ちがないのに対して、高分子分散型は高分子成分が少ないために紙にしっかりと固定されないので色落ちがする点で見分けることができる
【0022】
本発明の樹脂被覆された色材を用いると、色材自身が樹脂成分を有するためごく少量の樹脂添加量で結着効果が得られ、充分な耐擦性が得られる。樹脂添加量が少ないために吐出安定性、保存安定性、粘度の点でも不具合がない。
樹脂添加量は、液全体に対しては0.01wt%以上20wt%未満が好ましく、1wt%以上5wt%未満がさらに好ましい。色材に対しては0.1wt%以上200wt%未満が好ましく、10wt%以上50wt%未満がさらに好ましい。
【0023】
本発明の記録液は樹脂被覆された色材を含有する。樹脂は色材の表面全てを被覆しても良いし、一部を被覆しても良い。また、色材の周りにマイクロカプセル状に被覆されていても良いし、色材と樹脂が混在していても良い。
【0024】
被覆する樹脂としては、色材と親和性があるポリマーを使用することが好ましい。樹脂の例としては、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等が挙げられる。該樹脂の中では、ビニル系樹脂が好ましい。ビニル系樹脂としては、スチレン、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれた1種以上のモノマーの重合体が挙げられる。
【0025】
本発明の記録液に用いる色剤としては染料、顔料のいずれも用いることができるが、微粒子がカチオン性である場合にはアニオン性の染料、あるいは顔料を用いるほうが電気的に中和され凝集するので画質向上の点で好ましい。また、染料よりも顔料を用いるほうが好ましい。つまり、溶解状態の染料よりも分散状態の顔料のほうが電気的に中和された際に、より効率的に凝集が生じるため、画質向上できる。
【0026】
本発明に用いられる記録液に用いる顔料としては、有機顔料としてアゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラツク、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料、カーボンブラック等が挙げられ、無機顔料として酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉が挙げられる。
【0027】
アニオン性基を有する顔料分散剤の例として、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、カルボキシメチルセルロース、デンプングリコール酸、アルギン酸ナトリウム、ペクチン酸、ヒアルロン酸などを挙げることができる。これらのアニオン系分散剤は、酸の形でも用いることができるが、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩を用いることもできる。
【0028】
表面にアニオン性基を有する顔料の例としては、カルボキシル基やスルホン酸基を有するカーボン・ブラックがその代表例として挙げられる。その他、フタロシアニン系顔料や、アントラキノン系顔料を酸化処理したり、発煙硫酸で処理したりして、顔料粒子の一部にカルボキシル基やスルホン酸基を導入したものもその例として挙げられる。
【0029】
本発明で用いられる水溶性染料としては、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接性染料、塩基性染料、反応性染料、食用染料に分類される染料で耐水、耐光性が優れたものが用いられる。これら染料は複数種類を混合して用いても良いし、あるいは必要に応じて顔料等の他の色素と混合して用いても良い。これら
着色剤は、本発明の効果が阻害されない範囲で添加される。
【0030】
(a)酸性染料及び食用染料として
C.I.アシッド・イエロー 17,23,42,44,79,142
C.I.アシッド・レッド 1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289
C.I.アシッド・ブルー 9,29,45,92,249
C.I.アシッド・ブラック 1,2,7,24,26,94
C.I.フード・イエロー 3,4
C.I.フード・レッド 7,9,14
C.I.フード・ブラック 1,2
【0031】
(b)直接染料として
C.I.ダイレクト・イエロー 1,12,24,26,33,44,50,86,120,132,142,144
C.I.ダイレクト・レッド 1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,83,89,225,227
C.I.ダイレクト・オレンジ 26,29,62,102
C.I.ダイレクト・ブルー 1,2,6,15,22,25,71,76,79,86,87,90,98,163,165,199,202
C.I.ダイレクト・ブラック 19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,154,168,171
【0032】
(c)塩基性染料として
C.I.ベーシック・イエロー 1,2,11,13,14,15,19,21,23,24,25,28,29,32,36,40,41,45,49,51,53,63,64,65,67,70,73,77,87,91
C.I.ベーシック・レッド 2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112
C.I.ベーシック・ブルー 1,3,5,7,9,21,22,26,35,41,45,47,54,62,65,66,67,69,75,77,78,89,92,93,105,117,120,122,124,129,137,141,147,155
C.I.ベーシック・ブラック 2,8
【0033】
(d)反応性染料として
C.I.リアクティブ・ブラック 3,4,7,11,12,17
C.I.リアクティブ・イエロー 1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,55,65,67
C.I.リアクティブ・レッド 1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97
C.I.リアクティブ・ブルー 1,2,7,14,15,23,32,35,38,41,63,80,95等が使用できる。
【0034】
本発明の処理液は微粒子を含有する。微粒子は有機化合物であっても良いし、無機化合物であっても良いし、有機無機複合化合物であっても良い。粒子形についても特に限られるものではなく、球状、数珠状、不定形のいずれであっても良い。
有機化合物としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル共重合体、ポリメチルメタクリレート、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ポリアミド樹脂、弗素系樹脂、α,β−不飽和エチレン性単量体をエマルジョン重合等により得られる重合体等が挙げられる。
無機化合物としては、炭酸カルシウムなどの無機塩と、シリカ(SiO)などの無機酸化物に大別される。
無機塩の具体例としては、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸鉄などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。水系処理液として用いる場合には、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸鉄などの水に溶解度が低いものを用いるほうが分散体が得られやすい点で好ましい。また、これらはカチオン化処理することでさらに色剤の吸着能力、凝集能力を高めることができ、さらに好ましい。カチオン剤で改質する方法は従来技術にて提案されている(特開平10−129113号公報、特開平11−20301号公報など)。
無機酸化物の具体例としては、シリカ(SiO)、シリカのカチオン化物、二酸化チタン、アルミナ(Al)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本発明のカチオン性微粒子は、少なくとも粒子表面がカチオン性であれば用いることができる。カチオン性微粒子としては、カチオン性シリカ(シリカ(SiO)のカチオン化物)、アルミナ(Al)、二酸化チタン、ポリマー粒子にカチオン性基を導入したもの等を挙げることができる。特にアニオン性色材との組み合わせにおいて吸着凝集作用が良好であり、画質改善効果が高い。カチオン性微粒子の中では反応性の点でカチオン性シリカが特に好ましい。カチオン性シリカは、シリカの表面がカチオン化処理されたものであれば用いることができる。カチオン化するには、シリカ表面に化学的、物理的にカチオン性化合物を導入すれば良い。例えば、シリカのシラノール基にアミノ化合物をカップリングすることで、あるいはアルミニウム化合物を反応させることで化学的に表面処理ができる。また、シリカとカチオン性化合物を溶剤中で混合し、カチオン性化合物を物理的に吸着させた後に溶剤を除去することで物理的に表面処理することができる。その際、核材として用いるアニオン性シリカの具体例としては、ST−ZL、ST−20、ST−30、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−S、ST−50、ST−20L、ST−OL、ST−XS、ST−YL、ST−XL、ST−UP、ST−OUP(以上、日産化学製)、Cataloid SI−350、SI−500(以上、デュポン製)、Nipgel AY−220、AY−420、AY−460(以上、日本シリカ製)等が挙げられる。これらの方法に限らず、シリカ表面をカチオン性に処理したものであれば、いずれも好適に用いることができる。
【0036】
カチオン性微粒子は製品として入手することもでき、シリカのカチオン化物としては、ST−AK(日産化学製)が挙げられる。アルミナとしては、アルミナゾル100、200、520(以上、日産化学製)等が挙げられる。二酸化チタンとしてはチタニアシリーズ(出光興産製)が挙げられる。これらの微粒子の中には既に水分散体として入手できるものも存在する。
【0037】
本発明の微粒子はカチオン性無機有機複合微粒子であっても良く、粒子状のカチオン性無機有機複合微粒子であればいずれも用いることができる。
【0038】
カチオン性無機有機複合微粒子は、無機微粒子の表面にカチオン性有機化合物を吸着させたり、逆に有機化合物の表面にカチオン性無機化合物を吸着させることで得ることができる。例えば、カチオン性高分子で被覆された無機有機複合微粒子は、無機微粒子を水等の溶媒中に分散させておき、これにカチオン性高分子を水、あるいは、水溶性有機溶媒の溶液の状態で徐々に加えることで得ることができる。
カチオン性高分子の具体例としては、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリイミン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリビニルピリジン、アミノアセタール化ポリビニルアルコール、イオネンポリマー、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルベンジルホスホニウム、ポリアルキルアリルアンモニウム、ポリアミジン、ポリアミンスルホン、カチオンでん粉などのカチオン性高分子化合物を挙げることができる。
【0039】
微粒子の添加量は処理液の0.01〜50wt%程度が好ましく、1〜30wt%程度がより好ましい。含有率が0.01wt%以下の場合、画質改善効果が充分に得られず、含有率が50wt%以上である場合、吐出安定性が充分に得られない。なお、複数のカチオン性微粒子を併用して用いても良い。
【0040】
微粒子の平均粒子径は500nm以下であることが好ましく、200nm以下が吐出安定性の観点からさらに好ましい。つまり、500nm以上である場合、吐出ヘッドの目詰まりが生じやすくなり、吐出不良が生じやすくなる。
平均粒子径は光学式粒度分布計で測定することができ、粒子数50%の粒子径をもって表わす。
【0041】
微粒子は水を主成分とするビヒクルに分散処理されて処理液となる。分散する際には分散を安定化させるために解膠剤を用いることが好ましい。解膠剤とは帯電性粒子表面に電気二重層を形成し、電気二重層が静電的に反発して粒子の接近を防止し、分散を安定化させるものである。微粒子は中性から酸性にかけては正に帯電するため、陰イオン源である酢酸、硝酸、塩酸、蟻酸、乳酸、及び、これらのアルカリ金属塩、オキシ塩化ジルコニウム水和物等のジルコニウム化合物、ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、タウリン等が解膠剤として用いられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
本発明の処理液は次の方法によって製造することができる。微粒子と水と解膠剤を混合し、分散液を調合する。必要に応じて水溶性溶剤を添加し、解膠機によって解膠する。この際使用される解膠機としては、高速回転高せん断型攪拌解膠機、デゾルバー、コロイドミル、ホモジナイザー、超音波式解膠機などを挙げられ、より具体的には、T.K.オートホモミキサー、T.K.ホモミックラインフロー、ウルトラホモミキサー、NNKコロイドミルなどが挙げられる。解膠時の回転数は、解膠機の種類、構造によって変わるが、500〜10000rpmであることが好ましく、2000〜8000rpmであることがより好ましい。解膠時の温度は5〜100℃であることが好ましい。解膠時間は解膠機の種類、構造によって変わるが、0.01〜48時間であることが好ましい。
【0043】
処理液、及び記録液を所望の物性にするため、あるいは乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止するためなどの目的で、色材の他に、水溶性有機溶媒を使用することが好ましい。水溶性有機溶媒には湿潤剤、浸透剤が含まれる。湿潤剤は乾燥による記録ヘッドのノズルの詰まりを防止することを目的に添加される。湿潤剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−へキサンジオール、グリセリン、1,2,6−へキサントリオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエ−テル額;N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノ−ル等の含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、γ−ブチロラクトン等である。これらの溶媒は、水とともに単独もしくは複数混合して用いられる。
【0044】
また、浸透剤は処理液あるいは記録液と被記録材の濡れ性を向上させ、浸透速度を調整する目的で添加される。浸透剤としては、下記式(I)〜(IV)で表されるものが好ましい。すなわち、下記式(I)のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、式(II)のアセチレングリコール系界面活性剤、下記式(III)のポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤ならびに式(IV)のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系界面活性剤は、液の表面張力を低下させることができるので、濡れ性を向上させ、浸透速度を高めることができる。
【0045】
【化1】
Figure 0004001371
(Rは分岐していても良い炭素数6〜14の炭化水素鎖、k:5〜20)
【0046】
【化2】
Figure 0004001371
(m,nは0〜40)
【0047】
【化3】
Figure 0004001371
(Rは分岐してもよい炭素数6〜14の炭化水素鎖)
【0048】
【化4】
Figure 0004001371
(Rは炭素数6〜14の炭化水素鎖、m、nは20以下の数)
【0049】
前記式(I)〜(IV)の化合物以外では、例えばジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体等のノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、エタノール、2−プロパノール等の低級アルコール類を用いることができるが、特にジエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0050】
本発明の処理液は、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリン型化合物等のカチオン性界面活性剤を含有することができる。具体的には、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、セチルピリジニウムクロライド、2−ヘプタデセニルヒドロキシエチルイミダゾリン等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤は、表面張力を下げて被記録材との濡れ性を高めて微粒子層を速やかに形成すると共に、アニオン性色材を凝集する作用があり、画質改善に効果がある。
【0051】
本発明の処理液、および、記録液は防腐防黴剤を含有することができる。防腐防黴剤を含有することによって、菌の繁殖を押さえることができ、保存安定性、画質安定性を高めることができる。防腐防黴剤としてはデヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、イソチアゾリン系化合物、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が使用できる。
【0052】
本発明の処理液、および、記録液は防錆剤を含有することができる。防錆剤を含有することによって、ヘッド等の接液面の金属腐食を防ぐことができる。防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が使用できる。
【0053】
pH調整剤としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属元素の水酸化物、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、ジエタノールアミン、トリエタノ−ルアミン等のアミン類、硼酸、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等を用いることができる。
【0054】
本発明のインクジェット記録方法、およびそれを実施するインクジェット記録装置について、図面を用いて説明する。
図1のインクジェット記録装置は、処理液および記録液をカートリッジ(20)に収納し、処理液および記録液がカートリッジから記録ヘッドに供給させる。ここで、カートリッジ(20)は処理液用、色毎の記録液用が分離された状態で取り付けられている。
【0055】
記録ヘッドは、キャリッジ(18)に搭載され、主走査モータ(24)で駆動されるタイミングベルト(23)によってガイドシャフト(21)、(22)にガイドされて移動する。一方、被記録材はプラテンによって記録ヘッドと対面する位置に置かれる。
【0056】
記録ヘッドのノズル面の拡大図を図2に示す。処理液が吐出されるノズル(31)が縦方向に設けられ、ノズル(32)、(33)、(34)、(35)からはそれぞれイエロー記録液、マゼンタ記録液、シアン記録液、そしてブラック記録液が吐出される。
【0057】
また、図3に記載のように記録ヘッドにおいて、ノズルを全て横方向に並べて構成することも可能である。図中で、符号(36)、及び符号(41)は処理液の吐出ノズルであり、ノズル(37)、(38)、(39)、(40)からはぞれぞれイエロー記録液、マゼンタ記録液、シアン記録液、そしてブラック記録液が吐出される。このような態様の記録ヘッドにおいては、処理液の吐出ノズルが左右の端に設けられているため、記録ヘッドがキャリッジ上を往復する往路、復路いずれにおいても印字が可能である。すなわち、往路、復路のいずれにおいても処理液を先に付着させて、その上からカラー記録液を付着させること、あるいは、その逆が可能であり、記録ヘッドの移動方向の違いによる画像濃度差が生じない。
【0058】
本発明のインクジェット記録装置は、処理液、及び記録液の補充をカートリッジを取り替えることで可能である。また、このカートリッジは記録ヘッドと一体化されたものであってもよい。
【0059】
図4、5に本発明の処理液、及び、記録液を収納可能なカートリッジを示す。図4、5に示すカートリッジは処理液、記録液のいずれを収納することができる。
【0060】
各プリントヘッドによって記録液および処理液が吐出されて重なる範囲は、記録液と処理液とは同一箇所に重ねられることが最も好ましい。しかし、本発明の適用はこの範囲に限定されない。例えば、処理液を間引いて付与し滲み等によって拡大した処理液の上に記録液を重ねたり、画像の輪郭部だけに処理液を付与し、記録液の一部を重ねる場合も本発明の範囲に含まれる。
【0061】
【実施例】
以下、実施例により詳細に説明する。
<記録液の製造方法>
以下の示す各々の記録液成分を混合し、これを0.8μmのポリテトラフロロエチレン系フッ素樹脂フィルターにて濾過し、各々の記録液を製造した。
(1)黒色記録液1
樹脂被覆型黒色顔料 10.0重量部
(10.0重量部のうち、樹脂分は3.0重量部)
1,3−ブタンジオール 22.5重量部
グリセリン 7.5重量部
界面活性剤(I) 1.0重量部
2−ピロリドン 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
(2)黒色記録液2
キャボジェット300(キャボット製、自己分散型顔料)10.0重量部
1,3−ブタンジオール 22.5重量部
グリセリン 7.5重量部
界面活性剤(I) 1.0重量部
2−ピロリドン 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
(3)黒色記録液3
キャボジェット300(キャボット製、自己分散型顔料)10.0重量部
アクリル系樹脂エマルジョン(アビシア社製) 5.0重量部
1,3−ブタンジオール 22.5重量部
グリセリン 7.5重量部
界面活性剤(I) 1.0重量部
2−ピロリドン 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
(4)黒色記録液4
C.I.フードブラック2 3.0重量部
グリセリン 10.0重量部
エチレングリコール 15.0重量部
ジエチレングリコール 24.0重量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 4.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.3重量部
イオン交換水 残量
(5)黒色記録液5
C.I.フードブラック2 3.0重量部
グリセリン 5.0重量部
エチレングリコール 5.0重量部
ジエチレングリコール 15.0重量部
N−メチル−2−ピロリドン 2.0重量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.3重量部
イオン交換水 残量
(6)黒色記録液6
ダイレクトブラック195 2.5重量部
2−ピロリドン 10.0重量部
グリセリン 5.0重量部
イソプロピルアルコール 4.0重量部
NaOH 0.4重量部
イオン交換水 残量
(7)イエロー記録液1
樹脂被覆型イエロー顔料 10.0重量部
(10.0重量部のうち、樹脂分は3.0重量部)
1,3−ブタンジオール 22.5重量部
グリセリン 7.5重量部
界面活性剤(I) 1.0重量部
2−ピロリドン 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
(8)イエロー記録液2
C.I.ピグメントイエロー17 10.0重量部
1,3−ブタンジオール 22.5重量部
グリセリン 7.5重量部
界面活性剤(I) 1.0重量部
2−ピロリドン 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
(9)イエロー記録液3
C.I.ピグメントイエロー17 10.0重量部
アクリル系樹脂エマルジョン(アビシア社製) 5.0重量部
11,3−ブタンジオール 22.5重量部
グリセリン 7.5重量部
界面活性剤(I) 1.0重量部
2−ピロリドン 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
(10)イエロー記録液4
C.I.アシッドイエロー23 3.0重量部
グリセリン 10.0重量部
エチレングリコール 15.0重量部
ジエチレングリコール 24.0重量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 4.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.3重量部
イオン交換水 残量
(11)イエロー記録液5
C.I.アシッドイエロー23 3.0重量部
グリセリン 5.0重量部
エチレングリコール 5.0重量部
ジエチレングリコール 15.0重量部
N−メチル−2−ピロリドン 2.0重量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 3.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.3重量部
イオン交換水 残量
(12)イエロー記録液6
ProjetFastYellow2 2.0重量部
ダイレクトイエロー86 1.0重量部
β−チオジグリコール 8.0重量部
エチレングリコール 8.0重量部
アセチノールEH(川研ケミカルス社製) 0.2重量部
イソプロピルアルコール 4.0重量部
イオン交換水 残量
【0062】
<処理液の製造方法>
以下の示す各々の処理液成分を混合し、これを0.8μmのポリテトラフロロエチレン系フッ素樹脂フィルターにて濾過し、各々の処理液を製造した。
(1)処理液1
ポリアリルアミン被覆シリカ 15.0重量部
グリセリン 10.0重量部
界面活性剤(I) 1.0重量部
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
(2)処理液2
アルミナ(日産化学社製、アルミナゾル520)15.0重量部(固形分)
グリセリン 10.0重量部
界面活性剤(I) 1.0重量部
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
(3)処理液3
カチオン性シリカ(日産化学社製、ST−AK)15.0重量部(固形分)
グリセリン 10.0重量部
界面活性剤(I) 1.0重量部
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
(4)処理液4
カチオン性シリカ(日産化学社製、ST−AK)15.0重量部(固形分)
グリセリン 10.0重量部
界面活性剤(I) 1.0重量部
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0重量部
カチオンG50(三洋化成社製カチオン系界面活性剤)4.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.2重量部
チオ硫酸ナトリウム 0.2重量部
イオン交換水 残量
(5)処理液5
ポリアリルアミン 5.0重量部
グリセリン 10.0重量部
エチレングリコール 11.0重量部
ジエチレングリコール 20.0重量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 12.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.1重量部
イオン交換水 残量
(6)処理液6
Al(NO・9HO 5.0重量部
グリセリン 10.0重量部
エチレングリコール 11.0重量部
ジエチレングリコール 20.0重量部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 12.0重量部
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.1重量部
イオン交換水 残量
(7)処理液7
4級アンモニウム化合物
(カチオンG50、三洋化成社製) 5.0重量部
グリセリン 10.0重量部
ジエチレングリコール 20.0重量部
イオン交換水 残量
(8)処理液8
カチオン性シリカ(日産化学社製、ST−AK) 15.0重量部
グリセリン 7.5重量部
ジエチレングリコール 7.5重量部
硝酸 0.6重量部
イオン交換水 残量
【0063】
<画質評価>
印刷物の画質評価を以下の内容で行なった。
(1)フェザリング
黒文字部分を観察し、ランク見本と比較することで画質評価を行なった。
ランク5…滲み出しが全くない
ランク4…滲み出しがわずかにある
ランク3…滲み出しがあるが、実用上問題なし
ランク2…滲み出しがやや多い
ランク1…滲み出しが多い
(2)カラーブリード
黒ベタとイエローベタとの境界部分を観察し、ランク見本と比較することで画質評価を行なった。
ランク5…混色が全くない
ランク4…混色がわずかに有る
ランク3…混色があるが、実用上問題なし
ランク2…混色がやや多い
ランク1…混色が多い
(3)耐擦性
印刷終了1時間後に黒ベタ部分を指でこすり、指へのインク転移の有無を観察した。
(4)画像濃度、裏抜け濃度
黒ベタ部分の表面からの光学濃度と裏面からの光学濃度をそれぞれ測定し、画像濃度と裏抜け濃度を求めた。
(5)乾燥性
印刷直後に印刷物に普通紙(マイペーパー、NBSリコー製)を押し当てて、普通紙への黒ベタ部分のインク転移を観察した。
(6)耐水性
印刷物をイオン交換水に1分間浸漬した後取り出し、付着した水を紙タオルで吸い取り自然乾燥させた。浸漬前後の黒ベタ画像濃度を測定し、変化率を求め退色率とした。
(7)吐出安定性
印刷物を観察し、画像欠陥の有無から吐出不良の有無を確認した。
(8)光沢度
印刷物の60度光沢度を光沢度計(BYK Gardner社製、4501)を用いて求めた。
【0064】
(実施例1)
処理液用カートリッジに処理液1を、イエロー記録液カートリッジにイエロー記録液1を、黒色記録液カートリッジに黒色記録液1を充填して、図1に示すインクジェット記録装置に装着し、印字評価実験を行なった。被記録材にはマイペーパー(普通紙、NBSリコー製)を用いて印字試験を行なった。印字は、先に処理液が紙に付着し、その上から各色の記録液が付着する順番で行なった。
印字された印刷物の、フェザリング、カラーブリード、耐擦性、画像濃度、裏抜け濃度、乾燥性、耐水性について評価を行なった。その結果を表2に示す。
【0065】
(実施例2〜5)
実施例1において、処理液1、黒色記録液1、イエロー記録液1をそれぞれ用いた代わりに、表1に示した記録液及び処理液を用いた以外は実施例1と同様に実施例2〜5の印字試験を行なった。結果を表2に示す。
【0066】
(比較例1〜6)
実施例1において、処理液1、黒色記録液1、イエロー記録液1をそれぞれ用いた代わりに、表1に示した記録液及び処理液を用いた以外は実施例1と同様に比較例1〜6の印字試験を行なった。結果を表2に示す。
【0067】
【表1】
Figure 0004001371
【0068】
【表2】
Figure 0004001371
【0069】
【発明の効果】
以上、詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明の請求項1により樹脂被覆された色材を含有する記録液を用いることで耐擦性が良好な印刷物が得られる。
また、本発明の請求項2により、処理液と記録液とが凝集物を生成することで、フェザリングとカラーブリードを抑制することができる。
また、本発明の請求項3により、カチオン性微粒子と、アニオン性色材を用いることで効果的に凝集を生成することができ、フェザリングとカラーブリードをさらに抑制することができる。
また、本発明の請求項4により、カチオン性無機微粒子を用いることで、さらに効果的に凝集を生成することができ、フェザリングとカラーブリードをさらに抑制することができる。
また、本発明の請求項5により、カチオン性シリカを用いることで、さらに効果的に凝集を生成することができ、フェザリングとカラーブリードをさらに抑制することができる。
また、本発明の請求項6により、処理液が水と水溶性溶剤を含有することで、引火性が低くなるとともに、皮膚刺激性が低くなり安全性が高まる。
また、本発明の請求項7により、処理液が湿潤剤を含有することでヘッドの目詰まりが防止でき、浸透剤を含有することで液が紙に浸透しやすくなり乾燥性を向上させることができる。
また、本発明の請求項8により、処理液が防腐防黴剤を含有することで長期保存安定性が高まる。
また、本発明の請求項9により、処理液がカチオン性界面活性剤を含有することで、凝集性が向上し、フェザリングとカラーブリードをさらに抑制することができる。
また、本発明の請求項10により、記録液中の色材に顔料を用いることで凝集性が向上し、フェザリングとカラーブリードを抑制することができる。
また、本発明の請求項11により、記録液が水と水溶性溶剤を含有することで、引火性が低くなるとともに、皮膚刺激性が低くなり安全性が高まる。
また、本発明の請求項12により、記録液が湿潤剤を含有することでヘッドの目詰まりが防止でき、浸透剤を含有することで液が紙に浸透しやすくなり乾燥性を向上させることができる。
また、本発明の請求項13により、記録液が防腐防黴剤を含有することで長期保存安定性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるインクジェット記録装置図である。
【図2】本発明における記録ヘッドの一例である。
【図3】本発明における記録ヘッドの別の一例である。
【図4】本発明における記録装置に装填する前のカートリッジの外観斜視図である。
【図5】本発明におけるカートリッジの正断面図である。
【符号の説明】
1 記録ヘッド
2 本体筐体
7 処理液、記録液共通カートリッジ
16 ギア機構
17 副走査モーター
18 キャリッジ
20 記録液カートリッジ
21 ガイドシャフト
22 ガイドシャフト
23 タイミングベルト
24 主走査モーター
25 主走査モーター
26 主走査モーター
27 主走査モーター
31 処理液が吐出されるノズル
32 記録液が吐出されるノズル
33 記録液が吐出されるノズル
34 記録液が吐出されるノズル
35 記録液が吐出されるノズル
36 処理液が吐出されるノズル
37 記録液が吐出されるノズル
38 記録液が吐出されるノズル
39 記録液が吐出されるノズル
40 記録液が吐出されるノズル
41 カートリッジ筐体
42 液吸収体
43 ケース
44 上蓋部材
45 液供給口
46 シールリング
47 大気解放口
48 溝
50 キャップ部材
51 液漏れ防止用突部
53 キャップ部材
55 シール部材
71 カートリッジ位置決め部
81 カートリッジ着脱用突状部
81a カートリッジ着脱用指掛け部
82 カートリッジ着脱用窪み部
A 空間

Claims (18)

  1. 樹脂被覆された色材を含有する記録液と、該樹脂被覆された色材と反応性を有する微粒子を含有する処理液とを組み合わせたことを特徴とするインクセット。
  2. 前記処理液と記録液が接触した際に凝集物を生成することを特徴とする請求項1に記載のインクセット。
  3. 請求項1に記載のインクセットに用いられる処理液であって、該処理液に含有される微粒子がカチオン性化合物であることを特徴とする処理液。
  4. 前記カチオン性化合物がカチオン性無機化合物であることを特徴とする請求項3に記載の処理液。
  5. 前記カチオン性無機化合物がカチオン性シリカであることを特徴とする請求項4に記載の処理液。
  6. 前記処理液が水、水溶性溶剤を含有することを特徴とする請求項3乃至5の何れか1に記載の処理液。
  7. 前記水溶性溶剤が湿潤剤、及び/または浸透剤であることを特徴とする請求項6に記載の処理液。
  8. 前記処理液が防腐防黴剤を含有することを特徴とする請求項3乃至5の何れか1に記載の処理液。
  9. 前記処理液がカチオン性界面活性剤を含有することを特徴とする請求項3乃至5の何れか1に記載の処理液。
  10. 請求項1に記載のインクセットに用いられる記録液であって、該色材が顔料であることを特徴とする記録液。
  11. 請求項1に記載のインクセットに用いられる記録液であって、該記録液が色材、水、水溶性溶剤を含むことを特徴とする記録液。
  12. 前記水溶性溶剤が湿潤剤、及び/または浸透剤であることを特徴とする請求項11に記載の記録液。
  13. 前記記録液が防腐防黴剤を含有することを特徴とする請求項11に記載の記録液。
  14. 請求項1または2に記載のインクセット、あるいは、請求項3乃至9の何れか1に記載の処理液と請求項10乃至13の何れか1に記載の記録液との組み合わせを用いて画像を形成するインクジェット記録方法であって、処理液を被記録材に付着させる工程と、記録液を被記録材に付着させる工程とを有し、被記録材に画像を形成することを特徴とするインクジェット記録方法。
  15. 請求項1または2に記載のインクセット、あるいは、請求項3乃至9の何れか1に記載の処理液と請求項10乃至13の何れか1に記載の記録液との組み合わせを用いて画像を形成するインクジェット記録装置であって、記録材を搬送する搬送部と、処理液を被記録材に付着させる付着部と、記録液を被記録材に付着させる付着部とを有し、被記録材に画像を形成することを特徴とするインクジェット記録装置。
  16. 請求項1または2に記載のインクセットに用いられる処理液、あるいは請求項3乃至9の何れか1に記載の処理液を収納する処理液カートリッジ。
  17. 請求項1または2に記載のインクセットに用いられる記録液、あるいは請求項10乃至13の何れか1に記載の記録液を収納する記録液カートリッジ。
  18. 請求項15に記載のインクジェット記録装置を用いて作製されることを特徴とするインクジェット記録物。
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