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JP4000050B2 - セラミック積層体の製法 - Google Patents

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JP4000050B2
JP4000050B2 JP2002328648A JP2002328648A JP4000050B2 JP 4000050 B2 JP4000050 B2 JP 4000050B2 JP 2002328648 A JP2002328648 A JP 2002328648A JP 2002328648 A JP2002328648 A JP 2002328648A JP 4000050 B2 JP4000050 B2 JP 4000050B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セラミック積層体の製法に関し、特に、配線基板や積層セラミックコンデンサのようにセラミックグリーンシートおよび導体パターンが薄層多層化されたセラミック積層体の製法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、電子機器の小型化、高密度実装化に伴い、セラミック積層体中に導体パターンが形成された配線基板や積層セラミックコンデンサは、小型薄型化および高寸法精度が求められている。このため、例えば、積層セラミックコンデンサでは、小型高容量化に対して、セラミックグリーンシートや導体パターンの薄層化および多層化が進められている。
【0003】
通常、このような積層セラミックコンデンサは、先ず、セラミックグリーンシートの表面に導体ペーストを印刷して矩形状の導体パターンを複数形成し、次に、該導体パターンが形成されたセラミックグリーンシートを複数重ねて一括積層して母体積層体が形成され、さらに、この母体積層体を所定位置で切断し焼成して製造される。
【0004】
しかしながら、上記のように、セラミックグリーンシートの表面に導体パターンを形成する工程や、予め導体パターンが形成されたセラミックグリーンシートを、一括で複数積層する工程を用いる製法では、用いるセラミックグリーンシートが極めて薄いために、印刷時や積層中にセラミックグリーンシートにシワが生じたり、積層後においては、このシワにできる空間によってセラミックグリーンシートと導体パターンとの間にデラミネーションが発生しやすいという問題があった。
【0005】
そこで、このような問題に対処したものとして、特許文献1に開示されたものが知られている。この特許文献1に開示された製法によれば、図6示すように、支持体51上に載置した通常のセラミックグリーンシート53aの表面に、密着性のよい極薄のセラミックグリーンシート53bを重ね合わせ、次に、この密着性のよい極薄のセラミックグリーンシート53bの表面に導体ペーストを印刷して導体パターン55を形成し、次に、この密着性のよい極薄のセラミックグリーンシート53b上に形成された導体パターン55を覆うように、再び、密着性のよい極薄のセラミックグリーンシート53bを重ね合わせる。そして、導体パターン55を形成する工程と密着性のよい極薄のセラミックグリーンシート53bを重ね合わせる工程を繰り返して母体積層体63を形成するものである。即ち、逐次積層工程を用いることにより、前記した一括積層工程において問題となったセラミックグリーンシート53a、53bのシワや母体積層体63に発生するデラミネーションを防止できると、記載されている。
【0006】
また、近年では、セラミックグリーンシート53a、53bの薄層化および多層化に伴い、セラミックグリーンシート53a、53b上に形成された導体パターン55の厚みによる段差を無くす工夫が図られている(例えば、特許文献2)。
【0007】
この特許文献2に開示されたセラミック積層体の製法では、図7に示すように、セラミックグリーンシート81の主面上に形成された導体パターン83と同じ高さのセラミックパターン85が形成され、これにより導体パターン83の厚みによる段差を実質的に無くすことができ、導体パターン83の厚みの影響を受けない状態で、セラミックグリーンシート81を積層することができる。
【0008】
また、このようなセラミック積層体の製法では、セラミックグリーンシート81の主面上に、導体パターン83およびセラミックパターン85を形成し、次いで、これらの導体パターン83およびセラミックパターン85が形成された複数のセラミックグリーンシート81を一括積層することにより母体積層体86が形成される、と記載されている。
【0009】
【特許文献1】
特公平8−4045号公報
【特許文献2】
特開2000−311831号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特許文献1に開示された製法を用いたとしても、用いるセラミックグリーンシート53a、53bと導体パターン55との厚み差が無いほどにセラミックグリーンシート53a、53bの厚みが薄くなった場合には、やはり、層数の増加によって導体パターン55による段差の影響が現れ、このため母体積層体63や切断後の積層成形体に発生するデラミネーションを解消できないという問題が依然として残っていた。
【0011】
また、上記の特許文献2に開示された製法では、導体パターン83とセラミックパターン85とが接するように形成する製法では、通常、セラミックパターン85を形成するスクリーン印刷の精度が30〜200μm程度あり、このような印刷の位置ずれのためにセラミックパターン85の一部が導体パターン83上に乗り上げてしまい、段差を逆に助長する結果を招いてしまうという問題がある。
【0012】
さらに、積層セラミックコンデンサ等、セラミック積層体の低コスト化の要求に応えるために、製造工程においてはワーク(切断してセラミック積層体となる前の母体積層体)の大面積化が行われており、このため、ますます印刷による位置ずれの問題が顕在化してきている。
【0013】
そこで、このような印刷によるセラミックパターン85の位置ずれの問題を回避するために、図8(a)、(b)に示すように、セラミックグリーンシート81上に形成した導体パターン83からセラミックパターン85を離して形成する製法が考えられる。
【0014】
このような製法では、印刷によるセラミックパターン85の位置ずれは抑制できるものの、図9(a)、(b)から明らかなように、セラミックパターン85が導体パターン83の周囲に相似形状に開口するように形成されているために、導体パターン83の角縁89と、その角縁89から外側の位置に対向するセラミックパターン85の角部91との間隔d2が、導体パターン83の外縁93とその外縁93に対向するセラミックパターン85の内縁95との間隔d1よりも広くなっている。
【0015】
一般に、導体パターン83およびセラミックパターン85が形成されたセラミックグリーンシート81を積層し、加圧加熱して一体化することが行われるが、上記のように、導体パターン83の角縁89とセラミックパターン85の角部91との間の隙間87は、他の部分よりも間隔が大きいために、積層時の加圧加熱によってもセラミックパターン85が埋まり難く、セラミックパターン85の角部91付近の上面に積層されるセラミックグリーンシート81との密着性が低下し易い。しかも、セラミックパターン85の角部91付近は母体積層体63を個体に切断する際の切断線が交差する領域にも近いことから切断時に積層界面が剥離しやすく、焼成後においてはデラミネーションが発生しやすいという問題があった。
【0016】
従って、本発明は、セラミックグリーンシート上に形成された導体パターンによる段差を解消できるとともに、セラミックグリーンシート間の密着不良並びに焼成後のデラミネーションを防止できるセラミック積層体の製法を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明のセラミック積層体の製法は、(a)支持体上にセラミックグリーンシートを載置する工程と、
(b)該セラミックグリーンシートの表面に矩形状の導体パターンを形成する工程と、
(c)該導体パターンが形成された前記セラミックグリーンシートの上面に、別のセラミックグリーンシートを重ね合わせる工程と、
(d)(b)および(c)工程を繰り返して、該セラミックグリーンシートと前記導体パターンとが交互に積層された母体積層体を形成する工程と、
(e)該母体積層体を所定位置で切断して積層成形体を形成する工程と、
を具備するセラミック積層体の製法において、
前記母体積層体の前記セラミックグリーンシートの主面上における前記導体パターンが形成される領域を囲む部分にセラミックパターンを形成するとともに、前記導体パターンの外縁と、該導体パターンの外縁に略平行な前記セラミックパターンの内縁との間の間隔をD1、前記導体パターンの外角縁と前記外角縁の外側に位置する前記セラミックパターンの内角縁との最短間隔をD2としたときに、D1≧D2の関係を満足することを特徴とする。
【0018】
また、上記セラミック積層体の製法では、D2/D1≦0.8の関係を満足することが望ましい。
【0019】
この製法によれば、セラミックグリーンシート上に形成した導体パターンに隣接してセラミックパターンが形成されることから、薄層化されたセラミックグリーンシートを用いる場合であっても、そのセラミックグリーンシートの密着性まで考慮することなく導体パターンによる段差を容易に低減することができる。
【0020】
また、導体パターンの直線状の外縁とセラミックパターンの直線状の内縁との間隔に比較して、導体パターンの角縁とセラミックパターンの角部との間の隙間を狭くすることにより、導体パターンの角縁とセラミックパターンの角部との隙間にセラミックパターンが埋まり易くなる。このため、この隙間に埋まったセラミックパターンと、その上面側に積層されるセラミックグリーンシートとの密着性を高めることができる。
【0021】
また、セラミックパターンの角部での密着性が高まることにより、積層体を個体に切断する際の積層界面の剥離をも抑制でき、焼成後においてもデラミネーションの発生を防止できる。
【0022】
上記セラミック積層体の製法では、セラミックパターンの厚みをt1、導体パターンの厚みをt2としたときに、t1>t2の関係を満足することが望ましい。
【0023】
このようにセラミックパターンの厚みを導体パターンの厚みよりも厚くすることにより、積層時に用いる吸着ヘッドの吸着面がセラミックパターンにのみ接触して、導体パターンに接触しないことから、導体パターンの変形や吸着ヘッドによる型跡が付き難くできる。このため、本来絶縁されるべき領域にまで導体パターンが延出したりすることがないことから、セラミック積層体の絶縁不良や短絡を防止することができきる。
【0024】
また、このような条件で作製した仮積層体では、導体パターンとセラミックグリーンシートとの間に隙間が形成されやすいことから積層時の吸引力が高まり母体積層体の密着性を高めることができる。
【0025】
上記セラミック積層体の製法では、導体パターンを形成した後にセラミックパターンを形成することが望ましい。導体パターンは金属粉末を含有するために着色されており、通常、セラミック粉末が白色系であることから、導体パターンとセラミックグリーンシートとの色のコントラストがつきやすく、導体パターンを基準にして、この後に形成するセラミックパターンのパターン印刷の位置どりが容易にできる。
【0026】
上記セラミック積層体の製法では、母体積層体は、セラミックグリーンシートの主面上における導体パターンが形成される領域を囲む部分にセラミックパターンを形成した後に、該セラミックパターンの内側に導体パターンを形成して作製されることが望ましい。
【0027】
即ち、セラミックパターンによる囲いを先に形成することにより、導体パターンの周辺がセラミックパターンに囲まれた状態となり、低粘度の導体ペースト用いて印刷したとしても、にじみを抑制でき、例えば、積層セラミックコンデンサの静電容量のばらつきや短絡を防止することができる。
【0028】
上記セラミック積層体の製法では、セラミックグリーンシートは、キャリアフィルムが貼り合わされたものであり、前記セラミックグリーンシートを前記支持体上のセラミックグリーンシート上面に重ね合わせた後に、前記キャリアフィルムを剥離する工程を具備することが望ましい。即ち、本発明のように、セラミックグリーンシートを逐次積層する場合には、セラミックグリーンシートが、その片面側でキャリアフィルムによって支持されている方が、両パターンを印刷するときや、そのセラミックグリーンシートを下層側の導体パターンおよびセラミックパターン上に重ね合わせるときも加圧加熱等によるシワを抑制することができる。
【0029】
また、このように加圧面側にキャリアフィルムが貼り合わされていると、セラミックグリーンシートを重ね合わせるときに用いる積層ヘッドとセラミックグリーンシートとが、キャリアフィルムを介して接することとなり、熱や圧力をより緩やかに伝えることができ、密着性のよい極薄のセラミックグリーンシートの上面側の熱による変質等が抑制され、このセラミックグリーンシートの均質性を維持できる。さらには、セラミックグリーンシート上のゴミの付着も防止できる。
【0030】
上記セラミック積層体の製法では、(c)工程における導体パターンの厚みをt2、セラミックグリーンシートの厚みをt3としたときに、t2/t3≧0.5の関係を満足することが望ましい。本発明によれば、セラミックグリーンシート上に形成された導体パターンによる段差を解消できるが、特に、上記にように導体パターンの厚みとの厚み差が無いほどにセラミックグリーンシートが薄層化された場合に好適に用いることができる。
【0031】
上記セラミック積層体の製法では、セラミックパターン周辺部が、セラミックグリーンシートの主面に対して0.5°以上の角度を有する傾斜面によって形成されていることが望ましい。セラミックパターン周辺部の傾斜面の角度を上記の角度以上とすることにより、印刷時の導体ペーストのにじみや乗り上げを抑制でき、導体パターンの有効面積のばらつきをさらに小さくできる。
【0032】
また、上記セラミック積層体の製法では、セラミックグリーンシート中のセラミック成分と、セラミックパターン中のセラミック成分とが実質的に同一組成物からなることが望ましく、さらには、上記セラミック積層体の製法では、導体パターンが、焼成後に積層セラミックコンデンサの内部電極層となることが望ましい。
【0033】
【発明の実施の形態】
本発明のセラミック積層体の製法は、例えば、電子部品の一つである積層セラミックコンデンサに好適に適用される。そこで、積層セラミックコンデンサを例とする図1に示すセラミック積層体の製法の工程図をもとに以下に説明する。
【0034】
図1(a)に示すように、まず、支持体1上に複数のセラミックグリーンシート3aを載置して、積層セラミックコンデンサのマージン部となる所定厚みの無電極部4aを形成する。
【0035】
本発明のセラミックグリーンシート3aは、例えば、セラミック粉体と、有機バインダと、この有機バインダを溶解する溶媒とを混合したものが好適に用いられる。
【0036】
セラミック粉体としては、例えば、BaTiO3を主成分とするセラミック粉体が好適に用いられる。また、耐還元性を高めるための公知の添加剤や焼結助剤として、ガラス粉末を加えてもよい。
【0037】
また、このセラミックグリーンシート3aの厚みは、小型、大容量化という理由から、5μm以下、特に、1.5〜4μmであることが望ましい。
【0038】
次に、図1(b)に示すように、積層されたセラミックグリーンシート3aの最上層の一方主面上に導体ペーストを印刷して矩形状の導体パターン5を等間隔に離間して複数形成する。
【0039】
ここで、導体パターン5の厚みt2は、コンデンサの小型、高信頼性化という点から3μm以下、特には1μm以下であることが望ましい。さらには、セラミックグリーンシート3aと導体パターン5の厚みの関係は、導体パターン5の厚みをt2、セラミックグリーンシート3a、3bの厚みをt3としたときに、t2/t3≧0.5の関係を満足するほどに、導体パターン5による段差の影響が大きくなるような厚み差を構成する場合に、特に本発明の製法が好適である。そして、t2/t3比は0.7以上であることがさらに好ましい。
【0040】
本発明の製法に用いる導体ペーストは、金属粒子と、有機溶剤と、この有機溶剤に対して可溶性の有機粘結剤とを含有するものが好適に用いられる。
【0041】
金属粒子としては、Ni、Co、Cuの群から選ばれる少なくとも1種の金属粒子が好ましいが、金属の焼成温度が一般の絶縁体の焼成温度と一致する点、及びコストが安いという点からNiが望ましい。また、固形分として、金属粒子以外に、導体パターン5の焼結性を抑えるために微細なセラミック粉末を混合して用いることが好ましい。
【0042】
さらには、導体ペーストの有機粘結剤および有機溶剤は、セラミックペーストの印刷と同じ条件を採用できること及びセラミックグリーンシート3aの表面からの有機粘結剤の揮発速度を一致させるという理由から、導体ペーストはセラミックペーストと同じ組成であることが望ましい。そして、本発明では、このように形成される導体パターン5が電子部品の一つである積層セラミックコンデンサの内部電極層となることが好ましい。
【0043】
次に、図1(c)に示すように、この導体パターン5の領域を囲む部分にセラミックペーストを印刷してセラミックパターン7を形成する。
【0044】
図2は、セラミックグリーンシート3a上において、導体パターン5間に離間して形成されたセラミックパターン7を示す概略斜視図である。図2に示すように、セラミックグリーンシート3a上に所定間隔L1をおいて形成される導体パターン5は矩形状であり、一方、セラミックパターン7は、この導体パターン5を囲うように形成されているが、その開口6の形状は角が取られた略相似形状となっている。この場合、導体パターン5とセラミックパターン7とは所定間隔だけ離して形成されている。
【0045】
即ち、導体パターン5の直線状の外縁9と、この導体パターン5の直線上の外縁9に対向するセラミックパターン7の内縁10との間隔をD1、また、導体パターン5の外角縁11と、この外角縁11の外側に位置するセラミックパターン7の内角縁13との間隔をD2としたときに、D1≧D2の関係を満足することが重要である。
【0046】
つまり、本発明のセラミックパターン7では、導体パターン5の1つの外角縁11に対向する外側の位置に、例えば、2つの鈍角を有するように内角縁13が形成されている。
【0047】
そして、このD2/D1比は、導体パターン5とセラミックパターン7との隙間にセラミックパターン7が埋まりやすいという理由から0〜0.8の範囲であることが望ましく、特には、0.1〜0.5の範囲がより望ましい。
【0048】
また、セラミックパターン7の面積を広げやすいという点で、セラミックパターン7の内角縁13は角状ではなく湾曲状であってもよく、導体パターン5の外角縁11の外側に位置するセラミックパターン7を、さらに、このセラミックパターン7の内縁10の方向にまで広げることができ、このためセラミックパターン7を形成したその上面側に積層されるセラミックグリーンシート3aとの密着性をさらに高めることができる。この場合、湾曲状に形成されたセラミックパターン7は導体パターン5の角縁11に乗り上げない程度で接していることが好ましい。この場合、D2/D1比は0となる。
【0049】
また、間隔D1は、印刷時の位置ずれが生じても、導体パターン5とセラミックパターン7との位置精度のマージンを保持し高精度のパターンを形成するという理由から、30μm以上、また、積層加圧した際に、両方のパターン間へのセラミックグリーンシート3aの埋没を抑制し、セラミック積層体の変形を抑えるという理由から30〜150μmの範囲がより望ましい。
【0050】
このように導体パターン5とセラミックパターン7との間に僅かな隙間を形成すれば、導体パターン5とセラミックパターン7とを形成したセラミックグリーンシート3aを多層化してセラミック積層体を形成する場合に、仮積層した際、セラミックグリーンシート3a間に貯まっている空気を加圧時に効果的に脱気でき、焼成前の密着不良や焼成後でのデラミネーションを抑制できる。
【0051】
なお、このセラミックペーストに用いるセラミック粉末の組成は、セラミックグリーンシート3aの粉末組成もしくは異なる粉末組成の何れかを適用できるが、セラミックグリーンシート3aとセラミックパターン7との焼成収縮率を合致させるという理由から、セラミックペーストはセラミックグリーンシート3aを形成するセラミックスラリと実質的に同じセラミック粉末組成であることが望ましい。
【0052】
この場合、金属粉末を含有する導体ペーストは着色されており、セラミックグリーンシート3a、3bとの色のコントラストが大きいことから、導体パターン5を基準にして認識性よく印刷できるという理由から、導体パターン5はセラミックパターン7よりも先に形成することが望ましい。
【0053】
図3(a)は、導体ペーストを印刷するために用いられるスクリーンの概略斜視図である。図3(a)に示すように、上記のような導体ペーストを印刷するスクリーン21としては、レジスト層22が付与された部分と付与されていない開口部を複数有するパターンが好適に用いられる。
【0054】
一方、図3(b)は、セラミックペーストを印刷するために用いられるスクリーン25の概略斜視図である。図3(b)に示すように、上記のようなセラミックペーストを印刷するスクリーン25としては、前記した導体パターン5の周囲を囲うようにセラミックパターン7を形成する必要があるため、導体パターン5の印刷に用いたスクリーン21とはほぼ逆のパターンが用いられる。
【0055】
この場合、スクリーン25に略矩形状のレジスト層27が等間隔に形成されたスクリーンが好適に用いられる。
【0056】
このようなスクリーン25を用いることにより、導体パターン5よりも面積の大きい略相似形状の開口部を有するセラミックパターン7を形成するとともに、導体パターン5の外角縁11とセラミックパターン7の内角縁13との間隔D2が、導体パターン5の外縁9とセラミックパターン7の内縁10との間隔D1よりも狭くなるように、スクリーン25に形成されている略矩形状のレジスト層27の角部を落としたものが用いられる。そして、導体パターン5の外角縁11とセラミックパターン7の内角縁13との幅は、落とす角部の面積を変更して調整される。尚、セラミックパターン7の厚みt1はスクリーン25に施されているレジスト層27の厚みを変更することによって調整される。
【0057】
また、セラミックパターン7は導体パターン5の厚みと実質的に同一厚みであることが望ましいが、セラミックパターン7を、少なくとも一部の導体パターン5に離間させて形成する場合には、積層時に用いる吸着ヘッドによる導体パターン5の変形を抑制できるという点で、セラミックパターン7の厚みをt1、導体パターン5の厚みをt2としたとき、t1/t2比は1.05〜1.2の範囲であることがより望ましい。
【0058】
次に、図1(d)に示すように、上記のように導体パターン5およびセラミックパターン7が形成されたセラミックグリーンシート3aの上面側に、これら導体パターン5およびセラミックパターン7を覆うように、別のセラミックグリーンシート3bを重ね合わせて、導体パターン5およびセラミックパターン7とセラミックグリーンシート3bとを密着させる。
【0059】
この後は、所望の積層数になるように、図1(b)〜(d)の工程を繰り返し、最後に、再び、セラミックグリーンシート3aを用いて、図1(a)工程において形成したと同様の厚みの無電極部4bを形成して母体積層体14を形成する。
【0060】
なお、本発明は、上記したように、セラミックグリーンシート3aもしくは3bを重ね合わせた後に、逐次、その上面にスクリーン印刷により導体パターン5やセラミックパターン7を形成していく工法である。この点、導体パターン5やセラミックパターン7を予め形成したセラミックグリーンシート3a、3bを複数準備して一括積層する工法に比較して積層時の位置ずれを含みにくいことから、形成された母体積層体14中の導体パターン5およびセラミックパターン7の位置精度は印刷精度のみの位置ずれだけで済むため、積層精度が良好になり、容量ばらつきを低減できるとともに、サイドマージンやエンドマージンを小さくでき、しいては、セラミック積層体の小型化にも対応が可能となる。
【0061】
なお、本発明の製法では、図4に示すように、セラミックグリーンシート3a、3bは、キャリアフィルム20が貼り合わされたものであることがよく、この場合、キャリアフィルム20のついたセラミックグリーンシート3a、3bを重ね合わせた後に前記キャリアフィルム20を剥離する。この方法によれば、セラミックグリーンシート3a、3bがキャリアフィルム20によって支持されているために、導体パターン5やセラミックパターン7の上面側に重ね合わせた後に加圧加熱して密着させる場合においてもセラミックグリーンシート3a、3bの伸びや変形を抑制することもできる。また、この方法ではセラミックグリーンシート3a、3b自体を吸着することがないため、セラミックグリーンシート3a、3bの欠陥を防止することができる。
【0062】
また、図5(a)〜(e2)に示すように、本発明の製法において、母体積層体14は、セラミックグリーンシート3a、3bの主面上における導体パターン5が形成される領域を囲む部分にセラミックパターン7を形成した後に、該セラミックパターン7の内側に導体パターン5を形成して作製することもできる。
【0063】
この場合、セラミックパターン7の後に形成される導体パターン5の印刷時の乗り上げを抑制するとともに、にじみによるパターンの広がりを防止するという理由から、セラミックパターン周辺部の傾斜面の角度がセラミックグリーンシートの主面に対して0.5°以上であることが望ましく、特に、その角度は1〜40°であることが望ましい。
【0064】
図1(e1)は母体積層体14サイドマージン側、図1(e2)はエンドマージン側の断面図である。図に示すように、この母体積層体13を点線部Cで切断して積層成形体を形成した後、さらに、この積層成形体を所定の雰囲気および温度条件下で焼成して、外部導体を形成してセラミック層と内部電極層を具備する積層セラミックコンデンサを形成する。
【0065】
さらに、この製法によれば、導体パターン5やセラミックパターン7の形成精度が良好になり、容量ばらつきを低減できるとともに、積層数を増大しても導体パターン5の形成精度には影響しないことから、セラミック積層体の高積層化や大型化を実現できる。
【0066】
【実施例】
セラミック積層体の1つである積層セラミックコンデンサを以下のように作製した。
【0067】
セラミックグリーンシートは、BaTiO3を主成分とするセラミック粉体に有機バインダと有機溶剤とを加えてセラミックスラリを調製し、ダイコータ法を用いてキャリアフィルム上に厚み2μmで成膜した。
【0068】
一方、上記のセラミックスラリに含まれる一部を粉砕して、これらのセラミック粉末と、ペースト用の有機粘結剤と有機溶剤とを3本ロールで混練してセラミックペーストを調製した。
【0069】
導体ペーストは、平均粒径が0.2μmのNi粉末と、上記セラミックペーストに用いた有機粘結剤と有機溶剤とをセラミックペーストと同様にペースト化して調製した。
【0070】
次に、得られたセラミックグリーンシートを複数枚支持体上に載置し、その主面状にスクリーン印刷装置を用いて、A工程として矩形状の導体パターンを形成した。次に、このセラミックグリーンシート上に形成された導体パターン間に、表1に示す間隔D1、D2だけ離間するように、所定の印刷スクリーンを用いてセラミックペーストを印刷、乾燥させ、導体パターンとともにセラミックパターンを形成した。この場合、導体パターンの厚みは1.4μmとした。また、セラミックパターンの傾斜面はセラミックペーストの粘度とレジストの傾斜角により調整した。傾斜角は4°とした。
【0071】
次に、この導体パターンとともにセラミックパターンが塗布形成されたセラミックグリーンシートの上面に、再び、セラミックグリーンシートを重ね合わせ、これを300回繰り返し静電容量を発現する層数を300層とした。さらにその上に、導体パターンおよびセラミックパターンが形成されていないセラミックグリーンシートを各10枚積層し、第1回目の加圧プレスを行い母体積層体を形成した。
【0072】
次に、B工程として、先に本発明の形状を有するセラミックパターンを印刷し、次に、このセラミックパターン内に導体パターンを形成し、上記A工程と同様の工法により積層を行って母体積層体を作製した。なお、上記のA工程およびB工程においては、いずれもセラミックグリーンシートを重ね合わせる毎にキャリアフィルムを剥離する工法を用いた。
【0073】
次に、これらAおよびB工程で作製した母体積層体を、それぞれ格子状に切断して積層体成形体を得た。この後、大気中250℃、または弱還元性雰囲気中で500℃に加熱し脱バイ処理を行った。
【0074】
さらに、脱バイ後の積層体成形体に対して、還元雰囲気中、1250℃で2時間焼成し、さらに、弱酸化性雰囲気中にて、900℃で4時間の再酸化処理を行いセラミック積層体本体を得た。焼成後、このセラミック積層体本体の端面にCuペーストを900℃で焼き付け、さらにNi/Snメッキを施し、内部電極層と交互に接続する外部導体を形成した。
【0075】
評価については、まず、印刷後の、導体パターンの外縁と前記導体パターンの外縁に略平行なセラミックパターンの内縁との間の間隔D1、および、導体パターンの外角縁と前記外角縁の外側に位置するセラミックパターンの内角縁との間隔D2、並びに、セラミックパターンの厚みt1、導体パターンの厚みt2を非接触式表面粗さ計(レーザー変位計)を用いて測定した。
【0076】
また、焼成前の積層成形体各100個について実体顕微鏡を用いて観察し密着不良を評価した。
【0077】
さらに、デラミネーションについては、焼成後および耐熱衝撃試験(280℃、2秒浸漬)後の積層セラミックコンデンサ各100個について、その端面および側面からそれぞれ研磨し、内部導体周辺部のデラミネーションの発生数を評価した。
【0078】
次に、静電容量のばらつきは、焼成後の積層セラミックコンデンサ100個の静電容量の測定値から算出した。また、同時に静電容量の測定から短絡(ショート)率を求めた。
【0079】
さらに、外部電極を形成したセラミック積層体について、各50個についてHALT(加速寿命試験)を行った。試験条件は150℃、40Vとし、最初にショートが生じるまでの時間を評価した。
【0080】
一方、比較例として、矩形状の導体パターンを形成し、その周囲に離間して相似形状のセラミックパターンを形成したものを用いて、本発明と同様のセラミック積層体を作製した。この場合、導体パターンの外縁とセラミックパターンの内縁との間隔よりも、導体パターンの外角縁とセラミックパターンの内角縁との間隔が広くなっていた。これらの結果を表1に記載した。
【0081】
【表1】
Figure 0004000050
【0082】
表1の結果から明らかなように、本発明である導体パターンを形成後にセラミックパターンを形成して逐次積層を行うA工程を用い、かつ、導体パターンの外縁とセラミックパターンの内縁との間隔D1よりも、導体パターンの外角縁とセラミックパターンの内角縁との間隔D2を同等もしくは狭くした試料No.1〜5では、焼成後および熱衝撃試験後においてデラミネーションが見られた試料もあったが、母体成形体を切断した後の成形体での密着不良が0%であった。また、静電容量のばらつきも1.6%以下と良好であった。
【0083】
また、その間隔の比をD2/D1≦0.8とした試料No.1〜4では、焼成後のデラミネーション発生率が1%となり、さらに、0.1≦D2/D1≦0.5とした試料No.2〜3では、熱衝撃試験後のデラミネーション発生率が0%であった。
【0084】
さらに、セラミックパターンの厚みt1を導体パターンの厚みt2よりも厚くした試料No.7、8では、同一厚みの場合に比較してHALTでのショート発生時間が長くなり信頼性が向上した。
【0085】
また、B工程を用いて作製した試料No.9〜11においても、A工程を用いて作製した試料と同等の密着不良やデラミネーション発生率となり、静電容量のばらつきやHALTも良好な結果であった。
【0086】
一方、導体パターン周囲に離間して相似形状のセラミックパターンを形成し、D2/D1比を1.4とした試料No.6では、母体積層体の切断後に密着不良が見られ、焼成後および熱衝撃試験後にもデラミネーションが多発した。
【0087】
【発明の効果】
以上詳述したとおり、本発明によれば、セラミックグリーンシート上に形成した導体パターンに隣接してセラミックパターンを形成し、この上面に再びセラミックグリーンシートを重ね合わせる工程を用い、かつ、導体パターンの外縁とセラミックパターンの内縁との間隔D1よりも、導体パターンの外角縁とセラミックパターンの内角縁との間隔D2を狭くすることにより、導体パターンの外角縁とセラミックパターンの内角縁との隙間にセラミックパターンが埋まり易くなり、導体パターンの外角縁付近におけるセラミックパターンによるセラミックグリーンシート同士を接着する面積が大きくなる。このため、この領域におけるセラミックグリーンシート間の密着不良やデラミネーションを防止できる。また、上記の逐次積層工法を用いることにより静電容量のばらつきを低減でき、絶縁信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の、導体パターンを形成した後にセラミックパターンを形成し、逐次積層工程を行い、セラミック積層体を製造するための工程図である。
【図2】セラミックグリーンシート上に形成された導体パターンおよびセラミックパターンの配置を示す斜視図である。
【図3】(a)は導体パターンを印刷するスクリーンパターンの模式図、(b)はセラミックパターンを印刷するスクリーンパターンの模式図である。
【図4】図1のセラミック積層体の製法において、キャリアフィルムのついたセラミックグリーンシートを用い、重ね合わせ後に剥離する工程を具備する工程を示す工程図である。
【図5】本発明の、セラミックパターンを形成した後に導体パターンを形成し、逐次積層を行い、セラミック積層体を製造するための工程図である。
【図6】従来の、セラミックグリーンシート上に導体パターンのみを形成し、逐次積層を行い、セラミック積層体を製造するための工程図である。
【図7】従来の、予めセラミックグリーンシート上に導体パターンおよびセラミックパターンを形成したものを、一括積層を行い、セラミック積層体を製造するための工程図である。
【図8】(a)従来のセラミックグリーンシート上に形成された導体パターンに乗り上げたセラミックパターンを示す断面模式図である。
(b)従来のセラミックグリーンシート上に形成されたセラミックパターンに乗り上げた導体パターンを示す概略斜視図である。
【図9】(a)従来のセラミックグリーンシート上に形成された導体パターンに離間して形成されたセラミックパターンを示す断面模式図である。
(b)従来のセラミックグリーンシート上に形成された導体パターンに離間して形成されたセラミックパターンを示す概略斜視図である。
【符号の説明】
1 支持体
3a、3b セラミックグリーンシート
5 導体パターン
7 セラミックパターン
14 母体積層体

Claims (10)

  1. (a)支持体上にセラミックグリーンシートを載置する工程と、
    (b)該セラミックグリーンシートの表面に矩形状の導体パターンを形成する工程と、
    (c)該導体パターンが形成された前記セラミックグリーンシートの上面に、別のセラミックグリーンシートを重ね合わせる工程と、
    (d)(b)および(c)工程を繰り返して、該セラミックグリーンシートと前記導体パターンとが交互に積層された母体積層体を形成する工程と、
    (e)該母体積層体を所定位置で切断して積層成形体を形成する工程と、
    を具備するセラミック積層体の製法において、
    前記母体積層体の前記セラミックグリーンシートの主面上における前記導体パターンが形成される領域を囲む部分にセラミックパターンを形成するとともに、前記導体パターンの外縁と、該導体パターンの外縁に略平行な前記セラミックパターンの内縁との間の間隔をD1、前記導体パターンの外角縁と前記外角縁の外側に位置する前記セラミックパターンの内角縁との最短間隔をD2としたときに、D1≧D2の関係を満足することを特徴とするセラミック積層体の製法。
  2. D2/D1≦0.8の関係を満足することを特徴とする請求項1に記載のセラミック積層体の製法。
  3. 前記セラミックパターンの厚みをt1、前記導体パターンの厚みをt2としたときに、t1>t2の関係を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のセラミック積層体の製法。
  4. 母体積層体は、導体パターンを形成した後にセラミックパターンを形成することを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか記載のセラミック積層体の製法。
  5. 母体積層体は、セラミックグリーンシートの主面上における導体パターンが形成される領域を囲む部分にセラミックパターンを形成した後に、該セラミックパターンの内側に導体パターンを形成して作製されることを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか記載のセラミック積層体の製法。
  6. セラミックグリーンシートは、キャリアフィルムが貼り合わされたものであり、前記セラミックグリーンシートを前記支持体上のセラミックグリーンシート上面に重ね合わせた後に、前記キャリアフィルムを剥離する工程を具備することを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか記載のセラミック積層体の製法。
  7. (c)工程における導体パターンの厚みをt2、セラミックグリーンシートの厚みをt3としたときに、t2/t3≧0.5の関係を満足することを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか記載のセラミック積層体の製法。
  8. セラミックパターン周辺部が、セラミックグリーンシートの主面に対して0.5°以上の角度を有する傾斜面によって形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のうちいずれか記載のセラミック積層体の製法。
  9. セラミックグリーンシートに含まれるセラミック成分と、前記セラミックパターンに含まれるセラミック成分とが実質的に同一組成物からなることを特徴とする請求項1乃至8のうちいずれか記載のセラミック積層体の製法。
  10. 導体パターンが、焼成後に積層セラミックコンデンサの内部電極層となることを特徴とする請求項1乃至9のうちいずれか記載のセラミック積層体の製法。
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