JP4095949B2 - 皮膚外用剤 - Google Patents
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Description
しかしながら、上記のアスコルビン酸系あるいはアルキルサリチル酸系の塩型美白剤を主剤として配合すると、カルボキシビニルポリマーの増粘作用は激減してしまい、カルボキシビニルポリマーの配合量を増量すると、べたつきやヨレ(高分子のカス)を生じるという問題があった。
このように、アスコルビン酸系やアルコキシサリチル酸系の塩型美白剤を主剤とする皮膚外用剤においては、みずみずしくべたつかない使用感を実現できる増粘剤が少なく、そのため、製剤のバリエーションが限定されていた。特に、2,000〜10,000mPa・sの中粘度美白エッセンスや、粘度10,000mPa・s以上の高粘度美白ジェルといった製剤においてバリエーションが乏しかった。
よって、塩型美白剤を配合した組成物において、このような粉砕工程等を要しない簡便な方法で増粘・ゲル化でき、安定性、使用感にも優れる製剤が望まれるところであった。
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、アスコルビン酸系/アルコキシサリチル酸系塩型美白剤配合系において、簡便な操作で十分な粘度が得られ、且つ経時安定性、使用感にも優れる皮膚外用剤を提供することにある。
前記アスコルビン酸誘導体は、L−アスコルビン酸モノリン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステル、dl−α−トコフェロール 2−L−アスコルビン酸リン酸ジエステル、及び2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸であり、
前記アルコキシサリチル酸は、下記一般式(I)で示されるものであり、
pHが6〜7.5であり、粘度が2,000〜30,000mPa・s(30℃)であることを特徴とする。
一般式(I):
本発明の皮膚外用剤において、イオタ型カラギーナン量に対する中性塩もしくはアルカリの量が質量で0.1〜10倍であることが好適である。
また、前記中性塩が塩化ナトリウム及び塩化カリウムであり、前記アルカリが水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムであることが好適である。
一般式(I):
具体例としては、3−メトキシサリチル酸、3−エトキシサリチル酸、4−メトキシサリチル酸、4−エトキシサリチル酸、4−プロポキシサリチル酸、4−イソプロポキシサリチル酸、4−ブトキシサリチル酸、5−メトキシサリチル酸、5−エトキシサリチル酸、5−プロポシキサリチル酸、あるいはこれらの塩が挙げられる。塩はアルカリ金属塩(Na塩、K塩等)、アルカリ土類金属塩(Ca塩、Mg塩等)、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩、アミノ酸塩などが挙げられるが、本発明において好ましくはアルカリ金属塩である。
なお、本発明の皮膚外用剤において、上記塩型美白剤は、塩の形にしてから配合してもよいし、アルカリ剤により組成物中で中和してもよい。このような塩型薬剤中和用のアルカリ剤としては、塩形成可能なものであれば特に限定されない。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;クエン酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、乳酸ナトリウム等の有機酸塩、リシン等のアミノ酸等が挙げられる。このうち、好ましくは水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物である。
ただし、本発明においては、イオタ型カラギーナンを増粘剤主剤として用い、本発明の効果に影響がない範囲であれば、カッパ型、ラムダ型を少量併用することは可能である。
(A)カラギーナンを水を含む水性媒体中に添加し、70〜80℃で溶解させ、カラギーナン水溶液を得る。
(B)(A)のカラギーナン水溶液に、塩型薬剤及び必要に応じてアルカリ剤やその他の成分を、好ましくは50〜60℃の温度条件下で添加し、攪拌混合する。温度が低すぎると、ゲル化速度が速いため、薬剤を均一に溶解するのに時間を要することがある。また、温度が高すぎると塩型薬剤などの熱分解を招くおそれがある。
(C)(B)の混合液を放冷、もしくは攪拌冷却する。
このような塩としては、有機酸塩、アミノ酸塩、無機酸塩が挙げられる。有機酸塩としては、クエン酸、乳酸、シュウ酸、コハク酸等のナトリウム塩又はカリウム塩が例示される。アミノ酸塩としては、グリシン、アラニン、プロリン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等のナトリウム塩又はカリウム塩が例示される。無機塩としては、ナトリウム又はカリウムの炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩、ホウ酸、硫酸、亜硫酸、ハロゲン化合物、水酸化物が挙げられる。このうち、本発明においては中性塩又はアルカリであり、特に好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。そして、pHへの影響等を考慮する場合には、塩化ナトリウムや塩化カリウム等の中性塩が特に好ましい。
このような中性塩やアルカリの添加量としては、外用剤中0.1〜2質量%、さらには0.5〜1.5質量%が好適である。添加量が少なすぎるとその効果が十分に発揮されず、一方、過剰に配合してもそれに見合った増粘性の向上が得られない。
本発明の皮膚外用剤の剤型は、特に限定されず、可溶化系、乳化系、分散系など様々な剤型とすることができる。具体的な製剤としては、水性ジェルの他、O/W乳化ジェル、O/W乳液、O/Wクリームなどが挙げられる。
まず、本発明で用いた試験方法について、説明する。
芝浦システムズ社製の回転粘度計を用い、ローター回転数10rpmにて1分後の粘度(mPa・s/30℃)を測定した。
HORIBA社製のpHメーター及び電極を用いて、25℃±2℃でのpHを測定した。
調製したサンプルを透明なガラス容器に充填し、目視にて判定した。
○:透明性が高い。
△:やや濁った半透明の状態。
×:濁りのある半透明の状態。
−20℃〜0℃の比較的低温の恒温槽内に1ヶ月放置し、その後室温に戻した時の状態を観察した。
パネラー10名による実使用テストにより、化粧料を皮膚に塗布する際ののび、ヌメリ等の評価を行った。
○:のびがよい・ぬめらないと回答した人数が5名以上
△:のびがよい・ぬめらないと回答した人数が3〜4名
×:のびがよい・ぬめらないと回答した人数が2名以下
下記の組成で、ジェルを調製した。また、アスコルビン酸−2−グルコシド(AA−2G)、KOH、及び緩衝剤を配合しないものも同様に調製し、粘度測定を行った。
(表1)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
試料
成 分 1 2 3 4 5
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
増粘剤水溶液:
(1)イオタカラギーナン*1 1
(2)ジェランガム 1
(3)寒天 1
(4)キサンタンガム 1
(5)カルボキシビニルポリマー 0.5
(6)イオン交換水 残余 残余 残余 残余 残余
塩型薬剤等:
(7)AA−2G 2 2 2 2 2
(8)クエン酸Na 0.01 0.01 0.01 0.01 0.01
(9)クエン酸 0.09 0.09 0.09 0.09 0.09
(10)KOH 0.39 0.39 0.39 0.39 0.39
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
合計 100 100 100 100 100
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
粘度
[(7)〜(10)配合] 14300 7100 22000 10700 2500
[(7)〜(10)無配合] 300 400 23000 7500 68000
透明性 ○ △ × × ○
のび ○ × × ○ −
ヌメリ なし なし なし あり −
安定性(離水) ○ × × ○ −
−―――――――――――――――――――――――――――――――――――
*1:アクアジェルI−2(新田ゼラチン)
試料1〜4:増粘剤とイオン交換水とを混合し、80℃で加熱溶解して増粘剤水溶液を得た。50℃まで冷却後、これに(7)〜(10)を添加、溶解し、放冷した。
試料5:増粘剤とイオン交換水とを混合し、これに(7)〜(9)を添加、溶解後、(10)を添加混合した。
その他の増粘剤では、アスコルビン酸塩配合系でゲル化したものの、ジェランガムや寒天(試料2〜3)ではゲルに流動性がなく硬いため、ゲルの粉砕なしでは塗布時に均一にのばすことが困難であった。また、これらの増粘剤では、長期保存後に離水を生じることがあった。キサンタンガム(試料4)では、ゲルの透明性が低く、また、ヌメリ感や曳糸性があった。
これに対し、イオタ型カラギーナンを用いた場合(試料1)には、高粘度の透明なゲルが得られ、塗布時ののびがよく、ヌメリのないみずみずしい使用感であった。長期保存後の離水も認められなかった。
試料1において、カラギーナンの種類を変えて同様に調製した。結果を表2に示す。
(表2)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
試料
カラギーナン 1 6 7
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
イオタカラギーナン*1 1
カッパカラギーナン*2 1
ラムダカラギーナン*3 1
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ゲル性状 軟らかく 硬く 液状
弾力のあるゲル 脆いゲル ゲル化せず
増粘性*4 ○ ○ ×
透明性 ○ △ ○
のび ○ × ○
ヌメリ ○ ○ ×
安定性(離水) ○ × ○
−―――――――――――――――――――――――――――――――――――
*1:アクアジェルI−2(新田ゼラチン社製)
*2:カラギニンCSK−1(三栄源社製)
*3:ソアギーナLX22(MRCポリサッカライド社製)
*4:○は増粘性あり、×は増粘性なしを示す。
よって、本発明においては、イオタ型カラギーナンを用いることが好適である。
試料1に、塩として、さらにNaCl、CaCl2を添加した系について、粘度を調べた。NaClやCaCl2による増量分は、イオン交換水を減量して調整した。結果を表3に示す。
(表3)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
試料
カチオン 1 8 9 10 11 12
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
NaCl − 0.5 1 1.5 − −
CaCl2 − − − − 0.5 1
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
粘度 14300 18000 20000 20000 20000 1000
−―――――――――――――――――――――――――――――――――――
一方、NaClの代わりにCaCl2を用いた場合には、粘度を高めることはできるものの、配合量が多すぎると粘度が著しく低下し、その配合量範囲が非常に狭く、使用性が悪かった。
なお、このような増粘性の向上は、塩に含まれるカチオンの影響であると考えられる。
従って、本発明においては、さらに1価カチオンを含む中性塩やアルカリを配合することが好適であり、その配合量は、カラギーナン質量に対して0.1〜10倍、さらには0.2〜2倍とすることが好適である。
(1)イオタカラギーナン 1
(2)イオン交換水 to 100
(3)グリセリン 2
(4)ジプロピレングリコール 5
(5)PEG1000 1
(6)NaCl 1
(7)クエン酸 0.01
(8)クエン酸Na 0.09
(9)EDTA−3Na・2H2O 0.1
(10)アスコルビン酸2−グルコシド 2
(11)KOH 0.385
(12)メチルパラベン 0.15
(13)エタノール 5
(14)POE−POPデシルテトラデシルエーテル 0.2
(1)〜(9)の成分を混和し、80℃に加熱して水相パーツを調製した。その後、水相パーツに(10)、(11)の薬剤およびアルカリを添加した。これを40℃まで冷却し、(12)〜(14)を混和したエタノールパーツを添加した。
配合例1のジェルは透明であり、粘度は23300mPa・s/30℃であった。肌へ塗布した際には、みずみずしくてのびがよく、保存安定性も良好であった。
(1)イオン交換水 to 100
(2)イオタカラギーナン 1
(3)グリセリン 2
(4)ジプロピレングリコール 5
(5)PEG1000 1
(6)NaCl 1
(7)クエン酸 0.01
(8)クエン酸Na 0.09
(9)EDTA−3Na・2H2O 0.1
(10)4−メトキシサリチル酸カリウム 3
(11)エタノール 5
(12)メチルパラベン 0.15
(13)POE−POPデシルテトラデシルエーテル 0.2
配合例1に準じて調整した。
配合例2のジェルは透明であり、粘度は11800mPa・s/30℃であった。肌へ塗布した際には、みずみずしくてのびがよく、保存安定性も良好であった。
(1)イオン交換水 to 100
(2)イオタカラギーナン 0.5
(3)グリセリン 2
(4)ジプロピレングリコール 5
(5)PEG1000 1
(6)NaCl 1
(7)EDTA−3Na・2H2O 0.1
(8)クエン酸 0.01
(9)クエン酸Na 0.09
(10)アスコルビン酸2−グルコシド 2
(11)KOH 0.385
(12)エタノール 5
(13)メチルパラベン 0.15
(14)POE−POPデシルテトラデシルエーテル 0.2
配合例1に準じて調整した。
配合例3のエッセンスは透明であり、粘度は5700mPa・s/30℃であった。肌へ塗布した際には、みずみずしくてのびがよく、保存安定性も良好であった。
(1)イオン交換水 to 100
(2)イオタカラギーナン 1
(3)グリセリン 2
(4)KCl 0.375
(5)クエン酸 0.01
(6)クエン酸Na 0.09
(7)HEDTA−3Na 0.02
(8)アスコルビン酸2−グルコシド 2
(9)KOH 0.385
(10)ジモルホリノピリダジノン 0.05
(11)フェノキシエタノール 0.15
(12)エタノール 5
(13)ジプロピレングリコール 5
(14)POE(60)硬化ひまし油 0.35
(15)ジイソステアリン酸ポリグリセリル 0.2
(16)トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 0.7
(17)香料 適量
(1)〜(7)の水溶性成分を混和し、80℃に加熱して水相パーツを調製した。その後(8)〜(9)の薬剤・アルカリを70℃で添加した。これを40℃まで冷却し、(10)〜(17)を70℃で混和した乳化パーツを添加した。
配合例4の乳液は粘度は14600mPa・s/30℃であった。肌へ塗布した際には、みずみずしくてのびがよく、保存安定性も良好であった。
Claims (4)
- アスコルビン酸塩、アスコルビン酸誘導体の塩、及びアルコキシサリチル酸の塩からなる群から選ばれる一種以上の塩である塩型美白剤と、イオタ型カラギーナンと、ナトリウム又はカリウムの中性塩もしくはアルカリである水溶性塩類の一種以上と、を配合し、
前記アスコルビン酸誘導体は、L−アスコルビン酸モノリン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−硫酸エステル、dl−α−トコフェロール 2−L−アスコルビン酸リン酸ジエステル、及び2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸であり、
前記アルコキシサリチル酸は、下記一般式(I)で示されるものであり、
pHが6〜7.5であり、粘度が2,000〜30,000mPa・s(30℃)であることを特徴とする皮膚外用剤。
一般式(I):
- 請求項1記載の皮膚外用剤において、イオタ型カラギーナン量に対する前記中性塩もしくはアルカリの量が質量で0.1〜10倍である皮膚外用剤。
- 請求項2記載の皮膚外用剤において、前記中性塩が塩化ナトリウム及び塩化カリウムであり、前記アルカリが水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムであることを特徴とする皮膚外用剤。
- 請求項1〜3の何れかに記載の皮膚外用剤において、イオタ型カラギーナンの配合量が皮膚外用剤中0.5〜2質量%であることを特徴とする皮膚外用剤。
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