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JP3939909B2 - 複合シートガスケット - Google Patents

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  • Mechanical Engineering (AREA)
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  • Gasket Seals (AREA)

Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、例えばトランスミッションケースとその端面開口部を閉塞する蓋体との間に介装される複合シートガスケットに係り、特に、フレッティングによる複合シートガスケットの損傷を防止して良好なシール性を維持する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動車のトランスミッションケースなどに用いられるガスケットには、内部の油温度が140〜150℃程度であるため耐熱性は要求されない。このため、そのようなガスケットとしては、内燃機関用ガスケットのようなビードを有する金属製のものではなく、非金属複合材シートからなる安価なシートガスケットが使用されている。シートガスケットは、ケーシングおよび蓋体の周縁に形成されたフランジどうしの間に介装され、それ自体の柔軟性によりフランジに密着してトランスミッションオイルの漏出を防止する。
【0003】
図5および図6は、従来のシートガスケットがトランスミッションケースに装着された状態を示す図であり、図中符号1はトランスミッションケースのフランジ、2は蓋体のフランジである。これらフランジ1,2の間にはシートガスケット3が介装され、ボルト4によって締め付けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、トランスミッションケースに作用する外部応力、熱膨張あるいは振動などに起因してフランジ1,2どうしにはフレッティングが生じる。このフレッティングにより、図において双方向矢印で示すようにシートガスケットの表裏面で滑りが発生し、その際に生じる摩擦抵抗(図中2つの矢印で示す)によって、図6(A)に示すように、シートガスケットが初期の位置からずれることがある。そして、その結果、シートガスケットに変形ないしクラックが発生してシール性が著しく低下するという問題があった。
【0005】
そこで、上記のような不具合を解消するために以下の対策が考えられる。
▲1▼フランジの剛性を高めるとともに締結ボルトの本数を増加して締付け軸力を増加して締結面圧を増大させ、フレッティング量を低減する。
▲2▼シートガスケットの機械強度を増大させてフレッティングに対する耐力を向上させる。
▲3▼フランジどうしの突合せ面部にノックピン等による嵌合構造を設け、フランジ面におけるフレッティングを低減する。
▲4▼シートガスケットの表面に、例えばグラファイト、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤をコーティングし、フレッティングにより発生する摩擦力を低下させてシートガスケットに作用する応力を軽減する。
【0006】
しかしながら、上記した対策にはそれぞれ下記のような問題がある。
▲1▼締結ボルトの追加およびフランジ剛性の向上
フランジの締結構造が複雑化して製造コストが割高になるとともに、部品点数の増加および大型化により重量が増加する。
▲2▼シートガスケットの強度向上
シートガスケットが高くなって圧縮率が低下し、シール性の悪化を招くとともに重量が増加する。
▲3▼嵌合機構
フランジの構造が複雑化するとともに部品点数が増加して製造コストが割高になる。
▲4▼固体潤滑剤のコーティング
シートガスケットとフランジとの間での滑りが大きくなり過ぎ、フレッティング量の増大を招くとともに、強度が低いシートガスケットでは変形を促進してしまう。
【0007】
また、メタルガスケットの技術分野では、実開平2−59362号公報や実開平3−124075号公報に開示されているように、メタルガスケットの表裏面の摩擦抵抗に差を設けることにより、メタルガスケットがシリンダヘッドまたはシリンダブロックのいずれかに対して滑るように構成する技術が提案されている。しかしながら、いずれの提案に係る技術も摩擦抵抗の差を定量的に解析し教示するものではなく、そのような技術をシートガスケットに応用して上記した課題を解決し得るか否かは不明であった。
したがって、本発明はフレッティングに対して優れたシール耐久性を示す複合シートガスケットを提供することを目的としている。。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、シートガスケットにおける表面と裏面との摩擦係数の差を定量的に解析した結果、摩擦係数に所定以上の差を設けることによって、フレッティングに対する耐久性を著しく向上させることができる複合シートガスケットを見い出した。本発明のトランスミッション用複合シートガスケットは、そのような知見に基づいてなされたもので、ケーシングとこのケーシングの開口部に設けられる蓋体との間に介装される複合シートガスケットであって、それ自身の柔軟性により上記ケーシングに密着する第1の層と、それ自身の柔軟性により蓋体に密着する第2の層とを備え、第1の層と第2の層のいずれか一方の表面の摩擦係数を他方の層の表面の摩擦係数の1.15倍以上にし、上記第1および/または第2の層は、合成ゴムを主成分とするバインダーにアラミド繊維を分散して構成され、上記第1および第2の層のうち摩擦係数の大きな層の合成ゴムの含有量は、他方の層の合成ゴムの含有量よりも多く設定され、かつ、摩擦係数の大きな層はアラミド繊維の含有量が0〜10重量%であるとともに他方の層はアラミド繊維の含有量が10重量%以上であることを特徴としている。
【0009】
上記のような複合シートガスケットによれば、ケーシングと蓋体との間にフレッティングによる相対移動が生じても、摩擦係数の小さい表面と相手部材との間に滑りが生じ、複合シートガスケットと他方の相手部材との初期からの位置関係に変化が生じない。したがって、複合シートガスケットの移動が抑制され、その変形や破損が抑制されるのでシール性を維持することができる。以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】
複合シートガスケットは、基材層の表裏面に第1および第2の層をそれぞれ固着して構成することができ、あるいは第1の層と第2の層のみで構成することもできる。第1、第2の層および基材層としては、バインダーに強化繊維と耐熱フィラーを混合して混合物としたものを用いることができる。そして、そのような混合物を例えばカレンダーロールを用いて加熱および加圧しながら積層し、複合シートとする。これを所定形状に打ち抜くことで複合シートガスケットを製造することができる。上記混合物をカレンダーロールによって積層するには、ホッパーに充填した第1の層の混合物を、カレンダーロールを回転させながらその上側のロール表面に連続的に挿入して、これを上下のロールで薄く伸ばしながら加熱圧縮して上側のローラの外周を一周するように巻き付ける。次いで、その外周面に基材層の混合物と第1の層の混合物を同様にして順次巻き付けて積層し、これをロールの軸方向に切断してロールから剥離することにより、第1の層、基材層および第2の層からなる複合シートを得る。なお、第1の層→第2の層の順で積層することにより、第1、第2の層のみからなる複合シートガスケットを製造することができる。また、第1、第2の層および基材層のシートを別々に製造し、それらシートを加熱圧着して複合シートを製造することもできる。あるいは、第1、第2の層および基材層のいずれかを予めシート状にしておき、そのシートをカレンダーロールに通しながら上記と同様にして混合物を積層すれば、複合シートを連続的に製造することができる。
【0011】
基材層としては、強化繊維を第1、第2の層よりも多く配合して機械的強度を向上させた組成シートを用いたり、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリイミド等の合成樹脂製フィルムを使用することもできる。また、バインダーとしては、NBRゴム、NRゴム、SBRゴム、CRラテックス等の合成ゴムを1種または2種以上を混合したものを用いることができる。強化繊維としてはアラミド繊維が好適であり、耐熱フィラーとしては、マイカ、クレー、グラファイト、シリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二硫化モリブデン等の粉末を用いることができる。また、摩擦係数の低減剤としてPTFE(ポリテトラフロロエチレン)の粉末を用いることもできる。
【0012】
第1および第2の層の表面の摩擦係数は、合成ゴムと強化繊維であるアラミド繊維の割合を適宜選定することで調整することができる。そして、第1の層と第2の層のいずれか一方の表面の摩擦係数を他方の層の表面の摩擦係数の1.15倍以上にするには、摩擦係数の大きな層の合成ゴムの含有量を他方の層の合成ゴムの含有量よりも多く設定し、かつ、摩擦係数の大きな層のアラミド繊維の含有量を0〜10重量%とするとともに他方の層のアラミド繊維の含有量を10重量%以上にすれば良い。
【0013】
ここで、小さい方の摩擦係数は0.3〜0.5の範囲であることが望ましい。この摩擦係数が0.3未満であるとフレッティングに対する抵抗が少なく、また0.5を超えると相手部材との滑り性が悪くなる。また、相手部材との滑りを抑制するために、大きい方の摩擦係数は0.4以上であることが望まし。
【0014】
次に、図1は本発明の実施の形態の複合シートガスケット10を示す図であって、複合シートガスケット10をトランスミッションケースのフランジ20と蓋体のフランジ21で締め付けた状態を示している。複合シートガスケット10は、基材層11の表裏面に表層(第1の層)12と裏層(第2の層)13を固着して構成されている。そして、表層12の表面12aの摩擦係数に対する裏層13の裏面13aの摩擦係数の比(裏面/表面)は、1.15以上に設定されている。
【0015】
上記構成の複合シートガスケット10においては、フランジ21を貫通してフランジ20に螺合された締結ボルト(図示略)を締め付けることにより、複合シートガスケット10が板厚方向に圧縮され、その表面12aおよび裏面13aがフランジ21,20の端面に密着してシールする。そして、フランジ20,21の間に図中双方向矢印で示すフレッティングが生じても、図1中矢印で示すように、摩擦係数の小さい表面12aと蓋体のフランジ21の間に滑りが生じ、フランジ21のみが移動して複合シートガスケット10はトランスミッションケースのフランジ20に固定された状態となる。したがって、複合シートガスケット10の移動が抑制され、その変形や破損が抑制されるのでシール性を維持することができる。
【0016】
なお、この実施形態では、複合シートガスケット10の摩擦係数の小さい表面12aを蓋体のフランジ21に接触させているが、逆に、表面12aをフランジ20に接触させることもできる。ただし、この場合には、複合シートガスケット10が蓋体のフランジ21とともに移動するから、複合シートガスケット10とフランジ21との間でのフレッティングの発生が懸念されるので、あまり好ましくない。
【0017】
【実施例】
以下、具体的な実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明する。
A.複合シートの作製
板厚が0.4mmの基材層の表裏面に、表1に示す組成の表層および裏層を形成し、厚さ0.5mmの実施例1の複合シートを作製した。この場合、カレンダーロールの回転方向に強化繊維が配向するため、強化繊維は複合シートの長手方向に沿うように配向している。表層および裏層を表2〜表6に示す組成とした以外は実施例1と同様にして実施例2〜6の複合シートを作製した。さらに、表層および裏層を表7〜表11に示す組成とした以外は実施例1と同様にして比較例1〜5の複合シートを作製した。
【0018】
【表1】
Figure 0003939909
【0019】
【表2】
Figure 0003939909
【0020】
【表3】
Figure 0003939909
【0021】
【表4】
Figure 0003939909
【0022】
【表5】
Figure 0003939909
【0023】
【表6】
Figure 0003939909
【0024】
【表7】
Figure 0003939909
【0025】
【表8】
Figure 0003939909
【0026】
【表9】
Figure 0003939909
【0027】
【表10】
Figure 0003939909
【0028】
【表11】
Figure 0003939909
【0029】
B.摩擦係数の測定
図3に示すように、複合シートの幅方向(強化繊維と直交する方向)の両端部およびその中央部から一辺が50mmの正方形状に切り出して測定試料とした。これら試料に130℃で30分間の加硫を施して表層及び裏層にゴム弾性を付与した後、図4(A)に示すように、試料Sを摩擦係数測定装置の予めアセトンで脱脂されたターンテーブルTにクランプした。図4(B)に示すように、位置が固定された測定子Pを試料Sの点aに荷重3.53kg(面圧:4.90MPa)に押圧し、測定子Pが試料の強化繊維を横切って点a→点b→点cと相対移動するようにターンテーブルTを往復回動させた。そして、測定子Pが点bから点cに相対移動するときの動摩擦係数の最大値を試料の摩擦係数とした。なお、測定時の雰囲気温度は20±5℃、ターンテーブルTの回動速度は24mm/分、ターンテーブルTの正面方向から見たストロークは25mmであった。
【0030】
以上の測定を3つの試料に対して行い、その平均値を試料の表面または裏面の摩擦係数とした。各試料の摩擦係数を表1〜表6に併記するとともに、表面と裏面の摩擦係数の比(裏面の摩擦係数/表面の摩擦係数)も併記した。また、比較例1〜5の複合シートからも同様にして試料を採取するとともに、それら試料に対して上記と同じ条件で摩擦係数の測定を行い、その結果を表7〜11に併記した。
【0031】
C.実機試験
実施例1〜6および比較例1〜5の複合シートを打ち抜いて複合シートガスケットを作製し、トランスミッションケースとその入力軸側の蓋体との間に装着して実機試験を行った。実機試験では、入力軸に±22kgf・m(215.7N・m)のトルクを加え、この条件を1サイクルとして3000回入力し、複合シートガスケットの変形やクラックの発生の有無を調べた。その結果、摩擦係数比が1.15以上である実施例1〜6では、複合シートガスケットに変形やクラックの発生は一切無く、優れたシール耐久性を有することが確認された。これに対して、摩擦抵抗比が1.15未満である比較例1〜5では、150回の入力で複合シートガスケットに変形やクラックが発生し、シール耐久性が著しく低いことが判った。
【0032】
次に、摩擦係数の比が少しづつ異なる複数の複合シートガスケットを作製し、上記と同様にして3000回の耐久性試験を行ない、摩擦係数比と複合シートガスケットの変形量との関係を調べた。その結果を図2に示す。図2から判るように、複合シートガスケットの摩擦係数比が1.15以上の場合には、折損が生じずシール耐久性は充分である。また、摩擦抵抗比が1.2以上の場合には、複合シートガスケットの変形が殆ど生じないことが判る。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように本発明においては、それ自身の柔軟性によりケーシングに密着する第1の層と、それ自身の柔軟性により蓋体に密着する第2の層とを備え、第1の層と第2の層のいずれか一方の表面の摩擦係数を他方の層の表面の摩擦係数の1.15倍以上にしているから、シール耐久性を大幅に向上させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態の複合シートガスケットをフランジどうしの間に装着した状態を示す断面図である。
【図2】 本発明の実施例における複合シートガスケットの摩擦係数比と同ガスケットの変形量との関係を示す線図である。
【図3】 (A)は本発明の実施例で作製した複合シートを示す平面図、(B)は複合シートから打ち抜いた試料を示す平面図である。
【図4】 (A)は摩擦係数測定装置を示す平面図、(B)は(A)の矢印B方向矢視である。
【図5】 (A)はフランジにフレッティングが生じている状態を説明するための平面図、(B)はシートガスケットを装着したフランジを示す断面図である。
【図6】 (A)は従来のシートガスケットがフランジに装着されている状態を示す断面図、(B)は(A)の矢印Bで示す部分の拡大図である。
【符号の説明】
10…複合シートガスケット、11…基材層、12…表層、
12a…表面、13…裏層、13a…裏面、20,21…フランジ。

Claims (3)

  1. ケーシングとこのケーシングの開口部に設けられる蓋体との間に介装される複合シートガスケットであって、それ自身の柔軟性により上記ケーシングに密着する第1の層と、それ自身の柔軟性により上記蓋体に密着する第2の層とを備え、上記第1の層と第2の層のいずれか一方の表面の摩擦係数を他方の層の表面の摩擦係数の1.15倍以上にし、上記第1および/または第2の層は、合成ゴムを主成分とするバインダーにアラミド繊維を分散して構成され、上記第1および第2の層のうち摩擦係数の大きな層の合成ゴムの含有量は、他方の層の合成ゴムの含有量よりも多く設定され、かつ、摩擦係数の大きな層はアラミド繊維の含有量が0〜10重量%であるとともに他方の層はアラミド繊維の含有量が10重量%以上であることを特徴とするトランスミッション用複合シートガスケット。
  2. 前記第1および第2の層は、基材層の表裏面にそれぞれ固着されていることを特徴とする請求項1に記載のトランスミッション用複合シートガスケット。
  3. 小さい方の摩擦係数を0.3〜0.5とし、大きい方の摩擦係数を0.4以上としたことを特徴とする請求項1または2に記載のトランスミッション用複合シートガスケット。
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