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JP3939629B2 - 中空構造物の中空室遮断具 - Google Patents

中空構造物の中空室遮断具 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空構造物の中空室を遮断するための中空室遮断具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両ボディの中空パネル(ピラー、ロッカーパネル、ルーフサイドパネル、ホイールハウス等)のような中空構造物の中空室内を発泡体等で遮断し、該中空構造物の防音、補強等を行うための中空室遮断具として、例えば[特許文献1]に開示された中空構造物の中空室遮断具が知られている。
[特許文献1]に記載の中空室遮断具によれば、発泡性基材及びその発泡性基材を中空室内に保持する為のホルダ体がそれぞれ中空パネルの断面形状に対応した板状に形成されている。発泡性基材が外部加熱により発泡膨張すると、中空室の内周壁面とホルダ体の外周部との間の隙間が発泡体によって遮断される。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−79845
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、車両ボディのピラー、ロッカーパネル等の形状は、車種毎に、また各部分毎にその断面形状や大きさ等が異なる。したがって、中空パネルの断面形状に対応した板状の中空室遮断具を中空パネルの中空室内に配設するのが困難である場合も多い。また、例えば、車両のホイールハウスのような断面形状が複雑である中空パネルの場合には、その中空パネルの断面形状に対応した板状の中空室遮断具を配設した後に、インナパネル及びアウタパネルとの組み付けを行って中空パネルを完成するのが極めて困難であることが知られている。
【0005】
本願発明はこのような問題に鑑みて創案されたものであり、中空構造物の断面形状が種々異なったり複雑である場合であっても、その中空構造物の中空室内に容易に配設することのできる中空構造物の中空室遮断具を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、特許請求の範囲の各請求項に記載した発明が構成される。
請求項1に記載の中空構造物の中空室遮断具は、外部加熱をきっかけとして屈曲状態から伸張状態へと変化する遮断部材を有し、前記遮断部材が屈曲状態である場合における前記中空室の遮断面積よりも、前記遮断部材が伸張状態である場合における前記中空室の遮断面積の方が大きくなるように構成されている。ここで、「屈曲状態」とあるのは、遮断部材の少なくとも一部が曲げられた状態のことを指している。「伸張状態」とあるのは、前記「屈曲状態」において曲げられていた遮断部材が真っ直ぐになるように復元した状態のことを指している。また、「遮断面積」とあるのは、中空構造物の中空室内に遮断部材が配設された状態において、その中空室の断面のうち遮断部材によって覆われている部分(遮断されている部分)の面積のことを指している。
【0007】
したがって、請求項1に記載の中空室遮断具によれば、外部加熱をする前の屈曲状態においては、遮断部材が未だ中空構造物の断面形状に対応して広がった状態ではないので、その中空構造物の中空室内に容易に配設することができる。そして、外部加熱を行った後の伸張状態においては、遮断部材が中空構造物の断面形状に対応して広がった状態に変化しているので、中空構造物の中空室内を隙間のないように遮断することができる。
【0008】
また、遮断部材は、中空構造物の長手方向に対し略垂直に配設される合成樹脂製のプレート部材により構成され、そのプレート部材の一端が他端側に向けて折り曲げられることで屈曲状態とされている。したがって、合成樹脂製のプレート部材のもつ弾性的な復元力によって、そのプレート部材の一端が他端側に向けて折り曲げられた屈曲状態から、そのプレート部材が真っ直ぐに戻った伸張状態に変化させることができる。
【0009】
請求項に記載の中空構造物の中空室遮断具は、遮断部材の少なくとも一部が外部加熱により発泡膨張する発泡性材料で形成されている。したがって、外部加熱をきっかけとして遮断部材が伸張状態に変化し、さらに、その遮断部材の少なくとも一部が発泡膨張して発泡体になることにより、中空構造物の中空室内をより隙間のない状態で遮断することが可能である。
【0010】
請求項に記載の中空構造物の中空室遮断具は、遮断部材の少なくとも一部が形状記憶合金で形成されている。したがって、その形状記憶合金の復元力により、外部加熱をきっかけとして、遮断部材の少なくとも一部が折り曲げられた屈曲状態から、その遮断部材が真っ直ぐに戻った伸張状態に確実に変化させることが可能である。
【0011】
請求項に記載の中空構造物の中空室遮断具は、遮断部材の少なくとも一部がバネ鋼で形成されている。したがって、そのバネ鋼の弾性力により、外部加熱をきっかけとして、遮断部材の少なくとも一部が折り曲げられた屈曲状態から、その遮断部材が真っ直ぐに戻った伸張状態に確実に変化させることが可能である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1〜第3の実施の形態を図面に従って説明する。
第1〜第3の実施の形態における中空室遮断具は、例えば車両のボディピラー、ロッカーパネル、ルーフサイドパネル、ホイールハウス等の中空構造物の中空室内を遮断して、その中空構造物の制振、防音、補強等の効果を高めるための装置である。
【0013】
〔第1の実施の形態〕
図1〜図6を参照しながら、以下、本発明の第1の実施の形態に係る中空構造物の中空室遮断具1について説明する。
ここで、図1は、発泡性基材3が折り曲げられて屈曲状態にある中空室遮断具1の外観を示す斜視図である。また、図2は、発泡性基材3が伸張状態にある中空室遮断具1の外観を示す斜視図である。図3は、図1に示す中空室遮断具1のA−A線に基づく断面図である。図4は、図2に示す中空室遮断具1のB−B線に基づく断面図である。図5は、中空構造物20の中空室23内に配設された中空室遮断具1の正面図であり、発泡性基材3が屈曲状態にある中空室遮断具1を示している。図6は、中空構造物20の中空室23内に配設された中空室遮断具1の正面図であり、発泡性基材3が伸張状態にある中空室遮断具1を示している。
【0014】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る中空室遮断具1は、外部加熱により発泡膨張して発泡体となる発泡性材料からなる発泡性基材3と、その発泡性基材3を中空構造物20の中空室23内に取り付けるためのホルダ体2とを備えている。ホルダ体2は、発泡性基材3をその片面側において保持するホルダプレート4と、そのホルダプレート4を中空構造物20の取付孔24(図5,図6参照)に取り付けるための取付用クリップ5とを備えて構成されている。なお、このホルダ体2は、発泡性基材3を両面から挟むことのできる2枚のホルダプレートを備えて構成されてもよい。
【0015】
図1に示すように、ホルダプレート4は、耐熱性合成樹脂(熱可塑性合成樹脂)の射出成形により略五角形状に形成された板状部材である。ホルダプレート4の略中央部には、発泡性基材3の一端に形成された爪部7(図3参照)を挿入可能な挿入孔6が設けられている。ホルダプレート4の一側面には、両面テープや接着剤等の接合手段、あるいは、ホルダプレート4の一側面側から延出して形成された係合爪(図示していない)の係合力により発泡性基材3が装着されている。
【0016】
発泡性基材3は、前述したように、発泡性を有する発泡性材料が中空構造物20の中空室23の断面形状に対応した板状(プレート状)に形成されたものである。ここで用いている発泡性材料は、加熱により発泡膨張して発泡体となり、中空室23を遮断、充填することで補強、防音、制振等の効果を高める材料が用いられる。さらに好ましくは、例えば、金属接着性を有する合成樹脂、発泡剤、ガラス繊維のような繊維状物質、等が混合され、110℃〜190℃前後の温度で発泡し、高剛性の発泡体となる発泡性材料が用いられる。このような接着性を有し、かつ、高剛性の発泡体となる発泡性材料は、例えば、特開平8−208871号公報、特開平11−158313号公報等に開示されている。この発泡性基材3が、本発明における「遮断部材(プレート部材)」に対応している。
【0017】
図1に示すように、ホルダプレート4と一体に設けられる取付用クリップ5は、略長方形の板状に形成された台座部8と、その台座部8の下面側から突出して設けられた脚部9と、その脚部9の先端部両側から折り返し状に延出して設けられた弾性係止片10とを備えている。この取付用クリップ5は熱可塑性合成樹脂の射出成形により一体状に形成されている。この取付用クリップ5の脚部9の先端部が中空構造物20の取付孔24に挿入されると、弾性係止片10が取付孔24の孔縁部に弾性的に係止する(図5,図6参照)。これにより、中空室遮断具1が中空構造物20の中空室23内に取り付けられる。なお、取付用クリップ5は、ホルダプレート4と別体の部材として形成され、ホルダプレート4の下縁部に対して別体に設けられるようにしてもよい。
【0018】
図5及び図6に示すように、中空構造物20は、インナパネル21とアウタパネル22とが互いのフランジ部21f、22fにおいてスポット溶接されて筒状とされたものであり、その内部には断面略七角形の形状を有する中空室23が構成されている。中空室23内に配設される発泡性基材3は、中空室23の断面形状に対応した略七角形の板状に形成され、中空室23の内周壁面との間に適宜の隙間が生じる寸法に設定されている。中空室遮断具1は、中空構造物20の長手方向に対し略垂直に配置するようにして中空室23内に取り付けられる。
【0019】
図1,図3,図5に示すように、ホルダ体2によって中空構造物20の中空室23内に保持される発泡性基材3は、その左端側の端部が右端側に向けて折り曲げられることで屈曲状態とされている。発泡性基材3の左端側の端部には、ホルダプレート4の略中央部に形成された挿入孔6に挿入される爪部7が一体状に設けられている。爪部7が挿入孔6に挿入されると、この挿入孔6の上縁部6aに対して爪部7が抜け止め状態で係合し、発泡性基材3の左端側の端部がホルダプレート4に対して固定される。これにより、発泡性基材3の左端側の端部が右端側に向けて折り曲げられた屈曲状態が維持される。
【0020】
中空構造物20が車両のボディの中空パネル(ボディピラー、ロッカパネル、ホイールハウス等)である場合、その車両ボディの組み付けが完了すると焼付け塗装が施される。その焼付け塗装の際の外部加熱によって、中空構造物20の中空室23内に取り付けられた中空室遮断具1が加熱される。
図2,図4,図6に示すように、中空室遮断具1が加熱されると、発泡性基材3の左端部に設けられた爪部7が徐々に軟化あるいは溶融する。これにより、挿入孔6の上縁部6aに対する爪部7の係合が外れるので、屈曲状態であった発泡性基材3は、自身の持つ弾性的な復元力によって真っ直ぐな状態(伸張状態)に戻ることになる。
【0021】
図5,図6に示すように、発泡性基材3が伸張状態である場合における中空室23の遮断面積は、発泡性基材3が屈曲状態である場合における中空室23の遮断面積よりも大きくなるように構成されている。ここでいう「遮断面積」とは、中空構造物20の中空室23内に発泡性基材3が配設された状態において、その中空室23の断面のうち発泡性基材3によって覆われている部分(遮断されている部分)の面積のことである。
すなわち、図5に示すように、発泡性基材3が折り曲げられた屈曲状態では、破線で囲われた領域25に相当する分だけ中空室23の遮断面積が小さくなっている。一方、外部加熱により発泡性基材3が伸張状態に変化した後では、図6に示すように、発泡性基材3が中空室23内において左右一杯に広がるので、発泡性基材3が屈曲状態であったときよりも中空室23の遮断面積が大きくなっている。これにより、中空構造物20の中空室23内を発泡性基材3によってより隙間の無い状態で遮断することができるので、中空構造物20の制振、防音等の効果がより一層高められる。
そして、発泡性基材3に対する外部からの加熱がさらに続けられると、発泡性基材3が発泡膨張して発泡体に変化する。これにより、中空構造物20の中空室23の断面を発泡体によってほとんど隙間の無い状態で遮断することが可能となっている。
【0022】
以上説明したように、本実施の形態における中空室遮断具1によれば、外部加熱をきっかけとして発泡性基材3を屈曲状態から伸張状態に変化させることができるので、以下に説明するような効果が達成される。
すなわち、中空構造物20が例えば車両ボディのピラー、ロッカーパネル等である場合には、車種毎に、また車両ボディの各部分毎にその断面形状や大きさ等が異なるのが通常である。したがって、中空構造物20の形状によっては、中空室23の内部に中空室遮断具1を挿入する作業が困難である場合もある。しかしながら、本実施の形態における中空室遮断具1によれば、外部加熱が行われる前は、発泡性基材3が屈曲状態になっているので、その発泡性基材3を中空構造物20の中空室23の内部に挿入する作業が極めて楽である。そして、外部加熱を行った後は、発泡性基材3が伸張状態に変化し、中空室23の断面形状に対応して発泡性基材3が左右一杯に広がるので、中空構造物20の中空室23の断面をより隙間の無い状態で遮断することが可能である。
また、インナパネル21に設けられた取付孔24に対して中空室遮断具1を取り付けた後に、インナパネル21及びアウタパネル22を互いに接合して中空構造物20を完成させるような場合であっても、発泡性基材3を屈曲状態にしておけば、インナパネル21及びアウタパネル22の接合作業の際に発泡性基材3が邪魔にならないという効果が達成される。
【0023】
〔第2の実施の形態〕
図7〜図10を参照しながら、以下、本発明の第2の実施の形態に係る中空構造物の中空室遮断具31について説明する。
ここで、図7は、遮断プレート33が折り曲げられて屈曲状態にある中空室遮断具31の外観を示す斜視図である。また、図8は、遮断プレート33が折り曲げられて屈曲状態とされる際の態様を▲1▼〜▲4▼に順に示す説明図である。図9は、中空構造物40の中空室43内に配設された中空室遮断具31の正面図であり、遮断プレート33が屈曲状態にある中空室遮断具31を示している。図10は、中空構造物40の中空室43内に配設された中空室遮断具31の正面図であり、遮断プレート33が伸張状態にある中空室遮断具31を示している。
【0024】
図7に示すように、本実施の形態に係る中空室遮断具31は、中空構造物40の中空室43を遮断するための遮断プレート33と、その遮断プレート33を中空室43内に取り付けるための取付用クリップ32を備えて構成されている。
遮断プレート33は、図8の▲1▼に示すように、熱可塑性樹脂により略四角形に形成された板状の部材であり、左右の両側部が内側に折り込まれて約1/3の大きさとされた後(図8中の▲1▼から▲2▼の状態)、上側から約1/3の位置において下側に向けて折り込まれ(図8中の▲2▼から▲3▼の状態)、さらに、上側から約1/2の位置において下側に向けて折り込まれることにより、最初の▲1▼の状態と比較すると約1/9の大きさに折り曲げられて屈曲状態とされている(図8中の▲3▼から▲4▼の状態)。この遮断プレート33は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、EMA樹脂、EVA樹脂等の適度に軟らかくかつ曲げ弾性のある熱可塑性合成樹脂により形成されている。この遮断プレート33が、本発明における「遮断部材」に対応している。
このように、複数回折り曲げられて屈曲状態とされた遮断プレート33の周囲には、その遮断プレート33を屈曲状態において拘束するための拘束テープ34が巻き付けられる。拘束テープ34には、好ましくは遮断プレート33よりも低い加熱温度で軟化あるいは溶融を開始する熱可塑性合成樹脂材料が用いられる。なお、取付用クリップ32は、第1の実施の形態における中空室遮断具1の取付用クリップ5とほぼ同様な形状を有しているので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0025】
図9及び図10に示すように、中空構造物40は、インナパネル41とアウタパネル42とが互いのフランジ部41f、42fにおいてスポット溶接されて筒状とされたものであり、その内部には断面略四角形の形状を有する中空室43が構成されている。中空室43内に配設される遮断プレート33は、中空室43の断面形状に対応した略四角形の薄板状に形成され、中空室43の内周壁面との間に適宜の隙間が生じる寸法に設定されている。中空室遮断具31は、遮断プレート33が中空構造物40の長手方向に対し略垂直に配置するようにして中空室43内に取り付けられる。
【0026】
中空構造物40が車両のボディの中空パネル(ボディピラー、ロッカパネル、ホイールハウス等)である場合、その車両ボディの組み付けが完了すると焼付け塗装が施される。その焼付け塗装の際の外部加熱によって、中空構造物40の中空室43内に取り付けられた中空室遮断具31が加熱される。
中空室遮断具31が加熱されると、遮断プレート33の周りに巻き付けられた拘束テープ34が徐々に軟化あるいは溶融し、拘束テープ34による遮断プレート33の拘束状態が解除される。すると、遮断プレート33は、自身の持つ弾性的な復元力によって、折り曲げられる前のほぼ真っ直ぐで平らな状態(図8の▲1▼に示す状態)に戻ることになる。この遮断プレート33がほぼ真っ直ぐで平らに復元した状態が、本発明における「伸張状態」に対応している。
【0027】
図9,図10に示すように、遮断プレート33が伸張状態である場合における中空室43の遮断面積は、遮断プレート33が屈曲状態である場合における中空室43の遮断面積よりも大きくなるように構成されている。ここでいう「遮断面積」とは、中空構造物40の中空室43内に遮断プレート33が配設された状態において、その中空室43の断面のうち遮断プレート33によって覆われている部分(遮断されている部分)の面積のことである。
すなわち、図9に示すように、遮断プレート33が折り曲げられた屈曲状態では、伸長状態と比較して約1/9の大きさに相当する分だけ中空室43が遮断される。一方、外部加熱をきっかけとして遮断プレート33が伸長状態に変化した後では、図10に示すように、遮断プレート33が中空室43内において一杯に広がるので、遮断プレート33が屈曲状態であったときよりも中空室43の遮断面積が大きくなっている。これにより、中空構造物40の中空室43内を遮断プレート33によってより隙間の無い状態で遮断することができるので、中空構造物40の制振、防音等の特性がより効果的に高められる。
【0028】
〔第3の実施の形態〕
図11〜図15を参照しながら、以下、本発明の第3の実施の形態に係る中空構造物の中空室遮断具51について説明する。
ここで、図11は、遮断シート53が折り曲げられて屈曲状態にある中空室遮断具51の外観を示す斜視図である。また、図12は、遮断シート53が伸張状態にある中空室遮断具51の外観を示す斜視図である。図13は、中空構造物60の中空室63内に配設された中空室遮断具51の正面図であり、遮断シート53が屈曲状態にある中空室遮断具51を示している。図14は、中空構造物60の中空室63内に配設された中空室遮断具51の正面図であり、遮断シート53が伸張状態にある中空室遮断具51を示している。図15は、遮断シート53の周縁部に対して発泡性基材58が取り付けられた中空室遮断具51を示す斜視図である。
【0029】
図11,図12に示すように、本実施の形態に係る中空室遮断具51は、中空構造物60の中空室63を遮断するための遮断シート53と、その遮断シート53を中空室63内に取り付けるための取付用クリップ52を備えて構成されている。遮断シート53は、例えばポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性合成樹脂がシート状に形成された部材、あるいは、不織布、ポリウレタンシート等により形成された部材であり、その厚みは5mm以下程度に形成されているので適度な可撓性を有している。取付用クリップ52は、第1の実施の形態における中空室遮断具1の取付用クリップ5とほぼ同様な形状を有しているので、ここでは詳細な説明を省略する。
取付用クリップ52の上面からは断面略円形の支柱54が延設されており、この支柱54の先端部に対して略円筒状の基台部55が設けられている。取付用クリップ52、支柱54、基台部55は、耐熱性を有する合成樹脂材料により一体状に成形されている。基台部55の前面側には、可撓性を有する遮断シート53を屈曲状態及び伸張状態にそれぞれ保持するための複数本の傘骨56が、その根元の部分が内部に埋め込まれた状態で取り付けられている。傘骨56は、外部加熱により真っ直ぐな状態に復元することのできる形状記憶合金により針金状に形成されている。遮断シート53は、この複数本の傘骨56の周囲に巻かれるようにして熱溶着あるいは接着剤等の接合手段により接合されている。この複数本の傘骨56及び遮断シート53を合わせたものが、本発明における「遮断部材」に対応している。
【0030】
図13及び図14に示すように、中空構造物60は、インナパネル61とアウタパネル62とが互いのフランジ部61f、62fにおいてスポット溶接されて筒状とされたものであり、その内部には断面略六角形の形状を有する中空室63が構成されている。中空室63内に配設される遮断シート53は、伸張状態となって広がったときにその中空室63の断面よりも若干大きくなるような寸法に設定されている。中空室遮断具51は、インナパネル61の底面に対して支柱54が垂直となるようにして中空室63内に取り付けられる。
【0031】
図11及び図13に示すように、遮断シート53が屈曲状態である場合には、複数本の傘骨56が湾曲状に内側に曲げられて略円筒状の保持部材57に対してその先端部が差し込まれている。この保持部材57により、傘骨56及び遮断シート53が内側に曲げられて屈曲状態で保持されている。保持部材57には、好ましくは遮断シート53よりも低い加熱温度で軟化あるいは溶融を開始する熱可塑性合成樹脂材料が用いられる。
【0032】
中空構造物60が車両のボディの中空パネル(ボディピラー、ロッカパネル、ホイールハウス等)である場合、その車両ボディの組み付けが完了すると焼付け塗装が施される。その焼付け塗装の際の外部加熱によって、中空構造物60の中空室63内に取り付けられた中空室遮断具51が加熱される。
中空室遮断具51が加熱されると、図12及び図14に示すように、傘骨56及び遮断シート53を屈曲状態に保持する保持部材57が徐々に軟化あるいは溶融し、保持部材57による傘骨56及び遮断シート53の拘束状態が解除される。また、形状記憶合金により形成された複数本の傘骨56は、外部加熱をきっかけとして曲げられた状態から真っ直ぐな状態に復元する。これにより、傘骨56及び遮断シート53は、中空構造物60の中空室63内においてその内周壁面に密着した状態となるまで一杯に広がることになる。すると、その中空室63の断面が傘骨56及び遮断シート53によってほぼ隙間の無い状態で遮断される。中空室63の断面がほぼ隙間の無い状態で遮断されると、中空構造物60の制振、防音等の特性がより効果的に高められる。傘骨56及び遮断シート53が中空室63内において広がった状態が、本発明おける「伸張状態」に対応している。
【0033】
なお、上記第3の実施の形態では、複数本の傘骨56が形状記憶合金により形成される例を示したが、例えばバネ鋼等の弾性を有する金属により形成された傘骨56を用いてもよい。そうすれば、バネ鋼の弾性力により、曲げられた状態の傘骨56を真っ直ぐの状態に復元させることができる。
【0034】
また、第3の実施の形態の応用例として、図15に示すように、遮断シート53の周縁部に対して、外部加熱により発泡膨張して発泡体となる複数の発泡性基材58を取り付けてもよい。そうすれば、遮断シート53の周縁部と中空室63の内周壁面との間を発泡体によって塞ぐことができる。これにより、中空構造物60の中空室63の断面をより確実に隙間の無い状態で遮断することができる。発泡性基材58を遮断シート53の周縁部に対して取り付けるためには、例えば、接着剤、溶着等の接合手段を用いることができる。
また、遮断シート53自体を発泡性材料により形成すれば、遮断シート53の周縁部に発泡性基材58を取り付けなくとも、遮断シート53自体が外部加熱により発泡膨張して発泡体になるので、中空構造物60の中空室63の断面を隙間の無い状態で遮断することが可能である。
【0035】
なお、本発明は上記実施の形態に限定するものではない。
上記実施の形態では、遮断部材を中空室内に取付ける手段として取付用クリップ5,32,52が用いられる例を示したが、このような態様に限定するものではない。例えば、両面テープや磁石等を用いて遮断部材を中空室内に取り付けても良い。
【0036】
また、第1の実施の形態では、屈曲状態に折り曲げられた発泡性基材3が、自身の持つ弾性的な復元力によって伸張状態に変化する例を示したが、このような態様に限定するものではない。例えば、発泡性基材3の内部に形状記憶合金やバネ鋼の板を埋め込んで、外部加熱によるこの形状記憶合金の復元力、あるいは、バネ鋼による弾性力により、発泡性基材3を伸張状態に変化させるようにしてもよい。
【0037】
また、第1の実施の形態では、発泡性基材3を屈曲状態に維持するために、発泡性基材3の左端側に設けられた爪部7と挿入孔6の上縁部6aとの係合を利用する例を示したが、このような態様に限定するものではない。例えば、発泡性基材3の左端側の端部を、ホルダプレート4の上面部に対して溶着することにより、発泡性基材3が折り曲げられた屈曲状態を維持するようにしても良い。
【0038】
また、中空構造物20,40,60が車両のボディピラー、ロッカーパネル、ルーフサイドパネル等である場合を例示したが、これに限るものではなく、例えば、建築物、船舶等の建造物等を構成する中空構造物に対しても本発明の中空室遮断具を適用することができる。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、中空構造物の断面形状が種々異なったり複雑である場合であっても、その中空構造物の中空室内に容易に配設することのできる中空構造物の中空室遮断具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発泡性基材が折り曲げられて屈曲状態にある中空室遮断具の外観を示す斜視図である。
【図2】発泡性基材が伸張状態にある中空室遮断具の外観を示す斜視図である。
【図3】図1に示す中空室遮断具のA−A線に基づく断面図である。
【図4】図2に示す中空室遮断具のB−B線に基づく断面図である。
【図5】中空構造物の中空室内に配設された中空室遮断具の正面図であり、発泡性基材が屈曲状態にある中空室遮断具を示している。
【図6】中空構造物の中空室内に配設された中空室遮断具の正面図であり、発泡性基材が伸張状態にある中空室遮断具を示している。
【図7】遮断プレートが折り曲げられて屈曲状態にある中空室遮断具の外観を示す斜視図である。
【図8】遮断プレートが折り曲げられて屈曲状態とされる際の態様を▲1▼〜▲4▼に順に示す説明図である。
【図9】中空構造物の中空室内に配設された中空室遮断具の正面図であり、遮断プレートが屈曲状態にある中空室遮断具を示している。
【図10】中空構造物の中空室内に配設された中空室遮断具の正面図であり、遮断プレートが伸張状態にある中空室遮断具を示している。
【図11】遮断シートが折り曲げられて屈曲状態にある中空室遮断具の外観を示す斜視図である。
【図12】遮断シートが伸張状態にある中空室遮断具の外観を示す斜視図である。
【図13】中空構造物の中空室内に配設された中空室遮断具の正面図であり、遮断シートが屈曲状態にある中空室遮断具を示している。
【図14】中空構造物の中空室内に配設された中空室遮断具の正面図であり、遮断シートが伸張状態にある中空室遮断具を示している。
【図15】遮断シートの周縁部に対して発泡性基材が取り付けられた中空室遮断具を示す斜視図である。
【符号の説明】
1,31,51 …中空室遮断具
3 …発泡性基材(遮断部材)
4 …ホルダプレート
5,32,52 …取付用クリップ
20,40,60 …中空構造物
23,43,63 …中空室
33 …遮断プレート(遮断部材)
34 …拘束テープ
53 …遮断シート(遮断部材)
56 …傘骨(遮断部材)
57 …保持部材

Claims (4)

  1. 中空構造物の中空室内に配設されて該中空室を遮断する中空室遮断具であって、
    外部加熱をきっかけとして屈曲状態から伸張状態へと変化する遮断部材を有し、前記遮断部材が屈曲状態である場合における前記中空室の遮断面積よりも、前記遮断部材が伸張状態である場合における前記中空室の遮断面積の方が大きくなるように構成されており、前記遮断部材は、前記中空構造物の長手方向に対し略垂直に配設される合成樹脂製のプレート部材により構成され、そのプレート部材の一端が他端側に向けて折り曲げられることで屈曲状態とされていることを特徴とする中空構造物の中空室遮断具。
  2. 請求項1に記載の中空構造物の中空室遮断具であって、
    遮断部材の少なくとも一部が外部加熱により発泡膨張する発泡性材料で形成されていることを特徴とする中空構造物の中空室遮断具。
  3. 請求項1または請求項2に記載の中空構造物の中空室遮断具であって、
    遮断部材の少なくとも一部が形状記憶合金で形成されていることを特徴とする中空構造物の中空室遮断具。
  4. 請求項1または請求項2に記載の中空構造物の中空室遮断具であって、
    遮断部材の少なくとも一部がバネ鋼で形成されていることを特徴とする中空構造物の中空室遮断具。
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