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JP3929675B2 - 圧電振動子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯電話及び携帯情報端末等に用いられる圧電振動子に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在の圧電振動子の組立工程では、金属薄膜の電極パターンが形成されたチップ、例えば、水晶(SiO2)からなる音叉型水晶振動片と、その保持器であるプラグのインナーリードの接合に、ハンダや接着剤が用いられている。この工程はマウント工程と呼ばれている。マウント工程の後に、金属製のケースにより気密封止してシリンダタイプの圧電振動子の組立が終了する。図6(a)は、音叉型水晶振動子の水晶振動片33上の金属電極薄膜のパターンを示す模式図である。同図に示すように、通常はプラグとの接合部であるマウントパッド34、励振のための主電極38及び側面電極39からなる電極部35、マウントパッド34とこれら主電極38及び側面電極39からなる電極部35を接続するためのリード36、周波数を調整するための錘部37の4つの部分がある。これらは、同材質の金属薄膜でチップの表裏に形成される。図6(b)は、水晶振動片33の片側の振動棒の断面を示しており、水晶振動片33のZ面である上下面に主電極38が、またX面である側面には側面電極39が形成されている。金属薄膜材料としては、図6(c)(図6(a)のCC1部の断面図)に示すように、例えば下地の金属薄膜40としてはクロム(Cr)、表面の金属薄膜41としては金(Au)等が用いられる。膜厚は両者ともに500オングストロームから1000オングストローム前後である。
【0003】
一方、プラグのインナーリードには、プラグの製造工程で、その表面に予め10〜15ミクロンの膜厚のハンダが電解メッキでコーティングされている。プラグとチップをハンダで接合する場合は、インナーリードとマウントパッド34を位置合わせした後に、インナーリード表面のハンダの膜を加熱した窒素(N2)等の熱風で溶かし、この溶融したハンダでマウントパッド34を濡らすことでハンダによる接合が可能となる。
【0004】
従来のハンダメッキ材料では、錫(Sn)と鉛(Pb)を、その重量割合が9:1ないし1:9に調合したものが用いられてきた。圧電振動子をリフロープロセスで基板に装着する場合は、後者の鉛の比率が高いいわゆる高温ハンダをメッキ材料として採用していた。しかしながら、ハンダ中の鉛の有害性が広く認識された今日、鉛を取り除き、代わりに銀(Ag)、ビスマス(Bi)、銅(Cu)等をSnに添加したいわゆる鉛フリーハンダが開発されつつあり、圧電振動子も鉛フリーメッキのプラグの採用が検討されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような鉛フリーハンダをメッキ材料として用いたプラグにチップをマウントして完成させた圧電振動子と、従来の鉛を含んだハンダメッキ製のプラグにマウントして完成させた圧電振動子のリフロー前後の周波数変化を、実験により比較した結果、前者のサンプルの方が周波数変化が明らかに大きいことが判明した。
【0006】
図7は、リフロー実験での振動子の周波数のシフトを示す図である。リフローの温度パターンは、表面実装型の小型電子部品を基板に装着する為に採用される一般的な温度パターンであり、最高温度は240℃が約10秒持続する。今回のサンプルは、このリフロープロセスを2回連続して行った。周波数シフトの許容値は±5ppmである。図7(a)は、鉛を含む従来の高温ハンダメッキをプラグに用いたものである。図7(b)は、SnとCuの亜共晶合金(Cuの重量割合が6〜7%)のメッキ品である。周波数シフトの値は、(a)が−3ppm以内に収まっているのに対して、(b)は数十ppmのものがある。このような大きな周波数変化を引き起こしたサンプルのケースを取り除き、金属電極表面を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で観察した結果、マウントパッド部内に留まるべきハンダが、リフローの際の熱で、リード、主電極表面あるいは側面電極表面に拡散していることが観察された。周波数の変化は、拡散により振動子片内の重量バランスがリフローの前後で変化して引き起こされたものと推定された。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、鉛フリーハンダをメッキ材料としたプラグを用いてマウントした圧電振動子のリフロー前後の周波数変化を減少させて、Sn/Pbハンダメッキを用いて組み立てた従来の圧電振動子のそれと同等の高い周波数安定性を持つ圧電振動子を提供することを課題とする。
【0008】
【問題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の第1の手段は、リード部、主電極部及び側面電極部へハンダメッキ構成材料が拡散するのを防ぐ目的で、電極パターンの一部をエッチングした電極パターンを持つことを特徴とする圧電振動子にある。つまり、圧電振動片に電極用に形成したリードの表面金属薄膜あるいはリードと電極部の一部の表面金属薄膜と、前記圧電振動片の基端部に形成されたマウントパッドの表面金属薄膜との間に、表面金属薄膜の剥離部である溝が形成されることを特徴とする圧電振動子である。
【0009】
本発明の第2の手段は、マウントパッドの膜構成において、インナーリードに接触する最表面層の膜の下に形成される拡散防止膜となる下地金属薄膜の面積を最表面層の表面金属薄膜よりも大きくし、最表面層とリード部の間にこの拡散防止膜があるように形成したことを特徴とする圧電振動子にある。
【0010】
かかる本発明では、ハンダ構成材料のリード部及び電極部への拡散が防止され、リフロー工程での周波数変化を規定値以内に十分抑制することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0012】
図1は、圧電振動子の概観図であり、金属薄膜の電極パターンが形成されたチップ、その保持器であるプラグ10と、圧電振動子内部を気密封止する金属製のケース13からなるシリンダタイプの圧電振動子である。圧電振動子のチップは例えば水晶(SiO2)からなる音叉型の水晶振動片12である。
【0013】
プラグ10はアウターリード25とインナーリード11とステム26からなる。プラグ10のインナーリード11には、プラグの製造工程で、その表面に予め10〜15ミクロンの膜厚のハンダが電解メッキでコーティングされている。本実施形態ではハンダはSnとCuの亜共晶合金(Cuの重量割合が6〜7%)の鉛フリーハンダを用いた。マウント工程において、プラグ10と水晶振動片12はインナーリード11と水晶振動片12上のマウントパッド14を位置合わせした後に、インナーリード11の表面のハンダ膜を加熱した窒素(N2)等の熱風で溶かし、この溶融したハンダでマウントパッド14を濡らすことにより接合される。マウント工程の後に、金属製のケース13をプラグ10のステム26に圧入し固定することにより圧電振動子の内部が気密封止される。
【0014】
図2、図3は、本発明の一実施形態に関わる圧電振動子のチップ上の金属電極薄膜のパターンを示す図である。先にも述べたとおり、圧電振動子のチップは例えば水晶(SiO2)からなる音叉型の水晶振動片12である。金属電極薄膜は、水晶振動片12上に下地金属薄膜20が形成され、下地金属薄膜20上に表面金属薄膜21が形成される構成である。
【0015】
水晶振動片12の表面に形成される電極パターンは、励振のための主電極及び側面電極からなる電極部15、マウントパッド14とこれら主電極18及び側面電極19からなる電極部15を接続するためのリード16、周波数を調整するための錘部17の4つの部分がある。これらは、同材質の金属薄膜で水晶振動片12の表面に形成される。水晶振動片12のZ面である上下面に主電極18が、またX面である側面には側面電極19が形成されている。金属薄膜材料としては、例えば下地金属薄膜20としてはクロム(Cr)、表面金属薄膜21としては金(Au)等が用いられる。膜厚は両者ともに500オングストロームから1000オングストローム前後である。
【0016】
図2(a)は、リード16のAuからなる表面金属薄膜21をエッチンッグ法により剥離したパターンの模式図である。同図でハッチングした領域が表面金属薄膜21をエッチングにより剥離し溝24とした部分(剥離部)である。この剥離工程はマウント工程以前に行う。又、図2(b)に示す様に、水晶振動片12の側面の表面金属薄膜21も取り除くことが望ましい。これは、マウント工程において、インナーリード11とマウントパッド14の相対位置が若干ずれた場合に、マウントパッド14の側面にハンダが付着し、これがリフローで拡散して側面電極19近傍に到達して周波数の変化を引き起こす場合があるからである。図2(c)は図2(b)のAA1部の断面を示す。同図において、マウントパッド14とリード16を形成する表面金属薄膜が互いに離間して存在する。つまり、リード16の一部の表面金属薄膜21が剥離され、マウントパッド14とリード16との間に溝24が形成されている。マウントパッド14と主電極18及び側面電極19からなる電極部15とは、Crからなる下地金属薄膜20で接続されている。表面金属薄膜21をエッチングにより剥離する溝24の幅(例えば図2(a)のh)の最小値は、20ミクロン程度が必要である。一方、剥離する溝24の幅hの最大値は、図3に示すように、振動子の錘部分を除く、主電極18及び側面電極19の部分に及ぶことが可能である。
【0017】
ハンダ構成材料であるSn及びCuの拡散の様子を比較するとAuの中のほうがCrの中の場合より拡散の程度が大きいことが既に知られている。従って、Auを剥離してCrの単体の薄膜にすると、リフロー工程中でのハンダ構成材料のリード16や電極部15への拡散が減少し、周波数の変化を抑制できる。尚、図3で示される例を採用して、主電極18及び側面電極19からなる電極部15の部分まで表面金属薄膜21のAu膜を剥離した電極パターンで水晶振動片12を試作した結果、振動子として重要な電気的特性である共振抵抗値の増加は極微少であり、無視できるものであった。また、高温放置特性や熱衝撃特性等の信頼性事項は全て満たされて、振動子としての特性に全く問題がなかった。図2(a)では、リード16の下地金属薄膜20はそのまま残した方法を示したが、この下地金属薄膜20まで剥離し、ハンダメッキ材料の拡散係数が相対的に小さくなるような第3の別材質の導電性薄膜でマウントパッド14と主電極及び側面電極部を接続しても良い。
【0018】
図4は、本発明の第2の手段を説明する図である。図4(a)は、マウントパッド14上の表面金属薄膜21の面積をその下地金属薄膜20より小さくなるように形成したパターンを示す図である。このように金属薄膜を形成することにより、マウントパッド14上の表面金属薄膜21とリード16の表面金属薄膜21とが離間し溝24を形成することになる。図4(b)は、BB12部の断面図である。表面金属薄膜21の材質をAu、その下地金属薄膜20をCrにすれば、前述した場合と同じ理由により、クロムはハンダ構成材料の拡散防止膜として機能する。下地のクロムからなる下地金属薄膜20の面積が広いことから、最表面のAuからなる表面金属薄膜21の面積一杯にハンダが濡れた場合でも、リード16に拡散することがない。この結果、リフロー工程における周波数の変化を抑制することが可能になる。図4(a)に示す様にマウントパッド14とリード16との間に形成する下地金属薄膜20の露出部分(溝24)の寸法h1は、CrがAuよりも20ミクロン以上外側に広がるように決めることが望ましく、30ミクロンから40ミクロンあれば十分である。
【0019】
金属薄膜21の面積を金属薄膜20より小さくする手段は容易であって、例えば成膜後にエッチング法を用いて加工すれば良い。さらに、図4(c)に示すのは、ハンダ流れを改善するための4層構造のマウントパッド14に本手段を適用した例である。表面金属薄膜21上に金属薄膜22を形成し、金属薄膜22上に金属薄膜23を形成した。金属薄膜22、23はそれぞれCr、Auの場合を示した。最下地のCrからなる下地金属薄膜20によってハンダ構成材料の拡散が同様に防止される。
【0020】
本発明の第1の手段と第2の手段は、単独に用いてもよいし、同時に用いることも可能である。
【0021】
金属薄膜の材料は、ここではAuとCrの例で説明したが、その他の材料の場合も考えられる。
【0022】
図5に、本発明の効果を定量的に示す。プラグのインナーリード部のハンダメッキ材料は、前節で述べたSnとCuの亜共晶合金を用いた。リフローの条件は前述と同じで、リフローの温度パターンは、表面実装型の小型電子部品を基板に装着する為に採用される一般的な温度パターンであり、最高温度は240℃が約10秒持続する。このリフロープロセスを2回連続して行った。サンプル数は20ケである。本発明の第1の手法を単独で用いて形成された電極構造(図3)を用いた場合を示す。リフロー前後での周波数変化量は、全てのサンプルが規定値である±5ppm以内にあり、従来のSn/Pbを用いたハンダメッキのプラグでのサンプルの周波数変化量(図7(a))に匹敵する結果が得られている。
【0023】
【発明の効果】
以上説明したように本発明では、圧電振動子の振動片上に形成される電極薄膜と保持器であるプラグのハンダメッキ材料との間の拡散に着目し、ハンダ構成材料のリード部及び主電極及び側面電極膜中への拡散を防止するパターン及び膜構造を提供している。これにより、従来のSn/Pbハンダメッキ用いた圧電振動子と同等のリフロー安定性をもつ鉛フリーの圧電振動子を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願の水晶振動子の外観を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る水晶振動子の金属電極薄膜のパターンを示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る水晶振動子の金属電極薄膜のパターンを示す模式図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る水晶振動子のマウントパッドの電極薄膜のパターンを示す図である。
【図5】本発明の水晶振動子のリフロー実験での振動子の周波数のシフトを示す図である。
【図6】従来の水晶振動子の水晶チップ上の金属電極薄膜のパターンを示す模式図である。
【図7】リフロー実験での振動子の周波数のシフトを示す図である。
【符号の説明】
10 プラグ
11 インナーリード
12 水晶振動片
13 ケース
14 マウントパッド
15 電極部
16 リード
17 錘部
18 主電極
19 側面電極
20 下地金属薄膜
21 表面金属薄膜
22 金属薄膜
23 金属薄膜
24 溝
25 アウターリード
26 ステム
33 水晶振動片
34 マウントパッド
35 電極部
36 リード部
37 錘部
38 主電極
39 側面電極
40 下地金属薄膜
41 表面金属薄膜

Claims (6)

  1. 圧電振動片と、前記圧電振動片をハンダにより接合するインナーリード部を有するプラグと、圧電振動子内部を気密封止するケースからなる圧電振動子において、
    前記圧電振動片に形成されたマウントパッドと主電極及び側面電極を接続するリードが、前記圧電振動片の上面及び側面に渡って所定の幅で表面金属薄膜を除去した溝を有する圧電振動子。
  2. 前記所定の幅が、20μm以上である請求項1に記載の圧電振動子。
  3. 前記溝と連続して、前記主電極の表面金属薄膜または側面電極の表面金属薄膜の一部が除去されている請求項1または2に記載の圧電振動子。
  4. 前記マウントパッドを構成する前記表面金属薄膜の下に位置する下地金属薄膜の面積が、前記表面金属薄膜よりも大きく形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の圧電振動子。
  5. 前記溝の下面に位置する前記下地金属薄膜を、前記下地金属薄膜よりも拡散係数の低い導電性薄膜に代えた請求項1または2に記載の圧電振動子。
  6. 前記マウントパッドが複数の表面金属薄膜と下地金属薄膜が重ねあわされた層構造を有し、最下層に形成された前記下地金属薄膜の面積が他の前記表面金属薄膜と前記下地金属薄膜よりも大きい請求項4に記載の圧電振動子。
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