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JP3928288B2 - 車両制動制置 - Google Patents

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JP3928288B2
JP3928288B2 JP03485699A JP3485699A JP3928288B2 JP 3928288 B2 JP3928288 B2 JP 3928288B2 JP 03485699 A JP03485699 A JP 03485699A JP 3485699 A JP3485699 A JP 3485699A JP 3928288 B2 JP3928288 B2 JP 3928288B2
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vehicle
braking
control device
accelerator pedal
braking force
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景一 西山
光彦 森田
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Toyota Motor Corp
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、走行する車両の制動制御を行う車両制動制御装置に係り、詳しくは、アクセルペダルによる車両の減速操作時に、車両の制動制御を行うようにした車両制動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、運転者がアクセルペダルの踏み込みを解除してブレーキペダルを実際に踏み込む前に、ブレーキペダルを駆動させるようにした車両の制動装置が提案されている(特開平5−42861)。具体的には、アクセルペダルの踏み込みを解除したときに、アクセルペダルの戻り速度、車速及びその時点のアクセル開度に基づいてブレーキ作動量(BT)が演算され、そのブレーキ作動量が車両に作用するように、ブレーキペダルを駆動するためのアクチュエータを制御するものである。
【0003】
このような制動装置によれば、運転者がアクセルペダルからブレーキペダルに踏み替える間に制動がかけられて空走距離を短縮することができ、制動距離の短縮を図ることができる。
また、アクセルペダルの踏み込みを解除した直後から車両制動が行われることから、エンジンブレーキに更に制動系による制動力が追加されることになり、特に自動変速機を搭載した車両のアクセルペダルの踏み込み解除時における減速性能を向上させることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような車両の制動装置では、アクセルペダルの踏み込みを解除したときに、そのアクセルペダルの戻し速度と、その際の車速及びアクセル開度から判断される制動の緊急性に基づいて決定された制動力が所定時間または、ブレーキ操作がなされるまで変化することなく車両に作用するようにしている。このため、アクセルペダルを戻したときに次第に変化する車両の走行状態に応じて細かな制動制御を行うことができない。
【0005】
そこで、本発明の課題は、アクセルペダルによる車両の減速操作時に、次第に変化する車両の走行状態に応じて細かな制動制御を行うことが可能な車両用制動制御装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の第一の態様は、車両に搭載され、アクセルペダル操作による減速時に自車両の制動系を制御する車両制動制御装置であって、
アクセルペダルが燃料遮断の所定範囲内に戻された状態でのアクセルペダルの位置を検出するアクセルペダル位置検出手段と、
アクセルペダルが上記燃料遮断の所定範囲内に戻された状態のとき、上記アクセルペダル位置検出手段によって検出されたアクセルペダル位置に応じて上記制動系によって発生される制動力が変化するように上記制動系を制御する制動系制御手段と、を有し、
上記制動系制御手段は、上記燃料遮断の所定範囲内でのアクセルペダルの戻し速度が高くなるほど上記アクセルペダル位置に対する上記制動力の応答感度が低下するように、上記アクセルペダル位置に対する上記制動力の応答特性を制御する、車両制動制御装置である。
この第一の態様によれば、運転者がアクセルペダルを燃料遮断の所定範囲内において操作すると、制動系がそのペダル位置に応じた制動力を発生するようになるため、制動力制御に運転者の意思を反映させることができる。
また、この第一の態様によれば、アクセルペダルの当該所定範囲内での戻し速度に応じてアクセルペダル位置に対する制動力の応答特性を制御する際に、アクセルペダルを戻す速度が高いほど減速度の応答感度が低下するように制動系が制御されるため、急激なアクセルペダル戻し操作によって急激な減速速度変化が生じないようにすることができる。
上記目的を達成するための本発明の第二の態様は、上記第一の態様において、上記車両制動制御装置が自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段を更に有し、上記制動系制御手段が、アクセルペダルが上記燃料遮断の所定範囲内に戻された状態のとき、上記走行状態検出手段によって検出された上記自車両走行状態に応じて上記制動力が変化するように上記制動系を制御する、車両制動制御装置である。
【0007】
この第二の態様によれば、アクセルペダル操作による減速時に当該アクセルペダルが燃料遮断の所定範囲内に戻された状態のときに、エンジンブレーキが働く共に、更に、検出された自車両の走行状態に基づいて制動系によって発生される制動力が制御される。よって、走行制御が変化しても、その変化した走行状態に応じた制動力を発生させることができる。
【0008】
上記走行状態検出手段は、車両の走行する状態に依存した情報を検出するものであればよく、例えば、車速、加減速度、エンジンの回転数、出力トルク等の作動状態等の情報を車両の走行状態として検出するものである。また、上記燃料遮断の所定範囲、燃料が遮断されるアクセルペダル位置とアクセル回度の全閉となる当該アクセルペダルの解放位置との間で任意に定めることができる。
【0009】
なお、上記第二の態様において、上記制動系制御手段が、上記走行状態検出手段によって検出された上記自車両走行状態に基づいて所定の減速特性を得るための目標制動力を演算し、この演算された上記目標制動力が実現されるように上記制動系を制御する、ようにしてもよい。
【0010】
この場合、所定の減速特性となるようにエンジンブレーキ力を補うような目標制動力にて車両制動がなされるように制動系を制御することができる
また、上記第二の態様において、上記走行状態検出手段が自車両のエンジン作動状態を上記自車両走行状態として検出し、上記制動系制御手段が、アクセルペダルが上記燃料遮断の所定範囲内に戻された状態のとき、上記走行状態検出手段によって検出された上記エンジン作動状態に応じて上記制動力が変化するように上記制動系を制御する、ようにしてもよい。
【0011】
エンジンブレーキ力は、エンジンの作動状態に依存する。従って、このエンジンの作動状態が変動するとエンジンブレーキ力が変化するが、この場合、その変動するエンジンの動作状態に基づいて、エンジンブレーキ力を的確に補うように制動力を制御することが可能となる。
上記エンジン作動状態は、エンジンの回転の状態に対応しており、回転数、出力トルク等にて判定することができる。
【0014】
また、上記第二の態様において、自車両が自動変速機を備え、上記走行状態検出手段がクリープ状態に対応した上記自車両走行状態を検出したときには、上記制動系制御手段による前記制動系の制御が禁止されるものとしてもよい。
この場合、エンジン回転数及び車速が低下してアクセルペダルを開放した状態であっても車両が動くクリープ状態となっても、クリープ状態が妨げられることが回避される。
また、上記第二の態様において、上記走行状態検出手段が自車両走行速度を上記自車両走行状態として検出し、上記制動系制御手段が、アクセルペダルが上記燃料遮断の所定範囲内に戻された状態のとき、上記走行状態検出手段によって検出された上記自車両走行速度に応じて上記制動力が変化するように上記制動系を制御する、ようにしてもよい。
また、上記第二の態様において、自車両が自動変速機を備え、上記走行状態検出手段がクリープ状態に対応した上記自車両走行速度を検出したときには、上記制動系制御手段による上記制動系の制御が禁止されるものとしてもよい。
この場合、エンジン回転数及び車速が低下してアクセルペダルを開放した状態であっても車両が動くクリープ状態となっても、クリープ状態が妨げられることが回避される。
【0016】
上記目的を達成するための本発明の第三の態様は、上記第一又は第二の態様において、上記車両制動制御装置が自車両の変速機において選択された変速比を検出する変速比検出手段を更に有し、上記制動系制御手段が上記変速比検出手段によって検出された上記変速比に応じて上記制動力が滑らかに変化するように上記制動系を制御する、車両制動制御装置である。
この第三の態様によれば、変速機にて選択される変速比に応じてエンジンブレーキ力が変化しても、変化したエンジンブレーキ力を的確に補うような制動力を発生させることができると共に、制動力を滑らかに変化させることによってシフトダウン時のショックが緩和される
【0018】
上記目的を達成するための本発明の第四の態様は、上記第一乃至第三のいずれか一態様において、上記制動系制御手段が、アクセルペダルが上記燃料遮断の所定範囲内に戻される直前の最大アクセル開度に応じて上記制動力が変化するように上記制動系を制御する、車両制動制御装置である。
【0019】
上記目的を達成するための本発明の第五の態様は、上記第一乃至第四のいずれか一態様において、上記車両制動制御装置が自車両に作用する負荷を検出する車両負荷検出手段を更に有し、上記制動系制御手段が、アクセルペダルが上記燃料遮断の所定範囲内に戻された状態のとき、上記車両負荷検出手段によって検出された上記負荷に応じて上記制動力が変化するように上記制動系を制御する、車両制動制御装置である。
【0020】
この第五の態様によれば、車両作用する負荷の状態によって、アクセルペダルを燃料遮断の所定範囲内に戻したときの走行状態が異なることに鑑み、アクセルペダルを燃料遮断の所定範囲内に戻したときの走行状態を決めることになる車両に作用する負荷に応じて制動系にて発生する制動力制御することができる
上記車両に作用する負荷は、車両の搭乗人員、搭載物の重量や、道路勾配、風等に依存している。なお、下り坂や追い風等の場合、負の負荷が車両に作用することになる。上記車両負荷検出手段は、上記負荷の要因のうち少なくともいずれかの要因によるものを検出するものであればよい。
【0021】
なお、この第五の態様において、上記車両負荷検出手段が、アクセルペダルが上記燃料遮断の所定範囲内に戻された状態のとき、所定の力を自車両に作用させたときの自車両の加減速度を上記負荷として検出し、上記制動系制御手段が上記車両負荷検出手段によって検出された上記加減速度に応じて上記制動力が変化するように上記制動系を制御する、ようにしてもよい。
この場合、上記各要因の総合的な作用による負荷に基づいた制動力の制御が容易にできる
【0022】
また、この場合、所定の力を作用させると、車両に作用している負荷に応じて車両の加減速度が変化するので、そのように車両の負荷に依存する加減速度に基づいて制動系にて発生される制動力が制御される。
上記車両に作用させる力は、制動力でも推進力のいずれであってもよい。
上記目的を達成するための本発明の第六の態様は、上記第一乃至第五のいずれか一態様において、上記車両制動制御装置が自車両が旋回中か否かを判定する旋回判定手段を更に有し、上記制動系制御手段が、上記旋回判定手段によって自車両が旋回中であると判定されたとき、上記制動力を左右輪に所定の比率で分配する制動力分配手段を有する、車両制動制御装置である。
この第六の態様によれば、アクセルペダルを燃料遮断の所定範囲内に戻した状態で車両旋回を行う場合に、車両の安定性を維持することができる
【0023】
上記左右輪に対する制動力の分配の比率は、車両の安定性を維持するように操舵角に応じて予め定めることができる。
上記目的を達成するための本発明の第七の態様は、上記第一乃至第五のいずれか一態様において、上記車両制動制御装置が自車両が旋回中か否かを判定する旋回判定手段を更に有し、上記制動系制御手段が、上記旋回判定手段によって自車両が旋回中でないと判定されたとき、上記制動力を前後輪に所定の比率で分配する制動力分配手段を有する、車両制動制御装置である。
この第七の態様によれば、同様に車両の安定性を維持することができる
【0024】
上記前後輪に対する制動力の分配の比率は、車両の安全性を維持するように、アクセルペダルが燃料遮断の所定範囲内に位置する場合に駆動輪(例えば、後輪)にて発生するエンジンブレーキ力を考慮して定めることができる。
上記目的を達成するための本発明の第八の態様は、上記第一乃至第七のいずれか一態様において、上記燃料遮断の所定範囲を、アクセルペダルが燃料遮断位置から所定量戻された位置からアクセル開度の全閉となる位置までの間とした車両制動制御装置である。
この第八の態様によれば、通常のエンジンブレーキ力だけが作用する状態での走行も可能にすることができる。具体的には、アクセルペダルが燃料遮断位置から所定量戻された位置までの範囲ではアクセルペダル位置に応じた制動系の制御を行わず、アクセルペダルが燃料遮断位置から所定量戻された位置までの範囲では通常のエンジンブレーキだけが作用するようにできる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
以下の例は、自動変速機を搭載した車両を対象としている。
車両の制動系は、例えば、図1に示すように構成されている。
図1において、車両の前輪(FR、FL)には、それぞれ車輪制動用のホイルシリンダ25、26が設けられ、車両の後輪(RR、RL)にも、それぞれ車輪制動用のホイルシリンダ27、28が設けられている。ブレーキペダル10がマスタシリンダ11のピストン軸に連結され、ブレーキペダル10の踏み込み操作によってマスタシリンダ11からその踏み込み操作量に応じた液圧(マスタ圧)が発生するようになっている。
【0026】
マスタシリンダ11からの液圧がソレノイド弁12を介して右前輪(FR)のホイルシリンダ25に伝達し、また、マスタシリンダ11からの液圧がソレノイド弁13を介して左前輪(FL)のホイルシリンダ26に伝達している。マスタシリンダ11からソレノイド弁12に至る液路、及びマスタシリンダ11からソレノイド弁13に至る液路には、それぞれマスタ圧センサ38、39が設けられている。上記各ソレノイド弁12、13は、正常な場合に遮断状態に保持されており、マスタシリンダ11からの液圧が両前輪の各ホイルシリンダ25、26に伝達しないようになっている。一方、各ソレノイド弁12、13は、システムの異状時(フェール時)に導通状態に切り換わり、マスタシリンダ11からの液圧が両前輪のホイルシリンダ25、26に伝達するようになっている。上記の構成により、システムのフェール時にブレーキペダル10の操作量に対応したマスタシリンダ11からの液圧によって両前輪FR、FLの制動が行われる。
【0027】
リザーバタンク16からの液圧がモータ18で作動するポンプ17及びアキュムレータ19によって昇圧され、その昇圧された液圧が、FRリニア弁21aを介して右前輪FRのホイルシリンダ25に、FLリニア弁22aを介して左前輪FLのホイルシリンダ26に、RRリニア弁23aを介して右後輪RRのホイルシリンダ27に、FLリニア弁24aを介して左後輪RLのホイルシリンダ28にそれぞれ並列的に供給されている。また、各ホイルシリンダ25、26、27、28には減圧弁21b、22b、23b、24が接続され、各ホイルシリンダ25、26、27、28の液圧が対応する減圧弁21b、22b、23b、24bを介してリザーバタンク16に戻されるようになっている。
【0028】
ポンプ17からの液圧を検出するブレーキ圧センサ31がポンプ17の下流の液路に設けられ、また、各ホイルシリンダ25、26、27、28の液圧を検出するホイルシリンダ圧センサ32、33、34、35が対応するホイルシリンダの上流手前に設けられている。更に、ブレーキペダル10の操作ストロークを検出するストロークセンサ40がブレーキペダル10にリンクするように設けられている。
【0029】
上記のような制動系では、FRリニア弁21a、FLリニア弁22a、RRリニア弁23a及びRLリニア弁24aを独立に制御することにより、各ホイルシリンダ25、26、27、28の液圧(ホイルシリンダ圧)が制御される。即ち、各左右前輪及び左右後輪の制動力が独立して制御される。
なお、図1において、ストロークシュミレータ15は、運転者のブレーキペダル10の操作に対して適度な反発力を発生し、剛性感等、操作フィーリングを向上させるためのものである。
【0030】
上記のような制動系を制御する制動制御系は、例えば、図2に示すように構成されている。
図2において、ストロークセンサ40からブレーキペダル10の操作量に応じたストローク信号が、アクセル開度センサ42からアクセルペダルの操作量に応じたアクセル開度信号がそれぞれ制動制御ユニット100に供給されている。更に、車速センサ44から車速に応じた車速信号が、エンジン回転数センサ46からエンジンの回転数に応じた回転数信号が、シフトセンサ48から選択されているギアシフトレバー位置に対応したシフトレンジ信号が、ヨーレートセンサ50から車体の旋回変動に応じたヨーレート信号がそれぞれ制動制御ユニット100に供給されている。
【0031】
制動制御ユニット100は、更に、前述した制動系の各ホイルシリンダ圧センサ32、33、34、35及びブレーキ圧センサ31からの各検出信号を入力し、対応する各部の液圧を監視している。また、メモリユニット120は、制動制御で用いる後述するようなテーブル、定数等を予め記憶している。
制動制御ユニット100は、各ホイルシリンダ圧センサ32、33、34、35からの検出信号を監視しつつ、ストロークセンサ40にて検出されるブレーキペダルの操作量及びマスタ圧センサ38、39での検出圧に応じた制動力が発生するように、各ホイルシリンダ25、26、27、28に接続されたFRリニア弁21a、FLリニア弁22a、RRリニア弁23a、RLリニア弁24aの開度制御及び他のアクチュエータ(減圧弁21b、22b、23b、24b)の開閉制御を行う。このような制動制御ユニット100の機能により、運転者がブレーキペダル10の踏み込み操作を行ったときに、その踏み込み量に応じた制動力にて車両の制動がなされる。
【0032】
制動制御ユニット100は、更に、アクセルペダルの減速操作(踏み込んだアクセルペダルの戻し操作)がなされたときに、制動制御(以下、エンジンブレーキアシスト制御という)を行う。即ち、踏み込まれていたアクセルペダルが燃料遮断位置(フューエルカット位置)からアクセル開度全閉位置までの範囲内に戻されたときに、アクセル開度センサ42からの検出信号、エンジン回転数センサ46からの検出信号、シフトセンサ48からのシフトレンジ信号、ヨーレートセンサ50からのヨーレート信号に基づいて各車輪の制動圧が決定される。そして、その決定された制動圧となるように、FRリニア弁21a、FLリニア弁22a、RRリニア弁23a、RLリニア弁24a及び他のアクチュエータ21b、22b、23b、24bが制御される。
【0033】
制動制御ユニット100は、例えば、図3に示す手順に従って上述したエンジンブレーキアシスト制御を実行する。
図3において、車両の走行中、制動制御ユニット100は、アクセル開度センサ42からの検出信号に基づいて、アクセルペダルが燃料遮断位置からアクセル開度全閉位置までの間に戻されたか否かを判定している(S1)。走行中踏み込まれていたアクセルペダルが燃料遮断位置からアクセル開度全閉位置までの間に戻されると、エンジンへの燃料供給が遮断されて車両にエンジンブレーキ力が作用し、車両が減速する。この状態で、制動制御ユニット100は、エンジンブレーキ力による減速度に更に加えるべき目標減速度(以下、エンジンブレーキアシスト減速度Gx* という)を演算する(S2)。このエンジンブレーキアシスト減速度Gx*は、例えば、次のようにして演算される。
【0034】
Gx*=γ×(θ0 −θ)×(α×β)×S−Te
ここで、γは、クリープとの協調項であり、エンジン回転数Ne に対して例えば、図4に示すように変化する。即ち、γは、クリープ状態に対応したクリープ回転数Necから直線的に増加し、所定の回転数以上で一定値となる。クリープ回転数Ne より小さい回転数では、γはゼロになる。この図4に対応した特性テーブルがメモリユニット120に格納されており、制動制御ユニット100は、エンジン回転数センサ46からの検出信号にて表されるエンジン回転数に対応したγをメモリユニット120内の特性テーブルを参照して決定する。
【0035】
このγの項により、エンジンの回転数に依存する減速度(制動力)を発生させることができると共に、クリープ状態となったときに、エンジンブレーキアシスト減速度Gx*に基づいた制動力の制御が禁止される。
(θ0 −θ)は、図5に示すように、アクセルペダルの燃料遮断位置(フューエルカット位置)θ0 (deg )と実際のアクセルペダルの位置θ(deg) との差であって、アクセルペダルの燃料遮断位置θ0 から全閉方向への戻し量を表す。なお、図5において、WOTはアクセル開度の全開位置を表す。
【0036】
アクセルペダルの燃料遮断位置θ0 はクリープ回転数Necを超えるエンジン回転数において一定値であり、制動制御ユニット100は、アクセル開度センサ42からの検出信号で表されるアクセルペダル位置θとこの一定値となる燃料遮断位置θ0 とに基づいてそれらの差( θ0 −θ) を演算する。
この(θ0 −θ)の項により、例えば、図6に示すように、アクセルペダル位置が燃料遮断位置θ0 から全閉位置に向かうに従って、次第に大きくなる減速度( 制動力) を発生させることができるようになる。
【0037】
αは、予め定めた一定値である。この定数αは、所望の特性を得るために、例えば、実験的に定められる。
βは、ビルドアップ項と称し、ブレーキペダルが燃料遮断位置θ0 から開度全閉までの間の範囲内に戻される際の戻し速度に応じてその変化の特性が異なる。その変化の特性は、例えば、図7に示すように、ブレーキペダルがゆっくり戻される場合には、βが急激に「1」に達するように変化し、ブレーキペダルが早く戻される場合には、βがゆっくり「1」に達するものである。即ち、ブレーキペダルの戻し速度が大きくなればなるほど、ゆっくりβが「1」に達するような変化特性となる。
【0038】
図7に示すようなβの特性テーブルが予めメモリユニット120に格納されており、制動制御ユニット100は、アクセル開度センサ42からの検出信号に基づいてアクセルペダルの戻し速度を演算し、この演算された戻し速度に対応したβの変化特性をメモリユニット120に格納された特性テーブルを参照して決定する。そして、アクセルペダルが燃料遮断位置θ0 に達した時点からの時間に対応したβの値をアクセルペダルの戻し速度に基づいて決定する。
【0039】
このβの項により、例えば、図8に示すように、アクセルペダルをより早く戻すときに、燃料遮断位置θ0 から開度全閉位置(0)の間のアクセルペダル位置に対する減速度(制動力)の応答感度をより低下させるような特性にて減速度を発生できるようになる。なお、アクセルペダルがアクセル開度全閉位置(0)のときには、所望の減速度(例えば、0.2G)が得られるようになる。
【0040】
このようなβの項に基づいた特性により、急激にアクセルペダルを戻したときの減速ショックを緩和することが可能となる。
上記式におけるSは、ギアシフト位置に応じた重みである。ギアシフト位置に対応した変速機の変速比に応じてエンジンの回転数及びエンジンの出力トルクが異なる。従って、Sは、この変速比に応じて追加すべき制動力を調整するためのファクターである。ギアシフト位置に対するSの値は、例えば、実験的に定められるものであり、ギアシフト位置とSとの関係がテーブルとしてメモリユニット120に予め格納されている。
【0041】
制動制御ユニット100は、メモリユニット120に格納されたこのテーブルを参照して、シフトセンサ48からの検出信号で表現されるギアシフト位置に対応したSの値を決定する。 このSの項により、変速比に応じて減速度(制動力)が変化するような制動系の制御が可能となる。
更に、Teは、エンジンブレーキトルクである。このエンジンブレーキトルクTeは、エンジン回転数に依存することから、エンジン回転数とエンジンブレーキトルクの関係がテーブルとして予めメモリユニット120に格納されている。制動制御ユニット100は、メモリユニット120内の当該テーブルを参照して、エンジン回転数センサ46にて検出されるエンジン回転数に対応したエンジンブレーキトルクTeを決定する。
【0042】
上記エンジンブレーキアシスト減速度Gx*を演算する式によれば、アクセルペダルの踏み込みを解放した際に、全体として発生させようとする減速度が
γ×(θ0 −θ)×(α×β)×S
に従って演算され、その減速度からエンジンブレーキによって発生される減速度(エンジンブレーキトルクTeに対応)を差し引くことにより、エンジンブレーキアシスト減速度Gx*の値が演算される。
【0043】
即ち、例えば、図9に示すように、燃料遮断状態において次第に低下するエンジン回転数Ne (特性Q2 参照)に対応してエンジンブレーキトルクTe(減速度)が低下する(特性Q3 参照)。このような状況で、全体として発生させようとする減速度(特性Q3 )を得るために、エンジンブレーキ力(Te)を補うようにエンジンブレーキアシスト減速度Gx*(Tb)に対応した制動力を車両に作用させることになる。
【0044】
例えば、所定のアクセルペダル位置(例えば、全閉位置)において、特性Q1 のように変化する全体として発生させようとする減速度は、各ファクタγ、α、β及びSによって決めることができる。
また、変速機をシフトダウンする際には、例えば、図10に示すように、エンジン回転数Neが急激に変化する(特性Q12参照)。このようなエンジン回転数の変化に伴ってエンジンブレーキトルクTeも変化するが(特性Q13参照)、各ギアシフト位置毎にSを適当に決めることにより、そのようなシフトショックを緩和するような減速特性(特性Q11)での制動制御が行われるようなエンジンブレーキアシスト減速度Gx*を得ることも可能となる。
【0045】
図3に戻って、上記のようにしてエンジンブレーキアシスト減速度Gx*が演算されると、制動制御ユニット100は、ストロークセンサ40からの検出信号に基づいてブレーキ操作がなされているか否かを判定する(S3)。アクセルペダルが燃料遮断位置θ0 から更に戻された後に、ブレーキペダルの操作が行われていない状況では、上記エンジンブレーキアシスト減速度Gx*が得られるような制動力を得るための目標液圧Pが演算される(S5)。
【0046】
そして、制動制御ユニット100は、更に、ヨーレートセンサ50からのヨーレート信号に基づいて車両が旋回中であるか否かを判定する(S6)。ここで、車両が旋回中でない(直進走行)と判定した場合には、上記のように演算した目標液圧Pの前後配分量を演算する(S7)。この目標液圧Pの前後配分量は、例えば、次のように演算される。
【0047】
図11に示すように、駆動輪となる後輪に与える制動力(後輪制動力)と従動輪となる前輪に与える制動力(前輪制動力)との理想的な配分特性Q0 が定められている。この理想配分特性Q0 より上側の領域では、後輪制動力への配分が大きくなることから、後輪がロックする状態に近づき、車両が比較的不安定になる。従って、理想配分特性Q0 より下側の領域にて後輪制動力と前輪制動力との配分を決めることが好ましい。
【0048】
各ギアシフト位置(1 st)、(2nd)、(3rd)、(OD)において、アクセルペダルを燃料遮断位置θ0 に戻すと、駆動輪である後輪にエンジンブレーキ力fR1、fR2、fR3、fROD が作用する。そのとき、前輪制動力は、理想配分特性Q0 より下側となる特性Q 1に従って、各後輪のエンジンブレーキ力に対応する前輪制動力fF1、fF2、fF3、fFOD が決定される。このように、アクセルペダルを燃料遮断位置θ0 に戻したときにこのように前輪制動力が決められると、以後、所定の減速度が得られるように、後輪制動力と前輪制動力との配分量が演算される。
【0049】
なお、図11において、各ギアシフト位置での一定減速度Gを得るための後輪制動力と前輪制動力との配分は、特性A1(1 st)A2(2nd)A3(3rd)A(OD)で示される。
このように目標液圧Pの分配量が演算されると、制動制御ユニット100は、前輪に対応したFRリニア弁21a、FLリニア弁21bと、後輪に対応したRRリニア弁23a、RLリニア弁24aを上記目標液圧Pの分配にて得られた液圧がホイルシリンダ25、26、27、28にて発生するように制御する(S8)。そして、アクセルペダルの位置θが燃料遮断位置θ0 を超えたか(θ>θ0 )否か、即ち、加速のためにアクセルペダルが踏み込まれたか否かが判定される(S9)。
【0050】
アクセルペダルの位置θが燃料遮断位置θ0 を開度全開(WOT)方向に超えていない場合(エンジンブレーキ力が作用している場合)、上記と同様の処理(S2、S3、S5、S7、S8)によって、各ホイルシリンダ25、26、27、28の目標液圧が演算され、その目標液圧となるように、各リニア弁21a、22a、23a、24aが制御される。この処理は、アクセルペダルの踏み込み操作がなされるまで繰り返し行われる。
【0051】
上記のようにして制動系の制御がなされる過程で、制動制御ユニット100がストロークセンサ40からの検出信号に基づいてブレーキペダルが操作されたことを判定すると(S3で、YES)、ストロークセンサ40からの検出信号に基づいて検出されるブレーキペダルの操作量に基づいて、この制動操作に対応したフートブレーキ目標減速度(G)が演算される。そして、制動制御ユニット100は、上述したように演算されたエンジンブレーキアシスト減速度Gx*とのフートブレーキ目標減速度(G)とを加算し、最終目標減速度として得る(S4)。
【0052】
以後、この最終目標減速度に基づいて上述したような制動制御が実行される(S5乃至S8)。これにより、ブレーキペダルの操作に基づいた制動制御とエンジンブレーキアシスト制御が重畳して実行される。
また、制動制御ユニット100は、ヨーレートセンサ50からの検出信号に基づいて車両が旋回中であることを判定すると(S6でYES)、旋回中のスリップを防止するために、左右輪の制動力の分配率を所定のアルゴリズムに従って演算する(S10)。そして、上記のように演算された目標液圧Pをその分配率に従って分配した液圧が各ホイルシリンダにて発生されるように、FRリニア弁21a、FLリニア弁22a、RRリニア弁23a、RLリニア弁24a及びその他のアクチュエータ21b、22b、23b、24bが制御される。
【0053】
上記のようにしてエンジンブレーキアシスト制御が実行されている状態で、運転者が加速を行うためにブレーキペダルの踏み込み操作を行い、ブレーキペダル位置θが燃料遮断位置θ0 を超えると(θ>θ0 )、このエンジンブレーキアシスト制御が終了される。
上記のような手順で実行されるエンジンブレーキアシスト制御によれば、アクセルペダルを解放してエンジンブレーキ力が車両に作用している状態において、更に、燃料遮断位置θ0 から開度全閉位置(0)までの間の範囲に戻されたブレーキペダルの操作位置、シフトギアの位置、エンジン回転数に応じて決定される制動力が車両に作用することになる。その結果、エンジンブレーキ力が補われて、良好な減速特性が得られると共に、車両の走行状態により適した制動力をより細かく制御することが可能となる。これにより、低加減速範囲において、アクセルペダルの操作のみで車両の細かな加減速制御を行うことが可能となる。
【0054】
従来、例えば、図12の破線で示すように、オーバーレブ防止のために、シフト操作から実際にギアシフトされるまでにタイムラグが発生する。しかし、上記のように、エンジンブレーキ力が車両に作用する状態において、更に、制動力が作用して減速特性が良好となることから、同図12の実線で示すようにそのタイムラグが小さくなり(T1R T2)、更に、付加される制動力によって比較的低い車速にてギアシフトがなされるので、シフトショックも低減される。
【0055】
上述したように上記例では、アクセルペダルの燃料遮断位置θ0 と開度全閉位置(0)との間の戻し量(θ0 −θ)に基づいて制動力が制御される。従って、エンジンブレーキアシスト制御におけるアクセルペダルの操作性を向上させるために、図6に示すような本来僅かな操作範囲Sn を、図13に示すようにより広い操作範囲Sw にすることが好ましい。このような操作範囲の変更は、燃料遮断( フューエルカット) 位置θ0 がずれるようにアクセル開度とスロットル開度との対応関係を表すテーブルを書き換えることにより容易に実行することができる。
【0056】
また、アクセルペダルを調整してエンジンブレーキ力に付加される制動力(アシスト力)がない状態での走行を可能とするために、図14に示すように、上記エンジンブレーキアシスト制御を燃料遮断位置θ0 と開度全閉位置(0)との間の所定位置θx から開始するように構成することができる。このような制御によれば、図15に示すように、アクセルペダルの位置θが(θx >θ>0)の範囲にある場合は、前述したのと同様に、当該所定位置θx からの戻し量(θx −θ)に対応した制動力が発生され、一方、アクセルペダルの位置θが(θ0 >θ>θx )の範囲にある場合には、エンジンブレーキをアシストするための制動力は発生されない。
【0057】
このような制御により、アクセルペダルを燃料遮断位値θ0 と所定位置θx との範囲内に保持することにより、エンジンブレーキ以外の制動力が作用することがない。従って、このエンジンブレーキアシスト力の作用の遅れを利用して従来と同等の惰性走行を行うことができるようになる。
エンジンブレーキアシスト制御の第二の例について説明する。
【0058】
この第二の例においては、エンジンブレーキアシスト制御が、図16に示す手順に従って実行される。この例では、エンジンブレーキアシスト制御に係る制動力が車速に基づいて決定される。
図16において、制動制御ユニット100は、アクセル開度センサ42からの検出信号に基づいて、アクセルペダルが燃料遮断位置θ0 と開度全閉位置(0)との間にある、即ち、燃料遮断状態であることを判定すると(S11でYES)、車速センサ44からの検出信号に基づいて演算される車速spdに対応した制動力P(spd)を、メモリユニット120に予め格納したテーブルを参照して、演算する(S12)。そして、そのように演算された制動力P(spd)が各ホイルシリンダにて発生されるように、制動制御ユニット100は、制動系の各種アクチュエータ(図2参照)を制御する(S13)。一方、燃料遮断中でない(加速中)と判定された場合には、上記車速spdに応じた制動力P(spd)は強制的にゼロ(P=0)され、エンジンブレーキアシスト制御が禁止される(S14)。
【0059】
上記車速spdに対する制動力Pの関係は、例えば、図17に示すような関係となている。所定の車速に達するまでは、車速spdが低下するほど制動力Pが大きくなる。これは、車両の減速度を略一定に保つためには、低速になればなるほどエンジンブレーキ力が低下するので、車速の減速度を略一定に保つために、このように車速の低下に従って制動力Pが大きくなるように制動系が制御される(図9参照)。
【0060】
そして、所定の車速以下では、車速の低下に従って制動力Pを低下させる。車速が更に低下して当該車速がクリープ状態を表す最高車速以下となったときに、制動力Pがゼロ(P=0)となるようにしている。このような特性により、略一定の減速度を維持した状態での車両減速が可能となるとともに、車両のクリープ状態にスムーズに移行させることができる。
【0061】
エンジンブレーキアシスト制御の第三の例について説明する。
この第三の例においては、エンジンブレーキアシスト制御が、図18に示す手順に従って実行される。この例では、エンジンブレーキアシスト制御に係る制動力が燃料遮断直前の最大アクセル開度に基づいて決定される。
図18において、制動制御ユニット100は、現在の時刻(Now Time)が前回アクセル開度のピーク値検出時(Max Time)から所定の保持時間(Khanntei)が経過したか否かを判定する(S21)。所定の保持時間(Khanntei)が経過していなかった場合には、ピーク値判定が行われる。 即ち、今回検出されたアクセル開度Aa(i)が前回検出されたアクセル開度Aa(i-1)より小さいか否かが判定される(S22)。今回検出されたアクセル開度Aa(i)が前回検出されたアクセル開度Aa(i-1)より小さい場合には、更に、今回検出されたアクセル開度Aa(i)が現時点においてピーク値として得られている最大値Aamaxより大きいか否かが判定される(S23)。今回検出されたアクセル開度Aa(i)がその最大値Aamaxより大きい場合は、前回検出されたアクセル開度Aa(i-1)が新たな最大値Aamaxとして設定される(S24)。そして、現在の時刻(Now Time)がピーク値を検出した時刻(Max Time)として設定される(S25)。
【0062】
上記の各判定処理において、今回検出されたアクセル開度Aa(i)が前回検出されたアクセル開度Aa(i-1)より大きい場合(S22でNO)、または、今回検出されたアクセル開度Aa(i)が現時点においてピーク値として得られている最大値Aamaxより小さい場合(S23でNO)には、最大値(ピーク値)Aamax及びその検出時刻(Max Time)の更新は行われない。また、現在の時刻(Now Time)が前回のピーク値検出時刻(Max Time)から所定保持時間(Khanntei)以上経過している場合(S21でNO)、タイムアウトであるとして、最大値Aamaxが前回の検出アクセル開度Aa(i-1) に、ピーク値検出時刻(Max Time)が現在の時刻にそれぞれリセットされる。
【0063】
アクセルペダルの操作によって車両の走行制御がなわれている場合には、上記のような所定時間(保持時間Khanntei)毎に、アクセル開度のピーク値のサンプリングが行われる。そして、アクセルペダルが燃料遮断位置より戻される状態でなければ(S26でNO)、特に付加的な制動圧を作用させるためのホイルシリンダ圧の制御はなされない(S29)。
【0064】
このような状態で、運転者がアクセルペダルの踏み込みを解放し、アクセルペダルが燃料遮断状態となる位置まで戻されると、制動制御ユニット100は、上記のようにしてサンプリングしたアクセル開度のピーク値(最大値Aamax)に対応する制動圧Pを所定のテーブルを参照して決定する(S27)。そして、この決定された制動圧Pでの制動がなされるように、制動制御ユニット100は、制動系の各部アクチュエータ(21a、22a、23a、24a、21b、22b、23b、24b)を制御する(S28)。
【0065】
制動制御ユニット100は、上記のような手順に従った処理を車両が走行している間繰り返し実行する。
このアクセル開度と制動圧Pとの関係は、例えば、図19に示すように、アクセル開度のピーク値が所定値になるまでは一定の制動圧であり、アクセル開度のピーク値が所定値以上になると、当該ピーク値が大きくなるほど、制動圧Pが大きくなるようになっている。このようなアクセル開度のピーク値と制動圧Pとの関係により、アクセル開度をより大きくして加速している際に、アクセルペダルの戻し操作がおこなわれた場合、より大きな制動力が車両に作用するようになる。従って、急加速直後により大きい制動力を作用させることができるようになる。
【0066】
更に、エンジンブレーキアシスト制御の第四の例について説明する。
この第四の例においては、エンジンブレーキアシスト制御が、図20に示す手順に従って実行される。この例では、エンジンブレーキアシスト制御に係る制動力が試しに車両制動を行った場合に得られる加減速度の大きさに基づいて決定される。この加減速度は、車両に作用する負荷に依存している。即ち、車両に作用する負荷が大きければ(上り坂、乗員や荷物の積載量が多い場合等)、大きな減速度が得られ、車両に作用する負荷が小さければ(下り坂、乗員や荷物の積載量が少ない等)、得られる減速度は小さくなる(加速度が大きくなる)。
【0067】
図20において、制動制御ユニット100は、アクセル開度センサ42からの検出信号に基づいて、アクセルペダルが燃料遮断位置より戻されていることを判定すると(S31でYES)、判定処理が終了したか否かを表す判定終了フラグFgrade がセットされているか否かを判定し(S32)、更に、判定処理中であるか否かを表す判定中フラグFtimer がセットされているか否かを判定する(S33)。
【0068】
ここで、判定終了フラグFgrade 及び判定中フラグTtimer が共にセットされていない場合(Fgrade =0、Ftimer =0)の場合、制動制御ユニット100は、試し制動処理を実行する。即ち、現在の時刻(Now Time)が判定開始時刻(stime )として設定され(S34)、車速センサ44からの検出信号にて演算される現在の車速spdが判定開始時車速sspdとして設定される(S35)。その後、判定中フラグFtimer がセットされる(Ftimer =1)(S36)。
【0069】
次の処理周期において、制動制御ユニット100は、判定中フラグFtimer がセットされていること(Ftimer =1)を検出すると(S33でNO)、判定処理開始から所定時間Kt (例えば、0.1秒程度)が経過したか否かを判定する(S37)。まだ、所定時間Kt の経過前であれば、僅かな減速度(例えば、0.05G程度)を目標減速度とした制動制御が試しに実行される(S38)。そして、以降の各処理周期において、同様の処理(S31、S32、S33、S37、S38)が繰り返し実行される。
【0070】
そのような試し制動制御の過程で、判定開始から所定時間Kt が経過すると、判定開始時車速sspdと現在の車速spdとの差から加減速度(加速度が正値、減速度が負値)dspdが演算される(S39)。そして、判定終了フラグFgrade がセットされる(Fgrade =1)(S40)。 更に次の処理周期において、制動制御ユニット100は、判定終了フラグFgrade がセットされていることを検出すると(S32でYES)、演算された加減速度dspdに対応する制動圧Pを、予め定めた加減速度と制動圧Pとの関係を示すテーブルを参照して決定する(S41)。そして、制動制御ユニット100は、この決定された制動圧Pが各ホイルシリンダにて発生されるように、各アクチュエータ(21a、22a、23a、34a、21b、22b、23b、24b)を制御する(S42)。
【0071】
上記加減速度dspdと制動圧Pとの関係は、例えば、図21に示すように定められる。即ち、加減速度(加速度が正値)が大きいほど、発生させるべき制動力Pが小さくなる。このような関係により、上り坂や、乗員、荷物等の積載量が多くて、試し制動制御にて得られた加減速度が小さい場合には、作用させるべき制動力Pが小さくなり、一方、下り坂や、乗員、荷物等の積載量が少なくて、試し制動制御にて得られた加減速度が大きい場合には、作用させるべき制動力Pが大きくなる。従って、アクセルペダルの踏み込みを戻したときに、車両に作用する負荷が大きければより小さな制動力により、また、車両に作用する負荷が小さければ、より大きい制動力により、エンジンブレーキ力が補われるようになる。その結果、車両に対する負荷にかかわらず、全体としてより安定化した制動力を当該車両に作用させることが可能となる。
【0072】
なお、アクセルペダルの踏み込みが開始されると、上記制動圧の制御が禁止され(S43)、各フラグFgrade、Ftimerがリセットされると共に(S44、S45)、加減速度がセットされるレジスタdspdがリセットされる(S46)
【0077】
【発明の効果】
以上、説明してきたように、本願発明によれば、アクセルペダルが燃料遮断の所定範囲内に戻された状態において、車両に対してエンジンブレーキが作用すると共に、走行状態に応じた制動力を発生させることができるので、アクセルペダルによる車両の減速操作時に、次第に変化する車両の走行状態に応じて細かな制動制御を行うことが可能となる。
【0078】
また、本願発明によれば、運転者のアクセルペダルの操作に基づいて制動制御が可能となるので、運転者が体感する走行状態に応じた細かな制動制御が可能となる。
更に、本願発明によれば、車両に作用する負荷の状態に応じた制動力を発生させることができるので、その負荷に対応した車両の走行状態に応じた細かな制動制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態に係る制動制御装置が制御すべき制動系の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施の一形態に係る制動制御装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】制動制御装置が実行するエンジンブレーキアシスト制御の第一の例を示すフローチャートである。
【図4】エンジンブレーキアシスト減速度Gx*を演算するために用いられるγのエンジン回転数に対する特性を示す図である。
【図5】アクセルペダルの位置関係を示す図である。
【図6】エンジンブレーキアシスト減速度Gx*を演算するために用いられる(θ0 −θ)と制動力との関係を示す図である。
【図7】エンジンブレーキアシスト減速度Gx*を演算するために用いられるβの変化特性を示す図である。
【図8】図7に示すβの変化特性に基づいたアクセルペダルの戻し量(θ0 −θ)と減速度との関係を示す図である。
【図9】エンジンブレーキアシスト制御における制動力及びエンジン特性の変化の例を示す図である。
【図10】エンジンブレーキアシスト制御における制動力及びエンジン特性の変化の他の例を示す図である。
【図11】制動力の前後輪分配の特性例を示す図である。
【図12】変速比を変更した場合のシフトショックの状態を示す図である。
【図13】アクセルペダルの戻し量(θ0 −θ)と制動力との関係の他の例を示す図である。
【図14】アクセルペダルの他の位置関係を示す図である。
【図15】アクセルペダルの戻し量(θ0 −θ)と制動力との関係の更に他の例を示す図である。
【図16】エンジンブレーキアシスト制御の第二の例を示すフローチャートである。
【図17】図16に示すエンジンブレーキアシスト制御に用いられる車速と制動力との関係を示す図である。
【図18】エンジンブレーキアシスト制御の第三の例を示すフローチャートである。
【図19】図18に示すエンジンブレーキアシスト制御に用いられるアクセル開度と制動力との関係を示す図である。
【図20】エンジンブレーキアシスト制御の第四の例を示すフローチャートである。
【図21】図20に示すエンジンブレーキアシスト制御に用いられる加減速度と制動圧との関係を示す図である。
【符号の説明】
10 ブレーキペダル
11 マスタシリンダ
16 リザーバタンク
17 ポンプ
19 アキュムレータ
21a FRリニア弁
22a FLリニア弁
23a RRリニア弁
24a RLリニア弁
21b、22b、23b、24b 減圧弁
25、26、27、28 ホイルシリンダ
31 ブレーキ圧センサ
32、33、34、35 ホイルシリンダ圧センサ
40 ブレーキストロークセンサ
42 アクセル開度センサ
44 車速センサ
46 エンジン回転数センサ
48 シフトセンサ
50 ヨーレートセンサ
100 制動制御ユニット
120 メモリユニット

Claims (14)

  1. 車両に搭載され、アクセルペダル操作による減速時に自車両の制動系を制御する車両制動制御装置であって、
    アクセルペダルが燃料遮断の所定範囲内に戻された状態でのアクセルペダルの位置を検出するアクセルペダル位置検出手段と、
    アクセルペダルが前記燃料遮断の所定範囲内に戻された状態のとき、前記アクセルペダル位置検出手段によって検出されたアクセルペダル位置に応じて前記制動系によって発生される制動力が変化するように前記制動系を制御する制動系制御手段と、を有し、
    前記制動系制御手段は、前記燃料遮断の所定範囲内でのアクセルペダルの戻し速度が高くなるほど前記アクセルペダル位置に対する前記制動力の応答感度が低下するように、前記アクセルペダル位置に対する前記制動力の応答特性を制御する、ことを特徴とする車両制動制御装置。
  2. 請求項1記載の車両制動制御装置であって、
    自車両の走行状態を検出する走行状態検出手段を更に有し、
    前記制動系制御手段は、アクセルペダルが前記燃料遮断の所定範囲内に戻された状態のとき、前記走行状態検出手段によって検出された前記自車両走行状態に応じて前記制動力が変化するように前記制動系を制御する、ことを特徴とする車両制動制御装置。
  3. 請求項2記載の車両制動制御装置であって、
    前記制動系制御手段は、
    前記走行状態検出手段によって検出された前記自車両走行状態に基づいて所定の減速特性を得るための目標制動力を演算し、
    この演算された前記目標制動力が実現されるように前記制動系を制御する、ことを特徴とする車両制動制御装置。
  4. 請求項2又は3記載の車両制動制御装置であって、
    前記走行状態検出手段は、自車両のエンジン作動状態を前記自車両走行状態として検出し、
    前記制動系制御手段は、アクセルペダルが前記燃料遮断の所定範囲内に戻された状態のとき、前記走行状態検出手段によって検出された前記エンジン作動状態に応じて前記制動力が変化するように前記制動系を制御する、ことを特徴とする車両制動制御装置。
  5. 請求項2記載の車両制動制御装置であって、
    自車両が自動変速機を備え、前記走行状態検出手段がクリープ状態に対応した前記自車両走行状態を検出したとき、前記制動系制御手段による前記制動系の制御が禁止される、ことを特徴とする車両制動制御装置。
  6. 請求項2記載の車両制動制御装置であって、
    前記走行状態検出手段は、自車両走行速度を前記自車両走行状態として検出し、
    前記制動系制御手段は、アクセルペダルが前記燃料遮断の所定範囲内に戻された状態のとき、前記走行状態検出手段によって検出された前記自車両走行速度に応じて前記制動力が変化するように前記制動系を制御する、ことを特徴とする車両制動制御装置。
  7. 請求項6記載の車両制動制御装置であって、
    自車両が自動変速機を備え、前記走行状態検出手段がクリープ状態に対応した前記自車両走行速度を検出したとき、前記制動系制御手段による前記制動系の制御が禁止される、ことを特徴とする車両制動制御装置。
  8. 請求項1乃至7のいずれか一項記載の車両制動制御装置であって、
    自車両の変速機において選択された変速比を検出する変速比検出手段を更に有し、
    前記制動系制御手段は、前記変速比検出手段によって検出された前記変速比に応じて前記制動力が滑らかに変化するように前記制動系を制御する、ことを特徴とする車両制動制御装置。
  9. 請求項1乃至8のいずれか一項記載の車両制動制御装置であって、
    前記制動系制御手段は、アクセルペダルが前記燃料遮断の所定範囲内に戻される直前の最大アクセル開度に応じて前記制動力が変化するように前記制動系を制御する、ことを特徴とする車両制動制御装置。
  10. 請求項1乃至9のいずれか一項記載の車両制動制御装置であって、
    自車両に作用する負荷を検出する車両負荷検出手段を更に有し、
    前記制動系制御手段は、アクセルペダルが前記燃料遮断の所定範囲内に戻された状態のとき、前記車両負荷検出手段によって検出された前記負荷に応じて前記制動力が変化するように前記制動系を制御する、ことを特徴とする車両制動制御装置。
  11. 請求項10記載の車両制動制御装置であって、
    前記車両負荷検出手段は、アクセルペダルが前記燃料遮断の所定範囲内に戻された状態のとき、所定の力を自車両に作用させたときの自車両の加減速度を前記負荷として検出し、
    前記制動系制御手段は、前記車両負荷検出手段によって検出された前記加減速度に応じて前記制動力が変化するように前記制動系を制御する、ことを特徴とする車両制動制御装置。
  12. 請求項1乃至11のいずれか一項記載の車両制動制御装置であって、
    自車両が旋回中か否かを判定する旋回判定手段を更に有し、
    前記制動系制御手段は、前記旋回判定手段によって自車両が旋回中であると判定されたとき、前記制動力を左右輪に所定の比率で分配する制動力分配手段を有する、ことを特徴とする車両制動制御装置。
  13. 請求項1乃至11のいずれか一項記載の車両制動制御装置であって、
    自車両が旋回中か否かを判定する旋回判定手段を更に有し、
    前記制動系制御手段は、前記旋回判定手段によって自車両が旋回中でないと判定されたとき、前記制動力を前後輪に所定の比率で分配する制動力分配手段を有する、ことを特徴とする車両制動制御装置。
  14. 請求項1乃至13のいずれか一項記載の車両制動制御装置であって、
    前記燃料遮断の所定範囲を、アクセルペダルが燃料遮断位置から所定量戻された位置からアクセル開度の全閉となる位置までの間とする、ことを特徴とする車両制動制御装置。
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