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JP3922800B2 - 抽出用フィルター - Google Patents

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JP3922800B2
JP3922800B2 JP15447398A JP15447398A JP3922800B2 JP 3922800 B2 JP3922800 B2 JP 3922800B2 JP 15447398 A JP15447398 A JP 15447398A JP 15447398 A JP15447398 A JP 15447398A JP 3922800 B2 JP3922800 B2 JP 3922800B2
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  • Apparatus For Making Beverages (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は抽出用フィルターに関し、さらに詳しくは被抽出物、特にコーヒー粉末に熱湯を注いで成分を抽出する際に、抽出初期に被抽出物を蒸らすための熱湯の供給や蒸らし時間等を考慮することなく、容易に美味しい成分を抽出することができる抽出用フィルターに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来よりコーヒーを簡便に抽出する方法としては、ドリップ式による方法が一般的に採用されている。この方法は、フィルターをロート型保持具に装着し、コーヒー粉末を入れ、これに熱湯を注いで成分抽出するものであり、簡便にコーヒーを抽出することができる利点があるが、熱湯供給のコントロールが難しく、常に安定した美味しいコーヒーを抽出できないという欠点があった。一般に、美味しいコーヒーを抽出するためには、抽出初期に少量の熱湯をコーヒー粉末に供給して保持させ、一定時間蒸らすのがよいとされている。
【0003】
従来のフィルターの場合には、フィルターにコーヒー粉末を入れた後、少量の熱湯を、フィルターから滴下しない程度の量で供給し、その状態に保持してコーヒー粉末を蒸らし、次いで必要な量の熱湯を供給して成分抽出を行うという方法が採られている。しかし、ポットからフィルターに直接熱湯を供給する場合、抽出初期に供給する熱湯をフィルターから滴下しない程度の量に調節するのは難しく、また供給した後の蒸らし時間も各人の感覚に頼っているため、抽出成分のバラツキが大きく、常に美味しいコーヒーが抽出できないという問題があった。特に、家庭や仕事場等で電気ポットなどから熱湯を供給する場合には、熱湯の供給量や供給速度の調節ができないため、美味しいコーヒーを抽出するのが難しいというのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、上記従来技術の問題を解決し、コーヒー等の被抽出物に熱湯を注いで所望成分を抽出する際に、抽出初期に該被抽出物を蒸らすための熱湯の供給量や蒸らし時間等を考慮することなく、一度の給湯で容易に所望成分を抽出することができる抽出用フィルターを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、特定の目付を有するフィルター材に特定量の樹脂を付着させることにより、抽出初期から多量の熱湯を被抽出物の入ったフィルターに供給しても熱湯は直ちに流れ出すことがなく、熱湯をフィルター内に保持させて該被抽出物を均一に蒸らすことができ、一方、一定時間経過後には熱湯はフィルターから容易に通過することを見出し、本発明に到達したものである。
本発明で特許請求される発明は以下のとおりである。
【0006】
(1)開口部を有する抽出容器であって、該抽出容器の少なくとも底部が、40〜500g/m2 の目付を有し、かつ0.01〜20g/m2 の樹脂が塗布されたフィルター材からなり、該抽出容器に被抽出物を入れて前記フィルター材にかかる水圧が30mmH2 Oとなるように所定温度のお湯を注いだとき、該フィルター材から抽出液の落下が開始するまでの時間が2〜120秒となるように、前記フィルター材の目付および樹脂の塗布量を調整したことを特徴とする抽出用フィルター。
(2)前記抽出容器が袋状の容器であることを特徴とする(1)記載の抽出用フィルター。
(3)前記抽出容器が一体成形された容器であることを特徴とする(1)記載の抽出用フィルター。
【0007】
(4)前記フィルター材が、紙、不織布または織布からなることを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の抽出用フィルター。
(5)前記フィルター材が、ポリエステル繊維で構成されていることを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載の抽出用フィルター。
(6)前記樹脂が、シリコーン樹脂であることを特徴とする(1)ないし(5)のいずれかに記載の抽出用フィルター。
(7)前記被抽出物がコーヒー粉末であり、前記所定温度が約90℃であることを特徴とする(1)ないし(6)のいずれかに記載の抽出用フィルター。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるフィルター材は、40〜500g/m2 、好ましくは60〜400g/m2 、より好ましくは100〜300g/m2 の目付を有する、紙、織布または不織布からなり、かつ、フィルター材の樹脂塗布量は、0.01〜20g/m2 、好ましくは、0.05〜15g/m2 、より好ましくは0.1〜10g/m2 である。
フィルター材の目付が40g/m2 未満では、熱湯を注いだときにコーヒー粉末が熱湯とともに流れ出し、コーヒーの抽出ができなくなり、500g/m2 を超えると熱湯の通液性が低下し、迅速なコーヒー抽出ができない。
また樹脂の塗布量が0.01g/m2 未満では、フィルター材のぬれ性の改善が不十分で、熱湯の供給初期にフィルター内に熱湯を保持させてコーヒー粉末を均一に蒸らすことができず、また20g/m2 を超えると熱湯の通液性が低下し、迅速なコーヒーの抽出ができない。
【0009】
フィルター材の厚みは、通液性、コスト等の点から、0.1〜1.0mmの範囲が好ましく、より好ましくは0.2〜0.8mmである。またフィルター材の見かけ密度は0.1〜0.6g/cm3 の範囲が好ましく、より好ましくは0.2〜0.5g/cm3 である。フィルター材の見かけ密度および樹脂塗布量が同じ場合、低目付のフィルター材を用いる程、抽出速度が速くなり、抽出を開始する時間も短くなる。従って、フィルター材の見かけ密度や厚みをも考慮して後述するフィルター材の抽出性能が得られるように、上記した範囲内でフィルター材の目付および樹脂塗布量を選定するのが好ましい。
【0010】
本発明において、フィルター材としては、パルプなどを原料とした抄造方式で得られる熱湯に溶けない紙、天然繊維、化学繊維、合成繊維などからなる織布または不織布などを用いることができる。これらのうち、通液性、コスト、加工性などの点から、不織布が特に好ましい。
不織布を構成する繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリアミド繊維、これらの複合繊維または共重合繊維などが用いられる。これらの繊維の短繊維、長繊維またはこれらの混合繊維は、単一でまたは2種以上を混合して用いることができ、公知のスパンポンド法、ニードルパンチ法、サーマルボンド法などにより不織布とされる。強度、剛性などの点からはスパンボンド法による部分熱圧着の長繊維不織布が好ましい。これらの不織布は積層して用いてもよい。また不織布を構成する繊維の平均繊維径は0.01〜20デニールが好ましく、より好ましくは0.5〜10デニールである。さらに不織布を凹凸金型などを用い、例えば温度80〜200℃に加熱させて熱プレス成型により一体成形して抽出用フィルターとする場合には、加熱成型温度での不織布の破断伸度が通常50%以上、好ましくは70%〜400%である。
【0011】
またフィルター材に塗布される樹脂としては、シリコーン系樹脂、シリコーン系オイル、フッ素系樹脂、植物性油、メチルセルロース、カルボキシセルロース、水溶性セルロース、澱粉、多糖類などを用いることができるが、熱湯に溶解せず、またぬれ性が変えられる点から、シリコーン系樹脂が特に好ましい。フィルター材へのこれらの樹脂の塗布は、公知の方法、例えば、浸積式、グラビヤ式、キスロール式、コーテング式、スプレー式などで行うことができる。
【0012】
フィルター材に付与される樹脂は、フィルター材の熱湯に対するぬれ性を改善する。すなわち、熱湯を供給した初期には、熱湯の通液性を阻害し、コーヒー粉末が均一に蒸れる間フィルター内に熱湯を留まらせ、かつ一定時間経過後には良好な通液性を確保する特性を有する。一定時間経過後に抽出液の良好な通液性が得られる理由は定かではないが、被抽出物の抽出成分を含む抽出液がフィルター材の繊維内部に浸透して熱湯の通液性を良好ならしめるものと考えられる。
樹脂が塗布されたフィルター材表面の表面張力は、例えばポリエステル繊維の場合、40〜60dyn/cmの範囲が好ましく、より好ましくは45〜55dyn/cmである。
【0013】
本発明において、上記フィルター材を用いた抽出容器に被抽出物を入れてフィルター材にかかる水圧が30mmH2 Oとなるように所定温度の熱湯を注いだとき、該フィルター材から抽出液の滴下が開始するまでの時間(以下、単に抽出開始時間という)が2〜120秒であることが必要である。
このようなフィルター材の被抽出物に対する抽出性能は、上述したフィルター材の目付および該フィルター材に塗布する樹脂の塗布量を調整することにより得ることができる。
【0014】
前記水圧を30mmH2 Oに規定したのは、抽出容器に熱湯を供給するときの液深が3〜5cmと想定したことによる。
前記熱湯の所定温度は、抽出用粉末の最適抽出温度であり、例えば、コーヒー粉末の場合は約90℃、日本茶の場合は約60〜80℃の範囲の温度である。また紅茶の場合には約80〜90℃である。
前記フィルター材の抽出開始時間が2秒未満のものでは、抽出用粉末の蒸らし時間が短すぎて均一な蒸らしができず、美味しい抽出成分の抽出ができない。また120秒を超えると抽出速度が遅くなり、迅速な抽出ができない。好ましい抽出開始時間は5〜60秒である。なお、抽出が開始された後は残りの必要な量の熱湯を適宜供給すればよい。
【0015】
本発明における抽出用フィルターは、上記フィルタ材を用いたものであればその形状や形態には特に制限されない。例えば、フィルター材を開口部を有する容器の少なくとも底部に用いたもの、フィルター材を開口部を有する袋状としたもの、さらにフィルター材を一体成形したものを挙げることができる。抽出液を入れる容器の大きさは、被抽出物の量に応じて適宜選定することができ、例えば一人分のコーヒーを抽出する場合には、通常、容量120〜200ccで深さが50〜80mmとされる。
【0016】
フィルター材を抽出容器の底部に用いる場合には、例えば、筒状のプラスチックの底部にシート状のフィルター材を接着させるか、取り付け部材に把持させて得ることができる。また袋形状の容器とする場合は、シート状のフィルター材を接着剤や粘着剤を用いて製袋する方法、熱シール方式、超音波方式などにより開口部を有する平袋形状、ガゼット形状などに製袋して得ることができる。この場合は、抽出液を入れる容器(コップ)の上に吊るすか、該袋形状がセットできるプラスチック製の抽出容器にセットして抽出用粉末を入れて抽出が行われる。さらにフィルター材を一体成形する場合には、例えば、温度80〜200°Cにシート状のフィルター材を加熱し、凹凸金型などにより加熱プレス成型加工して得ることができる。
熱湯を供給する際のフィルター内の抽出用粉末の量は、該粉末の膨潤性および蒸れ性などの点から、容器の容量の1/2以下とするのが好ましく、例えば、一人分のコーヒーを抽出する場合には通常8〜10gの粉末が用いられる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
公知のスパンボンド方式で得たポリエステル不織布(温度160℃の破断伸度が210%、目付150g/m2 、厚み0.35、通気性55cm3/cm2.sec)を、シリコーン系樹脂( 東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、エマルジョン型シリコーン樹脂SYL−OFF7800とSYL−OFF7801を1:1で混合) の10重量%水溶液に浸漬し、脱水、乾燥して本発明のフィルター材を得た。シリコーン系樹脂の付着量は2g/m2 であった。
得られたフィルター材を、口径70mmφ深さ60mmの筒状プラスチック底部に接着し抽出容器を得た。該抽出容器にレギュラーコーヒー粉末(中細挽)10gを入れ、90℃の熱湯をフィルター材にかかる水圧が約30mmH2 Oになるまで熱湯を一気に注いだ。このときの抽出開始時間を測定したところ18秒であった。その後80ccの熱湯を注ぎ、一人分のコーヒー(約170cc)の抽出を完了した。得られたコーヒーは香り、味、色ともに良好であった。
【0018】
また同様の抽出容器を用いて、水圧40mmH2 Oの条件で同様に成分抽出を行ったが、抽出開始時間は15秒であった。
さらに同様の抽出容器を用いて、水圧50mmH2 Oの条件で同様に成分抽出を行ったが、抽出開始時間は12秒であった。
【0019】
実施例2
実施例1で用いたフィルター材を幅10cmおよび高さ8cmの開口部を有する平袋になるように2方向を熱シールして平袋形状の抽出用フィルターを得た。これをコップの上に吊り下げ固定し、レギュラーコーヒー粉末(中細挽)10gを入れ、90℃の熱湯を水圧約30mmH2 Oになるまでを一気に注いだ。そのときの抽出開始時間を測定したところ11秒であった。その後、100ccの熱湯を注ぎ、一人分のコーヒー(約150cc)の抽出を完了した。得られたコーヒーは香り、味、色ともに良好であった。
【0020】
実施例3
実施例1で用いたフィルター材を、上部径65mm、底部径45mm、深さ45mmの円錐台形状の金型を温度160℃に加熱し、加熱プレス成形加工を行い、一体成形した抽出用フィルターを製造した。次いでこのフィルターにレギュラーコーヒー粉末(中細挽)10gを入れ、90℃の熱湯を水圧約30mmH2 Oになるまで一気に注ぎ、抽出開始時間を測定したところ9秒であった。その後、90ccの熱湯を続いて注ぎ、一人分のコーヒー(約130cc)の抽出を完了した。得られたコーヒーは香り、味、色ともに良好であった。
さらに同様の抽出容器を用いて、水圧40mmH2 Oの条件で同様に成分抽出を行ったが、抽出開始時間は7秒であり、得られたコーヒーは香り、味、色ともに良好であった。
【0021】
実施例4
公知のスパンボンド方式でポリエステル不織布を得た。(繊度4.0デニール、目付250g/m2 、厚み0.57mm、通気性27cm3 /cm2 ・sec、温度160℃の破断伸度230%)次に、不織布にシリコーン系樹脂(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、エマルジョン型シリコーン樹脂SYL−OFF7900と7922を100:10で混合)を用いて、グラビヤ方式で樹脂を塗布させ、塗布量が0.05g/m2 、0.1g/m2 および0.5g/m2 である3種の本発明のフィルター材を得た。
得られたフィルター材を、口径70mmφ深さ60mmの筒状プラスチック底部に接着し、抽出容器を得た。該抽出容器にレギュラーコーヒー粉末(中細挽)10g入れてから90℃熱湯を一気に注いで、水圧と抽出開始時間を測定した。その結果を表1に示した。
【0022】
【表1】
Figure 0003922800
【0023】
表1から、フィルター材の樹脂塗布量を調整することにより、抽出液の落下が開始するまでの時間が変化することが示される。またお湯の注ぐ水圧によっても抽出開始時間が変わり、水圧を高くすると抽出液の落下開始するまでの時間が少なくなることが示される。
【0024】
比較例1
実施例1において、不織布にシリコーン系樹脂を塗布しないフィルターを用いた以外は実施例1と同様の方法でコーヒーの抽出を行ったが、抽出開始時間は1秒未満であり、熱湯を注ぐと同時に抽出が開始されたため、コーヒー粉末を蒸らす時間をとることができず、抽出時間も短くなった。従って、得られたコーヒーは、薄く、香り、味、色などが十分でなかった。
【0025】
【発明の効果】
本発明の抽出用フィルターによれば、特定の目付を有するフィルター材に特定量の樹脂を付着させることにより、抽出初期から多量の熱湯を被抽出物(レギュラーコーヒー粉末、日本茶、紅茶等)の入ったフィルターに供給しても熱湯は直ちに流れ出すことがなく、熱湯をフィルター内に保持させて被抽出物を均一に蒸らすことができ、一方、一定時間経過後には熱湯はフィルターから容易に通過することができるため、抽出初期に被抽出物を蒸らすための熱湯の供給量や蒸らし時間等を考慮することなく、常に容易に美味しい抽出成分を抽出することができる。

Claims (7)

  1. 開口部を有する抽出容器であって、該抽出容器の少なくとも底部が、40〜500g/m2 の目付を有し、かつ0.01〜20g/m2 の樹脂が塗布されたフィルター材からなり、該抽出容器に被抽出物を入れて前記フィルター材にかかる水圧が30mmH2 Oとなるように所定温度のお湯を注いだとき、該フィルター材から抽出液の落下が開始するまでの時間が2〜120秒となるように、前記フィルター材の目付および樹脂の塗布量を調整したことを特徴とする抽出用フィルター。
  2. 前記抽出容器が袋状の容器であることを特徴とする請求項1記載の抽出用フィルター。
  3. 前記抽出容器が一体成形された容器であることを特徴とする請求項1記載の抽出用フィルター。
  4. 前記フィルター材が、紙、不織布または織布からなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の抽出用フィルター。
  5. 前記フィルター材が、ポリエステル繊維で構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の抽出用フィルター。
  6. 前記樹脂が、シリコーン樹脂であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の抽出用フィルター。
  7. 前記被抽出物がコーヒー粉末であり、前記所定温度が約90℃であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の抽出用フィルター。
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