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JP3909920B2 - 銅および銅合金の表面処理法 - Google Patents

銅および銅合金の表面処理法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばプリント配線板の製造に有用な銅および銅合金(以下、単に銅という)の表面処理法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子機器用のプリント配線板としては、従来からFR−4グレードの基材を用いた配線板(例えば銅箔、プリプレグ、内層用配線板、プリプレグ、銅箔、を順に積層したもの)が広く使用されている。しかしながら、近年電子部品実装の高密度化が急速に進み、電子部品の発熱が増大しているため、FR−4グレードの基材では耐熱性が不充分になってきている。また、プリント配線板を流れる信号の高周波数化にともない、基材の低誘電正接化と低誘電率化が求められている。
【0003】
そこで、プリント配線板の耐熱性を向上させるため、また高周波特性を向上させるため、プリプレグの含浸樹脂を、通常のビスフェノールA型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂から、耐熱エポキシ樹脂、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリイミド等のガラス転移温度の高い樹脂に代えたものが使用されるようになってきている。また、ビルドアップ法によりプリント配線板を製造する場合においても、層間絶縁樹脂としてこれらの高耐熱性樹脂が使用されるようになってきている。しかしながら、これらの高耐熱性樹脂、すなわちガラス転移温度(TMA法による、以下同様)が150℃以上になるような樹脂は、従来から使用されているエポキシ樹脂に比べて硬く、また極性基が少ないため、銅箔との接着性が低い。したがって、例えばプレッシャークッカー試験により加湿した後、さらに加熱するような厳しい試験を行った場合、樹脂と銅箔との解離が生ずる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記問題を解決するため、例えば特開平6−6035号公報には、プリプレグが積層される銅箔の表面を、酸化処理し、ついで還元処理し、さらにアミノシランカップリング剤で処理する方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、銅表面に塗布されたシランカップリング剤は水洗すると洗い流されてしまうため、水洗工程が必要な水平型コンベアで処理することができず、水平型コンベアを使用するプリント配線板の連続製造工程には利用できないという問題がある。
【0006】
また、特開昭61−266241号公報には、プリプレグが積層される銅箔の表面を、酸化処理し、ついで還元処理し、さらにアミノトリアゾール等の溶液で処理する方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、アミノトリアゾールによる処理は、特開平7−258870号公報で指摘されているように、銅箔との接着性をかえって阻害することが判明している。
【0008】
本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであり、ガラス転移温度が高く、銅表面との接着性が低い樹脂を、充分な接着力をもって銅表面に接着できる方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は前述の目的を達成するためになされたものであり、アミノテトラゾール、アミノテトラゾール誘導体から選ばれる化合物を少なくとも0.05%(重量%、以下同様)の濃度で含有する水溶液(以下、第一の水溶液という)、またはアミノテトラゾール、アミノテトラゾール誘導体から選ばれる化合物を少なくとも0.05%の濃度で含有し、かつアミノトリアゾール、アミノトリアゾール誘導体から選ばれる化合物を少なくとも0.1%の濃度で含有する水溶液(以下、第二の水溶液という)を、ガラス転移温度が150℃以上の樹脂が接着される銅の表面に塗布することを特徴とする銅の表面処理法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の方法により処理される銅表面は、TMA法により測定したガラス転移温度が150℃以上の樹脂が接着される表面である。前記TMA法は、JIS C 6481に規定されている。
また、前記銅表面には、樹脂との接着性をさらに向上させるために、マイクロエッチング法、電気めっき法、無電解めっき法、酸化法(ブラックオキサイド、ブラウンオキサイド)、酸化・還元法、ブラシ研磨法、ジェットスクラブ法等により、粗化されていてもよい。前記マイクロエッチング法としては、例えば硫酸・過酸化水素タイプエッチング剤、過硫酸塩タイプエッチング剤、塩化銅タイプエッチング剤、塩化鉄タイプエッチング剤等によるエッチング処理の他、メック(株)製のメックエッチボンドCZ−5480、同CZ−8100等によるエッチング処理があげられる。
【0011】
前記ガラス転移温度が150℃以上の樹脂に特に限定はないが、例えばプリント配線板用としては耐熱エポキシ樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド・トリアジン樹脂、ポリフェニレンエーテル等があげられる。本発明の処理法は、接着強度が得られにくい、ガラス転移温度が200℃を越えるような樹脂との接着に対しても優れた効果が得られる。
【0012】
本発明の処理法では、ガラス転移温度が150℃以上の樹脂との接着性を向上させるために、前記表面に、アミノテトラゾール、アミノテトラゾール誘導体から選ばれる化合物を少なくとも0.05%の濃度で含有する水溶液(第一の水溶液)、またはアミノテトラゾール、アミノテトラゾール誘導体から選ばれる化合物を少なくとも0.05%の濃度で含有し、かつアミノトリアゾール、アミノトリアゾール誘導体から選ばれる化合物を少なくとも0.1%の濃度で含有する水溶液(第二の水溶液)が塗布される。
【0013】
まず、本発明の処理法に用いる第一の水溶液を説明する。
前記アミノテトラゾール誘導体としては、例えば1−メチル−5−アミノテトラゾール、1−エチル−5−アミノテトラゾール、α−ベンジル−5−アミノテトラゾール、β−ベンジル−5−アミノテトラゾール、1−(β−アミノエチル)テトラゾール等があげられるが、本発明の効果を発現させうる限り、他の置換基を有していてもよい。また、水和物であってもよい。前記アミノテトラゾールおよびアミノテトラゾール誘導体のうちでは、アミノテトラゾールや短鎖のアルキル基を有するものが好ましい。
【0014】
第一の水溶液中のアミノテトラアゾール、アミノテトラゾール誘導体から選ばれる化合物の濃度は、少なくとも0.05%、好ましくは0.1〜5%、さらに好ましくは0.1〜3%である。前記濃度が0.05%未満では、前記樹脂との接着性を向上させる効果が充分得られなくなる。なお、前記濃度に特に上限はないが、5%を超えても濃度の増加に伴う効果の向上が得られず、不経済になるだけである。
【0015】
第一の水溶液には、さらにアミノテトラゾール等の水溶液化を補助したり、銅表面を均一に処理する等のため、アルコール等の水溶性の溶剤や、ポリエーテル、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド共重合体(プルロニックタイプ)、アミノ系ポリエーテル等の非イオン系界面活性剤や、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム等の金属塩や、アンモニア等を適宜添加してもよい。
【0016】
次に第二の水溶液を説明する。
第二の水溶液を用いた場合、アミノトリアゾールやアミノトリアゾール誘導体が、アミノテトラゾールやアミノテトラゾール誘導体とともに配合されるため、前記特開平7−258870号公報に開示されているような樹脂との接着性を阻害することはなく、逆に向上させることができ、さらにこの効果に加え、アミノトリアゾールやアミノトリアゾール誘導体により銅表面に優れた耐熱性と耐湿性とを付与することができる。
第二の水溶液に用いるアミノテトラゾール誘導体としては、第一の水溶液と同様のものが用いられる。また、アミノトリアゾール誘導体の好ましいものとしては、例えば3−アミノ−5−メチルトリアゾール、3−アミノ−5−エチルトリアゾール等があげられるが、本発明の効果を発現させうる限り、他の置換基を有していてもよい。
【0017】
第二の水溶液中のアミノテトラアゾールおよび(または)アミノテトラゾール誘導体の濃度は、少なくとも0.05%、好ましくは0.1〜5%、さらに好ましくは0.3〜3%である。前記濃度が0.05%未満では、前記樹脂との接着性を向上させる効果が充分得られなくなる。なお、前記濃度に特に上限はないが、5%を超えても濃度の増加に伴う効果の向上が得られず、不経済になるだけである。
【0018】
第二の水溶液中のアミノトリアゾールおよび(または)アミノトリアゾール誘導体の濃度は、少なくとも0.1%、好ましくは0.3〜5%、さらに好ましくは0.3〜3%である。前記濃度が0.1%未満では、銅表面に耐熱性および耐湿性を付与する効果が充分得られなくなる。なお、前記濃度に特に上限はないが5%を超えても濃度の増加に伴う効果の向上が得られず、不経済になるだけである。
【0019】
第二の水溶液には、第一の水溶液と同様に水溶性の溶剤、非イオン系界面活性剤、金属塩、アンモニア等を適宜添加してもよい。
【0020】
前記第一、第二の水溶液を銅表面に塗布する方法にも特に限定はなく、例えばスプレー(シャワー)法、浸漬法等を用いて塗布した後、水洗し、乾燥させればよい。
【0021】
以上のように、本発明の処理法によれば、ガラス転移温度の高い樹脂でも銅表面との接着性が向上するため、例えば薄物多層プリント配線板と呼ばれる1層あたり厚さ0.1mm以下の基材を4層以上積層したプリント配線板や、半導体パッケージ用基板等のプリント配線板の製造に極めて有用である。
また、プリント配線板の製造においては、両面に銅の回路パターンを有するプリント配線板の片面に樹脂を塗布して熱硬化させた(この時他方の面の銅回路パターンは樹脂で覆われていない)後、他方の面に樹脂を塗布して熱硬化させる場合もあり、その際第二の水溶液を用いることにより、樹脂で覆われていない銅表面に耐熱性と耐湿性とが付与されて優れた表面保護効果が得られる。更に、銅と樹脂との接着が高温で行われる場合にも優れた表面保護効果が得られる。これらの効果は、銅表面がマイクロエッチング等によって粗化され、酸化されやすくなっている場合に特に顕著である。
尚、本発明の処理法によれば、従来のエポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂)のようにガラス転移温度が150℃未満の樹脂に対しても従来以上の高い剥離強度が得られ、更に第二の水溶液を用いる場合には耐熱性や耐湿性が付加される。
【0022】
【実施例】
以下に実施例より、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1〜6および比較例1〜4
(層間剥離試験)
プリント配線板用銅張積層板の表面の銅を、メックエッチボンドCZ−8100(メック(株)製)にて約3μmエッチングした。エッチング量は、溶解した銅の重量と表面積と比重とから換算した値である。次に、表1に示す組成の水溶液を調製し、この液中にエッチングされた積層板を20℃で15秒間浸漬した後、水洗し、乾燥した。比較例1はこの水溶液による処理を行わなかった。
【0023】
次に、得られた積層板にガラス転移温度が170〜220℃のビスマレイミド・トリアジン樹脂を含浸樹脂とする厚さ0.1mmのプリプレグ(三菱瓦斯化学(株)製のGHPL830)2枚を重ね、加熱しながらプレスした。
【0024】
得られた積層板を121℃、100%RH、2気圧の条件下で2時間劣化させ、ついで260℃の溶融はんだに1分間浸漬した後、樹脂と銅との層間剥離(銅箔の樹脂からの浮き上がり)を調べた。結果を表1に示す。〇は浮きが全く発生していない、△はミーズリング程度の浮き上がり(微小な斑点状の膨れ)が発生、×は浮き上がった部分が多い、××は浮き上がった部分が非常に多いを示す。
【0025】
(引きはがし強さ試験)
厚さ70μmの電解銅箔の表面を、メックエッチボンドCZ−8100(メック(株)製)にて約3μmエッチングした。次に、表1に示す組成の水溶液に、エッチングされた銅箔を20℃で15秒間浸漬したのち、水洗し、乾燥した。
【0026】
次に、得られた銅箔に前記ビスマレイミド・トリアジン樹脂を含浸樹脂とするプリプレグ2枚を重ね、加熱しながらプレスした。
【0027】
得られた積層体の銅箔の引きはがし強さを、JIS C 6481に準拠して評価した。結果を表1に示す。
【0028】
(耐熱性試験)
前記引きはがし強さ試験と同様に、電解銅箔の表面をエッチングし、表1に示す組成の水溶液で処理し、水洗し、乾燥した。次に、得られた銅箔を130℃で1時間加熱し、表面の変色を調べた。結果を表1に示す。〇は変色なし、△は変色の度合いが小さい、×は変色の度合いが大きい、××は変色が激しいを示す。
【0029】
(耐湿性試験)
前記引きはがし強さ試験と同様に、電解銅箔の表面をエッチングし、表1に示す組成の水溶液で処理し、水洗し、乾燥した。次に、得られた銅箔を50℃、95%RHの条件下で18時間放置し、表面の変色を調べた。結果を表1に示す。〇は変色なし、△は変色の度合いが小さい、×は変色の度合いが大きい、××は変色が激しいを示す。
【0030】
【表1】
Figure 0003909920
【0031】
実施例7〜9および比較例5〜8
プリプレグとして、ガラス転移温度が173〜183℃の耐熱エポキシ樹脂を含浸樹脂とする厚さ0.1mmのFR−5グレード相当のプリプレグ(日立化成工業(株)製のMCL−E−679)を用いた他は、実施例1〜3と同様にして層間剥離試験および引きはがし強さ試験を行った。結果を表2に示す。比較例5は水溶液による処理を行わなかった。
【0032】
【表2】
Figure 0003909920
【0033】
表1及び表2に示す結果から、本発明の第一の水溶液または第二の水溶液を使用した各実施例では、剥離強度、引きはがし強さともに優れ、特に第二の水溶液をした場合には、更に耐熱性と耐湿性とが付加されることが確認された。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ガラス転移温度が高く、銅表面との接着性が低い樹脂を、充分な接着力をもって銅表面に接着でき、接着力とともに耐熱性や耐湿性に優れた銅−樹脂複合体が得られる。本発明は、特に耐熱性が要求されるプリント配線板の製造に好適である。

Claims (4)

  1. アミノテトラゾール、アミノテトラゾール誘導体から選ばれる化合物を少なくとも0.05重量%の濃度で含有し、かつアミノトリアゾール、アミノトリアゾール誘導体から選ばれる化合物を少なくとも0.1重量%の濃度で含有する水溶液を、銅または銅合金からなり、TMA法により測定したガラス転移温度が150℃以上の樹脂が接着される表面に塗布することを特徴とする銅および銅合金の表面処理法。
  2. 前記アミノテトラゾール、アミノテトラゾール誘導体から選ばれる化合物を0.1〜5重量%の濃度で含有し、前記アミノトリアゾール、アミノトリアゾール誘導体から選ばれる化合物を0.3〜5重量%の濃度で含有する請求項1に記載の銅および銅合金の表面処理法。
  3. 前記ガラス転移温度が150℃以上の樹脂は、耐熱エポキシ樹脂、ポリイミド、ビスマレイミド・トリアジン樹脂及びポリフェニレンエーテルから選択される少なくとも1つである請求項1に記載の銅および銅合金の表面処理法。
  4. 前記銅または銅合金の表面が粗化されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の銅および銅合金の表面処理法。
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