JP3975305B2 - エポキシ樹脂組成物および成形体 - Google Patents
エポキシ樹脂組成物および成形体 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シラン化合物を配合したエポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、エポキシ樹脂は、電子材料、電気絶縁材料、一般産業機器、自動車、エネルギー変換機器などの広い産業分野において、塗料、成形物、接着剤などの原材料として用いられている。
【0003】
しかしながら、エポキシ樹脂は、耐熱温度、誘電率、難燃性などの特性において、十分満足すべきものとは言えないので、これらの特性をより一層向上させる必要がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、エポキシ樹脂の耐熱温度、誘電率、難燃性などの特性を向上させることができる新たなエポキシ樹脂組成物を提供することを主な目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の様な技術の現状に留意しつつ、研究を重ねた結果、エポキシ化合物にシラン化合物を配合する場合には、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記に示す樹脂組成物およびその成形物を提供するものである。
【0007】
1.Si-Si結合を有するシラン化合物、エポキシ化合物および硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物であって、
前記シラン化合物が、ネットワーク構造を有するポリシランであることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【0008】
2.前記シラン化合物が、
一般式 (RSi) n (2)
(式中、 R は、同一或いは相異なって、アルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。nは、 4 〜 10000 である。)で示されるシリコンネットワークポリマーである、上記項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0009】
3.前記シラン化合物が、
一般式 (R ’ 2 Si) x (R ’ Si) y Si z (3)
(式中、 R ’は、アルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。 R ’は、全てが同一でも或いは2つ以上が異なっていてもよい。 x 、 y および z の和は、 5 〜 10000 である。)で示される Si-Si 結合を骨格とするネットワークポリマーである、上記項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0010】
4.Si-Si結合を有し、かつネットワーク構造を有するポリシラン、エポキシ化合物および硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物を硬化処理することにより得られる硬化エポキシ樹脂組成物。
【0011】
5.前記ポリシランが、
一般式 (RSi) n (2)
(式中、 R は、同一或いは相異なって、アルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。nは、 4 〜 10000 である。)で示されるシリコンネットワークポリマーである、上記項4に記載の硬化エポキシ樹脂組成物。
【0012】
6.前記ポリシランが、
一般式 (R ’ 2 Si) x (R ’ Si) y Si z (3)
(式中、 R ’は、アルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。 R ’は、全てが同一でも或いは2つ以上が異なっていてもよい。 x 、 y および z の和は、 5 〜 10000 である。)で示される Si-Si 結合を骨格とするネットワークポリマーである、上記項4に記載のエポキシ樹脂組成物。
【0013】
7.上記項4〜6のいずれかに記載の硬化エポキシ樹脂組成物からなる成形体。
【0014】
8.形状が塗膜である上記項7に記載の成形体。
【0015】
9.上記項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を基材表面に塗布した後、硬化させることを特徴とする塗膜を有する製品乃至物品の製造方法。
【0016】
10.上記項9に記載の方法により得られる硬化塗膜を有する製品乃至物品。
【0017】
11.硬化塗膜が、表面保護膜である上記項10に記載の製品乃至物品。
【0018】
12.表面保護膜が、耐食性保護膜、耐熱性保護膜或いは難燃性保護膜である上記項11に記載の製品乃至物品。
【0019】
【発明の実施の形態】
本明細書において使用する「アルキル基」、「アルケニル基」および「アリール基」は、以下に定義する意味を有する。
【0020】
「アルキル基」とは、1価の直鎖状、環状または分岐状の炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基をいう。
【0021】
「アルケニル基」とは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する1価の直鎖状、環状または分岐状の炭素数1〜14の脂肪族炭化水素基をいう。
【0022】
「アリール基」とは、少なくとも1つの置換基を有するかまたは置換基を有しない芳香族炭化水素基をいう。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ化合物とシラン化合物とを含有している。
【0024】
本発明において、エポキシ化合物とシラン化合物とからなる組成物(以下単に「混合物」ということがある)中で使用するシラン化合物としては、Si-Si結合を有する直鎖状、環状および分岐状の化合物であれば特に限定されない。また、分子内にSi-C結合、Si-O結合、Si-N結合、Si-O-M結合(M=Ti、Zr)、Si-B結合を有していても良い。このような化合物としては、例えば、ポリシランを挙げることができる。
【0025】
ここで、ポリシランとは、化学構造において主となる骨格構造が、
一般式 (R2Si)m (1)
(式中、Rは、同一或いは相異なって、アルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。mは、2〜10000である。)で示される直鎖状ポリシランおよび環状ポリシラン、
一般式 (RSi)n (2)
(式中、Rは、同一或いは相異なって、アルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。nは、4〜10000である。)で示されるシリコンネットワークポリマー、ならびに
一般式 (R2Si)x(RSi)ySiz (3)
(式中、Rは、アルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。Rは、全てが同一でも或いは2つ以上が異なっていてもよい。x、yおよびzの和は、5〜10000である。)で示されるSi-Si結合を骨格とするネットワークポリマー(網目状ポリマー)
からなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーである。
【0026】
これらのポリマー中では、一般式(2)および(3)で表されるネットワーク構造を有するポリシランがより好ましい。
【0027】
これらのポリマーは、それぞれの構造単位を有するモノマーを原料として以下の方法により製造することができる。すなわち、アルカリ金属の存在下でハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「キッピング法」J.Am.Chem.Soc.,110,124(1988)、Macromolecules,23,3423(1990))、電極還元によりハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1161(1990)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,897(1992))、金属触媒の存在下にヒドロシラン類を脱水素縮重合させる方法(特開平4−334551号公報)、ビフェニルなどで架橋されたジシレンのアニオン重合による方法(Macromolecules,23,4494(1990))、環状シラン類の開環重合による方法などにより、製造することができる。
【0028】
また、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中または空気中で、上記ポリシランを300℃以上に熱処理して得られるSi-Si結合を含むケイ素系高分子を用いることもできる。
【0029】
本発明によるエポキシ樹脂組成物において用いられるエポキシ化合物としては、化学構造内に少なくとも1つのエポキシ基を有する直鎖状、環状および分岐状の化合物であれば特に限定されない。このような化合物としては、例えば、1,2,3,4-ジエポキシブタン、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジル-4-グリシジルオキシアニリン、1,2,5,6-ジエポキシシクロオクタン、および以下に挙げるようなエポキシ化合物などを挙げることができる。
【0030】
【化1】
【0031】
【化2】
【0032】
【化3】
【0033】
【化4】
【0034】
【化5】
【0035】
本発明による混合物中のシラン化合物とエポキシ化合物のと配合割合は、エポキシ化合物1重量部に対し、通常シラン化合物0.01〜100重量部程度であり、より好ましくは0.05〜100重量部程度であり、より好ましくは0.1〜10重量部程度である。
【0036】
本発明において、硬化樹脂組成物を得るために、加熱処理および/または光照射処理を行なう。
【0037】
本発明の樹脂組成物を加熱処理する場合に使用する硬化剤としては、1,2-ジシリルエタン、エチルシリケート、メチルシリケートなどのポリアルコキシシラン類などのケイ素化合物;テトラアルコキシチタンなどのチタン化合物;フェニルジクロロボランなどのホウ素化合物;ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルパーオキサイド、アゾイソブチロニトリルなどのラジカルを発生する化合物;トリスメトキシアルミニウム、トリスフェノキシアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物;トリエチルアミン、ピリジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのアミン化合物;ダイマー酸ポリアミドなどのアミド化合物;無水フタル酸、テトラヒドロメチル無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水メチルナジック酸などの酸無水物;フェノールノボラックなどのフェノール類;ポリサルファイドなどのメルカプタン化合物;3フッ化ホウ素・エチルアミン錯体などのルイス酸錯体化合物;クロロホルム、ジクロロメタン、トリクロロメタンなどのハロゲン化物;ナトリウムエトキシドなどの塩基性化合物などを挙げることができる。これらの中では、アミン化合物、酸無水物、フェノール類などがより好ましい。硬化剤の使用量は、エポキシ化合物100重量部に対し、通常0.1〜100重量部程度であり、より好ましくは1〜90重量部程度である。
【0038】
また、樹脂組成物を光照射処理する場合に使用する硬化剤として、光酸発生剤を配合することができる。光酸発生剤としては、例えば、ピリジニウム塩(N-エトキシ-2-メチルピリジニウム-ヘキサフルオロフォスフェート、N-エトキシ-4-フェニルピリジニウム-ヘキサフルオロフォスフェートなど)、スルホニウム塩(例えば、“サンエイドSI-60L”、“サンエイドSI-80L”、“サンエイドSI-100L”などの商標名により、三新化学工業(株)から市販されている)、フェロセン系(例えば、“イルガキュア261”の商標名により、チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社から市販されている)、トリアジン系(例えば、“トリアジンA”、“トリアジンA”などの商標名により、日本シイベルヘグナー社から市販されている)、ヨードニウム塩(例えば、“BBI-101”、“BBI-101”などの商標名により、みどり化学(株)から市販されている)などを用いることができる。さらに、ベンゾフェノンおよびその誘導体、o-ベンゾイル安息香酸エステルおよびその誘導体、アセトフェノンおよびその誘導体、ベンゾイン、ベンゾインエーテルおよびその誘導体、キサントンおよびその誘導体、チオキサントンおよびその誘導体、ジスルフィド化合物、キノン系化合物、ハロゲン化炭化水素基含有化合物、アミン類並びに色素などの光増感剤を添加し得る。
【0039】
光照射処理に際して使用する硬化剤の量は、エポキシ化合物100重量部に対して、0.1〜30重量部程度、好ましくは1〜15重量部程度である。
【0040】
加熱処理を行う場合の温度は、組成物中のシラン化合物のSi-Si結合が解裂する温度未満であれば良く、通常30〜180℃程度、より好ましくは50〜120℃程度である。加熱処理は、好ましくは硬化剤の存在下において、空気などの酸素含有ガス中で或いは窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で行う。
【0041】
光照射処理を行う場合には、硬化剤の存在下に、光源として蛍光灯、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、水素ランプ、重水素ランプ、ハロゲンランプ、ヘリウム−ネオンレーザー、アルゴンレーザー、窒素レーザー、ヘリウム−カドミウムレーザー、色素レーザーなどを使用しつつ、混合物に光を照射する。光照射波長は、通常220〜700nm程度であり、シラン化合物の吸収最大波長以上であることが好ましい。光照射時間は、通常5秒〜120分程度であり、好ましくは20秒〜30分程度である。また、光照射処理も、好ましくは硬化剤の存在下において、空気などの酸素含有ガス中で或いは窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中で行う。
【0042】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、1種または2種以上の無機系充填剤を配合することができる。無機系充填剤としては、ケイ砂、石英、ノバキュライト、ケイ藻土などのシリカ系;合成無定形シリカなどのシリカ系;カオリナイト、雲母、滑石、ウォラストナイト、アスベスト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩系;ガラス粉末、ガラス球、中空ガラス球、ガラスフレーク、泡ガラス球などのガラス体;窒化ホウ素、炭化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ホウ化チタン、窒化チタン、炭化チタンなどの非酸化物系無機物;炭酸カルシウム;酸化亜鉛、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、酸化チタン、酸化ベリリウムなどの金属酸化物;硫酸バリウム、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、フッ化炭素その他の無機物;アルミニウム、ブロンズ、鉛、ステンレススチール、亜鉛などの金属粉末;カーボンブラック、コークス、黒鉛、熱分解炭素、中空カーボン球などのカーボン体などが挙げられる。
【0043】
これら充填剤は、繊維状、針状(ウィスカーを含む)、粒状、鱗片状など種々の形状のものを単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
【0044】
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、三酸化アンチモンなどの難燃助剤;天然ワックス類、合成ワックス類、直鎖脂肪酸およびその金属塩、酸アミド類、エステル類、パラフィン類などの離型剤;カーボンブラック、二酸化チタンなどの顔料;エステル類、ポリオール、ポリサルファイド、ウレタンプレポリマーなどの可塑剤;カルボキシル基末端ブタジエン-アクリロニトリル共重合ゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体などの液状ゴム;シランカップリング剤、チタン系カップリング剤などの表面改質剤;シリコーンオイル、シリコーンゴム、各種プラスチック粉末、各種エンジニアリングプラスチック粉末、ABS樹脂、MBS樹脂の粉末などの低応力化剤などを適宜添加することができる。
【0045】
さらに、本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、分散剤などを配合しても良い。
【0046】
上記の硬化剤、光増感剤、充填剤などの添加物を混合物に配合する場合には、混合前のシラン化合物および/またはエポキシ化合物に或いは加熱処理および/または光処理前の両者の混合物に添加すればよい。
【0047】
本発明の樹脂組成物を用いて得られる成形体は、特に限定されず、シート状、フィルム状、ペレット状、塗膜、塊状、粉状などの任意の形状乃至形態とすることができる。
【0048】
本発明によれば、シラン化合物とエポキシ化合物を含む組成物を基材表面にスプレーコート法、バーコート法、フローコート法、浸漬法、キャスティング法などの公知の手法により塗布するか、或いは圧縮成形、注型成形、トランスファー成形、多孔質基材(セラミック繊維、ガラス繊維、炭素繊維など)への含浸を行った後、加熱処理および/または光照射処理を行うことにより、成形体を得ることができる。
【0049】
混合物の基材表面への塗布は、有機溶媒溶液の形態で行うことができる。この様な有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エタノール、ブタノール、ジメトキシシラン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドメチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジメチルスルホキシド、フェノール類などが例示される。溶液中の混合物濃度も特に限定されるものではないが、通常1〜60w/v%程度であり、より好ましくは10〜40w/v%程度である。
【0050】
基材としては、所定の加熱および/または光照射条件に耐える材料であれば特に限定されず、金属、セラミックス、ガラス、プラスチックなどを用いることができる。
【0051】
【発明の効果】
本発明による樹脂組成物とこれを使用して得られる成形体は、耐熱性、耐ヒートサイクル性、耐酸性、耐有機溶剤性、耐水性、耐湿性、難燃性、紫外線吸収能、撥水性、絶縁性、感光性、成膜性、成形性、基板(金属、セラミックス、ガラス、プラスチックスなど)との密着性などに優れており、且つ低誘電率である。
【0052】
特に、シラン化合物として、ネットワーク構造を有するポリシランを使用する場合には、成形体の耐熱性、耐酸性、耐有機溶剤性、耐水性、耐湿性、難燃性、撥水性などが一層改善される。
【0053】
従って、本発明の樹脂組成物と成形物は、塗料、電気機器の絶縁材、電線被覆材、電子機器の封止材、プリント配線基板用の絶縁膜、配線絶縁膜、表面保護膜、液晶配向膜、摺動部材、自動車部品材料、航空・宇宙用材料、インキ、接着材、粘着材などの多くの用途において、極めて有用である。
【0054】
【実施例】
以下に実施例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明らかにする。
【0055】
参考例1
シラン化合物として電極反応により合成したメチルフェニルポリシラン(平均重合度40)0.5g、エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭チバ(株)製;アラルダイトAER260)0.5gおよび硬化剤としてジエチレントリアミン0.14gをテトラヒドロフラン1mlとトルエン4mlとの混合溶媒中に室温下で溶解・混合させた。この混合物を予めサンドペーパー(#500)により研磨しておいたステンレス鋼板(SUS-304)、銅板(C-1100)およびアルミニウム板(A1050P)にそれぞれフローコーティングした。
【0056】
コーティングされたステンレス鋼板、銅板およびアルミニウム板を空気中100℃で30分加熱処理して、硬化塗膜を形成させ、3種の試料を得た。形成された塗膜の膜厚は、いずれの場合においても、20μmであった。
【0057】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないビスフェノールA型エポキシ樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、難燃性および耐熱性ならびに基材との密着性に優れており、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
【0058】
参考例2
シラン化合物としてメチルフェニルポリシラン(平均重合度40)0.8gを使用し、エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭チバ(株)製;アラルダイトAER260)0.2gを使用する以外は参考例1と同様にして、3種の試料を得た。
【0059】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないビスフェノールA型エポキシ樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、難燃性および耐熱性ならびに基材との密着性に優れており、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
【0060】
参考例3
メチルフェニルポリシラン(平均重合度40)を0.2gとし、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭チバ(株)製;アラルダイトAER260)を0.8gとする以外は参考例1と同様にして、3種の試料を得た。
【0061】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないビスフェノールA型エポキシ樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、難燃性および耐熱性ならびに基材との密着性に優れており、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
【0062】
参考例4
熱処理温度を75℃とする以外は参考例1と同様にして、3種の試料を得た。
【0063】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないビスフェノールA型エポキシ樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、難燃性および耐熱性ならびに基材との密着性に優れており、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
【0064】
参考例5
熱処理雰囲気をアルゴン雰囲気に代えた以外は参考例1と同様にして、3種の試料を得た。
【0065】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないビスフェノールA型エポキシ樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、難燃性および耐熱性ならびに基材との密着性に優れており、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
【0066】
参考例6
エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂に代えてノボラック型エポキシ樹脂(旭チバ(株)製;EPN1180)0.2gを使用し、シラン化合物として平均重合度40のメチルフェニルポリシラン0.8gを使用する以外は参考例1と同様にして、3種の試料を得た。
【0067】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないノボラック型エポキシ樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、難燃性および耐熱性ならびに基材との密着性に優れており、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
【0068】
参考例7
シラン化合物として平均重合度40のメチルフェニルポリシラン0.5gとエポキシ化合物としてノボラック型エポキシ樹脂(旭チバ(株)製;EPN1180)0.5gとを使用する以外は参考例1と同様にして、3種の試料を得た。
【0069】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないノボラック型エポキシ樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、難燃性および耐熱性ならびに基材との密着性に優れており、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
【0070】
参考例8
シラン化合物として平均重合度40のメチルフェニルポリシラン0.8gとエポキシ化合物としてノボラック型エポキシ樹脂(旭チバ(株)製;EPN1180)1.0gとを使用する以外は参考例1と同様にして、3種の試料を得た。
【0071】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないノボラック型エポキシ樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、難燃性および耐熱性ならびに基材との密着性に優れており、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
【0072】
参考例9
ポリシランとして平均重合度200のメチルフェニルポリシランを使用する以外は参考例1と同様にして、3種の試料を得た。
【0073】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないビスフェノールA型エポキシ樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、難燃性および耐熱性ならびに基材との密着性に優れており、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
【0074】
参考例10
ポリシランとして平均重合度5のメチルフェニルポリシランを使用する以外は参考例1と同様にして、3種の試料を得た。
【0075】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないビスフェノールA型エポキシ樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、難燃性および耐熱性ならびに基材との密着性に優れており、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
【0076】
参考例11
ポリシランとして平均重合度6の環状メチルフェニルポリシランを使用する以外は参考例1と同様にして、3種の試料を得た。
【0077】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないビスフェノールA型エポキシ樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、難燃性および耐熱性ならびに基材との密着性に優れており、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
【0078】
参考例12
ポリシランとして平均重合度40のメチル-n-プロピルポリシランを使用する以外は参考例1と同様にして、3種の試料を得た。
【0079】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないビスフェノールA型エポキシ樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、難燃性および耐熱性ならびに基材との密着性に優れており、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
【0080】
参考例13
ポリシランとしてメチルフェニルシランとジメチルシランとの共重合体(平均重合度40、重合比1/1)を使用する以外は参考例1と同様にして、3種の試料を得た。
【0081】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないビスフェノールA型エポキシ樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、難燃性および耐熱性ならびに基材との密着性に優れており、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
【0082】
実施例14
ポリシランとして平均重合度40のフェニルネットワークポリシランを使用する以外は参考例1と同様にして、3種の試料を得た。
【0083】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないビスフェノールA型エポキシ樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、難燃性および耐熱性ならびに基材との密着性に優れており、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
【0084】
実施例15
ポリシランとして平均重合度40のメチルフェニルポリシラン0.25gと平均重合度40のフェニルネットワークポリシラン0.25gとを使用する以外は参考例1と同様にして、3種の試料を得た。
【0085】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないビスフェノールA型エポキシ樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、難燃性および耐熱性ならびに基材との密着性に優れており、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
【0086】
参考例16
エポキシ化合物としてクレゾールノボラック型エポキシ樹脂(旭チバ(株)製:ECN1299)0.2gを使用し、ポリシランとして平均重合度40のメチルフェニルポリシラン0.8gを使用する以外は参考例1と同様にして、3種の試料を得た。
【0087】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないクレゾールノボラック型エポキシ樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、難燃性および耐熱性ならびに基材との密着性に優れており、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
【0088】
参考例17
エポキシ化合物としてエポキシ変性シリコーン樹脂(東芝シリコーン(株)製:XF42-B2249)0.5gを使用し、ポリシランとして平均重合度40のメチルフェニルポリシラン0.5gを使用する以外は参考例1と同様にして、3種の試料を得た。
【0089】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないエポキシ変性シリコーン樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
【0090】
参考例18
電極反応により合成したメチルフェニルポリシラン(平均重合度40)0.5g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭チバ(株)製;アラルダイトAER260)0.5gおよびジエチレントリアミン0.14gを混合した後、混合物をステンレス容器に収容し、空気中100℃で30分間処理して、ペレットを得た。
【0091】
得られた樹脂ペレットの物性とシラン化合物を配合しないビスフェノールA型エポキシ樹脂ペレットの物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明によるペレットは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂単独の場合に比して、吸湿性が低く、且つ難燃性であった。
【0092】
参考例19
混合物の加熱時の雰囲気をアルゴンとする以外は参考例18と同様にしてペレットを調製した。
【0093】
得られた樹脂ペレットの物性とシラン化合物を配合しないビスフェノールA型エポキシ樹脂ペレットの物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明によるペレットは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂単独の場合に比して、吸湿性が低く、且つ難燃性であった。
【0094】
参考例20
エポキシ化合物としてノボラック型エポキシ樹脂(旭チバ(株)製;EPN1180)0.2g、シラン化合物として平均重合度40のメチルフェニルポリシラン0.8gおよび硬化剤として無水トリメリット酸0.4gからなる混合物を使用する以外は参考例1と同様にして、3種の試料を得た。
【0095】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないノボラック型エポキシ樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、難燃性および耐熱性ならびに基材との密着性に優れており、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
【0096】
実施例21
シラン化合物として平均重合度10のフェニルネットワークポリシラン0.5g、エポキシ化合物としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(旭チバ(株)製;アラルダイトAER260)0.5gおよび硬化剤としてジエチレントリアミン0.14gからなる混合物を使用する以外は参考例1と同様にして、3種の試料を得た。
【0097】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないビスフェノールA型エポキシ樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、難燃性および耐熱性ならびに基材との密着性に優れており、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
【0098】
実施例22
シラン化合物としてメチルフェニルポリシランとフェニルネットワークポリシランとの共重合体(平均重合度40、重合比1/1)を使用する以外は参考例1と同様にして、3種の試料を得た。
【0099】
得られた本発明による塗膜の物性とシラン化合物を配合しないビスフェノールA型エポキシ樹脂塗膜の物性とを比較する試験を行った。その結果、本発明による塗膜は、誘電率および吸湿性がともに低く、難燃性および耐熱性ならびに基材との密着性に優れており、半導体の絶縁部位と基材の表面保護膜に用いる材料として、大幅に特性が向上していることが確認された。
Claims (12)
- Si-Si結合を有するシラン化合物、エポキシ化合物および硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物であって、
前記シラン化合物が、ネットワーク構造を有するポリシランであることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。 - 前記シラン化合物が、
一般式 (RSi) n (2)
(式中、 R は、同一或いは相異なって、アルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。nは、 4 〜 10000 である。)で示されるシリコンネットワークポリマーである、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。 - 前記シラン化合物が、
一般式 (R ’ 2 Si) x (R ’ Si) y Si z (3)
(式中、 R ’は、アルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。 R ’は、全てが同一でも或いは2つ以上が異なっていてもよい。 x 、 y および z の和は、 5 〜 10000 である。)で示される Si-Si 結合を骨格とするネットワークポリマーである、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。 - Si-Si結合を有し、かつネットワーク構造を有するポリシラン、エポキシ化合物および硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物を硬化処理することにより得られる硬化エポキシ樹脂組成物。
- 前記ポリシランが、
一般式 (RSi) n (2)
(式中、 R は、同一或いは相異なって、アルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。nは、 4 〜 10000 である。)で示されるシリコンネットワークポリマーである、請求項4に記載の硬化エポキシ樹脂組成物。 - 前記ポリシランが、
一般式 (R ’ 2 Si) x (R ’ Si) y Si z (3)
(式中、 R ’は、アルキル基、アルケニル基、アリールアルキル基、アリール基、アルコキシ基またはアミノ基を表す。 R ’は、全てが同一でも或いは2つ以上が異なっていてもよい。 x 、 y および z の和は、 5 〜 10000 である。)で示される Si-Si 結合を骨格とするネットワークポリマーである、請求項4に記載のエポキシ樹脂組成物。 - 請求項4〜6のいずれかに記載の硬化エポキシ樹脂組成物からなる成形体。
- 形状が塗膜である請求項7に記載の成形体。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を基材表面に塗布した後、硬化させることを特徴とする塗膜を有する製品乃至物品の製造方法。
- 請求項9に記載の方法により得られる硬化塗膜を有する製品乃至物品。
- 硬化塗膜が、表面保護膜である請求項10に記載の製品乃至物品。
- 表面保護膜が、耐食性保護膜、耐熱性保護膜或いは難燃性保護膜である請求項11に記載の製品乃至物品。
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