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JP3974907B2 - 複合分離膜およびその製造方法 - Google Patents

複合分離膜およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、複合分離膜およびその製造方法に関する。
従来、電子工業分野、食品分野等において、0.1〜10μm、特に0.1〜5μmの微粒子の除去、細菌の除去に精密濾過用多孔質分離膜が用いられている。
前記多孔質分離膜は、外面および内部の孔径が実質的に変わらない対称形分離膜と、厚さ方向に孔径が連続的または不連続的に変化し、表裏で孔径が異なる非対称形分離膜と、膜内部に最小孔径の微小細孔層を有する内部緻密形分離膜とに分類される。
前記対称形分離膜は、濾過操作において被処理流体の流速に対して膜全体が大きな抵抗を示すため、大きな流速で被処理流体を濾過することが困難である。また、対象膜の表面に孔径以上の粒子が付着すると、その粒子の堆積、目詰まりを起こして濾過寿命を短くする。このような対称形分離膜の抵抗を下げるために膜厚を薄くすることが試みられているが、強度が低くなって破損しやすくなる新たな問題が生じる。
前記非対称形分離膜は、被処理流体が接する表面に大きな孔、裏面側に微細な孔径を持つ微小細孔層が形成された構造を有するため、前記微小細孔層を膜の全体厚さに対して薄くなるように制御することによって、被処理流体の流速を高めても膜全体に加わる抵抗を小さくすることが可能になる。また、微粒子等を含む被処理流体の濾過においても表面に比較的大きな孔が存在するため、膜内部での微粒子の捕捉が可能になり濾過寿命を延ばすことが可能になる。しかしながら、非対称形分離膜は裏面側の微小細孔層が外部からの衝撃に弱く傷が付き易いために、この膜をフィルタ等のカートリッジに襞折形状にして収納する際、その微小細孔層に大きな孔が形成され、本来の優れた機能が低減される欠点があった。
前記内部緻密形分離膜は、前記非対称形分離膜の欠点を補い、外部からの衝撃にも耐える強度を有する。また、内部の最小孔径の微小細孔層の厚さやその孔径を制御して最大孔径と最小孔径の差を小さくすることにより、各種用途の被処理流体の流速に対して膜抵抗を下げることが可能になる。
特許文献1には、2枚の非対称形分離膜をそれらの微小細孔層同士が密着するように重ねて前述の内部緻密形分離膜を製造することが開示されている。
特許文献2には、膜内部に微小細孔層を形成する内部緻密形分離膜の製造方法が開示されている。この方法は、膜素材であるポリマーに膨潤剤、親水性ポリマーおよび非溶媒を添加し、これらを良溶媒で溶解して製膜原液を調製し、これを支持体に流延して流延膜中の溶媒を蒸発させるとともに、空気中の水分にてその膜表面に局所的な相分離を起こさせ、さらに水のような凝固液に浸漬し、膜内部から溶剤を除去し、その後洗浄、乾燥、支持体から剥離を行うことによって内部緻密形分離膜を製造する方法である。
特開昭58−150402号公報 特開昭63−141607号公報
本発明は、従来の内部緻密形分離膜と同等の濾過性能を有し、かつ微小細孔層に起因する機械的強度の低下を保証することが可能な複合分離膜およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明によると、実質的にポリエーテルスルホンからなる多孔質膜と不織布とからなる複合分離膜であって、
前記多孔質膜と不織布との界面は、不織布の繊維が相互に入り込んだ構造を有し、
前記多孔質膜は、前記不織布側の表面部分に微細な孔径の微小細孔層が形成され、かつこの微小細孔層から前記不織布に対して反対側の表面に向かって孔径が大きくなるように分布した構造を有することを特徴とする複合分離膜が提供される。
また本発明によると、ポリエーテルスルホン、膨潤剤、親水性ポリマー、良溶媒および非溶媒を含む製膜原液を支持体上に流延し、この流延膜表面に不織布を重ねた後、凝固液に浸漬することを特徴とする複合分離膜の製造方法が提供される。
本発明は、従来の内部緻密形分離膜と同等の濾過性能を有し、かつ微小細孔層に起因する機械的強度の低下を保証して搬送、組み立て時の損傷、性能低下を防ぐことが可能な高性能、高信頼性の複合分離膜およびその製造方法を提供することできる。
以下、本発明に係る複合分離膜およびその製造方法を詳細に説明する。
この実施形態に係る複合分離膜は、実質的にポリエーテルスルホンからなる多孔質膜と不織布とからなり、多孔質膜と不織布との界面において不織布の繊維が相互に入り込んだ構造を有する。前記多孔質膜は、前記不織布側の表面部分に微細な孔径の微小細孔層が形成され、かつこの微小細孔層から前記不織布に対して反対側の表面に向かって孔径が大きくなるように分布した構造を有する。前記微小細孔層および孔径分布を持つ層(孔傾斜層)の孔は連続気孔である。
前記不織布は、プラスチック繊維から作られれば特に限定されないが、例えばポリエチレン繊維またはポリプロピレン繊維から作られる。
前記不織布の目付け量は、20〜60g/m2であることが好ましい。
前記不織布の厚さは、複合分離膜の性能にそれほど大きく影響しない。ただし、複合分離膜をフィルタカートリッジとして使用する際、前記不織布の厚さが厚過ぎるとカートリッジに襞折して収納する面積の制限が加わり、一方薄くし過ぎると被処理流体を流す際に分離膜同士が密着して透水性を低下させる虞がある。このため、前記不織布の厚さは100〜600μm、より好ましくは150〜450μmにすることが望ましい。
前記多孔質膜は、100〜200μm、より好ましくは130〜160μmの厚さを有することが望ましい。
前記多孔質膜と不織布の界面において、不織布を構成する繊維が相互に入り込む厚さは
5〜20μmであることが好ましい。
前記多孔質膜の微小細孔層の孔径は、0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.2μmであることが望ましい。この微小細孔層は、多孔質膜の全厚さに対して5〜15%占めることが好ましい。
前記多孔質膜の前記不織布に対して反対側の表面の孔径は、5〜20μm、より好ましくは8〜15μmであることが望ましい。
この実施形態に係る複合分離膜の構造の一例を図1を参照して具体的に説明する。
この複合分離膜1は、実質的にポリエーテルスルホンからなる多孔質膜2と不織布3とからなり、多孔質膜2と不織布3との界面において不織布3の繊維4が相互に入り込んだ構造を有する。多孔質膜2は、前記不織布3側の表面部分に形成された微細な孔径の微小細孔層5と、この微小細孔層5から前記不織布に対して反対側の表面に向かって孔径が大きくなるように分布して形成された孔傾斜層6とを有する。前記微小細孔層5および孔傾斜層6の孔は、連続して繋がる、連続気孔である。なお、この複合分離膜1を濾過フィルタに適用する場合には前記多孔質膜2の孔傾斜層6側の表面が被処理流体の流入側になる。
次に、前述の複合分離膜の製造方法を説明する。
(第1工程)
ポリエーテルスルホン、膨潤剤、親水性ポリマー、良溶媒および非溶媒を含む製膜原液を支持体上に流延する。
前記膨潤剤としては、例えばポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、食塩、塩化リチウム、臭化マグネシウムから選ばれる1種または2種以上の混合物を用いることができる。この膨潤剤の中で、ポリエチレングリコールが好ましく、特に重量平均分子量400〜800のポリエチレングリコールが好ましい。
前記親水性ポリマーは、特にその重量平均分子量を限定しないが、例えば重量平均分子量30000〜50000であることが好ましい。親水性ポリマーとしては、例えばポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルセルロースを用いることができる。この親水性ポリマーの中で、ポリビニルピロリドンが好ましく、特に前記重量平均分子量を持つポリビニルピロリドンが好ましい。
前記良溶媒としては、例えばN−メチル−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミド等を用いることができる。
前記非溶媒としては、例えば水、一価アルコール、多価アルコール、エチレングリコール、テトラエチレングリコール等を用いることができる。
前記成膜原液中のポリエーテルスルホン、膨潤剤および親水性ポリマーの配合比率は、特に限定されないが、(a)ポリエーテルスルホン10〜20重量%、(b)膨潤剤10〜20重量%、および(c)親水性ポリマー5〜20重量%にすることが好ましい。
前記ポリエーテルスルホンの配合比率を10重量%未満にすると、得られた複合分離膜を濾過、分離に使用した際、その多孔質膜の強度が低く、破損する虞がある。一方、前記ポリエーテルスルホンの配合比率が20重量%を超えると、得られた複合分離膜の多孔質膜の強度が強くなりすぎて濾過、分離に使用した際に破損する虞がある。より好ましいポリエーテルスルホンの配合比率は、13〜16重量%である。
前記膨潤剤の配合比率を10重量%未満にすると、得られた複合分離膜の多孔質膜に目的とする網目構造を形成することが困難になる。一方、前記膨潤剤の配合比率が20重量%を超えると、均質、均一な成膜原液を調製することが困難になる。より好ましい膨潤剤の配合比率は、13〜17重量%である。
前記親水性ポリマーの配合比率を5重量%未満にすると、得られた複合分離膜の多孔質膜の孔径が全体的に均一になり、目的とする微小細孔層および孔径分布を形成することが困難になる。一方、前記親水性ポリマーの配合比率が20重量%を超えると、得られた複合分離膜の多孔質膜にその親水性ポリマーが残留しやすくなり、少量であるがその多孔質膜から溶出して初期汚染を招く虞がある。好ましい親水性ポリマーの配合比率は、9〜13重量%である。
前記支持体としては、例えばポリエチレンフタレ−ト(PET)フィルム等を用いることができる。
前記流延時の雰囲気は、温度15〜23℃、湿度50〜80%にすることが好ましい。
前記流延時の雰囲気温度を15℃未満にすると、目的とする網目構造を有する多孔質膜を持つ複合分離膜を得ることが困難になる。一方、流延時の雰囲気温度が23℃を超えると、表面蒸発により得られた複合分離膜における多孔質膜の不織布界面が微小細孔を持たないスキン層になる虞がある。より好ましい流延時の雰囲気温度は15〜20℃である。
前記流延時の雰囲気湿度を50%未満にすると、流延した膜表面が硬化し難く、不織布を重ねる際に不織布内に製膜連量のポリマー成分が過度に浸透して微小細孔層を含む網目構造の多孔質膜を形成することが困難になる。一方、前記流延時の雰囲気湿度が80%を超えると、流延した膜表面に欠陥が生じ、所期の厚さおよび網目構造を有する複合分離膜の製造が困難になる。また、製膜原液を流延する際の製膜安定性も低下する虞がある。より好ましい流延時の雰囲気湿度は、50〜75%である。
前記流延時の膜厚さは、約100μm〜約200μm、より好ましくは約130μm〜約160μmにすることが望ましい。
(第2工程)
前記支持体上の流延膜表面に不織布を重ねた後、凝固液に浸漬する。このとき、流延膜の成分である前記膨潤剤、親水性ポリマー、良溶媒および非溶媒と凝固液との相互作用により、不織布に接する流延膜表面に微細な孔径の微小細孔層が形成され、かつこの微細細孔層から前記不織布と反対側の面に向かって孔径が大きくなるように分布して孔傾斜層が形成される。つづいて、洗浄、乾燥し、支持体から剥離することにより前述した構造の複合分離膜を製造する。
前記不織布は、プラスチック繊維から作られれば特に限定されないが、例えばポリエチレン繊維またはポリプロピレン繊維から作られる。この不織布の厚さは、複合分離膜の性能にそれほど大きく影響しない。ただし、製造された複合分離膜をフィルタカートリッジとして使用する際、前記不織布の厚さが厚過ぎるとカートリッジに襞折して収納する面積の制限が加わり、一方、薄くし過ぎると被処理流体を流す際に分離膜同士が密着して透水性を低下させる虞がある。このため、前記不織布の厚さは100〜600μm、より好ましくは150〜450μmにすることが望ましい。
前記凝固液は、前述した非溶媒(例えば水、一価アルコール、多価アルコール、エチレングリコール、テトラエチレングリコール等)を用いることができる。
前記支持体上の流延膜表面への不織布の密着、これに引き続く凝固液への浸漬までの雰囲気は、流延時の雰囲気、好ましくは温度17〜19℃、湿度55〜75%に保持することが望ましい。
前記洗浄は、50〜70℃の温水で行うことが好ましい。
以上説明した本発明の実施形態に係る複合分離膜は、多孔質膜と不織布とがそれらの界面において前記不織布の繊維が相互に入り込んでいるため、それらの間で高い密着力(高い接合力)を有し、例えばフィルタ等のカートリッジに襞折形状にして収納する際に層剥離を生じるのを防止して一体化した部材として取り扱うことができる。
また、前記多孔質膜は前記不織布側の表面部分に形成された微細な孔径の微小細孔層と、この微小細孔層から前記不織布に対して反対側の表面に向かって孔径が大きくなるように分布して形成された孔傾斜層とを有するため、前記微小細孔層を膜の全体厚さに対して薄くなるように制御することによって、前記孔傾斜層が形成された多孔質膜の面側から被処理流体を流入させた場合、その被処理流体の流速を高めても膜全体に加わる抵抗を小さくすることが可能になる。また、微粒子等を含む被処理流体の濾過においても多孔質膜の被処理流体の流入面に前記孔傾斜層の比較的大きな孔が存在するため、膜内部での微粒子の捕捉が可能になり濾過寿命を延ばすことが可能になる。
さらに、前記微小細孔層は不織布により一体的に覆われ、外部からの衝撃に対して保護されるために、この複合分離膜をフィルタ等のカートリッジに襞折形状にして収納する際、その微小細孔層に傷か付けられて大きな孔が形成されるのを防止でき、多孔質膜本来の優れた濾過機能を発揮することができる。
本発明の実施形態に係る方法によれば、前述した特性を有する複合分離膜を簡単かつ、再現性よく製造することができる。
以下,本発明の実施例を前述した図面を参照して説明する。
(実施例1)
まず、ポリエーテルスルホン(住友化学社製商品名:スミカフレックス4200P)14重量%、重量平均分子量600のポリエチレングリコール13重量%、重量平均分子量50000のポリビニルピロリドン9重量%、1−ブタノール15重量%、N−メチル−ピロリドン47重量%および水2重量%を秤量し、N−メチル−ピロリドンを除く各成分をタンク内に入れ、攪拌し、さらにN−メチル−ピロリドンを添加してポリマー成分を溶解した後、脱気を行ってポリエーテルサルホンが均一に溶解された製膜原液を調製した。
次いで、前記製膜原液を支持体であるPETフィルム上に温度17±2℃、湿度70±5%の雰囲気で約200μmの厚さに流延し、その後10秒間放置した。つづいて、この流延膜を凝固液である水が収容された処理槽内に浸漬する前にその流延膜表面に厚さ250μm、目付け量40g/m2のポリプロピレン不織布を重ねた。ひきつづき、ポリプロピレン不織布が重ねられた膜をPETフィルムとともに60℃の温水槽で洗浄し、乾燥した後、PETフィルムから複合分離膜を剥離した。
得られた複合分離膜は、前述した図1に示す構造を有するものであった。すなわち、この複合分離膜は実質的にポリエーテルスルホンからなる厚さ140μmの多孔質膜がポリプロピレン不織布に一体的に結合されていた。また、この多孔質膜はポリプロピレン不織布側に10μmの厚さで形成された平均径が0.07μmの微細な孔径を持つ微小細孔層と、この微小細孔層から前記不織布に対して反対側の表面に向かって孔径が大きくなるように分布して形成された孔傾斜層とを有していた。孔傾斜層の表面側での孔の平均径は、約8μmであった。
また、得られた複合分離膜についてASTM−F316によるIPAバブルポイント試験および透水試験を行った。なお、透水試験は複合分離膜の二次側(不織布側)を減圧(−80kPa)にし、一次側(多孔質膜側)から水100mLを通液し得るまでに要した時間を測定する試験である。その結果、バブルポイント値は85kPa、透水性能は9秒/100mL・−80kPaであった。なお、複合分離膜の多孔質膜は水に湿潤し、透水性能も増大した。
さらに、得られた複合分離膜をフィルタカートリッジとして使用するために襞折したところ、襞折前と遜色のない濾過性能を示した。
本発明の実施形態に課から複合分離膜を示す断面図。
符号の説明
1…複合分離膜、2…多孔質膜、3…繊維、4…不織布、5…微小細孔層、6…孔傾斜層。

Claims (7)

  1. 実質的にポリエーテルスルホンからなる多孔質膜と不織布とからなる複合分離膜であって、
    前記多孔質膜と不織布との界面は、不織布の繊維が相互に入り込んだ構造を有し、
    前記多孔質膜は、前記不織布側の表面部分に微細な孔径の微小細孔層が形成され、かつこの微小細孔層から前記不織布に対して反対側の表面に向かって孔径が大きくなるように分布した構造を有することを特徴とする複合分離膜。
  2. 前記多孔質膜の微小細孔層は、0.005〜0.5μmの孔径を有することを特徴とする請求項1記載の複合分離膜。
  3. 前記不織布は、ポリエチレン繊維またはポリプロピレン繊維から作られることを特徴とする請求項1記載の複合分離膜。
  4. ポリエーテルスルホン、膨潤剤、親水性ポリマー、良溶媒および非溶媒を含む製膜原液を支持体上に流延し、この流延膜表面に不織布を重ねた後、凝固液に浸漬することを特徴とする複合分離膜の製造方法。
  5. 前記膨潤剤は、ポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項4記載の複合分離膜の製造方法。
  6. 前記親水性ポリマーは、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルセルロースであることを特徴とする請求項4記載の複合分離膜の製造方法。
  7. 前記凝固液は、水、一価アルコール、多価アルコール、エチレングリコール、テトラエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種の非溶媒からなることを特徴とする請求項4記載の複合分離膜の製造方法。
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