JP3972512B2 - 積層ポリエステルフィルムとその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、従来のポリエステルフィルムの物性・品質を大幅に向上させた積層ポリエステルフィルムとその製造方法に関する。
【0002】
具体的には、剛性、強靱性、寸法安定性などに優れ、例えば、磁気記録媒体用、コンデンサー用、熱転写リボン用、あるいは感熱孔版印刷原紙用などの各種の工業材料用フィルムとして非常に適した積層ポリエステルフィルムと該フィルムを製造する方法に関するものである。
【0003】
【従来の技術】
ポリエステルフィルムは、他の素材からは得られないような大面積のフィルムの連続生産が可能であり、その強度、耐久性、透明性、柔軟性、表面特性の付与が可能などの特徴を活かして、磁気記録媒体用、コンデンサー用、熱転写リボン用、感熱孔版印刷用原紙用などの各種工業材料用、農業用、包装用、建材用などの大量に需要のある各種分野で用いられている。
【0004】
その中でも、積層ポリエステルフィルムは、表面設計の観点などから様々な分野で利用されていて、特に磁気記録媒体用ベースフィルムとして有用である。積層ポリエステルフィルムは、機械特性、熱的特性、電気特性などの向上のために二軸延伸ポリエステルフィルムにして利用されることが多い。磁気記録媒体用において、特に、近年は、機材の軽量化、小型化と長時間記録化のために、ベースフィルムの一層の薄膜化が要求されている。また、熱転写リボン用、コンデンサー用、あるいは感熱孔版印刷原紙用においても、近年、薄膜化の傾向が非常に強い。
【0005】
しかしながら、フィルムを薄膜化すると、機械的強度が不十分となって、フィルムの腰の強さが弱くなったり、伸びやすくなったりするため、例えば、磁気記録媒体用では、テープダメージを受けやすくなったり、ヘッドタッチが悪化して電磁変換特性が低下したりする。また、フィルムを薄膜化すると、熱転写リボン用では、印字する際のリボンの平坦性が保たれず、印字ムラや過転写が発生し、また、コンデンサ用では、絶縁破壊電圧が低下するといった問題点がある。
【0006】
このような薄膜化志向の中で、ヤング率に代表されるような引張特性などの機械特性の向上による、ますますの高強度化が望まれている。
【0007】
そのため、従来から種々の方法でフィルムの高強度化が検討されてきた。一般に知られてきた、二軸延伸ポリエステルフィルムの高強度化の手法としては、例えば、縦・横二方向に延伸したフィルムを再度縦方向に延伸し、縦方向に高強度化する、いわゆる再縦延伸法が一般的である(例えば、特公昭42−9270号公報、特公昭43−3040号公報、特公昭46−1119号公報、特公昭46−1120号公報など)。
【0008】
また、さらに横方向にも強度を付与したい場合には、上述の再縦延伸を行なった後、再度横方向に延伸するという再縦再横延伸法が提案されている(例えば、特開昭50−133276号公報、特開昭55−22915号公報など)。また、一段目の延伸をフィルムの縦方向に2段階以上で行い、引き続き、フィルムの横方向に延伸を行う縦多段延伸法が提案されている(例えば、特公昭52−33666号公報、特公昭57−49377号公報など)。
【0009】
しかし、このような従来技術で得られた高強度化ポリエステルフィルムは、例えば磁気記録媒体用において、応力伸び変形あるいは環境条件によって寸法変化し、記録トラックにずれが生じて記録再生時にエラーが発生したり、磁気記録ヘッドに対するフィルム表面の耐久性に劣ったりするために、所望の電磁変換特性が得られなかったりする等の問題があり、大容量の高密度磁気記録テ−プへの適用に際して課題が残されているのが現状である。
【0010】
一方、ポリエステルとポリイミドの組成物については過去にも記述があり、例えば、ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、一方、ポリイミドとして、熱可塑性ポリイミドの1種であるポリエーテルイミド(PEI)を用いて、その重量分率の増加に伴ってガラス転移温度が上昇することが示されている(例えば、「JOURNAL of APPLIED POLYMER SCIENCE」1993年,48巻,935−937頁、「Macromolecules」1995年,28巻,2845−2851頁、「POLYMER」1997年,38巻,4043−4048頁」等)。しかしながら、PETとPEIの混合したフィルムに関する報告はなされておらず、ましてや、該フィルムの寸法安定性や表面特性については全く知られていなく、検討されていないのが実状である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ヤング率などの機械強度や寸法安定性に優れ、熱的負荷などの環境変化に対する耐久性に優れたフィルム表面を有する高品質の積層ポリエステルフィルムとその製造方法を提供することであり、特に磁気記録媒体用ベースフィルムして使用したときに、磁気記録ヘッドに対するフィルム表面の耐久性や電磁変換特性および走行耐久性に優れている、高密度磁気記録テープ用ベースフィルムとして好適な積層ポリエステルフィルムとその製造方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的に沿う本発明の積層ポリエステルフィルムは、少なくとも2層以上の積層構造からなり、かつ、両最外層がエチレンテレフタレート単位を主たる成分とするポリエステル(A)とポリイミド(B)からなり、ポリイミド(B)を含有する層の中でポリイミド(B)が5〜30重量%含有されていることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、さらに次の1または複数の好ましい態様を含む。
(a)積層ポリエステルフィルムのエチレンテレフタレート単位を主たる成分とするポリエステル(A)とポリイミド(B)からなる層の補外ガラス転移開始温度(Tg-onset)が90〜150℃であること。
(d)積層ポリエステルフィルムの長手方向と幅方向のヤング率の和が10〜25(GPa)であること。
(e)積層ポリエステルフィルムの長手方向と幅方向の少なくとも一方の100℃、30分における熱収縮率が0.01〜2.0%であること。
(f)積層ポリエステルフィルムが一軸または二軸に配向されたこと。
【0014】
また、本発明の該積層ポリエステルフィルムの製造方法は、少なくとも2台以上の押出機を用いた溶融押出により口金から吐出し、溶融ポリマーを冷却固化させてシート状に成形する積層ポリエステルフィルムの製造方法において、少なくとも1台はエチレンテレフタレート単位を主成分とするポリエステル(A)とポリイミド(B)を溶融押出により相溶させて口金から吐出し、溶融ポリマーを冷却固化させてシート状に成形することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の積層ポリエステルフィルムの製造方法は、さらに次の好ましい態様を含む。それは、少なくとも2台以上の押出機を用いた溶融押出により口金から吐出し、溶融ポリマーを冷却固化させてシート状に成形する積層ポリエステルフィルムの製造方法において、少なくとも1台はエチレンテレフタレート単位を主成分とするポリエステル(A)とポリイミド(B)を溶融押出により相溶させて口金から吐出し、溶融ポリマーを冷却固化させてシート状に成形し、該シート状成型物を長手方向に1〜10倍、幅方向に1〜10倍の倍率で延伸し、しかる後に150℃〜250℃の温度で熱処理することを特徴とするものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0017】
本発明の積層ポリエステルフィルムを構成するエチレンテレフタレート単位を主成分とするポリエステル(A)は、エチレンテレフタレート単位を70重量%以上含有するポリエステルである。エチレンテレフタレート単位は、酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分としてエチレングリコールから構成される。ポリエステル(A)は、エチレンテレフタレート単位以外の、例えば、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸などの酸成分やジオール成分から構成されるポリエステル単位を共重合や混合、ブレンドで含有していてもよい。
【0018】
芳香族ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4―ナフタレンジカルボン酸、1,5―ナフタレンジカルボン酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、4,4'―ジフェニルジカルボン酸、4,4'―ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4'―ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸成分としては、例えば、シクロヘキサンジカルボン酸等を用いることができる。脂肪族ジカルボン酸成分としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0019】
また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2ープロパンジオール、1,3―プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3―ブタンジオール、1,4―ブタンジオール、1,5―ペンタンジオール、1,6―ヘキサンジオール、1,2―シクロヘキサンジメタノール、1,3―シクロヘキサンジメタノール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2'―ビス(4'―β―ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができ、なかでも好ましくは、エチレングリコール、1,4―ブタンジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等を用いることができ、特に好ましくは、エチレングリコール等を用いることができる。これらのジオール成分は一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0020】
また、ポリエステルには、トリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2, 4―ジオキシ安息香酸、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の単官能化合物等の他の化合物を、ポリマーが実質的に線状である範囲内で共重合されていてもよい。さらに酸成分、ジオール成分以外に、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸、2,6−ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族ヒドロキシカルボン酸およびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを本発明の効果が損なわれない程度の少量であればさらに共重合せしめることができる。
【0021】
本発明のポリイミド(B)は、溶融成形性であれば特に限定されないが、例えば、下記一般式で示されるような構造単位を含有するものが好ましい。
【0022】
【化1】
【0023】
(ただし、式中のR1は、
【0024】
【化2】
【0025】
【化3】
【0026】
などの脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基から選ばれた一種もしくは二種以上の基を表して、
また、式中のR2 は、
【0027】
【化4】
【0028】
などの脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基から選ばれた一種もしくは二種以上の基を表す。)
かかる好ましいポリイミド(B)は、テトラカルボン酸および/またはその酸無水物と、脂肪族一級モノアミンおよび/または芳香族一級モノアミン、さらに/または脂肪族一級ジアミンおよび/または芳香族一級ジアミンよりなる群から選ばれる一種もしくは二種以上の化合物を脱水縮合することにより得られた化合物を挙げることができる。
【0029】
テトラカルボン酸および/またはその酸無水物としては、例えば、エチレンテトラカルボン酸、1,2,3,4―ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、1,2,3,4―ベンゼンテトラカルボン酸、3,3',4,4'―ビフェニルテトラカルボン酸、2,2',3,3'―ビフェニルテトラカルボン酸、3,3',4,4'―ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2',3,3'―ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(2,3―ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4―ジカルボキシフェニル)メタン、1,1'―ビス(2,3―ジカルボキシフェニル)エタン、2,2'―ビス(3,4―ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2'―ビス(2,3―ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4―ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(2,3―ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(3,4―ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(2,3―ジカルボキシフェニル)スルホン、2,3,6,7―ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8―ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6―ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7―アントラセンテトラカルボン酸、1,2,7,8―フェナントレンテトラカルボン酸、3,4,9,10―ペリレンテトラカルボン酸、4,4'―(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、4,4'―(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、2,2'―ビス[(2,3―ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン等および/またはその酸無水物等が用いられる。
【0030】
脂肪族一級モノアミンとしては、例えば、炭素数2〜22の飽和または不飽和の直鎖、分岐または脂環系のモノアミンが用いられ、具体的には、エチルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、エイコシルアミン、ヘネイコシルアミン、ドコシルアミン、シクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチルシクロヘキシルアミンおよびこれらの構造異性体などが用いられる。
【0031】
芳香族一級モノアミンとしては、例えば、非置換あるいは炭素数1〜22のアルキル置換の一級アニリンが用いられ、具体的には、アニリン、トルイジン、エチルアニリン、プロピルアニリン、ブチルアニリン、ペンチルアニリン、ヘキシルアニリン、ヘプチルアニリン、オクチルアニリン、ノニルアニリン、デシルアニリン、ウンデシルアニリン、ドデシルアニリン、トリデシルアニリン、テトラデシルアニリン、ペンタデシルアニリン、ヘキサデシルアニリン、ヘプタデシルアニリン、オクタデシルアニリン、ノナデシルアニリン、エイコシルアニリン、ヘネイコシルアニリン、ドコシルアニリンおよびこれらの構造異性体等が用いられる。
【0032】
脂肪族一級ジアミンとしては、例えば、炭素数1〜12のメチレン基で結合された一級ジアミンや脂環基を有するジアミンが用いられ、具体的には、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1, 3―ビスアミノシクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、m−キシレンジアミンおよびこれらの構造異性体などが用いられる。
【0033】
芳香族一級ジアミンとしては、例えば、ベンジジン、ジメチルベンジジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジトリルメタン、ジアミノジフェニルエタン、ジアミノジフェニルプロパン、ジアミノジフェニルブタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルベンゾフェノン、o, m, p―フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン等およびこれらの例示した芳香族一級ジアミンの炭化水素基を構造単位に有する芳香族一級ジアミン等が用いられる。
【0034】
本発明において、ポリイミド(B)をポリエステル(A)に添加する時期は、特に限定されないが、ポリエステルの重合前、例えば、エステル化反応前に添加してもよいし、重合後に溶融押出前に添加してもよい。また、溶融押出前に、ポリエステル(A)とポリイミド(B)をペレタイズしてもよい。
【0035】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、少なくとも2層以上の積層構造である。単層であると、例えば、磁気記録媒体用として用いる場合、粒子を含有させると、表面の突起がそろわず、電磁変換特性や走行性が悪化する場合がある。2層以上であればよいが、3層の場合に本発明の効果がより一層良好となり好ましい。最外層の厚みは、特に限定されないが、少なくとも一方の最外層の厚みがフィルム全体の厚みの20%以下であることが、本発明の効果がより一層良好となり好ましい。また、2層以上の積層構造の中で、少なくとも1層がエチレンテレフタレート単位を主たる成分とするポリエステル(A)とポリイミド(B)からなる。他の層は特に限定されないが、ポリエステルが好ましく例示され、そのポリエステルとしては、特に限定されないが、エチレンテレフタレート、エチレン−α,β−ビス(2ークロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレート、エチレン2,6−ナフタレート単位から選ばれた少なくとも一種の構造単位を主要構成成分とする場合に、特に好ましい。
【0036】
本発明の積層ポリエステルフィルムの少なくとも1層のポリエステル(A)とポリイミド(B)からなる層は、特に限定されないが、補外ガラス転移開始温度(Tg−onset )が90〜150℃であることが好ましく、より好ましくは95〜130℃、さらに好ましくは100〜120℃の範囲内にあることである。Tg-onsetが90℃未満であれば、フィルムの寸法安定性向上やフィルム表面の耐久性について、本発明の効果が小さかったりすることがある。また、Tg-onsetが150℃を越える温度であれば、溶融成形性や延伸加工性などの成形加工の点で劣ったりすることがある。
【0037】
本発明の積層ポリエステルフィルムの少なくとも1層のポリエステル(A)とポリイミド(B)からなる層におけるポリイミド(B)の含有量は、1〜50重量%の範囲にある。ポリエステル(A)とポリイミド(B)の溶融粘度は大きく異なるため、ポリイミド(B)の含有量が1重量%未満であれば、押出機にて十分な混練を得て互いに相溶することが困難なことがある。また、ポリイミド(B)の含有量が50重量%を超える量であれば、押出成形加工が困難であったりして、さらに得られたポリエステルフィルムに十分な強度を発現するために、延伸加工を施すことが困難であったりすることがある。
【0038】
本発明のポリイミド(B)は、ポリエステル(A)に相溶するポリイミドであればよく、特に限定されないが、ポリエステル(A)との溶融成形性や取り扱い性などの点から、例えば、下記一般式で示されるように、ポリイミド構成成分にエーテル結合を含有するポリエーテルイミドが好ましい。
【0039】
【化5】
【0040】
(ただし、上記式中R1 は、6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族または脂肪族残基;R2 は6〜30個の炭素原子を有する2価の芳香族残基、2〜20個の炭素原子を有するアルキレン基、2〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、及び2〜8個の炭素原子を有するアルキレン基で連鎖停止されたポリジオルガノシロキサン基からなる群より選択された2価の有機基である。)
上記R1 、R2 としては、例えば、下記式群に示される芳香族残基を挙げることができる。
【0041】
【化6】
【0042】
本発明では、ポリエステル(A)との相溶性、コスト、溶融成形性等の観点から、下記式で示される構造単位を有する、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミン、またはp−フェニレンジアミンとの縮合物が好ましい。このポリエーテルイミドは、“ウルテム”(登録商標)の商標名で、ジーイープラスチックス社より入手可能である。
【0043】
【化7】
【0044】
または
【0045】
【化8】
【0046】
ここでいう相溶とは、得られたチップのガラス転移温度(Tg)が単一であることにより判断できる。また、得られたチップのTgとは、ポリエステル(A)のペレットのTgとポリイミド(B)のペレットのTgの間に存在するものを指し、さらに、熱流束のギャップが、ポリエステル(A)の熱流束のギャップの1/10以下のものは含まない。
【0047】
本発明の積層ポリエステルフィルムの長手方向のヤング率と幅方向のヤング率の和は、特に限定されないが、10〜25GPaの範囲であることが好ましく、より好ましくは12〜22GPa、さらに好ましくは14〜20GPaである。該ヤング率の和が10GPa未満であれば、例えば、磁気記録媒体用などに用いる場合、走行時の磁気記録ヘッドやガイドピンから受ける張力のため、磁気テープに伸び変形が生じやすくなり、さらに電磁変換特性(出力特性)に悪影響を与えたりして、実用上使用に耐えないことがある。また、該ヤング率の和が25GPaを越えるフィルムは工業的に製造が困難であったり、フィルムの耐引裂性や寸法安定性が著しく低下したりすることがある。
【0048】
本発明の積層ポリエステルフィルムの長手方向と幅方向の少なくとも一方向の温度100℃、30分における熱収縮率は、特に限定されないが、テープの伸び変形性および保存性の観点から、0.01〜2.0%であることが好ましい。より好ましくは、0.01〜1.5%であり、さらに好ましくは、0.01〜1.0%である。温度100℃の熱収縮率が2.0%を越える場合は、寸法安定性が損なわれやすくなることがあり、例えば磁気記録媒体用においては、ベースフィルムの磁気層を塗布するなどのフィルム加工工程における熱履歴や走行時の磁気テープと磁気記録ヘッドとの摩擦熱による磁気テープの昇温時にテープの熱変形が起こりやすくなったり、フィルム表面の耐久性が劣ったり、テープの保存性が悪化することがある。また、温度100℃の熱収縮率が0.01%未満の場合には、フィルムが膨張して、しわが発生したりすることがある。
【0049】
本発明のポリエステル(A)の固有粘度は、特に限定されないが、フィルム成形加工の安定性やポリイミド(B)との混合性の観点から、0.55〜3.0(dl/g)の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、0.60〜2.0(dl/g)である。また、積層ポリエステルフィルムの固有粘度は、特に限定されないが、フィルム成形加工の安定性や寸法安定性などの観点から、0.50〜2.0(dl/g)の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは0.55〜1.0(dl/g)である。
【0050】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、本発明を阻害しない範囲内で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、脂肪酸エステル、ワックスなどの有機滑剤などが添加されてもよい。また、フィルム表面に易滑性や耐磨耗性、耐スクラッチ性等を付与するために、積層フィルムの最外層に無機粒子、有機粒子などを添加すると、例えば、磁気記録媒体用などにおいて有用である。該添加物としては、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カリオン、タルク、湿式または乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナおよびジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン等を構成成分とする有機粒子、ポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する、いわゆる内部粒子や、界面活性剤などがある。
【0051】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、特に限定されないが、従来から行われている方法により一軸または二軸に配向されたフィルムであることが、フィルム強度、寸法安定性、フィルム表面の耐久性や電気特性などに対する効果の点から好ましい。
【0052】
本発明の積層ポリエステルフィルムの用途は、特に限定されないが、磁気記録媒体用、コンデンサー用、感熱転写リボン用、感熱孔版印刷原紙用などに用いられる。
【0053】
本発明の積層ポリエステルフィルムの厚みは、特に限定されないが、1000μm以下が好ましく、さらに好ましくは0.5〜500μmの範囲である。用途、目的に応じて適宜決定できるが、例えば、二軸配向させた積層ポリエステルフィルムの場合、0.5〜20μmの範囲が好ましい。特に、磁気記録媒体用では、高密度磁気記録用テープ、例えば、データストレージ用のベースフィルムに適したものであり、該データ記録容量としては、好ましくは30GB(ギガバイト)以上、より好ましくは70GB以上、さらに好ましくは100GB以上である。またフィルム厚みは、通常磁気記録材料用では1〜15μm、データ用またはデジタルビデオ用塗布型磁気記録媒体用では2〜10μm、データ用またはデジタルビデオ用蒸着型磁気記録媒体用では3〜9μmの範囲が好ましい。また、コンデンサー用には、好ましくは0.5〜15μmのフィルムが適用され、絶縁破壊電圧および誘電特性の安定に優れたものとなる。熱転写リボン用途には、好ましくは1〜6μmのフィルムが適用され、印字する際のしわがなく、印字むらやインクの過転写を生じることなく、項精細な印刷が行うことができる。感熱孔版原紙用途には、好ましくは0.5〜5μmのフィルムが適用され、低エネルギーでの穿孔性にも優れ、エネルギーレベルに応じて穿孔径を変化させることが可能であり、複数版でのカラー印刷を行う場合などの印刷性にもすぐれている。
【0054】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、少なくとも2層以上の積層構造の中でポリエステルだけで構成されていてもよいが、これに他のポリマー層、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデンおよびアクリル系ポリマーを直接、あるいは接着剤などの層を介して積層してもよい。
【0055】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、必要に応じて、熱処理、成形、表面処理、ラミネート、コーティング、印刷、エンボス加工、エッチングなどの任意の加工を行ってもよい。
【0056】
本発明の積層ポリエステルフィルムの製造方法は、少なくとも2台以上の押出機を用いた溶融押出により口金から吐出し、溶融ポリマーを冷却固化させてシート状に成形する積層ポリエステルフィルムの製造方法において、少なくとも1台はエチレンテレフタレート単位を主成分とするポリエステル(A)とポリイミド(B)を溶融押出により相溶させて口金から吐出し、溶融ポリマーを冷却固化させてシート状に成形するものである。さらに詳しくは、特に限定されるものではないが、該シート状成型物を長手方向に1〜10倍、幅方向に1〜10倍の倍率で延伸し、しかる後に150℃〜250℃の温度で熱処理することが好ましい。
【0057】
より好ましい条件は、長手方向に2〜9倍、幅方向に2〜9倍の倍率で延伸し、しかる後に170〜230℃の温度で熱処理することであり、さらに好ましい条件は、長手方向に3〜8倍、幅方向に3〜8倍の倍率で延伸し、しかる後に180〜220℃の温度で熱処理することである。ポリエステル(A)とポリイミド(B)を相溶させる場合、ポリイミド(B)をポリエステル(A)に添加する時期は、特に限定されないが、ポリエステルの重合前、例えば、エステル化反応前に添加してもよいし、重合後に溶融押出前に添加してもよい。中でも、溶融押出前に、ポリエステル(A)とポリイミド(B)をペレタイズして、マスターチップにすることが溶融成形性の観点から好ましい。
【0058】
本発明の積層ポリエステルフィルムの延伸形式としては、長手方向または幅方向のいすれか一方向に延伸する一軸延伸法や、長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた逐次二軸延伸法や、同時二軸テンター等を用いて長手方向と幅方向を同時に延伸する同時二軸延伸法、さらに、逐次二軸延伸法と同時二軸延伸法を組み合わせた方法などが包含される。
【0059】
本発明のポリエステルフィルムの製造方法の例について説明するが、これに限定されるものではない。ここでは、ポリエステル(A)として、ポリエチレンテレフタレートを用い、ポリイミド(B)として、ポリエーテルイミド「ウルテム」を用いた例を示すが、用いるポリエステルやポリイミドにより製造条件は異なる。
【0060】
まず、常法に従い、テレフタル酸とエチレングリコールからエステル化し、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールをエステル交換反応により、ビスーβ―ヒドロキシエチルテレフタレート(BHT)を得る。次にこのBHTを重合槽に移行しながら、真空下で280℃に加熱して重合反応を進める。ここで、固有粘度が0.5程度のポリエステルを得る。このとき、所定量のポリイミドを添加しておいてもよい。得られたポリエステルをペレット状で減圧下において固相重合する。固相重合する場合は、あらかじめ180℃以下の温度で予備結晶化させた後、190〜250℃で1mmHg程度の減圧下、10〜50時間固相重合させる。また、フィルムを構成するポリエステルに粒子を含有させる方法としては、エチレングリコールに粒子を所定割合にてスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールをテレフタル酸と重合させる方法が好ましい。粒子を添加する際には、例えば、粒子を合成時に得られる水ゾルやアルコールゾルを一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性がよい。また、粒子の水スラリーを直接所定のポリエステルペレットと混合し、ベント式2軸混練押出機を用いて、ポリエステルに練り込む方法も有効である。粒子の含有量、個数を調節する方法としては、上記方法で高濃度の粒子のマスタを作っておき、それを製膜時に粒子を実質的に含有しないポリエステルで希釈して粒子の含有量を調節する方法が有効である。
【0061】
次に、該ポリエチレンテレフタレートのペレット(A)とポリエーテルイミドのペレット(B)を、一定の割合で混合して、270〜300℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、溶融押出する。このときの剪断速度は50〜300sec-1が好ましく、より好ましくは100〜200sec-1、滞留時間は0.5〜10分が好ましく、より好ましくは1〜5分の条件である。さらに、上記条件にて相溶しない場合は、得られたチップを再び二軸押出機に投入し相溶するまで押出を繰り返してもよい。上記混練によって、ポリエチレンテレフタレートとポリエーテルイミドは相溶し、ガラス転移点が単一のポリエステルのペレットを得ることができる。
【0062】
得られたポリエーテルイミド含有のポリエステルのペレットを、180℃で3時間以上真空乾燥した後、固有粘度が低下しないように窒素気流下あるいは真空下で280〜320℃に加熱された押出機に供給し、従来から行われている方法により製膜する。また、異物や変質ポリマーを除去するために各種のフィルター、例えば、焼結金属、多孔性セラミック、サンド、金網などの素材からなるフィルターを用いることが好ましい。また、必要に応じて、定量供給性を向上させるためにギアポンプを設けてもよい。2台以上の押出機、マニホールドまたは合流ブロックを用いて、溶融状態のポリエステルやポリエステルとポリイミドの混合物を積層したシートをスリット状のダイから押出し、キャスティングロール上で冷却して未延伸フィルムを作る。
【0063】
次に、この未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向させる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法または同時二軸延伸法を用いることができる。ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を用いる。延伸温度については、積層の構成成分により異なるが、例えば、3層構造で中間層がポリエチレンテレフタレートからなり、フィルム全体の厚みの80%以上であり、一方、最外層がポリエチレンテレフタレートとポリエーテルイミドの混合ポリマーからなる場合を例示して説明する。未延伸フィルムを80〜150℃の加熱ロール群で加熱し、長手方向に1〜10倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸し、20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。長手方向延伸速度は1000〜50000%/分の範囲で行うのが好ましいが、特に限定されない。続いて、幅方向の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。幅方向の延伸倍率は1〜10倍、延伸速度は1000〜20000%/分、温度は80〜150℃の範囲で行うのが好ましいが、特に限定されない。さらに必要に応じて、再縦延伸および/または再横延伸を行う。その場合の延伸条件としては、長手方向の延伸は、温度80〜180℃、延伸倍率1.1〜2.0倍、幅方向の延伸方法としてはテンターを用いる方法が好ましく、温度80〜180℃、延伸倍率1.1〜2.0倍で行うのが好ましいが、特に限定されない。トータルの延伸倍率は、長手方向に1〜10倍、幅方向に1〜10倍であることが好ましい。より好ましくは、長手方向に2〜9倍、幅方向に2〜9倍であり、さらに好ましくは、長手方向に3〜8倍、幅方向に3〜8倍である。続いて、この延伸フィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱処理する。この場合の熱処理温度は、150℃〜250℃、好ましくは、170〜230℃、さらに好ましくは180〜220℃で、時間は0.2〜30秒の範囲で行うのが好ましいが、特に限定されない。
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
(1)補外ガラス転移開始温度(Tg-onset)、ガラス転移温度(Tg)
JIS−K7121に従って、測定した。
【0064】
装置:セイコー電子工業(株)製“ロボットDSC−RDC220”
データ解析−“ディスクセッションSSC/5200”
サンプル質量:5mg
昇温速度:20℃/分
(2)ヤング率
ASTM−D882に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて測定した。測定は下記の条件とした。
【0065】
測定装置:オリエンテック(株)製フイルム強伸度自動測定装置
“テンシロンAMF/RTA−100”
試料サイズ:幅10mm×試長間100mm、
引張り速度:200mm/分
測定環境:温度23℃、湿度65%RH
(3)熱収縮率
JIS−C2318に従って、測定した。
【0066】
試料サイズ:幅10mm、標線間隔200mm
測定条件:温度100℃、処理時間30分、無荷重状態
100℃熱収縮率を次式より求めた。
【0067】
熱収縮率(%)=[(L0−L)/L0]×100
L0:加熱処理前の標線間隔
L:加熱処理後の標線間隔
(4)固有粘度
オルトクロロフェノール中、25℃で測定した溶液粘度から下式から計算される値を用いる。すなわち、
ηsp/C=[η]+K[η]2・C
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)ー1、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマ重量(g/100ml、通常1.2)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。また、溶液粘度、溶媒粘度はオストワルド粘度計を用いて測定した。
(5)磁気テープの電磁変換特性(C/N)およびフィルム表面耐久性
本発明の積層ポリエステルフィルムの表面に、下記組成の磁性塗料および非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより重層塗布(上層は磁性塗料で塗布厚0.1μm、非磁性下層の厚みは適宜変化させた)し、磁気配向させ、乾燥させる。次いで反対面に下記組成のバックコート層を形成した後、小型テストカレンダー装置(スチール/スチールロール、5段)で、温度:85℃、線圧:200kg/cmでカレンダー処理した後、60℃で、48時間キュアリングする。上記テープ原反を8mm幅にスリットし、パンケーキを作成した。次いで、このパンケーキから長さ200m分を、カセットに組み込んでカセットテープとした。
【0068】
このテープに、市販のHi8用VTR(SONY社製 EV−BS3000)を用いて、7MHz±1MHzのC/N(キャリア対ノイズ比)の測定を行った。このC/Nを市販のHi8用ビデオテープ(SONY社製120分MP)と比較して、+3dB以上は○、+1以上+3dB未満は△、+1dB未満は×と判定した。○が望ましいが、△でも実用的には使用可能である。
【0069】
また、フィルム表面耐久性については、100回往復走行させた(走行耐久性試験)後、電磁変換特性を測定して、走行試験前後での値の変化をみて、1dB未満は○、1〜3dBは△、3dBを越えると×とした。○が望ましいが、△でも実用的には使用可能である。
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100重量部
・スルホン酸Na変成塩化ビニル共重合体 : 10重量部
・スルホン酸Na変成ポリウレタン : 10重量部
・ポリイソシアネート : 5重量部
・ステアリン酸 : 1.5重量部
・オレイン酸 : 1重量部
・カーボンブラック : 1重量部
・アルミナ : 10重量部
・メチルエチルケトン : 75重量部
・シクロヘキサノン : 75重量部
・トルエン : 75重量部
(非磁性下層塗料の組成)
・酸化チタン : 100重量部
・カーボンブラック : 10重量部
・スルホン酸Na変成塩化ビニル共重合体 : 10重量部
・スルホン酸Na変成ポリウレタン : 10重量部
・メチルエチルケトン : 30重量部
・メチルイソブチルケトン : 30重量部
・トルエン : 30重量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック(平均粒径20nm) : 95重量部
・カーボンブラック(平均粒径280nm): 10重量部
・αアルミナ : 0.1重量部
・酸化亜鉛 : 0.3重量部
・スルホン酸Na変成ポリウレタン : 20重量部
・スルホン酸Na変成塩化ビニル共重合体 : 30重量部
・シクロヘキサノン : 200重量部
・メチルエチルケトン : 300重量部
・トルエン : 100重量部
(6)磁気テープの走行耐久性および保存性
本発明の積層ポリエステルフィルムの表面に、下記組成の磁性塗料を塗布厚さ2.0μmになるように塗布し、磁気配向させ、乾燥させる。次いで反対面に下記組成のバックコート層を形成した後、カレンダー処理した後、60℃で、48時間キュアリングする。上記テープ原反を1/2インチ幅にスリットし、磁気テープとして、長さ670m分を、カセットに組み込んでカセットテープとした。
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100重量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 10重量部
・変成ポリウレタン : 10重量部
・ポリイソシアネート : 5重量部
・ステアリン酸 : 1.5重量部
・オレイン酸 : 1重量部
・カーボンブラック : 1重量部
・アルミナ : 10重量部
・メチルエチルケトン : 75重量部
・シクロヘキサノン : 75重量部
・トルエン : 75重量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック(平均粒径20nm) : 95重量部
・カーボンブラック(平均粒径280nm): 10重量部
・αアルミナ : 0.1重量部
・変成ポリウレタン : 20重量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 30重量部
・シクロヘキサノン : 200重量部
・メチルエチルケトン : 300重量部
・トルエン : 100重量部
作成したカセットテープを、IBM社製Magstar3590 MODELB1A Tape Driveを用い、100回往復走行させ、次の基準でテープの走行耐久性を評価した。○が合格品とした。
【0070】
○:テープ端面の伸び、折れ曲がりがなく、削れ跡が見られない。
【0071】
△:テープ端面の伸び、折れ曲がりがないが、一部削れ跡が見られる。
【0072】
×:テープ端面の一部が伸び、ワカメ状の変形が見られ、削れ跡が見られる。
【0073】
また、上記作成したカセットテープをIBM社製Magstar3590 MODELB1A Tape Driveに、データを読み込んだ後、カセットテープを40℃、80%RHの雰囲気中に100時間保存した後、データを再生して次の基準で、テープの保存性を評価した。○が合格品とした。
【0074】
○:トラックずれもなく、正常に再生した。
【0075】
△:テープ幅に異常がないが、一部に読みとり不可が見られる。
【0076】
×:テープ幅に変化があり、読みとり不可が見られる。
【0077】
【実施例】
次の実施例に基づき、本発明の実施形態を説明する。
実施例1(表1,2)
公知の方法により得られたポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65、滑り剤として平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.2重量%と平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.01重量%配合)のペレットを80重量%とポリエーテルイミドのペレット“ウルテム1010”(ジーイープラスチックス社 登録商標)20重量%を、280℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、剪断速度100sec-1、滞留時間1分にて溶融押出し、ポリエーテルイミドを20重量%含有したポリエステルチップを得た。得られたチップは透明であり、単一のガラス転移温度しか観測されなかった。
【0078】
押出機2台を用い、280℃に加熱された押出機Aには、ポリエチレンテレフタレート(PET)(I)(固有粘度0.65、ガラス転移温度75℃、平均径0.07μmの球状シリカ粒子0.16重量%配合)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、同じく280℃に加熱された押出機Bには、得られたポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(II)(固有粘度0.62、ガラス転移温度98℃)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、ポリエステル組成物(II)が最外層になるように3層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比II/I/II=1/10/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作成した。
【0079】
この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に1段で、温度100℃で3.2倍延伸し、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度90℃で3.8倍延伸した。続いて、ロール式延伸機で長手方向に2段で、温度135℃で1.5倍に再延伸し、テンターを用いて幅方向に温度200℃で1.4倍再延伸した。定長下で温度210℃で10秒間熱処理後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
【0080】
この積層ポリエステルフィルムの特性は、表2に示したとおり、磁気記録媒体用などの各種用途のフィルムとして優れた特性を有していた。
実施例2、3、参考例1(表1,2)実施例1と同様にして、表1のようにポリエーテルイミドの含有量を変更して、ポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物を得た後、実施例1と同様の方法で積層ポリエステルフィルムを得た。
【0081】
この積層ポリエステルフィルムの特性は、表2に示したとおり、磁気記録媒体用などの各種用途のフィルムとして優れた特性を有していた。
実施例5(表1,2)
公知の方法により得られたポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.65、平均径0.07μmの球状シリカ粒子0.16重量%配合)のペレットを80重量%とポリエーテルイミドのペレット“ウルテム1010”(ジーイープラスチックス社 登録商標)20重量%を、280℃に加熱されたベント式の2軸混練押出機に供給して、剪断速度100sec-1、滞留時間1分にて溶融押出し、ポリエーテルイミドを20重量%含有したポリエステルチップを得た。得られたチップは透明であり、単一のガラス転移温度しか観測されなかった。
【0082】
押出機2台を用い、280℃に加熱された押出機Aには、該ポリエステル組成物(I)(固有粘度0.62、ガラス転移温度98℃)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、同じく280℃に加熱された押出機Bには、実施例1と同様にして得たポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(II)(固有粘度0.62、ガラス転移温度98℃)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、3層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比II/I/II=1/10/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作成した。
【0083】
この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に1段で、温度110℃で3.2倍延伸し、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度90℃で3.8倍延伸した。続いて、ロール式延伸機で長手方向に2段で、温度150℃で1.5倍に再延伸し、テンターを用いて幅方向に温度210℃で1.4倍再延伸した。定長下で温度220℃で10秒間熱処理後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
【0084】
この積層ポリエステルフィルムの特性は、表2に示したとおり、磁気記録媒体用などの各種用途のフィルムとして優れた特性を有していた。
参考例2(表1,2)
実施例5と同様にして、ポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物を得た後、押出機2台を用い、280℃に加熱された押出機Aには、該ポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(I)(固有粘度0.62、ガラス転移温度98℃)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、同じく280℃に加熱された押出機Bには、ポリエチレンテレフタレート(PET)(II)(固有粘度0.65、ガラス転移温度75℃、滑り剤として平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.2重量%と平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.01重量%配合)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、ポリエチレンテレフタレート(II)が最外層になるように3層積層するべくTダイ中で合流させ(積層比II/I/II=1/10/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作成した。
【0085】
この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に1段で、温度105℃で3.2倍延伸した、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度90℃で3.8倍延伸した。続いて、ロール式延伸機で長手方向に2段で、温度150℃で1.5倍に再延伸し、テンターを用いて幅方向に温度210℃で1.4倍延伸した。定長下で温度215℃で10秒間熱処理後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
【0086】
参考例3(表1,2)
実施例1と同様にして、ポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物を得た後、押出機2台を用い、280℃に加熱された押出機Aには、ポリエチレンテレフタレート(PET)(I)(固有粘度0.65、ガラス転移温度75℃、平均径0.07μmの球状シリカ粒子0.16重量%配合)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、同じく280℃に加熱された押出機Bには、得られたポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(II)(固有粘度0.62、ガラス転移温度98℃)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、2層積層するべくTダイ中で合流し(積層比I/II=10/2)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作成した。
【0087】
未延伸フィルムを延伸する方法は実施例1と同様にして、2層積層ポリエステルフィルムを得た。このフィルムの特性は、表2に示したとおり、磁気記録媒体用などの各種用途のフィルムとして優れた特性を有していた。
実施例8(表1,2)
実施例1と同様にして、ポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物を得た後、押出機2台を用い、280℃に加熱された押出機Aには、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)(I)(固有粘度0.65、ガラス転移温度125℃、平均径0.07μmの球状シリカ粒子0.16重量%配合)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、同じく280℃に加熱された押出機Bには、得られたポリエーテルイミド含有ポリエステル組成物(II)(固有粘度0.62、ガラス転移温度98℃)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、ポリエステル組成物(II)が最外層になるように3層積層するべくTダイ中で合流し(積層比II/I/II=1/10/1)、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、積層未延伸フィルムを作成した。
【0088】
この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に1段で、温度135℃で5.5倍延伸し、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度135℃で4.5倍延伸した。その後、定長下で温度210℃で10秒間熱処理後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
【0089】
この積層ポリエステルフィルムの特性は、表2に示したとおり、磁気記録媒体用などの各種用途のフィルムとして優れた特性を有していた。
実施例9(表1,2)
実施例1と同様にして未延伸フィルムを得て、該未延伸フィルムの両端部をクリップで把持して、リニアモーター方式の同時二軸延伸テンターに導き、フィルム温度を100℃に加熱し、面積延伸倍率12.25倍(縦倍率:3.5倍、横倍率:3.5倍)で同時二軸延伸する。続いて、フィルム温度を150℃にして、面積延伸倍率1.96倍(縦倍率:1.4倍、横倍率:1.4倍)で同時二軸で再延伸し、定長下で温度210℃で10秒間熱処理後、縦横各方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの積層ポリエステルフィルムを得る。
【0090】
この積層ポリエステルフィルムの特性は、表2に示したとおり、磁気記録媒体用などの各種用途のフィルムとして優れた特性を有している。
比較例1(表1,2)
3層積層において、3層ともポリエチレンテレフタレート(PET)にすること以外は、実施例1と同様にして積層未延伸フィルムを作成した。
【0091】
この未延伸フィルムをロール式延伸機にて長手方向に1段で、温度95℃で3.2倍延伸し、さらに、テンターを用いて、幅方向に温度90℃で3.8倍延伸した。続いて、ロール式延伸機で長手方向に2段で、温度135℃で1.5倍に再延伸し、テンターを用いて幅方向に温度200℃で1.4倍再延伸した。定長下で温度210℃で10秒間熱処理後、幅方向に2%の弛緩処理を行い、厚さ5μmの積層ポリエステルフィルムを得た。
【0092】
この積層ポリエステルフィルムの特性は、表2に示したとおり、磁気記録媒体用などの各種用途のフィルムとして劣るものであった。
比較例2(表1,2)
ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いて、積層でなく単層フィルムとしたこと以外は、比較例1と同様にしてポリエステルフィルムを得た。
【0093】
このポリエステルフィルムの特性は、表2に示したとおり、磁気記録媒体用などの各種用途のフィルムとして劣るものであった。
比較例3(表1,2)
3層積層において、3層ともポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)にすること以外は実施例8と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。
【0094】
このポリエステルフィルムの特性は、表2に示したとおり、磁気記録媒体用などの各種用途のフィルムとして劣るものであった。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【発明の効果】
本発明によれば、フィルムのヤング率などの機械特性や寸法安定性を向上させるとともに、フィルム表面の耐久性が向上した積層ポリエステルフィルムを得ることができる。磁気記録媒体用、コンデンサー用、感熱転写リボン用、感熱孔版印刷用原紙用などの各種フィルム用途に広く活用が可能である。特に、磁気記録媒体用として、電磁変換特性や走行耐久性、保存性などに優れたベースフィルムを得ることができる。
Claims (6)
- 積層ポリエステルフィルムが少なくとも2層以上の積層構造からなり、かつ、両最外層がエチレンテレフタレート単位を主たる成分とするポリエステル(A)とポリイミド(B)からなり、ポリイミド(B)を含有する層の中でポリイミド(B)が5〜30重量%含有されていることを特徴とする積層ポリエステルフィルム。
- 積層ポリエステルフィルムのエチレンテレフタレート単位を主たる成分とするポリエステル(A)とポリイミド(B)からなる層の補外ガラス転移開始温度(Tg−onset)が90〜150℃であることを特徴とする請求項1に記載の積層ポリエステルフィルム。
- 前記ポリイミド(B)がポリエーテルイミドであることを特徴とする請求項1または2に記載の積層ポリエステルフィルム。
- 積層ポリエステルフィルムの長手方向と幅方向のヤング率の和が10〜25(GPa)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
- 積層ポリエステルフィルムの長手方向と幅方向の少なくとも一方の100℃、30分における熱収縮率が0.01〜2.0%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
- 積層ポリエステルフィルムが一軸または二軸に配向されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
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JP10923099A JP3972512B2 (ja) | 1999-04-16 | 1999-04-16 | 積層ポリエステルフィルムとその製造方法 |
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