JP4590693B2 - 二軸配向ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二軸配向ポリエステルフィルムに関し、特に高密度磁気記録媒体用として好適な二軸配向ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
二軸配向ポリエステルフィルムはその優れた熱的特性、寸法安定性および機械的特性から各種用途に使用されており、特に磁気テープ用などのベースフィルムとしての有用性は周知である。近年、磁気テープは機材の軽量化、小型化と長時間記録化のために、ベースフィルムの一層の薄膜化と高密度記録化が要求されており、磁気テープとしたときの走行耐久性および保存安定性の改善要求がますます強くなっている。しかしながら、薄膜化すると機械的強度が不十分となってフィルムの腰の強さが弱くなったり、長手方向に伸びやすく、幅方向に縮みやすくなる為、例えば磁気テープ用途では、トラックずれを起こしたり、ヘッドタッチが悪化し電磁変換特性が低下するといったような問題点がある。
【0003】
上記の要求に応え得るベースフィルムとして、従来からアラミドフィルムが、強度、寸法安定性の点から使用されている。アラミドフィルムは高価格であるためコストの点では不利であるが、代替品が無いため使用されているのが現状である。
【0004】
一方、二軸配向ポリエステルフィルム高強度化の従来技術としては、縦、横二方向に延伸したフィルムを再度縦方向に延伸して縦方向に高強度化する方法が知られている(例えば、特公昭42−9270号公報、特公昭43−3040号公報、特公昭46−1119号公報、特公昭46−1120号公報、特開昭50−133276号公報、特開昭55−22915号公報等のフィルム)が、(1)使用時にテープが切断する、(2)幅方向の剛性不足によりエッジダメージが発生する、(3)記録トラックにずれが生じて記録再生時にエラーが発生する、(4)強度が不十分で薄膜対応が難しく、所望の電磁変換特性が得られない、等の問題があり、大容量の高密度磁気記録テープへの適用に際して、多くの課題が残されているのが現状である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、走行耐久性および保存安定性に優れた二軸配向ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、長手方向に50MPa荷重負荷したときのポアソン比が0.10〜0.35の範囲であって、温度50℃、荷重28MPaで30分経過後のフィルム長手方向のクリープコンプライアンスが0.1〜0.3GPa-1の範囲であり、かつ前記荷重除去後30分経過後の残留歪みが−0.05〜0.1%の範囲であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルムによって達成される。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるポリエステルは、芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸とジオールを主たる構成成分とするポリエステルである。芳香族ジカルボン酸としては例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸等を用いることができ、なかでも好ましくは、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸を用いることができる。脂環族ジカルボン酸としては例えば、シクロヘキサンジカルボン酸などを用いることができる。脂肪族ジカルボン酸としては例えば、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等を用いることができる。これらの酸成分は一種のみ用いてもよく、二種以上併用してもよく、さらには、ヒドロキシエトキシ安息香酸などのオキシ酸等を一部共重合してもよい。
【0008】
また、ジオール成分としては例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、2,2’−ビス(4’−βーヒドロキシエトキシフェニル)プロパン等を用いることができる。なかでも好ましくは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール等であり、特に好ましくは、エチレングリコールである。これらのジオール成分は一種のみ用いてもよく、二種以上併用してもよい。
【0009】
また、ポリエステルにはトリメリット酸、ピロメリット酸、グリセロール、ペンタエリスリトール、2,4−ジオキシ安息香酸、ラウリルアルコール、イソシアン酸フェニル等の多官能化合物を、ポリマーが実質的に線上である範囲内で共重合させてもよい。
【0010】
本発明のポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート、またはこれらの共重合体、および変性体が好ましい。
【0011】
また、本発明に用いられるポリエステルには、ポリエーテルイミドを5〜30重量%の範囲で含有してもよい。用いられるポリエーテルイミドとしては、脂肪族、脂環族または芳香族系のエーテル単位と環状イミド基を繰り返し単位として含有するポリマーであり、溶融成形性を有するポリマーであれば、特に限定されない。例えば、米国特許第4141927号、特許第2622678号、特許第2606912号、特許第2606914号、特許第2596565号、特許第2596566号、特許第2598478号のポリエーテルイミド、特許第2598536号、特許第2599171号、特開平9−48852号公報、特許第2565556号、特許第2564636号、特許第2564637号、特許第2563548号、特許第2563547号、特許第2558341号、特許第2558339号、特許第2834580号に記載のポリマーである。本発明の効果を阻害しない範囲であれば、ポリエーテルイミドの主鎖に環状イミド、エーテル単位以外の構造単位、例えば、芳香族、脂肪族、脂環族エステル単位、オキシカルボニル単位等が含有されていても良い。本発明では、ガラス転移温度が350℃以下、より好ましくは250℃以下のポリエーテルイミドが好ましく、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物とm−フェニレンジアミンまたはp−フェニレンジアミンとの縮合物が、ポリエステルとの相溶性、コスト、溶融成型性等の観点から最も好ましい。このポリエーテルイミドは、「Ultem」(登録商標)の商標名で、GeneralElectric社より入手可能である。
【0012】
また必要に応じて、相溶化剤を添加すれば、分散径を制御できるため好ましい。この場合、相溶化剤の種類は、ポリマーの種類によって異なるが、添加量は0.01〜10重量%が好ましい。
【0013】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、不活性粒子を含有することが好ましい。不活性粒子としては、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、湿式または乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、ケイ酸アルミニウム、アルミナおよびジルコニア等の無粒子、アクリル酸、スチレン等を構成成分とする有機粒子、ポリエステル重合反応時に添加する触媒等によって析出する、いわゆる内部粒子等を挙げることができる。この中でも、高分子架橋粒子、アルミナ、球状シリカ、ケイ酸アルミニウムが特に好ましく例示される。
【0014】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、本発明を阻害しない範囲内で、その他の各種添加剤、例えば熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、脂肪酸エステル、ワックスなどの有機滑剤などを添加することもできる。
【0015】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムに含有される不活性粒子の平均粒径は0.001〜2μmが好ましく、より好ましくは0.005〜1μm、さらに好ましくは0.01〜0.5μmである。0.001μmより小さい場合は、フィルム表面突起としての役割を果たさないので好ましくなく、2μmより大きい場合には、粗大突起として脱落しやすくなるため好ましくない。
【0016】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムに含有される不活性粒子の含有量は、0.01〜3重量%が好ましく、より好ましくは0.02〜1重量%、さらに好ましくは0.05〜0.5重量%である。0.01重量%より少ない場合は、フィルムの走行特性等に有効でないので好ましくなく、3重量%より多い場合には、凝集して粗大突起となり脱落しやすくなるため好ましくない。
【0017】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、単層であっても良いし、2層以上の積層構造であっても良い。本発明では、フィルムの基層部の片側にフィルムの走行性やハンドリング性を良化させる役割を担うフィルム層を薄膜積層した2層構造をとるものが特に好ましい。なお、基層部とは、層厚みにおいて、最も厚みの厚い層のことであり、それ以外が積層部である。磁気材料用途で重要とされる弾性率や寸法安定性等の物性は、主に基層部の物性によって決定される。
【0018】
本発明のフィルム層の積層部は、不活性粒子の平均粒径d(nm)と積層厚さt(nm)との関係が、0.2d≦t≦10dである場合、均一な高さの突起が得られるため好ましい。
【0019】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、長手方向に50MPa荷重負荷したときのポアソン比が、0.10〜0.35の範囲であって、温度50℃、荷重28MPaで30分経過後のフィルム長手方向のクリープコンプライアンスが0.1〜0.3GPa-1の範囲であり、かつ前記荷重除去後30分経過後の残留歪みが−0.05〜0.1%の範囲であることが必要である。
【0020】
最近の磁気材料用途においては、長時間記録化のためのベースフィルムの一層の薄膜化と高密度記録化が要求されている。本発明では、その要求を満たすための最も重要な特性として、磁気テープへの加工工程や、テープ使用環境の温度、湿度、張力等の条件下でのテープの長手方向の伸び変形、および幅方向の寸法安定性に着目した。その寸法安定性の指標として、ポアソン比、クリープコンプライアンスおよび残留歪みを上記範囲にすることによって、テープ使用環境の温度、湿度、張力に対する長手方向および幅方向の変形が少ない、寸法安定性に優れた高剛性の二軸配向ポリエステルフィルムが得られることがわかった。
【0021】
ポアソン比とは、長手方向に張力を負荷したときの、長手方向の伸び率に対する、幅方向の収縮率の比である。ポアソン比が0.35より大きくなると、テープ加工時に幅方向の収縮が大きくなり、寸法安定性が悪化する。また磁気テープとしたときの記録再生時に、長手方向の応力伸び変形による幅方向の収縮が生じ、記録トラックのずれが発生する。さらにドロップアウトが多発して、データの保存安定性も悪化する。ポアソン比が0.10より小さい値は、ポリエステルフィルムでは到達困難な領域である。ポアソン比は、より好ましくは0.12〜0.32、さらに好ましくは0.14〜0.30の範囲である。
【0022】
本発明のクリープコンプライアンスは、50℃で測定している。この50℃とは、磁気テープの記録再生時の磁気ヘッドとの摩擦等によって、テープ周辺の温度が上昇する最高温度であり、テープの使用環境を想定した条件である。クリープコンプライアンスが0.3GPa-1以上になると、磁気テープの記録再生時の張力により、伸び変形しやすくなり、走行耐久性が悪化したり、トラックずれの原因となる。また0.1GPa-1以下になると、テープが破断しやすくなる。クリープコンプライアンスは、より好ましくは0.13〜0.27GPa-1、さらに好ましくは0.16〜0.24GPa-1の範囲である。
【0023】
荷重除去後30分経過後の残留歪みが0.1%以上になると、磁気テープの記録再生時の張力による伸び変形の一部が、永久歪みとして残りやすくなり、トラックずれの原因となる。また−0.05%以下になると、磁気テープの記録再生を停止したときに長手方向に膨張しやすくなり、しわの発生や巻乱れの原因となる。残留歪みは、より好ましくは−0.02〜0.08%、さらに好ましくは0〜0.06%の範囲である。
【0024】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムでは、幅方向の100℃30分間での熱収縮率は、テープ加工工程での熱履歴によるしわ発生抑制の観点からは−0.2%以上であることが好ましく、磁気テープと磁気記録ヘッドとの摩擦熱や、テープ加工工程での熱履歴による幅方向の収縮の抑制、フィルム表面の耐久性、データの保存安定性などの観点からは、0.5%以下であることが好ましい。さらに好ましくは−0.1〜0.4%、最も好ましくは0〜0.3%の範囲である。ここで、マイナスは膨張していることを表している。
【0025】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、張力による磁気テープの伸び変形抑制や、電磁変換特性の観点から、長手方向の弾性率が6GPa以上であることが好ましく、テープ破断の抑制の観点から15GPa以下であることが好ましい。さらに好ましくは6.5〜14.5GPaの範囲、最も好ましくは7〜14GPaの範囲である。また、幅方向の弾性率は、長手方向への張力による幅方向の収縮の抑制の観点から4GPa以上であることが好ましく、長手方向の強度を抑制しない観点から13GPa以下であることが好ましい。より好ましくは4.5〜12GPa、さらに好ましくは5GPa〜11GPaの範囲である。
【0026】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、一方のフィルム表面(A面)の表面粗さRaAは、磁気ヘッドとの摩擦軽減の観点から、3nm以上であることが好ましく、電磁変換特性の観点から10nm以下であることが好ましい。また、A面の反対側のフィルム表面(B面)の表面粗さRaBは、加工工程でのハンドリング性の観点から、5nm以上であることが好ましく、テープとして巻いたときの押し圧による転写軽減の観点から、17nm以下であることが好ましい。より好ましくはRaAが3〜9nm、RaBが6〜16nmの範囲であり、さらに好ましくはRaAが4〜8nm、RaBが7〜15nmの範囲である。
【0027】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、磁気テープへの加工工程や、磁気テープの記録再生時の高温条件下での寸法安定性の観点から、温度膨張係数(α)が、−10×10-6〜10×10-6(/℃)の範囲にあることが好ましい。ここで、−(マイナス)は、収縮することを示している。さらに好ましくは、−8×10-6〜9×10-6(/℃)、最も好ましくは、−6×10-6〜8×10-6(/℃)の範囲である。
【0028】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、磁気テープへの加工工程や、磁気テープの記録再生時の高湿条件下での寸法安定性の観点から、湿度膨張係数(β)が、1×10-6〜12×10-6(/%RH)の範囲にあることが好ましい。さらに好ましくは、2×10-6〜11×10-6(/%RH)、最も好ましくは、3×10-6〜10×10-6(/%RH)の範囲である。
【0029】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムにおいて、1/2インチ幅の磁気テープに加工し、温湿度、張力負荷条件で走行させた時の、幅方向のトラックずれは、テープの巻き姿、ドロップアウト抑制の観点から、0〜1μmの範囲であることが好ましい。また、最大寸法変化幅は、テープの走行耐久性やデータの保存安定性の観点から、0〜3μmの範囲であることが好ましい。トラックずれについては、さらに好ましくは0〜0.8μm、最も好ましくは0〜0.5μmの範囲である。最大寸法変化幅については、さらに好ましくは、0〜2μm、最も好ましくは0〜1.5μmの範囲である。
【0030】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、磁気記録テープ用、コンデンサー用、感熱転写リボン用、感熱孔版印刷原紙用などに好ましく用いられる。特に好ましい用途は、均一で微細な表面形態を必要とするデータストレージ用などの高密度磁気記録媒体である。そのデータ記録容量としては、好ましくは30GB(ギガバイト)以上、より好ましくは70GB以上、さらに好ましくは100GB以上である。また、該高密度磁気記録媒体用ベースフィルムの厚みは、3〜7μmが好ましい。より好ましくは3.5〜6.5μm、さらに好ましくは4〜6μmである。
【0031】
高密度磁気記録媒体として用いる場合、磁性層としては、強磁性金属薄膜や、強磁性金属微粉末を結合剤中に分散してなる磁性層や金属酸化物塗布による磁性層などが好適な例として挙げられる。強磁性金属薄膜としては、鉄、コバルト、ニッケルやその他の合金等が好ましい。また、強磁性金属微粉末としては、強磁性六方晶フェライト微粉末や、鉄、コバルト、ニッケルやその他の合金等が好ましい。結合剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂や、これらの混合物などが好ましい。
【0032】
磁性層の形成法は、磁性粉を熱可塑性、熱硬化性、あるいは放射線硬化性などの結合剤と混練し、塗布、乾燥を行う塗布法、金属または合金を蒸着法、スパッタリング法、イオンプレコーティング法などにより、基材フィルム上に直接磁性金属薄膜層を形成する乾式法のいずれの方式も採用できる。
【0033】
本発明の磁気記録媒体においては、強磁性金属薄膜上に保護膜が設けられていてもよい。この保護膜によって、さらに走行耐久性、耐食性を改善することができる。保護膜としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化コバルト、酸化ニッケルなどの酸化物保護膜、窒化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素などの窒化物保護膜、炭化ケイ素、炭化クロム、炭化ホウ素等の炭化物保護膜、グラファイト、無定型カーボン等の炭素からなる炭素保護膜があげられる。
【0034】
前記炭素保護膜は、プラズマCVD法、スパッタリング法等で作成したアモルファス構造、グラファイト構造、ダイヤモンド構造、もしくはこれらの混合物からなるカーボン膜であり、特に好ましくは一般にダイヤモンドライクカーボンと呼ばれる硬質カーボン膜である。
【0035】
また、この硬質炭素保護膜上に付与する潤滑剤との密着をさらに向上させる目的で、硬質炭素保護膜表面を酸化性もしくは不活性気体のプラズマによって表面処理しても良い。
【0036】
本発明では、磁気記録媒体の走行耐久性および耐食性を改善するため、上記磁性膜もしくは保護膜上に、潤滑剤や防錆剤を付与することが好ましい。
【0037】
次に本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法について説明する。ただし、本発明は以下の方法に限定されるものではない。
【0038】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、ポリエステル樹脂を溶融成形したシートを、長手方向と幅方向に逐次二軸延伸または/および同時二軸延伸により延伸配向を付与したフィルムであり、長手、幅方向に一段階の二軸延伸を行った後、幅方向に多段階で微延伸を行い、さらに長手、幅方向に延伸を重ねて、高度に配向させることにより得られる。
【0039】
以下に、具体的な製造方法をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの逐次二軸延伸の場合を例として説明する。
【0040】
まず、常法に従い、テレフタル酸とエチレングリコールをエステル化し、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールをエステル交換反応し、ビス−β−ヒドロキシエチルテレフタレート(BHT)を得る。次にこのBHTを重合槽に移行し、真空下で280℃に加熱して重合反応を進める。ここで、固有粘度が0.5程度のポリエステルを得る。得られたポリエステルをペレット状で減圧下において固相重合する。固相重合する場合は、あらかじめ180℃以下の温度で予備結晶化させた後、190〜250℃で1mmhg程度の減圧下、10〜50時間固相重合させる。また、ポリエステルに粒子を含有させるために、上記の重合に際して、エチレングリコールに粒子を所定割合にてスラリーの形で分散させ、このエチレングリコールをテレフタル酸と重合させる方法も好ましい。粒子を添加する際には、例えば、粒子の合成時に得られる水ゾルやアルコールゾルを一旦乾燥させることなく添加すると粒子の分散性がよい。また、粒子の水スラリーをポリエステルのペレットと混合し、ベント式二軸混練押出機を用いて、ポリエステルに練り混む方法も有効である。粒子の含有量、個数を調整する方法としては、上記方法で高濃度の粒子マスターを作っておき、それをフィルム製膜時に粒子を実質的に含有しないポリエステルや他の熱可塑性樹脂またはそれらの混合物で希釈して、粒子の含有量を調整する方法が有効である。高濃度不活性粒子含有ポリエステルのペレットを、粒子を実質的に含有しないポリエステルのペレットと混合し、180℃で3時間以上、真空乾燥した後、270〜300℃で溶融押出し、繊維焼結ステンレス金属フィルター内を通過させた後、T型口金よりシート状に吐出する。この溶融されたシートを、表面温度25〜30℃に冷却されたドラム上に静電気力で密着させて冷却固化し、実質的に無配向状態の未延伸ポリエステルフィルムを得る。
【0041】
次に、この未延伸フィルムを二軸延伸し、二軸配向させる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法または同時二軸延伸法を用いることができる。ここでは、数本のロールの配置された縦延伸機を用いて、ロールの周速差を利用して縦方向に延伸し(MD延伸1)、続いてステンターにより横延伸を行い(TD延伸1)、さらにロール縦延伸機で再縦延伸を行い(MD延伸2)、再度ステンターにより横延伸を行う(TD延伸2)二軸延伸方法について説明する。
【0042】
まず、未延伸ポリエステルフィルムを加熱ロール群で加熱し、長手方向に1.1〜5.0倍、好ましくは、1.5〜4.0倍、さらに好ましくは2.0〜3.5倍に延伸する(MD延伸1)。延伸温度は(Tg(ポリエステルのガラス転移温度)−100)〜(Tg+100)℃の範囲が好ましく、より好ましくは(Tg−50)〜(Tg+50)℃の範囲、さらに好ましくは(Tg−30)〜(Tg+30)℃の範囲である。その後20〜50℃の冷却ロール群で冷却し、このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸1−1)。延伸温度は(Tg−100)〜(Tg+100)℃が好ましく、より好ましくは(Tg−50)〜(Tg+50)℃、さらに好ましくは(Tg−30)〜(Tg+30)℃の範囲である。延伸倍率は、2.0〜6.0倍が好ましく、より好ましくは3.0〜5.0倍、さらに好ましくは3.5〜4.5倍の範囲である。さらに、幅方向に微延伸(TD延伸1−2)する。延伸温度はTg〜(Tg+50)℃の範囲が好ましく、延伸倍率は1.1〜1.3倍の範囲で行うことが好ましい。最も好ましくは、上記延伸温度範囲内で段階的に昇温しながら、上記延伸倍率の範囲内で2段階以上の多段階で上記の幅方向の微延伸を行う。この微延伸を行うことによって、幅方向の配向度が向上し、構造が固定され、本発明の二軸配向ポリエステルフィルムが得られやすいので、好ましい。
【0043】
さらにフィルムを加熱ロール群で加熱し、長手方向に1.1〜4.0倍、好ましくは1.3〜3.0倍、さらに好ましくは1.5〜2.5倍に再縦延伸し、20〜50℃の冷却ロール群で冷却する(MD延伸2)。延伸温度は(Tg−50)〜(Tg+100)℃の範囲が好ましく、より好ましくは(Tg−20)〜(Tg+80)℃の範囲、さらに好ましくは(Tg−10)〜(Tg+50)℃の範囲である。次に、ステンターを用いて再び幅方向の延伸を行う(TD延伸2)。延伸温度はTg〜250℃の範囲が好ましく、より好ましくは(Tg+20)〜240℃の範囲、さらに好ましくは(Tg+40)〜220℃の範囲、延伸倍率は1.1〜2.5倍が好ましく、より好ましくは1.15〜2.2倍、さらに好ましくは1.2〜2.0倍で行う。この延伸フィルムを緊張下または幅方向に弛緩しながら熱固定する。好ましい熱固定温度は、150〜250℃、より好ましくは170〜240℃、さらに好ましくは160〜220℃の範囲である。さらにこのフィルムを40〜180℃の温度ゾーンで幅方向に弛緩しながら冷却するのが好ましい。この時、120〜180℃の範囲と40〜120℃の範囲の2段階以上で徐冷するのが好ましい。その後、フィルムエッジを除去し、ロールに巻き取る。さらに必要に応じて、フィルムをコアに巻いた状態(ロール状フィルム)で、熱風オーブン内で加熱処理することもできる。好ましい処理温度は、(Tg−10)〜(Tg−60)℃の範囲、より好ましくは(Tg−15)〜(Tg−55)℃の範囲、さらに好ましくは(Tg−20)〜(Tg−50)℃の範囲である。好ましい処理時間は、10〜360時間の範囲、より好ましくは24〜240時間の範囲、さらに好ましくは72〜168時間である。また、このロール状フィルムでの加熱処理を、上記温度および時間の範囲内で、温度、時間を変更して2段階以上の多段階で行うこともできる。このロール状加熱処理を行うことによって、クリープ特性等の寸法安定性が改良されるので好ましい。
【0044】
[物性の測定方法ならびに効果の評価方法]
特性値の測定法法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
【0045】
(1)ポアソン比
フィルムの長手方向に対して、幅20mmにサンプリングし、フィルムの中央に10mm角の格子を書いた。23℃、65%RHの雰囲気下で、試長110mmとなるように、(株)アヤハエンジニアリング製シート幅測定装置にセットし、キーエンス(株)製高性能レーザー寸法測定器2台を用いて、格子の長手方向および幅方向の寸法を各々読みとった。そのフィルムの長手方向に50MPaの荷重を負荷したときの、格子の長手方向の寸法変化率(ΔLMD %)と幅方向の寸法変化率(ΔLTD %)を読みとり、次式
ポアソン比=(ΔLTD/ΔLMD)
より、ポアソン比を求めた。
【0046】
(2)クリープコンプライアンスおよび残留歪み
フィルムを幅4mmにサンプリングし、試長15mmになるように、真空理工(株)製TMA TM−3000および加熱制御部TA−1500にセットし、50℃、65%RHの条件に合わせた。その時のフィルムの長さをL0 (μm)とした。その後28MPaの荷重をフィルムにかけて、30分間保持した時のフィルムの長さをL30(μm)とした。さらに、荷重を除去し、30分間保持した時のフィルムの長さをL60(μm)とした。フィルム伸縮量の経時変化を測定し、次式
クリープコンプライアンス(GPa-1)=(L30−L0)/15000/0.028
残留歪み(%)=(L60−L0)/15000×100
より、クリープコンプライアンスおよび残留歪みを算出した。ここで、クリープとは、一定応力のもとで歪みが時間と共に増大する現象のことであり、クリープコンプライアンスとは、この歪みと一定応力の比であり、「高分子化学序論(第2版)」((株)化学同人発行)p150に記載されたものである。
【0047】
(3)熱収縮率
JIS−C2318に規定された方法に従って、幅10mm、標線間隔約100mmのサンプルを、温度100℃、荷重0.5g、で30分間熱処理した。その熱処理前後の標線間隔を、(株)テクノニーズ製熱収縮率測定器を用いて測定し、次式
熱収縮率(%)=[(L0−L)/L0]×100
L0:加熱処理前の標線間隔
L:加熱処理後の標線間隔
から熱収縮率を算出した。
【0048】
(4)弾性率
ASTM−D882に規定された方法に従って、オリエンテック(株)製フイルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”用いて、幅10mm、試長100mmのサンプルを、温度23℃、湿度65%RH、引張り速度200mm/分の条件で、5回測定を行った平均値とした。
【0049】
(5)表面粗さRa
小坂研究所製の高精度薄膜段差測定器ET−10を用いて、触針先端半径0.5m、触針荷重5mg、測定長1mm、カットオフ値0.08mmでの中心線平均粗さRaを、フィルム幅方向に走査して、20回測定を行った平均値とした。
【0050】
(6)温度膨張係数(/℃)
フィルムを幅4mmにサンプリングし、試長15mmになるように、真空理工(株)製TMA TM−3000および加熱制御部TA−1500にセットした。15%RHの条件下、0.5gの荷重をフィルムにかけて、温度を室温(23℃)から50℃まで上昇させた後、一旦、室温まで温度を戻した。その後、再度温度を室温から50℃まで上昇させた。その時の、30℃から40℃までのフィルムの変位量(ΔL μm)を測定し、次式
温度膨張係数(/℃)={ΔL/(15×1000)}/(40−30)
から温度膨張係数を算出した。
【0051】
(7)湿度膨張係数(/%RH)
フィルムを幅10mmにサンプリングし、試長200mmになるように、大倉インダストリー製のテープ伸び試験器にセットし、温度30℃で、湿度を40%RHから80%RHまで変化させ、変位量(ΔL mm)を測定し、次式
湿度膨張係数(/%RH)=(ΔL/200)/(80−40)
から湿度膨張係数を算出した。
【0052】
(8)ガラス転移温度Tg
TA Instruments社製DSC2920(2)を用いて、下記条件で比熱測定を行い、JIS K7121に従って決定した。
測定条件
加熱温度 :270〜540K(RCS冷却法)
温度校正 :高純度インジウムおよびスズの融点
温度変調振幅:±1K
温度変調周期:60秒
平均昇温速度:1K/min
試料重量 :約10mg
試料容器 :アルミニウム製開放型容器(33mg)
次式
ガラス転移温度=(補外ガラス転移開始温度+補外ガラス転移終了温度)/2からガラス転移温度を算出した。
【0053】
(9)固有粘度η
オルトクロロフェノール中、25℃でオストワルド粘度計を用いて測定した溶液粘度(dl/g)、溶媒粘度(dl/g)から、次式
ηsp/C=[η]+K[η]2・C
を用いて固有粘度を算出した。
【0054】
ここで、ηsp=(溶液粘度/溶媒粘度)−1であり、Cは溶媒100mlあたりの溶解ポリマー重量(g/100ml、通常1.2)、Kはハギンス定数(0.343とする)である。
【0055】
(10)磁気テープの走行耐久性および保存安定性
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの表面に、下記組成の磁性塗料を塗布厚さ2.0μmになるように塗布し、磁気配向させ、乾燥させる。次いで反対面に下記組成のバックコートを塗布し、カレンダー処理した後、70℃で、48時間キュアリングする。上記テープ原反を1/2インチ幅にスリットし、磁気テープとして、長さ670m分を、カセットに組み込んでカセットテープとした。
(磁性塗料の組成)
・強磁性金属粉末 : 100重量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 10重量部
・変成ポリウレタン : 10重量部
・ポリイソシアネート : 5重量部
・ステアリン酸 : 1.5重量部
・オレイン酸 : 1重量部
・カーボンブラック : 1重量部
・アルミナ : 10重量部
・メチルエチルケトン : 75重量部
・シクロヘキサノン : 75重量部
・トルエン : 75重量部
(バックコートの組成)
・カーボンブラック(平均粒径20nm) : 95重量部
・カーボンブラック(平均粒径280nm): 10重量部
・αアルミナ : 0.1重量部
・変成ポリウレタン : 20重量部
・変成塩化ビニル共重合体 : 30重量部
・シクロヘキサノン : 200重量部
・メチルエチルケトン : 300重量部
・トルエン : 100重量部
作成したカセットテープを、IBM製Magstar3590 MODEL B1A Tape Driveを用い、100時間走行させ、次の基準
○:テープ端面の伸び、折れ曲がりがなく、削れ跡が見られない
△:テープ端面の伸び、折れ曲がりはないが、一部削れ跡が見られる
×:テープ端面の一部が伸び、ワカメ状の変形が見られ、削れ跡が見られるでテープの走行耐久性を評価した。
【0056】
また、上記作成したカセットテープをIBM製Magstar3590 MODEL B1A Tape Driveを用い、データを読み込んだ後、カセットテープを60℃、80%RHの雰囲気中に100時間保存した後、データを再生して次の基準
○:テープ幅に異常がなく、トラックずれも無く、正常に再生した
△:テープ幅に異常が無いが、一部に読みとり不可が見られる
×:テープ幅に変化があり、読みとり不可が見られる
で、テープの保存安定性を評価した。
【0057】
(11)トラックずれ、最大寸法変化幅
上記で作成したカセットテープを、下記の1〜5の条件で順番に走行させたときの、幅方向の寸法変化を常時読みとり、下記のとおり最大寸法変化幅および走行前後でのトラックずれを求めた。幅方向の寸法変化は、サーボからテープまでの距離(約1.5mm)の変化で測定した。20℃、50%RH条件下でのサーボからテープまでの距離の初期値をL0(μm)、下記条件3で走行させた後のサーボからテープまでの距離をL1(μm)、下記条件5で走行させた後のサーボからテープまでの距離をL2(μm)とした。
【0058】
上記で作成したカセットテープを、IBM製Magstar3590 MODEL B1A Tape Driveを用い、下記の1〜5の条件で順番に走行させた時の幅方向の寸法変化をレーザ寸法測定器で常時読みとり、下記のとおり最大寸法変化幅および、走行前後でのトラックずれを求めた。幅方向の寸法変化は、サーボからテープまでの距離(約1.5mm)の走行前後の距離の変化で表す。
【0059】
条件1:25℃、60%RH、張力 90g 走行回数 3回
条件2:25℃、60%RH、張力150g 走行回数 3回
条件3:50℃、60%RH、張力150g 走行回数 100回
条件4:25℃、60%RH、張力150g 走行回数 3回
条件5:25℃、60%RH、張力 90g 走行回数 3回
25℃、60%RH条件下でのサーボからテープまでの距離:L0
条件3で走行させた後のサーボからテープまでの距離:L1
条件5で走行させた後のサーボからテープまでの距離:L2
トラックずれ(μm)=|L0−L2|
最大寸法変化幅(μm)=|L0−L1|
(12)フィルムの加工適性
500mm幅に巻き取られたフィルムを、アンワインダーから巻出しながら、搬送速度20m/分で、井上金属工業株式会社製のオーブン処理装置に供給し、180℃の熱処理を施して、100mの長さで巻き取った。その際に、蛇行などにより、巻き取ったフィルムの端部が10mmを超えて突出して不揃いとなったものを「×」、端部の突出が5mm以上、10mm以下のもの、また、5mm未満であるが加工中にしわが観測されたものを「△」、端部の突出が5mm未満であり、かつ加工中にしわが観測されなかったものを「○」とした。
【0060】
(13)電磁変換特性(C/N)
フィルム表面に、下記組成の磁性塗料および非磁性塗料をエクストルージョンコーターにより重層塗布(上層は磁性塗料で、塗布厚0.1μm、非磁性下層の厚みは適宜変化させた。)し、磁気配向させ、乾燥させる。次いで反対面に下記組成のバックコート層を形成した後、小型テストカレンダー装置(スチール/ナイロンロール、5段)で、温度85℃、線圧200kg/cmでカレンダー処理した後、60℃で、48時間キュアリングする。上記テープ原反を8mm幅にスリットし、パンケーキを作成した。次いで、このパンケーキから長さ200m分をカセットに組み込んで、カセットテープとした。
【0061】
このテープについて、市販のHi8用VTR(SONY社製 EV−BS3000)を用いて、7MHz±1MHzのC/Nの測定を行った。このC/Nを市販されているHi8用MPビデオテープと比較して、次の通りランク付けした。
【0062】
+3dB以上のもの :◎
+1dB以上、+3dB未満のもの :○
+1dB未満のもの :×
【0063】
【実施例】
以下に、本発明の効果をより明確にするために実施例、比較例を示す。
【0064】
実施例1
押出機A、B2台を用い、280℃に加熱された押出機Aには、ポリエチレンテレフタレート(PET)−I(固有粘度0.62、平均径0.3μmの球状シリカ粒子0.4重量%配合)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、同じく280℃に加熱された押出機Bには、PET−II(平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子1.0重量%と平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.1重量%配合)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給した。溶融したPET−IおよびPET−IIをTダイ中で合流させ、表面温度25℃のキャストドラム上に静電印加法により密着させて冷却固化し、積層厚みの比がPET−I/PET−II=14/1の積層未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを表1に示す条件で延伸を行った。まず、数本のロールの配置された縦延伸機を用いて、ロールの周速差を利用して長手方向に延伸(MD延伸1)を行い、冷却した。このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向に延伸(TD延伸1−1)し、さらに、幅方向に2段階に微延伸(TD延伸1−2、1−3)を行った。このフィルムをロール縦延伸機で再縦延伸(MD延伸2)後、ステンターにより再横延伸(TD延伸2)、209℃の温度で熱固定を施し、123℃の冷却ゾーンで幅方向に2.5%、さらに105℃のゾーンで幅方向に0.5%の弛緩率で弛緩処理した後、フィルムを室温まで徐冷して巻取った。フィルム厚みは、押出量を調節して4.5μmのポリエステルフィルムを得た。
【0065】
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの各物性を表2、表3に示す。このフィルムは、表3に示したとおり、走行耐久性、保存安定性、トラックずれ、最大寸法変化幅、加工適性、電磁変換特性に優れていた。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
比較例1
280℃に加熱された押出機に、PET(平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子1.0重量%と平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.1重量%配合)のペレットを180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、Tダイより押出、表面温度25℃のキャストドラム上に静電印加法により密着させて冷却固化し、単層未延伸フィルムを得、延伸条件を表1のように変更し、幅方向の2段目の微延伸(TD延伸1−3)を行わなかったこと以外は、実施例1と同様に行った。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの各物性を表2、表3に示す。
【0070】
実施例2
実施例1と同様の方法にて、積層未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを、表1に示した条件に変更した以外は実施例1と同様に、延伸、熱固定、弛緩処理を行い、徐冷して巻き取り、厚さ5.0μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムを、ロール状のまま50℃に調節された熱風オーブン内で、24時間熱処理を行った。
【0071】
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの各物性を表2、表3に示す。このフィルムは、表3に示したとおり、走行耐久性、保存安定性、トラックずれ、最大寸法変化幅、加工適性、電磁変換特性に優れていた。
【0072】
比較例2
延伸条件を表1のように変更し、幅方向の微延伸(TD延伸1−2、1−3)を行わなかったこと以外は、実施例2と同様に行った。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの各物性を表2、表3に示す。
【0073】
実施例3
ポリエチレンテレフタレートをポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート(PEN)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、積層未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを、表1に示した条件に変更した以外は実施例1と同様に、延伸、熱固定、弛緩処理を行い、厚さ4.5μmのポリエステルフィルムを得た。
【0074】
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの各物性を表2、表3に示す。このフィルムは、表3に示したとおり、走行耐久性、保存安定性、トラックずれ、最大寸法変化幅、加工適性、電磁変換特性に優れていた。
【0075】
比較例3
延伸条件を表1のように変更し、幅方向の2段目の微延伸(TD延伸1−3)を行わなかったこと以外は、実施例3と同様に行った。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの各物性を表2、表3に示す。
【0076】
実施例4
実施例3と同様の方法にて、積層未延伸フィルムを得た。該未延伸フィルムを、表1に示した条件に変更した以外は実施例3と同様にして、延伸、熱固定、弛緩処理を行い、厚さ4.2μmのポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムを、ロール状のまま90℃に調節された熱風オーブン内で、72時間熱処理を行った。
【0077】
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの各物性を表2、表3に示す。このフィルムは、表3に示したとおり、走行耐久性、保存安定性、トラックずれ、最大寸法変化幅、加工適性、電磁変換特性に優れていた。
【0078】
比較例4
延伸条件を表1のように変更し、幅方向の2段階の微延伸(TD延伸1−2、1−3)を行わなかったこと以外は、実施例4と同様に行った。得られた二軸配向ポリエステルフィルムの各物性を表2、表3に示す。
【0079】
実施例5
常法により得られたPET(固有粘度0.85)のペレット(50重量%)とポリエーテルイミド(PEI)のペレット(”Ultem”1010(General Electric社 登録商標))(50重量%)を280℃に加熱されたベント式の二軸混練押出機に供給して、剪断速度100sec-1、滞留時間1分にて溶融押出し、PEIを50重量%含有したペレット(I)を得た。押出機A、B2台を用い、280℃に加熱された押出機Aには、得られたPEI含有ペレット(I)とPET(固有粘度0.62、平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.4重量%配合)のペレット(II)を10:90の重量比でドライブレンドしたもの(PET/PEI−III)を180℃で3時間真空乾燥した後に供給し、同じく280℃に加熱された押出機Bには、PET(固有粘度0.62、平均径0.3μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.7重量%と平均径0.8μmの球状架橋ポリスチレン粒子0.1重量%配合)のペレット(IV)を180℃で3時間真空乾燥した後に供給した。これらをTダイ中で合流させ、表面温度25℃のキャストドラム上に、静電印加法により密着させて冷却固化し、積層厚みの比が(PET/PEI−III)/PET−IV=18/1のPEI含有の積層未延伸フィルムを得た。この得られたフィルムを表1に示した条件で、実施例1と同様に延伸、熱固定、弛緩処理を行い、室温まで徐冷して巻取った。フィルム厚みは押出量を調節して5.1μmに合わせた。
【0080】
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの各物性を表2、表3に示す。このフィルムは、表3に示したとおり、走行耐久性、保存安定性、トラックずれ、最大寸法変化幅、加工適性、電磁変換特性に優れていた。
【0081】
実施例6
実施例1と同様にして積層未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを表1に示す条件で延伸を行った。まず、フィルムの両端をクリップで把持して、同時二軸延伸テンターに導き、長手方向および幅方向に同時二軸延伸(MD延伸1×TD延伸1−1)を行い、次に幅方向にのみ2段階で微延伸(TD延伸1−2、1−3)を行った。さらに、長手方向および幅方向に再同時二軸延伸(MD延伸2×TD延伸2)を行い、215℃の温度で熱固定を施した後、120℃の冷却ゾーンで幅方向に2.1%、さらに102℃のゾーンで幅方向に0.6%の弛緩率で弛緩処理して、フィルムを室温まで徐冷して、巻き取った。フィルム厚みは、押出量を調節して5.2μmに合わせた。
【0082】
得られた二軸配向ポリエステルフィルムの各物性を表2、表3に示す。このフィルムは、表3に示したとおり、走行耐久性、保存安定性、トラックずれ、最大寸法変化幅、加工適性、電磁変換特性に優れていた。
【0083】
【発明の効果】
本発明の二軸配向フィルムは、長手方向に50MPa荷重負荷したときのポアソン比が小さく、50℃でのフィルム長手方向のクリープコンプライアンスおよび残留歪みを本発明の範囲とすることで、特に高密度磁気記録媒体のベースフィルムに適したものとなり、フィルム加工時の寸法安定性が良好で、磁気テープとしたときの記録トラックずれが起こりにくく、走行耐久性および保存安定性、電磁変換特性に優れたフィルムとなり、その工業的価値は極めて高い。
Claims (5)
- 長手方向に50MPa荷重負荷したときのポアソン比が0.10〜0.35の範囲であって、温度50℃、荷重28MPaで30分経過後のフィルム長手方向のクリープコンプライアンスが0.1〜0.3GPa-1の範囲であり、かつ前記荷重除去後30分経過後の残留歪みが−0.05〜0.1%の範囲であることを特徴とする二軸配向ポリエステルフィルム。
- 幅方向の100℃30分間での熱収縮率が−0.2〜0.5%の範囲である請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
- 長手方向の弾性率が6〜15GPaの範囲である請求項1または請求項2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
- 一方のフィルム表面(A面)の表面粗さRaAが3〜10nmの範囲であり、A面の反対側のフィルム表面(B面)の表面粗さRaBが5〜17nmの範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
- 厚みが3〜7μmの範囲である請求項1〜4のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムをベースフィルムとして用いた高密度磁気記録媒体。
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