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JP3967156B2 - レーザ加工方法 - Google Patents

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JP3967156B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、少なくとも2つの部材を有する加工対象物にレーザビームを照射し、上部部材に貫通する穴を開けるレーザ加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属層上に形成された樹脂層に、紫外線の波長領域のパルスレーザビームを集光させ、穴を開ける方法が知られている。樹脂層がアブレーションされ金属層がアブレーションされない大きさに、レーザビームのフルエンスを設定しておくと、下地の金属層にほとんどダメージを与えることなく、樹脂層に貫通孔を形成することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、アブレーション加工で大面積の穴を開けようとすると、厚さ50μmの樹脂層に直径50μm程度の穴を開けるのでも100ショット前後のパルスレーザビームが必要であった。
【0004】
本発明の目的は、加工対象物の下地部材表面に形成された被覆層に、少ないショット数で、穴を開けることのできるレーザ加工方法を提供することである。
【0005】
また、その穴の形状を制御することのできるレーザ加工方法を提供することである。
【0006】
本発明の一観点によると、第1の材料からなる表層部を有する下地部材と、該下地部材の表面上に形成され、該第1の材料とは異なる第2の材料で形成された被覆層とを含む加工対象物を準備する工程と、前記被覆層を透過し、前記下地部材の表面で反射し、反射位置の該被覆層を該下地部材から剥離させる性質を有するレーザビームを、前記被覆層表面におけるビームスポットが、少なくとも一つの尖ったまたは丸みを帯びた角を有する形状になるように入射させ、前記被覆層を前記下地部材から剥離させて穴を形成する工程と
を有するレーザ加工方法が提供される。
第1の材料は、アルミニウム、銅、金、銀、パラジューム、ニッケル、チタン、タングステン、プラチナ、及びモリブデンからなる群より選択された1つの材料であり、前記第2の材料が、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、及びベンゾシクロブテンからなる群より選択された1つの材料である。
【0007】
このレーザ加工方法によると、尖ったまたは丸みを帯びた角を有する平面形状の穴を、前記被覆層に形成することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1(A)に、本発明の第1の実施例によるレーザ加工方法で用いられるレーザ加工装置の概略図を示す。レーザ光源1がパルスレーザビームを出射する。レーザ光源1から出射したパルスレーザビームは、ビーム断面を整形するマスク2を経て、平凸レンズ3に入射する。XYステージ4の可動面上に加工対象物5が保持されている。平凸レンズ3により収束されたレーザビームが、XYステージ4に保持された加工対象物5の表面に入射する。
【0011】
レーザ光源1は、Nd:YLFレーザ発振器と非線型光学素子とを含んで構成され、基本波(波長1047nm)または2倍高調波(波長523nm)を発生させることができる。ここでは基本波を、パルス幅15ns、パルスエネルギ1mJで出射させる。
【0012】
図1(B)に示すように、XYステージ4の可動面を水平に配置し、反射ミラー6でレーザビームを鉛直下方に反射させてもよい。
【0013】
また、図1(C)に示すように、レーザ光源1とマスク2の間に凹レンズ7及び凸レンズ8を挿入してもよい。凹レンズ7はビームを拡大し、凸レンズ8は拡大されたビームを平行光にする。または、凹レンズ7を凸レンズ8より小さい焦点距離を有する凸レンズに置き換え、テレセントリックにしてビームを広げてもよい。
【0014】
更に、図1(D)に示すように、凹シリンドリカルレンズ9及び凸シリンドリカルレンズ10を用いて、ビーム断面を楕円形に拡大整形し、平行光とすることができる。または、凹シリンドリカルレンズ9を凸シリンドリカルレンズ10より小さい焦点距離を有する凸シリンドリカルレンズに置き換え、テレセントリックにしてビームを広げてもよい。
【0015】
図2(A)は本発明の第1の実施例によるレーザ加工方法で使用する加工対象物であるマザーボードの断面図である。
【0016】
下地部材である金属層21、たとえば銅層の表面に、樹脂被覆層20、たとえばエポキシ樹脂層が積層されている。樹脂被覆層20の厚みは、たとえば50μmである。
【0017】
樹脂被覆層20の上面から、樹脂被覆層20にパルスレーザビームを入射させる。パルスレーザビームの多くは樹脂被覆層20に吸収されることなく透過し、金属層21で大部分反射され金属層21を透過しない性質をもつ。このマザーボードにパルスレーザビームが1ショット入射すると、樹脂被覆層20と金属層21との界面が高圧力状態となり、この圧力によって金属層21上面におけるパルスレーザビームの反射位置付近の樹脂被覆層20の一部が金属層21から剥離して穴が開く。この現象を「リフティング現象」と呼び、「リフティング現象」を利用した加工を「リフティング加工」と呼ぶこととする。
【0018】
図2(B)は入射した1ショットのパルスレーザビームによって、樹脂被覆層20に穴20aが形成されたマザーボードの断面図である。穴20aの底面を仮に円とすると、その直径はたとえば200μm以上である。リフティング加工はアブレーション加工に比べ、少ないショット数で、大面積の穴開け加工を可能にする。
【0019】
図3(A)及び(B)は、マスク2の透過孔を樹脂被覆層20の表面に結像させ、マザーボードの樹脂被覆層20に1ショット入射させた後の、マザーボード表面の光学顕微鏡写真をスケッチした図である。(A)の透過孔は俵型、(B)の透過孔は三角形であった。ビームを入射させたのは、金属層21が銅層であり樹脂被覆層20が厚さ60μmのエポキシ樹脂層であるマザーボードであった。穴の開口部(エポキシ樹脂層表面)を実線で、穴の底面(銅層表面の露出部分)を一点鎖線で、入射したパルスレーザビームのビームスポットを点線で記した。開口部は底面より大きく、底面はビームスポットよりも大きい。図3(A)の俵型穴の底面は、短径が約200μm、長径が約300μmであった。
【0020】
次に、図4〜8を参照し、第1の実施例によるレーザ加工方法を詳述する。
図4は本実施例によるレーザ加工方法で用いられるレーザ加工装置の概略図である。図1(A)に示したレーザ加工装置に、反射ミラー31と、テレセントリックにレーザビームを広げる2枚の平凸レンズ32及び33とを加えたもので、それ以外の構成は図1(A)に示したレーザ加工装置の構成と同じである。また、図4に示したレーザ加工装置においては、焦点距離が50mmの平凸レンズ35を用い、マスク34と平凸レンズ35の間の距離を1050mm、平凸レンズ35と加工対象物37の間の距離を52.5mmに保った。縮小率は20である。なお、加工対象物は、ABF材(金属層表面の樹脂被覆層がエポキシ樹脂を主成分にして構成されているもの)で樹脂被覆層の厚みは50μmである。
【0021】
マスク34には、一辺5mmの正三角形の透過孔が形成されている。レーザ光源30から、Nd:YLFレーザの基本波(波長1047nm)を、パルス幅15nsで出射した。加工対象物表面において、レーザビームのビームスポットは一辺250μmの正三角形となる。ビームスポットの正三角形の角は尖っている場合も、また、角の先が少し丸みを帯びている場合も考えられる。
【0022】
図5は、出射するレーザビームのパルスエネルギを様々に変化させ、エポキシ樹脂層に1ショットずつ入射させた後の、ABF材表面の光学顕微鏡写真をスケッチした図である。
【0023】
図5(A)、(B)、(C)及び(D)は、ビームのフルエンスが、それぞれ6.1J/cm2、4.1J/cm2、2.8J/cm2、1.8J/cm2であるときに形成された穴である。ここでフルエンスとは、樹脂被覆層表面におけるレーザビームのフルエンスを意味する。図3と同様に、穴の開口部(エポキシ樹脂層表面)を実線で、穴の底面(銅層表面の露出部分)を一点鎖線で、入射したパルスレーザビームのビームスポットを点線で記した。開口部は底面より大きく、底面はビームスポットよりも大きい。
【0024】
ビームスポットの形状は、ほぼ正三角形である。底面の外周はビームスポットを取り囲んでおり、正三角形の頂点が丸みを帯び、各辺が外側に膨らんだ形状を有する。図5(A)〜(D)のいずれの場合にも、底面の形状はビームスポットの形状の痕跡を留めている。
【0025】
図5(A)に示すようにビームのフルエンスが6.1J/cm2のときには、開口部の外周が底面の外周に倣い、正三角形の痕跡を留めている。図5(B)〜(D)に示すように、ビームのフルエンスを低下させると、開口部が円形に近づく。また、照射するビームのフルエンスが高いほど、開口部と底面との面積比が1に近い穴、すなわち穴の側壁が垂直に近く立ち上がる穴を形成することができる。フルエンスが低いと、穴側面がテーパ形状を示す。
【0026】
図6に、樹脂被覆層に入射するパルスレーザビームの1パルスあたりのフルエンスと対ビームスポット面積比との関係を示す。対ビームスポット面積比とは、形成された穴の開口部及び底面の面積の、樹脂被覆層表面におけるビームスポットの面積に対する比のことである。横軸は、樹脂被覆層表面におけるビームの1パルスあたりのフルエンスを単位「J/cm2」で表し、縦軸は対ビームスポット面積比を「任意単位」で表す。
【0027】
黒三角で示したのがビームスポット面積に対する底面積の比、逆黒三角で示したのがビームスポット面積に対する開口部面積の比である。穴形成の閾値は1.4〜1.8J/cm2の間にあり、これより大きなフルエンスで入射したレーザビームによって、樹脂被覆層に穴が形成される。フルエンスを増大させることで、底面、開口部ともに面積は増加するが、開口部は底面ほど増加の割合が大きくはない。すなわち形成される穴の側面は、フルエンスの増大とともに、切り立った形状に近づくことがわかる。
【0028】
図7に、樹脂被覆層に入射するパルスレーザビームの1パルスあたりのフルエンスと開口率との関係を示す。開口率とは、樹脂被覆層に形成された穴の開口部の面積を底面の面積で除して得られる値と定義する。横軸は、樹脂被覆層表面におけるビームの1パルスあたりのフルエンスを単位「J/cm2」で表し、縦軸は開口率を「任意単位」で表す。黒丸で示したのが両者の関係である。照射するレーザビームが金属層に損傷を与えない、または与える損傷の程度が無視できる範囲のフルエンスにおいては、他の条件を一定に保ちながらフルエンスを徐々に増加させていくと、開口率は1以上のある一定の値に収束する。この収束値の1.2倍の開口率の穴を形成するフルエンス以上のフルエンスで加工することにより、側面の傾斜角が大きな(側面が切り立った形状の)穴を形成することができる。また、開口部及び底面の形状が、樹脂被覆層上のビームスポットに近似する穴を形成することが出来る。
【0029】
次に、一辺5mmの正方形の透過孔が形成されているマスク34を使用し、加工対象物表面に入射するレーザビームのビームスポットを、一辺250μmの正方形とした。縮小率は20である。
【0030】
図8は、出射するレーザビームのパルスエネルギを様々に変化させ、前出のABF材の樹脂被覆層に1ショットずつ入射させた後の、ABF材表面の光学顕微鏡写真をスケッチした図である。
【0031】
図8(A)、(B)及び(C)は、ビームのフルエンスが、それぞれ2.96J/cm2、2.0J/cm2、1.3J/cm2であるときに形成された穴である。ここでフルエンスとは、樹脂被覆層表面におけるレーザビームの1パルスあたりのフルエンスを意味する。図3と同様に、穴の開口部(エポキシ樹脂層表面)を実線で、穴の底面(銅層表面の露出部分)を一点鎖線で、入射したパルスレーザビームのビームスポットを点線で記した。開口部は底面より大きく、底面はビームスポットよりも大きい。
【0032】
正方形の透過孔を有するマスクを用いると、頂点が丸みを帯びた正方形状の底面と、辺及び頂点が丸みを帯びた正方形状の開口部を有する穴を開けることができる。また、穴の底面形状は、照射したビームの形状(正方形)に依存する。更に、フルエンスの高いビームほど開口部を正方形に近い形状に(殊に正方形の辺部を直線的に)加工することができる。また、開口部と底面との面積比が1に近い穴、すなわち穴の側壁の傾斜角が大きい(90°に近い)穴を形成することができる。
【0033】
図9に、樹脂被覆層に入射するパルスレーザビームの1パルスあたりのフルエンスと対ビームスポット面積比との関係を示す。対ビームスポット面積比、グラフの縦軸及び横軸、黒三角及び逆黒三角の意味するところは、三角形のマスクを使用した場合(図6)と同じである。
【0034】
穴形成の閾値は0.8〜1.2J/cm2の間にあり、これより大きなフルエンスで入射したレーザビームによって、樹脂被覆層に穴が形成される。フルエンスを増大させることで、底面、開口部ともに面積は増加するが、底面積の方が増加の割合が大きい。このグラフに示した範囲よりもフルエンスを増大させても同様である。
【0035】
図6と図9とから読み取れる閾値は異なる。これは、ABF材の樹脂被覆層表面におけるビームスポットの面積が異なることが原因の一つである。リフティング加工の加工メカニズムはフォトン波長に依存する光化学現象(高分子の分子結合を切断する)ではなく、フォトン数に依存するサーマル現象(熱的に分解する)としての側面が強いため、ビームスポットの面積が閾値に関係する。
【0036】
図10に、樹脂被覆層に入射するパルスレーザビームの1パルスあたりのフルエンスと開口率との関係を示す。開口率、グラフの縦軸及び横軸の意味するところはビームスポットを三角形にして入射させた場合のグラフ(図7)と同じである。黒丸で示したのが両者の関係である。ビームスポットが正方形である場合も、照射するレーザビームが金属層に損傷を与えない、または与える損傷の程度が無視できる範囲のフルエンスにおいては、他の条件を一定に保ちながらフルエンスを徐々に増加させていくと、開口率は1以上のある一定の値に近づくであろう。この収束値の1.2倍の開口率の穴を形成するフルエンス以上のフルエンスで加工することにより、側面の傾斜角が大きな(側面が切り立った形状の)穴を形成することができる。また、開口部及び底面の形状が、樹脂被覆層上のビームスポットに近似する穴を形成することが出来る。
【0037】
以上、第1の実施例に示したように、ビームスポットが尖ったまたは丸みを帯びた角を有する形状になるように、レーザビームを樹脂被覆層に入射させると、それに対応する丸みを帯びた角を有する形状の穴を形成することができる。前記尖ったまたは丸みを帯びた角が、90°以下の内角を有するものであれば、形成される穴も、それに対応する、よりはっきりした角部を有することになる。
【0038】
次に、図1(A)、図8(A)及び図11を参照して、本発明の第2の実施例について説明する。
【0039】
図1(A)に示すレーザ加工装置を用いて、加工対象物たとえば第1の実施例で使用したものと同じマザーボードを加工する。たとえば正方形の透過孔の形成されたマスク2を用い、Nd:YLFレーザの基本波を1ショット照射する。
【0040】
図8(A)に示すように、角が丸みを帯びた正方形の開口部を有する穴が、樹脂被覆層に形成される。
【0041】
続いて、たとえば正三角形の透過孔の形成されたマスク2を使用する。XYステージ4によりマザーボードを移動させて、パルスレーザビームを照射し、新たな穴を形成して最初のショットで形成された正方形状の穴を広げる。樹脂被覆層20表面におけるビームスポットが、少なくとも一つの尖ったまたは丸みを帯びた角を有するように、ここでは正三角形状のビームスポットの頂点の1つが樹脂被覆層20上に形成されるように、レーザビームを入射させる。
【0042】
図11(A)はマザーボードの樹脂被覆層20に形成された穴の平面図である。点線で示した正方形が、最初に照射したレーザビームのビームスポットであり、一点鎖線で示した4つの正三角形が、正方形状の穴を広げるために照射したレーザビームのビームスポットである。なお、図11(A)〜(E)においては、入射したレーザビームのビームスポットを点線または一点鎖線で記し、形成された穴を実線で記す。
【0043】
図8(A)に示した正方形状の穴の、丸みを帯びた角の周辺をより尖った形状にする。そのため、正三角形状のビームスポットの頂点が、丸みを帯びた角の付近の樹脂被覆層20上に形成されるように、ビームを入射させる。
【0044】
図11(A)に実線で記したのが、樹脂被覆層20に形成された穴である。穴の角は、ビームスポットの正三角形の角に対応して形成されたものである。このようにビームスポットの角が、広げた穴の外周の一部に対応するようにレーザビームを入射させて、角を有する穴を加工することができる。リフティング加工は、レーザビームを重ねて照射しても、下地の金属層21に影響をほとんど与えず樹脂被覆層20に穴を形成することができる。したがって幾度も微細に重ね打ちをすることによって、シャープな角を形成することも可能である。
【0045】
図11(B)の一点鎖線に示すように、たとえば直角二等辺三角形のビームスポットを形成して、図11(A)の穴の角部を加工してもよい。図11(A)では、正三角形状のビームスポットの60°の角で、穴の角部を形成したが、図11(B)においては、直角二等辺三角形状のビームスポットの45°の角で、穴の角部の形成を行っている。後者の方が、よりはっきりした角部を有する穴を形成できる。45°より小さい角を有するビームスポットに集光すると、更にはっきりとした角部を有する穴を形成できる。
【0046】
また、図11(C)に示すように、直角に折れ曲がった鉤型の穴を開けることもできる。たとえば、レーザビームを細長い矩形のビームスポットになるように集光して穴の2本の直線部を加工する。折れ曲がり部分は、直角二等辺三角形のビームスポットを有する2ショットのパルスレーザビームにより形成される。この2つのビームスポットは、直角二等辺三角形の斜辺どうしが対向し、直角二等辺三角形の各々の一方の底角が折れ曲がり部分の外側の角に対応するように位置決めされる。このように位置決めすることにより、折れ曲がり部分の外側の角を鋭くすることができる。
【0047】
図11(D)は、レーザビームを細長い矩形のビームスポットに集光して形成した細長い矩形の穴の平面図である。穴の端部の角が丸みを帯びている。
【0048】
図11(E)は、レーザビームを細長い矩形のビームスポットに集光して、図11(D)に示すような穴を形成した後、端部を直角二等辺三角形状のビームスポットに集光して加工した細長い矩形の穴の平面図である。穴の端部は、直角二等辺三角形のビームスポットを有する4ショットのパルスレーザビームにより形成される。4つの直角二等辺三角形は、正方形を2本の対角線で分割して得られる4つの直角二等辺三角形に相当するように位置決めされる。この正方形の一つの辺が、穴の直線部分の端部に対向する。図11(D)に示したような1ショットだけで開けた穴に比べ、鮮明な角部を有する穴を加工することができる。
【0049】
その他、様々にビームスポットの形状やビームの入射位置を変えて、穴の形を制御する方法が考えられるであろう。その際、第1の実施例で説明したように、加工対象物に入射するレーザビームのフルエンスを変化させることによる穴形状の制御をも加えて、加工を行うことができる。
【0050】
次に図1(A)及び図12を参照して、本発明の第3の実施例について説明する。
【0051】
図1(A)に示すレーザ加工装置を用いて、加工対象物に穴を開ける。レーザ光源1から、Nd:YLFレーザの基本波をパルス幅10psで出射する。
【0052】
図12は加工対象物である多層基板の断面図である。
ガラス繊維等の支持材料(補強材料)で強化された、たとえばエポキシ樹脂で作られた支持基板42、金属材料たとえばアルミニウムで作られた下地部材である金属層41、誘電体材料たとえばポリイミド樹脂で作られた樹脂被覆層40、がこの順に下から積層されている。樹脂被覆層40の厚みはたとえば50μmである。
【0053】
樹脂被覆層40の誘電体材料の例としては、ポリイミド樹脂の他、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、BTレジン(三菱ガス化学株式会社の商標)、BCB(ベンゾシクロブテン)などがある。
【0054】
金属層41の金属材料の例としては、アルミニウムの他、銅、金、銀、パラジューム、ニッケル、チタン、タングステン、プラチナ、モリブデンなどがある。
【0055】
支持基板42の支持材料(補強材料)の例としては、ガラス繊維の他、アルミナ繊維、アラミド繊維、ケプラーなどがある。
【0056】
樹脂被覆層40の上面から、Nd:YLFレーザの基本波を入射させる。ビームの多くは樹脂被覆層40に吸収されることなく透過し、金属層41で大部分反射され透過しない性質をもつ。リフティング現象により、樹脂被覆層40に穴が形成される。
【0057】
リフティング加工は多層基板材料の種類や構成によっては、スミアが非常に少ない、清浄な金属層を露出させることができる。また、リフティング加工によれば、デブリが非常に少ない穴開け加工が可能である。したがって、リフティング効果を用いた穴開け加工の後、デスミアやデブリ除去のための湿式処理(過マンガン酸処理)等の後処理をすることなく、メッキ、ワイヤボンディングを行うことができる。デスミアやデブリ除去のための湿式処理(過マンガン酸処理)等の工程を省略することができるため、高いスループットが得られる。更に、スミアが残った場合も、プラズマデスミア等で容易に除去でき、その後、メッキ、ワイヤボンディングを行うことが可能であると思われる。
【0058】
入射するレーザビームのフルエンスを変化させたり、マスク2により樹脂被覆層40に入射するレーザビームのビームスポットを調整することによって、ワイヤボンディングに適した形状の穴を作製する。また、幾種類かのマスクを使用して穴の形状を制御してもよい。こうして形成した穴に、メッキを施し、ワイヤボンディングを行えば、効率のよい作業を行うことができる。
【0059】
以上、実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者には自明であろう。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、加工対象物の下地部材表面に形成された被覆層に、少ないショット数で穴を開け、その穴の形状を制御することのできるレーザ加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)〜(D)は、本発明の第1の実施例によるレーザ加工方法で用いられるレーザ加工装置の概略図である。
【図2】(A)は、第1の実施例によるレーザ加工方法で加工するマザーボードの断面図である。(B)は、第1の実施例によるレーザ加工方法で穴が形成されたマザーボードの断面図である。
【図3】(A)及び(B)は、第1の実施例によるレーザ加工方法で加工したマザーボードの光学顕微鏡写真をスケッチした図である。
【図4】第1の実施例によるレーザ加工方法で用いられるレーザ加工装置の概略図である。
【図5】(A)〜(D)は、第1の実施例によるレーザ加工方法で加工したABF材の光学顕微鏡写真をスケッチした図である。
【図6】樹脂被覆層に入射するパルスレーザビームの1パルスあたりのフルエンスと対ビームスポット面積比との関係を示すグラフである。
【図7】樹脂被覆層に入射するパルスレーザビームの1パルスあたりのフルエンスと開口率との関係を示すグラフである。
【図8】第1の実施例によるレーザ加工方法で加工したABF材の光学顕微鏡写真をスケッチした図である。
【図9】樹脂被覆層に入射するパルスレーザビームの1パルスあたりのフルエンスと対ビームスポット面積比との関係を示すグラフである。
【図10】樹脂被覆層に入射するパルスレーザビームの1パルスあたりのフルエンスと開口率との関係を示すグラフである。
【図11】(A)〜(E)は、本発明の第2の実施例によるレーザ加工方法によって、マザーボードに形成された穴の平面図である。
【図12】本発明の第3の実施例によるレーザ加工方法で加工する多層基板の断面図である。
【符号の説明】
1 レーザ光源
2 マスク
3 平凸レンズ
4 XYステージ
5 加工対象物
6 反射ミラー
7 凹レンズ
8 凸レンズ
9 凹シリンドリカルレンズ
10 凸シリンドリカルレンズ
20 樹脂被覆層
20a 穴
21 金属層
30 レーザ光源
31 反射ミラー
32、33 平凸レンズ
34 マスク
35 平凸レンズ
36 XYステージ
37 加工対象物
40 樹脂被覆層
41 金属層
42 支持基板

Claims (4)

  1. 第1の材料からなる表層部を有する下地部材と、該下地部材の表面上に形成され、該第1の材料とは異なる第2の材料で形成された被覆層とを含む加工対象物を準備する工程と、
    前記被覆層を透過し、前記下地部材の表面で反射し、反射位置の該被覆層を該下地部材から剥離させる性質を有するレーザビームを、前記被覆層表面におけるビームスポットが、少なくとも一つの尖ったまたは丸みを帯びた角を有する形状になるように入射させ、前記被覆層を前記下地部材から剥離させて穴を形成する工程と
    を有し、
    前記第1の材料が、アルミニウム、銅、金、銀、パラジューム、ニッケル、チタン、タングステン、プラチナ、及びモリブデンからなる群より選択された1つの材料であり、前記第2の材料が、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、及びベンゾシクロブテンからなる群より選択された1つの材料であるレーザ加工方法。
  2. 前記角の内角が90°以下である請求項1に記載のレーザ加工方法。
  3. 第1の材料からなる表層部を有する下地部材と、該下地部材の表面上に形成され、該第1の材料とは異なる第2の材料で形成された被覆層とを含む加工対象物を準備する工程と、
    前記被覆層を透過し、前記下地部材の表面で反射し、反射位置の該被覆層を該下地部材から剥離させる性質を有するレーザビームを、前記被覆層表面におけるビームスポットが、少なくとも一つの尖ったまたは丸みを帯びた角を有する形状になるように入射させ、前記被覆層を前記下地部材から剥離させて穴を形成する工程と
    を有し、
    前記穴を形成する工程において、パルスレーザビームを1ショットだけ入射させることにより前記穴を形成するレーザ加工方法。
  4. 第1の材料からなる表層部を有する下地部材と、該下地部材の表面上に形成され、該第1の材料とは異なる第2の材料で形成された被覆層とを含む加工対象物を準備する工程と、
    前記被覆層を透過し、前記下地部材の表面で反射し、反射位置の該被覆層を該下地部材から剥離させる性質を有するレーザビームを、前記加工対象物に前記被覆層表面から入射させ、該被覆層を該下地部材から剥離させて第1の穴を形成する工程と、
    第2のレーザビームを、前記被覆層表面におけるビームスポットが少なくとも一つの尖ったまたは丸みを帯びた角を有する形状になるように入射させ、該被覆層を該下地部材から剥離させて、前記第1の穴を広げる工程であって、前記第2のレーザビームのビームスポットの角が、広げられた前記第1の穴の外周の一部に対応するように、第2のレーザビームを入射させる工程と
    を有するレーザ加工方法。
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