JP3869736B2 - レーザ加工方法及び多層配線基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、レーザ加工方法及び多層配線基板に関し、特に多層配線基板にレーザビームを入射させて穴を形成するレーザ加工方法、及びそのレーザ加工方法で作製される多層配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
図3を参照して、従来の多層配線基板への穴あけ方法について説明する。
図3(A)に示すように、穴あけ対象の多層配線基板は、支持基板100、内層配線101、絶縁層102、及び上層配線103がこの順番に積層された積層構造を有する。支持基板100及び絶縁層102は、例えばエポキシ樹脂で形成され、内層配線101及び上層配線103は、例えば銅で形成されている。
【0003】
上層配線103に紫外線の波長域のパルスレーザビームを入射させ、上層配線103を貫通する穴を形成する。このパルスレーザビームは、一般にガウシアンビーム(ビーム断面内のパワー密度分布がガウス曲線で近似できるビーム)である。このため、1パルスあたりのエネルギ密度は、ビーム断面内の中央において高く、周辺部において低い。これにより、ビームスポットの中心部におけるエッチング速度が、周辺部におけるエッチング速度よりも速くなる。
【0004】
形成された穴が、ビームスポットの周辺部においても上層配線103を貫通するまでパルスレーザビームを入射させると、中心部において過剰なエッチングが生ずる。エポキシ樹脂は銅に比べてエッチングされやすいため、形成された穴が絶縁層102を容易に貫通してしまう。絶縁層102が貫通され、内層配線101の表面が露出すると、内層配線101の一部が溶融し、またはエッチングされてしまう。
【0005】
ビームスポットの周辺部においても上層配線15が完全にエッチングされると、図3(B)に示すように、パルスレーザビームの1パルスあたりのフルエンスを低下させて、絶縁層102に穴を形成する。このときの1パルスあたりのフルエンスは、銅をエッチングしない程度の大きさとする。このため、形成された穴の底面に内層配線101が露出しても、内層配線101は、ほとんど損傷を受けない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、パルスレーザビームの1パルスあたりのフルエンスを低下させた後は、絶縁層102を貫通する穴を形成された後も、内層配線101は損傷を受けない。ところが、図3(A)に示すように、上層配線103をエッチングするときに、穴が絶縁層102を貫通すると、内層配線101が損傷されてしまう。
【0007】
本発明の目的は、内層配線が損傷を受けにくいレーザ加工方法を提供することである。
本発明の他の目的は、上記レーザ加工方法で作製される多層配線基板を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の一観点によると、下地基板の表面上に形成され、導電性の第1の材料からなる下部層と、第2の材料からなる上部層とがこの順番に積層された内層配線、該内層配線を覆うように該下地基板の表面上に形成され、前記第1及び第2の材料よりもレーザビームによってエッチングされ易い絶縁材料からなる絶縁層、及び該絶縁層の表面上に形成され、導電性の第3の材料からなる上層配線を有する多層配線基板を準備する工程と、レーザビームを、前記上層配線に入射させ、該上層配線及び前記絶縁層を貫通し、前記内層配線まで達する穴を形成する工程とを有し、前記第2の材料の表面における前記レーザビームの反射率が、前記第1及び第3の材料の表面における前記レーザビームの反射率よりも高くなるように、前記第1、第2、及び第3の材料が選択されているレーザ加工方法が提供される。
【0009】
第2の材料の表面におけるレーザビームの反射率が、第1の材料の表面におけるレーザビームの反射率よりも高いため、内層配線が露出した後に内層配線の受ける損傷を低減することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1(A)に、本発明の実施例によるレーザ加工方法で使用される装置の概略図を示す。レーザ光源1が、加工用のパルスレーザビームを出射する。レーザ光源1は、例えばNd:YAGレーザ発振器と波長変換素子とを含んで構成され、Nd:YAGレーザの第3高調波(波長355nm)を出射する。レーザ光源1から出射したレーザビームが、マスク2に入射する。マスク2に設けられた貫通孔を通過したレーザビームが、折り返しミラー3に入射する。
【0011】
折り返しミラー3で反射されたレーザビームが、ガルバノスキャナ4に入射する。ガルバノスキャナ4は、一対の揺動可能な反射鏡を含んで構成され、レーザビームを2次元方向に走査する。ガルバノスキャナ4で走査されたレーザビームがfθレンズ5で集束され、XYステージ6に保持された加工対象物8に入射する。fθレンズ5は、マスク2の貫通孔を加工対象物8の表面上に結像させる。
【0012】
次に、図2を参照して、本発明の実施例によるレーザ加工方法について説明する。
図2(A)に、加工対象のプリント配線板の断面図を示す。支持基板10の一部の表面上に、内層配線13が形成されている。内層配線13は、銅で形成された厚さ5〜18μmの下部層11、及びNiで形成された厚さ約1μmの上部層12がこの順番に積層された積層構造を有する。紫外線の波長域において、上部層12の表面における反射率が、下部層11の表面における反射率よりも大きい。内層配線13を覆うように、支持基板10の上に絶縁層14が形成されている。絶縁層13の表面上に、銅からなる上層配線15が形成されている。支持基板10及び絶縁層14は、例えばエポキシ樹脂で形成されている。
【0013】
図2(B)に示すように、波長355nmのパルスレーザビームを上層配線15に入射させる。上層配線15の表面におけるパルスレーザビームの1パルスあたりのフルエンスは10J/cm2以上であり、銅をエッチングするのに十分な大きさである。パルス幅は100ns、パルスの繰り返し周波数は10kHz、上層配線15の表面におけるビームスポットの直径は50μmである。
【0014】
パルスレーザビームは、一般的にガウシアンビームであるため、ビームスポットの中央部におけるエッチング速度が、周辺部におけるエッチング速度よりも速い。このため、ビームスポットの周辺部の上層配線15がその底面までエッチングされたとき、中心部においては形成された穴が絶縁膜14を貫通し、内層配線13を露出させる。上部層12の表面における反射率が、下部層11の表面における反射率よりも高いため、下部層11が露出する場合に比べて、内層配線13の受ける損傷は少ない。
【0015】
図2(C)に示すように、さらに、照射条件を変えることなく、パルスレーザビームの照射を続ける。ビームスポットの周辺部においても、絶縁層14が貫通し、内層配線13が露出する。このとき、露出している内層配線13がレーザビームに晒されるが、上部層12の表面における反射率が高いため、下部層11の受ける損傷は少ない。
【0016】
穴の底面に、上部層12が露出する。この露出した上部層12をエッチングすることにより、下部層11を露出させる。上部層12は、穴あけ加工後の過マンガン酸液によるデスミア処理時にエッチングされる。なお、上部層12は導電性を有し、その厚さも十分薄いため、上部層12を穴の底面に残したままでもよい。
【0017】
上記実施例では、Nd:YAGレーザの3倍高調波を使用して穴あけを行ったが、4倍高調波を用いてもよいし、他の固体レーザ、例えばYLFレーザの3倍高調波や4倍高調波を用いてもよい。また、より一般的に、紫外線の波長域のレーザビームを用いてもよい。特に、波長350nm〜400nmのレーザビームを用いることが好ましい。
【0018】
また、上記実施例では、内層配線13の下部層11を銅で形成し、上部層12をNiで形成したが、他の材料で形成してもよい。このとき、紫外線の波長域において、上部層12の表面における反射率が、下部層11の表面における反射率よりも高くなるような材料の組み合わせとする必要がある。なお、上部層12の材料として、反射率が60%以上の材料を選択することが好ましい。
【0019】
例えば、下部層11を、銅を主成分とする合金で形成してもよい。上部層12の材料の候補として、Niの他にAl、Niを主成分とした合金、またはAlを主成分とした合金等が挙げられる。なお、銅の表面における紫外光の反射率は約40%である。
【0020】
また、上記実施例では、上層配線15の穴あけ時と同一の条件で絶縁層14の穴あけを行うことができる。このため、生産性の向上を図ることができる。
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、多層配線基板に埋め込まれた内層配線の上層部が、加工用のレーザビームを反射しやすい材料で形成されているため、内層配線の損傷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例で使用されるレーザ加工装置の概略図である。
【図2】 本発明の実施例によるレーザ加工方法を説明するためのプリント配線板の断面図である。
【図3】 従来のレーザ加工方法を説明するためのプリント配線板の断面図である。
【符号の説明】
1 レーザ光源
2 マスク
3 折り返しミラー
4 ガルバノスキャナ
5 fθレンズ
6 XYステージ
8 加工対象物
10 支持基板
11 下部層
12 上部層
13 内層配線
14 絶縁層
15 上層配線
Claims (5)
- 下地基板の表面上に形成され、導電性の第1の材料からなる下部層と、第2の材料からなる上部層とがこの順番に積層された内層配線、該内層配線を覆うように該下地基板の表面上に形成され、前記第1及び第2の材料よりもレーザビームによってエッチングされ易い絶縁材料からなる絶縁層、及び該絶縁層の表面上に形成され、導電性の第3の材料からなる上層配線を有する多層配線基板を準備する工程と、
レーザビームを、前記上層配線に入射させ、該上層配線及び前記絶縁層を貫通し、前記内層配線まで達する穴を形成する工程と
を有し、前記第2の材料の表面における前記レーザビームの反射率が、前記第1及び第3の材料の表面における前記レーザビームの反射率よりも高くなるように、前記第1、第2、及び第3の材料が選択されているレーザ加工方法。 - 前記第1の材料及び第3の材料が銅または銅を主成分とする合金であり、前記第2の材料がNi、Al、またはこれらを主成分とする合金である請求項1に記載のレーザ加工方法。
- 前記レーザビームがパルスレーザビームであり、前記穴を形成する工程において、前記多層配線基板の表面における1パルスあたりのエネルギ密度を変化させること無く、複数ショットを前記多層配線基板に入射させることにより、前記穴を形成する請求項1または2に記載のレーザ加工方法。
- 支持基板と、
前記支持基板の表面上に形成され、導電性の第1の材料からなる下部層と、第2の材料からなる上部層とがこの順番に積層された積層構造を有し、紫外線の波長域において、前記第2の材料の表面における光の反射率が、前記第1の材料の表面における光の反射率よりも高い内層配線と、
前記内層配線を覆うように、前記支持基板の上に形成され、前記第1及び第2の材料よりもレーザビームによりエッチングされやすい絶縁材料で形成された絶縁層と、
前記絶縁層の表面上に形成され、導電性の第3の材料からなる上層配線と、
前記上層配線及び前記絶縁膜を貫通し、前記内層配線の一部を露出させる穴とを有する多層配線基板。 - 前記第1の材料及び第3の材料が銅または銅を主成分とする合金であり、前記第2の材料がNi、Al、またはこれらを主成分とする合金である請求項4に記載の多層配線基板。
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