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JP3951972B2 - フィルム状試料固定方法およびガスセル並びにガス透過度測定装置 - Google Patents

フィルム状試料固定方法およびガスセル並びにガス透過度測定装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は例えばプラスチック、セラミック、ガラス、金属、生物学上の薄膜等フィルム状試料の気体透過度(ガスバリア性)測定用ガスセル及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
フィルム材料へのガスバリヤー性付与は食品や薬品分野ではもちろん、近年ではガラスの代替としてフレキシブルディスプレイの分野においても注目となっている技術である。フィルムのガスバリヤー性は向上と同時にフィルムのガスバリヤー性を高感度、高精度で測定する技術が必要となってきている。
【0003】
従来、酸素透過度、水蒸気透過度の測定にはカップ法やMOCON社のOX−TRAN、PERMATRAN−WIDを用いたMOCON法が主流であったが、これらの方法で測定する際、大面積のフィルム状試料が必要で、しかも実用レベルの検出感度は0.01g/m2/dayである。従って、近年ではガスバリヤー性の向上に伴い、質量分析計を用いてさらに高感度、高精度で測定する方法が考案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】
特開平06−241978号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記方法は以下に述べるような欠点があった。高真空中の圧力下では、フィルム状試料とガスケットあるいはフィルム状試料と蓋の間で密着が悪くリークしたり、封止剤自身からの透過によりフィルム状試料からの透過を見られなかったり、フィルム状試料とガスケットとを定量的に封止できなかったり、金属酸化膜を積層したプラスチックにおいては金属酸化膜が割れたり、クラックが入る等の弊害があった。
【0006】
そこで、本発明者は上記問題を解決するために鋭意工夫を重ねた結果、高真空中の圧力下でも、フィルム状試料とガスケットあるいはフィルム状試料と蓋の間を高密着させリークすることなく、封止剤自身からの透過もなく、フィルム状試料とガスケットとを定量的に封止し、金属酸化膜を積層したプラスチックにおいても金属酸化膜が割れたり、クラックが入らず、高精度で、検出限界が0.0001g/m2/day以下まで測定できるガスセル及び測定装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、測定対象物を保持する周囲に隔壁と、該隔壁に囲まれた凹部を有するガスケットの、前記隔壁上に、金属箔である封止材を設け、該封止材を介してフィルム状試料を配置し、その上に開口部を有する蓋部で被覆し、該蓋部を垂直方向に加圧し、固定することを特徴とするフィルム状試料の固定方法である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記フィルム状試料上にさらに金属箔である封止材を配置することを特徴とする請求項1記載のフィルム状試料の固定方法である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記封止材及びフィルム状試料のうち、前記ガスケットと蓋部により覆われていない外側端部分を金属または金属化合物により封止する工程を有することを特徴とする請求項1または2記載のフィルム状試料の固定方法である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、測定対象物を保持する凹部を有するガスケットと該ガスケットの上部に、金属箔である封止材を介してフィルム状試料を保持できる保持部を備え、さらに、その上に開口部を有する蓋部を備え、該蓋部を垂直方向に加圧可能な加圧固定手段を備えることを特徴とするガスセルである。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記フィルム状試料上にさらに金属箔である封止材を配置することを特徴とする請求項4記載のガスセルである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、前記封止材及びフィルム状試料のうち、前記ガスケットと蓋部により覆われていない部分が、金属または金属化合物により封止されていることを特徴とする請求項4または5記載のガスセルである。
【0013】
請求項7に記載の発明は、少なくとも、容器内に、測定対象物を保持しフィルム状試料を固定するガスセルと、フィルム状試料を透過した測定対象物を測定するための測定手段を有するガス透過度測定装置であって、該ガスセルが請求項4〜6のいずれかに記載のガスセルであることを特徴とするガス透過度測定装置である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の詳細を説明する。
【0015】
図1は、本発明のフィルム状試料保持用ガスセルの一態様を表す断面説明図である。
【0016】
図1に示すように、ガスセルは、測定対象化合物(15)を収納する、周囲に隔壁(7)と、該隔壁(7)に囲まれた凹部(8)を有するガスケット(14)、前記隔壁(7)の上部に、中央に開口を有する封止剤(13)、開口部(11)を有する蓋部(10)を配置した構成となっている。
そして、前記封止材(13)と蓋部(10)は、加圧固定治具(16)で固定される。また、封止材(13)は、端面に封止材剤暴露面(17)を有する構造である。
測定に際して、測定対象化合物(15)を保有できる空間を備えたガスケット(14)に、測定対象化合物(15)を注入し、該ガスケット(14)上に封止材(13)を介して、フィルム状試料(12)、蓋部(10)重ね、加圧固定治具(16)にてフィルム状試料(12)に対して垂直方向に加圧することで、フィルム状試料(12)を固定する。
【0017】
蓋部(10)は、フィルム状試料を透過したガスが通過できる開口部(11)を有する。開口部は、フィルム状試料に損傷を与えなければ1つで十分であるが、開口部の面積が広い、試料が脆い、あるいは積層したバリア膜が損傷しやすい等の場合には、開口部が複数設けられていることがより好ましい。
また、蓋とフィルム状試料間にステンレスディスク、多孔質のステンレスフィルター等を挟んで使用していもよい。また、これらにもガスを放出あるいはガスが吸着しにくい表面処理が施された方がより好ましい。
【0018】
フィルム状試料(12)は、プラスチックに限定されず、金属酸化膜を積層したプラスッチク、セラミック、ガラス、金属、生物学上の薄膜等のフィルム状試料が測定可能である。
測定対象化合物(15)は、酸素、水蒸気に限られず揮発性化合物にも適応でき、複数のガスを同時に測定することも可能である。
より好ましくは、使用するガスが、存在比の少ない同位体を使用すると、装置のバックグランドが非常に小さくなり、検出感度を高くなる。
【0019】
封止材(13)は、測定対象化合物保有空間中の気密を保つことができれば、フィルム状試料とガスケット間のみで十分であるが、より気密を保つために蓋とフィルム状試料間、フィルム状試料とガスケット間に使用するとよい。また、封止材は、1枚だけでなく複数枚用いてもよいし、組み合わせてもよい。
【0020】
ガスケット(14)及び加圧固定治具(16)の材質は、ガス放出の少ない、あるいはガス吸着の少ない金属であれば特に限定せず使用し得る。具体的には、ステンレス鋼(SUS304、SUS316)やアルミ合金(A6063等)が望ましい。さらに、前記材料を電解研磨やバフ研磨やTiN被覆等ガスを放出あるいはガス吸着しにくい状態の表面処理が施された方がより好ましい。
また、より気密を保つために、ガスケットあるいは蓋部に、雌型、雄型とが設けた構造とすることで、より漏れなく封止できる。
【0021】
加圧固定治具(16)は、蓋、フィルム状試料、封止剤、ガスケットとを強固に固定でき、フィルム状試料に損傷を与えないものでなければいずれでもよい。固定手段の具体的なものとして、ホルダー、クランプ、クリップ、ねじ等が使用可能である。より好ましい固定手段は、蓋部面を垂直方向に均一に加圧できるものがよく、多点を対称にねじ止めするのが好ましい。また、前記仕様を満たすものであればねじの種類は、特に限定されない。
【0023】
金属箔は、金属箔自身からのガス放出が少なく、ガス透過が小さい上、加圧することによって金属が変形することで、フィルム状試料とガスケットとの密着を図ることができる。
また、金属箔は、0.5μm〜500μmの厚さのものがよく、より好ましくは10μm〜200μmである。また、より密着を図るために柔らかい材質の金属の方が好ましい。
【0025】
封止材は、封止材暴露面(17)を有するので、この封止材暴露面を、例えば、金属層からなるバリア材を積層すると、封止材自身から透過してくるガスを防ぎ、バックグランドを下げることによって、よりバリア性の高いフィルムを測定することが可能となる。
前記封止材暴露面に金属層の積層方法は、溶着、蒸着、スパッタのいずれの方法で設けてもよい。溶着方法は、金属層に用いる金属を溶融できるものであればいずれでも使用可能で、ホットプレート、半田付け、高周波、レーザー等により溶着可能である。より好ましくは、封止材やフィルムに損傷を与えないために、金属層に用いる金属は、インジウム等融点の低い金属がより好ましい。
蒸着法は、物理蒸着法、化学蒸着法のいずれでもよく、プラズマや電子線と組み合わせることも可能である。金属の材質は、アルミ、インジウム、白金、金、鉛等が使用可能で、アルミナ、シリカといった金属酸化膜も使用可能である。
【0026】
フィルム状試料ガス透過度装置は、基本的に、ガスセル、検出器、温度制御装置、パソコンを備えていればよく、必要に応じて付属品をあってもよい。ガスセルは、図1に示すようにガスセルが独立していてもよく、開口部あるいは対象化合物保有部が配管とつながって装置の一部と成っているものでもよい。また、固定方法及びガスセルは大気中でも真空中でも使用可能であるが、バックグランドを低く保て、より高感度の測定が可能となるため、真空中の方が好ましい。
【0027】
図2は、本発明のフィルム状試料ガス透過装置の一態様を示す説明図である。図2の(20)は、ガスセル、(21)は、予備排気室、(22)は、真空チャンバー、(23)は、検出器、(24)は、温度制御装置、(25)は、ポンプ、(26)は、バルブ、(27)は、パソコン、(28)は、ガスセル導入用治具、(29)は、ポンプ、(30)は、キャリアガスを示す。
【0028】
予備排気室(21)は、予備排気室にて試料を事前に排気しておくことにより、大気からの持ちこみも少なく、真空チャンバーをクリーンの状態に保つことができ、より高精度及び高感度の測定が可能である。到達真空度は真空チャンバーに移せる真空まで到達できれば、いずれでもよいが、より好ましくは1×10-4Paまで到達するものがよい。また、必要に応じてこれらに電解研磨やバフ研磨やTiN被覆等、ガスを放出あるいは吸着しにくい表面処理が施されていてもよい。
【0029】
真空チャンバー(22)である場合は、1×10-8Paまで到達する高真空用がよく、より好ましくは1×10-10Paまで到達する超高真空用がよい。また、必要に応じてこれらには電解研磨やバフ研磨TiN被覆等、ガスを放出あるいは吸着しにくい表面処理が施された方がより好ましい。
【0030】
検出器(23)は、測定対象物を検出できるものではいずれもよく、赤外センサー、酸化ジルコニウム、タングステン、SIMS、質量分析計等使用可能であるが、高感度を測定するためには質量分析計の方がより好ましい。
この質量分析計は、磁場を用いるもの、高周波を用いるもの、磁場と高周波を組み合わせて用いるもの等いずれも使用し得るが、小型で取扱いが容易のものとしては高周波を用いる4重極型質量分析計が好ましく、さらに2次電子増倍管付きの4重極質量分析計がより好ましい。
また、定量値を得るためには、質量分析計が測定気体の適当な流量に対して校正されていることが好ましい。ただし、試料間の相対的な比較を行うだけであれば定量値が必要ないので、校正の必要はない。本発明は、質量分析計を用いることにより、酸素及び水蒸気だけではなく、揮発性化合物も適応可能であり、またいくつかの化合物を同時に測定することができる。
【0031】
温度制御装置(24)は、フィルム状試料に加温したり、恒温を保てるものではいずれでも使用可能である。また、加温方法として、赤外線等が使用可能である。そして、温度を恒温に保つため、あるいは急速に温度を下げるために、水冷装置等の冷却装置が備え付けられていてもよい。
【0032】
ポンプ(25)、(29)は、高真空用ポンプとして、拡散ポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオポンプ、スパッタイオンポンプ、ゲッターポンプ等を使用し得るが、これらの中では排気速度が安定しているターボ分子ポンプが好ましい。また、これらのポンプを複数組み合わせて使用してもよい。
【0033】
バルブ(26)は、真空用のバルブをもちいるのが好ましく、より好ましくは、超高真空用のバルブである。また、バルブは、手動のもの、圧縮空気駆動のもの、電磁力駆動のもの、いずれのものも使用し得る。
キャリアーガス(30)は、不活性のものならばいずれでも使用可能であり、例えば、Ar、N2、He、H2等のガスである。
【0034】
【実施例】
下記に本発明の実施例を示して説明する。
【0035】
<実施例1>
厚さ100μmのPETフィルムに、酸化珪素をプラズマCVD蒸着したフィルムを金属箔で封止し、図1に示したガスセルに加圧固定治具にて固定し、予備排気室に導入し予備排気後、真空チャンバーに導入した。
この時、水の分圧は、予備排気室から真空チャンバー導入時には、一旦10-10Torrまで上昇するが、30分後には10-13Torrまで下がり、5時間後に分圧が立ち上がり始め、約30時間後に分圧が定常となった。
このピーク面積を計算し、透過度に換算した所0.0001g/m2/dayと見積もられ、測定可能であることが明らかになった。
【0036】
<比較例1>
実施例1と同様にPETフィルムに、酸化珪素をプラズマCVD蒸着したフィルムを、MOCON社製PERMATRAN−WIDで測定した所、検出器から0.01g/m2/dayであることは分かったが、0.01g/m2/day以下の値は、出力が不安定で正確な値を測定することできないことが明らかになった。
【0037】
【発明の効果】
以上から明らかなように、本発明のガスセル及びフィルム状試料ガス透過装置は、高真空中の圧力下でも、フィルム状試料とガスケットあるいはフィルム状試料と蓋の間を高密着させリークすることなく、封止剤自身からのガス放出や透過もなく、フィルム状試料とガスケットとを定量的に封止し、金属酸化膜を積層したプラスチックにおいても金属酸化膜が割れたり、クラックが入らず、高精度で、検出限界が、0.0001g/m2/day以下まで測定が可能である。
【0038】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガスセルの一様態を示す説明断面図。
【図2】本発明のフィルム状試料ガス透過装置の一様態を示す説明図。
【図3】本発明のフィルム状試料ガス透過装置で測定した測定結果を示すグラフ。
【符号の説明】
10 蓋部
11 開口部
12 フィルム状試料
13 封止材
14 測定対象化合物保持部
15 測定対象化合物
16 加圧固定治具
17 封止剤暴露面
20 ガスセル
21 予備排気室
22 真空チャンバー
23 検出器
24 温度制御装置
25 ポンプ
26 バルブ
27 パソコン
28 ガスセル導入用治具
29 ポンプ
30 キャリアーガス

Claims (7)

  1. 測定対象物を保持する周囲に隔壁と、該隔壁に囲まれた凹部を有するガスケットの、前記隔壁上に、金属箔である封止材を設け、該封止材を介してフィルム状試料を配置し、その上に開口部を有する蓋部で被覆し、該蓋部を垂直方向に加圧し、固定することを特徴とするフィルム状試料の固定方法。
  2. 前記フィルム状試料上にさらに金属箔である封止材を配置することを特徴とする請求項1記載のフィルム状試料の固定方法。
  3. 前記封止材及びフィルム状試料のうち、前記ガスケットと蓋部により覆われていない外側端部分を金属または金属化合物により封止する工程を有することを特徴とする請求項1または2記載のフィルム状試料の固定方法。
  4. 測定対象物を保持する凹部を有するガスケットと該ガスケットの上部に、金属箔である封止材を介してフィルム状試料を保持できる保持部を備え、さらに、その上に開口部を有する蓋部を備え、該蓋部を垂直方向に加圧可能な加圧固定手段を備えることを特徴とするガスセル。
  5. 前記フィルム状試料上にさらに金属箔である封止材を配置することを特徴とする請求項4記載のガスセル。
  6. 前記封止材及びフィルム状試料のうち、前記ガスケットと蓋部により覆われていない部分が、金属または金属化合物により封止されていることを特徴とする請求項4または5記載のガスセル。
  7. 少なくとも、容器内に、測定対象物を保持しフィルム状試料を固定するガスセルと、フィルム状試料を透過した測定対象物を測定するための測定手段を有するガス透過度測定装置であって、該ガスセルが請求項4〜6のいずれかに記載のガスセルであることを特徴とするガス透過度測定装置。
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