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JP3942806B2 - 可変容量形ポンプ - Google Patents

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JP3942806B2
JP3942806B2 JP2000168716A JP2000168716A JP3942806B2 JP 3942806 B2 JP3942806 B2 JP 3942806B2 JP 2000168716 A JP2000168716 A JP 2000168716A JP 2000168716 A JP2000168716 A JP 2000168716A JP 3942806 B2 JP3942806 B2 JP 3942806B2
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一義 内野
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ユニシア ジェーケーシー ステアリングシステム株式会社
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、たとえば自動車のハンドル操作力を軽減する動力舵取装置のような圧力流体利用機器に用いる可変容量形ポンプに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の動力舵取装置用ポンプには、自動車用エンジンで直接回転駆動される容量形のベーンポンプが用いられている。このような容量形ポンプは、エンジン回転数に対応して吐出流量が増減するため、自動車の停車中や低速走行時に操舵補助力を大きくし、高速走行時に操舵補助力を小さくするという動力舵取装置に要求される操舵補助力とは相反する特性を備えていなければならない。したがって、回転数が低い低速走行時にも必要な操舵補助力が得られる程度の吐出流量を確保できる大容量の容量形ポンプを用いる必要がある。また、回転数が高い高速走行時には、吐出流量を一定量以下に制御する流量制御弁が必須となる。このため、構成部品点数が相対的に多くなり、構造や通路構成も複雑となり、全体の大型化やコスト高になることが避けられない。
【0003】
このような不具合を解決するために、一回転当たりの吐出流量(cc/rev)を回転数の増加に比例して減少させることが可能な可変容量形ベーンポンプが、特開平6−200883号公報、特開平7−243385号公報、特開平8−200239号公報等によって提案されている。これらの可変容量形ポンプによれば、容量形ポンプに付設していた流量制御弁が不要となり、また駆動馬力の低減が図れるためエネルギ効率の面でも優れている。
【0004】
たとえば特開平8−200239号公報に示すポンプにおいては、図7に示すように、ポンプボディ1内部の楕円状空間内に揺動自在に支持したカムリング2内にロータ3を相対的に偏心させた状態で設けることにより、これらのロータ3とカムリング2との間にほぼ三日月状のポンプ室4を形成している。また、カムリング2の揺動方向の両側に第1、第2の流体圧室5,6を形成している。第2の流体圧室6には、前記ポンプ室4のポンプ容量が最大となる方向に付勢する圧縮コイルばね2bを設けている。また、前記ポンプ室4から吐出される圧力流体の吐出側通路11の途中に設けた可変メータリング絞り12の上、下流側の流体圧力差によって作動する制御バルブ10を設け、この制御バルブ10により前記第1、第2の流体圧室5,6内の流体圧を制御することによって前記カムリング2を揺動させている。
【0005】
前記第2の流体圧室6内に臨むボディ1側壁面に開口させた孔部12aを、カムリング2の揺動によってカムリング2の側縁部12bで孔部12aの開口面積を調整することにより、可変メータリング絞り12を形成している。すなわち、カムリング2を揺動させるための第1、第2の流体圧室5,6のうち、第2の流体圧室6に可変メータリング絞り12の下流側の流体圧を直接導入する構造となっている。そして、前記ポンプ室4から吐出される圧力流体を可変メータリング絞り12を形成する孔部12aに導くとともに、この孔部12aから第2の流体圧室6に流入した圧力流体を、この第2の流体圧室6内を通してポンプ吐出側通路13に送り、図示しない吐出ポートから吐出している。
【0006】
上述した可変容量形ポンプでは、ポンプが高回転域に至ったとき、制御バルブ10により可変メータリング絞り12の上流側の流体圧を導入する第1の流体圧室5へダンパ絞りを有する通路5aを介して流体圧を導入する構造が採用されている。このような構造では、カムリング2がこの第1の流体圧室5側に向かって揺動したときには、前記通路5aのダンパ絞りによるダンパ機能によって、前記カムリング2に対して所要の制動力を作用させることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述したように第2の流体圧室6には、圧縮コイルばね2bを設けているだけであって、第1の流体圧室5側のようにカムリング2に制動力を与えるダンパ機能をもつ手段が設けられていない。これは、第2の流体圧室6に可変メータリング絞り12の孔部12aが開口し、この開口がポンプの吐出側通路7,13の一部として兼用されており、第2の流体圧室6内をポンプ吐出側の流体圧が流れるためである。図中6aは制御バルブ10の他方室に可変メータリング絞り12の下流側の流体圧を導く通路である。
【0008】
したがって、カムリング2が第2の流体圧室6側に揺動したときには、ばね2bが撓むことによる弾撥力は作用するものの、ダンパ機能による制動をかけることができない。このため、カムリング2の第1、第2の流体圧室5,6側への揺動(特に第1の流体圧室5側から第2の流体圧室6側への揺動動作)が円滑になされない。このようになると、カムリング2が振動したり、ポンプ吐出側の流体圧に脈動を生じることが避けられない。この脈動状態を図8中に破線で示す。
【0009】
これを詳述すると、第2の流体圧室6に開口する孔部12aからポンプ吐出側の流体圧が噴流となって流入し、これをカムリング2の外側縁部12bで開閉しようとしたときにカムリング2が振動しやすく、しかもこのような孔部12aからの噴流をカムリング2の外側縁部12bで遮ったり通過させたりすることにより、ポンプ吐出側における脈動が大きくなる。このような振動や脈動が生じると、動力舵取装置においては、操舵力が変動したり、流体音等の騒音が大きくなるという問題が起きる。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、カムリングの振動やポンプ吐出側での脈動を軽減した可変容量形ポンプを得ることを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
このような要請に応えるために本発明に係る可変容量形ポンプは、ポンプ室を形成するカムリングをポンプボディの内部空間内で揺動可能に支持し、前記カムリングの揺動方向の一側に第1の流体圧室を形成し、他側に第2の流体圧室を形成するとともに、前記カムリングを前記ポンプ室のポンプ容量が最大となる方向に付勢する付勢手段を設け、前記ポンプ室から吐出される圧力流体の吐出側通路の途中に設けた可変メータリング絞りの上、下流側の流体圧力差によって作動する制御バルブを設け、この制御バルブにより少なくとも第1の流体圧室内の流体圧を制御して前記カムリングを揺動させる構造において、前記可変メータリング絞りは、前記カムリングの軸線方向の一側の側面部に凹設され、または前記カムリングの一側の側面部に開口するように軸線方向に貫通形成されこの側面部に対面するポンプボディの側壁部に形成したポンプ室の吐出側開口に連通する連通溝と、前記ポンプボディの側壁部でこの連通溝の一部に臨む位置に開口され前記カムリングの揺動に伴って連通溝の溝側縁により開口面積を調整可能な孔部とから形成され、前記第2の流体圧室とは区画された位置に設けられていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、可変メータリング絞りを第2の流体圧室内の流体圧に影響を及ぼすことがない区画された部位に設けているから、カムリングを第1、第2の流体圧室内の流体圧によりダンパ機能を持たせて揺動させることができる。
【0014】
また、本発明によれば、カムリングの側面部に凹設した連通溝に臨んでいるポンプボディの側壁部側の孔部を、カムリングの揺動に伴って連通溝の溝側縁で閉塞したり開放したりすることにより、可変メータリング絞りの絞り量を調整することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1ないし図4は本発明に係る可変容量形ポンプの一つの実施の形態を示す図である。この実施の形態では、本発明に係るベーンポンプが動力舵取装置の油圧発生源となるベーンタイプのオイルポンプであって、その吐出流量をポンプの回転数が増大するにしたがって、最大吐出流量よりも少ない所定流量になり、その流量を維持する、いわゆるドルーピング特性をもつポンプによって説明する。
【0016】
図1、図2、図3において、全体を符号20で示すベーンタイプの可変容量形ポンプは、ポンプボディを構成するフロントボディ21とリアボディ22を備えている。このフロントボディ21は、全体が略カップ状を呈し、この内部にポンプカートリッジとしてのポンプ構成要素23を収納配置する収納空間24が形成されるとともに、この収納空間24の開口端を閉塞するようにリアボディ22が組合わせられ一体に組立てられる。
【0017】
このフロントボディ21には、ポンプ構成要素23を構成するロータ25を外部から回転駆動するためのドライブシャフト26が貫通した状態で軸受26a,26b(26aはフロントボディ21側、26bはリアボディ22側に配設される)により回転自在に支持されている。26cはオイルシールである。前記ロータ25は図1では図中矢印で示す反時計方向に回転する。
【0018】
27はカムリングで、このカムリング27はベーン25aを有するロータ25の外周部に嵌装して配置される内側カム面27aを有し、かつこの内側カム面27aとロータ25との間にポンプ室28を形成している。このカムリング27は前記ロータ25とは偏心した状態で位置づけられ、カムリング27とロータ25との間に形成されるほぼ三日月状の空間がポンプ室28となる。また、このカムリング27は、後述するようにポンプ室28の容積(ポンプ容量)を可変できるように収納空間24内で空間内壁部分に嵌合状態で設けたアダプタリング29内で揺動可能に配置されている。27bはカムリング27をポンプ室28のポンプ容量が最大となる方向に付勢する圧縮コイルばねである。
【0019】
図2、図3において、30はプレッシャプレートを示し、このプレッシャプレート30は、上述したロータ25、カムリング27およびアダプタリング29によって構成されているポンプカートリッジ(ポンプ構成要素23)のフロントボディ21側に圧接して積層配置されている。ポンプカートリッジの反対側面には、前記リアボディ22の端面がサイドプレートとして圧接され、フロントボディ21とリアボディ22とが一体的に組立てられている。これらの部材によって、前記ポンプ構成要素23が構成されている。
【0020】
前記プレッシャプレート30と、これにカムリング27を介して積層されるサイドプレートとなるリアボディ22とは、後述する揺動支点ピン31によって回転方向で位置決めされた状態で一体的に組付けられている。前記揺動支点ピン31は、カムリング27を揺動可能とするための軸支部および位置決めピンとして機能するとともに、カムリング27を揺動させる流体圧室を画成するシール材としても機能する。
【0021】
32,33は前記ポンプ室28に開口するポンプ吸込側開口とポンプ吐出側開口で、これらの開口32,33はほぼ円弧状を呈する溝部によって形成され、図1に示すようにロータ25の回転方向の始端側のポンプ吸込側領域と終端側のポンプ吐出側領域に開口している。前記吸込側開口32は、図2に示すようにリアボディ22のポンプ室28に臨む端面に凹設され、吐出側開口33は前記プレッシャプレート30のポンプ室28側の端面に凹設されている。
【0022】
前記プレッシャプレート30の前記吸込側開口32に対向する位置には、ほぼ同形状の溝部32aと孔部32bが形成されている。この孔部32bは、図4(a),(b)に示すように、前記フロントボディ21の収納空間24の底部側に形成したほぼ扇形状の吸込側の圧力室34に接続されている。図4(a)中34aは、圧力室34を前記ドライブシャフト26周りとともに取り囲むOリングである。
【0023】
また、前記リアボディ22には、前記吸込側開口32にタンクTから吸込む吸込側流体を吸込ポート35aを介して給送する吸込側通路35が形成されている。タンクT(ポンプ吸込側)から吸込まれる吸込側流体は、吸込ポート35aからリアボディ22内のポンプ吸込側通路35を通り、リアボディ22の端面に開口する前記吸込側開口32からポンプ室28内に供給される。
【0024】
前記フロントボディ21の収納空間24の底部において、前記プレッシャプレート30の吐出側開口33のロータ回転方向の終端付近に対応する位置には、ほぼ円弧状のポンプ吐出側の圧力室36が形成されている。この圧力室36は、フロントボディ21内に形成したポンプ吐出側通路37を介して吐出ポート37aに接続され、圧力室36に導かれた吐出側流体圧を吐出ポート37aから吐出するように構成されている。図4(a)中36aは吐出側圧力室36をシールするOリングである。
【0025】
前記フロントボディ21の収納空間24の底部において、ドライブシャフト26周りの前記吸込側、吐出側の圧力室34,36を除いた部分には、図2および図4(a)に示すように、ポンプ吐出側の流体圧が導入される空間部38が形成されている。この空間部38は、フロントボディ21のデッドスペースを利用して形成した所要のボリュームを有する容積空間であって、この空間部38は前記プレッシャプレート30に穿設した小孔38aを介して前記吐出側開口33と連通している。
【0026】
前記空間部38はポンプの吐出側通路系から見ると、小孔38aによる絞り通路を介して接続された行き止まり空間であって、ポンプの吐出側の流体圧の圧力変動やこれに伴う騒音を減衰させる反動形の共鳴室として機能する。
【0027】
40はフロントボディ21の上方に前記シャフト26と直交する方向に形成されたバルブ孔41とスプール42とからなる制御バルブで、後述するポンプ吐出側通路の途中に設けたメータリング絞り部60の上、下流側の圧力差によって作動する。この制御バルブ40により、前記アダプタリング29内でカムリング27の両側に前記揺動支点ピン31とその軸対象位置に設けたシール材45により分割形成した第1、第2の流体圧室43,44に導入する流体圧をポンプ回転数に応じて制御するように構成されている。
【0028】
前記バルブ孔41の一端側には、前記ポンプ吐出側の流体圧が導入されている空間部38からパイロット圧通路51(図1中想像線で示す)が接続され、前記メータリング絞り部60の上流側の流体圧P1 が導入される室48が形成されている。前記バルブ孔41の他端側には、前記スプール42を前記一端側に付勢する圧縮コイルばね46aを有するばね室46が形成されている。このばね46aにより前記スプール42を図1中左側に付勢している。
【0029】
ばね室46には、前記ポンプ吐出側通路37のフロントボディ21における終端部である吐出ポート37aに近接する部分から形成したパイロット圧通路52が接続され、メータリング絞り部60の下流側の流体圧P2 が導かれる。また、前記バルブ孔41の軸線方向の中央部分にはポンプ吸込側(タンクT)に通路50aが接続され、スプール42の中央の環状溝42aにより形成したポンプ吸込側室50が形成されている。
【0030】
ここで、上述したパイロット圧通路52の途中に、図1中一点鎖線で示すようにパイロット絞り52aを設けてもよい。このパイロット絞り52aを設けると、制御バルブ40のスプール42に対する流体圧変動等の悪影響を防止できる。また、このパイロット絞り52aは、スプール42内に設けたリリーフバルブ70のリリーフ時に、制御バルブ40のばね室46内の流体圧を圧力降下させる。そして、この圧力降下に伴う制御バルブ40の働きでカムリング27はポンプ室28の容量が減少する方向に揺動するから、ポンプ吐出量が減少することになり、ポンプの省エネルギ化を図るうえで有利となる。
【0031】
前記ばね室46は、スプール42が図1の位置にあるときに前記第2の流体圧室44に対しての接続通路47により接続されるとともに、前記スプール42がばね室46側(図中右方)に動いたときに前記第2の流体圧室44から徐々に切り離されるように構成されている。したがって、前記第2の流体圧室44には、このばね室46と前記ポンプ吸込側室50を介してメータリング絞り部60の下流側の流体圧P2 とポンプ吸込側の流体圧とがこのスプール42の動きに伴って供給される。上述した接続通路47の一部にはダンパ絞り47aが形成されている。
【0032】
前記スプール42の一端側に形成される高圧側の室48は、スプール42が図1の位置にあるときには閉塞されているが、前記スプール42がばね室46側(図中右方)に動いたときに、前記ポンプ吸込側室50から徐々に切り離される接続通路49を介して前記第1の流体圧室43に選択的に接続されるように構成されている。したがって、前記第1の流体圧室43には、前記ポンプ吸込側室50と前記高圧側の室48を介してポンプ吸込側の流体圧とメータリング絞り部60の上流側の流体圧P1 とがスプール42の動きに伴って供給される。前記接続通路49の一部にはダンパ絞り49aが形成されている。
【0033】
図1では、前記接続通路49は、スプール42の一端側のランド部に形成したチャンファ部による隙間通路を介して前記スプール42の軸線方向の中央部分に形成したポンプ吸込側室50に接続されている。そして、スプール42の変位量によって、前記パイロット圧通路51側の流体圧P1 (メータリング絞り部60の上流側の流体圧)が、前記接続通路49を介して第1の流体圧室43に選択的に接続されるように構成されている。
【0034】
ポンプ始動時や低回転時はメータリング絞り部60の上、下流側での差圧が小さいから、スプール42は図1に示した位置にあり、第1の流体圧室43はポンプ吸込側に接続され、流体圧P0 が導入されている。一方、第2の流体圧室44には、前記メータリング絞り部60の下流側でのポンプ吐出側の流体圧P2 が導入されており、カムリング27はポンプ室28の容積が最大となる状態を維持する。
【0035】
ポンプ回転数が中、高速回転域になり、吐出流量が多くなると、スプール42はばね46aを撓ませる方向に移動し、これによりパイロット圧通路51が接続されている室48が接続通路49に接続されることになる。このようになると、第1の流体圧室43には、スプール42の移動量に伴ってメータリング絞り部60の上流側の流体圧P1 と前記ポンプ吸込側室50の流体圧P0 とが導入される。
【0036】
一方、第2の流体圧室44には、スプール42の移動量に伴ってメータリング絞り部60の下流側の流体圧P2 の通路47への供給がランド部によって閉じられるとともに、このランド部に形成したチャンファ部による隙間通路を介して前記ポンプ吸込側室50に接続される。この結果、第2の流体圧室44はポンプ吸込側の流体圧P0 となり、カムリング27は、上述したように図1中右側に揺動変位してポンプ室28の容積が減少する。
以上のようなベーンタイプの可変容量形ポンプ20において、上述した以外の構成は従来から広く知られている通りであり、ここでの具体的な説明は省略する。
【0037】
本実施の形態では、上述したカムリング27の揺動を制御する制御バルブ40を作動させるためのメータリング絞り部60において、ポンプ回転数が中、高速域に至ったときにポンプ20からの吐出量を最大吐出流量よりも少ない所定流量にしその流量を維持する、いわゆるドルーピング特性をもたせる構成を採っている。このために必要となる可変メータリング絞り61を、図1、図3および図4(a),(b)に示すように、カムリング27の軸線方向の一側の側面部27cとこれに対面するプレッシャプレート30との間であって、前記第2の流体圧室44とは区画された位置に設けている。
【0038】
これを詳述すると、前記プレッシャプレート30のポンプ室28側の内壁面30cに前記ポンプ室28の吐出側領域に臨んで形成した吐出側開口33に連通するほぼ円弧状の連通溝62を、前記カムリング27の軸線方向の一側の側面部27cに凹設している。また、前記プレッシャプレート30のポンプ室28側の内壁面30cであってこの連通溝62の一部に臨む位置に小孔63を開口させ、この小孔63をプレッシャプレート30に設けた通路孔64を介して前記ポンプ吐出側の圧力室36に接続している。そして、前記小孔63をカムリング27側の連通溝62の溝側縁62aで開口面積を変えることができるように形成することによって、前記可変メータリング絞り61を構成している。なお、前記連通溝62の一部は、図1、図3(a)、図4(a),(b)に示すようにカムリング27を貫通し両側の圧力バランスを保ったり、流体圧通路の通路面積を確保できるようになっている。
【0039】
このような構造において、カムリング27がポンプ室28の容量を減少させる方向に揺動すると、図1に示す小孔63の開口面積は、連通溝62内に開口している状態から、連通溝62の溝側縁62aによって徐々に塞がれることにより減少することになる。カムリング27が図中左側に最大限に揺動すると、小孔63は全体が塞がれ、可変メータリング絞り61が閉じることになる。
【0040】
この実施の形態では、図1、図4(a),(b)において、前記吐出側開口33の回転方向の終端側に孔部66を設けて、この吐出側開口33と吐出側の圧力室36とを連通しており、この孔部66がメータリング絞り部60を構成する固定メータリング絞り65となって、前記制御バルブ40を作動させるための流体圧力差を生じさせている。
【0041】
したがって、上述したように可変メータリング絞り61が閉じたときにはこの固定メータリング絞り65での上、下流側の圧力差で制御バルブ40が制御され、ポンプ20からの吐出量は一定となる。なお、この実施の形態では、固定メータリング絞り65となる孔部66を、吐出側開口33と吐出側圧力室36との間に設けているが、これに限定されず、ポンプ吐出側通路途中であれば適宜の位置に設けることができる。要は、孔部66の上、下流側の流体圧を、前記制御バルブ40の両端側の室48,46に導いておればよい。
【0042】
上述したような可変メータリング絞り61によれば、これを構成する部分が従来とは異なり、第2の流体圧室44からは区画された部分に形成され、この絞り61を流れる圧力流体の噴流が第2の流体圧室44内の流体圧に影響を及ぼすことがないから、カムリング27の揺動を安定した状態で行せることができる。
この場合において、第2の流体圧室44をポンプ吐出側と連通する通路47に設けたダンパ絞り47aは、第1の流体圧室43側の通路49に設けたダンパ絞り49aと同じく、室内の流体圧力変動を防ぎ、結果としてカムリング27の不要な動きを抑制するために機能する。
【0043】
すなわち、前記カムリング27を揺動させる第1、第2の流体圧室43,44を、ダンパ絞り49a,47aを介して制御バルブ40、ポンプ吐出側通路途中であってメータリング絞り部60の上、下流側に接続しているから、ポンプ回転数の増減によるメータリング絞り61,65の上、下流側での流体圧の圧力差に伴ってカムリング27が揺動する際に、カムリング27に対して両揺動方向で所要の制動力を与えることができる。したがって、第1、第2の流体圧室43,44側への揺動時に適切な制動力を与えることができるから、カムリング27が振動したり、ポンプ吐出側で脈動を生じたりすることがない状態で円滑に揺動させることができる。
【0044】
このようにダンパ機能をもたせた第1、第2の流体圧室43,44によってカムリング27をポンプ吐出側の流量の大きさに応じて所要の状態で揺動させ、ポンプ吐出側への供給流量を前述した図8中実線で示すように一定量またはポンプ回転数の増加とともに一定量以下の任意の量に維持することができる。このような一定量は上述した固定メータリング絞り65を形成する孔部66によって規定される量であり、それ以上の流量制御は可変メータリング絞り61を形成する小孔63の開口面積で規定される量である。
【0045】
本発明は上述した実施の形態で説明した構造に限定されず、可変容量形ポンプ20の各部の形状、構造等を、適宜変形、変更することは自由であり、種々の変形例が考えられる。たとえば上述した実施の形態では、可変メータリング絞り61を構成する孔部として一つの小孔63を用いた場合を例示したが、本発明はこれに限らず、図5および図6(a),(b),(c)に示すように、複数個(ここでは3個)の小孔63によって孔部を構成してもよい。このように複数個の小孔63を用い、連通溝62の溝側縁62aで開口面積を変えるように構成すれば、カムリング27の揺動変位に伴う開口面積の変化量を一個に比べて大きく設定することができる。
【0046】
図5では、カムリング27側の連通溝62として、円弧状溝に変えてカムリング27の側面部27cの全周に形成した環状溝で形成した例を示している。このように形成すれば加工が容易に行える。なお、このような可変メータリング絞り61を構成する孔部としては、上述した実施の形態で説明した円形穴に限らず、適宜の断面形状を有する穴で形成してもよい。
【0047】
上述した実施の形態では、可変メータリング絞り61を構成する小孔63をカムリング27の側面部に対面するプレッシャプレート30の内壁面に形成した例で説明したが、プレッシャプレートを用いずにポンプボディの内壁部が直接カムリング27に対面している場合には、この内壁部に前記小孔を設けてもよい。また、可変メータリング絞り61を構成する小孔63と連通溝62の溝側縁62aを、上述した実施の形態とは逆の位置に設けることもできる。
【0048】
上述した実施の形態では、メータリング絞り部60として、可変メータリング絞り61と固定メータリング絞り65とを別々に形成し、可変メータリング絞り61を開口面積が全開状態から全閉状態になるように変化させる構造とした場合を説明したが、本発明はこれに限定されない。メータリング絞りとして一つまたは複数の小孔からなる孔部を用い、この孔部の一部を常に全開状態とすることにより固定絞りとして機能させ、残りの開口面積を変えることにより可変絞りとして機能させる構造であってもよい。また、上述した実施の形態では、メータリング絞り部60を構成する固定メータリング絞り65や可変メータリング絞り61を、単に「絞り」として説明したが、これはこのような絞り部分がオリフィスであってもチョークであってもよいからである。
【0049】
また、前述した実施の形態は、可変容量形ポンプ20の一例を示たものであって、本発明の要部となる可変メータリング絞り部60以外の部分を適宜変形、変更することは自由である。たとえばポンプボディ21,22内の吸込側通路35、吐出側通路37の構造等を適宜変更してもよい。また、制御バルブ40としても、カムリング27を揺動させるために第1、第2の流体圧室43,44の圧力差を確保できる構造であればよい。
【0050】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る可変容量形ポンプによれば、制御バルブを作動させるための可変メータリング絞りを第2の流体圧室内の流体圧に影響を及ぼすことがない区画された部位に設けたから、この第2の流体圧室にダンパ機能をもたせた状態でカムリングを揺動させることができる。したがって、カムリングの揺動方向の両側の流体圧室においてそれぞれダンパ機能を働かせてカムリングを揺動させることができるので、カムリングの振動やポンプ吐出側での脈動を軽減し、ポンプ回転数に対する供給流量特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る可変容量形ポンプの一つの実施の形態を示し、低回転時にあるポンプの要部断面図である。
【図2】 図1のII−II線断面図である。
【図3】 (a)は図1のIIIa−IIIa線断面図、(b)は図1のIIIb−IIIb線で断面した要部断面図である。
【図4】 (a)は図2のIVa−IVa線断面図、(b)は(a)のIVb−IVb線断面図である。
【図5】 本発明に係る可変容量形ポンプの別の実施の形態を示し、プレッシャプレートのポンプ室に臨む面を示す側面図である。
【図6】 図5のVI部を拡大した図であって、(a),(b),(c)はカムリングの揺動に伴って可変メータリング絞りを形成する小孔の開口面積が変化する状態を説明するための図である。
【図7】 従来の可変容量形ポンプを示し、低回転時の状態での作動説明図である。
【図8】 可変容量形ポンプにおけるポンプ回転数Nに対する供給流量Qの関係を説明する特性図である。
【符号の説明】
20…ベーンタイプの可変容量形ポンプ(可変容量形ベーンポンプ)、21…フロントボディ(ポンプボディ)、22…リアボディ(ポンプボディ)、23…ポンプ構成要素、24…収納空間、25…ロータ、25a…ベーン、26…ドライブシャフト(回転軸)、27…カムリング、27b…圧縮コイルばね(付勢手段)、28…ポンプ室、29…アダプタリング、30…プレッシャプレート、31…揺動支点ピン、32…吸込側開口、33…吐出側開口、34…ポンプ吸込側圧力室、35…吸込側通路、35a…吸込ポート、36…ポンプ吐出側圧力室、37…吐出側通路、37a…吐出ポート、38…空間部(共鳴室)、40…スプール式制御バルブ、41…バルブ孔、42…スプール、42a…環状溝、43,44…第1、第2の流体圧室、45…シール材、46…ばね室、46a…圧縮コイルばね、47…接続通路、47a…ダンパ絞り、48…高圧側の室、49…接続通路、49a…ダンパ絞り、51…パイロット圧通路、51a…ダンパ絞り、52…パイロット圧通路、52a…パイロット絞り、60…メータリング絞り部、61…可変メータリング絞り、62…連通溝、62a…溝側縁、63…小孔(孔部)、64…通路孔、65…固定メータリング絞り、66…孔部、PS…圧力流体利用機器(パワーステアリング装置のパワーシリンダ)、T…タンク。

Claims (1)

  1. ポンプ室を形成するカムリングをポンプボディの内部空間内で揺動可能に支持し、前記カムリングの揺動方向の一側に第1の流体圧室を形成し、他側に第2の流体圧室を形成するとともに、前記カムリングを前記ポンプ室のポンプ容量が最大となる方向に付勢する付勢手段を設け、前記ポンプ室から吐出される圧力流体の吐出側通路の途中に設けた可変メータリング絞りの上、下流側の流体圧力差によって作動する制御バルブを設け、この制御バルブにより少なくとも第1の流体圧室内の流体圧を制御して前記カムリングを揺動させる可変容量形ポンプにおいて、前記可変メータリング絞りは、前記カムリングの軸線方向の一側の側面部に凹設され、または前記カムリングの一側の側面部に開口するように軸線方向に貫通形成されこの側面部に対面するポンプボディの側壁部に形成したポンプ室の吐出側開口に連通する連通溝と、前記ポンプボディの側壁部でこの連通溝の一部に臨む位置に開口され前記カムリングの揺動に伴って連通溝の溝側縁により開口面積を調整可能な孔部とから形成され、前記第2の流体圧室とは区画された位置に設けられていることを特徴とする可変容量形ポンプ。
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