JP3833829B2 - はんだ合金及び電子部品の実装方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は無電解Niメッキ面の接合に使用するはんだ合金に関し、特にIC等の電子部品の無電解Niメッキしたランドを回路基板に接合するのに有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
近来、電子機器の小型、薄型、軽量、多機能化は、PHS、カ−ナビゲ−ションシステム、ビデオカメラ、ノ−トブックパソコン等のパ−ソナルユ−スにおいて顕著であり、これに伴い電子部品の小型化、複合化、高機能化、表面実装の高密度化が加速され、電子部品の実装技術の分野でBGA(ボ−ルグリッドアレイ)やCSP(チップサイズパッケ−ジ)の技術が開発されるに至った。
而して、電子回路板の発熱量の増加や使用条件の過酷化に対処するために、電子部品のはんだ付け部の熱疲労に対する信頼性の一層の向上が要求されている。
また、近来においては、環境保全の面からはんだの鉛フリ−化が要求され、各種のSnを主成分とする鉛フリ−はんだが開発されつつある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
周知の通り電子部品の実装技術の分野では、被接合面である電子部品の電極または回路基板の導体の酸化防止をNiメッキによって行うことがあり、このNiメッキには、無電解Niメッキが、電源が不要であり単にメッキ浴に素材を浸漬するだけで密着力に優れた均一厚さの均質な皮膜が得られる(アモルファス合金となるために膜厚の増大による結晶粒子の成長が発生せず、均一な表面が得られる)、メッキ膜の物性を浴条件によって調整し易く優れた物性の皮膜が得られる、微細なランド複雑な形状のランドでも容易にメッキできる等の有利性から汎用されている。
しかしながら、無電解Niメッキ面を従来の鉛フリ−はんだではんだ付けしても、充分な接合強度を得ることができない。例えば、錫−銀共晶はんだやアロイH合金はんだ(Cu0.5重量%,Ag2.0重量%,Bi7.5重量%,残部Sn)による接合強度は、後述のCu0.5重量%添加Snはんだによる接合強度の60%にも達しない。
【0004】
本発明者において、その原因を鋭意探究したところ、Ni膜の析出時、無電解Niメッキ浴の還元剤〔Na2H2PO2、KH2PO2、NaBH4、(CH3)2NH・BH3〕中のPやBが析出Ni膜に共析され、これらのPやBがはんだ接合中に溶融はんだ内に移行して脆弱なSnの燐化物や硼化物が生成される結果であることが判明した。
そこで、本発明者は無電解Niメッキ面を優れた強度で接合できる鉛フリ−はんだを開発すべく鋭意検討し、Cuを少量(0.1重量%〜3.0重量%程度)添加したSnでは、接合時にCuが接合界面近傍に集まってSnとの金属間化合物を生成してSnを拘束しSnの燐化物や硼化物の生成を阻害することが判明し、その接合強度を測定したところ前記した通り錫−銀共晶はんだやアロイH合金はんだによる接合強度に較べ一段と優れた強度であった。これは、Snの燐化物や硼化物の生成が阻止された結果であると推定される。
【0005】
しかしながら、加熱エ−ジング試験を行ったところ接合強度の低下率が大きく、加熱エ−ジング試験後の引張りによる接合部の破断状態はニッケルメッキ面が露出する接合界面の破断であり、加熱エ−ジング試験によりはんだ付け接合界面の強度低下が凝固はんだ自体の強度低下よりも大になることが明らかになった。これは、加熱エ−ジング試験中に無電解Niメッキ膜からPやBが遊離しその無電解Niメッキ膜近傍のはんだ中に脆いSnの燐化物や硼化物が生成されたものと推定される。
【0006】
上記Cuの添加量は、例えば液相線温度の面から制約があり、Cuの添加のみでは無電解Niメッキ面を優れた初期強度及び耐熱疲労強度で接合できる鉛フリ−はんだを得ることが至難であることが判明した。
【0007】
本発明の目的は、無電解Niメッキ面を優れた初期強度及び耐熱疲労強度で接合できる鉛フリ−はんだを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るはんだ合金は、無電解Niメッキ面のはんだ付けに使用する合金であり、0.1重量%〜3.0重量%のCuと0.05重量%〜2.0重量%のPtと残部Snから成ることを特徴とする構成、または、この構成の組成の合計100重量部と0.3重量部以下のPまたはBとから成ることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る電子部品の実装方法は、無電解Niメッキ面を有する電子部品、特にシリコンチップと該電子部品を実装する基板とを上記はんだにより接合することを特徴とする構成である。
【0010】
本発明に係るはんだ合金において、Snを主成分とする理由は、鉛フリ−はんだを得るためであり、0.1重量%〜3.0重量%のCuと0.05重量%〜2.0重量%のPtを含有させる理由は、はんだ合金の融点(液相線温度)を電子部品のはんだ付けに適した温度(220℃〜250℃)にすると共に無電解Niメッキ面に対する初期接合強度及び長時間加熱後の接合強度(耐熱疲労性)を向上させるためである。
【0011】
すなわち、無電解Niメッキ膜中に共析している無電解Niメッキ浴中の還元剤成分であるPやBが遊離して接合界面近傍にSnの燐化物や硼化物が生成されようとしても、接合時にはんだ合金中のCuが接合界面近傍に集まってSnとの金属間化合物を優先的に生成してSnを拘束するために、そのSnの燐化物や硼化物の生成が阻止される。この結果、接合界面近傍においてSnの燐化物や硼化物の生成が排除されてその部分がSn−Cu金属間化合物で占められ、充分な接合強度が保証され、破断パタ−ンが無電解Niメッキ面の露出のないはんだ合金内部の破断となるのである。
Cuの含有量を0.1重量%〜3.0重量%とする理由は、0.1重量%未満では接合強度が不充分となり、3.0重量%を越えるとはんだ合金の液相線温度が高くなり過ぎ回路基板や電子部品の熱的破損が招来されると共に上記Sn−Cu金属間化合物の生成量が過多となり、かえって接合強度が低下するからである。
【0012】
しかしながら、長期加熱により接合部に長期熱負荷をかけると、上記Cuの添加のみでは、破断パタ−ンが上記はんだ合金内部の破断から無電解Niメッキ面露出の接合界面破断に移行する。これは、無電解Niメッキ膜内の上記の共析PやBが長期熱負荷により弾き出されて接合界面近傍に脆い燐化物や硼化物が生成される結果である。
【0013】
而るに、Ptにおいては、この長期熱負荷に基づく脆い燐化物や硼化物の生成を抑制してCuとの相乗作用により長時間加熱後の接合強度を充分に確保させ耐疲労性を向上させる。
すなわち、PtはSnよりも接合界面近傍に遊離してくるPやBと優先的に結合してPtの燐化物や硼化物を生成し、その燐化物や硼化物がはんだ合金中に拡散されていくから、長期熱負荷時に弾き出されたPやBがPtと結合してPtの燐化物や硼化物となってはんだ合金中に拡散され凝固はんだの組織が比較的均質になる結果、無電解Niメッキ面露出の接合界面破断が回避される。そして、そのはんだ合金組織自体も充分な機械的強度を有するものとなり、長期熱負荷の接合強度も充分に維持され、良好な耐熱疲労性が保証される。
Ptの含有量を0.02重量%〜2.0重量%とする理由は、0.02重量%未満では前記耐熱疲労性が不充分となり、2.0重量%を越えるとはんだ合金の液相線温度が高くなり過ぎ回路基板や電子部品の熱的破損が招来されると共にはんだの流動性低下が惹起されるからである。
【0014】
本発明に係るはんだ合金において、PまたはBを添加する理由は、PやBを含有する無電解Niメッキ膜との接合前に、はんだ中に予めSnの燐化物や硼化物を生成分散させておき、はんだ付け時やその後の熱履歴の経過中に、無電解Niメッキ膜に含有されているPやBとの化合物が接合界面に生成するのを抑制して接合強度の低下を抑制することにあり、Snの燐化物や硼化物がP合金中に含有されていても、よく分散されており接合界面での集中生成にはならないから、接合界面での無電解Niメッキ面を露出しての破断防止に有効に寄与するのである。 PまたはBの添加量を0.3重量部以下とする理由は、0.3重量部を越えると高価になるばかりか、はんだ合金の脆弱化が招来されるからである。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明に係るはんだは、発明の作用効果を実質的に維持できる範囲内であれば、不純物を含んだ状態で使用することができる。
而して、JIS Z 3282−1986−表3に規定されているA級の化学成分に従い、Feを0.03重量%以下、Alを0.005重量%以下、Asを0.03重量%以下、Cdを0.005重量%以下及びPbを0.1重量%以下の範囲で含有することが許容される。
【0016】
本発明に係るはんだ合金は、無電解Niメッキ面のはんだ接合に使用され、その無電解Niメッキの還元剤としてNa2H2PO2、KH2PO2、NaBH4、(CH3)2NH・BH3等が使用される。
【0017】
本発明に係るはんだ合金の好適な使用例としては、はんだ合金をボ−ル(通常1000〜100μmの直径)に成形し、BGAやCSP等の無電解Niメッキランド(直径は上記のボ−ル直径よりもやや小)にボ−ルをフラックスで付着させ、リフロ−によりはんだボ−ルを溶融させてバンプを形成することを例示できる。
このバンプ付きBGAまたはCSPを実装するには、回路基板にフラックスまたはソルダ−ペ−ストを印刷し、BGAまたはCSPのバンプをこの印刷フラックス或いは印刷ソルダ−ペ−ストに仮固定し、リフロ−によりバンプを溶融させ、次いで冷却してはんだを凝固させ、これにて実装が終了される。
【0018】
上記の外、シリコンチップ等の電子部品をフロ−はんだ付け法によって回路基板に実装する場合に使用するはんだ浴、電子部品をリフロ−はんだ付け法によって回路基板に実装する場合に使用するクリ−ムはんだのはんだ粉末の外、棒状はんだ、線状はんだ、リボン状はんだ、プリフォ−ム状はんだ、やに入りはんだとしても使用できる。
【0019】
【実施例】
〔実施例1〕
次亜燐酸塩還元浴を使用してBGA(ランドピッチ1.5mm、ランド外径700μm、ランド個数15×15)のランドに無電解Niメッキを施したものを被接合面とした。
はんだ合金には、Cu0.5重量%、Pt0.2重量%、残部Snを使用し(ただし、添加元素以外の不純物は、JIS−Z-3282に規定されたA級の範囲に属する)、このはんだで直径800μmのはんだボ−ルを調製し、このはんだボ−ルを上記BGAの無電解Niメッキランドにフラックスで付着させ、不活性雰囲気中、液相線温度+50℃の温度でリフロ−によりバンプを形成した。
この試料を150℃×100時間でエ−ジングし、プッシュプルゲ−ジを用い引張り速度約1mm/sec、試験温度25℃で引張り試験を行ったところ、初期引張り強度及びエ−ジング後引張り強度は表1の通りであった。
また、初期引張り試験での破断パタ−ン及びエ−ジング後引張り試験での引張り破断パタ−ンともに、無電解Niメッキ面の露出のないはんだ合金内部からの破断であった。
表1において、無電解Niメッキ面の露出のないはんだ合金内部からの破断を○で示し、無電解Niメッキ面の露出がある接合界面での破断を×で示している。
【0020】
〔実施例2〜7〕
はんだ合金として、表1に示す組成のものを使用した以外、実施例1に同じとした。
実施例1と同様の条件でエ−ジングし、引張り試験を行ったところ、初期引張り強度及びエ−ジング後引張り強度は表1の通りであった。
また、初期引張り試験での破断パタ−ン及びエ−ジング後引張り試験での引張り破断パタ−ンともに、無電解Niメッキ面の露出のないはんだ合金内部からの破断であった。
【0021】
〔比較例1〜4〕
はんだとして、表1に示す組成のものを使用した以外、実施例1に同じとした。
実施例1と同様の条件でエ−ジングし、引張り試験を行ったところ、初期引張り強度及びエ−ジング後引張り強度は表1の通りであった。
また、比較例1及び3では初期引張り試験での破断パタ−ン及びエ−ジング後引張り試験での引張り破断パタ−ンともに、全て接合界面からの破断であった。比較例2及び4では初期引張り試験での破断パタ−ンがはんだ合金内部からの破断であり、エ−ジング後引張り試験での引張り破断パタ−ンが接合界面からの破断であった。さらに、比較例5では初期引張り試験での破断パタ−ン及びエ−ジング後引張り試験での引張り破断ともにはんだ合金内部からの破断であった。
【0022】
上記比較例1〜3のSnを主成分とする鉛フリ−はんだ合金では、接合界面の破断であり初期接合強度が低く、合金断面をEPMA(電子線マイクロアナライザ−)で観察したところ接合界面近傍にSnの燐化物が形成されていた。
比較例4の初期引張り試験直後の合金断面をEPMAで観察したところ、添加したCuが接合界面近傍に集まり、無電解Niメッキから遊離したPとそのCuとの適度な金属間化合物の生成が認められた。しかし、エ−ジング後引張り試験直後の合金断面を観察したところ、接合界面近傍でのPとCuとの金属間化合物量が著しく増大しており、これが接合界面での破壊原因と認められる。
また、比較例5の初期引張り試験直後の合金断面をEPMAで観察したところ、
Ptが接合界面近傍に遊離してくるPと優先的に結合してPtの燐化物を生成し、その燐化物がはんだ合金中に拡散されていることが認められ、この燐化物拡散合金組織が比較的均質なためにはんだ合金内部からの破断となったと推定される。エ−ジング後も、この均質性が維持されるも燐化物拡散量の増加が推定され、その結果、エ−ジング後の接合強度がエ−ジング前の60%程度になり、エ−ジングによる強度低下が顕著になったものと推測される。
【0023】
而るに、実施例1と比較例4及び5との対比から、本発明に係るはんだ合金ではCuとPtとの相乗効果により、エ−ジング後での接合強度の低下を充分に抑制でき、耐熱疲労性をよく向上できることが明らかである。
【0024】
また、実施例1〜5から、0.1重量%〜3.0重量%のCuと0.05重量%〜2.0重量%のPtと残部のSnから成る範囲であれば、初期接合強度の向上及び耐熱疲労性の向上効果が達成できることが明らかである。この範囲内では、はんだ合金の液相線温度を220℃〜250℃に維持でき、被接合物の耐熱衝撃保護を保証できる。
【0025】
さらに、実施例1と実施例6及び7との対比から、B添加による一層の初期接合強度の向上及び耐熱疲労性の向上が得られることも明らかである。
【0026】
〔実施例1’〕
硼酸塩還元浴を使用してBGA(ランドピッチ1.5mm、ランド外径700μm、ランド個数15×15)のランドに無電解Niメッキを施したものを被接合面とした以外、実施例1に同じとした。
【0027】
〔実施例2’〜5’〕
硼酸塩還元浴を使用してBGA(ランドピッチ1.5mm、ランド外径700μm、ランド個数15×15)のランドに無電解Niメッキを施したものを被接合面とした以外、実施例2〜5に同じとした。
【0028】
〔実施例6’及び7’〕
硼酸塩還元浴を使用してBGA(ランドピッチ1.5mm、ランド外径700μm、ランド個数15×15)のランドに無電解Niメッキを施したものを被接合面とし、Pに代えBを使用した以外、実施例6、7に同じとした。
【0029】
〔比較例1’〜5’〕
硼酸塩還元浴を使用してBGA(ランドピッチ1.5mm、ランド外径700μm、ランド個数15×15)のランドに無電解Niメッキを施したものを被接合面とした以外、比較例1〜5に同じとした。
【0030】
表2は、これらの実施例及び比較例の初期引張り強度及びエ−ジング後引張り強度並びに初期引張り試験での破断パタ−ン及びエ−ジング後引張り試験での引張り破断パタ−ンを示し、本発明に係るはんだ合金によればBが共析している無電解Niメッキ面に対しても、前記した初期接合強度の向上及び耐熱疲労性の向上効果が達成できることが明らかである。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、無電解Niメッキ面をそのメッキ膜にPやBが共析しているにもかかわらず、優れた初期接合強度、優れた耐熱疲労性を保証してはんだ接合でき、しかも、はんだ合金の液相線温度を250℃以下に抑えることができるから、例えば、ランドを無電解NiメッキしたBGAやCSPをバンプ方式によりリフロ−法で良好に実装できる。
【表1】
【表2】
Claims (5)
- 無電解Niメッキ面のはんだ付けに使用する合金であり、0.1重量%〜3.0重量%のCuと0.05重量%〜2.0重量%のPtと残部Snから成ることを特徴とするはんだ合金。
- 無電解Niメッキ面のはんだ付けに使用する合金であり、0.1重量%〜3.0重量%のCuと0.05重量%〜2.0重量%のPtと残部Snの合計100重量部と0.3重量部以下のPまたはBとから成ることを特徴とするはんだ合金。
- Feを0.03重量%以下、Alを0.005重量%以下、Asを0.03重量%以下、Cdを0.005重量%以下及びPbを0.1重量%以下の範囲で含有する請求項1または2記載のはんだ合金。
- 無電解Niメッキ面を有する電子部品と該電子部品を実装する基板とを請求項1〜3何れか記載のはんだ合金により接合することを特徴とする電子部品の実装方法。
- 電子部品がシリコンチップである請求項4記載の電子部品の実装方法。
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