JP3824665B2 - 作業車用トランスミッション - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、トラクタ等の作業車両に用いられる走行駆動用のトランスミッション、より詳しくは車速を無段に変更可能とする油圧伝動装置を備えたトランスミッションに、関するものである。特にこの発明は、車両を前後輪4輪の駆動によって走行させるのに適した作業車用トランスミッションに係る。
【0002】
【従来の技術】
車両用油圧伝動装置は、単に構造の複雑化を避ける目的からのみではなく変速操作の複雑化を避ける目的で、可変容積式の油圧ポンプと定容積式の油圧モータとの組合せから成るものに構成されるのが、一般的である。また、四輪駆動構造の作業車用トランスミッションは、主駆動輪(後輪又は前輪)2輪の常時駆動に加えて左右の副駆動輪(前輪又は後輪)を選択的に駆動可能とするものに構成される場合がほとんどである。
【0003】
このような油圧伝動装置及び四輪駆動構造を備える作業車用トランスミッションとして最も単純な構造のものは、実開平3−73751号公報に開示されているように、油圧伝動装置の出力軸の前端側に、前輪駆動力取出し用の前輪駆動軸と、該駆動軸を上記出力軸に対し断接する、前輪駆動クラッチを備えた前輪駆動装置を設置する構造のものである。しかし、本構造のものは、作業車両が作業時と路上走行時とで車速レンジを大幅に異にする点に鑑み、後輪駆動機構中に車速レンジ変更用の変速装置を設けてある作業車両では、採用できない。すなわち変速装置のシフトによって後輪の周速が変更されるのに対し、上記前輪駆動軸から伝動を受けて駆動される前輪の周速は変更されずして、前後輪の周速が大きく異なる事態が生じ得るからである。
【0004】
したがって上記のような車速レンジ変更用の変速装置を含むトランスミッションでは例えば米国特許No.4,579,183に開示されているように、変速装置従動側の伝動軸に対しクラッチを介して接続された前輪駆動軸が設けられることになる。しかし、このような前輪駆動軸は上記変速装置を内装するミッションケースを大型化するとか、ミッションケース前面側の油圧伝動装置に制約されて、該駆動軸から前輪へ伝動する伝動軸を適正レベル或は左右の片寄りが無い位置に設置可能とする配置で設け難くするといった、問題点を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、この発明の主たる目的とするところは、車速レンジの変更を油圧伝動装置自体で得ることを可能とし、上記のような変速装置を不要として、四輪駆動構造を簡単に採用可能としてある新規な作業車用トランスミッションを、提供するにある。付随する目的は、トランスミッションのコストを大幅に低減しつつ変速操作が単純化されることとしてあるトランスミッション構造を提供するにある。
【0006】
この発明の他の目的は、トラクタ等の作業車両が各種作業に用いられるもので、且つ路上走行時には比較的高速で走行させるものである点に鑑み、車両の駆動モードの変更を可能としてある作業車用四輪駆動トランスミッションを、提供するにある。付随する目的は他の駆動方式のものに転換容易な四輪駆動トランスミッションであって、両種方式のトランスミッションのコスト低減に寄与する構造のものを、提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために次のように構成したものである。
請求項1においては、車両を走行駆動するための油圧伝動装置(14)を備えた作業車用トランスミッションであって、該油圧伝動装置(14)は、油圧ポンプ(15)と油圧モータ(16)により構成され、該油圧ポンプ(15)は、エンジン(3)により駆動される入力軸(17)により駆動され、中立位置から一方向及び他方向に無段階に傾動操作されるポンプ斜板(28)を有し、前記油圧モータ(16)は、油圧ポンプ(15)に対し流体的に接続され駆動される可変容積式の油圧モータ(16)であって、中立位置から一方向にのみ複数の傾角位置へと傾動操作されるモータ斜板(29)を有し、該モータ斜板(29)を、前記中立位置と前記複数の傾角位置の各々の位置で拘束解除可能に拘束する位置保持機構(37)を設け、該油圧モータ(16)により駆動される出力軸(18)を設け、該出力軸(18)を車両の主駆動輪(2)に対し常時駆動する機械式伝動機構(21)を介して接続すると共に、車両の副駆動輪(1)に対し、該副駆動輪(1)を選択的に駆動するクラッチ(26)を介して接続し、前記ポンプ斜板(28)とモータ斜板(29)を、一の方向へ変位操作されるとポンプ斜板を傾動させ、別の方向へ変位操作されるとモータ斜板を傾動させる単一の操作具(130)に対し接続したものである。
【0008】
請求項2においては、請求項1記載の作業車用トランスミッションにおいて、操作具(130)をガイドするガイド部材(80)を設けて、前記ポンプ斜板(28)をその前記中立位置に保ったままで前記モータ斜板(29)をその中立位置から前記複数の傾角位置の各々に移した上でのみポンプ斜板(28)の中立位置からの一方向及び他方向への傾動を許容するように、操作具(130)をガイドしたものである。
【0009】
請求項3においては、請求項1記載の作業車用トランスミッションにおいて、ポンプ斜板(28)を両側1対の支軸(28a,28b)を有し、傾動可能に支持するトラニオン式のものに構成すると共に、前記モータ斜板(29)を固定ガイド部材(33)に支承させ、傾動可能に支持するクレードル式のものに構成したものである。
【0010】
【実施例】
図1は第1の実施例を装備したモア・トラクタを示している。同トラクタは左右1対宛の、副駆動輪として用いられる前輪1及び主駆動輪として用いられる後輪2間で機体の下面位にモアMを装備させるものに構成されている。なおフロント・マウント型のモアを装備させるトラクタ等、前輪常時駆動とするのが望ましい作業車両では、図例のトランスミッション構造を前後逆配置として前輪常時駆動、後輪選択的駆動方式のトランスミッションとする。
【0011】
図1に示すように駆動源としてのエンジン3は、機体の前部に搭載され、左右の後輪2間には後輪車軸2aを装備するミッションケース4が設置されている。エンジン3の動力は前後方向に沿わせた伝動軸5によって、ミッションケース4内へ伝えられる。ミッションケース4内で左右の後輪車軸2aを回転駆動して後輪2を駆動する他、ミッションケース4の前面側からフロントアクスルケース6内へ伝動する伝動軸7を設けて、必要に応じ該アクスルケース6内で左右の前輪車軸1aを回転駆動して前輪1を駆動することにより、車両の走行を得ることとされている。
【0012】
同様に図1に示すようにミッションケース4内の中間レベルから後方へ突出するリヤPTO軸8と、低レベルから前方へ突出するミッドPTO軸9を設けてある。リヤPTO軸8は機体後部に連結して車両に牽引されるロータリティラー、グラス・コレクタ等の作業機(図示せず)を駆動するために用いられ、またミッドPTO軸9は伝動軸10によって、モアMのギヤボックスMa内に駆動力を伝えるものとしてある。シート11はミッションケース4の上方位置に設置してあり、その前方位置に、左右の前輪1を操舵旋回させるためのステアリング・ホイール12を臨ませてある。
【0013】
図2に示すように、ミッションケース4の前面には下方部分を残して厚手の板体13を装着してあり、この板体13の上半部背面に装着してミッションケース4内の上部に設置した可変容積式の油圧ポンプ15と板体13の下半部前面に装着してミッションケース4外に設置した可変容積式の油圧モータ16とを備える油圧伝動装置14が、設けられている。この油圧伝動装置14は油圧ポンプ15のポンプ軸である入力軸17と油圧モータ16のモータ軸である出力軸18を備え、入力軸17は板体13の前方へと突出させて、図1に示す前記伝動軸5に連結されている。なお板体13の前面には、入力軸17を自らのポンプ軸とする油ポンプ19を装着してあり、この油ポンプ19によって油圧伝動装置14に対し作動油を補給させることとしてある。また入力軸17は油圧ポンプ15から後方向きにも突出させて、後述するように前記した両PTO軸8,9を駆動するためにも用いることとされている。
【0014】
同様に、図2に示すように油圧伝動装置14の出力軸18の後端側は板体13を貫通させてミッションケース4内に臨ませてあり、後端に小径の傘歯車20を装備する。ミッションケース4内には、該傘歯車20から伝動を受けて左右の後輪車軸2aを回転駆動する機械式伝動機構21を、油圧ポンプ15の下方側で設置してある。油圧モータ16は板体13の前面にボルト23によって装着してあるハウジング22内に設置されており、このハウジング22には前方向きに突出するクラッチケース部22aを一体形成してある。出力軸18は油圧モータ16から前方向きにも突出させてあり、その前端をクラッチケース部22a内に臨ませてある。そして前蓋22bを有するクラッチケース部22aに支持させて、出力軸18と同心配置の前輪駆動軸25を設けてあり、この前輪駆動軸25を出力軸18に対し選択的に接続するための前輪駆動クラッチ26が、クラッチケース部22a内に設置されている。前輪駆動軸25は前蓋22b外へ突出する前端で、図1に示す前記伝動軸7に連結されている。
【0015】
同様に図2に示すように、アキシャル・プラジャ型の可変容積式油圧ポンプ15及び油圧モータ16はそれぞれ、傾角を変更調節可能な斜板28及び29を備えている。これらの斜板28,29の傾角の変更調節はそれぞれ、図1に示すようにシート11の一側に配置されたポンプ制御レバー30及びモータ制御レバー31によって行うこととされている。
【0016】
図2−4に示すように、ポンプ斜板28は、ミッションケース4の左右の側壁に回転自在に支持させる左右1対の支軸28a,28bを備えるトラニオン式のものに構成され、一側の支軸28aをミッションケース4外へと突出させてある。支軸28aにはミッションケース4外でアーム32を取付けてあり、このアーム32を操作ケーブル又はリンク機構(図示せず)によって、図1のポンプ制御レバー30へと接続してある。ポンプ斜板28は、ポンプ制御レバー30によって油圧ポンプ15のポンプ作用を停止させる中立位置から一方向及び他方向に回転操作され、油圧ポンプ15の油吐出方向を変更すると共に吐出油量を無段に変更する。
【0017】
図2及び図4−6に示すようにモータ斜板29は、前記ハウジング22の前部内面に装着した円弧状のガイド板33にガイドさせるクレードル式のものに構成されている。ハウジング22の一側壁には開口を形成して側蓋22cにより閉鎖してあり、この側蓋22cに回転自在に支持させた操作軸34を、ハウジング22の内外にまたがらせて設けてある。操作軸34の内端には斜板29に対し係合するシフタ35aを備えるアーム35を取付けてあり、操作軸34の回転変位によるアーム35の揺動によって斜板29の傾角が変更されることとしてある。操作軸34の外端には他のアーム36を取付けてあり、この他のアーム36を操作ケーブル又はリンク機構(図示せず)によって図1のモータ制御レバー31へと接続してある。そして特にモータ斜板29は、モータ制御レバー31によって、油圧モータ16を中立状態ないし駆動停止状態とする中立位置から一方向にのみ、しかも油圧モータ16の容積を2つの値とする2つの傾角位置へのみ、操作されることとしてある。すなわち図5,6に示す位置保持機構37を上記したアーム36と側蓋22c間に配設しており、この位置保持機構37は、アーム36に設けた3個の穴38N,38H,38Lと側蓋22cの外側面の穴にスプリング39により突出付勢させて嵌めたボール40とを備えたものに構成されている。図6に示すアーム36の3つの回動位置N,H,Lが、モータ斜板29の中立位置N、設定高速位置H及び設定低速位置Lに対応しており、これらの各位置N,H,Lでボール40は対応する穴38N,38H,38L内に突入してアーム36を拘束解除可能に位置保持することとされている。
つまりポンプ斜板29は中立位置Nと予め選択した高速位置H及び低速位置Lの3位置にのみ、操作されるものとされている。
【0018】
ミッションケース4内の前記伝動機構21の構造を図2、3について説明すると、ミッションケース4内に出力軸18と等レベルの駆動軸41を横架して、この駆動軸41上に固定設置した大径の傘歯車42を出力軸18上の前記傘歯車20に対し噛合せてある。左右の後輪車軸2a間には差動装置43を設けてあり、駆動軸41に一体形成した小径の歯車44を差動装置43の大径入力歯車45に対し噛合せてある。差動装置43のデフケースは左右のケース半部を、その間に入力歯車45を挟持してボルト46により締結して形成されている。一側ケース半部47のボス部上にはデフロック・クラッチ48を摺動可能に設けてある。該クラッチ48はケース半部47の透孔に挿通されたロックピン48aを備え、該ピン48aを一側のデフ・サイドギヤ49のボス部の凹溝49aに突入させることで、ギヤ49をデフケースに対し相対回転不能に拘束して差動装置43の機能を解除するものに構成されている。デフロック・クラッチ48を操作するためには、駆動軸41の後方位置でミッションケース4内に横架したフォークシャフト50に支持させたクラッチ・フォーク51を、該クラッチ48に対し係合させて設けてある。
【0019】
次に前輪駆動クラッチ26の構造を図5,7について説明すると、本クラッチ26は前輪駆動軸25の外周面に形成したスプライン25aを利用して該駆動軸25上に摺動のみ自在に設けた可動クラッチ金物53を備えている。出力軸18の前端部上には前輪駆動軸25のスプライン25aと整列するスプライン54aを外周面に有する筒体54を、固定設置してある。クラッチ金物53は図5の上半部に示すようにスプライン54a,53aにまたがって噛合い前輪駆動軸25を出力軸18に対し接続する前輪駆動クラッチ26の入り位置と、図5の下半部に示すようにスプライン53aのみと噛合い上記両軸18,25間の接続を断つ前輪駆動クラッチ26の切り位置とに、変位操作されるものとされている。この変位操作のためにはクラッチケース部22aの一側壁を貫通させた回転可能な操作軸55を設けて、この操作軸55の内端に、クラッチ金物53に対し係合するシフタ56aを備えたアーム56を取付けてある。操作軸55の外端には他のアーム57を取付けてあり、該アーム57を、図1に示すようにシート11の前方位置に設置した前輪駆動レバー58に対し操作索条又はリンク機構(図示せず)によって接続している。前輪駆動軸25とクラッチ金物53間には、クラッチ金物53を上記したクラッチ入り位置と切り位置とで拘束解除可能に拘束するための、スプリング59a及び1対のボール59bを備えたデテント機構59を配設してある。
【0020】
前記PTO軸8,9を駆動するための駆動機構の構造を説明しておくと、図2に示すように油圧伝動装置14の入力軸17は油圧ポンプ15から、ミッションケース4内の一体的な仕切り壁4aの後方にまで後向きに延出させてある。そしてこの入力軸17の延長線上に伝動軸60を、入力軸17後端部とミッションケース4の後蓋4bとに支持させて設けてある。入力軸17と伝動軸60間には、入力軸17後端部に嵌着した支持金物62と伝動軸60上に固定設置したクラッチハウジング63とにそれぞれ摩擦エレメントを摺動のみ自在に支持させてなる油圧多板式のPTOクラッチ61を、配設してある。クラッチハウジング63には歯車64を一体形成してあり、この歯車64を、仕切り壁4aと後蓋4bとに支持させて設けてある前記リヤPTO軸8上に設置した歯車65に対し、噛合せてある。そしてさらに、後端を後蓋4bに支持させてある前記ミッドPTO軸9の後端部上に歯車66を設置して、この歯車66をリヤPTO軸8上の上記歯車65に対し噛合せてある。PTOクラッチ61に対する作動油の供給は前記油ポンプ19によって行うこととされ、後蓋4b内には伝動軸60の後端面で前端側を仕切られた油室67を設けてある。作動油は油ポンプ19からミッションケース4壁内の油路68(図3)と後蓋4b背面上の電磁コントロールバルブ69とを介し油室67に導かれ、伝動軸60内の油路(図示せず)を介してPTOクラッチ61に対し供給される。なおリヤPTO軸8及びミッドPTO軸9を各独立的に駆動可能とするためには、上記歯車65,66を該各PTO軸8,9上に遊嵌設置し、これらの歯車65,66をPTO軸8,9に対し選択的に結合可能とする機械式のリヤPTOクラッチ及びミッドPTOクラッチ(図示せず)を設ければよい。
【0021】
なお油圧伝動装置14における油圧ポンプ15及び油圧モータ16間を接続する油路(図5にその一部を符号70A,70Bで指して示す。)及び必要なバルブ類(図示せず)は、板体13内に設けられている。図2,5において71,72はそれぞれ、板体13と油圧ポンプ15ないし油圧モータ16のシリンダブロック間に介在させた弁板である。
【0022】
第1の実施例は以上に説明して来たように構成されていて、モータ斜板29を図1に示すモータ制御レバー31によって低速位置L又は高速位置Hに操作し図5,6に示す位置保持機構37により同位置に保持し、ポンプ斜板28を図1に示すポンプ制御レバー30によって中立位置から一方向或は他方向に無段に操作することにより車両を前進方向或は後進方向に無段に変更される速度で走行させることができる。そして図1に示す前輪駆動レバー58により図2,5に示す前輪駆動クラッチ26を入り切りして、前後輪1,2を駆動する四輪駆動状態と後輪2のみを駆動する二輪駆動状態とを自在に選択できる。
【0023】
図1に示すトラクタを用いた各種作業時には普通、モータ斜板29を低速位置Lとして作業が進められる。そしてモアMを用いた芝刈り作業時等の軽作業時には一般に二輪駆動が選択され、トラクタにトレーラとかローダを付設する重作業時には一般に四輪駆動を選択して牽引力の増大が図られる。二輪駆動による車両走行中に後輪2が凹地にはまるとか登坂時或は旋回時にスリップする事態が起きると、前輪駆動クラッチ26を入れて四輪駆動状態を得ることにより、スリップ状態から迅速に脱出することができる。牽引力を必要としない路上走行時には一般に、モータ斜板29を高速位置Hとすると共に前輪駆動クラッチ26を切った二輪駆動状態で車両を走行させる。
【0024】
バッテリーの容量低下等でエンジンの始動が不可能になり車両を他の車両により牽引させることが必要となった場合、モータ斜板29を中立位置Nとする。このときは油圧伝動装置14の出力軸18が車輪1,2側から駆動されても油圧モータ16がポンプ作用を生じるようなことはなく、したがって油圧モータ16と油圧ポンプ15間で油圧の閉込めが起きて牽引抵抗が発生する事態は生じない。
【0025】
図8は、図1に示したポンプ制御レバー30とモータ制御レバー31とを単一の変速レバー130にまとめた変形例を示している。本変形例では軸線73aまわりで回転変位可能に支持した操作軸73に、変速レバー130を下端フォーク部130aで、操作軸々線73aに対し直交する軸線74aを有するピン74によって該ピン74まわりで回動自在に支持させている。そしてレバーフォーク部130aの一脚を、ピン軸線74aに平行する回動軸線75aまわりで回動自在に支持させたベルクランク75の一アームに連杆76により接続すると共に、ベルクランク75の他アームを前記のもの同様のポンプ斜板操作用のアーム32に対し、連杆77により接続して、変速レバー130をピン74まわりで図示X方向に回動操作することによりアーム32を、ポンプ斜板を中立位置Nから前進方向Fの傾斜角度及び後進方向Rの傾斜角度に無段に傾動できることとしている。また、操作軸73に直交方向で取付けたアーム78を前記のもの同様のモータ斜板操作用のアーム36に対し連杆79により接続して、変速レバー130を操作軸73まわりで該操作軸73を回転させつつ図示Y方向に回動操作することによってアーム36を、モータ斜板を中立位置Nから高速位置H、そして低速位置Lへとする位置に傾動できることとしている。
【0026】
変速レバー130をガイドするレバーガイド80には図示のように、Y方向に沿っていてアーム36が上記した中立位置Nから高速位置H、そして低速位置Lへと移されるように変速レバー130をガイドするガイド溝と、該ガイド溝に直交しX方向に沿っている2つのガイド溝であってアーム36の高速位置H及び低速位置Lでそれぞれ、ポンプ斜板操作用のアーム32を中立位置Nから前進方向Fと後進方向Rとの両方向へと操作可能に変速レバー130をガイドする2つのガイド溝を、形成してある。
【0027】
したがって図8の変形例によれば、モータ斜板の中立位置Nではポンプ斜板が必ず中立位置Nにおかれると共に、単一の変速レバー130により、ポンプ斜板を中立位置Nに保ったままモータ斜板を高速位置H又は低速位置Lへと移した上で、ポンプ斜板を前進方向或は後進方向に無段に傾動できることになる。このようにポンプ斜板を中立位置Nに保った車両の停止状態で先ずモータ斜板の高速位置又は低速位置へのセットを行い、次にポンプ斜板を中立位置から前進方向又は後進方向に傾動させて車両の発進を得ることとすることにより、安全な車両発進を確保できる。図8に示すようにモータ斜板の高速位置HでのX方向のガイド溝は、後進方向Rでの溝長さを前進方向Fでの溝長さよりもかなり小さくしてあり、車両を高速で後進させることに伴う危険が生じることをレバーガイド80によって防止してある。
【0028】
図9,10は、前輪駆動クラッチ26をモータ斜板の操作に連動して入り切り制御するように構成してある、他の変形例を示している。本変形例では、図9に示すように前輪駆動クラッチ26を、第1の実施例の場合と同様に構成しているが、可動クラッチ金物53を、特に図9の上半部について示す前記同様のクラッチ入り位置の他、図9の下半部について実線図示の第1のクラッチ切り位置と鎖線図示の第2のクラッチ切り位置との3位置に、変位操作されるものとしている。図9ではクラッチ金物53の後端位置でみてクラッチ入り位置、第1のクラッチ切り位置及び第2のクラッチ切り位置をそれぞれ、I,II及びIII で示してある。そして前記のもの同様のデテント機構59は、そのような3位置I,II,III でクラッチ金物53を拘束解除可能に拘束するものに構成されている。
【0029】
そして図10に示すように前記のもの同様のモータ斜板操作用のアーム36とクラッチ操作用のアーム57間をロッド82により接続して、モータ斜板ないしその操作用アーム36の中立位置N、高速位置H及び低速位置Lでクラッチ金物ないしその操作用アーム57が第2のクラッチ切り位置III 、第1のクラッチ切り位置II及びクラッチ入り位置Iに位置せしめられることとしている。アーム36はレバーガイド83にガイドされているモータ制御レバー31によって操作され、前記前輪駆動レバー58に対応するクラッチ操作手段は設けないこととされている。したがって本変形例によると、モータ斜板の位置に応じ前輪駆動クラッチ26が次の表1に示す状態をとることになる。
【表1】
【0030】
図9,10に示した変形例は、比較的重負荷の作業に用いる車両用のトランスミッションとして使用するのに適している。なお、図8の変形例と図9,10の変形例を組合せて、単一の変速レバーによりポンプ斜板及びモータ斜板に加えて前輪駆動クラッチも操作可能とする構成とすることも、可能である。
【0031】
図11,12は第2の実施例を示しており、本実施例では前輪駆動クラッチ126が一方向クラッチを含むものに構成されている。すなわち先ず本実施例では図11に示すように油圧伝動装置の出力軸18の前端部に前輪駆動軸25の後端部外周に張出す筒軸154を固定し、この筒軸154の前端部内周面に爪154aを形成すると共に、前輪駆動軸25上にスプライン嵌めにより摺動のみ自在に設けた可動クラッチ金物153の後端部外周面に、爪154aに対し噛合せ得る爪153aを形成している。可動クラッチ金物153は図11の下半部に示すように爪153a,154a間が噛合されるクラッチ入り位置Iと、図11の上半部に示すように爪153b,154a間の噛合いが解除されるクラッチ切り位置IIとに、前述のもの同様の操作機構により摺動変位せしめられ、該各位置I,IIでデテント機構59により拘束解除可能に拘束されるものとしてある。
【0032】
そして図11,12に示すように筒軸154と前輪駆動軸25間に、一方向クラッチ85を配設してある。この一方向クラッチ85は図12に示すように、筒軸154と前輪駆動軸25間に位置させる保持リング85aに多数の係合子85bを図示の傾斜姿勢で保持させ、もって矢印Fで示す車両前進方向での筒軸154の回転数が前輪駆動軸25の回転数よりも大であるとクラッチ係合して、筒軸154の回転を前輪駆動軸25に対し伝達するものとされている。
【0033】
したがって前輪駆動クラッチ126は爪154a,153aが噛合うクラッチ入り状態では出力軸18及び筒軸154の回転が常時前輪駆動軸25へと伝達される前輪常時駆動モードを得させ、爪154a,153a間の噛合いが解除されるクラッチ切り状態では出力軸18及び筒軸154の回転数が前輪駆動軸25の回転数より大である場合にのみ一方向クラッチ85を介して前輪駆動軸25を駆動する前輪選択的駆動モードを得させる。可動クラッチ金物153により後者の選択的駆動モードを選んで車両を前進走行させている状態では、前輪駆動軸25が後輪の駆動による車両走行によって回転せしめられる前輪側から駆動を受けて出力軸18及び筒軸154と等速で回転するから、一方向クラッチ85の係合は生じない。
【0034】
上述した前輪常時駆動モードは、作業車にトレーラとかローダを付設する重作業時に選択される。また前輪選択的駆動モードは図1に示すようなモアMを用いた芝刈り作業時等の軽作業時及び路上走行時に、選択される。前輪選択的駆動モードを選択し二輪駆動により車両を走行させている状態で後輪が凹地にはまるとか登坂時或は旋回時にスリップする事態が起きると、後輪の回転数と対比した車両前進速度が低下することからして前輪の回転数が低められ、これによって前輪駆動軸25の回転数が低下する。そしてこの時は、一方向クラッチ85が出力軸18側から相対的に車両前進方向に駆動されることになって係合し、前輪駆動軸25が強制的に駆動されるから前輪が積極的に駆動され、スリップ状態から迅速に脱出でき、走行状態が安定する。すなわち図11,12の第2の実施例によれば二輪駆動による車両走行中に後輪がスリップする事態が生じると、前輪駆動クラッチ126を操作せずとも自動的に四輪駆動状態が得られ、車両の安定した走行状態が確保されることになる。
【0035】
図13は第3の実施例を示しており、本実施例では前輪駆動モードを3通りに変更可能とする前輪駆動クラッチ226を設けている。すなわち本実施例では図13に示す通り、前輪駆動軸25の後方に該駆動軸25と同心配置の中間軸88を、該中間軸88の外周に張出す前記のもの同様の筒軸154に回転自在に支持させて設けて、前記のもの同様の一方向クラッチ85を筒軸154と該中間軸88間に配設している。そして前輪駆動軸25上にスプライン嵌めにより摺動のみ自在に設けた可動クラッチ金物253に筒軸154の爪154aに対し噛合せ得る爪253aを形成すると共に、該クラッチ金物253を前述のもの同様の操作機構により図13の下半部に示すように爪253a,154a間の噛合いを得る位置Iと、図13の上半部に示すように内周面のスプラインを中間軸88外周面のスプライン88aと駆動軸25外周面のスプライン25aとにまたがって噛合せる位置IIと、駆動軸25上にのみ位置する位置III とに、摺動変位させることとしている。可動クラッチ金物253は、上記した各位置I,II,III で前述のもの同様のデテント機構59により位置拘束されることとしてある。
【0036】
可動クラッチ金物253の上記位置Iでは筒軸154に対し前輪駆動軸25が結合されるから、出力軸18によって該駆動軸25が常時駆動される前輪の常時駆動モードが得られる。また可動クラッチ金物253の上記位置IIでは中間軸88と前輪駆動軸25間が結合されこれらの両軸88,25が一体回転する状態にあるから、一方向クラッチ85は出力軸18及び筒軸154の回転数が中間軸88及び前輪駆動軸25の回転数よりも大である場合にのみ係合して、前輪駆動軸25が出力軸18により駆動されることとする。そしてクラッチ金物253の上記位置III では前輪駆動軸25が中間軸88と切り離されるから、該駆動軸25が出力軸18側から駆動を受けることはない。つまり図13に示した前輪駆動クラッチ226は可動クラッチ金物253の位置に応じ、位置I,IIではそれぞれ、第2の実施例の場合同様に前輪の常時駆動モード及び選択的駆動モードを得させ、位置III では前輪の駆動停止モードを得させることとする。
【0037】
第3の実施例を装備する作業車の使用状態に応じたモータ斜板位置及び前輪駆動モードの選択は、一般に次の表2に示す基準に従って行われる。
【表2】
【0038】
これ迄に述べて来たところから明らかなように、表2の路上走行中には二輪駆動により燃費が節減され、軽作業中には二輪駆動により燃費の節減及び地面を荒らすことのない小回り車両旋回が達成されつつ前輪スリップ状態時の自動的な四輪駆動による走行状態の安定化が得られ、重作業中には必要な高牽引力が確保される。
【0039】
図14は図10に示したようなモータ制御レバー31用のレバーガイド83の構造を例示しており、レバー31は、モータ斜板の中立位置N、高速位置H及び低速位置Lに対応する位置にそれぞれロック溝を有するガイド溝83aにガイドさせることとしてある。
【0040】
【発明の効果】
本発明は、次のような効果を奏するものである。
請求項1の如く、車両を走行駆動するための油圧伝動装置(14)を備えた作業車用トランスミッションであって、該油圧伝動装置(14)は、油圧ポンプ(15)と油圧モータ(16)により構成され、該油圧ポンプ(15)は、エンジン(3)により駆動される入力軸(17)により駆動され、中立位置から一方向及び他方向に無段階に傾動操作されるポンプ斜板(28)を有し、前記油圧モータ(16)は、油圧ポンプ(15)に対し流体的に接続され駆動される可変容積式の油圧モータ(16)であって、中立位置から一方向にのみ複数の傾角位置へと傾動操作されるモータ斜板(29)を有し、該モータ斜板(29)を、前記中立位置と前記複数の傾角位置の各々の位置で拘束解除可能に拘束する位置保持機構(37)を設け、該油圧モータ(16)により駆動される出力軸(18)を設け、該出力軸(18)を車両の主駆動輪(2)に対し常時駆動する機械式伝動機構(21)を介して接続すると共に、車両の副駆動輪(1)に対し、該副駆動輪(1)を選択的に駆動するクラッチ(26)を介して接続し、前記ポンプ斜板(28)とモータ斜板(29)を、一の方向へ変位操作されるとポンプ斜板を傾動させ、別の方向へ変位操作されるとモータ斜板を傾動させる単一の操作具(130)に対し接続したので、次のような効果を奏するのである
このような油圧伝動装置を備えたトランスミッションを、四輪駆動構造のものとすることは例えば、前記出力軸を車両の主駆動輪(後輪又は前輪)に対し該主駆動輪を常時駆動するように、機械式伝動機構を介して接続すると共に、該出力軸を車両の副駆動輪(前輪又は後輪)に対し、該別駆動輪を選択的に駆動可能とするクラッチを介して接続すればよい。
【0041】
上述のモータ斜板を有する油圧モータには、モータ斜板の複数傾角位置に対応する複数の容積から選択した1つの容積をセット可能であるから、車速を複数段に変更制御可能とする。したがって作業車両が走行条件に応じ異なったレンジの速度で走行せしめられるものであるのに対し、そのような異別車速レンジの設定を油圧モータによって得ることができる。
そして、車両の前後進切替えを含む車速の無段の変更制御は、油圧ポンプのポンプ斜板の傾角を無段に変更して行える。したがって油圧伝動装置の出力軸には、モータ斜板によって設定されたレンジ内でポンプ斜板により無段に変更制御される回転数が与えられることになり、四輪駆動構造としても前,後輪間に周速差が生じることはない。
【0042】
傾角を有段に変更されるモータ斜板は、その操作機構中に位置決め手段或はロック手段を設けておくことにより所与の各傾角位置に確実に位置させ得るから、無段の傾角変更を行うものと対比して操作が簡単で誤操作を生じさせない。このモータ斜板を中立位置におくと油圧伝動装置による流体伝動経路が油圧モータによって断たれることになるから、油圧伝動装置を設けた車両用トランスミッションに一般に設けられている、次のようなアンロード弁を省略できることになる。
すなわち油圧伝動装置を設けた車両用トランスミッションでは、エンジン始動用のバッテリーの容量低下等の原因でエンジンの始動が不能になり、車両を他の車両に牽引させなければならない場合に備え、つまり同牽引時に油圧モータが車輪側から逆駆動されてポンプ作用し、このため油圧伝動装置の油圧ポンプと油圧モータ間の1対の接続油路のうちの一方の油路に油圧の閉じ込みが起きて車両の走行に抵抗を与える場合に備えて、上記の油圧を排除するための油圧アンロード弁、例えば上記1対の油路を短絡して高圧側油路から低圧側油路に油圧を排除可能とするアンロード弁、が一般に設けられているのであるが、本発明トランスミッションにおいてはモータ斜板を中立位置とすることで油圧モータが逆駆動されてもポンプ作用を生じないこととできるから、上記のような油圧アンロード弁を省略できるのである。
【0043】
油圧モータにより車速レンジを有段に変更可能とした本発明トランスミッションによれば、前述したような車速レンジ変更用の変速装置が無くされる。そして上述のように中立位置を有するモータ斜板によって油圧アンロード弁を省略できるから、油圧モータを可変容積式のものとしてあると言っても本発明トランスミッションは低いコストのものに維持される。
【0044】
請求項2の如く、作業車用トランスミッションにおいて、操作具(130)をガイドするガイド部材(80)を設けて、前記ポンプ斜板(28)をその前記中立位置に保ったままで前記モータ斜板(29)をその中立位置から前記複数の傾角位置の各々に移した上でのみポンプ斜板(28)の中立位置からの一方向及び他方向への傾動を許容するように、操作具(130)をガイドしたことにより、次のような効果を奏するのである。
油圧伝動装置の操作機構を単純化するために、単一の操作具ないし変速レバー、すなわち一の方向へ変位操作されるとポンプ斜板を傾動させ別の方向へ変位操作されるとモータ斜板を傾動させる単一の操作具ないし変速レバーを、設けることにより、このような操作具ないし変速レバーにはガイド部材を付設して、ポンプ斜板を中立位置に保ったままでモータ斜板をその中立位置から前記複数の傾角位置の各々に移した上でのみ、ポンプ斜板の中立位置からの傾動操作を許容することとし、安全な車両発進を得るようにできる。
【0045】
請求項3の如く、ポンプ斜板(28)を両側1対の支軸(28a,28b)を有し、傾動可能に支持するトラニオン式のものに構成すると共に、前記モータ斜板(29)を固定ガイド部材(33)に支承させ、傾動可能に支持するクレードル式のものに構成したので、次のような効果を奏するのである。
ポンプ斜板とモータ斜板に関し、ポンプ斜板は両側1対の支軸を有するトラニオン式のものに、モータ斜板は固定ガイド部材に支承させるクレードル式のものに、それぞれ構成することにより、トラニオン式のポンプ斜板は両側の支軸によって操作力を軽くされ、また精密なコントロールができて、走行中に頻繁に操作されると共に車速の精密コントロールを行うためのものとして適している。クレードル式のモータ斜板は構造が単純で、加工及び組立てが容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に従ったトランスミッションの第1の実施例を装備したモア・トラクタの一部切欠き概略側面図である。
【図2】 第1の実施例を示す一部展開縦断側面図である。
【図3】 図2のIII −III 線にほぼ沿った縦断面図である。
【図4】 図2のIV−IV線にほぼ沿った縦断面図である。
【図5】 図2のV−V線にほぼ沿った拡大横断面図である。
【図6】 図5の矢印VI−VIに沿ってみた側面図である。
【図7】 図6のVII −VII 線に沿った断面図である。
【図8】 第1の実施例の一部の変形例を示す概略斜視図である。
【図9】 第1の実施例の一部の変形例を示す縦断側面図である。
【図10】 図9の変形例に設けた操作機構を示す模式図である。
【図11】 第2の実施例の一部分を示す縦断側面図である。
【図12】 図11のXII −XII 線に沿った拡大断面図である。
【図13】 第3の実施例の一部分を示す縦断側面図である。
【図14】 モータ制御レバー用のレバーガイドを例示する平面図である。
【符号の説明】
1 前輪
2 後輪
2a 後輪車軸
3 エンジン
4 ミッションケース
6 フロントアクスルケース
7 伝動軸
14 油圧伝動装置
15 油圧ポンプ
16 油圧モータ
17 入力軸
18 出力軸
21 機械式伝動機構
22 ハウジング
22a クラッチケース部
25 前輪駆動軸
26 前輪駆動クラッチ
28 ポンプ斜板
28a,28b 支軸
29 モータ斜板
30 ポンプ制御レバー
31 モータ制御レバー
32 アーム
33 ガイド板
36 アーム
37 位置保持機構
38N,38H,38L 穴
39 スプリング
40 ボール
53 可動クラッチ金物
54 筒体
57 アーム
58 前輪駆動レバー
73 操作軸
74 ピン
80 レバーガイド
82 ロッド
83 レバーガイド
83a ガイド溝
85 一方向クラッチ
88 中間軸
126 前輪駆動クラッチ
130 変速レバー
153 可動クラッチ金物
154 筒軸
226 前輪駆動クラッチ
253 可動クラッチ金物
【産業上の利用分野】
この発明は、トラクタ等の作業車両に用いられる走行駆動用のトランスミッション、より詳しくは車速を無段に変更可能とする油圧伝動装置を備えたトランスミッションに、関するものである。特にこの発明は、車両を前後輪4輪の駆動によって走行させるのに適した作業車用トランスミッションに係る。
【0002】
【従来の技術】
車両用油圧伝動装置は、単に構造の複雑化を避ける目的からのみではなく変速操作の複雑化を避ける目的で、可変容積式の油圧ポンプと定容積式の油圧モータとの組合せから成るものに構成されるのが、一般的である。また、四輪駆動構造の作業車用トランスミッションは、主駆動輪(後輪又は前輪)2輪の常時駆動に加えて左右の副駆動輪(前輪又は後輪)を選択的に駆動可能とするものに構成される場合がほとんどである。
【0003】
このような油圧伝動装置及び四輪駆動構造を備える作業車用トランスミッションとして最も単純な構造のものは、実開平3−73751号公報に開示されているように、油圧伝動装置の出力軸の前端側に、前輪駆動力取出し用の前輪駆動軸と、該駆動軸を上記出力軸に対し断接する、前輪駆動クラッチを備えた前輪駆動装置を設置する構造のものである。しかし、本構造のものは、作業車両が作業時と路上走行時とで車速レンジを大幅に異にする点に鑑み、後輪駆動機構中に車速レンジ変更用の変速装置を設けてある作業車両では、採用できない。すなわち変速装置のシフトによって後輪の周速が変更されるのに対し、上記前輪駆動軸から伝動を受けて駆動される前輪の周速は変更されずして、前後輪の周速が大きく異なる事態が生じ得るからである。
【0004】
したがって上記のような車速レンジ変更用の変速装置を含むトランスミッションでは例えば米国特許No.4,579,183に開示されているように、変速装置従動側の伝動軸に対しクラッチを介して接続された前輪駆動軸が設けられることになる。しかし、このような前輪駆動軸は上記変速装置を内装するミッションケースを大型化するとか、ミッションケース前面側の油圧伝動装置に制約されて、該駆動軸から前輪へ伝動する伝動軸を適正レベル或は左右の片寄りが無い位置に設置可能とする配置で設け難くするといった、問題点を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、この発明の主たる目的とするところは、車速レンジの変更を油圧伝動装置自体で得ることを可能とし、上記のような変速装置を不要として、四輪駆動構造を簡単に採用可能としてある新規な作業車用トランスミッションを、提供するにある。付随する目的は、トランスミッションのコストを大幅に低減しつつ変速操作が単純化されることとしてあるトランスミッション構造を提供するにある。
【0006】
この発明の他の目的は、トラクタ等の作業車両が各種作業に用いられるもので、且つ路上走行時には比較的高速で走行させるものである点に鑑み、車両の駆動モードの変更を可能としてある作業車用四輪駆動トランスミッションを、提供するにある。付随する目的は他の駆動方式のものに転換容易な四輪駆動トランスミッションであって、両種方式のトランスミッションのコスト低減に寄与する構造のものを、提供するにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために次のように構成したものである。
請求項1においては、車両を走行駆動するための油圧伝動装置(14)を備えた作業車用トランスミッションであって、該油圧伝動装置(14)は、油圧ポンプ(15)と油圧モータ(16)により構成され、該油圧ポンプ(15)は、エンジン(3)により駆動される入力軸(17)により駆動され、中立位置から一方向及び他方向に無段階に傾動操作されるポンプ斜板(28)を有し、前記油圧モータ(16)は、油圧ポンプ(15)に対し流体的に接続され駆動される可変容積式の油圧モータ(16)であって、中立位置から一方向にのみ複数の傾角位置へと傾動操作されるモータ斜板(29)を有し、該モータ斜板(29)を、前記中立位置と前記複数の傾角位置の各々の位置で拘束解除可能に拘束する位置保持機構(37)を設け、該油圧モータ(16)により駆動される出力軸(18)を設け、該出力軸(18)を車両の主駆動輪(2)に対し常時駆動する機械式伝動機構(21)を介して接続すると共に、車両の副駆動輪(1)に対し、該副駆動輪(1)を選択的に駆動するクラッチ(26)を介して接続し、前記ポンプ斜板(28)とモータ斜板(29)を、一の方向へ変位操作されるとポンプ斜板を傾動させ、別の方向へ変位操作されるとモータ斜板を傾動させる単一の操作具(130)に対し接続したものである。
【0008】
請求項2においては、請求項1記載の作業車用トランスミッションにおいて、操作具(130)をガイドするガイド部材(80)を設けて、前記ポンプ斜板(28)をその前記中立位置に保ったままで前記モータ斜板(29)をその中立位置から前記複数の傾角位置の各々に移した上でのみポンプ斜板(28)の中立位置からの一方向及び他方向への傾動を許容するように、操作具(130)をガイドしたものである。
【0009】
請求項3においては、請求項1記載の作業車用トランスミッションにおいて、ポンプ斜板(28)を両側1対の支軸(28a,28b)を有し、傾動可能に支持するトラニオン式のものに構成すると共に、前記モータ斜板(29)を固定ガイド部材(33)に支承させ、傾動可能に支持するクレードル式のものに構成したものである。
【0010】
【実施例】
図1は第1の実施例を装備したモア・トラクタを示している。同トラクタは左右1対宛の、副駆動輪として用いられる前輪1及び主駆動輪として用いられる後輪2間で機体の下面位にモアMを装備させるものに構成されている。なおフロント・マウント型のモアを装備させるトラクタ等、前輪常時駆動とするのが望ましい作業車両では、図例のトランスミッション構造を前後逆配置として前輪常時駆動、後輪選択的駆動方式のトランスミッションとする。
【0011】
図1に示すように駆動源としてのエンジン3は、機体の前部に搭載され、左右の後輪2間には後輪車軸2aを装備するミッションケース4が設置されている。エンジン3の動力は前後方向に沿わせた伝動軸5によって、ミッションケース4内へ伝えられる。ミッションケース4内で左右の後輪車軸2aを回転駆動して後輪2を駆動する他、ミッションケース4の前面側からフロントアクスルケース6内へ伝動する伝動軸7を設けて、必要に応じ該アクスルケース6内で左右の前輪車軸1aを回転駆動して前輪1を駆動することにより、車両の走行を得ることとされている。
【0012】
同様に図1に示すようにミッションケース4内の中間レベルから後方へ突出するリヤPTO軸8と、低レベルから前方へ突出するミッドPTO軸9を設けてある。リヤPTO軸8は機体後部に連結して車両に牽引されるロータリティラー、グラス・コレクタ等の作業機(図示せず)を駆動するために用いられ、またミッドPTO軸9は伝動軸10によって、モアMのギヤボックスMa内に駆動力を伝えるものとしてある。シート11はミッションケース4の上方位置に設置してあり、その前方位置に、左右の前輪1を操舵旋回させるためのステアリング・ホイール12を臨ませてある。
【0013】
図2に示すように、ミッションケース4の前面には下方部分を残して厚手の板体13を装着してあり、この板体13の上半部背面に装着してミッションケース4内の上部に設置した可変容積式の油圧ポンプ15と板体13の下半部前面に装着してミッションケース4外に設置した可変容積式の油圧モータ16とを備える油圧伝動装置14が、設けられている。この油圧伝動装置14は油圧ポンプ15のポンプ軸である入力軸17と油圧モータ16のモータ軸である出力軸18を備え、入力軸17は板体13の前方へと突出させて、図1に示す前記伝動軸5に連結されている。なお板体13の前面には、入力軸17を自らのポンプ軸とする油ポンプ19を装着してあり、この油ポンプ19によって油圧伝動装置14に対し作動油を補給させることとしてある。また入力軸17は油圧ポンプ15から後方向きにも突出させて、後述するように前記した両PTO軸8,9を駆動するためにも用いることとされている。
【0014】
同様に、図2に示すように油圧伝動装置14の出力軸18の後端側は板体13を貫通させてミッションケース4内に臨ませてあり、後端に小径の傘歯車20を装備する。ミッションケース4内には、該傘歯車20から伝動を受けて左右の後輪車軸2aを回転駆動する機械式伝動機構21を、油圧ポンプ15の下方側で設置してある。油圧モータ16は板体13の前面にボルト23によって装着してあるハウジング22内に設置されており、このハウジング22には前方向きに突出するクラッチケース部22aを一体形成してある。出力軸18は油圧モータ16から前方向きにも突出させてあり、その前端をクラッチケース部22a内に臨ませてある。そして前蓋22bを有するクラッチケース部22aに支持させて、出力軸18と同心配置の前輪駆動軸25を設けてあり、この前輪駆動軸25を出力軸18に対し選択的に接続するための前輪駆動クラッチ26が、クラッチケース部22a内に設置されている。前輪駆動軸25は前蓋22b外へ突出する前端で、図1に示す前記伝動軸7に連結されている。
【0015】
同様に図2に示すように、アキシャル・プラジャ型の可変容積式油圧ポンプ15及び油圧モータ16はそれぞれ、傾角を変更調節可能な斜板28及び29を備えている。これらの斜板28,29の傾角の変更調節はそれぞれ、図1に示すようにシート11の一側に配置されたポンプ制御レバー30及びモータ制御レバー31によって行うこととされている。
【0016】
図2−4に示すように、ポンプ斜板28は、ミッションケース4の左右の側壁に回転自在に支持させる左右1対の支軸28a,28bを備えるトラニオン式のものに構成され、一側の支軸28aをミッションケース4外へと突出させてある。支軸28aにはミッションケース4外でアーム32を取付けてあり、このアーム32を操作ケーブル又はリンク機構(図示せず)によって、図1のポンプ制御レバー30へと接続してある。ポンプ斜板28は、ポンプ制御レバー30によって油圧ポンプ15のポンプ作用を停止させる中立位置から一方向及び他方向に回転操作され、油圧ポンプ15の油吐出方向を変更すると共に吐出油量を無段に変更する。
【0017】
図2及び図4−6に示すようにモータ斜板29は、前記ハウジング22の前部内面に装着した円弧状のガイド板33にガイドさせるクレードル式のものに構成されている。ハウジング22の一側壁には開口を形成して側蓋22cにより閉鎖してあり、この側蓋22cに回転自在に支持させた操作軸34を、ハウジング22の内外にまたがらせて設けてある。操作軸34の内端には斜板29に対し係合するシフタ35aを備えるアーム35を取付けてあり、操作軸34の回転変位によるアーム35の揺動によって斜板29の傾角が変更されることとしてある。操作軸34の外端には他のアーム36を取付けてあり、この他のアーム36を操作ケーブル又はリンク機構(図示せず)によって図1のモータ制御レバー31へと接続してある。そして特にモータ斜板29は、モータ制御レバー31によって、油圧モータ16を中立状態ないし駆動停止状態とする中立位置から一方向にのみ、しかも油圧モータ16の容積を2つの値とする2つの傾角位置へのみ、操作されることとしてある。すなわち図5,6に示す位置保持機構37を上記したアーム36と側蓋22c間に配設しており、この位置保持機構37は、アーム36に設けた3個の穴38N,38H,38Lと側蓋22cの外側面の穴にスプリング39により突出付勢させて嵌めたボール40とを備えたものに構成されている。図6に示すアーム36の3つの回動位置N,H,Lが、モータ斜板29の中立位置N、設定高速位置H及び設定低速位置Lに対応しており、これらの各位置N,H,Lでボール40は対応する穴38N,38H,38L内に突入してアーム36を拘束解除可能に位置保持することとされている。
つまりポンプ斜板29は中立位置Nと予め選択した高速位置H及び低速位置Lの3位置にのみ、操作されるものとされている。
【0018】
ミッションケース4内の前記伝動機構21の構造を図2、3について説明すると、ミッションケース4内に出力軸18と等レベルの駆動軸41を横架して、この駆動軸41上に固定設置した大径の傘歯車42を出力軸18上の前記傘歯車20に対し噛合せてある。左右の後輪車軸2a間には差動装置43を設けてあり、駆動軸41に一体形成した小径の歯車44を差動装置43の大径入力歯車45に対し噛合せてある。差動装置43のデフケースは左右のケース半部を、その間に入力歯車45を挟持してボルト46により締結して形成されている。一側ケース半部47のボス部上にはデフロック・クラッチ48を摺動可能に設けてある。該クラッチ48はケース半部47の透孔に挿通されたロックピン48aを備え、該ピン48aを一側のデフ・サイドギヤ49のボス部の凹溝49aに突入させることで、ギヤ49をデフケースに対し相対回転不能に拘束して差動装置43の機能を解除するものに構成されている。デフロック・クラッチ48を操作するためには、駆動軸41の後方位置でミッションケース4内に横架したフォークシャフト50に支持させたクラッチ・フォーク51を、該クラッチ48に対し係合させて設けてある。
【0019】
次に前輪駆動クラッチ26の構造を図5,7について説明すると、本クラッチ26は前輪駆動軸25の外周面に形成したスプライン25aを利用して該駆動軸25上に摺動のみ自在に設けた可動クラッチ金物53を備えている。出力軸18の前端部上には前輪駆動軸25のスプライン25aと整列するスプライン54aを外周面に有する筒体54を、固定設置してある。クラッチ金物53は図5の上半部に示すようにスプライン54a,53aにまたがって噛合い前輪駆動軸25を出力軸18に対し接続する前輪駆動クラッチ26の入り位置と、図5の下半部に示すようにスプライン53aのみと噛合い上記両軸18,25間の接続を断つ前輪駆動クラッチ26の切り位置とに、変位操作されるものとされている。この変位操作のためにはクラッチケース部22aの一側壁を貫通させた回転可能な操作軸55を設けて、この操作軸55の内端に、クラッチ金物53に対し係合するシフタ56aを備えたアーム56を取付けてある。操作軸55の外端には他のアーム57を取付けてあり、該アーム57を、図1に示すようにシート11の前方位置に設置した前輪駆動レバー58に対し操作索条又はリンク機構(図示せず)によって接続している。前輪駆動軸25とクラッチ金物53間には、クラッチ金物53を上記したクラッチ入り位置と切り位置とで拘束解除可能に拘束するための、スプリング59a及び1対のボール59bを備えたデテント機構59を配設してある。
【0020】
前記PTO軸8,9を駆動するための駆動機構の構造を説明しておくと、図2に示すように油圧伝動装置14の入力軸17は油圧ポンプ15から、ミッションケース4内の一体的な仕切り壁4aの後方にまで後向きに延出させてある。そしてこの入力軸17の延長線上に伝動軸60を、入力軸17後端部とミッションケース4の後蓋4bとに支持させて設けてある。入力軸17と伝動軸60間には、入力軸17後端部に嵌着した支持金物62と伝動軸60上に固定設置したクラッチハウジング63とにそれぞれ摩擦エレメントを摺動のみ自在に支持させてなる油圧多板式のPTOクラッチ61を、配設してある。クラッチハウジング63には歯車64を一体形成してあり、この歯車64を、仕切り壁4aと後蓋4bとに支持させて設けてある前記リヤPTO軸8上に設置した歯車65に対し、噛合せてある。そしてさらに、後端を後蓋4bに支持させてある前記ミッドPTO軸9の後端部上に歯車66を設置して、この歯車66をリヤPTO軸8上の上記歯車65に対し噛合せてある。PTOクラッチ61に対する作動油の供給は前記油ポンプ19によって行うこととされ、後蓋4b内には伝動軸60の後端面で前端側を仕切られた油室67を設けてある。作動油は油ポンプ19からミッションケース4壁内の油路68(図3)と後蓋4b背面上の電磁コントロールバルブ69とを介し油室67に導かれ、伝動軸60内の油路(図示せず)を介してPTOクラッチ61に対し供給される。なおリヤPTO軸8及びミッドPTO軸9を各独立的に駆動可能とするためには、上記歯車65,66を該各PTO軸8,9上に遊嵌設置し、これらの歯車65,66をPTO軸8,9に対し選択的に結合可能とする機械式のリヤPTOクラッチ及びミッドPTOクラッチ(図示せず)を設ければよい。
【0021】
なお油圧伝動装置14における油圧ポンプ15及び油圧モータ16間を接続する油路(図5にその一部を符号70A,70Bで指して示す。)及び必要なバルブ類(図示せず)は、板体13内に設けられている。図2,5において71,72はそれぞれ、板体13と油圧ポンプ15ないし油圧モータ16のシリンダブロック間に介在させた弁板である。
【0022】
第1の実施例は以上に説明して来たように構成されていて、モータ斜板29を図1に示すモータ制御レバー31によって低速位置L又は高速位置Hに操作し図5,6に示す位置保持機構37により同位置に保持し、ポンプ斜板28を図1に示すポンプ制御レバー30によって中立位置から一方向或は他方向に無段に操作することにより車両を前進方向或は後進方向に無段に変更される速度で走行させることができる。そして図1に示す前輪駆動レバー58により図2,5に示す前輪駆動クラッチ26を入り切りして、前後輪1,2を駆動する四輪駆動状態と後輪2のみを駆動する二輪駆動状態とを自在に選択できる。
【0023】
図1に示すトラクタを用いた各種作業時には普通、モータ斜板29を低速位置Lとして作業が進められる。そしてモアMを用いた芝刈り作業時等の軽作業時には一般に二輪駆動が選択され、トラクタにトレーラとかローダを付設する重作業時には一般に四輪駆動を選択して牽引力の増大が図られる。二輪駆動による車両走行中に後輪2が凹地にはまるとか登坂時或は旋回時にスリップする事態が起きると、前輪駆動クラッチ26を入れて四輪駆動状態を得ることにより、スリップ状態から迅速に脱出することができる。牽引力を必要としない路上走行時には一般に、モータ斜板29を高速位置Hとすると共に前輪駆動クラッチ26を切った二輪駆動状態で車両を走行させる。
【0024】
バッテリーの容量低下等でエンジンの始動が不可能になり車両を他の車両により牽引させることが必要となった場合、モータ斜板29を中立位置Nとする。このときは油圧伝動装置14の出力軸18が車輪1,2側から駆動されても油圧モータ16がポンプ作用を生じるようなことはなく、したがって油圧モータ16と油圧ポンプ15間で油圧の閉込めが起きて牽引抵抗が発生する事態は生じない。
【0025】
図8は、図1に示したポンプ制御レバー30とモータ制御レバー31とを単一の変速レバー130にまとめた変形例を示している。本変形例では軸線73aまわりで回転変位可能に支持した操作軸73に、変速レバー130を下端フォーク部130aで、操作軸々線73aに対し直交する軸線74aを有するピン74によって該ピン74まわりで回動自在に支持させている。そしてレバーフォーク部130aの一脚を、ピン軸線74aに平行する回動軸線75aまわりで回動自在に支持させたベルクランク75の一アームに連杆76により接続すると共に、ベルクランク75の他アームを前記のもの同様のポンプ斜板操作用のアーム32に対し、連杆77により接続して、変速レバー130をピン74まわりで図示X方向に回動操作することによりアーム32を、ポンプ斜板を中立位置Nから前進方向Fの傾斜角度及び後進方向Rの傾斜角度に無段に傾動できることとしている。また、操作軸73に直交方向で取付けたアーム78を前記のもの同様のモータ斜板操作用のアーム36に対し連杆79により接続して、変速レバー130を操作軸73まわりで該操作軸73を回転させつつ図示Y方向に回動操作することによってアーム36を、モータ斜板を中立位置Nから高速位置H、そして低速位置Lへとする位置に傾動できることとしている。
【0026】
変速レバー130をガイドするレバーガイド80には図示のように、Y方向に沿っていてアーム36が上記した中立位置Nから高速位置H、そして低速位置Lへと移されるように変速レバー130をガイドするガイド溝と、該ガイド溝に直交しX方向に沿っている2つのガイド溝であってアーム36の高速位置H及び低速位置Lでそれぞれ、ポンプ斜板操作用のアーム32を中立位置Nから前進方向Fと後進方向Rとの両方向へと操作可能に変速レバー130をガイドする2つのガイド溝を、形成してある。
【0027】
したがって図8の変形例によれば、モータ斜板の中立位置Nではポンプ斜板が必ず中立位置Nにおかれると共に、単一の変速レバー130により、ポンプ斜板を中立位置Nに保ったままモータ斜板を高速位置H又は低速位置Lへと移した上で、ポンプ斜板を前進方向或は後進方向に無段に傾動できることになる。このようにポンプ斜板を中立位置Nに保った車両の停止状態で先ずモータ斜板の高速位置又は低速位置へのセットを行い、次にポンプ斜板を中立位置から前進方向又は後進方向に傾動させて車両の発進を得ることとすることにより、安全な車両発進を確保できる。図8に示すようにモータ斜板の高速位置HでのX方向のガイド溝は、後進方向Rでの溝長さを前進方向Fでの溝長さよりもかなり小さくしてあり、車両を高速で後進させることに伴う危険が生じることをレバーガイド80によって防止してある。
【0028】
図9,10は、前輪駆動クラッチ26をモータ斜板の操作に連動して入り切り制御するように構成してある、他の変形例を示している。本変形例では、図9に示すように前輪駆動クラッチ26を、第1の実施例の場合と同様に構成しているが、可動クラッチ金物53を、特に図9の上半部について示す前記同様のクラッチ入り位置の他、図9の下半部について実線図示の第1のクラッチ切り位置と鎖線図示の第2のクラッチ切り位置との3位置に、変位操作されるものとしている。図9ではクラッチ金物53の後端位置でみてクラッチ入り位置、第1のクラッチ切り位置及び第2のクラッチ切り位置をそれぞれ、I,II及びIII で示してある。そして前記のもの同様のデテント機構59は、そのような3位置I,II,III でクラッチ金物53を拘束解除可能に拘束するものに構成されている。
【0029】
そして図10に示すように前記のもの同様のモータ斜板操作用のアーム36とクラッチ操作用のアーム57間をロッド82により接続して、モータ斜板ないしその操作用アーム36の中立位置N、高速位置H及び低速位置Lでクラッチ金物ないしその操作用アーム57が第2のクラッチ切り位置III 、第1のクラッチ切り位置II及びクラッチ入り位置Iに位置せしめられることとしている。アーム36はレバーガイド83にガイドされているモータ制御レバー31によって操作され、前記前輪駆動レバー58に対応するクラッチ操作手段は設けないこととされている。したがって本変形例によると、モータ斜板の位置に応じ前輪駆動クラッチ26が次の表1に示す状態をとることになる。
【表1】
【0030】
図9,10に示した変形例は、比較的重負荷の作業に用いる車両用のトランスミッションとして使用するのに適している。なお、図8の変形例と図9,10の変形例を組合せて、単一の変速レバーによりポンプ斜板及びモータ斜板に加えて前輪駆動クラッチも操作可能とする構成とすることも、可能である。
【0031】
図11,12は第2の実施例を示しており、本実施例では前輪駆動クラッチ126が一方向クラッチを含むものに構成されている。すなわち先ず本実施例では図11に示すように油圧伝動装置の出力軸18の前端部に前輪駆動軸25の後端部外周に張出す筒軸154を固定し、この筒軸154の前端部内周面に爪154aを形成すると共に、前輪駆動軸25上にスプライン嵌めにより摺動のみ自在に設けた可動クラッチ金物153の後端部外周面に、爪154aに対し噛合せ得る爪153aを形成している。可動クラッチ金物153は図11の下半部に示すように爪153a,154a間が噛合されるクラッチ入り位置Iと、図11の上半部に示すように爪153b,154a間の噛合いが解除されるクラッチ切り位置IIとに、前述のもの同様の操作機構により摺動変位せしめられ、該各位置I,IIでデテント機構59により拘束解除可能に拘束されるものとしてある。
【0032】
そして図11,12に示すように筒軸154と前輪駆動軸25間に、一方向クラッチ85を配設してある。この一方向クラッチ85は図12に示すように、筒軸154と前輪駆動軸25間に位置させる保持リング85aに多数の係合子85bを図示の傾斜姿勢で保持させ、もって矢印Fで示す車両前進方向での筒軸154の回転数が前輪駆動軸25の回転数よりも大であるとクラッチ係合して、筒軸154の回転を前輪駆動軸25に対し伝達するものとされている。
【0033】
したがって前輪駆動クラッチ126は爪154a,153aが噛合うクラッチ入り状態では出力軸18及び筒軸154の回転が常時前輪駆動軸25へと伝達される前輪常時駆動モードを得させ、爪154a,153a間の噛合いが解除されるクラッチ切り状態では出力軸18及び筒軸154の回転数が前輪駆動軸25の回転数より大である場合にのみ一方向クラッチ85を介して前輪駆動軸25を駆動する前輪選択的駆動モードを得させる。可動クラッチ金物153により後者の選択的駆動モードを選んで車両を前進走行させている状態では、前輪駆動軸25が後輪の駆動による車両走行によって回転せしめられる前輪側から駆動を受けて出力軸18及び筒軸154と等速で回転するから、一方向クラッチ85の係合は生じない。
【0034】
上述した前輪常時駆動モードは、作業車にトレーラとかローダを付設する重作業時に選択される。また前輪選択的駆動モードは図1に示すようなモアMを用いた芝刈り作業時等の軽作業時及び路上走行時に、選択される。前輪選択的駆動モードを選択し二輪駆動により車両を走行させている状態で後輪が凹地にはまるとか登坂時或は旋回時にスリップする事態が起きると、後輪の回転数と対比した車両前進速度が低下することからして前輪の回転数が低められ、これによって前輪駆動軸25の回転数が低下する。そしてこの時は、一方向クラッチ85が出力軸18側から相対的に車両前進方向に駆動されることになって係合し、前輪駆動軸25が強制的に駆動されるから前輪が積極的に駆動され、スリップ状態から迅速に脱出でき、走行状態が安定する。すなわち図11,12の第2の実施例によれば二輪駆動による車両走行中に後輪がスリップする事態が生じると、前輪駆動クラッチ126を操作せずとも自動的に四輪駆動状態が得られ、車両の安定した走行状態が確保されることになる。
【0035】
図13は第3の実施例を示しており、本実施例では前輪駆動モードを3通りに変更可能とする前輪駆動クラッチ226を設けている。すなわち本実施例では図13に示す通り、前輪駆動軸25の後方に該駆動軸25と同心配置の中間軸88を、該中間軸88の外周に張出す前記のもの同様の筒軸154に回転自在に支持させて設けて、前記のもの同様の一方向クラッチ85を筒軸154と該中間軸88間に配設している。そして前輪駆動軸25上にスプライン嵌めにより摺動のみ自在に設けた可動クラッチ金物253に筒軸154の爪154aに対し噛合せ得る爪253aを形成すると共に、該クラッチ金物253を前述のもの同様の操作機構により図13の下半部に示すように爪253a,154a間の噛合いを得る位置Iと、図13の上半部に示すように内周面のスプラインを中間軸88外周面のスプライン88aと駆動軸25外周面のスプライン25aとにまたがって噛合せる位置IIと、駆動軸25上にのみ位置する位置III とに、摺動変位させることとしている。可動クラッチ金物253は、上記した各位置I,II,III で前述のもの同様のデテント機構59により位置拘束されることとしてある。
【0036】
可動クラッチ金物253の上記位置Iでは筒軸154に対し前輪駆動軸25が結合されるから、出力軸18によって該駆動軸25が常時駆動される前輪の常時駆動モードが得られる。また可動クラッチ金物253の上記位置IIでは中間軸88と前輪駆動軸25間が結合されこれらの両軸88,25が一体回転する状態にあるから、一方向クラッチ85は出力軸18及び筒軸154の回転数が中間軸88及び前輪駆動軸25の回転数よりも大である場合にのみ係合して、前輪駆動軸25が出力軸18により駆動されることとする。そしてクラッチ金物253の上記位置III では前輪駆動軸25が中間軸88と切り離されるから、該駆動軸25が出力軸18側から駆動を受けることはない。つまり図13に示した前輪駆動クラッチ226は可動クラッチ金物253の位置に応じ、位置I,IIではそれぞれ、第2の実施例の場合同様に前輪の常時駆動モード及び選択的駆動モードを得させ、位置III では前輪の駆動停止モードを得させることとする。
【0037】
第3の実施例を装備する作業車の使用状態に応じたモータ斜板位置及び前輪駆動モードの選択は、一般に次の表2に示す基準に従って行われる。
【表2】
【0038】
これ迄に述べて来たところから明らかなように、表2の路上走行中には二輪駆動により燃費が節減され、軽作業中には二輪駆動により燃費の節減及び地面を荒らすことのない小回り車両旋回が達成されつつ前輪スリップ状態時の自動的な四輪駆動による走行状態の安定化が得られ、重作業中には必要な高牽引力が確保される。
【0039】
図14は図10に示したようなモータ制御レバー31用のレバーガイド83の構造を例示しており、レバー31は、モータ斜板の中立位置N、高速位置H及び低速位置Lに対応する位置にそれぞれロック溝を有するガイド溝83aにガイドさせることとしてある。
【0040】
【発明の効果】
本発明は、次のような効果を奏するものである。
請求項1の如く、車両を走行駆動するための油圧伝動装置(14)を備えた作業車用トランスミッションであって、該油圧伝動装置(14)は、油圧ポンプ(15)と油圧モータ(16)により構成され、該油圧ポンプ(15)は、エンジン(3)により駆動される入力軸(17)により駆動され、中立位置から一方向及び他方向に無段階に傾動操作されるポンプ斜板(28)を有し、前記油圧モータ(16)は、油圧ポンプ(15)に対し流体的に接続され駆動される可変容積式の油圧モータ(16)であって、中立位置から一方向にのみ複数の傾角位置へと傾動操作されるモータ斜板(29)を有し、該モータ斜板(29)を、前記中立位置と前記複数の傾角位置の各々の位置で拘束解除可能に拘束する位置保持機構(37)を設け、該油圧モータ(16)により駆動される出力軸(18)を設け、該出力軸(18)を車両の主駆動輪(2)に対し常時駆動する機械式伝動機構(21)を介して接続すると共に、車両の副駆動輪(1)に対し、該副駆動輪(1)を選択的に駆動するクラッチ(26)を介して接続し、前記ポンプ斜板(28)とモータ斜板(29)を、一の方向へ変位操作されるとポンプ斜板を傾動させ、別の方向へ変位操作されるとモータ斜板を傾動させる単一の操作具(130)に対し接続したので、次のような効果を奏するのである
このような油圧伝動装置を備えたトランスミッションを、四輪駆動構造のものとすることは例えば、前記出力軸を車両の主駆動輪(後輪又は前輪)に対し該主駆動輪を常時駆動するように、機械式伝動機構を介して接続すると共に、該出力軸を車両の副駆動輪(前輪又は後輪)に対し、該別駆動輪を選択的に駆動可能とするクラッチを介して接続すればよい。
【0041】
上述のモータ斜板を有する油圧モータには、モータ斜板の複数傾角位置に対応する複数の容積から選択した1つの容積をセット可能であるから、車速を複数段に変更制御可能とする。したがって作業車両が走行条件に応じ異なったレンジの速度で走行せしめられるものであるのに対し、そのような異別車速レンジの設定を油圧モータによって得ることができる。
そして、車両の前後進切替えを含む車速の無段の変更制御は、油圧ポンプのポンプ斜板の傾角を無段に変更して行える。したがって油圧伝動装置の出力軸には、モータ斜板によって設定されたレンジ内でポンプ斜板により無段に変更制御される回転数が与えられることになり、四輪駆動構造としても前,後輪間に周速差が生じることはない。
【0042】
傾角を有段に変更されるモータ斜板は、その操作機構中に位置決め手段或はロック手段を設けておくことにより所与の各傾角位置に確実に位置させ得るから、無段の傾角変更を行うものと対比して操作が簡単で誤操作を生じさせない。このモータ斜板を中立位置におくと油圧伝動装置による流体伝動経路が油圧モータによって断たれることになるから、油圧伝動装置を設けた車両用トランスミッションに一般に設けられている、次のようなアンロード弁を省略できることになる。
すなわち油圧伝動装置を設けた車両用トランスミッションでは、エンジン始動用のバッテリーの容量低下等の原因でエンジンの始動が不能になり、車両を他の車両に牽引させなければならない場合に備え、つまり同牽引時に油圧モータが車輪側から逆駆動されてポンプ作用し、このため油圧伝動装置の油圧ポンプと油圧モータ間の1対の接続油路のうちの一方の油路に油圧の閉じ込みが起きて車両の走行に抵抗を与える場合に備えて、上記の油圧を排除するための油圧アンロード弁、例えば上記1対の油路を短絡して高圧側油路から低圧側油路に油圧を排除可能とするアンロード弁、が一般に設けられているのであるが、本発明トランスミッションにおいてはモータ斜板を中立位置とすることで油圧モータが逆駆動されてもポンプ作用を生じないこととできるから、上記のような油圧アンロード弁を省略できるのである。
【0043】
油圧モータにより車速レンジを有段に変更可能とした本発明トランスミッションによれば、前述したような車速レンジ変更用の変速装置が無くされる。そして上述のように中立位置を有するモータ斜板によって油圧アンロード弁を省略できるから、油圧モータを可変容積式のものとしてあると言っても本発明トランスミッションは低いコストのものに維持される。
【0044】
請求項2の如く、作業車用トランスミッションにおいて、操作具(130)をガイドするガイド部材(80)を設けて、前記ポンプ斜板(28)をその前記中立位置に保ったままで前記モータ斜板(29)をその中立位置から前記複数の傾角位置の各々に移した上でのみポンプ斜板(28)の中立位置からの一方向及び他方向への傾動を許容するように、操作具(130)をガイドしたことにより、次のような効果を奏するのである。
油圧伝動装置の操作機構を単純化するために、単一の操作具ないし変速レバー、すなわち一の方向へ変位操作されるとポンプ斜板を傾動させ別の方向へ変位操作されるとモータ斜板を傾動させる単一の操作具ないし変速レバーを、設けることにより、このような操作具ないし変速レバーにはガイド部材を付設して、ポンプ斜板を中立位置に保ったままでモータ斜板をその中立位置から前記複数の傾角位置の各々に移した上でのみ、ポンプ斜板の中立位置からの傾動操作を許容することとし、安全な車両発進を得るようにできる。
【0045】
請求項3の如く、ポンプ斜板(28)を両側1対の支軸(28a,28b)を有し、傾動可能に支持するトラニオン式のものに構成すると共に、前記モータ斜板(29)を固定ガイド部材(33)に支承させ、傾動可能に支持するクレードル式のものに構成したので、次のような効果を奏するのである。
ポンプ斜板とモータ斜板に関し、ポンプ斜板は両側1対の支軸を有するトラニオン式のものに、モータ斜板は固定ガイド部材に支承させるクレードル式のものに、それぞれ構成することにより、トラニオン式のポンプ斜板は両側の支軸によって操作力を軽くされ、また精密なコントロールができて、走行中に頻繁に操作されると共に車速の精密コントロールを行うためのものとして適している。クレードル式のモータ斜板は構造が単純で、加工及び組立てが容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明に従ったトランスミッションの第1の実施例を装備したモア・トラクタの一部切欠き概略側面図である。
【図2】 第1の実施例を示す一部展開縦断側面図である。
【図3】 図2のIII −III 線にほぼ沿った縦断面図である。
【図4】 図2のIV−IV線にほぼ沿った縦断面図である。
【図5】 図2のV−V線にほぼ沿った拡大横断面図である。
【図6】 図5の矢印VI−VIに沿ってみた側面図である。
【図7】 図6のVII −VII 線に沿った断面図である。
【図8】 第1の実施例の一部の変形例を示す概略斜視図である。
【図9】 第1の実施例の一部の変形例を示す縦断側面図である。
【図10】 図9の変形例に設けた操作機構を示す模式図である。
【図11】 第2の実施例の一部分を示す縦断側面図である。
【図12】 図11のXII −XII 線に沿った拡大断面図である。
【図13】 第3の実施例の一部分を示す縦断側面図である。
【図14】 モータ制御レバー用のレバーガイドを例示する平面図である。
【符号の説明】
1 前輪
2 後輪
2a 後輪車軸
3 エンジン
4 ミッションケース
6 フロントアクスルケース
7 伝動軸
14 油圧伝動装置
15 油圧ポンプ
16 油圧モータ
17 入力軸
18 出力軸
21 機械式伝動機構
22 ハウジング
22a クラッチケース部
25 前輪駆動軸
26 前輪駆動クラッチ
28 ポンプ斜板
28a,28b 支軸
29 モータ斜板
30 ポンプ制御レバー
31 モータ制御レバー
32 アーム
33 ガイド板
36 アーム
37 位置保持機構
38N,38H,38L 穴
39 スプリング
40 ボール
53 可動クラッチ金物
54 筒体
57 アーム
58 前輪駆動レバー
73 操作軸
74 ピン
80 レバーガイド
82 ロッド
83 レバーガイド
83a ガイド溝
85 一方向クラッチ
88 中間軸
126 前輪駆動クラッチ
130 変速レバー
153 可動クラッチ金物
154 筒軸
226 前輪駆動クラッチ
253 可動クラッチ金物
Claims (3)
- 車両を走行駆動するための油圧伝動装置(14)を備えた作業車用トランスミッションであって、該油圧伝動装置(14)は、油圧ポンプ(15)と油圧モータ(16)により構成され、該油圧ポンプ(15)は、エンジン(3)により駆動される入力軸(17)により駆動され、中立位置から一方向及び他方向に無段階に傾動操作されるポンプ斜板(28)を有し、前記油圧モータ(16)は、油圧ポンプ(15)に対し流体的に接続され駆動される可変容積式の油圧モータ(16)であって、中立位置から一方向にのみ複数の傾角位置へと傾動操作されるモータ斜板(29)を有し、該モータ斜板(29)を、前記中立位置と前記複数の傾角位置の各々の位置で拘束解除可能に拘束する位置保持機構(37)を設け、該油圧モータ(16)により駆動される出力軸(18)を設け、該出力軸(18)を車両の主駆動輪(2)に対し常時駆動する機械式伝動機構(21)を介して接続すると共に、車両の副駆動輪(1)に対し、該副駆動輪(1)を選択的に駆動するクラッチ(26)を介して接続し、前記ポンプ斜板(28)とモータ斜板(29)を、一の方向へ変位操作されるとポンプ斜板を傾動させ、別の方向へ変位操作されるとモータ斜板を傾動させる単一の操作具(130)に対し接続したことを特徴とする作業車用トランスミッション。
- 請求項1記載の作業車用トランスミッションにおいて、操作具(130)をガイドするガイド部材(80)を設けて、前記ポンプ斜板(28)をその前記中立位置に保ったままで前記モータ斜板(29)をその中立位置から前記複数の傾角位置の各々に移した上でのみポンプ斜板(28)の中立位置からの一方向及び他方向への傾動を許容するように、操作具(130)をガイドしたことを特徴とする作業車用トランスミッション。
- 請求項1記載の作業車用トランスミッションにおいて、ポンプ斜板(28)を両側1対の支軸(28a,28b)を有し、傾動可能に支持するトラニオン式のものに構成すると共に、前記モータ斜板(29)を固定ガイド部材(33)に支承させ、傾動可能に支持するクレードル式のものに構成したことを特徴とする作業車用トランスミッション。
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