JP3821231B2 - 液体噴射ヘッドの駆動方法及び液体噴射装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液体を噴射するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板の表面に圧電素子を形成して、圧電素子の変位により液体を噴射させる液体噴射ヘッドの駆動方法及び液体噴射装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体噴射装置としては、例えば、圧電素子や発熱素子によりインク滴吐出のための圧力を発生させる複数の圧力発生室と、各圧力発生室にインクを供給する共通のリザーバと、各圧力発生室に連通するノズル開口とを備えたインクジェット式記録ヘッドを具備するインクジェット式記録装置があり、このインクジェット式記録装置では、印字信号に対応するノズル開口と連通した圧力発生室のインクに吐出エネルギを印加してノズル開口からインク滴を吐出させる。
【0003】
インク滴を吐出するノズル開口と連通する圧力発生室の一部を振動板で構成し、この振動板を圧電素子により変形させて圧力発生室のインクを加圧してノズル開口からインク滴を吐出させるインクジェット式記録ヘッドには、圧電素子の軸方向に伸長、収縮する縦振動モードの圧電アクチュエータを使用したものと、たわみ振動モードの圧電アクチュエータを使用したものの2種類が実用化されている。
【0004】
前者は圧電素子の端面を振動板に当接させることにより圧力発生室の容積を変化させることができて、高密度印刷に適したヘッドの製作が可能である反面、圧電素子をノズル開口の配列ピッチに一致させて櫛歯状に切り分けるという困難な工程や、切り分けられた圧電素子を圧力発生室に位置決めして固定する作業が必要となり、製造工程が複雑であるという問題がある。
【0005】
これに対して後者は、圧電材料のグリーンシートを圧力発生室の形状に合わせて貼付し、これを焼成するという比較的簡単な工程で振動板に圧電素子を作り付けることができるものの、たわみ振動を利用する関係上、ある程度の面積が必要となり、高密度配列が困難であるという問題がある。
【0006】
一方、後者の記録ヘッドの不都合を解消すべく、振動板の表面全体に亙って成膜技術により均一な圧電材料層を形成し、この圧電材料層をリソグラフィ法により圧力発生室に対応する形状に切り分けて各圧力発生室毎に独立するように圧電素子を形成することで高密度配列を実現したものがある。
【0007】
また、このようなインクジェット式記録ヘッドの圧電素子を駆動する駆動信号としては、矩形波からなる駆動波形を用いていた。この矩形波からなる駆動波形は、待機状態の中間駆動電圧から放電を行い圧力室を膨張させて圧力室にインクを吸入する工程と、最低駆動電圧を維持する工程と、充電を行い圧力発生室の収縮を行いインクを射出する工程と、充電最終電圧を維持する工程と、放電を行い中間駆動電圧に復帰する工程とを有し、この駆動波形によりインク滴を射出していた(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
【特許文献1】
特開平10−250061号公報(第3〜4頁、第3図)
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の矩形波からなる駆動波形を用いて、多ノズル化したインクジェット式記録ヘッドの圧電素子を駆動すると、電流(回路を移動する電荷)が大きくなってしまい、大きな電流によって駆動IC及び駆動配線が破壊されてしまい、高密度化及び多ノズル化が困難であるという問題がある。
【0010】
なお、このような問題は、インクを吐出するインクジェット式記録ヘッドだけではなく、勿論、インク以外を吐出する他の液体噴射ヘッドにおいても、同様に存在する。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑み、高密度化及び多ノズル化を行うことができると共に、低電圧で消費電流を低減した液体噴射ヘッドの駆動方法及び液体噴射装置を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、ノズル開口に連通する圧力発生室が形成される流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられる下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子とを具備する液体噴射ヘッドの駆動方法において、前記圧電素子の各層が成膜及びリソグラフィ法により形成されていると共に、前記圧電体層がリラクサ強誘電体からなり、当該圧電素子の容量−電位曲線で、当該圧電素子の容量が最大となる電位V1と、この電位V1の絶対値より大きな絶対値となり且つ前記容量−電位曲線の変曲点となる電位V2との間の電圧を駆動開始電位V0とすると共に、該駆動開始電位V0から前記圧電体層に電界強度が100〜500kV/cmの駆動電界を発生させる電位V3まで変化させることで前記圧力発生室を収縮させて前記ノズル開口から液滴を吐出させる吐出工程を有する駆動波形を用いて前記圧電素子を駆動することを特徴とする液体噴射ヘッドの駆動方法にある。
【0013】
かかる第1の態様では、所定の範囲の駆動電圧を用いてリラクサ強誘電体からなる圧電体層を有する圧電素子を駆動することで、低電圧及び低電流で圧電素子に所望の歪み変形を行わせることができると共に駆動IC及び配線基板が破壊されることなく高密度化及び多ノズル化することができる。また、圧電素子を高密度に配設でき、高品質印刷を実現できる。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記駆動波形は前記吐出工程の前に、前記駆動開始電位V0と同極性で且つ当該駆動開始電位V0の絶対値よりも大きな絶対値となる中間電位から当該駆動開始電位V0まで変化させて前記圧力発生室を膨張させる第1の膨張工程を有することを特徴とする液体噴射ヘッドの駆動方法にある。
【0015】
かかる第2の態様では、圧力発生室内を膨張させた後に収縮させて液滴を吐出させることで、圧力発生室内に確実に液体を充填すると共に、安定した吐出を行うことができる。
【0016】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様において、前記駆動波形は前記吐出工程の後に、前記電位V3から当該電位V3と同極性で且つ前記電位V3の絶対値よりも小さな絶対値となる中間電位まで変化させて前記圧力発生室を膨張させる第2の膨張工程を有することを特徴とする液体噴射ヘッドの駆動方法にある。
【0017】
かかる第3の態様では、第2の膨張工程により、圧電素子の変位を元に戻すことができる。
【0018】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様において、前記駆動波形は前記吐出工程の後に、所定の中間電位から前記駆動開始電位V0と同極性で且つ当該駆動開始電位V0の絶対値よりも小さな絶対値となる電位V4まで変化させると共に、前記電位V4から前記中間電位まで戻す緩和工程をさらに有することを特徴とする液体噴射ヘッドの駆動方法にある。
【0019】
かかる第4の態様では、緩和工程によって圧電素子の歪みが緩和されるため、その後の吐出工程で圧電素子に所定量の変位を確実に行わせることができ、吐出される液滴の大きさが安定する。
【0020】
本発明の第5の態様は、第1〜4の何れかの態様において、前記駆動波形は前記吐出工程の後に、所定の中間電位から−V3となる電位V5まで変化させると共に、前記電位V5から前記中間電位まで戻す初期化工程をさらに有することを特徴とする液体噴射ヘッドの駆動方法にある。
【0021】
かかる第5の態様では、初期化工程によって圧電素子の歪みが緩和されるため、その後の吐出工程で圧電素子に所定量の変位を確実に行わせることができ、吐出される液滴の大きさが安定する。
【0022】
本発明の第6の態様は、第1〜5の何れかの態様において、前記圧電体層の膜厚が、0.5〜1.0μmであることを特徴とする液体噴射ヘッドの駆動方法にある。
【0023】
かかる第6の態様では、所定の膜厚の圧電体層を用いることで、所望の電界強度を低電圧で得ることができ、所定量の変位を確実に行わせることができる。また、圧電素子を高密度に配設でき、高品質印刷を実現できると共に高周波数駆動が可能となり高速印刷を実現できる。
【0026】
本発明の第7の態様は、ノズル開口に連通する圧力発生室が形成される流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられる下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子とを具備する液体噴射ヘッドが搭載された液体噴射装置において、前記圧電素子の各層が成膜及びリソグラフィ法により形成されていると共に、前記圧電体層がリラクサ強誘電体からなり、当該圧電素子の容量−電位曲線で、当該圧電素子の容量が最大となる電位V1と、この電位V1の絶対値より大きな絶対値となり且つ前記容量−電位曲線の変曲点となる電位V2との間の電圧V0を駆動開始電位V0とすると共に、該駆動開始電位V0から前記圧電体層に電界強度が100〜500kV/cmの駆動電界を発生させる電位V3まで変化させることで前記圧力発生室を収縮させて前記ノズル開口から液滴を吐出させる吐出工程を有する駆動波形を前記圧電素子に出力する駆動手段を具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
【0027】
かかる第7の態様では、所定の範囲の駆動電圧を用いてリラクサ強誘電体からなる圧電体層を有する圧電素子を駆動することで、低電圧及び低電流で圧電素子に所望の歪み変形を行わせることができると共に駆動IC及び配線基板が破壊されることなく高密度化及び多ノズル化して高品質印刷を実現できる。また、圧電素子を高密度に配設でき、高品質印刷を実現できる。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る液体噴射装置の一例を示す概略図である。図1に示すように、液体噴射ヘッドを有する噴射ヘッドユニット1A及び1Bは、液体供給手段を構成するカートリッジ2A及び2Bが着脱可能に設けられ、この噴射ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。この噴射ヘッドユニット1A及び1Bは、液体として、例えば、それぞれブラックインク組成物及びカラーインク組成物を吐出するものとしている。
【0029】
そして、駆動モータ6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、噴射ヘッドユニット1A及び1Bを搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4にはキャリッジ軸5に沿ってプラテン8が設けられており、図示しない給紙ローラなどにより給紙された紙等の記録媒体である記録シートSがプラテン8上に搬送されるようになっている。そして、このような液体噴射装置では、キャリッジ3がキャリッジ軸5に沿って移動されると共に液体噴射ヘッドによって液体が吐出されて記録シートSに印刷される。
【0030】
図2は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの概略を示す分解斜視図であり、図3は、図2の平面図及び断面図である。ここで、図2及び図3を参照して上述のような液体噴射装置に搭載される液体噴射ヘッドについて説明する。図2及び図3に示すように、流路形成基板10は、本実施形態では面方位(110)のシリコン単結晶基板からなり、その一方面には予め熱酸化により形成した酸化シリコン(SiO2)からなる、厚さ1〜2μmの弾性膜50が形成されている。
【0031】
この流路形成基板10には、シリコン単結晶基板をその一方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁11によって区画された圧力発生室12が幅方向に並設されている。また、その長手方向外側には、後述する封止基板30のリザーバ部32と連通される連通部13が形成されている。また、この連通部13は、各圧力発生室12の長手方向一端部でそれぞれ液体供給路14を介して連通されている。
【0032】
ここで、異方性エッチングは、シリコン単結晶基板のエッチングレートの違いを利用して行われる。例えば、本実施形態では、シリコン単結晶基板をKOH等のアルカリ溶液に浸漬すると、徐々に侵食されて(110)面に垂直な第1の(111)面と、この第1の(111)面と約70度の角度をなし且つ上記(110)面と約35度の角度をなす第2の(111)面とが出現し、(110)面のエッチングレートと比較して(111)面のエッチングレートが約1/180であるという性質を利用して行われる。かかる異方性エッチングにより、二つの第1の(111)面と斜めの二つの第2の(111)面とで形成される平行四辺形状の深さ加工を基本として精密加工を行うことができ、圧力発生室12を高密度に配列することができる。
【0033】
本実施形態では、各圧力発生室12の長辺を第1の(111)面で、短辺を第2の(111)面で形成している。この圧力発生室12は、流路形成基板10をほぼ貫通して弾性膜50に達するまでエッチングすることにより形成されている。ここで、弾性膜50は、シリコン単結晶基板をエッチングするアルカリ溶液に侵される量がきわめて小さい。また各圧力発生室12の一端に連通する各液体供給路14は、圧力発生室12より浅く形成されており、圧力発生室12に流入する液体の流路抵抗を一定に保持している。すなわち、液体供給路14は、シリコン単結晶基板を厚さ方向に途中までエッチング(ハーフエッチング)することにより形成されている。なお、ハーフエッチングは、エッチング時間の調整により行われる。
【0034】
このような圧力発生室12等が形成される流路形成基板10の厚さは、圧力発生室12を配設する密度に合わせて最適な厚さを選択することが好ましい。例えば、1インチ当たり180個(180dpi)程度に圧力発生室12を配置する場合には、流路形成基板10の厚さは、180〜280μm程度、より望ましくは、220μm程度とするのが好適である。また、例えば、360dpi程度と比較的高密度に圧力発生室12を配置する場合には、流路形成基板10の厚さは、100μm以下とするのが好ましい。これは、隣接する圧力発生室12間の隔壁11の剛性を保ちつつ、配列密度を高くできるからである。なお、流路形成基板10の開口面側には、各圧力発生室12の液体供給路14とは反対側で連通するノズル開口21が穿設されたノズルプレート20が接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。
【0035】
一方、流路形成基板10の開口面とは反対側の弾性膜50の上には、厚さが例えば、約0.2μmの下電極膜60と、厚さが例えば、約0.5〜1.0μmの圧電体層70と、厚さが例えば、約0.1μmの上電極膜80とが積層形成されて、圧電素子300を構成している。ここで、圧電素子300は、下電極膜60、圧電体層70、及び上電極膜80を含む部分をいう。一般的には、圧電素子300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を各圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を圧電体能動部という。本実施形態では、下電極膜60は圧電素子300の共通電極とし、上電極膜80を圧電素子300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。何れの場合においても、各圧力発生室12毎に圧電体能動部が形成されていることになる。また、ここでは、圧電素子300と当該圧電素子300の駆動により変位が生じる振動板とを合わせて圧電アクチュエータと称する。なお、上述した例では、弾性膜50及び下電極膜60が振動板として作用する。
【0036】
ここで、このような圧電素子300を構成する各層について説明する。下電極膜60は、例えば、本実施形態では、スパッタリング法で弾性膜50の全面に形成後、下電極膜60をパターニングして全体パターンを形成する。下電極膜60の材料としては、白金(Pt)やイリジウム(Ir)が好適である。また、このような下電極膜60上の圧電体層70は、リラクサ強誘電体で形成されている。ここで、リラクサ強誘電体とは、室温付近にキュリー温度があり、誘電率がPZTなどの圧電体に比べて大きく(例えば、比誘電率が5000以上など)、電界誘起歪みがPZTなどの圧電体に比べて大きいものである。例えば、PZTなどの圧電体は、電界誘起歪みが0.3%程度なのに対し、リラクサ強誘電体は、電界誘起歪みが1.2%程度となる。このようなリラクサ強誘電体は、電界誘起歪みが1.2%程度と大きい一方、誘電率が非常に大きいので、駆動電荷量が大きくなってしまうが、後述するように所定の駆動波形を用いることにより、駆動電荷量を著しく大きくすることなく大きな変形を得ることができる。
【0037】
このような、リラクサ強誘電体としては、例えば、チタン酸鉛を含有するリラクサ強誘電体、例えば、PMN−PT(Pb(Mg1/3Nb2/3)O3−PbTiO3)、PZN−PT(Pb(Zn1/3Nb2/3)O3−PbTiO3)、PNN−PT(Pb(Ni1/3Nb2/3)O3−PbTiO3)、PIN−PT(Pb(In1/2Nb1/2)O3−PbTiO3)、PST−PT(Pb(Sc1/3Ta1/2)O3−PbTiO3)、PSN−PT(Pb(Sc1/3Nb1/2)O3−PbTiO3)、BS−PT(BiScO3−PT)、BiYbO3−PT等を挙げることができる。
【0038】
また、リラクサ強誘電体からなる圧電体層70は、CSD(Chemical Solution Deposition)法、スパッタ法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより形成することができる。CSD法としては、例えば、ゾル−ゲル法、MOD(Metal-Organic Decomposition)法を挙げることができる。さらに、圧電体層70上の上電極膜80を形成する材料としては、導電性の高い材料であればよく、例えば、アルミニウム、金、ニッケル、白金、イリジウム等の多くの金属や、導電性酸化物等を使用できる。本実施形態では、イリジウムをスパッタリングにより成膜している。また、このような構成の各圧電素子300の上電極膜80には、例えば、金(Au)等からなるリード電極90がそれぞれ接続されている。このリード電極90は、各圧電素子300の長手方向端部近傍から引き出され、液体供給路14に対応する領域の弾性膜50上までそれぞれ延設されている。
【0039】
流路形成基板10の圧電素子300側には、圧電素子300の運動を阻害しない程度の空間を確保した状態で、その空間を密封可能な圧電素子保持部31を有する封止基板30が接合され、圧電素子300はこの圧電素子保持部31内に密封されている。このような封止基板30には、各圧力発生室12の共通の液体室となるリザーバ100の少なくとも一部を構成するリザーバ部32が設けられ、このリザーバ部32は、上述のように流路形成基板10の連通部13と連通されて各圧力発生室12の共通の液体室となるリザーバ100を構成している。
【0040】
また、封止基板30の圧電素子保持部31とリザーバ部32との間、すなわち液体供給路14に対応する領域には、この封止基板30を厚さ方向に貫通する接続孔33が設けられている。さらに、封止基板30の圧電素子保持部31側とは反対側の表面には図示しない外部配線が設けられている。そして、各圧電素子300から引き出されたリード電極90は、この接続孔33まで延設されており、例えば、ワイヤボンディング等により外部配線と接続される。
【0041】
封止基板30上には、封止膜41及び固定板42とからなるコンプライアンス基板40が接合されている。ここで、封止膜41は、剛性が低く可撓性を有する材料(例えば、厚さが6μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)フィルム)からなる。また、固定板42は、金属等の硬質の材料(例えば、厚さが30μmのステンレス鋼(SUS)等)で形成される。この固定板42のリザーバ100に対向する領域には、厚さ方向に完全に除去された開口部43が形成され、リザーバ100の一方面は可撓性を有する封止膜41のみで封止されている。
【0042】
図4は、液体噴射装置の制御構成を示す図である。ここで、図4を参照して、本実施形態の液体噴射装置の制御について説明する。本実施形態の液体噴射装置は、図4に示すように、プリンタコントローラ111とプリントエンジン112とから概略構成されている。プリンタコントローラ111は、外部インターフェース113(以下、外部I/F113という)と、各種データを一時的に記憶するRAM114と、制御プログラム等を記憶したROM115と、CPU等を含んで構成した制御部116と、クロック信号を発生する発振回路117と、液体噴射ヘッド118へ供給するための駆動信号を発生する駆動信号発生回路119と、駆動信号や印刷データに基づいて展開されたドットパターンデータ(ビットマップデータ)等をプリントエンジン112に送信する内部インターフェース120(以下、内部I/F120という)とを備えている。
【0043】
外部I/F113は、例えば、キャラクタコード、グラフィック関数、イメージデータ等によって構成される印刷データを、図示しないホストコンピュータ等から受信する。また、この外部I/F113を通じてビジー信号(BUSY)やアクノレッジ信号(ACK)が、ホストコンピュータ等に対して出力される。RAM114は、受信バッファ121、中間バッファ122、出力バッファ123、及び、図示しないワークメモリとして機能する。そして、受信バッファ121は外部I/F113によって受信された印刷データを一時的に記憶し、中間バッファ122は制御部116が変換した中間コードデータを記憶し、出力バッファ123はドットパターンデータを記憶する。なお、このドットパターンデータは、階調データをデコード(翻訳)することにより得られる印字データによって構成してある。
【0044】
また、ROM115には、各種データ処理を行わせるための制御プログラム(制御ルーチン)の他に、フォントデータ、グラフィック関数等を記憶させてある。制御部116は、受信バッファ121内の印刷データを読み出すと共に、この印刷データを変換して得た中間コードデータを中間バッファ122に記憶させる。また、中間バッファ122から読み出した中間コードデータを解析し、ROM115に記憶させているフォントデータ及びグラフィック関数等を参照して、中間コードデータをドットパターンデータに展開する。そして、制御部116は、必要な装飾処理を施した後に、この展開したドットパターンデータを出力バッファ123に記憶させる。
【0045】
そして、液体噴射ヘッド118の1行分に相当するドットパターンデータが得られたならば、この1行分のドットパターンデータは、内部I/F120を通じて液体噴射ヘッド118に出力される。また、出力バッファ123から1行分のドットパターンデータが出力されると、展開済みの中間コードデータは中間バッファ122から消去され、次の中間コードデータについての展開処理が行われる。
【0046】
プリントエンジン112は、液体噴射ヘッド118と、紙送り機構124と、キャリッジ機構125とを含んで構成してある。紙送り機構124は、紙送りモータとプラテン8等から構成してあり、記録紙等の印刷記憶媒体を液体噴射ヘッド118の記録動作に連動させて順次送り出す。即ち、この紙送り機構124は、印刷記憶媒体を副走査方向に相対移動させる。
【0047】
キャリッジ機構125は、液体噴射ヘッド118を搭載可能なキャリッジ3と、このキャリッジ3を主走査方向に沿って走行させるキャリッジ駆動部とから構成してあり、キャリッジ3を走行させることによりインクジェット式記録ヘッド118を主走査方向に移動させる。なお、キャリッジ駆動部は、上述したように駆動モータ6及びタイミングベルト7等で構成されている。
【0048】
液体噴射ヘッド118は、副走査方向に沿って多数のノズル開口を有し、ドットパターンデータ等によって規定されるタイミングで各ノズル開口からインク滴を吐出する。そして、このような液体噴射ヘッド118の圧電素子300には、図示しない外部配線を介して電気信号、例えば、後述する駆動信号(COM)や印字データ(SI)等が供給される。なお、このように構成されるプリンタコントローラ111及びプリントエンジン112では、駆動信号発生回路119から出力された所定の駆動波形を有する駆動信号を選択的に圧電素子300に入力するラッチ132、レベルシフタ133及びスイッチ134等が駆動手段となる。このように構成された液体噴射ヘッド118では、圧電素子300に電圧が印加されると、圧電素子300が撓むことによって振動板が変位し、圧力発生室12が収縮することによってノズル開口21から液滴が吐出される。
【0049】
図5は、液体噴射ヘッドの電気的構成を示す概略図であり、図6は、圧電素子に駆動パルスを印加する手順を示す図である。ここで、液体噴射ヘッド118の電気的構成について説明する。液体噴射ヘッド118は、図5に示すように、シフトレジスタ131、ラッチ132、レベルシフタ133、スイッチ134及び圧電素子300等を備えている。さらに、図6に示すように、これらのシフトレジスタ131、ラッチ132、レベルシフタ133、スイッチ134及び圧電素子300は、それぞれ、液体噴射ヘッド118の各ノズル開口21毎に設けたシフトレジスタ素子131A〜131N、ラッチ素子132A〜132N、レベルシフタ素子133A〜133N、スイッチ素子134A〜134N、圧電素子300A〜300Nから構成してあり、シフトレジスタ131、ラッチ132、レベルシフタ133、スイッチ134、圧電素子300の順で電気的に接続してある。なお、これらのシフトレジスタ131、ラッチ132、レベルシフタ133及びスイッチ134は、駆動信号発生回路119が発生した吐出駆動信号や緩和駆動信号から駆動パルスを生成する。ここで、駆動パルスとは実際に圧電素子300に印加される印加パルスのことである。
【0050】
次に、このような電気的構成を有する液体噴射ヘッド118の制御について説明する。まず、圧電素子300に駆動パルスを印加する手順について説明する。上述したような電気的構成を有する液体噴射ヘッド118では、図6に示すように、最初に発振回路117からのクロック信号(CK)に同期して、ドットパターンデータを構成する印字データ(SI)が出力バッファ123からシフトレジスタ131へシリアル伝送され、順次セットされる。この場合、まず、全ノズル開口21の印字データにおける最上位ビットのデータがシリアル伝送され、この最上位ビットのデータシリアル伝送が終了したならば、上位から2番目のビットのデータがシリアル伝送される。以下同様に、下位ビットのデータが順次シリアル伝送される。
【0051】
そして、当該ビットの印字データが全ノズル分シフトレジスタ素子131A〜131Nにセットされたならば、制御部116は、所定のタイミングでラッチ132へラッチ信号(LAT)を出力させる。このラッチ信号により、ラッチ132は、シフトレジスタ131にセットされた印字データをラッチする。このラッチ132がラッチした印字データ(LATout)は、電圧増幅器であるレベルシフタ133に印加される。このレベルシフタ133は、印字データが例えば「1」の場合に、スイッチ134が駆動可能な電圧値、例えば、数十ボルトまでこの印字データを昇圧する。そして、この昇圧された印字データはスイッチ素子134A〜134Nに印加され、スイッチ素子134A〜134Nは、当該印字データにより接続状態になる。
【0052】
そして、各スイッチ素子134A〜134Nには、駆動信号発生回路119が発生した駆動信号(COM)も印加されており、スイッチ素子134A〜134Nが接続状態になると、このスイッチ素子134A〜134Nに接続された圧電素子300A〜300Nに駆動信号が印加される。このように、例示した液体噴射ヘッド118では、印字データによって圧電素子300に吐出駆動信号を印加するか否かを制御することができる。例えば、印字データが「1」の期間においてはラッチ信号(LAT)によりスイッチ134が接続状態となるので、駆動信号(COMout)を圧電素子300に供給することができ、この供給された駆動信号(COMout)により圧電素子300が変位(変形)する。また、印字データが「0」の期間においてはスイッチ134が非接続状態となるので、圧電素子300への駆動信号の供給は遮断される。なお、この印字データが「0」の期間において、各圧電素子300は直前の電位を保持するので、直前の変位状態が維持される。
【0053】
図7(a)は、圧電素子の容量−電位曲線を示す図であり、図7(b)は、圧電素子の変位−電位曲線を示す図であり、図7(c)は、駆動信号を表す駆動波形を示す図である。ここで図7を参照して本実施形態の駆動信号を表す駆動波形について説明する。圧電素子300を構成する圧電体層70は、上述のようにリラクサ強誘電体からなり、この圧電体層70で構成された圧電素子300の容量−電位特性(C−V特性)を示すC−V曲線では、図7(a)に示すように、圧電素子は、電位V1(−V1)で容量が最大となると共に電位V2(−V2)でC−V曲線の変曲点となる。
【0054】
また、図7(a)に示すC−V曲線で表されるC−V特性を有する圧電体層70で構成された圧電素子300の電位と変位との関係としては、図7(b)に示すような変位−電位曲線を示す。この変位−電位曲線では、容量が最大となる電位V1から変曲点となる電位V2までの間(電位−V1から電位−V2までの間)の駆動電圧を用いた圧電素子300の駆動では、圧電素子300の大きな変位を得ることができる。また、電位V1から電位V2までの間の電位を用いた駆動電圧に比べ、電位−V1から電位V1までの間の駆動電圧で圧電素子300を駆動しても圧電素子300の小さな変位しか得られず、さらに、電位V2よりも大きな電位(または電位−V2よりも小さな電位)の範囲を用いた駆動電圧で圧電素子300を駆動しても、圧電素子300に大きな変位を得られない。このことから、電位V1から電位V2までの間の電位を用いた駆動電圧により圧電素子300を駆動して変位させることで、小さな駆動電圧で効率よく所望の変位を得ることができる。なお、以下、本実施形態では、電位V1及び電位V2が正極性のC−V曲線を用いて説明する。
【0055】
また、圧電素子300に入力される本実施形態の駆動信号(COM)を表す駆動波形は、図7(c)に示すように、液滴を吐出する吐出工程140と、圧電素子300の歪み履歴(ヒステリシス)を緩和する緩和工程150と、圧電素子300の歪み履歴を初期化する初期化工程160とで構成された矩形波であり、印字データに応じて駆動波形の吐出工程140が圧電素子300に入力されることで、液体噴射ヘッド118から液滴が吐出される。
【0056】
ここで、本実施形態の液体噴射ヘッド118は、いわゆる「引き打ち」方式のものであり、駆動波形の吐出工程140は、中間電位VMを維持した状態から駆動開始電位V0まで降下させて圧力発生室12を膨張させる第1の膨張工程141と、駆動開始電位V0を一定時間維持する第1のホールド工程142と、駆動開始電位V0から最大電位V3まで上昇させて圧力発生室12を収縮させることによって液滴を吐出させる収縮工程143と、最大電位V3を一定時間維持する第2のホールド工程144と、最大電位V3から中間電位VMまで降下させる第2の膨張工程145とで構成されている。
【0057】
この駆動開始電位V0は、図7(a)に示す圧電素子300の容量が最大となる電位V1と、この電位V1と同極性で且つ圧電素子300の容量の変曲点となる電位V2との間の電圧である。本実施形態では、圧電素子300を構成する圧電体層70として、例えば、膜厚が0.5μmであるPMN−PTを用いたので、圧電素子300が最大容量となる電位V1が1.0V、電位V1と同極性で且つ圧電素子300の容量の変曲点となる電位V2が5.0Vとなるため、駆動開始電位V0を1.0Vよりも大きく且つ5.0Vよりも小さな電位とすればよい。
【0058】
また、最大電位V3は、圧電素子300に駆動開始電位V0から最大電位V3まで電圧を印加することによって、圧電体層70に電界強度が100〜500kV/cmの駆動電界を発生させる電位となっている。この、圧電体層70に発生させる100〜500kV/cmの電界強度とは、駆動電圧/(圧電体層70の膜厚)となる。本実施形態では、圧電体層70として、PMN−PTからなるリラクサ強誘電体を膜厚が0.5μmで形成したため、電界強度が100〜500kVとなる駆動電圧は5.0〜25Vであり、このような駆動電圧となる最大電位V3を駆動開始電位V0の値から適宜設定すればよい。
【0059】
また、圧電体層70として用いられるリラクサ強誘電体は、PZTなどの圧電体に比べて電界誘起歪みが1.2%程度と大きい分、誘電率が非常に大きく、通常の駆動では駆動電荷量が大きくなってしまう。この駆動電荷量は図7(a)に示すC−V曲線の積分で表され、例えば、駆動開始電位を電位零から電位V1の間の電位V4とし、この電位V4から最大電位V3までの電圧を印加して圧電素子300を駆動すると、領域200に示すように駆動電荷量が大きくなる。このことから、駆動開始電位V0を電位V1から電位V2までの間とすることで、領域201に示すように駆動電荷量を著しく大きくすることなく圧電素子300に比較的大きな変形を行わせることができる。これにより、圧電素子300を低電圧で消費電流を低減させた駆動を行わせることができ、回路に与える負荷を低減して、液体噴射ヘッド118を、例えば、600dpiの高密度化及び多ノズル化しても、また、圧電素子300を同時に駆動しても駆動IC及び配線を破壊することがない。
【0060】
また、この駆動波形の吐出工程140では、第2の膨張工程145において、最大電位V3から中間電位VMまで電位を下げることにより、圧電素子300の変位を戻すようにしているが、実際には、圧電素子300の歪みは十分に緩和されず、圧電素子300の変位が維持されてしまう。このため、駆動波形の吐出工程140の複数回毎に駆動波形の緩和工程150及び初期化工程160の駆動波形を圧電素子300に入力することにより、圧電素子300の歪みを緩和させるようになっている。
【0061】
ここで、駆動波形の緩和工程150は、電位を中間電位VMから、初期駆動電位V0よりも小さく且つ同極性の電位V4まで下降させる下降工程151と、電位V4を一定時間維持するホールド工程152と、電位V4から中間電位VMまで上昇させる上昇工程153とで構成されている。そして、このような緩和工程150によって、圧電素子300の吐出工程140に伴う歪みを緩和させることができるので、次の吐出工程140でも、圧電素子300を初回と同じ歪みで駆動し、安定した液滴の吐出を行わせることができる。
【0062】
また、駆動波形の初期化工程160は、電位を中間電位VMから、−V3となる電位V5まで下降させる下降工程161と、電位V5を一定時間維持するホールド工程162と、電位V5から中間電位VMまで上昇させる上昇工程163とで構成されている。そして、このような初期化工程160によって、緩和工程150では緩和できない圧電素子300の歪みを初期化して、次の吐出工程140でも、圧電素子300を初回と同じ歪みで駆動し、安定した液滴の吐出を行わせることができる。
【0063】
なお、本実施形態の圧電素子300を構成する圧電体層70は、リラクサ強誘電体からなり、PZT等の圧電体に比べて歪みの履歴(ヒステリシス)が微小であるという特徴がある。このため、このような緩和工程150及び初期化工程160は、吐出工程140と吐出工程140との間に必ず入力する必要はなく、吐出工程140が複数回行われた後に圧電素子300に入力されればよい。また、緩和工程150又は初期化工程160は、それぞれを複数回毎の吐出工程140の間に入力するようにしてもよく、両方を複数回毎の吐出工程140の間に入力するようにしてもよい。
【0064】
また、緩和工程150及び初期化部160の上昇工程153、163の傾きは、特に限定されないが、ノズル開口21に形成された液体のメニスカスの振動に影響を与えない程度に比較的小さくするのが好ましい。これは、本実施形態の液体噴射ヘッド118では、上昇工程153、163によって圧電素子300が駆動されると圧力発生室12が収縮されてメニスカスには液滴が吐出される方向の振動が発生するため、上昇工程153、163の傾きを大きくすると液滴が誤吐出される虞があるためである。また、上昇工程153、163の傾きをあまり小さくすると、インク滴の吐出間隔を長くとらなければならず高速駆動ができなくなるため、上昇工程153、163の傾きは、メニスカスの振動に影響を与えない程度にできるだけ大きくすることが望ましい。
【0065】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態1を説明したが、本発明の構成は上述したものに限定されるものではない。上述した実施形態1では、圧電素子300のC−V曲線として、電位V1及び電位V2が正極性のものを用いた駆動波形を例示したが、特にこれに限定されず、圧電素子300のC−V曲線の電位V1及び電位V2が負極性のものを用いてもよい。この電位V1及び電位V2が負極性の場合は、電位V3が圧電素子300の圧電体層70に所定の電界強度を発生させる最小の電位となる。
【0066】
また、上述した実施形態1では、圧電素子300のC−V曲線で表されるC−V特性により、駆動開始電位V0を規定する電位V1及び電位V2を求めるようしたが、特にこれに限定されず、駆動開始電位V0を規定する電位V1及び電位V2をC−V曲線と同等の曲線となる誘電率−電位特性(ε−V特性)から求めるようにしても同等の値を得ることができる。さらに、上述した実施形態1では、成膜及びリソグラフィプロセスを応用して製造される薄膜型の液体噴射ヘッドを例にしたが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の液体噴射ヘッドにも本発明を採用することができる。
【0067】
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッドの全般を対象としたものであり、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレー等のカラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレー、FED(面発光ディスプレー)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。勿論、このような液体噴射ヘッドを搭載した液体噴射装置も特に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態1に係る液体噴射装置の概略図である。
【図2】 実施形態1に係る液体噴射ヘッドの分解斜視図である。
【図3】 実施形態1に係る液体噴射ヘッドの平面図及び断面図である。
【図4】 実施形態1に係る液体噴射装置の制御構成を示す図である。
【図5】 実施形態1に係る液体噴射ヘッドの電気的構成を示す図である。
【図6】 実施形態1に係る駆動パルスの印加手順を示す図である。
【図7】 実施形態1に係る圧電素子の特性及び駆動波形を示す図である。
【符号の説明】
10 流路形成基板、12 圧力発生室、20 ノズルプレート、21 ノズル開口、30 封止基板、50 弾性膜、60 下電極膜、70 圧電体層、80 上電極膜、100 リザーバ、111 プリンタコントローラ、112 プリントエンジン、118 液体噴射ヘッド、300 圧電素子
Claims (7)
- ノズル開口に連通する圧力発生室が形成される流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられる下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子とを具備する液体噴射ヘッドの駆動方法において、
前記圧電素子の各層が成膜及びリソグラフィ法により形成されていると共に、前記圧電体層がリラクサ強誘電体からなり、当該圧電素子の容量−電位曲線で、当該圧電素子の容量が最大となる電位V1と、この電位V1の絶対値より大きな絶対値となり且つ前記容量−電位曲線の変曲点となる電位V2との間の電圧を駆動開始電位V0とすると共に、該駆動開始電位V0から前記圧電体層に電界強度が100〜500kV/cmの駆動電界を発生させる電位V3まで変化させることで前記圧力発生室を収縮させて前記ノズル開口から液滴を吐出させる吐出工程を有する駆動波形を用いて前記圧電素子を駆動することを特徴とする液体噴射ヘッドの駆動方法。 - 前記駆動波形は前記吐出工程の前に、前記駆動開始電位V0と同極性で且つ当該駆動開始電位V0の絶対値よりも大きな絶対値となる中間電位から当該駆動開始電位V0まで変化させて前記圧力発生室を膨張させる第1の膨張工程を有することを特徴とする請求項1記載の液体噴射ヘッドの駆動方法。
- 前記駆動波形は前記吐出工程の後に、前記電位V3から当該電位V3と同極性で且つ前記電位V3の絶対値よりも小さな絶対値となる中間電位まで変化させて前記圧力発生室を膨張させる第2の膨張工程を有することを特徴とする請求項1又は2記載の液体噴射ヘッドの駆動方法。
- 前記駆動波形は前記吐出工程の後に、所定の中間電位から前記駆動開始電位V0と同極性で且つ当該駆動開始電位V0の絶対値よりも小さな絶対値となる電位V4まで変化させると共に、前記電位V4から前記中間電位まで戻す緩和工程をさらに有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の液体噴射ヘッドの駆動方法。
- 前記駆動波形は前記吐出工程の後に、所定の中間電位から−V3となる電位V5まで変化させると共に、前記電位V5から前記中間電位まで戻す初期化工程をさらに有することを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の液体噴射ヘッドの駆動方法。
- 前記圧電体層の膜厚が、0.5〜1.0μmであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の液体噴射ヘッドの駆動方法。
- ノズル開口に連通する圧力発生室が形成される流路形成基板と、該流路形成基板の一方面側に振動板を介して設けられる下電極、圧電体層及び上電極からなる圧電素子とを具備する液体噴射ヘッドが搭載された液体噴射装置において、
前記圧電素子の各層が成膜及びリソグラフィ法により形成されていると共に、前記圧電体層がリラクサ強誘電体からなり、当該圧電素子の容量−電位曲線で、当該圧電素子の容量が最大となる電位V1と、この電位V1の絶対値より大きな絶対値となり且つ前記容量−電位曲線の変曲点となる電位V2との間の電圧V0を駆動開始電位V0とすると共に、該駆動開始電位V0から前記圧電体層に電界強度が100〜500kV/cmの駆動電界を発生させる電位V3まで変化させることで前記圧力発生室を収縮させて前記ノズル開口から液滴を吐出させる吐出工程を有する駆動波形を前記圧電素子に出力する駆動手段を具備することを特徴とする液体噴射装置。
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