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JP3896167B2 - 像安定光学装置 - Google Patents

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JP3896167B2
JP3896167B2 JP15105894A JP15105894A JP3896167B2 JP 3896167 B2 JP3896167 B2 JP 3896167B2 JP 15105894 A JP15105894 A JP 15105894A JP 15105894 A JP15105894 A JP 15105894A JP 3896167 B2 JP3896167 B2 JP 3896167B2
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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ダンピング素子を用いて発振を機構的に低減させることにより像安定機能を高めた像安定光学装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図9は、従来の像安定光学装置の内部構造を示す斜視図である。この装置は具体的には双眼鏡であり、筺体(図示せず)内には1つの回動軸1を有するジンバル懸架部2が配置されており、ジンバル懸架部2によって正立プリズム3、4が対物レンズ系5、6及び接眼レンズ系7、8の間において回動自在に支持されている。
【0003】
また、ジンバル懸架部2の下部には角速度センサ9が取り付けられ、回動軸1の一端にはポテンショメータ10が取り付けられている。回動軸1の他端には、角速度センサ9及びポテンショメータ10の検出信号に基づいて、ジンバル懸架部2を回動させる回転駆動モータ11が取り付けられている。そして、回転駆動モータ11をフィードバック制御する制御系(図示せず)が組まれており、正立プリズム3、4の静止した空間(正確には慣性空間)に対する角度は常に一定に保たれる。
【0004】
このように構成された従来の像安定光学装置によれば、手ぶれ等の外乱に対して正立プリズム3、4の慣性空間に対する角度が安定化され、この双眼鏡の像安定機能が達成される。像安定機能が達成されることの詳細な理由は、例えば特公昭57−37852号公報に記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、外乱に対する安定性を向上させるために、回転駆動モータ11のフィードバック制御系のサーボゲインを上げると、発振が生じてしまうという問題がある。これは、フィードバックループ中に存在する各種の要素、すなわち角速度センサ9、ポテンショメータ10、回路系、回転駆動モータ11等の応答が遅れることによる信号の時間遅れによって、フィードバック信号に位相遅れが発生するためである。
【0006】
一方、発振はゲインを下げると収まるが、この場合には慣性空間に対する正立プリズム3、4の角度の安定精度が低下してしまう。また、回路中に位相進み回路等を付加する手段も知られているが、これにも機構系とのマッチングの問題やその効果に限度がある等の問題がある。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ジンバル懸架部等にダンピング素子を取り付けることにより発振を機構的に低減させ、サーボゲインを上げることを可能とし、手ぶれ等の外乱に対する高い像安定機能を有する像安定光学装置を得ることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、筺体に固着された対物レンズ系及び接眼レンズ系と、筺体に対してチルティング方向に回動自在に取り付けられたジンバル懸架部と、対物レンズ系及び接眼レンズ系の間に配置され、ジンバル懸架部を介して筺体に装着され、チルティング方向に回動可能となっている正立プリズムと、慣性空間に対するジンバル懸架部のチルティング方向に関する回転角速度を検出する角速度センサと、慣性空間に対するジンバル懸架部のチルティング方向に関する回転角度を検出するポテンショメータと、角速度センサにより検出された回転角速度及びポテンショメータにより検出された回転角度に基づき、慣性空間に対する正立プリズムのチルティング方向の角度が変化しないように演算されたフィードバック制御信号を駆動回路にて一定のゲインで増幅した出力信号により駆動制御され、ジンバル懸架部を筺体に対してチルティング方向に回動させる回転駆動手段と、ジンバル懸架部または正立プリズムのうちの少なくとも1つに取り付けられ、回転駆動手段の駆動制御における発振を低減させる粘弾性体とを備えている。
【0009】
粘弾性体には付加質量が取り付けられていてもよい。
【0010】
請求項3に係る発明は、筺体に固着された対物レンズ系及び接眼レンズ系と、筺体に対してチルティング方向に回動自在に取り付けられたジンバル懸架部と、対物レンズ系及び接眼レンズ系の間に配置され、ジンバル懸架部を介して筺体に装着され、チルティング方向に回動可能となっている正立プリズムと、ジンバル懸架部または正立プリズムのうちの少なくとも1つに取り付けられたガイド手段と、ガイド手段に沿って移動可能な付加質量と、付加質量に対してガイド手段に沿う方向の弾性力を与える弾性体と、付加質量に対してガイド手段に沿う方向の粘性力を与える粘性体と、慣性空間に対する正立プリズムのチルティング方向に関する回転角度情報を検出する角度情報検出手段と、回転角度情報に基づいて正立プリズムを筺体に対してチルティング方向に回動させ、慣性空間に対する正立プリズムのチルティング方向の角度が変化しないようにする回転駆動手段とを備えている。
【0011】
ジンバル懸架部の一部は筺体に対してパンニング方向にも回動自在に取り付けられ、正立プリズムは筺体に対してパンニング方向にも回動可能となっており、角度情報検出手段は慣性空間に対する正立プリズムのパンニング方向に関する回転角度情報をも検出し、回転駆動手段は回転角度情報に基づいて正立プリズムを筺体に対してパンニング方向にも回動させ、慣性空間に対する正立プリズムのパンニング方向の角度も変化しないようにするものであってもよい。
【0012】
また、これらの場合、正立プリズム、対物レンズ系及び接眼レンズ系がそれぞれ2つ設けられ、双眼鏡であってもよい。
【0013】
請求項6に係る発明は、筺体に固着された2つの対物レンズ系及び2つの接眼レンズ系と、筺体に対してチルティング方向に回動自在に取り付けられたジンバル懸架部と、それぞれが1組の対物レンズ系及び接眼レンズ系の間に配置され、パンニング方向に回動自在にジンバル懸架部に装着され、筺体に対してチルティング方向及びパンニング方向に回動自在となっている2つの正立プリズムと、2つの正立プリズムを接続し、これらがパンニング方向に回動する角度を等しくするリンクと、慣性空間に対する正立プリズムのチルティング方向及びパンニング方向に関する回転角速度を検出する角速度センサと、慣性空間に対する正立プリズムのチルティング方向及びパンニング方向に関する回転角度を検出するポテンショメータと、角速度センサにより検出された回転角速度及びポテンショメータにより検出された回転角度に基づき、慣性空間に対する正立プリズムのチルティング方向及びパンニング方向の角度が変化しないように演算されたフィードバック制御信号を駆動回路にて一定のゲインで増幅した出力信号により駆動制御され
ジンバル懸架部を筺体に対してチルティング方向及びパンニング方向に回動させる回転駆動手段と、ジンバル懸架部、正立プリズムまたはリンクのうちの少なくとも1つに取り付けられ、回転駆動手段の駆動制御における発振を低減させる粘弾性体とを備えている。
【0014】
この場合、粘弾性体には付加質量が取り付けられていてもよい。
【0015】
請求項8に係る発明は、筺体に固着された2つの対物レンズ系及び2つの接眼レンズ系と、筺体に対してチルティング方向に回動自在に取り付けられたジンバル懸架部と、それぞれが1組の対物レンズ系及び接眼レンズ系の間に配置され、パンニング方向に回動自在にジンバル懸架部に装着され、筺体に対してチルティング方向及びパンニング方向に回動自在となっている2つの正立プリズムと、2つの正立プリズムを接続し、これらがパンニング方向に回動する角度を等しくするリンクと、ジンバル懸架部、正立プリズムまたはリンクのうちの少なくとも1つに取り付けられたガイド手段と、ガイド手段に沿って移動可能な付加質量と、付加質量に対してガイド手段に沿う方向の弾性力を与える弾性体と、付加質量に対してガイド手段に沿う方向の粘性力を与える粘性体と、慣性空間に対する正立プリズムのチルティング方向及びパンニング方向に関する回転角度情報を検出する角度情報検出手段と、回転角度情報に基づいて正立プリズムを筺体に対してチルティング方向及びパンニング方向に回動させ、慣性空間に対する正立プリズムのチルティング方向及びパンニング方向の角度が変化しないようにする回転駆動手段とを備えている。
【0016】
【作用】
本発明においては、粘弾性体、付加質量等からなる小型のダンピング素子をジンバル懸架部等に取り付けることにより、制御対象の発振を機構的に低減させる。これにより、回転駆動手段をフィードバック制御する制御系のゲインを上げることを可能とし、慣性空間に対する正立プリズムの角度の安定性を向上させる。
【0017】
【実施例】
以下、添付図面に沿って本発明の実施例について説明する。なお、図面において同一又は相当部分には同一符号を用いるものとする。図1は、本実施例の像安定光学装置、具体的には双眼鏡の内部構造を示す斜視図である。本実施例の像安定光学装置は1対の対物レンズ系5、6、1対の接眼レンズ系7、8、及び1対の正立プリズム3、4を備えており、対物レンズ5、接眼レンズ7、正立プリズム3は第1の望遠鏡系12を構成し、対物レンズ6、接眼レンズ8、正立プリズム4は第2の望遠鏡系13を構成している。そして、この第1、第2の望遠鏡系12、13の1対が双眼鏡系を構成している。
【0018】
1対の対物レンズ系5、6、及び1対の接眼レンズ系7、8は双眼鏡の筺体に固着されている。1対の正立プリズム3、4は、双眼鏡の左右方向(対物レンズ5、6の配列方向)に伸びる回転軸1を有するジンバル懸架部2を介して双眼鏡の筺体に装着され、チルティング方向に回動自在となっている。
【0019】
上記の1対の対物レンズ系5、6、1対の接眼レンズ系7、8、1対の正立プリズム3、4、ジンバル懸架部2、回動軸1等の適切な配設位置については、例えば、前述の特公昭57−37852号公報に記載されている。
【0020】
さて、本実施例の像安定光学装置においては、ジンバル懸架部2に角速度センサ9が固設されている。角速度センサ9としては、圧電振動ジャイロセンサ等を使用することができる。この角速度センサ9は、筺体の上下方向(図1に示した矢印A方向)の手ぶれに伴ってジンバル懸架部2が矢印B方向に回動した場合に、この回転角速度ωを検出するセンサである。
【0021】
上記回動軸1の一端には、この角速度センサ9及び後述するポテンショメータ10からの検出値に基づき、正立プリズム3、4を筺体のぶれに対して常に初期の姿勢に戻すように、換言すれば、正立プリズム3、4の慣性空間に対する角度が変化しないように、ジンバル懸架部2の回動軸1を回動させる回転駆動モータ11が取り付けられている。回動軸1の他端には、角速度センサ9による速度フィードバック制御に加えて位置フィードバック制御を行うための、回動軸1の回転角度θを検出するポテンショメータ10が取り付けられている。
【0022】
なお、角速度センサ9及びポテンショメータ10には、それらの出力信号を増幅する増幅器(図示せず)が接続されている。増幅された信号はCPU(図示せず)に入力され、CPUはこの信号に基づいて正立プリズム3、4を元の姿勢に戻すために必要な回転駆動モータ11の駆動量を演算し、この演算に基づく制御信号を出力する。CPUからの制御信号は、モータ駆動回路(図示せず)によって増幅され回転駆動モータ11に入力される。
【0023】
さらに、ジンバル懸架部2の上下面には、それぞれダンピング素子20が取り付けられている。図2はダンピング素子20の詳細を示す図である。このダンピング素子20は、ジンバル懸架部2に固着された基部21と、基部21に接着された粘弾性体22と、粘弾性体22に接着された円板状の付加質量23とから構成されている。ここで、粘弾性とは、変位に比例する力を発生する性質(バネ等の性質)と速度に比例した抵抗力を発生する性質とをあわせもつ性質である。基部21からは、ねじ部24が突出しており、ねじ部24がジンバル懸架部2の外面に設けられたねじ穴(図示せず)と嵌合することによって、ジンバル懸架部2にダンピング素子20を取り付けることができる。
【0024】
なお、粘弾性体22のみでも質量をもつことから付加質量23は必ずしも必要ではなく、粘弾性体22のみでもダンピング効果は有する。また、図2において粘弾性体22は円錐台形状をなしているが、円柱形状、角錐形状、角錐台形状等であってもよい。
【0025】
次に、図1に示した系の運動を解析する。まず、その準備としてダンピング素子20が取り付けられていない系、すなわち図9に示した系の運動を解析する。図3は、図9に示した系を表現したブロック線図である。図3において、まず、ジンバル懸架部2の角速度ωすなわちdθ/dtが、伝達関数G( s) を有する角速度センサ9によって検出される。角速度センサ9の出力信号は、ゲインKAMP を有するモータ駆動回路によって増幅され、回転駆動モータ11に印加される。回転駆動モータ11はトルク定数KT を有しており、供給された電流に比例したトルクを発生し、このトルクは外乱によるトルクTF ( s) とともにジンバル懸架部2に付加される。付加されたトルクをジンバル懸架部2の慣性モーメントIで割り、時間tで積分すれば、角速度ωすなわちdθ/dtとなる。
【0026】
図3のブロック線図より、外乱トルクと角速度との関係を求めると、
【0027】
【数1】
Figure 0003896167
【0028】
のようになる。この関係により、ダンピング素子20が取り付けられていない場合に外乱トルクが存在すると発振が生じることがわかる。このため、何らかの発振抑制のための手段が必要であり、図9に示した従来例においては制御系によって発振を抑制していた。図1に示した本発明の実施例においては、発振抑制手段としてジンバル懸架部2にダンピング素子20を取り付けるとともに、制御系の作用により発振を抑制している。
【0029】
次に、ダンピング素子20をジンバル懸架部2に取り付けた系、すなわち図1に示した系の運動を解析する。図4はジンバル懸架部2及びダンピング素子20から成る系を示した図である。図4において、Id 、θd は付加質量23のそれぞれ慣性質量、角度であり、k、Bは粘弾性体22のそれぞれ弾性、粘性を示す係数であり、I、θはジンバル懸架部2のそれぞれ慣性質量、角度であり、Tは回転駆動モータ11及び外乱からジンバル懸架部2に加えられるトルクであり、Tm はジンバル懸架部2から付加質量23に加えられるトルクである。
【0030】
この系の運動は、力学公式により以下のように記述される。
【0031】
【数2】
Figure 0003896167
【0032】
これをラプラス変換すると、
【0033】
【数3】
Figure 0003896167
【0034】
となり、整理してトルクと角度の関係にまとめると、
【0035】
【数4】
Figure 0003896167
【0036】
となる。従って、トルクと角速度の関係は、
【0037】
【数5】
Figure 0003896167
【0038】
で示される。
【0039】
ここで得られたトルクと角速度との関係を図3のブロック線図に代入すると、図1の系の運動特性を示すものとして、図5のブロック線図が得られる。このように制御対象が変化する結果、手ぶれ等の外乱に対する発振は機構的に低減される。従って、制御系のサーボゲインを上げることが可能となり、外乱に対する高い像安定機能を有する像安定光学装置を得ることができるのである。
【0040】
図6にダンピング素子の他の例を示す。図6( a) はジンバル懸架部2の構成を示す斜視図であり、図6( b) 〜( e) はジンバル懸架部2に取り付けられた各種のダンピング素子である。図6( b) は、ジンバル懸架部2の側面に粘弾性体25を取り付け、粘弾性体25に付加質量26を接着したものである。図6( c) は、ジンバル懸架部2の上面に粘弾性体25を取り付け、粘弾性体25に付加質量26を接着したものである。図6( d) は、ジンバル懸架部2の側面に2枚のゴム板27を取り付け、これらの間に付加質量28を接着したものである。この場合にはゴム板27が粘弾性体となる。図6( e) は、ジンバル懸架部2の側面に2枚の金属板29を取り付け、これらの間にガイド手段たる棒30を渡し、棒30にパイプ状の付加質量31を装着したものである。付加質量31と2枚の金属板29との間には弾性体たるバネ32が入れられ、さらに付加質量31と棒30との間には粘性体たるグリース(図示せず)が注入されている。バネ32及びグリースによって付加質量31にそれぞれ弾性力及び粘性力が与えられる。従って、バネ32及びグリースが図2の場合の粘弾性体22と同様の役割を果たす。
【0041】
次に、別の実施例について説明する。図7は、手ぶれによって筺体が左右方向(図7に示した矢印C方向)に揺動した場合にも、安定した像を観察することができる像安定光学装置の内部構造を示す斜視図である。この像安定光学装置のジンバル懸架部は、筺体に対してチルティング方向に揺動可能に取り付けられた外側ジンバル33と、外側ジンバル33に対してパンニング方向に揺動可能に取り付けられた内側ジンバル34とから構成されており、正立プリズム3、4は内側ジンバル34に固着されている。従って、正立プリズム3、4は、筺体に対してチルティング方向及びパンニング方向に揺動可能となっている。
【0042】
角度情報検出手段としては、図1と同様の角速度センサ9及びポテンショメータ10の他、慣性空間に対する正立プリズム3、4のパンニング方向の角速度を検出する角速度センサ(図示しないが、内側ジンバル34に取り付けられている)と、外側ジンバル33に対する内側ジンバル34のパンニング方向の回転角度を検出するポテンショメータ35とが新たに設けられている。また、回転駆動手段として、角度情報検出手段によって得られた回転角度情報に基づいて内側ジンバル34を外側ジンバル33に対してパンニング方向に回動させる回転駆動モータ36が新たに設けられている。
【0043】
これら角速度センサ及びポテンショメータ35によって検出される回転角度情報に基づいて、回転駆動モータ36の回転が制御され、慣性空間に対する正立プリズム3、4のパンニング方向の角度が変化しないようにされる。
【0044】
この実施例においては、ダンピング素子20は内側ジンバル34に取り付けられている。このため、チルティング方向の他、パンニング方向についても、手ぶれ等の外乱に対する発振は機構的に低減されている。従って、回転駆動モータ36の制御系のサーボゲインを上げることが可能となり、パンニング方向についても像安定機能が達成され、非常に良好な観察を行うことが可能な像安定光学装置を得ることができる。
【0045】
図8はさらに別の構成による像安定双眼鏡の内部構造を示す斜視図である。2つの正立プリズム3、4は、それぞれ回動軸371 、372 を介してパンニング方向に回動自在にジンバル懸架部2に装着されている。従って、正立プリズム3、4は筺体に対してチルティング方向及びパンニング方向に回動自在となっている。2つの正立プリズム3、4の間はリンク38によって接続され、正立プリズム3、4がパンニング方向に回動する角度は等しくされている。正立プリズム3、4の側面には、それぞれダンピング素子39が取り付けられている。ダンピング素子39は図2に示したものと同様の構成となっている。ただし粘弾性体の形状は円柱形となっている。
【0046】
角度情報検出手段としては、図7と同様、チルティング方向及びパンニング方向についての、2つの角速度センサ(図示せず)及び2つのポテンショメータ (一方は10、他方は図示せず)が設けられており、慣性空間に対する正立プリズム3、4のチルティング方向及びパンニング方向の角速度と、筺体に対するジンバル懸架部2の回転角度と、ジンバル懸架部2に対する正立プリズム3、4の回転角度とが検出される。また、回転駆動手段として、ジンバル懸架部2を筺体に対して回動させる回転駆動モータ11の他、正立プリズム3、4をジンバル懸架部2に対してパンニング方向に回転させる回転駆動モータ40が設けられている。
【0047】
なお、正立プリズム3、4の間はリンク38によって接続されているため、パンニング方向の角速度センサ、ポテンショメータや回転駆動モータは、それぞれ1つだけ設けられていればよい。
【0048】
図7の場合と同様に、これらの角速度センサ及びポテンショメータによって検出される回転角度情報に基づいて、回転駆動モータ11、40の回転が制御され、慣性空間に対する正立プリズム3、4のチルティング方向及びパンニング方向の角度が変化しないようにされる。
【0049】
この実施例においては、ダンピング素子39は正立プリズム3、4に取り付けられている。このため、チルティング方向の他、パンニング方向についても、手ぶれ等の外乱に対する発振は機構的に低減されている。従って、回転駆動モータ11、40の制御系のサーボゲインを上げることが可能となり、パンニング方向についても像安定機能が達成され、非常に良好な観察を行うことが可能な像安定光学装置を得ることができる。
【0050】
なお、図7及び図8の実施例においても、ダンピング素子としては、図6に示すような各種のものを取り付けることができる。
【0051】
また、ダンピング素子20、39等は、小型、軽量、低コストで製作も容易なものである。従って、振動の抑制と同時に、像安定光学装置の小型化、軽量化、低コスト化及び製作の容易化を図ることができる。そして、ダンピング素子20、39等によって発振がある程度まで機構的に低減されているため、サーボ系による振動低減が容易かつ効果的になり、サーボ系の設計の自由度が向上する。
【0052】
また、以上の説明においては、像安定機能を有する光学装置は双眼鏡であるとしたが、この光学装置は望遠鏡、カメラ等であってもよい。
【0053】
【発明の効果】
以上のように、本発明においては、ジンバル懸架部等にダンピング素子を取り付けることにより発振を機構的に低減させ、回転駆動手段の制御系のサーボゲインを上げることを可能としている。従って、手ぶれ等の外乱に対する高い像安定機能を有する像安定光学装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の像安定光学装置、具体的には双眼鏡の内部構造を示す斜視図である。
【図2】ダンピング素子の詳細を示す斜視図である。
【図3】ダンピング素子を設けていない系を表現したブロック線図である。
【図4】ジンバル懸架部とダンピング素子から成る系を示す図である。
【図5】ダンピング素子を設けた系を表現したブロック線図である。
【図6】ダンピング素子の他の各種の例を示す図である。
【図7】像安定光学装置の別の実施例の内部構造を示す斜視図である。
【図8】像安定光学装置のさらに別の実施例の内部構造を示す斜視図である。
【図9】従来の像安定光学装置の内部構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
2…ジンバル懸架部、3、4…正立プリズム、5、6…対物レンズ、7、8…接眼レンズ、9…角速度センサ(角度情報検出手段)、10、35…ポテンショメータ(角度情報検出手段)、11、36、40…回転駆動モータ(回転駆動手段)、20、39…ダンピング素子、22、25…粘弾性体、23、26、28、31…付加質量、27…ゴム板(粘弾性体)、30…棒(ガイド手段)、32…バネ(弾性体)、33…外側ジンバル、34…内側ジンバル、38…リンク。

Claims (8)

  1. 筺体に固着された対物レンズ系及び接眼レンズ系と、
    前記筺体に対してチルティング方向に回動自在に取り付けられたジンバル懸架部と、
    前記対物レンズ系及び前記接眼レンズ系の間に配置され、前記ジンバル懸架部を介して前記筺体に装着され、チルティング方向に回動可能となっている正立プリズムと、
    慣性空間に対する前記ジンバル懸架部のチルティング方向に関する回転角速度を検出する角速度センサと、
    慣性空間に対する前記ジンバル懸架部のチルティング方向に関する回転角度を検出するポテンショメータと、
    前記角速度センサにより検出された回転角速度及び前記ポテンショメータにより検出された回転角度に基づき、慣性空間に対する前記正立プリズムのチルティング方向の角度が変化しないように演算されたフィードバック制御信号を駆動回路にて一定のゲインで増幅した出力信号により駆動制御され、前記ジンバル懸架部を前記筺体に対してチルティング方向に回動させる回転駆動手段と、
    前記ジンバル懸架部または前記正立プリズムのうちの少なくとも1つに取り付けられ、前記回転駆動手段の駆動制御における発振を低減させる粘弾性体と、
    を備えた像安定光学装置。
  2. 前記粘弾性体に取り付けられた付加質量を備えたことを特徴とする請求項1に記載の像安定光学装置。
  3. 筺体に固着された対物レンズ系及び接眼レンズ系と、
    前記筺体に対してチルティング方向に回動自在に取り付けられたジンバル懸架部と、
    前記対物レンズ系及び前記接眼レンズ系の間に配置され、前記ジンバル懸架部を介して前記筺体に装着され、チルティング方向に回動可能となっている正立プリズムと、
    前記ジンバル懸架部または前記正立プリズムのうちの少なくとも1つに取り付けられたガイド手段と、
    前記ガイド手段に沿って移動可能な付加質量と、
    前記付加質量に対して前記ガイド手段に沿う方向の弾性力を与える弾性体と、
    前記付加質量に対して前記ガイド手段に沿う方向の粘性力を与える粘性体と、
    慣性空間に対する前記正立プリズムのチルティング方向に関する回転角度情報を検出する角度情報検出手段と、
    前記回転角度情報に基づいて前記正立プリズムを前記筺体に対してチルティング方向に回動させ、慣性空間に対する前記正立プリズムのチルティング方向の角度が変化しないようにする回転駆動手段と、
    を備えた像安定光学装置。
  4. 前記ジンバル懸架部の一部は筺体に対してパンニング方向にも回動自在に取り付けられ、前記正立プリズムは前記筺体に対してパンニング方向にも回動可能となっており、前記角度情報検出手段は慣性空間に対する前記正立プリズムのパンニング方向に関する回転角度情報をも検出し、前記回転駆動手段は前記回転角度情報に基づいて前記正立プリズムを前記筺体に対してパンニング方向にも回動させ、慣性空間に対する前記正立プリズムのパンニング方向の角度も変化しないようにすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の像安定光学装置。
  5. 前記正立プリズム、前記対物レンズ系及び前記接眼レンズ系がそれぞれ2つ設けられ、双眼鏡であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の像安定光学装置。
  6. 筺体に固着された2つの対物レンズ系及び2つの接眼レンズ系と、
    前記筺体に対してチルティング方向に回動自在に取り付けられたジンバル懸架部と、
    それぞれが1組の前記対物レンズ系及び前記接眼レンズ系の間に配置され、パンニング方向に回動自在に前記ジンバル懸架部に装着され、前記筺体に対してチルティング方向及びパンニング方向に回動自在となっている2つの正立プリズムと、
    前記2つの正立プリズムを接続し、これらがパンニング方向に回動する角度を等しくするリンクと、
    慣性空間に対する前記正立プリズムのチルティング方向及びパンニング方向に関する回転角速度を検出する角速度センサと、
    慣性空間に対する前記正立プリズムのチルティング方向及びパンニング方向に関する回転角度を検出するポテンショメータと、
    前記角速度センサにより検出された回転角速度及び前記ポテンショメータにより検出された回転角度に基づき、慣性空間に対する前記正立プリズムのチルティング方向及びパンニング方向の角度が変化しないように演算されたフィードバック制御信号を駆動回路にて一定のゲインで増幅した出力信号により駆動制御され、前記ジンバル懸架部を前記筺体に対してチルティング方向及びパンニング方向に回動させる回転駆動手段と、
    前記ジンバル懸架部、前記正立プリズムまたは前記リンクのうちの少なくとも1つに取り付けられ、前記回転駆動手段の駆動制御における発振を低減させる粘弾性体と、
    を備えた像安定光学装置。
  7. 前記粘弾性体に取り付けられた付加質量を備えたことを特徴とする請求項6に記載の像安定光学装置。
  8. 筺体に固着された2つの対物レンズ系及び2つの接眼レンズ系と、
    前記筺体に対してチルティング方向に回動自在に取り付けられたジンバル懸架部と、
    それぞれが1組の前記対物レンズ系及び前記接眼レンズ系の間に配置され、パンニング方向に回動自在に前記ジンバル懸架部に装着され、前記筺体に対してチルティング方向及びパンニング方向に回動自在となっている2つの正立プリズムと、
    前記2つの正立プリズムを接続し、これらがパンニング方向に回動する角度を等しくするリンクと、
    前記ジンバル懸架部、前記正立プリズムまたは前記リンクのうちの少なくとも1つに取り付けられたガイド手段と、
    前記ガイド手段に沿って移動可能な付加質量と、
    前記付加質量に対して前記ガイド手段に沿う方向の弾性力を与える弾性体と、
    前記付加質量に対して前記ガイド手段に沿う方向の粘性力を与える粘性体と、
    慣性空間に対する前記正立プリズムのチルティング方向及びパンニング方向に関する回転角度情報を検出する角度情報検出手段と、
    前記回転角度情報に基づいて前記正立プリズムを前記筺体に対してチルティング方向及びパンニング方向に回動させ、慣性空間に対する前記正立プリズムのチルティング方向及びパンニング方向の角度が変化しないようにする回転駆動手段と、
    を備えた像安定光学装置。
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