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JP3871594B2 - 硬化促進剤及びセメント組成物 - Google Patents

硬化促進剤及びセメント組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメントの硬化促進剤に関し、詳しくは、セメントペースト、モルタル又はコンクリートの凝結硬化を促進して早期強度を発現させるセメント用の硬化促進剤及びセメント組成物であり、土木建築構造物の施工の合理化、早期開放(道路舗装など)及びコンクリート二次製品の早期脱型として使用される。
【0002】
【従来の技術】
従来、土木建築構造物のコンクリートの設計強度は、材齢28日又は91日で発現するが、型枠を外して次のコンクリートを打設することが可能な強度となるまでに数日から1週間程度を要している。
また、道路などでは仮開放強度3.5N/mm2(曲げ強度)を発現させるのに1週間程度掛かっている。型枠を外して次のコンクリートを打設することが可能な強度又は仮開放強度をより早く発現させることができれば、より経済的で合理的な施工が可能となる。
コンクリート二次製品においても、蒸気養生の時間がより短くて脱型可能な強度が発現できれば製品の製造サイクルを高めることが出来るので経済的で合理的な生産計画が可能となる。さらに、コンクリート強度の発現性状は温度に影響されるので冬季は特に早期に強度を発現するセメント及びセメントの硬化促進剤が必要となる。
このような目的のために、早強セメントよりも強度発現の速い超早強セメントが昭和40年代半ばにOne Day Cementとして開発され、JIS規格化されたが、現在では一社を除いて製造されていないのが実状である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
セメントの硬化促進剤としては、多数の無機化合物や有機化合物が知られている。
無機化合物としては、古典的な塩化カルシウムなどの塩化物、硝酸塩や亜硝酸塩、溶解度の高い硫酸塩や亜硫酸塩及び明礬類や明礬石などのアルミニウム化合物、チオ硫酸塩やチオシアン酸塩、さらにクロム酸塩などが有り、加えて硬化促進剤よりも強力な急結剤としては、アルカリ金属の炭酸塩、重炭酸塩、ケイ酸塩及びアルミン酸塩などが知られている。
有機化合物としては、ギ酸塩や酢酸塩、アミノ酸化合物が知られ、急結剤としてはトリエタノールアミンが知られている。
しかしながら、これらの硬化促進剤は、普通ポルトランドセメントに対してはそれなりの効果を発揮するが、普通ポルトランドセメントよりも水和反応速度が速い早強ポルトランドセメントに対してはその銘柄によって効果がある場合と、全くない場合もあり、さらに早期強度が低下する場合があるなどの課題を有している。
さらに、複数の硬化促進剤を組み合わせてもいずれかの硬化促進剤の効果に偏り相乗効果が見いだせないという課題も有する。
一方、消石灰を蒸気養生するコンクリート製品の早期脱型に利用する方法は、既に提案(特公昭57-011866号公報)されているが、この方法は、セメントに不溶性無水石膏と消石灰及び/又は軟焼の生石灰を添加したコンクリートを成型し、練上り温度よりも35〜55℃高い温度で蒸気養生して短時間に脱型強度を得るというものであり、消石灰と硬化促進剤の中でも特定の硬化促進剤との併用で相乗的な硬化促進作用を達成出来るとする記載はない。
本発明者は、セメントの種類や銘柄に関係なく安定した硬化促進作用を発揮するセメントの硬化促進剤を提供する目的として鋭意研究した結果、多数ある硬化促進剤の中の特定成分を組み合わせることによって達成できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、消石灰と、チオ硫酸塩及び/又はギ酸塩とを含有してなる硬化促進剤であり、消石灰の粉末度が、 5000cm 2 /g 以上である該硬化促進剤であり、消石灰と、チオ硫酸塩及び/又はギ酸塩との配合割合を質量比で97/3〜5/95とする該硬化促進剤である。さらに、セメントと、該硬化促進剤とを含有するセメント組成物であり、該硬化促進剤が、セメント100質量部に対して、 0.2〜10質量部である該セメント組成物であり、セメントと、消石灰、並びに、チオ硫酸塩及び/又はギ酸塩を含有してなる硬化促進剤とを含有することを特徴とするセメント組成物である。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0006】
本発明の消石灰とは、特に限定されるものではないが、生石灰(主成分は酸化化カルシウムCaO)を消化させたもの(主成分は水酸化カルシウムCa(OH)2)でよく、多少の不純物を含有していても使用可能である。また、焼成ドロマイトや遊離石灰(f-CaO)を含む市販の膨張材を消化させたものを使用してもよい。
本発明の消石灰の粉末度は、セメントと同等のブレーン比表面積(JIS R5201)3000cm2/g以上でよいが、細かい方がより硬化促進作用を示すので5000cm2/g以上が好ましく、6000cm2/g以上がより好ましい。
【0007】
本発明の消石灰と併用する硬化促進剤としては、チオ硫酸塩及び/又はギ酸塩であり、これらのナトリウムやカリウムのアルカリ金属塩、及びカルシウム、マグネシウムのアルカリ土類金属塩である。これらは特に限定されるものではなく、一般に工業用として市販されているものが使用できる。
なお、消石灰と併用して相乗的に安定した硬化促進作用を示すのは前記の凝結促進剤であり、消石灰と併用しないでチオ硫酸塩及び/又はギ酸塩(以下、チオ硫酸塩等という)だけの組合わせでは相乗効果は得られない。
また、本発明の消石灰とチオ硫酸塩等の組合わせにおいて、チオ硫酸塩等の種類によっても相乗効果の程度は異なり、アルカリ金属塩か、アルカリ土類金属塩かによっても差が示される。アルカリ金属塩は、アルカリ土類金属塩よりも早期強度は高くなるが長期強度の伸びは抑えられる傾向を示し、アルカリ土類金属塩は早期強度は低めとなるが、長期強度の伸びは阻害しない傾向を示す。
以上より、本発明においては、初期強度を重視するか、長期強度を重視するかで好ましい組合わせを選択することができる。
【0008】
本発明の硬化促進剤において、消石灰と、チオ硫酸塩等(無水塩として)の配合割合は、質量比で97/3〜5/95が好ましく、セメント100質量部に対して0.2〜10質量部配合されることが好ましい。この配合割合よりも消石灰が多くチオ硫酸塩等が少なかったり、消石灰が少なくチオ硫酸塩等が多くなったりすると相乗的促進効果は小さくなるので、より好ましくは96/4〜10/90、さらに好ましくは95/5〜20/80である。
【0009】
本発明の硬化促進剤は、常温養生においてはセメント100質量部に対する添加量が0.2質量部以下では促進効果が小さく、10質量部を超えると強度の伸びはより抑えられるので好ましくない。
また、蒸気養生する場合においても0.2質量部未満では早期に脱型強度は得られ難く、10質量部を超えると脱型時強度は大きく低下しないが、その後の強度の伸びが阻害されるものであり、いずれの養生方法においても、好ましくは0.5〜8質量部であり、より好ましくは1〜6質量部である。
【0010】
本発明において、使用するセメントの種類は、特に限定されるものではないが、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低発熱ポルトランドセメントなどの各種ポルトランドセメント、及び高炉スラグセメント、フライアッシュセメント、シリカセメントなどの混合セメントなどであり、水硬性の高いセメントほど早期強度は高くなる傾向を示す。
【0011】
本発明において、リグニンスルホン酸塩系やポリオール系、オキシカルボン酸塩系などの一般的な減水剤や高性能減水剤及び高性能AE減水剤も使用される。中でも、減水率の大きいポリアルキルアリルスルホン酸塩系やメラミン樹脂スルホン酸塩系などの高性能減水剤、ポリカルボン酸塩系の高性能AE減水剤が好ましい。
【0012】
本発明において、コンクリート強度をより高強度化するために、石膏を主成分とする高強度混和材やシリカフュームやメタカオリン、及び20ミクロン以下に分級したフライアッシュなどの活性シリカを主成分とする高強度混和材を併用することができる。さらに、ひび割れを低減するためやケミカルプレストレストコンクリートを製造するために、市販の膨張材を併用することも出来る。
【0013】
本発明において、硬化促進剤の使用方法は、特に限定されるものではないが、(1)粉砕した消石灰とチオ硫酸塩等を混合したものをコンクリートを練混ぜるときに添加する方法や、(2)両者を混合して粉砕したものをコンクリートを練混ぜるときに添加する方法及び(3)練混ぜ水に懸濁してスラリー状態としたものをコンクリートを練混ぜるときに投入することができる。
中でも、硬化促進作用を助長させ、計量やミキサへの投入のハンドリング性を考慮すると、練混ぜ水の一部に消石灰やチオ硫酸塩等が分離しない濃度で懸濁してスラリー状態としたものをコンクリートを練混ぜるときに投入する方法がより好ましい。
【0014】
本発明において、コンクリートに添加して練混ぜるに際し、特別な方法は必要なく、通常のミキサを使用して、他のコンクリート材料と一緒に硬化促進剤をミキサに投入して、通常の練混ぜ時間で練混ぜることができる。
【0015】
【実施例】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明するが、これらに限られるものではない。
【0016】
実施例1
市販の早強ポルトランドセメント700g、新潟県姫川産川砂1120g、水200g、高性能減水剤原液(ポリアルキルアリルスルホン酸塩系)10gのモルタルに、セメント100質量部に対して消石灰とチオ硫酸塩等の種類と配合割合を変えて添加した。なお、消石灰とチオ硫酸塩等は、粉末状態でセメントに軽く混合して外割添加(砂と置き換えて添加)して練混ぜた。
練混ぜたモルタルは、4×4×16cmの3連型枠に成型し、標準養生した時の材齢1日(1本)と28日(2本)強度を測定した。なお、モルタルの練混ぜと供試体の成型、圧縮強度の測定方法はJIS R 5201によるセメントの物理試験方法によった。消石灰とチオ硫酸塩等の配合と測定結果を表1、表2、表3に示す。
【0017】
「使用材料」
「消石灰」:ガス焼き生石灰を消化させたもの、Ca(OH)2の含有量は98質量%
A-1:ブレーン比表面積3200cm2/g
A-2:ブレーン比表面積5110cm2/g
A-3:ブレーン比表面積6090cm2/g
A-4:ブレーン比表面積8120cm2/g
「チオ硫酸塩等」
B:無水チオ硫酸ナトリウム、工業用市販品
C:ギ酸カルシウム、工業用市販品
D:硝酸カルシウム、工業用市販品
E:硝酸ナトリウム、工業用市販品
F:亜硝酸カルシウム、試薬
G:アルミン酸カリウム、工業用市販品(比較例)
H:硫酸マグネシウム、工業用市販品(比較例)
「セメントの銘柄」
a:a社早強ポルトランドセメント
b:b社早強ポルトランドセメント
c:c社早強ポルトランドセメント
d:d社早強ポルトランドセメント
e:a社普通ポルトランドセメント
【0018】
【表1】
Figure 0003871594
【0019】
【表2】
Figure 0003871594
【0020】
【表3】
Figure 0003871594
【0021】
表1より、消石灰とチオ硫酸塩等の質量比が97/3よりも消石灰が多く、チオ硫酸塩等が少なくなっても、又は、5/95よりも消石灰が少なく、チオ硫酸塩等が多くなっても1日強度の発現は小さく、97/3〜5/95の質量比の範囲内で顕著に1日強度は増加し、より好ましくは96/4〜10/90、さらに好ましくは95/5〜20/80の範囲であることが判る(実験No.1-2〜No.1-22)。
また、表1、2より、アルカリ金属塩とアルカリ土類金属塩ではアルカリ金属塩の方が1日強度は高くなる傾向を示すが、28日強度はアルカリ土類金属塩の方が高くなることが判る(実験No.1-3〜No.1-12、実験No.1-14〜No.1-22、実験No.2-3〜No.2-12)。
さらに、本発明のチオ硫酸塩等以外の促進剤や急結剤では、消石灰との併用効果は示されない(実験No.2-17、No.2-18)。
消石灰の粉末度が大きくなると1日強度は順次増加するが、粉末度が5000cm2/gを超えるとほぼ飽和に達する(実験No.1-18、No.2-14〜No.2-16)。
表3より、硬化促進剤のセメント100質量部に対する添加量は、0.2質量部以上で1日強度は増加するが、10質量部を超えると1日及び28日強度も急に低下してくるので、これ以上の添加はより強度の低下が予測される。
したがって、好ましくは0.5〜8質量部であり、より好ましくは1〜6質量部である(実験No.3-1〜No.3-8)。
セメントの銘柄によってチオ硫酸塩やチオ硫酸塩とギ酸塩等の通常の硬化促進剤同士の組合わせでは、硬化促進効果が示される場合とそうでない場合があり、中には強度が低下する銘柄もあるが、本発明の消石灰との併用では、銘柄に関係なく安定した強度促進効果が得られる(実験No.3-9〜No.3-21)。
【0022】
実施例2
実施例1の実験No.1-1〜No.1-12、No.3-1〜No.3-8のモルタルの空気量を2%(体積)とし、1m3となるように粗骨材(最大寸法25mmの砂利)を配合したコンクリートを練混ぜて供試体を作製し、標準養生における材齢1日と28日強度を測定した結果を表4に示す。
なお、消石灰とチオ硫酸塩等は、粉末状態でセメントに軽く混合して外割添加で練混ぜた。また、水比を変えないために加水などによるスランプ合わせはしなかったが、スランプは5〜12cmの範囲であった。
供試体の作製方法と強度測定方法は、JIS A 1132とJIS A 1108に準じた。
【0023】
【表4】
Figure 0003871594
【0024】
表4より、コンクリート強度は、モルタル強度とほぼ同様であることが判る。
【0025】
実施例3
実施例2の実験No.4-13〜No.4-20のコンクリートを練混ぜるに際して、消石灰とチオ硫酸塩等を練混ぜ水の一部と懸濁して投入し、実施例2と同様の試験を行った。その結果を表5に示す。
【0026】
【表5】
Figure 0003871594
【0027】
表5より、本発明の硬化促進剤は、粉末状態で添加するよりは懸濁してスラリーで添加する方が高い強度が発現する(実験No.4-13〜No.4-20、No.5-1〜No.5-8)。
【0028】
実施例4
実施例2の実験No.4-1、実験No.4-13〜No.4-20のa社の早強ポルトランドセメントをa社の普通ポルトランドセメントに変えて練り混ぜたコンクリートを横型のφ10×20cmのキャップレス型枠に成形して、20℃で1時間前養生してから45℃で1時間養生し、さらに70℃で2時間蒸気養生してから取り出して0.5時間放置冷却した後の脱型強度と、その後、20℃の室内で気乾養生した材齢7日強度を表6に示す。なお、消石灰とチオ硫酸塩等は、粉末状態でセメントに軽く混合して外割添加で練混ぜた。
【0029】
【表6】
Figure 0003871594
【0030】
表6より、蒸気養生した場合も標準養生と同様に、脱型強度については硬化促進剤は添加率効果を示し、添加量が多くなってもそれほど強度低下しないが、材齢7日強度は硬化促進剤のセメント100質量部に対する添加量が8質量部を超えると低下し、10質量部を超えるとさらに強度は低下することが判る。
【0031】
【本発明の効果】
本発明のセメントの硬化促進剤を使用することにより、
▲1▼セメントの種類や銘柄に関係なく安定した硬化促進作用が得られ、早期強度が増大する。
▲2▼蒸気養生においても同様の早期強度発現が得られる。
▲3▼土木建築構造物に使用すると打ち継ぐまでの時間が短縮されるので経済的・合理的な建設が行える。コンクリート製品工場では合理的な生産計画が行える。
などの効果を奏する。

Claims (6)

  1. 消石灰と、チオ硫酸塩及び/又はギ酸塩とを含有してなる硬化促進剤。
  2. 消石灰の粉末度が、 5000cm 2 /g 以上である請求項1に記載の硬化促進剤。
  3. 消石灰と、チオ硫酸塩及び/又はギ酸塩との配合割合を質量比で97/3〜5/95とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の硬化促進剤。
  4. セメントと、請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載の硬化促進剤とを含有することを特徴とするセメント組成物。
  5. 硬化促進剤が、セメント100質量部に対して、 0.2〜10質量部であることを特徴とする請求項4に記載のセメント組成物。
  6. セメントと、消石灰、並びに、チオ硫酸塩及び/又はギ酸塩を含有してなる硬化促進剤とを含有することを特徴とするセメント組成物。
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