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JP7573402B2 - セメント混和材、膨張材、及びセメント組成物 - Google Patents

セメント混和材、膨張材、及びセメント組成物 Download PDF

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Description

本発明は、例えば、土木・建築分野において使用されるセメント混和材、膨張材、及びセメント組成物に関する。
セメント・コンクリートのひび割れ低減は、コンクリート構造物の信頼性、耐久性、美観等の観点から重要であり、これらを改善する効果のあるセメント混和材、すなわち、セメント系膨張材のさらなる技術の進展が望まれている。
これまで、少ない添加量で優れた膨張特性を有するコンクリート膨張材(特許文献1)や、遊離石灰の表面を炭酸カルシウムで被覆したセメント用膨張材(特許文献2)等が提案されている。また近年、膨張材と収縮低減剤の併用が提案されている(特許文献3)。一方、無水セッコウと、チオシアン酸塩と、チオ硫酸塩及び/又はシリカ微粉末とを含有してなるセメント混和材、それとセメントを含有してなるセメント組成物、また、初期強度発現性や中性化の抑制効果等の効果を奏するγ-CSとチオ硫酸塩からなるセメント混和材も提案されている(特許文献4、特許文献5)。
特開2002-029792号公報 特開昭54-93020号公報 特開2003-12352号公報 特開平9-156977号公報 特開2004-51420号公報
しかしながら、これらのセメント混和材は、強度、あるいは収縮補償を増進させる効果を有するものの、セメント・コンクリートの強度増進及び収縮補償効果を同時に飛躍的向上させるものではなかった。
以上から、本発明は、施工後に強度増進及び収縮補償効果を発揮し得るセメント混和材、膨張材、及びセメント組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討を行った結果、特定のセメント混和剤を含有させ、かつ、セメント混和材中の塩化物イオンの量を特定の範囲にすることで、上記課題を解決できることを見出した。すなわち本発明は下記のとおりである。
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用する。
[1] セメント混和剤と、膨張物質とを含むセメント混和材であって、前記セメント混和剤がチオ硫酸塩を含み、前記セメント混和材に含まれる塩化物イオンの量が、0.04mg/g~2.0mg/gである、セメント混和材。
[2] 前記セメント混和剤のpHが6~9、酸化還元電位が-50~0mV、固形分濃度が20~60%である[1]に記載のセメント混和材。
[3] 前記チオ硫酸塩がチオ硫酸ナトリウムである[1]又は[2]に記載のセメント混和材。
[4] 前記膨張物質100質量部に対し、前記セメント混和剤における前記チオ硫酸塩が0.3~8質量部である、[1]~[3]のいずれかに記載のセメント混和材。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載のセメント混和材からなる膨張材。
[6] [5]に記載のセメント混和材を含有してなるセメント組成物。
本発明によれば、施工後に強度増進・収縮補償効果を発揮し得るセメント混和材を提供することができる。
以下、本発明の実施形態(本実施形態)について詳細に説明する。なお、本明細書で使用する部や%は特に規定のない限り質量基準である。
[1.セメント混和材]
本実施形態のセメント混和材は、セメント混和剤と、膨張物質とを含む。そして、セメント混和剤がチオ硫酸塩を含み、セメント混和材に含まれる塩化物イオンの量が、0.04mg/g~2.0mg/gである。
本実施形態においては、セメント混和剤であるチオ硫酸塩と、膨張物質とを含むことで初期強度発現性を向上させることができるため、セメント・コンクリートの施工後に高い強度(特に、強度増進)が得られる。また、本発明では、セメント混和材に含まれる塩化物イオンの量に着目し、施工後の強度増進に塩化物イオンの量が影響することを突き止めた。すなわち、セメント混和材に含まれる塩化物イオンの量が、0.04mg/g未満だと、セメント混和材のワーカビリティーが低下してしまい、また、強度の低下をもたらしてしまう。塩化物イオンの量が、2.0mg/gを超えると、強度の低下をもたらしてしまう。
セメント混和材に含まれる塩化物イオンの量は、0.05~2.0mg/gであることが好ましく、0.1~1.7mg/gであることがより好ましく、0.2~1.5mg/gであることがさらに好ましく、0.6~1.3mg/gであることがよりさらに好ましい。
セメント混和材に含まれる塩化物イオンの量は、例えば、セメント混和材を作製する際に塩化物イオンを含有する混和剤を添加して調整することができる。また、塩化物イオンの量は後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
(セメント混和剤)
本実施形態に係るセメント混和剤はチオ硫酸塩を含み、セメント混和材に添加して、主にブリーディング率の低減、ワーカビリティーの向上及びコンクリートの施工後に高い強度発現(特に、強度増進)に寄与する混和剤をいう。
ここで、ブリーディング率とは、後述する実施例記載する方法で測定される材料分離の割合をいう。
セメント混和剤におけるチオ硫酸塩の含有量は、上記の効果を十分に発揮する観点から、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
チオ硫酸塩以外に含有し得るものとしては、塩素、フッ素、硫黄等が挙げられる。
なお、セメント混和剤はそれ単独でも使用できるが、セメント等と混合した混合物として使用に供することもできる。
また、ブリーディング率の低減、ワーカビリティーの向上及びコンクリートの施工後に高い強度発現に寄与する観点から、セメント混和剤のpHは5~10であることが好ましく、6~9であることがより好ましい。
ここで、セメント混和剤のpHとは、セメント混和剤30gに純水100mlを加え撹拌して混合物とした後の上澄み液のpHを意味し、pH計を用いることで測定することができる。そして、pHを5~10とするには、当該混合物に対して酸又はアルカリ等を添加して調整することができる。
さらにブリーディング率の低減、粘度の低減及びコンクリートの施工後に高い強度発現に寄与する観点から、セメント混和剤の酸化還元電位は-60~0mVであることが好ましく、-50~0mVであることがより好ましい。
ここで、セメント混和剤の酸化還元電位とは、セメント混和剤30gに純水100mlを加え撹拌して混合物とした後の上澄み液の酸化還元電位を意味し、酸化還元電位(ORP)計を用いることで測定することができる。そして、酸化還元電位を-60~0mVとするには、当該混合物に対して酸素をバブリングさせることで調整することができる。
チオ硫酸塩は特に限定されるものでなく、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カルシウム、チオ硫酸カリウム、チオ硫酸リチウム、チオ硫酸アンモニウム、またこれらの水和物等が挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。なかでもチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸カルシウムであることが好ましく、入手し易さからもチオ硫酸ナトリウムがより好ましい。チオ硫酸塩は1種又は2種以上を用いることができる。チオ硫酸塩は、潮解性があり、水溶性であるため、本発明で使用する場合、粉末で添加するか、もしくは混練水に溶解させて使用することが可能である。また、その粒度は特に限定されるものではない。
セメント混和剤における固形分濃度は、液体の安定性の観点から、20~70%であることが好ましく、30~50%であることがより好ましい。
セメント混和剤におけるチオ硫酸塩は、膨張物質100部に対し、0.2~8部であることが好ましく、0.3~5部であることがより好ましく、0.4~2部であることがさらに好ましく、なかでも、0.4~1部であることが好ましい。上記範囲であることで、ブリーディング率の低減、粘度の低減及びコンクリートの施工後に高い強度発現(特に、強度増進)に寄与することができる。
(膨張物質)
膨張物質は、セメント混和材に含有させることで収縮補償効果を発揮する。当該膨張物質としては、特に限定されるものではなく、市販品が使用可能であり、エトリンガイト系、エトリンガイト・石灰複合系、石灰系、マグネシウム系等が挙げられ、中でもエトリンガイト系膨張材、エトリンガイト・石灰複合系膨張材、石灰系がより良好な収縮補償効果と強度発現性、美観の観点から好ましい。
セメント混和材における膨張物質の含有量は、より良好な収縮補償効果の観点から、93~99.7%であることが好ましく、95.5~99.5%であることがより好ましい。
本発明は、既述のセメント混和材からなる膨張材であることが好ましい。
(セメント)
セメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ又はシリカを混合した各種混合セメント、石灰石粉末や石膏や高炉徐冷スラグ微粉末等を混合したフィラーセメント、ならびに、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)等のポルトランドセメント、ならびに、市販されている地盤改良工事で用いられるセメント系固化材、市販されている微粒子セメント等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上が使用可能である。また、通常セメントに使用されている成分量を増減して調整されたものも使用可能である。
セメント混和材は、例えば、セメント混和剤と膨張物質とを混合して作製することができる。
また、このときの酸化還元電位は、フレッシュコンクリートのブリーディング率の低減、粘度の低減及びコンクリートの施工後に高い強度発現の観点から、-100~25mVであることが好ましく、-50~10mVであることがより好ましい。なお、酸化還元電位の測定は既述のとおりに行う。
[2.セメント組成物]
本実施形態に係るセメント組成物は、既述のセメント混和材を含有してなる。ここで、セメント組成物で使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、低熱、及び中庸熱などの各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ、又はシリカを混合した各種混合セメント、石灰石粉末や高炉徐冷スラグ微粉末などを混合したフィラーセメント、並びに、都市ゴミ焼却灰や下水汚泥焼却灰を原料として製造された環境調和型セメント(エコセメント)などのポルトランドセメントが挙げられる。また、従来セメントに比べてCO排出量が少ないジオポリマーセメント、サルフォアルミネートセメント、石灰石焼成粘土セメント(LC3)も挙げられる。これらのうちの1種又は2種これらのうちの一種又は二種以上が使用可能である。なお、セメント混和材は本実施形態に係る膨張材であってもよい。
本実施形態では、セメント、セメント混和材、及び砂等の細骨材や砂利等の粗骨材の他に、早強剤、急硬材、減水剤、AE減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、凝結低減剤、水和熱抑制剤、高分子エマルジョン、ベントナイトなどの粘土鉱物、ハイドロタルサイトなどのアニオン交換体、高炉水砕スラグ微粉末や高炉徐冷スラグ微粉末などのスラグ、石灰石微粉末、シリカ質微粉末、石膏、ケイ酸カルシウム等の混和材料からなる群のうち一種又は二種以上を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することが可能である。また、有機系材料とし
て、ビニロン繊維、アクリル繊維、炭素繊維等の繊維状物質との併用も可能である。
セメント混和材(又は膨張材)の使用量(配合量)は、コンクリートの配合によって変化するため特に限定されるものではないが、通常、セメントとセメント混和材(又は膨張材)を含むセメント組成物100部中、3~12部が好ましく、4~7部がより好ましい。3部以上であることで充分な膨張性能が得られる。また、12部を以下であることで過膨張となることがなく、コンクリートに膨張クラックが生じるのを防ぐことができる。
セメント混和材(又は膨張材)の使用量(配合量)は、コンクリートの配合によって変化するため特に限定されるものではないが、通常、セメントとセメント混和材からなるセメント組成物100部中、1~20部が好ましく、2~17部がより好ましく、6~16部がさらに好ましい。セメント混和材の使用量が少ないと充分な収縮補償効果、ブリーディング抑制、ワーカビリティーの向上、施工後の強度増進効果が得られない場合がある。
本発明のセメント組成物の水/結合材比は、25~70%が好ましく、30~65%がより好ましい。水の配合量が少ないと、ポンプ圧送性や施工性が低下したり、収縮等の原因となったりする場合があり、水の配合量が過剰では強度発現性が低下する場合がある。ここで結合材とは、セメント、本発明に係るセメント混和材(又は膨張材)、及びその他混和材量の合計をいう。
本発明のセメント混和材やセメント組成物は、それぞれの材料を施工時に混合しても良いし、あらかじめ一部あるいは全部を混合しておいても差し支えない。
混合装置としては、既存の如何なる装置も使用可能であり、例えば、傾胴ミキサ、オムニミキサ、ヘンシェルミキサ、V型ミキサ、及びナウタミキサ等の使用が可能である。
以下、実施例、比較例を挙げてさらに詳細に内容を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<使用材料>
実施例及び比較例で使用した材料を以下に記す。
(チオ硫酸塩)
・チオ硫酸ナトリウム:一級試薬
・チオ硫酸カルシウム:一級試薬
(膨張物質)
・エトリンガイト系膨張材:デンカ社製の「デンカCSA#20」
・エトリンガイト・石灰複合系膨張材:デンカ社製の「デンカパワーCSA タイプS」
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品、ブレーン比表面積3,200cm/g
細骨材:セメント協会の「セメント強さ試験用標準砂」、密度2.64g/cm
[実施例1]
(セメント混和剤の調製)
表1に示すチオ硫酸塩を純水に所定の固形分濃度となるように入れ、スターラーで10分間攪拌させ、セメント混和剤を調製した。pHは水酸化ナトリウム水溶液を用いて調整し、ORPは酸素でバブリングさせ調整した。
(セメント混和材の調製)
次いで、膨張材100部に対して、調製したセメント混和剤を0.5部と、表1の塩化物イオン濃度となるように塩化物イオン含有混和剤(材質名:塩化ナトリウム)を混合し、セメント混和材を調製した。
(セメント組成物の調製)
調製したセメント混和材にさらにセメントを添加し、モルタルミキサーを用いて2分間混合して表1に示すセメント組成物を調製した。ただし、セメント混和材の配合量は表1に示すとおりとした。
(モルタル調製)
表1に示すセメント組成物100部、細骨材100部、そして水50部を混合してモルタルを作製した。作製したモルタルのブリーディングの有無を観察し、フロー、材齢3日から材齢28日にかけての圧縮強度の増進率、及び材齢7日の長さ変化率を測定した。結果を表1に併記する。
<セメント混和材中の塩化物イオン>
作製したセメント混和材について、JIS R 5202:2010「セメントの化学分析方法」に準拠して塩化物イオンを測定した。結果を下記表1に示す。
<ブリーディング>
土木学会標準示方書(JSCE-F542-2013)「充てんモルタルのブリーディング率および膨張率試験方法」に準じてブリーディング率を測定した。ブリーディング水がないものを○、ブリーディング水があるが採取不可能な僅かな量であるものを△、ブリーディング水があり採取可能なものを×とした。
<フロー試験>
JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に準じてモルタルを混練し、練り上り直後の15打点フロー値を測定した。温度、湿度、モルタルの配合は、圧縮強度試験と同一にした。試験では標準砂を使用した。
結果を下記表1に示す。
<圧縮強度>
JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に準じて4×4×16cmの試験体を作製し、材齢3日(3d)及び28日(28d)の圧縮強度を測定し、材齢3日から材齢28日にかけての圧縮強度の増進率を式1から求めた。結果を下記表1に示す。
[式1] 圧縮強度の増進率(%)=(材齢28日の圧縮強度-材齢3日の圧縮強度)/材齢3日の圧縮強度×100
<長さ変化率>
JIS A 6202:2017「コンクリート用膨張材」 附属書A「膨張材のモルタルによる膨張性試験方法」に準じて材齢7日の長さ変化率を測定した。長さ変化率は硬化収縮の抑制と寸法安定性を考慮すると、300~700μ(μ=10-6)であることが好ましい。
[実施例2~12、比較例1,2]
表1に示す配合、pH、酸化還元電位とした以外は実施例1と同様にしてセメント混和材を作製した。実施例1と同様にして塩化物イオンの量を測定した。また、セメントとセメント混和材との配合割合を表1に示すとおりとした以外は実施例1と同様にしてセメント組成物を作製した。実施例1と同様にしてフロー及び圧縮強度の測定を行った。これらの結果を表1に示す。

表1に示されているように、本発明によれば施工後に強度増進及び収縮補償効果を発揮することができる。

Claims (6)

  1. セメント混和剤と、膨張物質とを含むセメント混和材であって、前記セメント混和剤がチオ硫酸塩を含み、前記セメント混和材に含まれる塩化物イオンの量が、0.04mg/g~2.0mg/gであり、
    前記膨張物質が、エトリンガイト系、エトリンガイト・石灰複合系、石灰系、又は、マグネシウム系である、セメント混和材。
  2. 前記セメント混和剤のpHが6~9、酸化還元電位が-50~0mV、固形分濃度が20~60%である請求項1に記載のセメント混和材。
  3. 前記チオ硫酸塩がチオ硫酸ナトリウムである請求項1又は2に記載のセメント混和材。
  4. 前記膨張物質100質量部に対し、前記セメント混和剤における前記チオ硫酸塩が0.3~8質量部である、請求項1~3のいずれか1項に記載のセメント混和材。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載のセメント混和材からなる膨張材。
  6. 請求項5に記載のセメント混和材を含有してなるセメント組成物。
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