JP3866479B2 - 車間制御装置、記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自車を先行車に追従させて走行させるための車間制御に係る技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車の走行安全性を向上させると共に、運転者の操作負担を軽減するための技術として、自車を先行車に自動的に追従させる車間制御装置が知られている。その追従のさせ方としては、自車と先行車との実車間距離と予め設定された目標車間距離との偏差、相対速度及び相対加速度に基づいて加減速制御指令値を算出する方法が知られている。例えば特開平5−105047号においては、車間距離と目標車間距離との偏差及び相対速度に基づいて目標スロットル開度を算出すると共に、相対加速度と自車加速度から求めた先行車加速度に基づいて目標ブレーキ油圧を算出し、これらの指令値に基づき自車両を加減速制御する方法が開示されている。この公報に開示された技術は、「相対速度のわずかな変化によって制動操作が行われ乗員に不快な加速度を感じさせることを改善」するために、『制動制御中には一旦算出された目標ブレーキ油圧を減少させないよう制御』することで対処するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の公報に開示された手法では、先行車に追従中に、例えば車間距離センサの測定誤差などによって誤って相対速度や相対加速度が負である(つまり、その車両が自車に接近している)と判断して一旦制動制御を実行したときには、そのままブレーキ制御を継続してしまい、乗員に違和感を与えてしまうという問題があった。
【0004】
一般に、相対加速度は相対速度を微分して得ることができるため、実際には例えば「(相対速度今回値−相対速度前回値)/測距周期」という方法にて算出することができる(特許第2562090号参照)。但し、この方法によって算出する場合には、車間距離センサの距離・相対速度検出精度が十分でないと相対加速度は非常にノイジィな信号になってしまい、上述のような誤制御の問題を引き起こしてしまう。特にレーザレーダなどのように相対速度を直接的には検出できないセンサの場合には、距離の変化から相対速度を検出する必要があるため、相対加速度は距離の2次微分により算出することとなり、車間距離センサの測定誤差は相対加速度の精度に非常に大きな影響を与える。
【0005】
このように、相対加速度を車間制御に用いる場合には、この相対加速度の精度が重要な要素となるが、これまでは高精度な演算方法が実現されておらず、実際には車間制御への採用が不適切な相対加速度まで採用してしまっていた。
【0006】
そこで、本発明は、精度の高い相対加速度を用いることによって適切な車間制御を実現し、運転フィーリングを向上させることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の車間制御装置は、車間偏差、及び自車と先行車との相対速度に基づいて車間制御量を算出し、その算出された車間制御量に基づき加速手段及び減速手段を駆動制御することによって、自車を先行車に追従させて走行させるが、その算出された車間制御量を無条件に用いるのではなく、次のような補正を施してから用いる。すなわち、まず、先行車として選択された物体についての認識結果に基づき、その先行車が車両らしく正常に検知されているかどうかを判定する。そして、車両らしく正常に検知されていると判定された場合に限って、その先行車に対応する相対速度に基づいて相対加速度を算出し、その算出した相対加速度を用いて車間制御量を補正するのである。
【0009】
相対加速度を用いて補正した車間制御量に基づいて車間制御を実行すると、次のような効果が期待できる。すなわち、先行車が強く減速した場合であっても、その挙動変化を遅れることなく捉えることができ、適切なタイミングでの車両制御、つまりこの場合には減速制御を実行することができる。なぜなら、相対加速度は先行車の減速度合いの大小を反映するものであり、先行車が強く減速すれば相対加速度の絶対値は相対的に大きくなるため、その場合は、自車も早めに減速すればよい。例えば、先行車がブレーキ装置にて強い減速をした場合であっても、相対速度の変化や車間偏差の変化は、それが状態として現れるのにある程度の時間がかかるため、それらの値だけに基づくのでは先行車の減速挙動の検知が遅れ、初期減速制御の実行タイミングが遅れてしまう。しかし、先行車の減速挙動を反映可能な相対加速度に基づくことで、初期減速制御の実行タイミングが遅れることを防止でき、乗員に不安感を与えてしまう状況を回避できる。また、逆に定常的な追従で先行車が緩やかな車速変動をした場合においても、相対加速度に基づいて補正することで、先行車以上に車速変動しないように、あるいは補正前より車速変動を小さくするように制御することができ、ハンチング防止の点でも有効である。
【0010】
しかしながら、このような車間制御の応答性がよくなるという効果は常に生じるのではなく、車両として安定して検出できていない物体についての相対加速度を用いて補正してしまうと、不適切な方向へ車間制御量を補正しかねない。そこで、本発明装置では、先行車が車両らしく正常に検知されている場合に算出した相対加速度に限って補正に用いることにより、必要なときには応答性がよく、且つノイズ成分を抑えた「精度の高い」相対加速度を用いた補正を行うことができる。したがって、その補正された車間制御量に基づいて車間制御を実行することで適切な車間制御を実現し、運転フィーリングを向上させることができる。
そして、本発明の車間制御装置においては、正常検知状態判定手段が、「先行車が車両らしく正常に検知されていること」を以下のようにして判定している。つまり、物体認識手段にて算出した先行車までの距離を相対速度で除算して得た「自車と先行車との位置が同じになるまでに要する時間である接近時間」が通常の交通環境において取り得る範囲の値であることによって判定する。この接近時間に関して言えば、通常の交通環境においては、過小な接近時間はあり得ない。したがって、これから判定できる。
【0011】
一方、請求項2の車間制御装置でも同様の効果が期待できる。つまり、請求項1の車間制御装置では、車両らしく正常に検知されていると判定された場合に限って相対加速度を補正に用いるようにし、正常に検知されていない場合には相対加速度を補正に用いないようにしたが、請求項2の車間制御装置では、車両らしく正常に検知されていないと判定された場合には、その先行車の相対加速度を0として算出するのである。したがって、この場合には実質的に補正されないこととなり、精度の低い相対加速度を用いて補正がなされてしまうことを防止できる。
また、請求項1又は2記載の車間制御装置においては、請求項3,4に示すように、算出した相対加速度に対して所定のフィルタ処理を施し、そのフィルタ処理を施した相対加速度を用いて車間制御量を補正してもよい。この場合のフィルタ処理に際しては、次のような場合分けをしてなましの大小を変える。つまり、先行車までの距離が所定値以下であり、且つ先行車の相対速度の絶対値が所定値以下の場合には、なましの小さなフィルタ処理を実行する。これは、応答性が必要な「追従走行中」の状況であることが推測されるからである。一方、前記以外の応答性が必要でない場合には、なましの大きなフィルタ処理を実行する。これによって、十分な平滑化をして、誤った相対加速度による補正によって不適切な車間制御が実行されてしまうことを防止できる。
なお、このようになましの大小を変えたフィルタ処理を実行する際には、請求項4に示すようにしてもよい。つまり、車両らしく正常に検知されていると判定された先行車が、その後、正常に検知できる位置に存在するにもかかわらず車両らしく正常に検知されていないと判定された場合には、それ以降、車両らしく正常に検知されていると判定された場合であっても、常になましの大きなフィルタ処理を実行するのである。このような先行車(物体)は、検知状態が不安定であるため、誤った相対加速度による補正によって不適切な車間制御が実行されてしまうことを防止できる。
【0012】
なお、「車間物理量」と表現したのは、車間距離そのものではなく、例えば車間距離を自車の車速で除算した値(以下「車間時間」と称す)を用いても同様に実現でき、また、実際には、レーザ光あるいは送信波などを先行車に対して照射し、その反射光あるいは反射波の受けるまでの時間を検出して車間距離を算出しているため、その検出された時間そのものを用い、実時間と目標時間にて同様の制御を実行してもよいからである。つまり、車間距離に相当する物理量であれば実現可能なため、これらを含めて「車間物理量」と表した。
【0013】
また、「車間制御量」の一具体例としては目標加速度が挙げられるが、それ以外にも加速度偏差(目標加速度−実加速度)や、目標トルク、あるいは目標相対速度としてもよい。
【0014】
次に、これらの車間制御装置における正常検知状態判定手段が、どのようにして「先行車が車両らしく正常に検知されていること」を判定するかについていくつかの例を説明する。
(1)物体認識手段が当該先行車を新規に認識してから所定時間継続してその存在を認識し続けていることによって判定する(請求項5)。
【0015】
短時間しか認識できていない物体は不安定な検知状態であるため、そのような物体の相対加速度を補正に用いるのは適切でないからである。
(2)物体認識手段にて算出した相対速度に基づいて得た当該先行車の相対加速度が、車両として取り得る範囲の値であることによって判定する(請求項6)。
【0016】
過大な相対加速度を持つものは先行車でないか、正常に検出できていない可能性が高いため、そのような場合に補正しないようにするためである。
(3)物体認識手段にて算出した当該先行車の距離が、前回算出された距離と物体認識手段の距離算出精度から判断して妥当な値であることによって判定する(請求項7)。
【0017】
前回算出された距離と今回の距離との連続性が疑わしいとき、先行車が車両らしく正常に検知されていない可能性が高いと考えられる。このときに異常な相対加速度が出力されるおそれがあり、これに基づいて補正しないようにするためである。例えば、全長が長いトラックなどの場合に、荷台の後にある車両最後部(仮にA部と称す)と荷台の前にある運転席部分の後部(仮にB部と称す)とでは数m以上の間隔がある。その場合、A部に続いてB部を検出したり、逆にB部に続いてA部を検出することが考えられるが、その場合には、上述のように異常な相対加速度が出力されるおそれがある。したがって、このような状況による悪影響を排除するためである。
【0018】
(4)認識した先行車の形状が車両として取り得る範囲の値であることによって判定する(請求項8)。
この場合には、物体認識手段が物体の形状も認識可能であることが前提である。例えば車幅方向と車長方向の長さを物体の形状として認識すれば(請求項9)、その長さが車両として取り得る範囲の値であるかどうかを判断すればよい。なお、車幅方向と車長方向の長さの比も加えて判定することもできる。
【0019】
形状から先行車でないか、正常に検出できていない可能性が高いと判定できれば、そのような場合に補正しないことが好ましいからである。
(5)形状の変化が車両として取り得る範囲の値であることによって判定する(請求項10)。瞬間的な形状では車両らしく見えても、その変化が車両としては取り得ない範囲の値である場合もあるからである。
【0021】
(6)上述した(1)〜(5)の判定手法は、それぞれ単独で用いても判定できるが、それら5種類の判定条件を全て満たした場合に限り、先行車が車両らしく正常に検知されていると最終的に判定してもよい。
このようにすれば、より厳格に「先行車が車両らしく正常に検知されていること」を判定できる。これは、上述の「必要なときには応答性がよく、且つノイズ成分を抑えた精度の高い相対加速度を用いた補正を行うことができる」という効果をより発揮できる点で有効である。
【0022】
一方、不適切な相対加速度を補正に用いないようにするという観点からすれば、請求項11に示すように、算出した相対加速度に対して所定のガード処理を施し、そのガード処理を施した相対加速度を用いて車間制御量を補正してもよい。この場合の所定のガード処理をするための値としては、車両としてあり得るという観点から定めた上限値又は下限値の少なくともいずれか一方を採用することが考えられる。
【0025】
ところで、相対加速度を用いて補正する際には、請求項12に示すように、相対加速度に対して所定のゲインを乗算し、そのゲイン倍した相対加速度を用いて車間制御量を補正することが考えられる。この際、どのようなゲインを設定するかによって発揮される効果が異なる。例えば、請求項13に示すように、先行車が所定距離以上離れている場合にはゲインを相対的に小さくすることが考えられる。一般に、運転者は遠方の先行車の加減速状態(つまり相対加速度値)にはあまり関心を払わないが、近距離の先行車の加減速状態には敏感に反応する。この点を考慮して前述のようにゲインを設定することで、より運転者の感覚に合致した車間制御量の補正ができる。
【0026】
なお、この場合の「相対的に小さく」には0も含めても良い。0にすれば、ゲイン倍した相対加速度も0になるため、実質的に補正がされなくなる。したがって、補正のための演算式自体は同じものを用いながら、その際のゲインを0とすることにより、実質的に補正がされないようにすることができる。
【0027】
また、請求項14に示すように、相対加速度が負の場合には正の場合に比べて大きなゲインとしてもよい。すでに述べたように、車間制御装置においては、先行車への追従状態での減速制御の遅れは装置により得られる快適性を大きく損ねる。一方、先行車への加速挙動に対して必要以上に追従制御させることも、運転者に不安感をもたらし快適性を損ねる。よって、先行車が減速した(すなわち相対加速度が負の)場合には、加速した(相対加速度が正の)場合に比べて車間制御量をより大きく補正することで、先行車の減速挙動に対する初期減速制御が遅れることを確実に防止し、同時に必要以上に加速制御してしまうことを防止することができる。
【0028】
なお、このようなゲイン倍した相対加速度に対してもガード処理を実行してもよい(請求項15)。所定量以上の相対加速度成分は車間制御に使用しないという意図である。
また、相対加速度を用いて補正する際には、請求項16に示すようにしてもよい。つまり、相対加速度に基づいて補正量を算出し、この補正量を用いて車間制御量を補正するのである。例えば相対加速度を入力とする一次元マップにより補正量を算出することが考えられる。このように補正量をマップで設定すれば、非線形な補正特定を自由に設定できる点で有利である。
【0029】
また、補正の仕方に関しては種々考えられるが、例えば車間制御量として目標加速度を用いるのならば、請求項17に示すように、その目標加速度に相対加速度に基づく補正量を加算することによって補正すればよい。それ以外の車間制御量の場合には、各制御量に合致した値に変換などすることによって加算など適切な補正をすればよい。
【0030】
なお、加算以外にも、例えば車間偏差、相対速度、相対加速度からなる3次元マップを準備しておき、そのマップを用いた演算値を車間制御量とすることも考えられる。
【0032】
なお、請求項18に示すように、車間制御装置の物体認識手段、先行車選択手段、車間制御手段、正常検知状態判定手段及び補正手段をコンピュータシステムにて実現する機能は、例えば、コンピュータシステム側で起動するプログラムとして備えることができる。このようなプログラムの場合、例えば、FD、光磁気ディスク、CD−ROM、ハードディスク等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録し、必要に応じてコンピュータシステムにロードして起動することにより用いることができる。この他、ROMやバックアップRAMをコンピュータ読み取り可能な記録媒体として前記プログラムを記録しておき、このROMあるいはバックアップRAMをコンピュータシステムに組み込んで用いても良い。
【0033】
【発明の実施の形態】
図1は、上述した発明が適用された車間制御用電子制御装置2(以下、「車間制御ECU」と称す。)およびブレーキ電子制御装置4(以下、「ブレーキECU」と称す。)を中心に示す自動車に搭載されている各種制御回路の概略構成を表すブロック図である。
【0034】
車間制御ECU2は、マイクロコンピュータを中心として構成されている電子回路であり、現車速(Vn)信号、操舵角(str-eng ,S0)信号、ヨーレート信号、目標車間時間信号、ワイパスイッチ情報、アイドル制御やブレーキ制御などの制御状態信号等をエンジン電子制御装置6(以下、「エンジンECU」と称す。)から受信する。そして、車間制御ECU2は、この受信したデータに基づいて、車間制御演算や車間警報演算をしている。
【0035】
レーザレーダセンサ3は、レーザによるスキャニング測距器とマイクロコンピュータとを中心として構成されている電子回路であり、スキャニング測距器にて検出した先行車の角度や距離等、および車間制御ECU2から受信する現車速(Vn)信号、カーブ曲率半径R等に基づいて、車間制御装置の一部の機能として先行車の自車線確率を演算し、相対速度等の情報も含めた先行車情報として車間制御ECU2に送信する。また、レーザレーダセンサ3自身のダイアグノーシス信号も車間制御ECU2に送信する。
【0036】
なお、前記スキャニング測距器は、車幅方向の所定角度範囲に送信波あるいはレーザ光をスキャン照射し、物体からの反射波あるいは反射光に基づいて、自車と前方物体との距離をスキャン角度に対応して検出可能な測距手段として機能している。
【0037】
さらに、車間制御ECU2は、このようにレーザレーダセンサ3から受信した先行車情報に含まれる自車線確率等に基づいて、車間距離制御すべき先行車を決定し、先行車との車間距離を適切に調節するための制御指令値として、エンジンECU6に、目標加速度信号、フューエルカット要求信号、ODカット要求信号、3速シフトダウン要求信号、ブレーキ要求信号を送信している。また警報発生の判定をして警報吹鳴要求信号を送信したり、あるいは警報吹鳴解除要求信号を送信したりする。さらに、ダイアグノーシス信号、表示データ信号等を送信している。
【0038】
ブレーキECU4は、マイクロコンピュータを中心として構成されている電子回路であり、車両の操舵角を検出する操舵角検出手段としてのステアリングセンサ8、車両旋回検出手段としてヨーレートを検出するヨーレートセンサ10、および各車輪の速度を検出する車輪速センサ12から操舵角やヨーレートを求めて、これらのデータをエンジンECU6を介して車間制御ECU2に送信したり、ブレーキ力を制御するためにブレーキ油圧回路に備えられた増圧制御弁・減圧制御弁の開閉をデューティ制御するブレーキアクチュエータ25を制御している。またブレーキECU4は、エンジンECU6を介する車間制御ECU2からの警報要求信号に応じて警報ブザー14を鳴動する。
【0039】
エンジンECU6は、マイクロコンピュータを中心として構成されている電子回路であり、スロットル開度センサ15、車両速度を検出する車速検出手段としての車速センサ16、ブレーキの踏み込み有無を検出するブレーキスイッチ18、クルーズコントロールスイッチ20、クルーズメインスイッチ22、及びその他のセンサやスイッチ類からの検出信号あるいはボデーLAN28を介して受信するワイパースイッチ情報やテールスイッチ情報を受信し、さらに、ブレーキECU4からの操舵角(str-eng,S0 )信号やヨーレート信号、あるいは車間制御ECU2からの目標加速度信号、フューエルカット要求信号、ODカット要求信号、3速シフトダウン要求信号、ブレーキ要求信号、警報要求信号、ダイアグノーシス信号、表示データ信号等を受信している。
【0040】
そして、エンジンECU6は、この受信した信号から判断する運転状態に応じて、駆動手段としての内燃機関(ここでは、ガソリンエンジン)のスロットル開度を調整するスロットルアクチュエータ24、トランスミッション26のアクチュエータ駆動段に対して駆動命令を出力している。これらのアクチュエータにより、内燃機関の出力、ブレーキ力あるいは変速シフトを制御することが可能となっている。なお、本実施形態の場合のトランスミッション26は5速オートマチックトランスミッションであり、4速の減速比が「1」に設定され、5速の減速比が4速よりも小さな値(例えば、0.7)に設定された、いわゆる、4速+オーバードライブ(OD)構成になっている。したがって、上述したODカット要求信号が出された場合、トランスミッション26が5速(すなわち、オーバードライブのシフト位置)にシフトしていた場合には4速へシフトダウンする。また、シフトダウン要求信号が出された場合には、トランスミッション26が4速にシフトしていた場合には3速へシフトダウンする。その結果、これらのシフトダウンによって大きなエンジンブレーキが生じ、そのエンジンブレーキにより自車の減速が行われることとなる。
【0041】
また、エンジンECU6は、必要な表示情報を、ボデーLAN28を介して、ダッシュボードに備えられているLCD等の表示装置(図示していない。)に送信して表示させたり、あるいは現車速(Vn)信号、操舵角(str-eng,S0 )信号、ヨーレート信号、目標車間時間信号、ワイパスイッチ情報信号、アイドル制御やブレーキ制御の制御状態信号を、車間制御ECU2に送信している。
【0042】
図2は、車間制御ECU2が実行するメイン処理を示すフローチャートであり、最初のステップS100においてはレーザレーダセンサ3から先行車に関するデータなどのレーザレーダデータを受信する。なお、このレーザレーダセンサ3にて行われる処理については後述する。
【0043】
続くS200ではエンジンECU6から現車速(Vn)や目標車間時間などのエンジンECUデータを受信する。
これらの受信データに基づき、先行車選択(S300)、目標加速度演算(S400)、減速要求判定(S900)及び警報発生判定(S1000)の各処理を実行する。これらの各処理の詳細は後述する。その後、推定Rの演算を行い(S1100)、レーザレーダセンサ3側へは、現車速(Vn)や推定Rなどのデータを送信し(S1200)、エンジンECU6へは、目標加速度やフューエルカット要求、ODカット要求、3速シフトダウン要求、ブレーキ要求、警報要求などのデータを送信する(S1300)。
【0044】
以上はメイン処理全体についての説明であったので、続いて、S300,S400,S900及びS1000に示した各処理の詳細について順番に説明する。まず、S300での先行車選択サブルーチンについて図3のフローチャートを参照して説明する。
【0045】
最初のステップS310においては、先行車候補群を抽出する。この処理は、レーザレーダセンサ3より受信した全ての物標データについて、自車線確率が所定値よりも大きいものを抽出する処理である。ここで、自車線確率とは、各物標が自車両の推定進行路上に存在する確率であり、レーザレーダセンサ3内にて演算処理され、車間制御ECU2に物標データの一部として送信される。
【0046】
続くS320では先行車候補があるか否かを判断する。先行車候補がなければ(S320:NO)、先行車未認識時のデータを先行車データとして設定し(S350)、本処理ルーチンを終了する。一方、先行車候補があれば(S320:YES)、S330へ移行し、車間距離が最小の物標を先行車として選択する。その後S340へ移行し、先行車データとしてS330で選択された物標のデータを設定し、本処理ルーチンを終了する。
【0047】
次に、S400での目標加速度演算サブルーチンについて図4(a)のフローチャートを参照して説明する。
最初のステップS410においては、先行車を認識中であるかどうかを判断する。そして、先行車を認識中であれば(S410:YES)、S420へ移行して車間偏差比を演算する。この車間偏差比(%)は、現在車間から目標車間を減算した値(車間偏差)を目標車間で除算し100を掛けた値である。ここで、目標車間は車速に応じて可変とするここで、より運転者の感覚に合致させることができる。続くS430にて相対速度に対してローパスフィルタを施す。
【0048】
そして、続くS440では、目標加速度補正値を演算する。ここでS440にて実行される目標加速度補正値の演算処理について、図5を参照して詳しく説明する。
図5(a)のフローチャートの最初のステップS441では、相対加速度が0以上か否かを判断し、相対加速度≧0であれば(S441:YES)、図5(b)に示した相対加速度ゲインマップ1よりゲインKarを算出し(S442)、相対加速度<0であれば(S441:NO)、図5(c)に示した相対加速度ゲインマップ2よりゲインKarを算出する(S443)。
【0049】
ここで図5(b),(c)のゲインマップについて説明する。両者とも、車間時間に対応するゲインKarがマップとして設定されており、図5(b)のゲインマップ1においては、車間時間が0〜T1の区間においては固定値K1であり、車間時間がT1〜T2の区間においてはK1から0にリニアに減少している。一方、図5(c)のゲインマップ2においては、車間時間が0〜T3の区間においては固定値K2であり、車間時間がT3〜T4の区間においてはK2から0にリニアに減少している。固定値K1,K2に関しては、K2≧K1の関係がある。参考までに、ゲインマップ中の値K1,T1,T2,K2,T3,T4の一具体例を示すと、K1=0.2,T1=2,T2=3,K2=0.3,T3=2,T4=3といった値が考えられる。
【0050】
図5(a)のフローチャートのS444では、S442あるいはS443のいずれかで得たゲインKarに相対加速度を乗算した値を目標加速度補正値とし、さらに続くS445にて、その目標加速度補正値に対してガード処理を施し、補正値の絶対値が過大にならないようにする。
【0051】
図4のフローチャートに戻り、S450では、S420,S430にて得られた車間偏差比と相対速度という2つのパラメータに基づき、図4(b)に示す制御マップの値AT0 を得る。そして、S440にて得た目標加速度補正値を加算して、目標加速度ATを得る。
【0052】
なお、図4(b)の制御マップは、車間偏差比(%)として−96,−64,−32,0,32,64,96の7つの値、相対速度(Km/h)として16,8,0,−8,−16,−24の6つの値に対する目標加速度AT0 を示すものであるが、マップ値として示されていない値については、マップ内では直線補間により演算した値を採用し、マップ外ではマップ端の値を採用する。また、マップ内の値を用いる場合においても、さらに所定の上下限ガードを施すことも考えられる。
【0053】
一方、先行車を認識中でなければ(S410:NO)、先行車を未認識の場合の値を目標加速度ATとして設定する(S460)。
次に、S900での減速要求判定サブルーチンについて図6のフローチャートを参照して説明する。
【0054】
この減速要求判定は、フューエルカット要求判定(S910)、ODカット要求判定(S920)、3速シフトダウン要求判定(S930)及びブレーキ要求判定(S940)を順番に行って終了する。各制御について説明する。
まず、S910のフューエルカット要求判定サブルーチンについて、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0055】
最初のステップS911においてフューエルカット要求中であるかどうか判断し、フューエルカット要求中でなければ(S911:NO)、加速度偏差が参照値Aref11よりも小さいかどうか判断する(S913)。そして、加速度偏差<Aref11であれば(S913:YES)、フューエルカット要求成立として(S915)、本サブルーチンを終了する。また、加速度偏差≧Aref11であれば(S913:NO)、そのまま本サブルーチンを終了する。
【0056】
一方、フューエルカット要求中であれば(S911:YES)、S917へ移行し、加速度偏差が参照値Aref12よりも大きいかどうか判断する。そして、加速度偏差>Aref12であれば(S917:YES)、フューエルカット要求を解除して(S919)、本サブルーチンを終了するが、加速度偏差≦Aref12であれば(S917:NO)、そのまま本サブルーチンを終了する。
【0057】
次に、S920のODカット要求判定サブルーチンについて、図8のフローチャートを参照して説明する。
最初のステップS921においてODカット要求中であるかどうか判断し、ODカット要求中でなければ(S921:NO)、加速度偏差が参照値Aref21よりも小さいかどうか判断する(S923)。そして、加速度偏差<Aref21であれば(S923:YES)、ODカット要求成立として(S925)、本サブルーチンを終了する。また、加速度偏差≧Aref21であれば(S923:NO)、そのまま本サブルーチンを終了する。
【0058】
一方、ODカット要求中であれば(S921:YES)、S927へ移行し、加速度偏差が参照値Aref22よりも大きいかどうか判断する。そして、加速度偏差>Aref22であれば(S927:YES)、ODカット要求を解除して(S929)、本サブルーチンを終了するが、加速度偏差≦Aref22であれば(S927:NO)、そのまま本サブルーチンを終了する。
【0059】
次に、S930の3速シフトダウン要求判定サブルーチンについて、図9のフローチャートを参照して説明する。
最初のステップS931において3速シフトダウン要求中であるかどうか判断し、3速シフトダウン要求中でなければ(S931:NO)、加速度偏差が参照値Aref31よりも小さいかどうか判断する(S933)。そして、加速度偏差<Aref31であれば(S933:YES)、3速シフトダウン要求成立として(S935)、本サブルーチンを終了する。また、加速度偏差≧Aref31であれば(S933:NO)、そのまま本サブルーチンを終了する。
【0060】
一方、3速シフトダウン要求中であれば(S931:YES)、S937へ移行し、加速度偏差が参照値Aref32よりも大きいかどうか判断する。そして、加速度偏差>Aref32であれば(S937:YES)、3速シフトダウン要求を解除して(S939)、本サブルーチンを終了するが、加速度偏差≦Aref32であれば(S937:NO)、そのまま本サブルーチンを終了する。
【0061】
次に、S940のブレーキ要求判定サブルーチンについて、図10のフローチャートを参照して説明する。
最初のステップS941においてフューエルカット要求中であるかどうか判断し、フューエルカット要求中でなければ(S941:NO)、ブレーキ要求を解除して(S951)、そのまま本サブルーチンを終了する。一方、フューエルカット要求中であれば(S941:YES)、ブレーキ要求中であるかどうか判断し(S943)、ブレーキ要求中でなければ(S943:NO)、加速度偏差が参照値Aref41よりも小さいかどうか判断する(S945)。そして、加速度偏差<Aref41であれば(S945:YES)、ブレーキ要求成立として(S947)、本サブルーチンを終了する。また、加速度偏差≧Aref41であれば(S945:NO)、そのまま本サブルーチンを終了する。
【0062】
一方、ブレーキ要求中であれば(S943:YES)、S949へ移行し、加速度偏差が参照値Aref42よりも大きいかどうか判断する。そして、加速度偏差>Aref42であれば(S949:YES)、ブレーキ要求を解除して(S951)、本サブルーチンを終了するが、加速度偏差≦Aref42であれば(S949:NO)、そのまま本サブルーチンを終了する。
【0063】
なお、図7〜図10のフローチャートの説明中に用いた参照値Aref11,Aref12,Aref21,Aref22,Aref31,Aref32,Aref41,Aref42について、補足説明しておく。これらの参照値は、以下に示すようなしきい値となっている。
これらのしきい値の大小関係は、以下のようになる。
(a)作動指示しきい値/作動解除しきい値の関係
フューエルカット:Aref11<Aref12
ODカット:Aref21<Aref22
3速シフトダウン:Aref31<Aref32
ブレーキ:Aref41<Aref42
このような関係は、作動指示と作動解除指示のチャタリングが発生しないために必要である。
(b)各減速手段間の作動指示しきい値の関係
0>Aref11≧Aref21≧Aref31≧Aref41
これは、より発生減速度の小さな手段が先に作動されることが望ましいからである。
(c)各減速手段間の作動解除しきい値の関係
Aref12≧Aref22≧Aref32≧Aref42>0
これは、発生減速度のより大きな手段が先に解除されることが望ましいからである。
【0064】
次に、警報発生判定(S1000)の詳細について図11(a)のフローチャートを参照して説明する。
図11(a)の最初のステップS1010では、警報要求を現在指示中であるかどうかを判断し、警報要求中でなければ(S1010:NO)、所定の条件成立を判断して警報要求を指示するための処理(S1020,S1025,S1027,S1030,S1040)を実行する。
【0065】
S1020では、以下の算出式に示すように、自車速と相対速度に応じて警報距離Dwを算出する。
警報距離Dw=f(自車速,相対速度)
続くS1025では、警報距離補正マップ値を、図11(b)に示す警報距離補正マップを用いて演算する。この警報距離補正マップは、パラメータである相対加速度(m/S2 )として−3,−2,−1,0,1,2,3の7つの値に対する補正量(m)を示すものであるが、マップ値として示されていない値については、マップ内では直線補間により演算した値を採用し、マップ外ではマップ端の値を採用する。また、マップ内の値を用いる場合においても、さらに所定の上下限ガードを施すことも考えられる。
【0066】
そして、S1027では、S1020にて得られた警報距離算出値に、S1025で得られた警報距離補正マップ演算値を加算して、警報距離を得る。
次に、この警報距離よりも車間距離が短い状態が生じているかどうかを判断し(S1030)、車間距離が警報距離以上の場合には(S1030:NO)、そのまま本処理ルーチンを終了する。そして、警報距離よりも車間距離が短い場合には(S1030:YES)、警報要求を成立させる(S1040)。
【0067】
一方、S1010にて肯定判断、すなわち、警報要求中であれば、所定の条件成立を判断して警報要求を解除するための処理(S1050,S1060,S1070)を実行する。
S1050では、警報要求が成立した後1秒経過したかどうかを判断する。警報要求成立後1秒経過していなければ(S1050:NO)、そのまま本処理ルーチンを終了する。これは、警報処理を実行した場合、少なくとも1秒間はその状態を続けるためである。
【0068】
そして、警報要求が成立した後1秒経過すると(S1050:YES)、続いて、車間距離が警報距離以上かどうかを判断し(S1060)、車間距離が警報距離未満の場合には(S1060:NO)、そのまま本処理ルーチンを終了する。そして、車間距離が警報距離以上の場合には(S1060:YES)、警報要求を解除する(S1070)。
【0069】
S1040において警報要求が成立した旨は、図2のS1300でエンジンECU6へ送信される。そして、エンジンECU6からブレーキECU4に対して指示することによって、ブレーキECU4は警報ブザー14を鳴動する。一方、S1070において警報要求が解除されたことがエンジンECU6へ伝わると、ブレーキECU4を介して警報ブザー14が停止されることとなる。
【0070】
次に、レーザレーダセンサ3にて行われる処理について説明する。
図12は、メイン処理を示すフローチャートであり、レーザレーダセンサ3は所定間隔でこの処理を実行する。
処理が開始されると、まず、レーザレーダセンサ3に備えられたスキャニング測距器による測距データ(距離・角度の計測データ)が読み込まれる(S1)。次に、認識対象の個々の車両などを物標化する物標化処理を行う(S2)。そして、認識した物標の相対加速度を演算する(S3)。その後、物標データを車間制御ECU2へ送信し(S4)、本メイン処理を終了する。
【0071】
次に、図12のS2にて行われる物標化処理について説明する。この物標化処理に関しては、既に本出願人が出願して公開されている特願平6−112779号(特開平7−318652号)にて説明している物標化処理と同様であるので、その説明は簡略化する。
【0072】
図13のフローチャートに示すように、物標化処理を開始すると、S31にて、測距データに基づいて、障害物を不連続な点として認識し、それらの点の内、近接するもの同士を一体化し、車両の幅方向の長さのみを有するセグメント(線分)として認識する。ここで「近接」とは、X軸方向、すなわち車両の幅方向の間隔がレーザ光Hの照射間隔以下で、Y軸方向、すなわち車両の前後方向の間隔が3.0m未満である場合とした。セグメント化とは、測距データの各点を所定の条件により同一と想定される物体毎に1つのセグメントとしてまとめる処理である。この処理は、例えば車両の左右のテールランプに具備されている反射板あるいは車体など、1台の車両を複数のスキャン角度において検出したような場合に、各点が同一の車両であると認識するために必要な処理である。
【0073】
続くS32では、変数iに1を代入してS33へ移行する。 S33では、物標Biが存在するか否かを判断する。物標Bi(iは自然数)とは、後述の処理により一まとまりのセグメントに対して作成される障害物のモデルである。始動時には物標Biが作成されていないので、否定判断して続くステップS34へ移行する。
【0074】
S34では、対応する物標Biのないセグメントがあるか否かを判断する。前述のように、始動時には物標Biが作成されていないので、S31にてセグメントを認識していれば、その全てのセグメントは対応する物標Biのないセグメントである。この場合、肯定判断してS35へ移行する。
【0075】
S35では、物標Biの個数が所定値(レーザ光Hが掃引照射される所定角度内に出現する障害物の個数の上限値にマージンを加えた値)未満であるか否かを判断する。始動時には物標Biの個数が前記所定値未満であるので、肯定判断してS36へ移行する。
【0076】
S36では、各セグメントに対して車両に近接したものから順に物標Bj(j=1,2,…)を作成し、一旦本物標化処理ルーチンを終了する。なお、物標Bjを順次作成する途中で、物標の総数が前記所定値に達したときは、それ以上物標Bjを作成しない。
【0077】
ここで、各物標Bjは次のようなデータを備えている。すなわち、中心座標(X,Y)、幅W、X軸方向,Y軸方向の相対速度VX ,VY 、中心座標(X,Y)の過去4回分のデータ、および、状態フラグFjがそれである。そして、物標Bjの作成時には、前記各データは次のように設定される。中心座標(X,Y)および幅Wは、セグメントの中心座標および幅をそのまま使用する。また、VX =0,VY =車速の−1/2倍、過去4回分のデータは空、Fj=0に設定する。なお、状態フラグFjは、物標Bjの状態が、未定状態,認識状態,または外挿状態のいずれであるかを表すフラグであり、未定状態の場合は、Fj=0に設定される。尚、物標Bjの作成時には未定状態が設定される。
【0078】
一方、S33にて物標Biが存在する(YES)と判断した場合、S37へ移行して、その物標Biに対応するセグメントを検出する。尚、物標Biに対応するセグメントとは、上述の特開平7−318652号に開示された図5に基づいて説明される内容と同じであり、そのセグメントの選択方法も同号の図6に基づいて説明される内容と同じであるので、その説明は省略する。
【0079】
続くS38では、対応するセグメントの有無などに応じて、以下に説明する物標Biのデータ更新処理を実行し、S39にて変数iをインクリメントした後、S33へ移行する。
なお、S38での物標Biのデータ更新処理についても、上述した特開平7−318652号に開示された図7に基づいて説明される内容と同じであるので、その説明は省略した。
【0080】
上述した処理により、セグメントとして認識された障害物が過去に認識された物標Biと同一であるか否かを良好に判断することができる。このため、物標Biに対応する障害物の自車両に対する相対速度(VX,VY)を、正確に算出することができる。
【0081】
次に、図12のS3にて行われる相対加速度演算処理について図14〜図22のフローチャートを参照して説明する。
図14,図15が相対加速度演算処理の概要を示しており、この処理は全物標に対して実施する。最初に図14,図15に示した内容を基に、当該処理の全体的な流れについて説明する。
【0082】
まず車両検知状態の判定(詳しくは後述する)を行い(S51)、車両の検知状態が正常であるか否かを判断する(S52)。そして、車両検知状態が正常であれば(S52:YES)、相対加速度を所定の式に基づいて算出する。その式は、相対速度の今回値から前回値を差し引いた値を測距周期で除算するという式である。一方、車両検知状態が正常でなければ(S52:NO)、相対加速度=0とする(S54)。
【0083】
S53,S54のいずれの処理の後も、S55へ移行し、相対加速度に対するガード処理を施する。その後、認識不安定判定を行い(S56)、S51での車両検知状態の判定結果、及びS56での認識不安定判定の判定結果に基づいて、S57〜S62の処理を実行する。なお、認識不安定判定の詳細は後述するが、その判定結果は、認識不安定フラグが成立しているか否かである。
【0084】
まず、S57では車両検知状態が正常であるか否かを判断し(S52)、車両検知状態が正常であれば(S57:YES)、S58へ移行して今度は認識不安定フラグが成立しているか否かを判断する。そして、認識不安定フラグが成立していない場合には(S58:NO)、応答性が必要な「追従走行中」の状況であるか否かを判断する(S59)。具体的には、物標までの距離Dが所定の判定値Df以下であり、且つ相対速度Vrの絶対値が所定の判定値Vrf以下であるか否かを判断する。
【0085】
そして、応答性が必要な「追従走行中」の状況であれば(S59:YES)、相対加速度に対して「まなしが小さな」フィルタ処理を施す(S60)。一方、応答性が必要な「追従走行中」の状況でなければ(S59:NO)、相対加速度に対して「まなしが大きな」フィルタ処理を施す(S61)。なお、S58にて肯定判断、すなわち認識不安定フラグが成立している場合も、S61へ移行してなまし大のフィルタ処理を相対加速度に対して施す。
【0086】
これらS60,S61にてフィルタ処理を行うのは、その前提としてS57にて肯定判断、すなわち車両検知状態が正常な場合であり、車両検知状態が正常でない場合には(S57:NO)、フィルタ処理を施さない(S62)。つまり、S54にて0と設定された相対加速度がそのまま採用されることとなる。
【0087】
なお、図24には、このような相対加速度の試算結果のタイムチャート例を示す。図24中に(A)で示す部分の実線は、相対加速度に対してなまし大のフィルタ処理を施したものであり、対応する破線部分(なまし小のフィルタ処理を施したもの)に比べてノイズの影響が抑制されていることが判る。(A)で示す部分以前は先行車の減速し始めを応答性よく検出するためになまし小のフィルタ処理を施すが、(A)で示す部分は、それほど応答性が必要でないため、なまし大のフィルタ処理を施すのである。
【0088】
また、図25には、認識不安定物標への相対加速度の試算結果のタイムチャートを示す。時刻1840(s)辺りで後述する条件により認識不安定フラグが成立した。その成立時点以前はなまし小のフィルタ処理を施していたが、成立時点以降においては、相対加速度に対してなまし大のフィルタ処理を施している。これによって、認識状態が不安定な物標に対してはなまし大のフィルタ処理が施され、ノイズの影響が抑制されることとなる。
【0089】
ここまでが相対加速度演算処理の概要説明であったので、次に、図14のS51にて実行する車両検知状態の判定処理について詳しく説明する。
図16は、車両検知状態の判定に係るメイン処理であり、図17〜図20はそのメイン処理中で実行される物標形状・物標形状変化・物標データ妥当性・距離異常フラグの各判定ルーチンである。
【0090】
図16の最初のステップS511では、発見後1秒以上経過しているか否かを判断する。発見後1秒未満の場合には(S511:NO)、無条件で車両検知状態を「異常」とする(S521)。これは、短時間しか認識できていない物体は不安定な検知状態であるため、そのような物体の相対加速度を補正に用いるのは適切でないからである。
【0091】
一方、発見後1秒以上経過している場合には(S511:YES)、S512〜S519の処理を実行して、S513,S515,S517,S519の全ての条件を満たす場合には車両検知状態を「正常」とするが(S520)、1つでも条件を満たさない場合には車両検知状態を「異常」とする(S521)。
【0092】
S512では物標形状判定を行うが、この判定処理の詳細を図17を参照して説明する。
図17の最初のステップS5121では、物標の横幅Wが所定値αW1以上であり、且つ所定値αW2以下であるかどうかを判断する。S5121で肯定判断されると、続くS5122では、物標の奥行きDが所定値αD 未満か否かを判断する。さらにS5122で肯定判断されると、続くS5123では、物標の縦横比D/Wが所定値αR 未満か否かを判断する。これらS5121〜S5123にて用いた所定値αW1,αW1,αD,αRは、それぞれ通常の車両であればこの範囲内に収まるような車幅W及び車両の前後長Dあるいは縦横比D/Wである。したがって、これらS5121〜S5123にて全て肯定判断された場合に限り、物標形状を正常と判定し(S5124)、S5121〜S5123のいずれかで否定判断された場合には、その時点で物標形状を異常と判定する(S5125)。
【0093】
図16の説明に戻り、続くS513では、S512での判定結果に基づき、物標形状が正常か否かを判断し、ここで異常と判定されれば(S513:NO)、即座にS521へ移行して車両検知状態を異常と判定する。一方、正常と判定されれば(S513:YES)、S514へ移行する。
【0094】
S514では物標形状変化判定を行うが、この判定処理の詳細を図18を参照して説明する。
図18の最初のステップS5141では、物標の横幅Wの変化、つまり幅今回値から幅前回値を引いた値の絶対値が所定値αWC未満であるか否かを判断する。S5141で肯定判断されると、続くS5142では、物標の奥行きDの変化、つまり奥行き今回値から奥行き前回値を引いた値の絶対値が所定値αDC未満か否かを判断する。これら2つの所定値αWC,αDCについても、それぞれ通常の車両であればこの範囲内に収まるような車幅W及び車両の前後長Dの変化量が設定されている。したがって、これらS5141,S5142の両方にて肯定判断された場合に限り、物標形状を正常と判定し(S5143)、いずれかで否定判断された場合には、その時点で物標形状を異常と判定する(S5144)。
【0095】
図16の説明に戻り、続くS515では、S514での判定結果に基づき、物標形状変化が正常か否かを判断し、ここで異常と判定されれば(S515:NO)、即座にS519へ移行して車両検知状態を異常と判定する。一方、正常と判定されれば(S515:YES)、S516へ移行する。
【0096】
S516では物標データ妥当性判定を行うが、この判定処理の詳細を図19を参照して説明する。
図19の最初のステップS5161では、相対加速度の絶対値が所定値αGmax未満であるか否かを判断する。S5161で肯定判断されると、続くS5162では、接近時間を演算する。この接近時間は、相対速度Vrが負の場合には車間距離を相対速度で割った値とし、相対速度Vrが0以上の場合には無限大とする。そして、続くS5163において、この接近時間が所定値αTAP よりも大きいか否かを判断し、接近時間が所定値αTAP より大きければ(S5163:YES)、物標データは正常であると判定し(S5164)、接近時間が所定値αTAP 未満であれば(S5163:NO)、物標データは異常であると判定する(S5165)。この所定値αTAP は次のような観点から定められた値である。すなわち、通常の車間制御中の交通環境においては、この所定値αTAP 以下となるような接近時間を持つ車両はあり得ないと考えられるような値である。この所定値αTAP としては例えば2秒といった値が考えられるが、通常の車間制御を実行しているのに、2秒以下の短時間で先行車に衝突してしまうような状況はあり得ない。そのため、このような短い接近時間を持つ物標データは異常なデータであるため信頼できないとして取り扱うのである。
【0097】
なお、S5161で否定判断、すなわち相対加速度の絶対値が所定値αGmax以上となる場合も物標データが異常であると判定する(S5165)。
図16の説明に戻り、続くS517では、S516での判定結果に基づき、物標データが正常か否かを判断する。そして、物標データが正常の場合は(S517:YES)、S518へ移行する。
【0098】
S518では、距離異常フラグ判定を行うが、この判定処理の詳細を図20を参照して説明する。
図20の最初のステップS5181では、距離異常フラグが成立しているか否かを判断する。そして、距離異常フラグが成立していない場合には(S5181:NO)、新規物標であるか否かを判断し(S5182)、新規物標であれば(S5182:YES)、そのまま処理を終了する。一方、新規物標でなければ(S5182:NO)、距離の変化量Ddiffが距離の変化量上限値D+ を越えているかどうかを判断し(S5183)、Ddiff>D+ であれば(S5183:YES)、距離異常フラグを成立させて(S5185)、処理を終了する。一方、Ddiff≦D+ であれば(S5183:NO)、距離の変化量Ddiffが距離の変化量下限値D- を下回っているかどうかを判断し(S5184)、Ddiff<D- であれば(S5184:YES)、やはり距離異常フラグを成立させて(S5185)、処理を終了する。なお、Ddiff≧D- であれば(S5184:NO)、そのまま本処理を終了する。
【0099】
ここで、距離の変化量Ddiff、及び距離の変化量上下限値D+,D-について説明する。
距離の変化量Ddiffは、Dを車間距離(m)とし、今回の距離D(n) から前回の距離D(n-1) を減算した値であり、距離の変化量上限値D+,D-は下記の式にて計算したものである。
D+=Vr(n-1)/3.6×TLR+G+×(TLR 2/2)+α
D-=Vr(n-1)/3.6×TLR−G-×(TLR 2/2)−α
ここで、
Vr(n-1)…1制御周期前の相対速度(km/h)
TLR …レーザレーダ測距周期(s)
α …測距誤差(m)
G+ …発生し得る最大の相対加速度(正側)(m/s2)
G- …発生し得る最大の相対加速度(負側)(m/s2)
なお、距離の変化量上限値D+ の式中、Vr(n-1)/3.6×TLR の項は、前回の相対速度で移動している場合、測距周期の間にどの程度距離が変化するかを示すものであり、G+×(TLR 2/2)の項は、相対加速度に基づいて変化する可能性のある最大値を示している。それに測距誤差αを加えることで、上限値としている。距離の変化量下限値D- の場合も同様の考え方である。
【0100】
また、固定値であるG+,G-に代えて、前回の相対加速度Ar(n-1)を用いてもよい。
以上が距離異常フラグを成立させる場合の判定にかかる処理内容であったが、次に、距離異常フラグを解除する場合の判定内容について説明する。図20のS5181にて肯定判断、つまり距離異常フラグが成立している場合には、成立後所定時間Ta秒経過しているか否かを判断する。そして、Ta秒経過している場合には(S5186:YES)、距離異常フラグを解除して(S5188)、本処理を終了する。一方、Ta秒経過していない場合には(S5186:NO)、対象が新規物標になったかどうかを判断し(S5187)、新規物標になった場合には(S5187:YES)、過去に成立した距離異常フラグをそのまま有効とするのは不適切なので、S5188へ移行して、距離異常フラグを解除する。一方、新規物標でない場合は(S5187:NO)、そのまま本処理を終了する。
【0101】
ここで、S5186での判断に用いた所定時間Taについて説明する。この所定時間Taは、異常な距離データが相対速度に影響を与えなくなるのに要する時間である。例えば、相対速度の計算に際して過去n回分の距離データを用いることを前提とするならば、そのn回分の距離データ中に1つでも「異常なデータ」が含まれていると思われる期間を経過させるために設定した期間である。
【0102】
図20は図16中のS518の処理説明であったため、図16の続くS519では、S518での判定結果に基づき、距離異常フラグが成立しているか否かを判断し、成立していなければ(S519:YES)、S520へ移行して車両検知状態を正常と判定する。
【0103】
次に、図14のS56にて実行する認識不安定判定処理について詳しく説明する。
図21は、認識不安定判定に係るメイン処理であり、最初のステップS561では、認識不安定フラグの前提条件が成立しているか否かを判断する。前提条件が成立している場合には(S561:YES)、S562へ移行して認識不安定フラグ前提条件解除判定を行い、前提条件が成立していない場合には(S561:NO)、S563へ移行して認識不安定フラグ前提条件成立判定を行う。なお、前提条件はS563の処理を経ないと成立しないので、第1回目のS561の処理では必ず否定判断されることとなる。
【0104】
S562,S563の処理後は、S564へ移行し、認識不安定フラグが成立しているか否かを判断する。フラグが成立している場合には(S564:YES)、S565へ移行して認識不安定フラグ解除判定を行い、フラグが成立していない場合には(S564:NO)、S566へ移行して認識不安定フラグ成立判定を行う。
【0105】
続いて、S562,S563,S565,S566の各判定ルーチンについて説明する。
S562の認識不安定フラグ前提条件解除判定では、図22(a)に示すように、まず新規物標であるか否かを判断し(S5621)、新規物標であれば(S5621:YES)、認識不安定フラグの前提条件を解除し(S5622)、新規物標でなければ(S5621:NO)、そのまま処理を終了する。
【0106】
S563の認識不安定フラグ前提条件成立判定では、図23(b)に示すように、まず車両検知状態が正常であるか否かを判断し(S5631)、車両検知状態が正常であれば(S5631:YES)、認識不安定フラグの前提条件を成立させ(S5632)、車両検知状態が異常であれば(S5631:NO)、そのまま処理を終了する。
【0107】
S565の認識不安定フラグ解除判定では、図23(a)に示すように、まず新規物標であるか否かを判断し(S5651)、新規物標であれば(S5651:YES)、認識不安定フラグを解除し(S5652)、新規物標でなければ(S5651:NO)、そのまま処理を終了する。
【0108】
S566の認識不安定フラグ成立判定では、図23(b)に示すように、S5661〜S5664の各判定処理を行い、全ての判定処理で肯定判断された場合にのみS5665へ移行して認識不安定フラグを成立させる。一方、S5661〜S5664の各判定処理のいずれかで否定判断された場合には、その時点で本処理を終了する。S5661では、認識不安定フラグ前提条件が成立しているか否かを判断し、S5662では、追従車間距離であるか否かを判断する。そしてS5663では、検知エリア端でないかどうかを判断し、続くS5664では、車両検知状態が異常であるか否かを判断する。
【0109】
なお、本実施形態においては、レーザレーダセンサ3が、物体認識手段及び正常検知状態判定手段及び補正手段に相当し、車間制御ECU2が、先行車選択手段、車間制御手段及び補正手段に相当する。
以上説明した本実施形態のシステムが発揮する効果を説明する。
【0110】
本実施形態の車間制御システムでは、図4,5などに示したように、車間制御量としての目標加速度を演算する際に、車間偏差比及び相対速度に基づいて算出した目標加速度を相対加速度に基づいて補正しており、この補正された目標加速度に基づいて車間制御を実行している。このように相対加速度を用いて補正した目標加速度に基づいて車間制御を実行すると、先行車が強く減速した場合であっても、その挙動変化を遅れることなく捉えることができ、適切なタイミングでの車両制御を実行できるという効果が得られる。
【0111】
しかしながら、この効果は常に生じるのではなく、車両として安定して検出できていない物体についての相対加速度を用いて補正してしまうと、不適切な方向へ車間制御量を補正しかねない。そこで、本実施形態のシステムでは、図14のフローチャートに示すように、先行車が車両らしく正常に検知されている場合は(S52:YES)、相対加速度を通常通り算出するが(S53)、車両らしく正常に検知されていない場合は(S52:NO)、その先行車の相対加速度を0とする(S54)。したがって、正常に検知されていない場合は実質的に補正されないこととなり、必要なときには応答性がよく、且つノイズ成分を抑えた「精度の高い」相対加速度を用いた補正を行うことができる。したがって、その補正された目標加速度に基づいて車間制御を実行すれば、適切な車間制御を実現し、運転フィーリングを向上させることができる。
【0112】
[その他]
(1)上記実施形態においては、図16に示すように、所定時間継続してその存在を認識し続けていること(S511)、物標形状が正常であること(S513)、物標形状変化が正常であること(S515)、物標データが正常であること(S517)を全て満たす場合に、「先行車が車両らしく正常に検知されている」と判定した。もちろん、これら全ての判定条件を用いることで、より厳格に判定できるが、いずれか1つあるいは2つ以上の条件のみを採用することも可能ではある。
【0113】
(2)上記実施形態では、図4(a)に示すように、相対加速度の補正値を、図4(b)の制御マップに基づいて得た目標加速度に加算することで「補正」を行ったが、加算以外にも、図4(b)に示す2つのパラメータ(車間偏差、相対速度)に、相対加速度という3つ目のパラメータを加えた3次元マップを準備しておき、そのマップを用いた演算値にて目標加速度を得ることも可能である。
【0114】
(3)上記実施形態では、図15に示すように、相対加速度フィルタ処理を行う際、認識不安定フラグの有無に応じてなましの大小を変更したが、このような考え方は、図4(a)のS430における相対速度LPFの演算に際しても利用できる。
【0115】
(4)上記実施形態では、車間制御量の一例として目標加速度を用いたが、それ以外にも、加速度偏差(目標加速度−実加速度)や、目標トルク、あるいは目標相対速度としてもよい。なお、目標加速度の場合には、相対加速度補正値を加算するという補正手法であったが、それ以外の車間制御量の場合には、各制御量に合致した値に変換などすることによって加算など適切な補正をすればよい。
【0116】
(5)減速手段としては、上述した実施形態で説明したものも含め、採用可能なものを挙げておく。ブレーキ装置のブレーキ圧を調整して行うもの、内燃機関に燃料が供給されるのを阻止するフューエルカット制御、前記内燃機関に接続された自動変速機がオーバードライブのシフト位置となるのを禁止するオーバードライブカット制御、前記自動変速機を高位のシフト位置からシフトダウンさせるシフトダウン制御、前記内燃機関の点火時期を遅らせる点火遅角制御、前記自動変速機が備えたトルクコンバータをロックアップ状態にするロックアップ制御、前記内燃機関からの排気の流動抵抗を増加させる排気ブレーキ制御およびリターダ制御を実行して行うものなどである。
【0117】
(6)また、上記実施形態においては、車間距離をそのまま用いていたが、車間距離を車速で除算した車間時間を用いても同様に実現できる。つまり、相対速度と車間時間偏差比をパラメータとする目標加速度の制御マップを準備しておき、制御時には、その時点での相対速度と車間時間偏差比に基づいて目標加速度を算出して、車間制御を実行するのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施形態の車間制御装置のシステムブロック図である。
【図2】 車間制御ECUにて実行されるメイン処理を示すフローチャートである。
【図3】 図2のメイン処理中で実行される先行車選択サブルーチンを示すフローチャートである。
【図4】 (a)は図2のメイン処理中で実行される目標加速度演算サブルーチンを示すフローチャート、(b)は制御マップの説明図である。
【図5】 (a)は図4(a)の目標加速度演算処理中で実行される目標加速度補正値演算サブルーチンを示すフローチャート、(b)及び(c)は相対加速度ゲインマップの説明図である。
【図6】 図2のメイン処理中で実行される減速要求判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図7】 図6の減速要求判定中で実行されるフューエルカット要求判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図8】 図6の減速要求判定中で実行されるODカット要求判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図9】 図6の減速要求判定中で実行される3速シフトダウン要求判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図10】 図6の減速要求判定中で実行されるブレーキ要求判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図11】 (a)は図2のメイン処理中で実行される警報発生判定サブルーチンを示すフローチャート、(b)は警報距離補正マップの説明図である。
【図12】 レーザレーダセンサにおいて実行される認識処理を示すフローチャートである。
【図13】 図12の認識処理中で実行される物標化処理サブルーチンを示すフローチャートである。
【図14】 図12の認識処理中で実行される相対加速度演算サブルーチンの前半を示すフローチャートである。
【図15】 図12の認識処理中で実行される相対加速度演算サブルーチンの後半を示すフローチャートである。
【図16】 図14の相対加速度演算処理中で実行される車両検知状態判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図17】 図16の車両検知状態判定処理中で実行される物標形状判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図18】 図16の車両検知状態判定処理中で実行される物標形状変化判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図19】 図16の車両検知状態判定処理中で実行される物標データ妥当性判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図20】 図16の車両検知状態判定処理中で実行される距離異常フラグ判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図21】 図14の相対加速度演算処理中で実行される認識不安定判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図22】 (a)は図21の認識不安定判定処理中で実行される認識不安定フラグ前提条件解除判定サブルーチンを示すフローチャート、(b)は図21の認識不安定判定処理中で実行される認識不安定フラグ前提条件成立判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図23】 (a)は図21の認識不安定判定処理中で実行される認識不安定フラグ解除判定サブルーチンを示すフローチャート、(b)は図21の認識不安定判定処理中で実行される認識不安定フラグ成立判定サブルーチンを示すフローチャートである。
【図24】 相対加速度の試算結果を示すタイムチャートである。
【図25】 認識不安定物標への相対加速度の試算結果を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
2…車間制御用電子制御装置(車間制御ECU)
3…レーザレーダセンサ
4…ブレーキ電子制御装置(ブレーキECU)
6…エンジン電子制御装置(エンジンECU)
8…ステアリングセンサ 10…ヨーレートセンサ
12…車輪速センサ 14…警報ブザー
15…スロットル開度センサ 16…車速センサ
18…ブレーキスイッチ
20…クルーズコントロールスイッチ 22…クルーズメインスイッチ
24…スロットルアクチュエータ 25…ブレーキアクチュエータ
26…トランスミッション 28…ボデーLAN
Claims (18)
- 自車両を加減速させる加速手段及び減速手段と、
認識対象の物体について、少なくとも自車に対する相対位置及び相対速度を算出する物体認識手段と、
前記物体認識手段の認識結果に基づいて自車に対する先行車を選択する先行車選択手段と、
前記先行車選択手段によって選択された先行車と自車との実車間距離に相当する物理量である実車間物理量と、自車と先行車との目標車間距離に相当する物理量である目標車間物理量との差である車間偏差、及び自車と先行車との相対速度に基づいて車間制御量を算出し、その算出された車間制御量に基づき前記加速手段及び減速手段を駆動制御することによって、自車を先行車に追従させて走行させる車間制御手段と、
を備える車間制御装置において、
前記物体認識手段の認識結果に基づき、前記先行車選択手段によって選択された先行車が車両らしく正常に検知されているかどうかを判定する正常検知状態判定手段と、
前記正常検知状態判定手段によって車両らしく正常に検知されていると判定された場合に限って、前記物体認識手段によって算出した相対速度に基づいて相対加速度を算出し、その算出した相対加速度を用いて前記車間制御量を補正する補正手段とを備え、
前記車間制御手段は、前記補正手段によって補正された車間制御量に基づいて車間制御を実行し、
前記正常検知状態判定手段は、
前記先行車が車両らしく正常に検知されていることを、前記物体認識手段にて算出した先行車までの距離を相対速度で除算して得た、自車と先行車との位置が同じになるまでに要する時間である接近時間が通常の交通環境において取り得る範囲の値であることによって判定すること
を特徴とする車間制御装置。 - 自車両を加減速させる加速手段及び減速手段と、
認識対象の物体について、少なくとも自車に対する相対位置及び相対速度を算出する物体認識手段と、
前記物体認識手段の認識結果に基づいて自車に対する先行車を選択する先行車選択手段と、
前記先行車選択手段によって選択された先行車と自車との実車間距離に相当する物理量である実車間物理量と、自車と先行車との目標車間距離に相当する物理量である目標車間物理量との差である車間偏差、及び自車と先行車との相対速度に基づいて車間制御量を算出し、その算出された車間制御量に基づき前記加速手段及び減速手段を駆動制御することによって、自車を先行車に追従させて走行させる車間制御手段と、
を備える車間制御装置において、
前記物体認識手段の認識結果に基づき、前記先行車選択手段によって選択された先行車が車両らしく正常に検知されているかどうかを判定する正常検知状態判定手段と、
前記正常検知状態判定手段によって車両らしく正常に検知されていると判定された場合には、前記物体認識手段によって算出した相対速度に基づいて相対加速度を算出し、一方、車両らしく正常に検知されていないと判定された場合には、その先行車の相対加速度を0として算出し、その算出した相対加速度を用いて前記車間制御量を補正する補正手段とを備え、
前記車間制御手段は、前記補正手段によって補正された車間制御量に基づいて車間制御を実行し、
前記正常検知状態判定手段は、
前記先行車が車両らしく正常に検知されていることを、前記物体認識手段にて算出した先行車までの距離を相対速度で除算して得た、自車と先行車との位置が同じになるまでに要する時間である接近時間が通常の交通環境において取り得る範囲の値であることによって判定すること
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項1又は2記載の車間制御装置において、
前記補正手段は、
前記算出した相対加速度に対して、所定のフィルタ処理を施し、そのフィルタ処理を施した相対加速度を用いて前記車間制御量を補正するのであるが、
そのフィルタ処理に際して、先行車までの距離が所定値以下であり、且つ先行車の相対速度の絶対値が所定値以下という応答性が必要な場合には、なましの小さなフィルタ処理を実行し、一方、前記以外の応答性が必要でない場合には、なましの大きなフィルタ処理を実行すること
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項3記載の車間制御装置において、
前記補正手段は、
前記正常検知状態判定手段によって車両らしく正常に検知されていると判定された先行車が、その後、正常に検知できる位置に存在するにもかかわらず車両らしく正常に検知されていないと判定された場合には、それ以降、車両らしく正常に検知されていると判定された場合であっても、常になましの大きなフィルタ処理を実行すること
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項1〜4のいずれか記載の車間制御装置において、
前記正常検知状態判定手段は、
前記先行車が車両らしく正常に検知されていることを、前記物体認識手段が当該先行車を新規に認識してから所定時間継続してその存在を認識し続けていることによって判定すること
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項1〜4のいずれか記載の車間制御装置において、
前記正常検知状態判定手段は、
前記先行車が車両らしく正常に検知されていることを、前記物体認識手段にて算出した相対速度に基づいて得た当該先行車の相対加速度が、車両として取り得る範囲の値であることによって判定すること
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項1〜4のいずれか記載の車間制御装置において、
前記正常検知状態判定手段は、
前記先行車が車両らしく正常に検知されていることを、前記物体認識手段にて算出した当該先行車の距離が、少なくとも前回算出された距離と前記物体認識手段の距離算出精度から判断して妥当な値であることによって判定すること
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項1〜4のいずれか記載の車間制御装置において、
前記物体認識手段は、物体の形状も認識可能であり、
前記正常検知状態判定手段は、
前記先行車が車両らしく正常に検知されていることを、前記物体認識手段にて認識した当該先行車の形状が、車両として取り得る範囲の値であることによって判定すること
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項8記載の車間制御装置において、
前記正常検知状態判定手段が前記車両らしく正常に検知されていることを判定する際に用いる当該先行車の形状は、車幅方向と車長方向の長さに関してであること
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項1〜4のいずれか記載の車間制御装置において、
前記物体認識手段は、物体の形状も認識可能であり、
前記正常検知状態判定手段は、
前記先行車が車両らしく正常に検知されていることを、前記物体認識手段にて認識した当該先行車の形状の変化が、車両として取り得る範囲の値であることによって判定すること
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項1〜10のいずれか記載の車間制御装置において、
前記補正手段は、
前記算出した相対加速度に対して、車両としてあり得るという観点から定めた上限値又は下限値の少なくともいずれか一方にてガード処理を実行し、そのガード処理を施した相対加速度を用いて前記車間制御量を補正すること
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項1〜11のいずれか記載の車間制御装置において、
前記補正手段は、
前記相対加速度に対して、所定のゲインを乗算し、そのゲイン倍した相対加速度を用いて前記車間制御量を補正すること
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項12記載の車間制御装置において、
前記ゲインは、先行車が所定距離以上離れている場合には相対的に小さくすること
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項12又は13記載の車間制御装置において、
前記ゲインは、相対加速度が負の場合には正の場合に比べて大きくすること
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項12〜14のいずれか記載の車間制御装置において、
前記ゲイン倍した相対加速度に対して、所定の上限値又は下限値の少なくともいずれか一方にてガード処理を実行し、そのガード処理を施した相対加速度を用いて前記車間制御量を補正すること
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項1〜11のいずれか記載の車間制御装置において、
前記補正手段は、
前記相対加速度に基づいて補正量を算出し、この補正量を用いて前記車間制御量を補正すること
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項1〜16のいずれか記載の車間制御装置において、
前記補正手段は、
前記車間制御量としての目標加速度に前記相対加速度に基づく補正量を加算することによって補正すること
を特徴とする車間制御装置。 - 請求項1〜17のいずれか記載の車間制御装置の物体認識手段、先行車選択手段、車間制御手段、正常検知状態判定手段及び補正手段としてコンピュータシステムを機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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