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JP3857999B2 - 魚釣用スピニングリール - Google Patents

魚釣用スピニングリール Download PDF

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JP3857999B2
JP3857999B2 JP2003126460A JP2003126460A JP3857999B2 JP 3857999 B2 JP3857999 B2 JP 3857999B2 JP 2003126460 A JP2003126460 A JP 2003126460A JP 2003126460 A JP2003126460 A JP 2003126460A JP 3857999 B2 JP3857999 B2 JP 3857999B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は魚釣用スピニングリールに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、魚釣用スピニングリールには、ロータの釣糸繰り出し方向(逆転方向)への回転を防止する逆転防止装置が設けられている。この逆転防止装置は、切換機構の操作によって、作動状態(ロータ逆転防止状態;ON)と非作動状態(ロータ逆転可能状態;OFF)とに切換えられる。
【0003】
ところで、このようなスピニングリールは、掛かった魚を走らせながら釣るために、逆転防止装置がOFFに切換えられた(ロータが逆転可能状態に設定された)状態で使用される場合がある。しかしながら、この場合、掛かった魚が沖や根に向かって走ると、ハンドルやロータが高速で逆回転するため、直ちに巻き取り動作に移行することができず、また、走った魚が急に停止すると、ロータがオーバーランして、バックラッシュ現象(糸ふけ)等が生じる虞がある。
【0004】
そのため、スピニングリールの中には、ロータの逆回転に制動力を付与する制動機構を備えたものがある。このような制動機構によれば、魚種、魚のファイト状況等、釣り状況に応じてロータの逆回転を制御することができるため、掛かった魚をトラブルなく捕り込むことが可能となる。
前記制動機構を有するスピニングリールは、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3等に開示されている。
【0005】
特許文献1に開示されたスピニングリールは、ロータの逆回転動作に連動して回転する制動板と、リール本体の脚部に設けられ且つ制動板に制動力を付与する操作レバーと、ロータと一体に回転する逆転防止歯車とを備えている。逆転防止歯車には係止爪がバネの付勢力によって常時係止されており、これによって、ロータの逆回転が防止される。操作レバーが引き上げ操作されると、係止爪がバネの付勢力に抗して逆転防止歯車から外されて、ロータの逆転が可能になるとともに、逆転するロータに制動板を介して制動力が付与される。すなわち、操作レバーの操作に連動してロータが逆転防止状態から逆転可能状態に切換えられる(ロータの逆転制動時にロータの逆転防止状態が自動的に解除される)ようになっている。
【0006】
また、特許文献2に開示されたスピニングリールは、ロータの逆転時にのみ一方向クラッチを介してロータと一体的に回転する制動板と、リール本体の脚部に設けられ且つ制動板に制動力を付与する操作レバーと、ロータと一体に回転する逆転防止歯車とを備えている。また、このスピニングリールは、逆転防止歯車に係止爪を係止させてロータの逆転を防止する逆転防止位置と逆転防止歯車から係止爪を外してロータの逆転を許容する逆転可能位置との間で切換えられる切換レバーを有している。そして、切換レバーが逆転防止位置に位置している状態で操作レバーが引き上げ操作されると、それに連動して切換レバーが逆転可能位置に切換えられ、係止爪が逆転防止歯車から外されるようになっている。
また、特許文献3に開示されたスピニングリールは、ロータの逆転時にのみ一方向クラッチを介してロータと一体的に回転する制動板と、リール本体の脚部に設けられ且つ制動板に制動力を付与する操作レバーと、操作レバーによって制動板に制動力が付与された状態を保持する保持レバーとを備えている。
【0007】
【特許文献1】
実開昭60−5369号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平9−23790号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平9−140303号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1に開示されたスピニングリールの構成では、操作レバーをある程度元の位置に戻すと、係止爪がバネの付勢力によって逆転防止歯車に係合してしまう。すなわち、操作レバーを強く引いている場合には、ロータの逆転を制動できるものの、操作レバーを引く力を弱めたり、あるいは、操作レバーから手を離したりした場合には、ロータの逆転が防止されてしまう。したがって、ロータの逆回転に弱い制動をかけたり、制動をかけることなくロータをフリーに逆回転させることが不可能であり、魚との微妙なやりとりを行なうことが困難である。そのため、大物をバラしてしまう虞がある。
【0011】
また、特許文献2に開示されたスピニングリールの場合、ロータの逆転防止状態から逆転可能状態への切換えは、切換レバーおよび操作レバーの両者で行なうことができるが、ロータの逆転可能状態から逆転防止状態への切換えは切換レバーによってしか行なうことができない。したがって、実釣時の状況変化により、逆転可能状態から逆転防止状態に切換える場合には、操作レバーを操作する手と反対の手の指で切換レバーを操作しなければならず、操作性が非常に悪く、魚とのやりとりを容易且つ迅速に行なうことができない。特に、操作レバーを操作する手と反対の手で玉網等を持っている場合には、切換レバーの操作を行なうことができず、魚をバラしてしまう虞がある。
【0012】
また、特許文献3に開示されたスピニングリールの場合も、実釣時に、操作レバーと保持レバーとを使い分ける必要があるため、操作性の点で問題がある。また、2つのレバーがリール本体から大きく突出して設けられているため、リール全体が大型化し、携帯性の点で問題がある。
【0013】
本発明は前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、ロータの逆回転制動力調節状態とロータ逆転防止状態またはロータ逆回転制動保持状態との両状態に容易且つ迅速に切換え操作できる操作性の良好な魚釣用スピニングリールを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明は、リール本体に設けたハンドルの回転操作により、前後動するスプールに釣糸案内装置を介して釣糸を巻回するロータと、このロータに一方向クラッチを介して連結され、ロータがこの釣糸を巻回する方向に対して逆回転したときにこのロータと一体に回転するブレーキロータとを備え、ロータが逆回転したときに、このブレーキロータを介してロータを制動可能とした魚釣用スピニングリールにおいて、指が引掛けられる操作部を一端に有しかつリール本体の脚部に回動可能に設けられた操作レバーの他端で、リール本体内に設けられた制御部材を作動させることによって、前記ブレーキロータを介してロータの逆回転に一定の抵抗力を付与する係合位置と、ブレーキロータから抵抗力を解除してロータの正逆回転を許容する離間位置の両位置に、前記制御部材を切換可能とし、この制御部材が前記係合位置に配置されたときに、リール本体の係止部材がブレーキロータの係止部に噛み合ってロータの逆回転が防止されることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1〜図4は本発明の第1の実施形態を示している。図1に示すように、本実施形態の魚釣用スピニングリール1は、リール本体1aと、リール本体1aから延出する脚部1bと、脚部1bの端部に形成され且つ図示しない釣竿に取り付けられる竿取付部1cとを有している。リール本体1a内にはハンドル軸2が回転可能に支持されており、リール本体1aから突出するハンドル軸2の端部には図示しないハンドルが固定されている。
【0016】
ハンドル軸2にはドライブギア3が取り付けられており、このドライブギア3には、ハンドル軸2に対して直交する方向に延在し且つ軸受け11を介して回転可能に支持されたピニオンギア13が噛合している。このピニオンギア13の先端部には、ベール6および釣糸案内装置15を備えたロータ8が一体的に取り付けられている。
【0017】
また、ピニオンギア13の内部には、ハンドル軸2と直交する方向に摺動可能に支持されたスプール軸9が挿通されており、スプール軸9の先端部には釣糸が巻回されるスプール10が着脱可能に取付けられている。また、ドライブギア3には、オシレーティング機構19が係合している。このオシレーティング機構19は、ハンドル軸2がハンドルの回転操作によって回転された時、スプール軸9を軸方向に沿って往復駆動する。
【0018】
このような構成では、ハンドルを回転操作してハンドル軸2を回転させると、オシレーティング機構19を介してスプール軸9に取り付けられたスプール10が前後に往復動するとともに、ドライブギア3およびピニオンギア13を介してロータ8が回転駆動する。したがって、スプール10には、釣糸案内装置15を介して、釣糸が均等に巻回される。
【0019】
また、リール本体1aには、ロータ8の逆回転に制動力を付与する制動機構と、ロータ8の逆回転を防止する逆転防止機構とが設けられている。これらの機構は、支軸7を介して脚部1bに回動可能に取り付けられた操作レバー5によって操作される。操作レバー5の一端部には指が引掛けられる操作部5aが形成されている。また、リール本体1a内に位置する操作レバー5の他端部には、ビス12を介して押圧プレート14が取り付けられている。押圧プレート14の端部には、後述する制動機構のブレーキシュー17を押圧する押圧部14aが形成されている。
【0020】
なお、後述するが、操作レバ−5が図1に示す初期位置からA方向に押し上げ操作されると、押圧部14aによってブレーキシュー17が押圧されて制動機構が働くとともに、操作レバー5が初期位置からB方向に押し下げ操作されると、逆転防止機構が働くようになっている。また、押圧プレート14とリール本体1aのブラケット18との間には、操作レバー5を初期位置に常時保持する引張りバネ16が設けられている。したがって、操作レバー5を支軸7を中心にA方向(時計回り)に押し上げ操作した後、その操作力を解除すると、バネ16の付勢力によって操作レバー5が初期位置に復帰される。
【0021】
図2に拡大して示すように、ロータ8の逆回転に制動力を付与する制動機構は、一方向クラッチ20を介してピニオンギヤ13に取り付けられたブレーキロータ31と、このブレーキロータ31の表面にビスを介して取り付け固定されたリング状の制動板(ブレーキディスク)33と、この制動板33を跨ぐように配され且つリール本体1aのフレーム1fに支持された圧接片35と、フレーム1fに移動可能に保持され且つ制動板33と圧接可能な方向に摺動する例えば木製のブレーキシュー17とを備えている。
【0022】
一方向クラッチ20は、ピニオンギア13に対して回り止め嵌合された内輪21と、内輪21の外側に配された保持器27と、保持器27の外側に配された外輪25とを有している。保持器27は複数の転動部材を保持しており、各転動部材は保持器27に設けられたバネ部材によって一方向に付勢されている。また、外輪25の内周面には、各転動部材がフリーに回転できるフリー回転領域と、各転動部材の回転を阻止する楔領域とが形成されている。このような構成の一方向クラッチ20は、ピニオンギア13とともに内輪21が正回転する(ロータ8が糸巻き取り方向に回転する)と、保持器27の転動部材が外輪25のフリー回転領域に位置され、内輪の21の回転力が外輪25に伝達されない。しかし、ピニオンギア13とともに内輪21が逆回転する(ロータ8が糸繰り出し方向に回転する)と、保持器27の転動部材が外輪25の楔領域に位置され、内輪21の回転力が外輪25に伝達される。
【0023】
外輪25の外周には保持体29が圧入嵌合されている。また、保持体29の外周にはブレーキロータ31が回転不能に嵌合されている。具体的には、保持体29の外周面には、保持体29の周方向に沿って互いに所定の間隔で配置された複数の突出部29a…が形成されており、突出部29a,29a間には、ブレーキロータ31からスプール軸9の軸方向に沿って延出する複数の延出部31aのそれぞれが嵌合している。すなわち、ブレーキロータ31は、突出部29aと延出部31aとの噛み合いによって保持体29に対して回転不能に嵌合されるとともに、保持体29に対して軸方向にのみ移動できるようになっている。
【0024】
なお、ブレーキロータ31は、操作レバー5からブレーキシュー17を介して作用する押圧力が解除されると、バネ61(図2参照)の付勢力により保持体29に沿って軸方向に移動され、図1に示される初期位置に戻されるようになっている。
【0025】
一方向クラッチ20を介したピニオンギア13とブレーキロータ31との以上のような連結構造によれば、ブレーキロータ31と保持体29は、ピニオンギア13が逆回転した時にのみ、一方向クラッチ20を介してピニオンギア13(したがってロータ8)と直結され、ロータ8と一体に回転する。
【0026】
ブレーキロータ31の裏面の周縁部には、周方向に互いに所定の間隔で配置された複数(例えば8個)の係合突部40が突出形成されている。各係合突部40には、ロータ8が逆回転した時に後述する係合爪43aを係合突部40間の隙間に案内するテーパ面と、係合突部40間の隙間に位置した係合爪43aと当接するストッパ面とが形成されている。
【0027】
一方、ロータ8には、回動部材43がピン42を介してブレーキロータ31側に向けて回動自在に支持されている。回動部材43の一端には、係合突部40間の隙間に係合可能な係合爪43aが屈曲形成されている。また、ロータ8には、ブレーキロータ31側に向けて、回動部材43の各方向への回動を規制する2つのボスが突出形成されている。また、回動部材43にはU字状に切り込まれた溝が形成されており、この溝には、保持体29に抱き付くように巻回保持されたリーフスプリング45の端部が固定されている。
【0028】
ロータ8の逆転を防止する逆転防止機構は、操作レバー5の他端部もしくは押圧プレート14に突出形成された作動体50と、支軸52に回動可能に支持され且つ作動体50によって回動される制御カム54と、リール本体1aのフレーム1fに移動可能に保持され且つ制御カム54の回動によって制動板33に向けて移動される係止爪56と、制動板33の内周面に形成され且つ係止爪56と噛み合う複数の係止溝33aとから成る。制御カム54は、作動体50と当接する第1および第2の当接部54a,54bと、係止爪56と当接する第3の当接部54cとを有している。第1の当接部54aと第2の当接部54bとの間には作動体50が位置され、また、第3の当接部54cは係止爪56の端部から側方に突出する突出部56aと当接している。制御カム54は、制御カム54とブラケット18との間に設けられた振り分けバネ58によって回動方向に常時付勢されている。また、係止爪56は、支軸52に巻回保持されたバネ57によって、制動板33の係止溝33aと噛み合う方向に常時付勢されている。
【0029】
前記構成では、操作レバー5が図1に示される初期位置に位置している場合、振り分けバネ58の付勢力(制御カム54に対しこれを図中反時計回りに回動させる方向に作用する)によって制御カム54の第1の当接部54aが作動体50に当接されるとともに、係止爪56の突出部56aと当接する第3の当接部54cがバネ57の付勢力に抗して係止爪56を制動板33から離間させた状態に保持する。したがって、この初期位置は、ブレーキロータ31から抵抗力を解除してロータ8の正逆回転を許容する離間位置でもある。また、操作レバー5が初期位置からB方向に押し下げ操作される(図4参照)と、作動体50が振り分けバネ58の付勢力に抗して制御カム54を図中時計回りに回動させる。この時、振り分けバネ58は、制御カム54の回動に伴って揺動するが、そのデットポイントを超えた時点で制御カム54に対しこれを時計回りに回動させる方向で付勢力を付与するようになる。したがって、その後、制御カム54は、作動体50によらず、振り分けバネ58の付勢力によって時計回りに回動することとなる。これにより、第1の当接部54aが作動体50から離間するとともに、第3の当接部54cに当接する係止爪56が制動板33に向けて移動される。そして、ブレーキロータ31の係止部である制動板33が、係止溝33aを介してリール本体の係止部材である係止爪56噛み合い、第2の当接部54bが作動体50と当接した時点で、制御部材として作用する制御カム54の回動が停止される。すなわち、係止溝33aと係止爪56との噛み合い状態が保持され、また、操作レバー5がB方向に押し下げられたロータ逆転防止位置、すなわちロータの逆回転を防止する係合位置に保持される。
【0030】
次に、前記構成のスピニングリール1の動作について説明する。
【0031】
まず、操作レバー5が図1に示す初期位置に保持された状態で、ハンドルを介してピニオンギア13を正回転させると、ピニオンギア13に取り付けられたロータ8も一体で正回転する(糸巻き取り方向に回転する)。しかしながら、この時、ブレーキロータ31は、一方向クラッチ20の前記連結作用により回転しない。また、ロータ8に支持されこれとともに正回転する回動部材43は、リーフスプリング45の作用によって逆回転方向に力を受け、ピン42を中心に回動してその一端部がロータ8の前記ボスに当て付いて、係合爪43aがブレーキロータ31の係合突部40から離間するように内側に退避される。したがって、回動部材43は、ブレーキロータ31に何等規制されることなく、ロータ8とともに自由に正回転する。よって、この状態で、操作レバー5をA方向に押し上げ操作して、ブレーキシュー17と圧接片35との間で制動板33を挟圧しても(この場合、ブレーキロータ31はブレーキシュー17による押圧力によって図3に示すように保持体29に沿って軸方向に移動する)、ロータ8には制動力が全く作用しない。
【0032】
また、操作レバー5が初期位置に保持された状態で、ピニオンギア13が逆回転されると、ピニオンギア13に取り付けられたロータ8も一体で逆回転する(糸繰り出し方向に回転する)。この時、ブレーキロータ31も一方向クラッチ20の前記連結作用によりロータ8とともに逆回転する。したがって、この状態で、操作レバー5をA方向に押し上げ操作することにより、ブレーキシュー17と圧接片35との間で制動板33を挟圧し、ブレーキロータ31の回転に制動をかける(図3参照)と、ブレーキロータ31と直結状態で一体に回転するロータ8にも一方向クラッチ20を介して操作レバー5の回動量に応じた制動力がタイムラグを生じることなく作用する。この場合、一方向クラッチ20の外輪25の楔領域には、ブレーキロータ31に付与される制動力とロータ8の回転力とが互いに反対方向に作用するが、これらの力が一方向クラッチ20の許容荷重範囲内であれば、ロータ8とブレーキロータ31は互いに対して回転しない。つまり、制動時でもロータ8とブレーキロータ31とが一体に回転する。したがって、ロータ8と一体に回転する回動部材43の係合爪43aはブレーキロータ31と噛み合わず、ロータ8の回転力(例えば魚が引く力)は全て一方向クラッチ20により受けられる。しかし、外輪25の楔領域に作用する力(ロータ8の回転力およびブレーキロータ31に作用する制動力)が一方向クラッチ20の許容荷重を超えると、一方向クラッチ20が滑り、ブレーキロータ31に対してロータ8が回転し始める。これにより、ロータ8と一体で逆回転している回動部材43は、リーフスプリング45の作用によって正回転方向に力を受け、ピン42を中心に回動してその一端部がロータ8の前記ボスに当て付いて、係合爪43aがブレーキロータ31の係合突部40間に突出するようになる。その結果、ロータ8とブレーキロータ31とが噛み合い、これらが一体となって逆回転する。したがって、その後、ブレーキロータ31に作用する制動力は、一方向クラッチ20を介することなく、直接にロータ8に作用し、ロータ8の回転力(例えば魚が引く力)は全てブレーキロータ31により受けられる。
【0033】
一方、図4に示すように、操作レバー5をB方向に押し下げ操作すると、前述したように、作動体50を介して制御カム54が図中時計回りに回動される。これにより、第3の当接部54cに当接する係止爪56が制動板33に向けて移動され、制動板33の係止溝33aに係止爪56が噛み合ってブレーキロータ31の回転が阻止される。したがって、この状態で、ハンドルを介してピニオンギア13を逆回転させようとしても、一方向クラッチ20を介してピニオンギア13に直結されたブレーキロータ31の回転が阻止されているため、ピニオンギア13したがってロータ8は逆回転しない。無論、この状態でピニオンギア13を正回転させれば、一方向クラッチ20を介したブレーキロータ31とピニオンギア13との直結状態が解除されるため、ロータ8は正回転することができる。
【0034】
なお、操作レバー5を初期位置に戻すと、作動体50および振り分けバネ58によって制御カム54が図中反時計回りに回動され、制御カム54の第3の当接部54cと当接する係止爪56がバネ57の付勢力に抗して初期位置に戻される(図1参照)。これにより、制動板33の係止溝33aと係止爪56との噛み合いが外れ、ブレーキロータ31の回転が可能となる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態のスピニングリール1によれば、ロータ8に正回転のみならず逆回転をも許容する第1の状態(初期状態)と、ロータ8に制動力を調節しつつ付与し得る第2の状態(図3参照)と、ロータ8の逆回転を防止する第3の状態(図4参照)とを1つの操作レバー5によって切換えることができる。したがって、前記3つの状態間での切換操作を容易且つ迅速に行なうことができ、実釣時の状況変化に迅速に対応することができる。そのため、魚との微妙なやりとりを確実に行なうことができ、掛かった魚をバラシたり、瞬時に釣糸が切られるといった事態を回避することができる。また、操作レバー5以外の操作手段を操作する必要がないため、操作性に優れ、また、操作レバー5以外に操作手段を設ける必要がないため、リール全体をコンパクトに構成でき、携帯性に優れている。また、これにより、外観デザインの自由度も増し、良好な外観に設計し得る。
【0036】
また、本実施形態のスピニングリール1によれば、操作レバー5の切換え操作によって前記第1の状態と第3の状態とが保持される。したがって、操作力の加減によって前記2つの状態が切換わって、意図しないロータ動作が行なわれることを防止できる。
【0037】
また、本実施形態のスピニングリール1では、ロータ8の逆回転に制動をかける場合、魚の引き等に伴うロータ8の回転力が一方向クラッチ20の許容荷重範囲内であれば、ブレーキロータ31に付与される制動力が楔作用による逆転遊度の小さい転がり式一方向クラッチ20を介してロータ8に作用し、ロータ8の回転力が一方向クラッチ20の許容荷重を超えると、ブレーキロータ31に付与される制動力が一方向クラッチ20を介することなく直接にロータ8に作用するようになっている。すなわち、本実施形態では、許容荷重は大きいが制動力の伝達に若干の遅れが生じるブレーキロータ31とロータ8との噛み合い伝達機構(回動部材43の係合爪43aとブレーキロータ31の係合突部40との噛み合いによる力伝達機構)と、許容荷重は小さいが制動力の伝達をリニアに行なうことができる一方向クラッチ20による力伝達機構とを有機的に結合させ、一方の機構の欠点とするところを他方の機構で補うといった制動力伝達構成を採用している。
【0038】
したがって、ロータ8の回転力が小さい場合には、この力が一方向クラッチ20によって受けられるとともに制動力が一方向クラッチ20を介してロータ8にリニアに伝達され、また、大物の魚が掛かる等してロータ8が高速で逆転し、一方向クラッチ20の転動部材が滑った場合には、ブレーキロータ31とロータ8とが噛み合い、確実にロータ8の逆回転にブレーキロータ31が追従して一体回転される(したがって、ブレーキロータ31に付与される制動力がロータ8に直接に作用する)とともに、一方向クラッチに20にかかっていたロータ回転力がブレーキロータ31によってそのまま受けられて、一方向クラッチ20の破損が防止される。これにより、咄嗟のロータ高速逆回転時においても安定したロータ逆転制動が可能となり、実釣時のトラブルを防止できる。すなわち、十分な許容荷重を確保しつつ、制動力の伝達の応答性を良好にすることができる。
【0039】
また、このような構成において、転がり式一方向クラッチ20の転動部材の滑りは、係合爪43aが係合突部40と噛み合うまでの最小量(係合爪43aの逆転許容範囲内の最小)に抑えられるため、転動部材および外輪25の損傷・摩耗を極力防止でき、楔作用の性能維持および寿命向上を図ることができる。
【0040】
また、本実施形態の逆転防止機構では、係止爪56と噛み合う複数の係止溝33aが制動板33の外周面ではなく内周面に形成されている。したがって、係止爪56等の駆動要素がリール本体1aの内側に配設されることとなり、リール全体を径方向に大型化することなくコンパクトにすることが可能となる。
【0041】
また、本実施形態のスピニングリール1では、ブレーキロータ31が、突出部29aと延出部31aとの噛み合いによって保持体29に対して回転不能に嵌合されるとともに、保持体29に対して軸方向にのみ移動できるようになっている。本実施形態のように、ブレーキロータ31(制動板33)の周辺部にブレーキシュー17を介して制動力が作用する構成では、ブレーキシュー17からの押圧力によってブレーキロータ31がスプール軸9の軸方向に対して角度を持って移動されることとなり、その場合には、スプール軸9に偏荷重が作用して、ロータの8の正回転動作が重くなる等の不具合が生じる。しかし、保持体29に対してブレーキロータ31が軸方向にのみ移動できるように構成すれば、ブレーキシュー17からの押圧力を軸方向で逃がすことができるため、前述したような不具合を解消できる。
【0042】
図5〜図7は本発明の第2の実施形態を示している。本実施形態のスピニングリール1Aは、逆転防止機構を有していない点、一定の制動力をロータ8に付与した状態を保持できる制動力保持機構が設けられている点、および一方向クラッチ20を備えていない点を除き、第1の実施形態と同一であるため、以下、第1の実施形態と共通の構成要素については同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
【0043】
図5および図6に示すように、本実施形態のスピニングリール1Aでは、ブレーキロータ31が一方向クラッチではなくカラー62を介してピニオンギア13に回転自在に取り付けられている。ブレーキロータ31とロータ8との間には、ブレーキロータ31をフレーム1f側に設けられたピニオンギア13に回り止め固定されたストッパ部66に押し当てる方向に付勢するバネ61が介挿されている。ブレーキロータ31は、ブレーキシュー17によって押圧されると、バネ61の付勢力に抗して軸方向に移動され、その制動板33が圧接片35に押し付けられる。
【0044】
なお、操作レバー5と脚部1bとの間には、操作レバー5を図5に示す初期位置に常時保持する押圧バネ60が設けられている。したがって、操作レバー5を支軸7を中心にA方向(時計回り)に押し上げ操作した後、その操作力を解除すると、バネ60の付勢力によって操作レバー5が初期位置に復帰される。また、回動部材43に形成されたU字状の溝には、ブレーキロータ31に抱き付くように巻回保持されたリーフスプリング45の端部が固定されている。さらに、リール本体1a内に位置する操作レバー5の他端部には、ブレーキシュー17を押し出す操作部5bが形成されている。
【0045】
また、前記制動力保持機構は、操作レバー5の他端部に設けられた軸部65と、支軸64に回動可能に支持され且つ軸部65によって回動される制御カム63と、制御カム63を回動方向に常時付勢する振り分けバネ58と、制御カム63に突出形成され且つ制御カム63の回動によってブレーキシュー17と当接してこれを押し出す当接部63bとを有している。制御カム63には長穴63aが形成されており、この長穴63aに操作レバー5の軸部65が係合している。長穴63aの長さは、操作レバー5の操作部5bによって移動されるブレーキシュー17のストローク(ブレーキシュー17が図5に示す初期位置から制動板33を圧接片35に当接させる位置まで移動する距離)よりも長く設定されている。また、ブレーキシュー17は、操作レバー5の操作部5bと当接して制動板33に押し当てられる押圧部17aと、制御カム63の当接部63bと当接する延出部17bとから成り、フレーム1fとの間に介挿された圧縮バネ67によって制動板33から離間する方向に常時付勢されている。
【0046】
前記構成では、操作レバー5が図5に示される初期位置に位置している場合、振り分けバネ58の付勢力(制御カム63に対しこれを図中反時計回りに回動させる方向に作用する)によって、制御カム63の長穴63aの上側終端部が軸部65に当接されるとともに、制御カム63の当接部63bが後側に退避される。したがって、ブレーキシュー17は、圧縮バネ67の付勢力によってその延出部17bが当接部63bに押し当てられ(押圧部17aも操作部5bに押し当てられている)、制動板33から離間した状態に保持される。また、この状態では、操作レバー5をA方向に押し上げ操作しても、長穴63aの長さがブレーキシュー17のストロークよりも長く設定されているため、軸部65は長穴63a内を単に移動するだけであり、軸部65によって制御カム63が時計回りに回動されることはない。
【0047】
また、操作レバー5が初期位置からB方向に押し下げ操作される(図7参照)と、軸部65が振り分けバネ58の付勢力に抗して制御カム63を図中時計回りに回動させる。この時、振り分けバネ58は、制御カム63の回動に伴って揺動するが、そのデットポイントを超えた時点で制御カム63に対しこれを時計回りに回動させる方向で付勢力を付与するようになる。したがって、その後、制御カム63は、軸部65によらず、振り分けバネ58の付勢力によって時計回りに回動することとなる。これにより、当接部63bと当接するブレーキシュー17が圧縮バネ67の付勢力に抗して押し出され、ブレーキシュー17が圧接片35との間で制動板33を挟圧して制御カム63の長穴63aの下側終端部が軸部65に当接した時点で、制御カム63の回動が停止される。すなわち、ブレーキシュー17による制動板33の押圧状態(ロータ制動状態)が保持され、また、操作レバー5がB方向に押し下げられた位置に保持される。
【0048】
次に、前記構成のスピニングリール1Aの動作について説明する。
【0049】
まず、操作レバー5が図5に示す初期位置に保持された状態で、ハンドルを介してピニオンギア13を正回転させると、ピニオンギア13に取り付けられたロータ8も一体で正回転する(糸巻き取り方向に回転する)。この時、ブレーキロータ31も、バネ61による摩擦力等によって一体に回転する。この状態で、操作レバー5をA方向に押し上げ操作し、ブレーキシュー17を介してブレーキロータ31の回転に制動をかけると、ロータ8に支持されこれとともに正回転する回動部材43は、リーフスプリング45の作用によって逆回転方向に力を受け、ピン42を中心に回動してその一端部がロータ8の前記ボスに当て付いて、係合爪43aがブレーキロータ31の係合突部40から離間するように内側に退避される。したがって、回動部材43は、ブレーキロータ31に何等規制されることなく、ロータ8とともに自由に正回転する。つまり、ブレーキロータ31の停止とは関係なくロータ8のみが回転したままとなり、ロータ8には制動力が全く作用しない。
【0050】
また、操作レバー5が初期位置に保持された状態で、ピニオンギア13が逆回転されると、ピニオンギア13に取り付けられたロータ8も一体で逆回転する(糸繰り出し方向に回転する)。この時、ブレーキロータ31もバネ61による摩擦力等によって一体に逆回転する。したがって、この状態で、操作レバー5をA方向に押し上げ操作することにより、ブレーキシュー17と圧接片35との間で制動板33を挟圧し、ブレーキロータ31の回転に制動をかけると、ロータ8と一体で逆回転している回動部材43は、リーフスプリング45の作用によって正回転方向に力を受け、ピン42を中心に回動してその一端部がロータ8の前記ボスに当て付いて、係合爪43aがブレーキロータ31の係合突部40間に突出するようになる。その結果、ロータ8とブレーキロータ31とが噛み合い、これらが一体となって逆回転する。したがって、ブレーキロータ31に作用する制動力が直接にロータ8に作用する。
【0051】
一方、図7に示すように、操作レバー5をB方向に押し下げ操作すると、前述したように、軸部65を介して制御カム63が図中時計回りに回動される。これにより、当接部63bと当接するブレーキシュー17が圧縮バネ67の付勢力に抗して押し出され、ブレーキシュー17が圧接片35との間で制動板33を挟圧して制御カム63の長穴63aの下側終端部が軸部65に当接した時点で、制御カム63の回動が停止される。すなわち、ブレーキシュー17による制動板33の押圧状態が保持され、また、操作レバー5がB方向に押し下げられた位置に保持される。したがって、この状態で、ハンドルを介してピニオンギア13を逆回転させると、操作レバー5をA方向に押し上げ操作した場合と同様の動作によって、ロータ8に所定の制動力(振り分けバネ58のバネ力に依存する)が作用する。また、この状態で、ピニオンギア13を正回転させると、前述した理由によりロータ8はブレーキロータ31の停止とは関係なく自由に回転し、ロータ8に制動力が全く作用しない。
【0052】
なお、操作レバー5を初期位置に戻すと、軸部56および振り分けバネ58によって制御カム63が図中反時計回りに回動され、当接部63bと当接するブレーキシュー17が圧縮バネ67の付勢力によって図5に示す初期位置に戻される。
【0053】
以上説明したように、本実施形態のスピニングリール1Aによれば、ロータ8に正回転のみならず逆回転をも許容する第1の状態(初期状態)と、ロータ8に制動力を調節しつつ付与し得る第2の状態と、ロータ8に対する制動力の付与状態を保持する第3の状態(図7参照)とを1つの操作レバー5によって切換えることができる。したがって、前記3つの状態間での切換操作を容易且つ迅速に行なうことができ、実釣時の状況変化に迅速に対応することができる。そのため、魚との微妙なやりとりを確実に行なうことができ、掛かった魚をバラシたり、瞬時に釣糸が切られるといった事態を回避することができる。また、操作レバー5以外の操作手段を操作する必要がないため、操作性に優れ、また、操作レバー5以外に操作手段を設ける必要がないため、リール全体をコンパクトに構成でき、携帯性に優れている。また、これにより、外観デザインの自由度も増し、良好な外観に設計し得る。
【0054】
また、本実施形態のスピニングリール1Aによれば、操作レバー5の切換え操作によって前記第1の状態と第3の状態とが保持される。したがって、操作力の加減によって前記2つの状態が切換わって、意図しないロータ動作が行なわれることを防止できる。
【0055】
図8は本発明の第3の実施形態を示している。本実施形態のスピニングリール1Bは、押圧プレート14の端部によってロータ8に直接に制動をかける点、ブレーキロータ31と噛み合う回動部材43がロータ8に設けられていない点、および、ブレーキロータ31が制動機構としてではなく逆転防止機構として機能している点を除き、第1の実施形態と同一であるため、以下、第1の実施形態と共通する構成要素については同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
【0056】
図示のように、押圧プレート14の端部には、ロータ8の内面と対向する制動部14bが形成されている。この制動部14bは、操作レバー5がA方向に操作されると、ロータ8の内面に設けられた制動リング8aと当接してロータ8に制動力を付与する。ピニオンギア13に一方向クラッチ20を介して取り付けられたブレーキロータ31には、第1の実施形態と異なり、係合突部40が設けられていない。また、ブレーキシュー17および圧接片35も設けられていない。
【0057】
このような構成のスピニングリール1Bでは、まず、操作レバー5が図示の初期位置に保持された状態で、ハンドルを介してピニオンギア13を正回転させると、ピニオンギア13に取り付けられたロータ8も一体で正回転する(糸巻き取り方向に回転する)。しかしながら、この時、ブレーキロータ31は、一方向クラッチ20の連結作用により回転しない。この状態で、操作レバー5をA方向に押し上げ操作して、押圧プレート14の操作部14bをロータ8の内面の制動リング8aに押し付けると、ロータ8に制動力が作用する。
【0058】
また、操作レバー5が初期位置に保持された状態で、ピニオンギア13が逆回転されると、ピニオンギア13に取り付けられたロータ8も一体で逆回転する(糸繰り出し方向に回転する)。この時、ブレーキロータ31は、一方向クラッチ20の連結作用によりロータ8とともに逆回転するが、ロータ8に対して何ら影響を及ぼすことなく遊んだ状態にある。この状態で、操作レバー5をA方向に押し上げ操作すると、正回転の場合と同様、押圧プレート14の操作部14bがロータ8の内面の制動リング8aに押し当てられ、ロータ8に制動力が作用する。
【0059】
一方、操作レバー5をB方向に押し下げ操作すると、作動体50を介して制御カム54が図中時計回りに回動される。これにより、第3の当接部54cに当接する係止爪56が制動板33に向けて移動され、制動板33の係止溝33aに係止爪56が噛み合ってブレーキロータ31の回転が阻止される。したがって、この状態で、ハンドルを介してピニオンギア13を逆回転させようとしても、一方向クラッチ20を介してピニオンギア13に直結されたブレーキロータ31の回転が阻止されているため、 ピニオンギア13したがってロータ8は逆回転しない。無論、この状態でピニオンギア13を正回転させれば、一方向クラッチ20を介したブレーキロータ31とピニオンギア13との直結状態が解除されるため、ロータ8は正回転することができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態のスピニングリール1Bによれば、ロータ8に正回転のみならず逆回転をも許容する第1の状態(初期状態)と、ロータ8に制動力を調節しつつ付与し得る第2の状態と、ロータ8の逆回転を防止する第3の状態とを1つの操作レバー5によって切換えることができる。したがって、前記3つの状態間での切換操作を容易且つ迅速に行なうことができ、実釣時の状況変化に迅速に対応することができる。そのため、魚との微妙なやりとりを確実に行なうことができ、掛かった魚をバラシたり、瞬時に釣糸が切られるといった事態を回避することができる。また、操作レバー5以外の操作手段を操作する必要がないため、操作性に優れ、また、操作レバー5以外に操作手段を設ける必要がないため、リール全体をコンパクトに構成でき、携帯性に優れている。また、これにより、外観デザインの自由度も増し、良好な外観に設計し得る。
【0061】
また、本実施形態のスピニングリール1Bによれば、操作レバー5の切換え操作によって前記第1の状態と第3の状態とが保持される。したがって、操作力の加減によって前記2つの状態が切換わって、意図しないロータ動作が行なわれることを防止できる。
【0062】
図9〜図18は本発明の第4の実施形態を示している。本実施形態のスピニングリール1Cは、逆転防止機構の一部および操作レバー5の構成・動作が異なる点を除き、第1の実施形態と同一であるため、以下、第1の実施形態と共通する構成要素については同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明することとする。
【0063】
図9に示すように、本実施形態のスピニングリール1Cの脚部1bには、支軸70を介して操作レバー5が回動可能に取り付けられている。支軸70は、操作レバー5を支持する球状支持部70aと、球状支持部70aから延びる水平軸部70bおよび垂直軸部70cとからなる。したがって、操作レバー5は、水平軸部70bを中心に上下方向(図中A,B方向)に回動できるとともに、垂直軸部70cを中心として横方向に回動できる。なお、球状支持部70aと操作レバー5との間には、操作レバー5の横方向の回動を許容するクリアランス71が設けられている(図11参照)。なお、操作レバー5と脚部1bとの間には、操作レバー5を上側回動方向に付勢するバネ75が介挿されている。
【0064】
脚部1bには、操作レバー5の回動を許容しつつ操作レバー5の他端側を部分的に保持する段付き溝が形成されている。この段付き溝は、水平軸部70bを中心とする操作レバー5の上下方向の回動のみ許容する内側の第1の嵌合溝72aと、垂直軸部70cを中心とする操作レバー5の横方向の回動をも許容する外側の第2の嵌合溝72bとからなる。第2の嵌合溝72bには、その操作レバー5を挟んだ他端側に、 操作レバー5を横方向に付勢する付勢手段が配設されている。この付勢手段は、操作レバー5の側面に当接する押圧板73と、押圧板73を付勢する圧縮バネ74とからなる。
【0065】
ロータ8の逆転を防止する逆転防止機構は、操作レバー5の他端部もしくは押圧プレート14に突出形成された切換レバー76と、支軸77に回動可能に支持され且つ切換レバー76によって回動される制御カム78と、リール本体1aのフレーム1fに移動可能に保持され且つ制御カム78の回動によって制動板33に向けて移動される係止爪56と、制動板33の内周面に形成され且つ係止爪56と噛み合う複数の係止溝33aとから成る。
【0066】
制御カム78は、切換レバー76と当接する第1の当接部78aと、係止爪56の当接面56aに当接される第2の当接部78bとを有している。また、制御カム78は、支軸77に巻回保持されたバネ79によって、切換レバー76と当接する方向に常時付勢されている。なお、係止爪56は、フレーム1fとの間に介挿されたバネ80によって、制動板33から離間する方向に常時付勢されている。
【0067】
前記構成では、操作レバー5が図9に示される初期位置に位置している場合(図9〜図13参照)、バネ79の付勢力によって制御カム78の第1の当接部78aが切換レバー76に当接されるとともに、係止爪56がバネ80の付勢力によって制御カム78の第2の当接部78bに当て付いて制動板33から離間した状態に保持される。また、操作レバー5は第1の嵌合溝72aに嵌合されてその横方向の回動が規制された状態にある。この状態から操作レバー5を水平軸部70bを中心にB方向に回動(押し下げ)操作すると、第1の嵌合溝72aに嵌合していた操作レバー5の他端側が第2の嵌合溝72bに進入する。この時、操作レバー5は、第2の嵌合溝72bに配設された押圧板73によって押圧され、垂直軸部70cを中心に横方向に回動して第2の嵌合溝72bに当て付き嵌合される(図14〜図18参照)。このように、操作レバー5が水平軸部70bおよび垂直軸部70cを中心に回動されると、切換レバー76によって制御カム78がバネ79の付勢力に抗して回動され、第2の当接部78bと当接する係止爪56がバネ80の付勢力に抗して制動板33に向けて移動される。そして、操作レバー5が第2の嵌合溝72bに当て付いて嵌合した段階で、制動板33の係止溝33aに係止爪56が噛み合う。すなわち、押圧板73と圧縮バネ74とからなる付勢手段によって操作レバー5が横方向回動位置(操作レバー5が第2の嵌合溝72bに当て付いて嵌合した状態)に保持され、これに伴って、係止溝33aと係止爪56との噛み合い状態が保持される。
【0068】
次に、前記構成のスピニングリール1Cの動作について説明する。
【0069】
操作レバー5が図9に示す初期位置に保持された状態でピニオンギア13を正回転および逆回転させた場合の動作は、第1の実施形態と同一である。また、ピニオンギア13の正逆回転時に操作レバー5をA方向に押し上げ操作した場合の動作も第1の実施形態と同一である。
【0070】
一方、操作レバー5を初期位置から水平軸部70bを中心にB方向に回動(押し下げ)操作すると、前述したように、操作レバー5は、その他端側が第2の嵌合溝72bに進入した時点で、押圧板73により垂直軸部70cを中心に横方向に回動され、 第2の嵌合溝72bに当て付き嵌合される( 図14〜図18参照)。これにより、制御カム78が切換えレバー76によって回動され、第2の当接部78bと当接する係止爪56が制動板33の係止溝33aと噛み合ってブレーキロータ31の回転が阻止される。したがって、この状態で、ハンドルを介してピニオンギア13を逆回転させようとしても、一方向クラッチ20を介してピニオンギア13に直結されたブレーキロータ31の回転が阻止されているため、ピニオンギア13したがってロータ8は逆回転しない。無論、この状態でピニオンギア13を正回転させれば、一方向クラッチ20を介したブレーキロータ31とピニオンギア13との直結状態が解除されるため、ロータ8は正回転することができる。
【0071】
なお、この状態から押圧板73の付勢力に抗して操作レバー5を第2の嵌合溝72b内で垂直軸部70cを中心に逆方向に回動させると、操作レバー5が第1の嵌合溝72aと対向した時点で、バネ75の付勢力により、操作レバー5が第1の嵌合溝72aと嵌合する初期位置に自動的に戻される。これにより、切換レバー76と当接する制御カム78がバネ79の付勢力によって回動されて図9に示す初期位置に戻されるとともに、制御カム78と当接する係止爪56もバネ80の付勢力によって制動板33から離間する初期位置(図9参照)に戻される。すなわち、制動板33の係止溝33aと係止爪56との噛み合いが外れ、ブレーキロータ31の回転が可能となる。
【0072】
このように、本実施形態のスピニングリール1Cによれば、第1の実施形態と全く同様の作用効果を得ることができる。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の魚釣用スピニングリールによると、フレーム本体から延びる脚部に回動可能に取り付けた操作レバーの操作のみで、実釣時の状況変化に迅速に対応することができ、更に、操作レバー以外の操作手段を設ける必要がないため、全体がコンパクトで携帯性に優れると共に、外観デザインの自由度を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るスピニングリールの一部断面を付した側面図である。
【図2】図1のスピニングリールの要部拡大断面図(初期位置)である。
【図3】図1のスピニングリールの要部拡大断面図(制動位置)である。
【図4】図1のスピニングリールの要部拡大断面図(逆転防止位置)である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るスピニングリールの一部断面を付した側面図である。
【図6】図5のスピニングリールの要部拡大断面図(初期位置)である。
【図7】図5のスピニングリールの要部拡大断面図(制動力保持位置)である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るスピニングリールの一部断面を付した側面図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るスピニングリールの要部拡大断面図(初期位置)である。
【図10】図9のA−A線に沿う断面図である。
【図11】図9のB−B線に沿う断面図である。
【図12】図9のC−C線に沿う断面図である。
【図13】図9のC−C線に沿う断面図である。
【図14】本発明の第4の実施形態に係るスピニングリールの要部拡大断面図(逆転防止位置)である。
【図15】図14のE−E線に沿う断面図である。
【図16】図14のF−F線に沿う断面図である。
【図17】図14のG−G線に沿う断面図である。
【図18】図14のH−H線に沿う断面図である。
【符号の説明】
1,1A,1B,1C…スピニングリール、1a…リール本体、5…操作レバー(操作部材)、8…ロータ、9…スプール軸。

Claims (1)

  1. リール本体に設けたハンドルの回転操作により、前後動するスプールに釣糸案内装置を介して釣糸を巻回するロータと、このロータに一方向クラッチを介して連結され、ロータがこの釣糸を巻回する方向に対して逆回転したときにこのロータと一体に回転するブレーキロータとを備え、ロータが逆回転したときに、このブレーキロータを介してロータを制動可能とした魚釣用スピニングリールにおいて、指が引掛けられる操作部を一端に有しかつリール本体の脚部に回動可能に設けられた操作レバーの他端で、リール本体内に設けられた制御部材を作動させることによって、前記ブレーキロータを介してロータの逆回転に一定の抵抗力を付与する係合位置と、ブレーキロータから抵抗力を解除してロータの正逆回転を許容する離間位置の両位置に、前記制御部材を切換可能とし、この制御部材が前記係合位置に配置されたときに、リール本体の係止部材がブレーキロータの係止部に噛み合ってロータの逆回転が防止されることを特徴とする魚釣用スピニングリール。
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