JP3739003B2 - 生分解性樹脂組成物 - Google Patents
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Description
かかる情勢に対処して、上記の腐食、分解しにくいプラスチック製品に代わる、自然界に存在する生物、特に土や水の中の微生物により容易に、そして、最終的に水と二酸化炭素に分解される各種の生分解性樹脂の開発がなされ、環境保全型製品として注目されている。
生分解性樹脂として、例えばポリヒドロキシカルボン酸の製造方法は、下記特許文献1に開示されている。
したがって本発明の目的は、優れた耐熱性を有するとともに、生分解性速度や溶融粘度の制御が可能な生分解性樹脂組成物を提供することにある。
即ち、本発明は以下の通りである。
1. L−乳酸を含む樹脂とD−乳酸を含む樹脂とを含有してなる生分解性樹脂組成物において、前記L−乳酸を含む樹脂が少なくともL−乳酸および糖類を共重合して得られる共重合樹脂であり、又は/及び、前記D−乳酸を含む樹脂が少なくともD−乳酸および糖類を共重合して得られる共重合樹脂であることを特徴とする生分解性樹脂組成物。
2. L−乳酸を含む樹脂とD−乳酸を含む樹脂とを含有してなる生分解性樹脂組成物において、前記L−乳酸を含む樹脂が少なくともL−乳酸、多価アルコールおよびクエン酸を共重合して得られる共重合樹脂であり、又は/及び前記D−乳酸を含む樹脂が少なくともD−乳酸、多価アルコール及びクエン酸を共重合して得られる共重合樹脂であることを特徴とする生分解性樹脂組成物。
本発明の生分解性樹脂組成物は、前記のように、L−乳酸を含む樹脂(1)と、D−乳酸を含む樹脂(2)とを含有してなることを特徴としている。なお、以下の説明において、L−乳酸を含む樹脂(1)およびD−乳酸を含む樹脂(2)を、それぞれ単に樹脂(1)および樹脂(2)と呼ぶことがある。
本発明で用いるL−およびD−乳酸は、商業的に容易に入手可能であり、例えば市販されている純度50%から95%までのいずれのものも利用可能であるが、入手の容易な90%乳酸が好ましい。
具体的には、本発明の第一の実施形態によれば、前記樹脂(1)が、少なくともL−乳酸および糖類を共重合して得られる共重合樹脂であり、前記樹脂(2)が、少なくともD−乳酸および糖類を共重合して得られる共重合樹脂であることが好ましい。
また、第二の実施形態によれば、前記樹脂(1)が、少なくともL−乳酸、多価アルコールおよび多価カルボン酸を共重合して得られる共重合樹脂であり、前記樹脂(2)が、少なくともD−乳酸、多価アルコールおよび多価カルボン酸を共重合して得られる共重合樹脂であることが好ましい。
これらの実施形態によれば、得られる樹脂組成物にとくに柔軟性を付与することができる。
第一実施形態で用いるL−およびD−乳酸は、前記のように例えば市販されている純度50%から95%までのいずれのものも利用可能であるが、入手の容易な90%乳酸が好ましい。
また、樹脂(1)および(2)において使用される糖類としては、とくに制限されないが、澱粉、ブドウ糖、ショ糖、酢酸セルロース等が挙げられ、中でも原料コスト、反応性等の点から澱粉が好ましい。
また、樹脂(1)および(2)において、糖類の使用割合は、0.01〜20質量%が好ましい。糖類の使用割合を0.01質量%以上にすることによって、生分解性速度や溶融粘度の制御が容易となる。また糖類の使用割合を20質量%以下にすることによって、着色を防止し、樹脂強度をさらに高めることができる。
なお、共重合樹脂(1)および(2)それぞれは、糖類の種類は同じであってもよいが、異なっていてもよい。
樹脂(1)および(2)において、多価アルコールとしては、例えばポリビニルアルコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられ、中でも得られる樹脂の吸湿性を低減することのできるポリプロピレングリコールが好ましい。この場合のポリプロピレングリコールの分子量は、1000〜3000が好ましい。
樹脂(1)および(2)において、多価カルボン酸としては、2個以上のカルボキシル基を有する化合物であればとくに制限されないが、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等が挙げられ、中でもクエン酸が好ましい。
また、樹脂(1)および(2)において、多価アルコールの使用割合は、1〜50質量%が好ましい。多価アルコールの使用割合を1質量%以上にすることによって、生分解性速度や溶融粘度の制御が容易となる、また多価アルコールの使用割合を50質量%以下にすることによって、樹脂強度を高めることができる。
また、樹脂(1)および(2)において、多価カルボン酸の使用割合は、0.1〜20質量%が好ましい。多価カルボン酸の使用割合を0.1質量%以上にすることによって、生分解性速度や溶融粘度の制御が容易となる。また多価カルボン酸の使用割合を20質量%以下にすることによって、樹脂強度をさらに高めることができる。
なお、樹脂(1)および(2)それぞれは、多価アルコールおよび多価カルボン酸の種類は同じであってもよいが、異なっていてもよい。
樹脂(1)および(2)において、重量平均分子量を1,000以上にすることによって耐熱性および機械的強度がさらに向上する。また重量平均分子量を10,000,000以下にすることによって、溶融粘度の過度の上昇が抑制され、各種原料の均一な分散が達成される。
また、いずれの実施形態に係る樹脂(1)および(2)も、例えば1軸または2軸押出機、ニーダーのような公知の樹脂混合機を用いて均一に混合することができる。また、樹脂(1)および(2)をそれぞれペレット化し、両者をドライブレンドした後、射出成形機内で混合および成形を行ってもよい(なお、本発明の生分解性樹脂組成物の射出成形については下記で説明する)。また、少量の場合は、それぞれの樹脂を有機溶剤に溶解した後、混合し乾燥してもよい。
本発明の成形品は、前記の生分解性樹脂組成物を、所望の形状の加熱された金型内に射出成形することにより得られる。
射出成形条件は、樹脂(1)および(2)の組成、分子量、配合割合、添加剤の種類等を勘案して適宜決定すればよく、とくに制限されるものではないが、例えば、シリンダ温度160〜180℃、射出圧力45〜70kg/cm2、射出時間0.5〜10秒、ノズル温度175〜185℃等が採用できる。
なお、射出成形された生分解性樹脂組成物の金型内での保持時間(冷却時間)は、例えば60〜180秒であるのが好ましい。
少なくともL−乳酸および糖類を共重合して得られる共重合樹脂(樹脂(1))の調製
還流塔を設置した90リットル容の逆円錐リボン翼式リアクタに、90%L−乳酸30kg、コーンスターチ30g、触媒としてモノブチルスズオキサイド15gを投入し、反応温度190℃で、真空度を9kPa(70Torr)から0.01kPa(0.1Torr)まで徐々に上昇させながら、翼の回転数を130rpmとして22時間反応を行った。得られた樹脂(1)の重量平均分子量は、48万であり、融点(mp)は155℃、ガラス転移点(Tg)は51℃であった。
450mmの空気冷却管と外部攪拌装置を取り付けた500ml容のセパラブルフラスコに、D−乳酸200g、コーンスターチ0.2g、クエン酸4g、触媒としてモノブチルスズオキサイド0.1gを投入し、反応温度190℃で、真空度を9kPa(70Torr)から0.01kPa(0.1Torr)まで徐々に上昇させながら、22時間加熱攪拌した。得られた樹脂(2)の重量平均分子量は、12万であり、融点(mp)は148℃、ガラス転移点(Tg)は47℃であった。
外部攪拌装置を取り付けた500ml容のセパラブルフラスコに、前記で調製した樹脂(1)および(2)をそれぞれ100gずついれ、フラスコ内を窒素置換した後、190℃で30分間攪拌し、冷却した。得られた組成物の融点(mp)は211℃、ガラス転移点(Tg)は59℃であり、優れた耐熱性を有することが確認された。
また組成物を土中に2ヶ月埋設処理したところ、生分解されていることも確認された。
少なくともL−乳酸、多価アルコールおよび多価カルボン酸を共重合して得られる共重合樹脂(樹脂(1))の調製
還流塔を設置した90リットル容の逆円錐リボン翼式リアクタに、90%L−乳酸25kg、ポリプロピレングリコール(Mw=2000)7.8kg、クエン酸0.5kg、触媒としてモノブチルスズオキサイド15gを投入し、反応温度190℃で、真空度を9kPa(70Torr)から0.01kPa(0.1Torr)まで徐々に上昇させながら、翼の回転数を130rpmとして22時間反応を行った。得られた樹脂(1)の重量平均分子量は、約200万であり、融点(mp)は121℃であった。
450mmの空気冷却管と外部攪拌装置を取り付けた500ml容のセパラブルフラスコに、D−乳酸200g、ポリプロピレングリコール(Mw=2000)62.4g、クエン酸4g、触媒としてモノブチルスズオキサイド0.1gを投入し、反応温度190℃で、真空度を9kPa(70Torr)から0.01kPa(0.1Torr)まで徐々に上昇させながら、22時間加熱攪拌した。得られた樹脂(2)の重量平均分子量は、3万であり、融点(mp)は128℃であった。
外部攪拌装置を取り付けた500ml容のセパラブルフラスコに、前記で調製した樹脂(1)および(2)をそれぞれ100gずついれ、フラスコ内を窒素置換した後、190℃で30分間攪拌し、冷却した。得られた組成物の融点(mp)は185℃であり、優れた耐熱性を有することが確認された。
また組成物を土中に2ヶ月埋設処理したところ、生分解されていることも確認された。
下記表1に示す配合・反応条件により得られた樹脂(1)と樹脂(2)を下記表2の配合割合比率(質量部)でドライブレンドした後、クリモト(株)製KRCニーダ(2軸押出機)を用いて混合し樹脂組成物を得た。各樹脂組成物の評価結果を下記表2に示す。
注2:PERKIN−ELMER製熱分析装置DSC−7を使用して測定した。
結晶化サンプルの作製条件:50℃で3日間真空乾燥した。
非結晶化サンプルの作製条件:窒素ガス中で220℃に加熱し、完全溶融した後、液体窒素中で急速冷却した。
少なくともL−乳酸および糖類を共重合して得られる共重合樹脂(樹脂(1))の調製
還流塔を設置した90リットル容の逆円錐リボン翼式リアクタに、90%L−乳酸30kg、コーンスターチ30g、触媒としてモノブチルスズオキサイド15gを投入し、反応温度190℃で、真空度を9kPa(70Torr)から0.01kPa(0.1Torr)まで徐々に上昇させながら、翼の回転数を130rpmとして22時間加熱反応を行った。得られた樹脂(1)の重量平均分子量は、21万であった。
還流塔を設置した90リットル容の逆円錐リボン翼式リアクタに、90%D−乳酸(ピューラック社製)30kg、コーンスターチ30g、触媒としてモノブチルスズオキサイド15gを投入し、反応温度190℃で、真空度を9kPa(70Torr)から0.01kPa(0.1Torr)まで徐々に上昇させながら、翼の回転数を130rpmとして22時間加熱反応を行った。得られた樹脂(2)の重量平均分子量は、22万であった。
得られた樹脂(1)と樹脂(2)を下記表3の配合割合比率(質量部)でドライブレンドした後、クリモト(株)製KRCニーダ(2軸押出機)を用いて混合し樹脂組成物を得(ペレット)、融点および結晶化速度を測定した。各樹脂組成物の評価結果を下記表3に示す。
また組成物を土中に2ヶ月埋設処理したところ、生分解されていることも確認された。
金型温度90℃、冷却時間1分の条件で厚さ4mmのJISK7113の1号形を成形し、該成形体を白色コピー紙に印刷された明朝体10.5ポイントの文字の上に置き、該文字が該成形体を透して容易に判読できるものを結晶化速度小、樹脂が白濁して判読が容易でないものを結晶化速度中、全く判読できないものを結晶化速度大と判定した。
市販のL−乳酸のホモポリマー(三井化学(株)製レイシアH−100J、重量平均分子量180,000)を樹脂(1)としたこと以外は、実施例4と同様とした。結果を表4に示す。
L−乳酸のホモポリマー(三井化学(株)製、商品名レイシアH−100J)と、実施例4の樹脂(2)とを、下記表5に示した配合割合においてドライブレンドし、成形品が100mm×12mm×4mmのサイズの棒状となるような金型に、以下の射出条件にて射出成形した。なお金型温度および金型内での樹脂の保持時間(冷却時間)を表5に示す。冷却終了後、金型を開放すると所望の形状の固化した成形品が得られているのが確認された。
使用した射出成形機:(株)山城精機製作所製、商品名SAV−30
射出圧力:55kg/cm2
射出時間:5秒
シリンダ温度:170℃
ノズル温度:180℃
応用例1におけるNo.21の生分解性樹脂組成物を用い、金型温度を25〜110℃の範囲としたこと以外は、応用例1を繰り返し、熱変形温度を測定した。結果を図1に示す。
図1から、金型温度が90℃以上になると、熱変形温度が向上することが分かる。
Claims (2)
- L−乳酸を含む樹脂とD−乳酸を含む樹脂とを含有してなる生分解性樹脂組成物において、前記L−乳酸を含む樹脂が少なくともL−乳酸および糖類を共重合して得られる共重合樹脂であり、又は/及び、前記D−乳酸を含む樹脂が少なくともD−乳酸および糖類を共重合して得られる共重合樹脂であることを特徴とする生分解性樹脂組成物。
- L−乳酸を含む樹脂とD−乳酸を含む樹脂とを含有してなる生分解性樹脂組成物において、前記L−乳酸を含む樹脂が少なくともL−乳酸、多価アルコールおよびクエン酸を共重合して得られる共重合樹脂であり、又は/及び前記D−乳酸を含む樹脂が少なくともD−乳酸、多価アルコール及びクエン酸を共重合して得られる共重合樹脂であることを特徴とする生分解性樹脂組成物。
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