JP3733986B2 - 出力電流方向判別方法およびその方法を用いたインバータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インバータの出力電流方向判別方法およびその方法を用いたインバータに関するもので、特にインバータに使用されるスイッチング素子のデッドタイム補償に好適な出力電流方向判別方法と、その方法を実現する具体的回路を組み込んだインバータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、普及しているインバータであるPWM(パルス幅変調)型インバータは、インバータブリッジの上アームに挿入されたスイッチング素子および下アームに挿入されたスイッチング素子のいずれか一方がオンであるとき、他のスイッチング素子はオフとなるように動作する。両素子のオン・オフが切り換わる際には、スイッチング素子の遅延時間のために両素子が共にオンすることが起こって電源短絡が発生する恐れがあるので、これを防止するために必ずいったん両素子ともにオフにする期間(以後、「デッドタイム」と言う。)を設け、その後、ようやく次ターンオン順位の素子をオンさせるようにしている。
【0003】
しかしながら、このようなデッドタイムを設けると、本来出力すべきインバータ電圧と実際のインバータ出力電圧との間に誤差が生じる。その結果、モータの電流が歪み、振動の発生や効率の低下などの問題を招いている。
【0004】
そこで、デッドタイムによる誤差電圧を考慮して、PWM信号を補正するデッドタイム補償が、これまで提案されている。その1例が、特開平1−186172号公報に記載されている。このデッドタイム補償は、インバータからモータに出力するモータ電流の極性を検出して、その検出値に基づいてPWM信号のデューティを増加させたり減少させたりする方法であり、一般的に広く用いられているところである。
【0005】
しかしながら、上記デッドタイム補償においては、モータ電流の極性を判別するために、電流の極性を判別する手段を別に設ける必要があった。この電流極性判別手段としてはカレントトランスなどを用いるのが一般的であるが、その一方で、最近ではインバータを小型化する要求が進み、インバータのスイッチング素子と駆動回路と保護回路とを実装した回路を混成集積回路で実現させたり、インバータ周辺部品の小型化が計られており、この電流極性判別手段も例外ではなく小型化が求められている。ところが、カレントトランスは小型にするとその磁性体が磁気飽和するので小型化には限界があり、しかも、電流検出の感度が温度変化の影響を受けやすく、またコスト高になる、という欠点もあった。
一方、カレントトランス以外の電流極性判別手段を用いても、モータ電流を検出することはモータ電流の経路に余分な電気回路を挿入することになり、結局、損失が大きくなるという問題があった。
【0006】
上記欠点をカバーするデッドタイム補償として、さらに、特開平7−7967号公報に記載されている発明がある。図5はこの特開平7−7967号公報に記載されている発明のインバータブロック図である。同図において、スイッチング素子Q1〜Q6でインバータブリッジを構成し、インバータブリッジの入力側に直流電源16が、また、インバータブリッジの出力側に誘導電動機15が接続されている。スイッチング素子Q1〜Q6は、各相制御回路11・12・13によって制御される。たとえば、U相制御回路11について見ると、U相制御回路11は、PWM制御回路21の出力で駆動される駆動回路1・4と、電流検出回路3・6と、過電流保護回路2・5と、電流方向検出回路7と、から構成されている。他のV相制御回路12およびW相制御回路13についても同様の構成となっている。各スイッチング素子Q1〜Q6にはそれぞれフリーホイールダイオードD1〜D6が逆並列に接続されている。
【0007】
各スイッチング素子Q1〜Q6はエミッタ端子の他に過電流保護用の電流センス端子が配置されているタイプの素子で、各電流センス端子にはそれぞれ抵抗R1〜R6が接続されている。そのため、エミッタ電流の一部がこちら側に流れると、この電流が電流検出回路3・6によって検出される。上アーム用の電流検出回路3内にはコンパレータが1個設けられていて、電流センス端子をそのコンパレータの一方の入力端子に接続し、他方の入力端子には過電流に相当する基準電圧を与える基準電圧源が接続されている。したがって、このコンパレータ内で電流センス端子の電圧と基準電圧とが比較され、比較の結果、電流センス端子電圧が基準電圧を超えなければ過電流ではなく、逆に、超えれば過電流と判断して過電流保護回路2に出力し、過電流保護回路2は駆動回路1に命じてスイッチング素子Q1をオフにさせる。一方、下アーム用の電流検出回路6内にはコンパレータが2個が設けられていて、そのうちの1個は上記のコンパレータと同じ過電流検出作用をして過電流保護回路5に出力するが、もう1個のコンパレータは素子電流検出作用をしている。すなわち、電流センス端子を第2番目のコンパレータの一方の入力端子にも接続し、そのコンパレータの他方の入力端子にはスイッチング素子に電流が流れているか否かを検出できる程度の基準電圧を与えている。このコンパレータ内で電流センス端子の電圧と基準電圧とが比較され、比較の結果、電流センス端子電圧が基準電圧を超えなければ「電流無し」、逆に、超えれば「電流有り」を電流方向検出回路7に出力する、というものである。
【0008】
しかしながら、上記特開平7−7967号公報に記載された発明は、スイッチング素子Q1〜Q6として「過電流保護用の電流センス端子」を備えた特殊な素子を用いるため、汎用のスイッチング素子が使用できないという欠点があった。さらに、スイッチング素子Q1〜Q6の電圧をそのスイッチング素子のオン期間中にみているために、電圧を精度よく検出して高速に動作するコンパレータで電流の有無を検出したり、デジタル・ラッチ回路でその結果を保持することが必要となるなど、回路が複雑化し、低コスト化に不利であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの欠点を解決するもので、精度が従来よりも低い検出回路でも高信頼性のある出力電流方向判別ができて、しかも小型化でき、低損失の方法およびその方法を用いたインバータを提供することにある。
さらに、本発明の別の課題は、電流検出が電圧位相中のある限られた期間内しか出来ない場合、例えば、インバータの3相の変調のうち2相のみ変調しながら誘導電動機に3相電圧を供給するいわゆる「2相変調方法」においてはある限られた期間しか電流検出が出来ないが、このような場合にも良好なデッドタイム補償をしたインバータを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、インバータに係り、インバータブリッジの各上下アームに、互いに逆並列接続されたスイッチング素子とフリーホイールダイオードから成る回路がそれぞれ挿入されたインバータブリッジと、前記インバータブリッジの各スイッチング素子を駆動する駆動回路と、直流を交流に変換するように前記スイッチング素子を交互にオン・オフさせる信号を前記駆動回路に供給するPWM制御回路と、負荷電流検出回路と、該負荷電流検出回路の出力に基づいて前記PWM制御回路にオンディレイ補正を行なわせるオンディレイ補正回路と、を有するインバータにおいて、
前記負荷電流検出回路が、前記フリーホイールダイオードのうち上アーム又は下アームのフリーホイールダイオードに流れる電流の一部を分流する分流回路を備え、
前記分流回路を、トランジスタのベース−エミッタ部分と、高耐圧ダイオードとの直列接続回路で構成し、該直列接続回路を前記フリーホイールダイオードに同極性に並列に接続し、かつ前記トランジスタの残りの端子とVcc電源との間に平滑用コンデンサと抵抗との並列回路を挿入することを特徴としている。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載のインバータにおいて、前記オンディレイ補正回路が、負荷電流方向の変化時点で第1タイミング信号を発生し、この時点から出力電圧位相の180度経過時に第2タイミング信号を発生するオンディレイ補正タイミング回路に接続され、該オンディレイ補正タイミング回路からの第1タイミング信号でオンディレイ補正を行ない、第2タイミング信号で前記補正と逆のオンディレイ補正を行なうことを特徴としている。
【0014】
以上のように本発明は、インバータのフリーホイールダイオードに流れる電流のごく一部を分流し、その分流電流の大きさではなくて分流電流の有無のみによってインバータの出力電流の方向を判別するようにしたので、特開平1−186172号公報に記載の発明のようなカレントトランスなどの小型化に限界のありしかも温度変化の影響を受けやすい電流極性判別手段を用いなくてよく、また、特開平7−7967号公報に記載された発明のような「過電流保護用の電流センス端子」を備えた特殊なスイッチング素子を用いなくてもよいため汎用のスイッチング素子が使用でき、そして、具体的には分流回路を、トランジスタのダイオード構成部分と、高耐圧ダイオードとの直列接続回路で構成し、増幅用に前記トランジスタの残りの端子とVcc電源との間に平滑用コンデンサと抵抗との並列回路を挿入したので微小な電流でも動作することができ、小型化できて、低損失となり、しかも従来よりも低い精度の検出回路でも信頼性の高い出力電流方向の判別ができるようになる。
【0015】
また、インバータの2相変調のように、フリーホイールダイオード電流があるべきときに、反対側のスイッチング素子が長期間オンしてフリーホイールダイオードに電流が流れない期間でも正確な補正をするために、フリーホイールダイオードの有無を検出した時又は検出しなくなった時にその時の出力電圧の位相を保持し、その位相から出力電圧位相の180度の期間は出力電圧の増加又は減少させる補正をし、残りの180度の期間はこれと逆の補正をすることによって、簡単で、正確にオンディレイ補正を行なうことができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜4を参照して詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態を示すブロック図で、図2は図1のU相の下アームのフリーホイールダイオードFDu2に電流が流れたことを検出している時の等価回路図、図3はオンディレイ補正タイミングの1例であり、図4は180度の期間とその残りの180度の期間とで補正を切り換えたオンディレイ補正の有無の場合の出力電流波形を示している。
【0017】
図1のブロック図において、この実施の形態のインバータの主回路は次のように構成されている。出力段は一般的な3相インバータブリッジであり、このインバータブリッジのU相の上下アームはスイッチング素子Su1とSu2の直列接続回路で構成され、その際スイッチング素子である各トランジスタのコレクタ側を直流電源Eのプラス側にエミッタ側を直流電源Eのマイナス側になるように接続している。同様にV相の上下アームはスイッチング素子Sv1とSv2の直列接続回路で、W相の上下アームはスイッチング素子Sw1とSw2の直列接続回路で構成されている。そして直列接続回路のスイッチング素子Su1とSu2の接続点に誘導電動機MのU相が接続され、同様に、スイッチング素子Sv1とSv2の接続点に誘導電動機MのV相が、スイッチング素子Sw1とSw2の接続点に誘導電動機MのW相が接続される。各スイッチング素子Su1〜Sw2にはそれぞれ並列にフリーホイールダイオードFDu1〜FDw2が接続されている。これらのスイッチング素子Su1〜Sw2としては、バイポーラトランジスタ(GBT)、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)、パワーMOS電界効果型トランジスタ(POMSFET)などが用いられるが、駆動回路として特別な点弧・転流回路を用いればやゲートターンオフサイリスタ(GTO)や通常のサイリスタなども使用可能である。
【0018】
これらのスイッチング素子Su1〜Sw2の制御は次のように行なわれる。
インバータの入・出力電流や入・出力電圧、出力周波数などの制御対象値を検出器で検出し、その検出値をPWM制御回路PCに送る。PWM制御回路PCは、PWM発生器PGとキャリア発生器CGと電圧指令器VIと電圧補正器VCとを備えているので、その検出値はPWM制御回路PCの電圧補正器VCに送られる。電圧補正器VCでは所定の基準値と検出値とを比較して、適切な補正値を算出し、電圧指令器VIへ出力する。このPWM発生器PGは電圧指令器VIから送られてくる電圧指令信号とキャリア発生器CGから入力されるキャリア信号とを比較し、その結果に基づきPWM信号を作り、駆動回路DRに出力し、駆動回路DRはPWM信号に従ったデューティのオン・オフ電圧信号をスイッチング素子のゲート端子に出力する。これによってスイッチング素子は所定期間オンし、その結果インバータや誘導電動機Mの制御対象値は基準値になるように制御される。
【0019】
次に、図1のようなインバータの出力電流の方向がどのようにして検出されるのかについて図2を使って説明する。図2は図1中のU相のフリーホイールダイオードFDu2についての等価回路図で、同図において点線で囲ったブロックが本願発明を構成している電流検出回路Dtuで、電流検出回路Dtuの中のSuが本願発明による分流回路Suである。この分流回路SuはトランジスタTruのダイオード構成部分(ベース−エミッタ間)と、高耐圧ダイオードHDuとの直列接続回路で構成されている。そしてこの直列接続回路はフリーホイールダイオードFDu2へ同極性に並列に接続され、かつトランジスタTruの残りの端子(コレクタ端子)とVcc電源との間に平滑用コンデンサCuと抵抗とRuの並列回路が挿入されている。トランジスタTruのコレクタ端子に出力端子Ouが接続され、出力端子Ouから検出電流aがPWM制御回路PC内の電圧補正器VCへ送られる。また、U相電流Iuの正・負は、図2に矢印で示す誘導電動機電流の方向(すなわち、インバータIの出力端子から誘導電動機Mへ流れ込む電流の方向)を正方向とし、逆方向を負方向としている。
【0020】
誘導電動機Mへ流れ込む電流Iuが正の場合はスイッチング素子Su2に入力するPWM信号がオン・オフにかかわらず電流は下アームのフリーホイールダイオードFDu2に流れるので、スイッチング素子Su2には電流は流れない。
一方、Iuが負の場合はスイッチング素子Su1に入力するPWM信号のオン・オフにかかわらず電流は上アームのフリーホイールダイオードFDu1に流れるので、スイッチング素子Su1には電流が流れない。
そこで、フリーホイールダイオードFDu2に電流が流れた時、本願発明に係る電流検出回路Dtuは次のように動作する。今、電流Iuが負方向である場合には、電流が誘導電動機MからインバータIへ流れ込んでも、高耐圧ダイオードHDuによって負方向電流はカットされるので電流検出回路Dtuは動作しない。従って、電流検出信号aはVccの高電位がそのまま出力端子Ouから出力される。
【0021】
次に、U相電流Iuが図示のように正方向であった場合、フリーホイールダイオードFDu2に電流が流れるタイミングが発生する。このときフリーホイールダイオードFDu2には順方向電圧が発生する。一方、フリーホイールダイオードFDu2に、トランジスタTruのベース−エミッタ間と高耐圧ダイオードHDuとの直列接続回路が並列接続されているが、そのトランジスタTruのベース−エミッタ間は等価的にダイオードに相当するから、結果としてフリーホイールダイオードFDu2に並列にダイオード2個の直列接続回路が同一極性で接続されたことになる。このとき当然、ダイオード2個の直列接続回路の方には電流が流れにくいが、全く流れないと順方向電圧は零であるため、ダイオード2個でフリーホイールダイオードFDu2の順方向電圧と同等になるレベルまで、ダイオード特性に応じて電流が流れる。このことは図2で言うと、GNDからトランジスタTruのベース→エミッタ端子へ流れるベース電流Ibに相当する。そしてベース電流Ibが流れると、トランジスタTruのトランジスタ作用により、図2に図示のコレクタ電流Icが発生する。コレクタ電流Icが抵抗Ruに流れると、抵抗Ruの電圧降下分だけ電流検出信号出力端子Ouの電圧はVcc電位よりも下がり、電流検出信号出力端子Ouからは低電位の電流検出信号aが出力されることとなる。トランジスタTruはベース接地の増幅器として動作するので、電流増幅率は約1であるが、抵抗Ruに高抵抗のものを選ぶことにより微少電流の有無でも検出することが可能となる。また、コンデンサCuのコンデンサ作用により短時間のスイッチングの影響を防止することができる。
【0022】
以上のU相についての動作説明は、他のV相・W相についても同様にあてはまり、電流検出信号出力端子からは電流検出信号bが、そして電流検出信号出力端子からは電流検出信号cが出力される。
【0023】
分流回路Suから得られた電流検出信号aを用いてインバータの出力電流方向信号Aを得る方法は、例えば検出電流信号a(aが「H」か「L」か)とその時のスイッチング素子のゲートに与えているPWM信号の有無とのロジックを取ることによって簡単に実現することができる。その判別結果である電流方向信号AはPWM制御回路PCの電圧補正器VC内に送られる。他のV相・W相についても同様に電流方向信号B・Cが電圧補正器VC内に送られる。電圧補正器VC内では各相の電流方向信号A・B・Cに基づきオンディレイ補正信号を作成し、このオンディレイ補正信号を電圧指令器VIに出力し、電圧指令信号を補正する。この電圧指令信号はPWM発生器PGへ入力され、同じくキャリア発生器CGからもキャリアが入力され、PWM発生器PGからは+ΔVや−ΔVが加味されたオンディレイ補正を行った出力信号U1がスイッチング素子Su1の駆動回路DRu1に、出力信号U2がスイッチング素子Su2の駆動回路DRu2に送られ、各駆動回路DRu1・DRu2はスイッチング素子Su1・Su2をオンディレイ補正されたオン・オフ期間で制御する。このようにPWM制御回路PC内の電圧補正器VCがオンディレイ補正回路OCの機能を兼ねている。
【0024】
以上のU相についての動作説明は、他のV相・W相についても同様にあてはまり、PWM発生器PGから、V相のスイッチング素子Sv1・Sv2の駆動回路DRv1・DRv1にそれぞれ出力信号V1・V2が送られ、また、W相のスイッチング素子Sw1・Sw2の駆動回路DRw1・DRw1にそれぞれ出力信号W1・W2が送られ、オンディレイ補正がなされる。
電流方向信号A・B・Cに基づいてオンディレイ補正を実施する方法自体は周知であるので、ここでは説明は省略する。
【0025】
このオンディレイ補正のタイミングは次のように行なうとより有効である。
すなわち、出力電流の方向の変化時点で出力電圧の位相をとらえて、この時点から出力電圧位相の180度の期間は前記オン・オフ信号の幅を増加又は減少させる補正をし、残りの180度の期間は前記補正と逆の補正をするようにするのである。図3はこれを実現するオンディレイ補正タイミング回路OTの回路例である。現在の回転周波数fからV/fを作り、Vsinθを作る。Vsinθブロックの出力はPWMブロック側へ出力されると共にその時点のθがラッチブロックのD入力端子と2個のアンド回路の1方の入力端子に加えられる。ラッチブロックのセット端子には電流検出回路Dtuからの出力が与えられる。ラッチブロックのQ出力端子からの信号は上記2個のアンド回路のうちの一方のアンド回路の他方の入力端子に加えられるとともに、180度位相のタイミング信号と加え合わされて上記2個のアンド回路のうちの他方のアンド回路の他方の入力端子に加えられる。2個のアンド回路のうち前者の出力はRSフリップフロップのS入力端子に、後者の出力はRSフリップフロップのR入力端子に加えられ、RSフリップフロップのQ端子からの出力はオンディレイ補正(+ΔVと−ΔV)の切換回路の切り換え信号として用いられる。オンディレイ補正回路OCは、オンディレイ補正タイミング回路OTのこのような切り換えタイミングにしたがって、+ΔVと−ΔVの補正量のいずれかを最初の180度の期間、+ΔVと−ΔVの補正量の残りのいずれかを残りの180度の期間、出力し、前記Vsinθブロックの出力とを加え合わされてPWMブロックに送られる。PWMブロックでは、補正量+ΔVと−ΔVが加味された補正を行って、スイッチング素子の駆動回路DRu1、DRu2に与えてオンディレイ補正が行なわれる。
【0026】
以上のように、本発明の電流検出回路Dtuで簡単にかつ正確に得られた電流検出信号aを使って電流方向信号Aが得られると、その電流方向信号Aが変化したら(例えば、立上がったら)、その時点のθをラッチ回路でラッチすることになり、電流方向の切り換わり時の出力電圧の位相が分かるから、この位相から180度の期間は例えば+ΔVだけ出力電圧に加算し、残りの180度の期間は−ΔVにするものである。
【0027】
その結果が図4に示されている。同図で分かるように、インバータが出力すべき電圧指令信号と、実際にインバータブリッジに入力されるPWM信号と、の間にデッドタイム期間だけ誤差が生じ、誘導電動機電流Iuが正のときはインバータの出力電圧は目標値よりも小さくなり、逆に誘導電動機電流Iuが負のときはインバータの出力電圧は目標値よりも大きくなるから、オンディレイ補正を実施していない場合、そのままの出力電圧が現れ、実線のように、誘導電動機電流Iuが負のときは目標値よりも大きいインバータの出力電圧が、そして誘導電動機電流Iuが正のときは目標値よりも小さいインバータの出力電圧波形となることが分かる。ところが、180度の期間で−ΔVの補正と、その残りの180度の期間で+ΔVの補正をすると、点線で示す正弦波が得られるようになる。
このように、請求項4に記載の本願発明によれば、このように、インバータ出力電流の方向の変化点のみを検出して、その時の出力電圧位相を保持することによりオンディレイ補正を実施しているため、保持した位相から180度までの期間とその残りの期間とで補正を切り換えることにより簡単にかつ正確なオンディレイ補正ができる。
【0028】
【発明の効果】
以上のように、本発明においては、フリーホイールダイオードのうち上アーム又は下アームのフリーホイールダイオードに流れる電流の一部を分流した分流電流の有無によってインバータの出力電流の方向を判別するようにしたので、カレントトランスなどを用いなくてよく、また「過電流保護用の電流センス端子」を備えた素子を用いなくてよく、したがって小型化できて、低損失で、精度が従来よりも低い検出回路でも高信頼性のある出力電流方向の判別が低コストでできるようになる。
【0029】
また、具体的にその分流回路を、トランジスタのダイオード構成部分と、高耐圧ダイオードとの直列接続回路で構成し、この直列接続回路をフリーホイールダイオードに同極性に並列に接続し、しかもそのトランジスタの残りの端子とVcc電源との間に平滑用コンデンサと抵抗との並列回路を挿入しているので、増幅作用も得られ、簡単な構成で十分な電流検出信号を得ることができる。
【0030】
さらに、インバータ出力電流の方向の変化点のみを検出して、その時の出力電圧位相を保持することによりオンディレイ補正を実施しているため、保持した位相から180度までの期間とその残りの期間とで補正を切り換えることにより簡単にかつ正確なオンディレイ補正ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示すブロック図。
【図2】図1のフリーホイールダイオードに電流が流れたことを検出している時の等価回路図。
【図3】出力電流の方向の変化時点でオンディレイ補正を開始する回路例。
【図4】180度の期間とその残りの180度の期間とで補正を切り換えたオンディレイ補正の有無の場合の出力電流波形。
【図5】オンディレイ補正を行っている従来公知のインバータブロック図。
【符号の説明】
E:直流電源
M:誘導電動機
I:インバータ
Su1・Su2:スイッチング素子
Sv1・Sv2:スイッチング素子
Sw1・Sw2:スイッチング素子
FDu1・FDu2:フリーホイールダイオード
FDv1・FDv2:フリーホイールダイオード
FDw1・FDw2:フリーホイールダイオード
DRu1・DRu2:駆動回路
DRv1・DRv2:駆動回路
DRw1・DRw2:駆動回路
PC:PWM制御回路
VC:電圧補正器
VI:電圧指令器
CG:キャリア発生器
PG:PWM発生器
U1・U2:PWM信号
V1・V2:PWM信号
W1・W2:PWM信号
a、b、c:電流検出信号
A、B、C:電流方向信号
Su:分流回路
Dtu:電流検出回路
Tru・Trv・Trw:トランジスタ
HDu・HDv・HDw:高耐圧ダイオード
Ru・Rv・Rw:抵抗
Cu・Cv・Cw:コンデンサ
Ou:電流検出信号出力端子
OC:オンディレイ補正回路
OT:オンディレイ補正タイミング回路
Claims (2)
- インバータブリッジの各上下アームに、互いに逆並列接続されたスイッチング素子とフリーホイールダイオードから成る回路がそれぞれ挿入されたインバータブリッジと、前記インバータブリッジの各スイッチング素子を駆動する駆動回路と、直流を交流に変換するように前記スイッチング素子を交互にオン・オフさせる信号を前記駆動回路に供給するPWM制御回路と、負荷電流検出回路と、該負荷電流検出回路の出力に基づいて前記PWM制御回路にオンディレイ補正を行なわせるオンディレイ補正回路と、を有するインバータにおいて、
前記負荷電流検出回路が、前記フリーホイールダイオードのうち上アーム又は下アームのフリーホイールダイオードに流れる電流の一部を分流する分流回路を備え、
前記分流回路を、トランジスタのベース−エミッタ部分と、高耐圧ダイオードとの直列接続回路で構成し、該直列接続回路を前記フリーホイールダイオードに同極性に並列に接続し、かつ前記トランジスタの残りの端子とVcc電源との間に平滑用コンデンサと抵抗との並列回路を挿入することを特徴とするインバータ。 - 前記オンディレイ補正回路は、負荷電流方向の変化時点で第1タイミング信号を発生し、この時点から出力電圧位相の180度経過時に第2タイミング信号を発生するオンディレイ補正タイミング回路に接続され、該オンディレイ補正タイミング回路からの第1タイミング信号でオンディレイ補正を行ない、第2タイミング信号で前記補正と逆のオンディレイ補正を行なうことを特徴とする請求項1記載のインバータ。
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