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JP3707947B2 - 半導体発光素子 - Google Patents

半導体発光素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体レーザなどの半導体発光素子に関するものである。本発明は、光ファイバー増幅器用励起光源や光情報処理用の光源等のように、高出力かつ長寿命であることを要求される半導体レーザとして好適に利用される。また本発明は、スーパールミネッセントダイオード等のLEDで、光の出射端が端面により形成されているものや、面発光レーザ等にも利用される。
【0002】
【従来の技術】
近年における光情報処理技術、光通信技術の進展には目ざましいものがある。例えば、光磁気ディスクによる高密度記録、光ファイバーネットワークによる双方向通信など枚挙に暇がない。
【0003】
例えば、通信分野においては、今後のマルチメディア時代に本格的に対応する大容量の光ファイバー伝送路とともに、その伝送方式に対する柔軟性を持つ信号増幅用のアンプとして、Er3+等の希土類をドープした光ファイバー増幅器(EDFA)の研究が各方面で盛んに行なわれている。そして、EDFAのコンポーネントとして不可欠な要素である、高効率な励起光源用の半導体レーザの開発が待たれている。
【0004】
EDFA応用に供することのできる励起光源の発振波長は、原理的に800nm、980nm、1480nmの3種類存在する。このうち増幅器の特性から見れば980nmでの励起が、利得やノイズ等を考慮すると最も望ましいことが知られている。このような980nmの発振波長を有するレーザは、励起光源として高出力でありながら長寿命であるという相反する要求を満たすことが要求されている。さらにこの近傍の波長、例えば890〜1150nmにおいてはSHG光源、レーザプリンタ用の熱源としての要求もあり、その他種々の応用面においても高出力で信頼性の高いレーザの開発が待たれている。また、情報処理分野では高密度記録、高速書き込み及び読み出しを目的として半導体レーザの高出力化、短波長化が進んでいる。従来の780nm発振波長のLDに関しては高出力化が強く望まれており、また、630〜680nm帯のLDの開発も各方面で精力的に行われている。
【0005】
これまで980nm近傍の半導体レーザについては、50〜100mW程度の光出力において2年程度の連続使用に耐える半導体レーザとその製造方法がすでに開発されている。しかしながら、より高い光出力における動作では急速な劣化がおこり、信頼性は不十分である。これは780nm帯、630〜680nm帯のLDにおいても同様であり、高出力時の信頼性確保は特にGaAs基板を用いた系の半導体レーザ全体の課題になっている。
【0006】
信頼性が不充分である原因のひとつは、非常に高い光密度にさらされるレーザ光の出射端面の劣化にある。GaAs/AlGaAs系半導体レーザでもよく知られているように、端面近傍には多数の表面準位が存在するが、これらの準位がレーザ光を吸収するために一般的に端面近傍の温度はレーザ内部の温度よりも高くなり、この温度上昇がさらに端面近傍のバンドギャップを狭くし、さらにレーザ光を吸収しやすくするといった正帰還がおきると説明されている。この現象は瞬時に大電流を流した際に観測される端面破壊いわゆるCOD(Catastrophic Optical Damage)として知られ、また長期に通電試験した際のCODレベルの低下に伴う素子の突然劣化は多くの半導体レーザ素子において共通の問題となっている。
【0007】
これらの問題を解消するために、これまでにも種々の提案がなされている。例えば、端面近傍の活性層領域のバンドギャップを発振波長に対して透明になるようにし、前述の端面近傍での光吸収をおさえる方法がこれまでにも種々提案されている。これらの構造のレーザは一般に窓構造レーザあるいはNAM(Non Absorbing Mirror)構造レーザと呼ばれており、高出力を必要とする際には効果的である。しかしながら、レーザ端面上に発振波長に対して透明な半導体材料をエピタキシャル成長させる方法では、レーザをいわゆるバーの状態にして端面へエピタキシャル成長を行うために、この後に行う電極工程が非常に煩雑なものとなってしまう。
【0008】
また、ZnあるいはSi等をレーザの端面近傍の活性層に不純物として意図的に熱拡散又はイオン打ち込みさせることによって活性層を無秩序化させる方法も種々提案されている(特開平2−45992号公報、特開平3−31083号公報、特開平6−302906号公報)。しかし、一般にLD製造工程で行われる不純物拡散はレーザ素子のエピタキシャル方向から基板方向に向かって行われるため、拡散深さの制御や共振器方向に対する横方向拡散の制御に問題があり安定した作製は難しい。また、イオン打ち込みの場合には高エネルギーのイオンが端面から導入されるため、たとえアニール処理を施したとしてもLD端面にダメージが残存しがちである。また不純物導入を行なった領域での抵抗の低下に伴う無効電流の増加はレーザの閾値電流や駆動電流を増加させる等の問題がある。
【0009】
一方、特開平3−101183号公報には、汚染のない端面を形成し、これに半導体端面との反応やそれ自体が拡散を起こさない酸素非含有物質をパッシベーション層として形成する製法が記載されている。
一般に大気中(例えばクリーンルーム内)での作業では、劈開時に端面に発生するGa−OやAs−O等の非発光再結合中心の生成を抑制することはできない。 したがって、この公報に記載されるように「汚染のない端面を形成」するためには、劈開したその場で不活性化層を形成することが不可欠であるが、これを実現しうるのは真空中での劈開だけである。しかし、真空中の劈開は大気中での一般的な劈開に比較して、非常に煩雑な装置と作業が要求される。また、この公報にはドライエッチングによって端面を形成する方法も記載されているが、劈開によって形成される端面と比較して多くの非発光再結合中心を形成するため、長寿命を要求されるLDの作製方法には適さない。
【0010】
この公報にはパッシベーション材料としてSi又はアモルファスSiが最適であることが記載されているが、一般に全く拡散を起こさない物質は存在しない。特に高出力、高温下で長時間駆動することを前提とする半導体レーザでは、これらのパッシベーション材料の拡散が懸念される。
また、この公報に類するものとして、L.W.Tu et al.,(In-vacuum cleaving and coating of semiconductor laser facets using silicon and a dielectric、 J.Appl.Phys.80(11) 1 DEC. 1996)には、Si/AlOx構造をレーザ端面にコーティングする際に真空中で劈開すると、劈開面でのキャリアの再結合速度が遅くなり、初期的なCODレベルが上がることが記載されている。しかしながら、この論文には長期の信頼性に関する記述はなく、コーティングとLD構造の関連についても述べられていない。
【0011】
また、半導体レーザの光出射端面での電界強度を下げるために、共振器方向に存在する定在波の腹の部分が端面部分と一致しないように、Siをコーティング膜と半導体との界面に1/4波長分挿入することも提案されている。しかし、一般の半導体レーザが実現されている波長帯、特に高出力LDが望まれている400〜1600nmにおいては、Siそのものが光の吸収体として作用してしまうため、端面での温度上昇がデバイスの劣化を加速してしまう可能性がある。
【0012】
また、米国特許第4,563,368号明細書には、Al、Si、Ta、V、Sb、Mn、CrまたはTiを含む不活性化層を、劈開面の酸素だけを取り除くのに必要十分な厚さに調節して劈開面に形成することが記載されている。しかしながら本発明者らの検討によると、この米国特許には、不活性化層が酸素を抱えるために必要と思われるエネルギーの与え方が明示されていない。また、不活性化層のすべてを酸化させ、かつ端面に残存する酸化物が十分にとりきれるほどの厚みを制御性良く作製しなければならいが、これには製造上煩雑なモニターリングが必要であり、再現性にも疑問が残る。さらに、不活性化層が酸素と反応してすべて酸化物となるため、長期的には不活性化層にプロセス時にとりこまれた酸素が、レーザを長期的に駆動している際に、再び端面を構成する元素と反応することが懸念され、信頼性に疑問が残る。
このように、これまでに提案された半導体発光素子はいずれも技術的に満足しうるものではなかった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の従来技術の問題点を解決することを課題とした。
具体的には、本発明は、端面での界面準位密度を長期間にわたって安定に抑制し、しかも、不活性化層のLD駆動中の拡散が起きても安定に動作する半導体発光素子を提供することを解決すべき課題とした。すなわち本発明は、端面での劣化を抑え、高出力と長寿命を両立させた高性能の半導体発光素子を提供することを解決すべき課題とした。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、半導体発光素子の第一不活性化層と第二不活性化層を構成する元素を特定の条件にしたがって選択することにより、端面の界面準位密度を長期間安定に制御しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち本発明は、第一導電型クラッド層、活性層及び第二導電型クラッド層を含む化合物半導体層を基板上に有する、共振器構造を備えた半導体発光素子において、該化合物半導体層の端面を形成する第一導電型クラッド層、活性層および第二導電型クラッド層の表面が第一不活性化層で被覆されており、該第一不活性化層が第二不活性化層で被覆されており、該第一不活性化層および該第二不活性化層からなる不活性化層が単体元素からなる部分を有し、かつ、該第二不活性化層を構成する少なくとも1つの元素の酸化物の生成エンタルピーの絶対値が該第一不活性化層を構成する少なくとも1つの元素の酸化物の生成エンタルピーの絶対値よりも大きいことを特徴とする半導体発光素子を提供するものである。
本発明の半導体発光素子では、第一不活性化層を構成する少なくとも1つの元素の酸化物の生成エンタルピーの絶対値は、端面を構成する少なくとも1つの元素の酸化物の生成エンタルピーの絶対値よりも大きいことが好ましい。また、端面を構成する元素の少なくとも1つは酸素との結合を持たないことが好ましい。さらに、第二不活性化層を覆う少なくとも1層の不活性化層をさらに有し、最外層である不活性化層の表面には、誘電体又は誘電体及び半導体の組合せからなるコーティング層を有することが好ましい。
【0016】
本発明の好ましい実施態様では、第一不活性化層の厚さTp(1)、第二不活性化層の厚さTp(2)およびこれら二つの不活性化層の厚さの和Tp(1+2)はそれぞれ以下の式で表される範囲内にする。
【数4】
0.2(nm)<Tp(1)<λ/8n1(nm)・・・・・(式1)
0.2(nm)<Tp(2)<λ/4n2(nm)・・・・・(式2)
0.4(nm)<Tp(1+2)<3λ/8n12(nm)・・・(式3)
(式中、λは半導体発光素子の発振波長、n1は第一不活性化層の波長λにおける屈折率の実数部分、n2は第二不活性化層の波長λにおける屈折率の実数部分、n12は二つの不活性化層の波長λにおける平均屈折率の実数部分を表す。)
【0017】
【発明の実施の形態】
以下において、本発明の半導体発光素子について詳細に説明する。
【0018】
本発明の半導体発光素子には、化合物半導体層を基板上に順次結晶成長して製造した半導体ウエハーを使用する。本発明で使用する半導体ウエハーは、第一導電型クラッド層、活性層及び第二導電型クラッド層を含む化合物半導体層を基板上に有しており、かつ、半導体発光素子の製造に使用しうるものであれば特にその種類は制限されない。したがって、半導体ウエハーには上記以外の層が存在していてもよく、また、各層に使用する材料の種類や量、その層構造は特に限定されない。
【0019】
以下において、本発明で使用する半導体ウエハーの好ましい構成例およびその製造法について具体的に説明する。説明する半導体ウエハーは、屈折率導波構造を有し、第二導電型クラッド層が二層に分かれ、第二導電型第二クラッド層と電流ブロック層とで電流注入領域を形成し、さらに電極との接触抵抗を下げるためのコンタクト層を有するものである(図2)。この例を始めとする様々なレーザの基本的エピタキシャル構造の製法については、例えば特開平8−130344号公報を参考にすることができる。この種のレーザは光通信に用いられる光ファイバー増幅器用の光源や、情報処理用の大規模光磁気メモリーのピックアップ光源として用いられ、層構成や使用材料等を適宜選択することによってさらに様々な用途へ応用することもできる。
【0020】
図2は、本発明の半導体発光素子におけるエピタキシャル構造の一例としてグルーブ型の半導体レーザの構成を示した概略断面図である。
基板(1)としては、所望の発振波長、格子整合性、意図的に活性層等に導入される歪等の点からInP、GaAs、GaN、InGaAs、Al23等の単結晶基板が使用される。場合によってはAl23のような誘電体基板も使用することができる。本発明の実施形態としては、V族としてAs、P等を含むIII-V族半導体発光素子に対する格子整合性の観点から、InP基板やGaAs基板を使用するのが望ましい。V族としてAsを含む場合にはGaAs基板を使用するのが最も好ましい。
【0021】
また、Al23等の誘電体基板は、III-V族半導体発光素子の中でもV族として窒素等を含む材料に使用されることがある。
基板はいわゆるジャスト基板だけではなく、エピタキシャル成長の際の結晶性を向上させる観点から、いわゆるオフ基板の使用も可能である。オフ基板は、ステップフローモードでの良好な結晶成長を促進する効果を有しており、広く使用されている。オフ基板は0.5度から2度程度の傾斜を持つものが広く用いられるが、量子井戸構造を構成する材料系によっては傾斜を10度前後にすることもある。
基板は、MBEあるいはMOCVD等の結晶成長技術を利用して発光素子を製造するための準備として、あらかじめ化学エッチングや熱処理等を施しておいてもよい。
【0022】
バッファ層(2)は、基板バルク結晶の不完全性を緩和し、結晶軸を同一にしたエピタキシャル薄膜の形成を容易にするために基板上に成長することが好ましい。バッファ層(2)は、基板(1)と同一の化合物で構成するのが好ましく、基板がGaAsの場合は通常、GaAsが使用される。しかし、超格子層をバッファ層に使用することも広く行われており、同一の化合物で形成されない場合もある。一方、誘電体基板を用いた場合には必ずしも基板と同一の物質ではなく、その所望の発光波長、デバイス全体の構造から、適宜、基板と異なった材料が選ばれる場合もある。
【0023】
第一導電型クラッド層(3)は一般的には活性層(4)の平均屈折率より小さな屈折率を有する材料で構成され、所望の発振波長を実現するために準備される基板(1)、バッファ層(2)、活性層(4)等により適宜材料が規定される。例えば基板(1)としてGaAsが使用され、バッファ層(2)もGaAsの際にはAlGaAs系材料、InGaAs系材料、AlGaInP系材料、InGaP系材料等が用いられる。また場合によっては、クラッド層全体を超格子構造にすることも可能である。
【0024】
本発明の効果は活性層(4)の導電型、材料、構造等の如何によらず認められるが、導電型はP型である方が好ましい。一般的に半導体のバンドギャップは、例えばHeterostructure Lasers (H.C.Casey,Jr. M.B.Panish著 Academic Press 1978 P.157)に記載されるように、ホール濃度が高い物質ほど小さくなる傾向にある。例えば、GaAsのバンドギャップEg(eV)は、P型のキャリア濃度をP(cm-3)として
【数5】
Eg=1.424−1.6×10-8×P1/3
であることが示されている。本発明の1つの特徴は不活性化層(14)、特に、第一不活性化層(14−1)としてレーザ端面と誘電体界面に挿入される物質が、長期のレーザ駆動中、特に高出力動作中に拡散を起こした際、n型の不純物として活性層(4)中等に徐々に導入され、補償効果によって実効的なホール濃度の低下を引き起こす点にある。これは半導体端面近傍、言い替えれば不活性化層(14)がLD駆動と共に、構成する一部の元素が拡散されていく部分のバンドギャップを増大させる事を意味し、端面での光の吸収を抑制する働きをすることが期待される。この点でP型の活性層が望ましい。
【0025】
また、材料選択の観点からは、活性層(4)はIn及び/又はGaを含む系が望ましい。これは結晶成長の際にいわゆる秩序化が起こりやすい材料系であって、不活性化層(14)、特に、第一不活性化層(14−1)としてレーザ端面と誘電体の界面に挿入される物質が、長期のレーザ駆動中に上記の様に拡散する際に、端面近傍の無秩序化を引き起こすことも期待されるからである。一般に材料の無秩序化はバンドギャップの増加をもたらすため、これはキャリアの補償効果と相まって、さらなる端面の光吸収を長期的に抑制していくこととなる。
【0026】
これら観点から、活性層(4)の材料としては、AlGaAs系材料、InGaAs系材料、InGaP系、AlGaInP系材料等が望ましく、具体的にはAlxGa1-xAs(0≦x≦1)、InxGa1-xAs(0≦x≦1)または(AlxGa1-xyIn1-yP(0≦x,y≦1)であるのが望ましい。特に量子井戸構造をとっていることが無秩序化をするうえで望ましい。これら材料の選択は所望する発振波長によって規定されるのが一般的である。
【0027】
また、活性層(4)の構造は、単一の層からなる通常のバルク活性層でもよいが、単一量子井戸(SQW)構造、二重量子井戸(DQW)構造、多重量子(MQW)構造等の量子井戸構造も目的に応じて採用することができる。量子井戸構造には、通常、光ガイド層が併用され、必要に応じて量子井戸の分離のために障壁層が併用される。活性層の構造としては、量子井戸の両側に光ガイド層を設けた構造(SCH構造)、光ガイド層の組成を徐々に変化させることにより屈折率を連続的に変化させた構造(GRIN−SCH構造)等を採用することができる。光ガイド層の材料としてはAlGaAs系材料、InGaAs系材料、InGaP系材料、AlGaInP系材料等を活性層にあわせて選択することができる。
【0028】
一方、不活性化層(14)の材料としてはSiが望ましい。これは一般的に端面発光型デバイスで共振器を構成する面となる(110)面、また面発光レーザ等で出射端となる(100)面からの拡散でn型のドーパントとなりうるからであり、さらに、上記活性層(4)の材料として好適に利用されるAlGaAs系材料、InGaAs系材料、InGaP系材料、AlGaInP系材料を無秩序化をすることが可能だからである。
【0029】
第二導電型第一クラッド層(5)および第二導電型第二クラッド層(8)は、第一導電型クラッド層(3)と同様に一般的には活性層(4)の平均屈折率より小さな屈折率を有する材料で構成され、基板(1)、バッファ層(2)、活性層(4)等により適宜材料が規定される。例えば基板(1)としてGaAsが使用され、バッファ層(2)にもGaAsが使用されているときにはAlGaAs系材料、InGaAs系材料、AlGaInP系材料、InGaP系材料等が用いられる。
【0030】
図2には、二種類のエッチング阻止層(6)(7)及びキャップ層(10)が記載されているが、これらの層は、本発明の好ましい態様において採用され、電流注入領域の作り込みを精密かつ容易に行うのに有効である。
【0031】
第二エッチング阻止層(6)が例えば、AlaGa1-aAs(0≦a≦1)材料にて構成される場合には、通常はGaAsが好適に使用される。これはMOCVD法等で第二導電型第二クラッド層(8)等を、特にAlGaAs系で再成長させる際に結晶性よく積層することができるためである。第二エッチング阻止層(6)の厚さは通常2nm以上が好ましい。
【0032】
第一エッチング阻止層(7)は、InbGa1-b P(0≦b≦1)で表される層が好適であり、GaAsを基板として使用した場合は通常歪みのない系でb=0.5にする。第一エッチング阻止層(7)の厚さは通常5nm以上であり、好ましくは10nm以上である。5nm未満であると、膜厚の乱れ等により、エッチングを阻止することができなくなってしまう危険性がある。一方膜厚によっては歪み系を用いることもでき、b=0、b=1等の組成を採用することも可能である。
【0033】
キャップ層(10)は、第1回目の成長において電流ブロック層(9)の保護層として用いられると同時に第二導電型第二クラッド層(8)の成長を容易にするために用いられ、素子構造を得る前に、一部又は全て除去される。
【0034】
電流ブロック層(9)は、文字通り電流をブロックして実質的に流さないようにすることが要求されるので、その導電型は第一導電型クラッド層(3)と同一かあるいはアンドープとすることが好ましい。また、例えばAlGaAs系で電流ブロック層(9)を形成する場合であれば、AlyGa1-yAs(0<y≦1)からなる第二導電型第二クラッド層(8)より屈折率が小さいことが好ましい。すなわち、電流ブロック層(9)がAlzGa1-zAs(0≦z≦1)であれば、混晶比としてはz>yになることが好ましい。
【0035】
第二導電型第二クラッド層(8)の屈折率は、通常、活性層(4)の屈折率以下である。また、第二導電型第二クラッド層(8)は通常第一導電型クラッド層(3)及び第二導電型第一クラッド層(5)と同一とされる。また、本発明の好ましい態様のひとつとして、第二導電型第一クラッド層(5)、第二導電型第二クラッド層(8)及び電流ブロック層(9)の全てを同一組成の同一材料系で構成する場合を挙げることができる。その場合、第一エッチング阻止層(7)によって実効屈折率差が形成され、また、キャップ層(10)を完全には除去しない場合においては、第一エッチング層(7)に加えてキャップ層(10)によっても実効屈折率差が形成される。この様な層構成を採ることにより、第二導電型第二クラッド層(8)及び電流ブロック層(9)のそれぞれの界面における材料又は組成の不一致に起因する諸問題を回避することができるため非常に好ましい。
【0036】
第二導電型第二クラッド層(8)上には電極(12)との接触抵抗率を下げるため等の目的でコンタクト層(11)を設けるのが好ましい。コンタクト層(11)は、通常、GaAs材料にて構成される。この層は、通常電極との接触抵抗率を低くするためにキャリア濃度を他の層より高くする。
【0037】
また、通常、バッファ層(2)の厚さは0.1〜3μm、第一導電型クラッド層(3)の厚さは0.5〜3μm、活性層(4)の厚さは量子井戸構造の場合1層当たり0.0005〜0.02μm、第二導電型第一クラッド層(5)の厚さは0.05〜0.3μm、第導電型第二クラッド層(8)の厚さは0.5〜3μm、キャップ層(10)の厚さは0.005〜0.5μm、電流ブロック層(9)の厚さは0.3〜2μmの範囲から選択される。
【0038】
図2に示す半導体発光素子は、さらに電極(12)、(13)を形成して構成される。電極(12)は、p型の場合、コンタクト層(11)表面に例えばTi/Pt/Auを順次に蒸着した後、合金化処理することによって形成される。一方、電極(13)は、基板(1)の表面に形成され、n型電極の場合、例えばAuGe/Ni/Auを順次に蒸着した後、合金化処理することによって形成される。
以上、好ましい半導体ウエハーの構成例と製造例について説明したが、本発明では上記以外の構成を有する半導体ウエハーを使用することもできる。
【0039】
製造した半導体ウエハーには、共振器端面を形成する。共振器端面は半導体発光素子の製造工程で通常用いられている方法によって調製することができ、その具体的な方法は特に制限されない。
好ましいのは、劈開により端面を形成する方法である。劈開は端面発光型レーザの場合に広く用いられており、劈開によって形成される端面は使用する基板の方位によって異なる。例えば、好適に利用されるnominally(100)と結晶学的に等価な面をもつ基板を使用して端面発光型レーザ等の素子を形成する際には、(110)もしくはこれと結晶学的に等価な面が共振器を形成する面となる。一方、オフ基板(miss oriented substrate)を使用するときには、傾斜させた方向と共振器方向の関係によっては端面が共振器方向と90度にならない場合もある。例えば(100)基板から、(1−10)方向にむけて角度を2度傾けた基板を使用した場合には端面も2度傾くことになる。なお、面発光レーザの様に共振器が結晶成長過程で作製される場合もあるが、このようにして作製された材料も本発明の使用対象になる。
【0040】
本発明の半導体発光素子を製造する際には、真空中での繁雑な劈開工程を行うことは必ずしも必要とされない。常圧の大気中あるいは窒素雰囲気中で劈開しても構わないことから、本発明の半導体発光素子は従来に比べて製造工程全体を簡略化することができる。真空中での劈開が必須工程とされないのは、端面での非発光再結合中心となる酸化物及び/又は窒化物等の一部又は全部を、後に行う端面へのプラズマ照射及び/又は第一不活性化層形成後に行う第一不活性化層へのプラズマ照射で除去することができるからである。すなわち、第一導電型クラッド層(3)、活性層(4)、第二導電型クラッド層(5)(8)、さらには端面に露出される基板(1)、電流ブロック層(9)、コンタクト層(11)等の共振器ミラー近傍に位置する酸化物及び/又は窒化物等をプラズマ照射することによって効果的に除去することができるのである。
【0041】
形成した共振器端面に対してプラズマ照射を行うのが好ましい。プラズマ照射は、希ガスをイオン化したプラズマ照射であるのが好ましく、特に18族元素、中でもArプラズマ照射が効果的である。Arプラズマの照射エネルギーは25eVから300eV程度、より好ましくは25eVから100eVの低エネルギー範囲であるのが好ましい。これによって、半導体端面へ過度のダメージを与えることなく、非発光再結合中心となる酸化物や窒化物等の一部を除去することができる。プラズマ処理は、不純物のイオン打ち込み等の従来技術に比べて非常に低いエネルギーで行うことができるため、端面へのダメージを抑えることができる点で優れている。プラズマ処理を行えば、例えばGaAs系の材料の場合には酸化物の中でも特にAs−Oを効果的に除去することができる。また、他の半導体端面を構成する元素と結合している酸素等についても同様に除去できる場合がある。
なお、本願明細書においては、元素の族名を最新のIUPACの表記法に準拠してアラビア数字で表記するのを原則とするが、「III族」、「V族」の様にローマ数字で族名を表記した場合は、半導体の分野における通常の表記法に従っているものとする。例えば、「III族」はAl、Ga等の元素からなる13族、「V族」はN、P、As等からなる15族を意味するものとする。
【0042】
この低エネルギーのArプラズマの照射効果は、酸化物や窒化物の除去にとどまらない。半導体ウエハーの活性層は量子井戸を形成し、特にその材料系はAlGaAs系材料、InGaAs系材料、InGaP系材料、AlGaInP系材料等であるのが好ましいが、この半導体ウエハーにプラズマ照射すると、駆動中の不活性化層の拡散ではなくレーザの作製工程中に端面近傍を無秩序化し、かつ高抵抗化している端面を形成することができる。これはレーザ作製初期における端面近傍のバンドギャップの増大と端面近傍の高抵抗化、すなわち端面での光吸収の抑制と破壊しやすい端面への電流注入の抑制効果を意味し、レーザのさらなる長寿命化が期待できる。
【0043】
また、このプラズマ照射は、上述のようにLD作製工程上で端面近傍のバンドギャップを広げる効果もあり、不活性化層、特に第一不活性化層がLD駆動中に拡散しながらさらに端面近傍のバンドギャップを広げていく効果と相まって、高出力と長寿命を達成する。
【0044】
共振器端面には第一不活性化層を形成する。端面に第一不活性化層として付着される元素は、活性層中に拡散した際にn型の不純物となるものが望ましい。端面に第一不活性化層として付着される元素としては、共振器端面を構成する少なくとも1つの元素よりも酸化物の生成エンタルピーの絶対値が大きい元素を選択するのが好ましい。このような条件を満たす元素が、端面に第一不活性化層として付着される元素の少なくとも一部に含まれているのが望ましい。半導体材料を構成する元素として、例えばGa23の生成エンタルピーは−5.64eV/metal atom、In23の生成エンタルピーは−4.80eV/metal atom、MgOの生成エンタルピーは−6.24eV/metal atomである。これらの生成エンタルピーの絶対値よりも、酸化物の生成エンタルピーの絶対値が大きい元素として、例えばSc(Sc23:−9.89)、Y(Y23:−9.46)、Ti(TiO2:−9.74)、Zr(ZrO2:−11.41)、V(V25:−8.04)、Ta(Ta23:−10.60)、Mo(MoO3:−7.72)、W(WO3:−8.74)、Al(Al23:−8.68)、Si(SiO2:−9.44)やランタノイドを例示することができる(カッコ内は酸化物の生成エンタルピーをeV/metal atom単位で表したものである)。
【0045】
中でもSiを使用するのが好ましい。Siはその製法によって構造や特徴が結晶学的に異なるが、単結晶、多結晶、アモルファスのいずれの場合についても効果が認められる。特に好適なのは、高真空中で低製膜レートで形成されたアモルファスSiである。一般的にSiの吸収端はその膜質によって異なるが、約2μm以上の波長に対しては透明であり、吸収はないと考えられる。逆に約2μmよりも短い波長に対しては、Siの屈折率NはN=n+ikとなる(nは屈折率の実数部分、kは消散係数であり、nは約3.5である)。
【0046】
一般的に第一不活性化層の厚さは0.2nmより厚いことが望ましい。しかし、極端に厚い膜厚(例えば100nm等)は適さない場合がある。第一不活性化層の望ましい厚さは、下限はそれ自体が膜として存在するための要件から規定される。一方、上限は、活性層から出射される光がSiによって吸収される効果と、引き続き行われる第一不活性化層へのプラズマ照射によって半導体端面と第一不活性化層界面の化学反応を促進する効果を十分に発揮しうる範囲で決定される。
【0047】
一般にSiによる発振波長の光の吸収は端面の温度上昇をもたらし、極端な場合はレーザの劣化を早めてしまう。また、後述する第二不活性化層への酸素とりこみを妨げることにもなるため、厚すぎる不活性化層は効果的でない。また、第一不活性化層の厚さは、照射したプラズマの効果が界面に十分に到達し、そこで化学反応を引き起こすことができる程度にするのが好ましい。プラズマ照射の効果が界面に到達するか否かは、プラズマのエネルギー等から決定される侵入深さにより判断することができる。プラズマ照射の効果が界面に十分に到達すれば、最初に行った端面へのイオン照射時にGa−O等、結合エネルギーの大きな酸化物等が残留していたとしても、当該残留酸化物等から酸素を第一不活性化層が引き離す効果が期待できる。このような見地から、第一不活性化層を端面に堆積させた場合の望ましい厚さは以下の式で表される範囲内であることが実験により確認されている。
【数6】
0.2(nm)<Tp(1)<λ/8n1(nm)・・・・(式1)
(式中、Tp(1)は第一不活性化層の厚さ、λは半導体発光素子の発振波長、n1は第一不活性化層の波長λにおける屈折率の実数部分を表す。)
但し、厚さが0.2nm以下である場合にも効果は確認されている。
【0048】
第一不活性化層の形成後にプラズマ照射するのが好ましい。第一不活性化層への照射は前述のとおり、初期のレーザ端面に対するイオン照射で残留してしまった半導体端面の構成元素の酸化物及び/又は窒化物から酸素及び/又は窒素を引き離す目的で行われ、この際に第一不活性化層の一部は逆に酸化及び/又は窒化される。この工程はレーザ駆動時に非発光再結合中心として働く半導体端面の構成元素の酸化物及び/又は窒化物を除去し、レーザの信頼性を向上させるために重要である。
第一不活性化層へのプラズマ照射は、前述のとおり特に希ガスによる照射が好適である。さらには希ガスのなかでもArイオンによる照射は多大な効果がある。また、Arイオンの照射エネルギーは好ましくは25eVから300eV程度、より好ましくは50eVから200eV程度の低エネルギー範囲で用いる。これによって、半導体端面へダメージを与えずに残留酸化物を除去することができる。また、この際に例えばSiを第一不活性化層として用いた場合には、SiがGa−Oから酸素を引離し、Si−Oとなるため半導体端面近傍での光吸収が少なくなることも期待される。
【0049】
プラズマ照射した第一不活性化層上には、さらに第二不活性化層を形成する。
上記第一不活性化層の厚さには製法プロセス上の要請から上限があるため、その第一不活性化層の厚さを補うために第二不活性化層が形成される。すなわち、半導体端面へのダメージを低減するために第一不活性化層に対するプラズマ照射は低エネルギーで行われ、それに伴って第一不活性化層の厚さは最適範囲の下限近傍になることが多い。このとき、第二不活性化層を形成しておかないと、不活性化層上に形成される酸化物または窒化物コーティング膜が、容易に酸素または窒素等の供給源になってしまう。第二不活性化層はこの問題を解決し、酸化物または窒化物コーティング膜と半導体レーザ端面の分離を完全に行うために形成する。
【0050】
第二不活性化層として付着される元素は、第一不活性化層に近い屈折率を持ち、特に酸素を含まないものを選択するのが好ましい。第二不活性化層として付着される元素としては、第一不活性化層を構成する元素よりも酸化物の生成エンタルピーの絶対値が大きい元素を使用する。このような条件を満たす元素が、第二不活性化層として付着される元素の少なくとも一部に含まれているのが望ましい。例えば、第一不活性化層としてSi(SiO2:−9.44)を堆積させた場合は、第二不活性化層としてSc(Sc23:−9.89)、Y(Y23:−9.46)などの3族の元素、Ti(TiO2:−9.74)、Zr(ZrO2:−11.41)などの4族の元素、Ta(Ta23:−10.60)などの5族の元素等を好ましく堆積させることができる(カッコ内は酸化物の生成エンタルピーをeV/metal atom単位で表したものである)。
【0051】
一般的に第二不活性化層の厚さは0.2nm以上であるのが望ましい。一方、極端に厚い膜厚(例えば100nm等)は適さない場合がある。第二不活性化層も第一不活性化層と同様に、下限はそれ自体が膜として存在するための要件から規定される。一方、上限は、第二不活性化層がレーザの発振波長に対して透明でない場合には、活性層から出射される光が第二不活性化層によって吸収される程度によって規定される。これらを考慮したうえで、第二不活性化層の望ましい厚さは以下の式で表される範囲内であることが実験により確認されている。
【数7】
0.2(nm)<Tp(2)<λ/4n2(nm)・・・・(式2)
(式中、Tp(2)は第二不活性化層の厚さ、λは半導体発光素子の発振波長、n2は第二不活性化層の波長λにおける屈折率の実数部分を表す。)
さらに第一不活性化層と第二不活性化層の厚さの和は以下の式で表される範囲内であることが望ましい。
【数8】
0.4(nm)<Tp(1+2)<3λ/8n12(nm)・・(式3)
(式中、Tp(1+2)は二つの不活性化層の厚さの和、λは半導体発光素子の発振波長、n12は該二つの不活性化層の波長λにおける平均屈折率の実数部分を表す。)
【0052】
第二不活性化層には、さらにプラズマを照射して不活性化層を形成する工程を行うこともできる。この工程は複数回繰り返して行うことができ、3層以上の不活性化層を形成することができる。3層目以降の不活性化層に用いる元素は、第一不活性化層や第二不活性化層に準じて選択することが可能であるが、隣接する不活性化層の元素より酸化物の生成エンタルピーの絶対値が大きいものでも小さいものでも好ましく使用することができる。また、3層目以降の不活性化層には、屈折率がGaAsあるいはSi等に近いといった観点からZnS、Ge等も使用してもよい。さらに、物性的な安定性からAlF、MgF2等のフッ化物も使用することができる。
【0053】
本発明では、露出した半導体端面上に構成される第一不活性化層(14−1)、第二不活性化層(14−2)の上に、さらに積層された誘電体又は誘電体及び半導体の組合せからなるコーティング層(15)(16)を形成するのが好ましい(図1)。特に、端面へのプラズマ照射、第一不活性化層(14−1)の形成、第一不活性化層へのプラズマ照射、第二不活性化層(14−2)の形成、コーティング層(15)(16)の形成は、連続して負圧下、より好ましくは真空中で行うことが望ましい。コーティング層は、主に半導体レーザからの光の取り出し効率を上げ、端面の保護を強化するという2つの目的のために形成される。特に高出力を達成するためには、発振波長に対して低反射率をもつコーティングを前端面に施し、発振波長に対して高反射率をもつコーティングを後端面に施す非対称コーティングを行うのが一般的である。
【0054】
このコーティングにはさまざまな材料を用いることができる。例えば、AlOx、TiOx、SiOx、SiN、Si及びZnSからなる群から選ばれる1種又は2種以上の組合せを用いることが好ましい。低反射コーティングとしてはAlOx、TiOx、SiOx等が、また高反射コーティングとしてはAlOx/Siの多層膜、TiOx/SiOxの多層膜等が用いられる。それぞれの膜厚は所望の反射率を実現するために調整される。しかし、一般的には低反射コーティングとしてはAlOx、TiOx、SiOx等がその波長λでの屈設率の実数部分をnとしてλ/4n近傍の膜厚になるように調整されるのが一般的である。また、高反射多層膜もそれを構成する各材料がλ/4n近傍になるように調整され、さらにこの対を目的に応じて積層する手法が好適である。
【0055】
コーティング層(15)(16)の製法においてはいわゆるIAD(Ion Assisted Deposition)法が好適に用いられる。これはコーティング材料の真空蒸着と同時に、あるエネルギーをもったイオンを照射する方法であって、特に希ガスによるイオン照射が好適である。さらには希ガスのなかでもArイオンによるIADは前記コーティング材料の膜質向上に多大な効果がある。特にArイオンの照射エネルギーは、好ましくは25eVから300eV程度、より好ましくは50eVから200eV程度の低エネルギー範囲にする。これによって、半導体端面へのダメージを与えずにコーティングすることができる。
【0056】
このコーティング膜の形成と同時に照射されるプラズマのエネルギーや、各不活性化層形成後に照射されるプラズマや熱線のエネルギーによって、半導体端面に酸化物が残存している場合は少なくともその一部が酸化物の形態をとらなくなる。すなわち、不活性化層の中に存在していて特に半導体端面に隣接している部分の構成元素が、半導体端面に残存している酸素と結合する反応が促進される。その結果、半導体端面を構成する元素と酸素との結合を非常に少なくするか、または皆無にすることが可能になる。したがって、これらのプラズマ照射も前述した外因的な表面準位をおさえるために有効である。なお、コーティング膜形成に伴うプラズマ照射は、コーティング膜の形成と同時に行うのが最も好ましいが、コーティング膜の前後に行うこともできる。
【0057】
このような反応を効果的に促進するために、本発明の半導体発光素子では、第二不活性化層を構成する元素のうちの少なくとも1種と酸素との生成エンタルピーの絶対値が、第一不活性化層を構成する元素のうちの少なくとも1種と酸素との生成エンタルピーの絶対値よりも大きい。また、第一不活性化層を構成する元素のうちの少なくとも1種と酸素との生成エンタルピーの絶対値が、半導体端面を構成する元素のうちの少なくとも1種と酸素との生成エンタルピーの絶対値よりも大きいことが好ましい。本発明の半導体発光素子を製造するにあたっては、上記の反応を引き起こすのに十分な大きさのプラズマエネルギーや熱エネルギー等を供給する。ただし、これらのエネルギーは半導体端面に過大なダメージを与えない範囲内で選択することが望ましい。
【0058】
例えば、半導体端面にGa−Oが残存しているときに各不活性化層を形成してプラズマ照射するか、あるいは不活性化層形成後にAlOxの原料供給を行いながらアルゴンプラズマを照射すると、不活性化層の半導体端面側の金属元素はGa−Oに由来する酸素との結合が促進され、その結果、一部が金属酸化物の形態をとるようになる。このため、半導体端面の一部を構成するGaは酸化物の形態ではなく、金属Ga、または半導体端面を構成する他の元素と結合し、例えばGa−Asとなる。この結果、Ga−O結合に由来する半導体端面に存在する非発光再結合中心は大幅に減少することになり、高出力でありながら長寿命でもある望ましい半導体発光素子の提供に大きく貢献することができる。
このような反応は原料供給を同時に行うIAD法でもっとも効果があるが、不活性化層形成後に単独でイオン照射を不活性化層に行った場合、また不活性化層形成後に熱線の照射を行った場合、さらにプラズマ照射と同時に熱線の照射を行った場合にも同様の効果をもたらす。
【0059】
特にIAD法によって上記反応を誘導するときには、不活性化層のコーティング膜側ではコーティング膜を構成する一部の元素や製膜時にプラズマの形で供給される窒素プラズマ等によって、半導体端面側とは別の反応が起きることもある。すなわち、コーティング膜が酸化物であるときには、不活性化層がこれによって酸化されることもある。またコーティング膜が窒化物であるときには、窒化反応が促進されることもある。
これらの反応の結果、不活性化層は化合物半導体層端面に隣接する部分が酸化物などからなり、他の部分が初期に形成した不活性化層の構成元素そのものとなる場合がある。また、不活性化層は化合物半導体層端面に隣接する部分が酸化物等からなり、中間部が初期に形成した不活性化層の構成元素あるいは化合物そのものからなり、コーティング層に隣接する部分が酸化物、窒化物、硫化物等からなる場合がある。本発明の半導体発光素子では、第二不活性化層を構成する元素の酸化物の生成エンタルピーの絶対値が、第一不活性化層を構成する元素の酸化物の生成エンタルピーの絶対値よりも大きいために、第二不活性化層が第一不活性化層にある酸素の一部をとりこんで金属酸化物になる。これらの酸化物等からなる層の厚みは形成される不活性化層の厚みに依存する。通常は、半導体端面側、またコーティング膜側には1〜10Å程度の酸化物層または窒化物層が生成され、その中心および/または半導体端面との隣接部にはさらに変質しない数Åから数十Åの不活性化層が残るように不活性化層の厚みを調整する。
【0060】
これは不活性化層において、すべての不活性化層構成元素が酸化されない程度の厚みや構造上の特徴があることが望ましいからである。不活性化層が化合物半導体層端面に由来する酸素によって、および/またはコーティング層に由来する酸素または窒素によって、その全体が酸化または窒化されてしまうと、不活性化層中に取り込まれた酸素が長期間レーザを駆動しているうちに、再度、端面の酸化を引き起こす懸念があるからである。また、半導体端面を構成する元素はすべてが酸素との結合をもたないのが好ましいが、不活性化層全体が酸化されてしまうと、半導体端面を構成する元素の酸素との結合を完全に無くすことができなくなる懸念があり、これらは寿命改善の効果を減じることになるため好ましくない。本発明の半導体発光素子では、第二不活性化層を構成する元素の酸化物の生成エンタルピーの絶対値が、第一不活性化層を構成する元素の酸化物の生成エンタルピーの絶対値よりも大きく、第二不活性化層が第一不活性化層にある酸素の一部をとりこんで金属酸化物になっているために、半導体端面の酸化をより効果的に防ぐことができる。
【0061】
【実施例】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、濃度、厚さ、操作手順等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下の実施例に示す具体例に制限されるものではない。
【0062】
(実施例1)
図2に示すグルーブ型のレーザ素子を以下の手順にしたがって製造した。
キャリア濃度1×1018cm-3のn型GaAs基板(1)上に、MBE法にて、バッファ層(2)として厚さ1μmでキャリア濃度1×1018cm-3のn型GaAs層;第一導電型クラッド層(3)として厚さ1.5μmでキャリア濃度1×1018cm-3のn型Al0.35Ga0.65As層;次いで、厚さ24nmのアンドープのGaAs光ガイド層上に厚さ6nmのアンドープIn0.2Ga0.8Asの単一量子井戸(SQW)、さらにその上に厚さ24nmのアンドープGaAs光ガイド層を有する活性層(4);第二導電型第一クラッド層(5)として厚さ0.1μmでキャリア濃度1×1018cm-3のp型Al0.35Ga0.65As層;第2エッチング阻止層(6)として厚さ10nmでキャリア濃度1×1018cm-3のp型GaAs層;第1エッチング阻止層(7)として厚さ20nmでキャリア濃度5×1017cm-3のn型In0.49Ga0.51P層;電流ブロック層(9)として厚さ0.5μmでキャリア濃度5×1017cm-3のn型Al0.39Ga0.61As層;キャップ層(10)として厚さ10nmでキャリア濃度1×1018cm-3のn型GaAs層を順次積層した。
【0063】
最上層の電流注入領域部分を除く部分に窒化シリコンのマスクを設けた。このとき、窒化シリコンマスクの開口部の幅は1.5μmとした。第1エッチング阻止層(7)をエッチングストップ層として25℃で30秒間エッチングを行い、電流注入領域部分のキャップ層(10)と電流ブロック層(9)を除去した。エッチング剤は、硫酸(98wt%)、過酸化水素(30wt%水溶液)及び水を体積比で1:1:5で混合した混合液を使用した。
【0064】
次いでHF(49%)とNH4F(40%)を1:6で混合した混合液に2分30秒浸漬して窒化シリコン層を除去した。その後、第2エッチング阻止層(6)をエッチングストップ層として25℃で2分間エッチングを行い、電流注入領域部分の第1エッチング阻止層をエッチング除去した。エッチング剤は、塩酸(35wt%)と水を2:1に混合した混合液を使用した。
【0065】
その後、MOCVD法にて第二導電型第二クラッド層(8)としてキャリア濃度1×1018cm-3のp型Al0.35Ga0.65As層を埋め込み部分(電流注入領域部分)の厚さが1.5μmになるよう成長させた。さらに、電極との良好な接触を保つためのコンタクト層(11)として、キャリア濃度1×1019cm-3のp型GaAs層を厚さ7μmになるように成長させた。電流注入領域の幅W(第二エッチング阻止層との界面における第二導電型第二クラッド層の幅)は2.2μmであった。さらに、基板側にはn型電極としてAuGe/Ni/Auを、またp型電極にはTi/Pt/Auを蒸着させ400℃で合金化を5分間行って半導体ウエハーを完成させた。
【0066】
続いて、窒素雰囲気中で、共振器長700μmのレーザバーの状態に劈開し、Arプラズマ発生装置を持つ真空チャンバーの中に入れた。真空チャンバー内で、平均エネルギー60eV、電流密度150μA/cm2のArプラズマを1分間端面に照射した。連続して、通常の電子ビーム蒸着法を用いてアモルファスSiを2nm端面に堆積させて第一不活性化層(14−1)を形成した。さらに連続して平均エネルギー120eV、電流密度150μA/cm2のArプラズマを30秒間第一不活性化層に照射した。さらに、通常の電子ビーム蒸着法を用いてTiを2nm端面に堆積させて第二不活性化層(14−2)を形成した。ここで、SiO2の生成エンタルピーは−9.44eV/metal atom、TiO2の生成エンタルピーは−9.74eV/metal atomである。さらに続けて、AlOx膜を発振波長980nmにおいて前端面の反射率が2.5%になるように165nm製膜し、コーティング層(15)を形成した。AlOx製膜はIAD法により行い、AlOxの端面への供給と同時に平均エネルギー110eV、電流密度200μA/cm2のArプラズマを照射した。
【0067】
さらに後端面側の処理を行うために、一度レーザバーを真空層から取り出した。後端面側においても前端面側と全く同様にしてArプラズマ照射、第一不活性化層(14−1)の形成、第一不活性化層へのプラズマ照射、第二不活性化層(14−2)の形成を行った。さらに連続して、厚さ170nmのAlOx層/厚さ60nmのアモルファスSi層/厚さ170nmのAlOx層/厚さ60nmのアモルファスSi層の4層からなるコーティング層(16)を形成し、反射率92%の後端面を作製した。AlOx膜の製膜は、前端面側と同様にIAD法により行なった。
【0068】
製造した半導体発光素子5デバイスを放熱用サブマウント上にのせ、窒素雰囲気中でパッケージした。この半導体発光素子の平均的初期特性は、25℃で閾値電流が23mAであり、350mA、250mWでキンクが観測された。この集団に対して寿命試験を行なった。225mW、70℃で加速試験をした結果、1000時間経過した時点でもまったく動作不良はなく安定な動作が確認された。
【0069】
(実施例2)
実施例1と同じ方法によって半導体ウエハーを製造した後、窒素雰囲気中で、共振器長700μmのレーザバーの状態に劈開し、Arプラズマ発生装置を持つ真空チャンバーの中に入れた。真空チャンバー内で、平均エネルギー60eV、電流密度150μA/cm2のArプラズマを1分間端面に照射した。連続して、通常の電子ビーム蒸着法を用いてアモルファスSiを2nm端面に堆積させて第一不活性化層(14−1)を形成した。さらに連続して平均エネルギー120eV、電流密度150μA/cm2のArプラズマを30秒間第一不活性化層に照射した。さらに、通常の電子ビーム蒸着法を用いてTiを2nm端面に堆積させて第二不活性化層(14−2)を形成した。続けて、平均エネルギー120eV、電流密度150μA/cm2のArプラズマを30秒間第二不活性化層に照射した。さらに、通常の電子ビーム蒸着法を用いてアモルファスSiを2nm端面に堆積させて第三不活性化層(図示せず)を形成した。ここで、SiO2の生成エンタルピーは−9.44eV/metal atom、TiO2の生成エンタルピーは−9.74eV/metal atomである。さらに、AlOx膜を発振波長980nmにおいて前端面の反射率が2.5%になるように165nm製膜し、コーティング層(15)を形成した。AlOx製膜はIAD法により行い、AlOxの端面への供給と同時に平均エネルギー90eV、電流密度200μA/cm2のArプラズマを照射した。
【0070】
さらに後端面側の処理を行うために、一度レーザバーを真空層から取り出した。後端面側においても前端面側と全く同様にしてArプラズマ照射、第一不活性化層の形成、第一不活性化層へのプラズマ照射、第二不活性化層の形成、第二不活性化層へのプラズマ照射、第三不活性化層の形成を行った。さらに連続して、厚さ170nmのAlOx層/厚さ60nmのアモルファスSi層/厚さ170nmのAlOx層/厚さ60nmのアモルファスSi層の4層からなるコーティング層(16)を形成し、反射率92%の後端面を作製した。AlOx膜の製膜は、前端面側と同様にIAD法により行なった。
【0071】
製造した半導体発光素子5デバイスを放熱用サブマウント上にのせ、窒素雰囲気中でパッケージした。この半導体発光素子の平均的初期特性は、25℃で閾値電流が23mAであり、350mA、250mWでキンクが観測された。この集団に対して寿命試験を行なった。225mW、70℃で加速試験をした結果、1000時間経過した時点でもまったく動作不良はなく安定な動作が確認された。
【0072】
(実施例3)
実施例1と同じ方法によって半導体ウエハーを製造した後、窒素雰囲気中で、共振器長700μmのレーザバーの状態に劈開し、Arプラズマ発生装置を持つ真空チャンバーの中に入れた。真空チャンバー内で、平均エネルギー60eV、電流密度150μA/cm2のArプラズマを1分間端面に照射した。連続して、通常の電子ビーム蒸着法を用いてアモルファスSiを2nm端面に堆積させて第一不活性化層(14−1)を形成した。さらに連続して平均エネルギー120eV、電流密度150μA/cm2のArプラズマを30秒間第一不活性化層に照射した。さらに、通常の電子ビーム蒸着法を用いてTiを2nm端面に堆積させて第二不活性化層(14−2)を形成した。続けて、平均エネルギー120eV、電流密度150μA/cm2のArプラズマを30秒間第二不活性化層に照射した。さらに、通常の電子ビーム蒸着法を用いてTaを2nm端面に堆積させて第三不活性化層(図示せず)を形成し、形成した第三不活性化層に対して平均エネルギー120eV、電流密度150μA/cm2のArプラズマを30秒間照射した。ここで、SiO2の生成エンタルピーは−9.44eV/metal atom、TiO2の生成エンタルピーは−9.74eV/metal atom、Ta23の生成エンタルピーは−10.60eV/metal atomである。さらに、AlOx膜を発振波長980nmにおいて前端面の反射率が2.5%になるように165nm製膜し、コーティング層(15)を形成した。AlOx製膜は電子ビーム蒸着法により行った。
【0073】
さらに後端面側の処理を行うために、一度レーザバーを真空層から取り出した。後端面側においても前端面側と全く同様にしてArプラズマ照射、第一不活性化層の形成、第一不活性化層へのプラズマ照射、第二不活性化層の形成、第二不活性化層へのプラズマ照射、第三不活性化層の形成、第三不活性化層に対するプラズマ照射を行った。さらに連続して、厚さ170nmのAlOx層/厚さ60nmのアモルファスSi層/厚さ170nmのAlOx層/厚さ60nmのアモルファスSi層の4層からなるコーティング層(16)を形成し、反射率92%の後端面を作製した。AlOx膜の製膜は、前端面側と同様に電子ビーム蒸着法により行なった。
【0074】
製造した半導体発光素子5デバイスを放熱用サブマウント上にのせ、窒素雰囲気中でパッケージした。この半導体発光素子の平均的初期特性は、25℃で閾値電流が23mAであり、350mA、250mWでキンクが観測された。この集団に対して寿命試験を行なった。225mW、70℃で加速試験をした結果、1000時間経過した時点でもまったく動作不良はなく安定な動作が確認された。
【0075】
(比較例1)
以下の点を変更して実施例1と同様の手順で比較用半導体発光素子を製造して試験した。
すなわち、前端面及び後端面とも、レーザ端面へのArプラズマ照射、第一不活性化層(14−1)の形成、第一不活性化層へのArプラズマ照射および第二不活性化層の形成を行わなかった。また、コーティング層(15)及び(16)の形成をIAD法を用いずに、通常の電子ビーム蒸着法を用いて行なった。これら以外は、実施例1と全く同じ手順で半導体発光素子を製造した。
製造した半導体発光素子の平均的初期特性は、実施例と同様に25℃で閾値電流が23mAであり、350mA、250mWでキンクが観測された。しかし、225mW、70℃で加速試験をした結果、100時間経過するまでに実験に使用した10デバイスすべてが突然動作不能になった。
【0076】
(比較例2)
前端面及び後端面とも、第一不活性化層へのArプラズマ照射および第二不活性化層の形成を行わなかった以外は、実施例1と同じ手順で半導体発光素子を製造した。
製造した半導体発光素子の平均的初期特性は、実施例1と同様に25℃で閾値電流が23mAであり、350mA、250mWでキンクが観測された。225mW、70℃で加速試験をした結果、200時間経過するまでに実験に使用した3デバイスすべてが突然動作不能になった。
【0077】
(比較例3)
前端面及び後端面とも、レーザ端面へのArプラズマ照射を行わなかったことと、コーティング層(15)及び(16)の形成をIAD法を用いずに通常の電子ビーム蒸着法を用いて行なったこと以外は、実施例1と同じ手順で半導体発光素子を製造した。
製造した半導体発光素子の平均的初期特性は、実施例1と同様に25℃で閾値電流が23mAであり、350mA、250mWでキンクが観測された。しかし、225mW、70℃で加速試験をした結果、150時間経過するまでに実験に使用した10デバイスすべてが突然動作不能になった。
【0078】
【発明の効果】
本発明によれば、端面での界面準位密度を長期間にわたって安定に抑制することができる半導体レーザ等の半導体発光素子を提供することができる。しかも、本発明の半導体発光素子は極めて簡便に製造することができることから、産業上の利用性は極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の半導体発光素子の一態様を示す斜視図である。
【図2】 本発明の半導体発光素子の一態様を示す断面図である。
【符号の説明】
1:基板 2:バッファ層 3:第一導電型クラッド層 4:活性層 5:第二導電型第一クラッド層 6:第二エッチング阻止層 7:第一エッチング阻止層8:第二導電型第二クラッド層 9:電流ブロック層 10:キャップ層 11:コンタクト層 12:電極 13:電極 14−1:第一不活性化層 14−2:第二不活性化層 15:コーティング層 16:コーティング層

Claims (8)

  1. 第一導電型クラッド層、活性層及び第二導電型クラッド層を含む化合物半導体層を基板上に有する、共振器構造を備えた半導体発光素子において、
    該化合物半導体層の端面を形成する第一導電型クラッド層、活性層および第二導電型クラッド層の表面が第一不活性化層で被覆されており、該第一不活性化層が第二不活性化層で被覆されており、該第一不活性化層および該第二不活性化層からなる不活性化層が単体元素からなる部分を有し、かつ、該第二不活性化層を構成する少なくとも1つの元素の酸化物の生成エンタルピーの絶対値が該第一不活性化層を構成する少なくとも1つの元素の酸化物の生成エンタルピーの絶対値よりも大きいことを特徴とする半導体発光素子。
  2. 前記第一不活性化層を構成する少なくとも1つの元素の酸化物の生成エンタルピーの絶対値が、前記端面を構成する少なくとも1つの元素の酸化物の生成エンタルピーの絶対値よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
  3. 前記端面を構成する元素の少なくとも1つは酸素との結合を持たないことを特徴とする請求項1または2記載の半導体発光素子。
  4. 前記第二不活性化層を覆う少なくとも1層の不活性化層をさらに有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
  5. 最外層である不活性化層の表面に、誘電体又は誘電体及び半導体の組合せからなるコーティング層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
  6. 前記第一不活性化層を下記(式1)で表される範囲内の厚さに形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
    Figure 0003707947
    (式中、Tp(1)は第一不活性化層の厚さ、λは半導体発光素子の発振波長、n1は不活性化層の波長λにおける屈折率の実数部分を表す。)
  7. 前記第二不活性化層を下記(式2)で表される範囲内の厚さに形成することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
    Figure 0003707947
    (式中、Tp(2)は第二不活性化層の厚さ、λは半導体発光素子の発振波長、n2は第二不活性化層の波長λにおける屈折率の実数部分を表す。)
  8. 前記第一不活性化層と前記第二不活性化層を、厚さの和が(式3)で表される範囲内になるように形成することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の半導体発光素子。
    Figure 0003707947
    (式中、Tp(1+2)は第一不活性化層と第二不活性化層の厚さの和、λは半導体発光素子の発振波長、n12は第一不活性化層と第二不活性化層の波長λにおける平均屈折率の実数部分を表す。)
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