JP3703966B2 - 塗料調製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、上塗り塗料の調製方法に関する。更に詳しくは、特定の加水分解性シリル基と水酸基とを必須の置換基として有するアクリル系共重合体、特定のシリコン化合物、多価イソシアナート化合物及び硬化触媒を上塗り塗料として調製する塗料調製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、窯業系組成物、コンクリートや鉄鋼等からなる建築物、建材等の産業製品等の外観を良くし、防食性や耐候性等を向上させるために、これらの表面を、例えば、フッ素樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料、アクリルシリコン樹脂塗料等の塗料で被覆することが行われている。同時に、近年の都市部を中心とした環境の悪化や美観・景観保護の意識の向上から、上記の塗料に耐汚染性を付与したものが開発上市されるようになってきている。
【0003】
上述の塗料のなかで、アクリルシリコン樹脂塗料は、その架橋形態に応じて、フッ素樹脂塗料及びアクリルウレタン樹脂塗料に比較して被塗物によっては密着性や耐溶剤性が不充分であるために、塗り重ねによりちぢみが生じたり、鋼板に塗布した場合に耐衝撃性が不充分な場合があった。
【0004】
特開昭58−111855号公報では、加水分解性シリル基含有アクリル樹脂/シリコン化合物/硬化触媒からなる硬化性組成物が開示されているが、これは作業性の点では非常に優れるものの、硬化性及び耐汚染性については充分ではない。また、特開昭57−172917号公報では、加水分解性シリル基含有アクリル樹脂/イソシアナート化合物/硬化触媒が開示されているが、これは硬化性及び密着性には優れているものの、ポットライフや耐汚染性については充分ではない。
【0005】
これらの問題を解決するために、本発明者らは、既に、特定の加水分解性シリル基と水酸基とを必須の置換基として有するアクリル系共重合体、特定のシリコン化合物、多価イソシアナート化合物及び硬化触媒を特定の割合で配合した硬化性組成物が、常温又は加熱で硬化性を有し、かつ、該組成物からの塗膜が、従来のアクリルシリコン樹脂塗料からの塗膜と同様に優れた耐候性を有するとともに、優れた耐汚染性、密着性、耐溶剤性及び耐衝撃性を同時に有することを見出し、特許出願(特願平10−021892号公報)を行っている。
【0006】
しかしながら、この硬化性組成物は多成分系であって、複数の架橋系を導入しているために、主剤と硬化剤という、いわゆる二液型の使用形態を有する塗料としての商品設計が非常に困難であった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、良好な貯蔵安定性や、得られる塗膜の硬化性、硬度等の性能を維持しつつ、長時間のポットライフと優れた耐汚染性を有する塗料の調製方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記現状に鑑みて、鋭意研究を重ねた結果、特定の成分(A)、(B)、(C)及び(D)からなる硬化性組成物を二液型の上塗り塗料として調製するにあたって、予め脱水処理を行った上記(A)成分に上記(D)成分を添加して1パックにすることにより主剤を調製し、かつ、上記(B)成分及び上記(C)成分を1パックにすることにより硬化剤を調製する塗料調製方法が、塗膜硬化性を維持しつつ、長時間のポットライフと優れた耐汚染性を有する塗料を提供することを見出した。即ち、本発明は、下記一般式(1);
【0009】
【化2】
【0010】
(式中、R1 は、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。R2 は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基及び炭素数7〜10のアラルキル基からなる群より選択された1価の基を表す。R1 又はR2 が複数存在する場合には、同一であっても異なっていてもよい。aは、0〜2の整数を表す。)で表される炭素原子に結合した加水分解性シリル基を少なくとも2個有し、更に水酸基を有するアクリル系共重合体(A)100重量部、
下記一般式(2);
(R3 O)4-b −Si−R4 b (2)
(式中、R3 及びR4 は、同一又は異なって、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基及び炭素数7〜10のアラルキル基からなる群より選択された1価の炭化水素基を表す。複数のR3 は、同一であっても異なっていてもよい。bは、0又は1を表す。)で表されるシリコン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物(B)2〜70重量部、
イソシアナート基を2個以上有する化合物(C)0.1〜50重量部、並びに、硬化触媒(D)0.1〜20重量部
からなる上塗り塗料の調製方法であって、
予め脱水処理を行った上記(A)成分に上記(D)成分を添加して1パックにすることにより主剤を調製し、かつ、上記(B)成分及び上記(C)成分を1パックにすることにより硬化剤を調製する塗料調製方法である。
以下、本発明を詳述する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の塗料調製方法は、特定の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分からなる硬化性組成物を二液型の上塗り塗料として調製するために用いられるものである。
【0012】
上記(A)成分は、上記一般式(1)で表される炭素原子に結合した加水分解性シリル基を少なくとも2個有し、更に水酸基を有するアクリル系共重合体(A)からなる。この成分は、湿分の存在下、室温で硬化性を有するベース樹脂として作用する。
【0013】
上記アクリル系共重合体(A)は、実質的に、アクリル系単量体が共重合した主鎖からなるため、形成される塗膜の耐候性、耐薬品性等が優れたものとなる。なお、上記アクリル系共重合体(A)が「実質的に、アクリル系単量体が共重合した主鎖からなる」とは、上記アクリル系共重合体(A)の主鎖を構成する単量体単位のうちの50%以上、好ましくは70%以上が、アクリル系単量体単位であることを意味する。
【0014】
また、上記アクリル系共重合体(A)は、加水分解性シリル基を炭素原子に結合した形式で有しているため、形成される塗膜の耐水性、耐アルカリ性、耐酸性等が優れたものとなる。上記アクリル系共重合体(A)において、上記一般式(1)で表される炭素原子に結合した加水分解性シリル基の数は、塗膜の耐候性、耐溶剤性等の耐久性等の観点から、アクリル系共重合体(A)1分子あたり2個以上である。より好ましくは3個以上である。
【0015】
上記一般式(1)で表される炭素原子に結合した加水分解性シリル基は、アクリル系共重合体(A)の主鎖の末端に結合していてもよく、側鎖に結合していてもよく、主鎖の末端及び側鎖に結合していてもよい。
【0016】
上記一般式(1)において、R1 は、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。上記炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、オクチル基、デシル基等を挙げることができる。これらのうち、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基である。上記アルキル基の炭素数が10を超える場合には、加水分解性シリル基の反応性が低下する。また、R1 が、例えば、フェニル基、ベンジル基等のアルキル基以外の基である場合にも、加水分解性シリル基の反応性が低下する。
【0017】
上記一般式(1)において、R2 は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基及び炭素数7〜10のアラルキル基からなる群より選択された1価の基を表す。上記炭素数1〜10のアルキル基としては、上で例示した基等を挙げることができる。上記炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等を挙げることができる。上記炭素数7〜10のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等を挙げることができる。これらの中では、本発明の組成物が硬化性に優れるという点から炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0018】
上記R1 又はR2 が複数存在する場合には、同一であっても異なっていてもよい。
【0019】
上記一般式(1)において、aは、0〜2の整数を表す。すなわち、一般式(1)中、(R1 O)3-a の3−aが1〜3の整数になるように選ばれるが、アクリル系共重合体(A)の硬化性が良好になるという点から、aは0又は1であるのが好ましい。
【0020】
上記一般式(1)で表される炭素原子に結合した加水分解性シリル基の具体例としては、例えば、後述する単量体が有する加水分解性シリル基等が挙げられる。
【0021】
アクリル系共重合体(A)としては、合成の容易さの点から、一般式(1)で表される炭素原子に結合した加水分解性シリル基を有する単量体単位を含有するものが好ましい。なお、アクリル系共重合体(A)中の上記単量体単位の含有割合は、形成される塗膜の耐久性が優れる、強度が大きくなるという点から、3〜90重量%であるのが好ましく、より好ましくは10〜70重量%、更に好ましくは10〜50重量%である。
【0022】
上記アクリル系共重合体(A)に含有される、一般式(1)で表される炭素原子に結合した加水分解性シリル基を有する単量体単位以外の単量体単位としては、後述する水酸基含有単量体由来の単量体単位、後述する(メタ)アクリル酸由来の単量体単位、後述する必要により用いられるその他の単量体由来の単量体単位等であってよい。
【0023】
上記アクリル系共重合体(A)は、形成される塗膜が耐久性等の物性に優れるという点から、数平均分子量が1000〜30000であることが好ましく、より好ましくは3000〜25000である。
【0024】
本発明においては、上記アクリル系共重合体(A)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記アクリル系共重合体(A)の製造は、例えば、重合性二重結合及び炭素原子に結合した加水分解性シリル基を有する単量体(以下、モノマー(A−1)という)、水酸基含有単量体及び/又はその誘導体(以下、モノマー(A−2)という)、(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体(以下、モノマ−(A―3)という)、並びに、必要により用いられるその他の単量体を共重合することにより行うことができる。
【0026】
上記モノマ−(A−1)の具体例としては、例えば、下記の(3−1)〜(3−11)の化合物;
【0027】
【化3】
【0028】
等の下記一般式(3);
【0029】
【化4】
【0030】
(式中、R1 、R2 、aは、上記と同じ。R5 は、水素原子又はメチル基を表す。)で表される化合物、
下記の(4−1)〜(4−9)の化合物;
【0031】
【化5】
【0032】
等の下記一般式(4);
【0033】
【化6】
【0034】
(式中、R1 、R2 、R5 及びaは上記と同じ。nは、1〜12の整数を表す。)で表される化合物、
下記の(5−1)〜(5−2)の化合物;
【0035】
【化7】
【0036】
等の下記一般式(5);
【0037】
【化8】
【0038】
(式中、R1 、R2 、R5 、a及びnは、上記と同じ。)で表される化合物、
下記の(6−1)〜(6−2)の化合物;
【0039】
【化9】
【0040】
等の下記一般式(6);
【0041】
【化10】
【0042】
(式中、R1 、R2 、R5 、aは、上記と同じ。mは、1〜14の整数を表す。)で表される化合物、及び、
下記の(7−1)〜(7−2)の化合物;
【0043】
【化11】
【0044】
(式中、pは、0〜20の整数を表す。)等の一般式(7);
【0045】
【化12】
【0046】
(式中、R1 、R2 、R5 及びaは、上記と同じ。qは、0〜22の整数を表す。)で表される化合物や、炭素原子に結合した加水分解性シリル基をウレタン結合又はシロキサン結合を介して末端に有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、共重合性及び重合安定性、並びに、得られる組成物の硬化性及び保存安定性が優れるという点から、上記一般式(4)で表される化合物が好ましい。これらのモノマー(A−1)は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0047】
上記モノマー(A−2)の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシスチレンビニルトルエン、東亜合成化学工業社製のアロニクス5700、4−ヒドロキシスチレン、日本触媒化学工業社製のHE−10、HE−20、HP−1及びHP−20(以上、いずれも末端に水酸基を有するアクリル酸エステルオリゴマー)、ブレンマーPPシリーズ(ポリプロピレングリコールメタクリレート)、ブレンマーPEシリーズ(ポリエチレングリコールモノメタクリレート)、ブレンマーPEPシリーズ(ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールメタクリレート)、ブレンマーAP−400(ポリプロピレングリコールモノアクリレート)、ブレンマーAE−350(ポリエチレングリコールモノアクリレート)及びブレンマーGLM(グリセロールモノメタクリレート)(以上、日本油脂社製)、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類、水酸基含有化合物とε−カプロラクトンとの反応により得られるε−カプロラクトン変性ヒドロキシアルキルビニル系共重合体化合物Placcel FA−1、Placcel FA−4、Placcel FM−1及びPlaccel FM−4(以上ダイセル化学工業社製)、TONE M−201(UCC社製)、ポリカーボネート含有ビニル系化合物(具体例としては、HEAC−1(ダイセル化学工業社製)等が挙げられる。なかでも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及び、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートは、イソシアナート化合物との反応性に優れ、耐候性、耐薬品性、耐衝撃性が良好な塗膜が得られる点から好ましい。特に好ましくは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートである。これらのモノマー(A−2)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
上記モノマー(A−2)の使用量としては、水酸基当量(水酸基1つ当たりの重合体の分子量)が、300以上となるような量であることが好ましく、より好ましくは400以上であり、500以上が更に好ましい。
【0049】
上記モノマー(A−3)の具体例としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、グリシジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、α−エチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、アロニクスM−5700;AS−6、AN−6、AA−6、AB−6、AK−6等のマクロモノマー(以上、東亜合成化学工業社製);(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類とリン酸又はリン酸エステル類との縮合生成物等のリン酸エステル基含有(メタ)アクリル酸系単量体、ウレタン結合やシロキサン結合を含む(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマー(A−3)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
上記モノマー(A−2)と(A−3)の使用量の合計は、用いられるモノマー(A−1)の種類及び使用量に応じて適宜調整すればよいが、通常、用いる重合成分全量の5〜90重量%であるのが好ましく、より好ましくは30〜85重量%であり、更に好ましくは50〜85重量%である。
【0051】
また、本発明においては、形成される塗膜の耐候性を更に向上させる目的で、例えば、ウレタン結合やシロキサン結合により主鎖に結合したセグメント;上記モノマー(A−1)、(A−2)及び(A−3)以外の単量体に由来するセグメント等を、50重量%を超えない範囲でアクリル系共重合体(A)の製造時に導入してもよい。
【0052】
上記モノマー(A−1)、(A−2)及び(A―3)以外の単量体の具体例としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、スチレンスルホン酸、ビニルトルエン等の芳香族炭化水素系ビニル化合物;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、これらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等の塩;無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸の酸無水物、これら酸無水物と炭素数1〜20の直鎖状若しくは分枝状のアルコール若しくはアミンとのジエステル又はハーフエステル等の不飽和カルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジアリルフタレート等のビニルエステルやアリル化合物;ビニルピリジン、アミノエチルビニルエーテル等のアミノ基含有ビニル系化合物;イタコン酸ジアミド、クロトン酸アミド、マレイン酸ジアミド、フマル酸ジアミド、N−ビニルピロリドン等のアミド基含有ビニル系化合物;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、フルオロオレフィンマレイミド、N−ビニルイミダゾール、ビニルスルホン酸等のその他のビニル系化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
アクリル系共重合体(A)にはカルボキシル基又はアミノ基等の他の官能基が含まれていてもよく、その場合には、硬化性、密着性が向上する。ただし、重合体鎖に結合しているカルボキシル基やアミノ基は活性が弱く、これらを硬化触媒の代わりに使用して塗料組成物を硬化させようとしても良好な特性の硬化物は得られない。
【0054】
本発明において上塗り塗料用硬化性組成物の主成分であるアクリル系共重合体(A)には、非水系重合体粒子(NAD)を添加することができる。上記非水系重合体粒子は、極少量の添加で、塗料組成物の低粘度化、ハイソリッド化を達成でき、更に硬化塗膜の耐衝撃性を向上させることができる。上記非水系重合体粒子の製造は、低分子量のアルコキシシリル基含有共重合体を分散安定剤樹脂として用いて、アクリル系共重合体(A)の製造に使用される単量体を非水系ディスパージョン重合することにより行われる。
【0055】
次に、アクリル系共重合体(A)の製法の1例について説明する。
上記アクリル系共重合体(A)は、例えば、特開昭54−36395号公報、特開昭57−55954号公報等に記載のヒドロシリル化法や、加水分解性シリル基含有単量体を用いた溶液重合法等によって製造することができるが、合成の容易さ等の点から、加水分解性シリル基含有単量体と、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系ラジカル重合開始剤とを用いた溶液重合法によって製造することが特に好ましい。
【0056】
上記溶液重合法に用いられる溶剤は、非水系のものであれば特に制限されず、例えば、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;エチルセロソルブ、ブチルセロソロブ等のセロソルブ類;セロソルブアセテート等のエーテルエステル類;メチルエチルケトン、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン類;メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、オクタノール等のアルコール類が挙げられる。
【0057】
また、上記溶液重合の際には、必要に応じて、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、(CH3 O)3 Si−S−S−Si(OCH3 )3 、(CH3 O)3 Si−S8 −Si(OCH3 )3 等の連鎖移動剤を単独又は2種以上併用することにより、得られるアクリル系共重合体(A)の分子量を調整してもよい。特に、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等の、アルコキシシリル基を分子中に有する連鎖移動剤を用いた場合には、アクリル系共重合体(A)の末端に加水分解性シリル基を導入することができるので好ましい。このような連鎖移動剤の使用量は、用いる重合成分全量の0.05〜10重量%であることが好ましく、0.1〜8重量%であることがより好ましい。
【0058】
本発明における成分(B)は、上記一般式(2)で表されるシリコン化合物、及び/又は、このシリコン化合物の部分加水分解縮合物(B)からなる。この成分は、形成される塗膜の耐汚染性を向上させると共に、該塗膜と被塗物との密着性を向上させる効果がある。
【0059】
シリコン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物(B)とアクリル系共重合体(A)とを含有する組成物は、優れた常温硬化性又は加熱硬化性を有し、該組成物を用いて形成される塗膜は、優れた耐汚染性を有するが、該塗膜が優れた耐汚染性を有する理由はまだ定かには判明していない。おそらく、アクリル系共重合体(A)とシリコン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物(B)との相対的硬化速度の違い及び相溶性に起因し、塗膜の表面硬度及び親水性が向上することが影響しているものと考えられる。
【0060】
上記シリコン化合物を表す上記一般式(2)において、R3 及びR4 は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基からなる群より選択された1価の炭化水素基を表す。上記炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、オクチル基、デシル基等を挙げることができる。これらのうち、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基である。上記炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等を挙げることができる。上記炭素数7〜10のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等を挙げることができる。上記R3 及びR4 の炭素数が10を超える場合には、シリコン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物(B)の反応性が低下する。また、R3 及びR4 が、上記のアルキル基、アリール基及びアラルキル基以外の場合にも反応性が低下する。複数存在するR3 は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0061】
上記一般式(2)において、bは、0又は1を表す。すなわち、一般式(2)中、(R3 O)4-b の4−bが3又は4になるように選ばれるが、本発明により得られる組成物の硬化性が向上するという点から、bは0であるのが好ましい。
【0062】
上記シリコン化合物の具体例としては、例えば、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラn−プロピルシリケート、テトライソプロピルシリケート、テトラn−ブチルシリケート、テトライソブチルシリケート等のテトラアルキルシリケート;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリsec−オクチルオキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。
【0063】
上記シリコン化合物の部分加水分解縮合物としては、市販されている、シリコン化合物の部分加水分解縮合物を直接使用することができる。
上記市販のシリコン化合物の部分加水分解縮合物の具体例としては、例えば、MSI51、ESI28、ESI40、HAS−1、HAS−10(以上、コルコート社製)、MS51、MS56、MS56S(以上、三菱化学社製)、シリケート40、シリケート45、シリケート48、FR−3(以上、多摩化学社製)等のテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物;AFP−1(信越化学工業社製)等のトリアルコキシシランの部分加水分解縮合物等が挙げられる。
【0064】
また、上記シリコン化合物の部分加水分解縮合物としては、上記のシリコン化合物、及び/又は、上記市販のシリコン化合物の部分加水分解縮合物を、アルコール系溶剤中、酸性条件下で加水分解することにより製造されたものを用いてもよい。
【0065】
上記アルコール系溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブチルアルコール等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうちでは、メタノール、エタノール及びイソプロパノールが安定性向上の点から好ましい。
【0066】
上記酸性条件下とは、(1)酸性物質を添加し、(2)陽イオン交換樹脂で処理する条件を指す。
(1)上記酸性物質としては、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、亜硫酸等の無機酸;モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノオクチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジデシルホスフェート等のリン酸エステル;ぎ酸、酢酸、マレイン酸、アジピン酸、しゅう酸、コハク酸等のカルボン酸化合物;ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸等のスルホン酸化合物等が挙げられる。これらの中では、酸処理後に酸を除去しやすい点から、比較的沸点が低い塩酸、硝酸、亜硫酸及びぎ酸が好ましい。
【0067】
(2)上記陽イオン交換樹脂としては、例えば、アンバーリスト15(ローム・アンド・ハース社製)、デュオライトC−433(住友化学工業社製)等が挙げられる。反応物を上記陽イオン交換樹脂と水とで処理した後は、濾過やデカンテーション等により上記陽イオン交換樹脂を除去するのが好ましい。
【0068】
上記シリコン化合物及びその部分加水分解縮合物のなかでは、アクリル系共重合体(A)との相溶性、及び、本発明により得られる塗料用組成物の硬化性が良好で、該組成物を用いて形成される塗膜の硬度が優れ、更に、汚染物質の付着を制御するという点から、MSI51、MS51、MS56、MS56S(テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物)、ESI40(テトラエトキシシランの部分加水分解縮合物)、FR−3(テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランの部分加水分解縮合物)等のテトラアルコキシシランの部分加水分解縮合物を用いるのが好ましい。特に、重量平均分子量が1000より大きいMS56、MS56Sのような化合物が、配合量を低減できる点からより好ましい。(B)成分としては、上記シリコン化合物及びその部分加水分解縮合物の中から選択されたものを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
上記シリコン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物(B)には、事前に脱水剤としてオルト酢酸メチルを加えておくことが、(A)成分と配合した場合の貯蔵安定性等の点より好ましい。
【0070】
本発明における成分(C)は、イソシアナート基を2個以上有する化合物からなる。この成分は、アクリル系共重合体(A)及びシリコン化合物等(B)に対して架橋剤として作用する。
上記イソシアナート基を2個以上有する化合物としては、脂肪族系又は芳香族系の多価イソシアナートが挙げられる。
【0071】
上記脂肪族系多価イソシアナートとしては特に限定されず、常温硬化性を有するものの例示としては、ヘキサメチレンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタン4,4′−イソシアナート、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナート、イソフォロンジイソシアナート等が挙げられる。これらの構造は、単量体、ビュレット型、ウレジオ型及びイソシナヌレート型のいずれであってもよい。
【0072】
また、加熱硬化性を有するものとしては、例えば、ブロックタイプの多価イソシアナートがある。上記ブロックタイプの多価イソシアナートは、上記の脂肪族系多価イソシアナートとブロック剤を反応させることにより得られる。上記ブロック剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、ベンジルアルコール、フルフリルアルコール、シクロヘキシルアルコール、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、チモール、p−ニトロフェノール、β−ナフトール等が挙げられる。
【0073】
上記芳香族多価イソシアナートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアナート、キシレンジイソシアナート、ポリメチレン−ポリフェニレル−ポリイソシアナート等が挙げられる。これらについても、単量体、ビュレット型、ウレジオ型及びイソシアヌレート型のいずれであってもよい。
【0074】
上記(C)成分としては、上記の多価イソシアナートを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いても差し支えない。
【0075】
本発明における成分(D)は、硬化触媒からなる。上記硬化触媒としては、有機金属化合物が使用される。なかでも、塗膜の硬化性の点から、有機錫化合物が好ましい。また、貯蔵安定性と硬化活性を考慮すると、アルミキレート化合物が好ましい。
【0076】
上記有機錫化合物の具体例としては、例えば、ジオクチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレート)、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイドとシリケートとの縮合物、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジステアレート、ジブチル錫ジアセチルアセトナート、ジブチル錫ビス(エチルマレート)、ジブチル錫ビス(ブチルマレート)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレート)、ジブチル錫ビス(オレイルマレート)、スタナスオクトエート、ステアリン酸錫、ジ−n−ブチル錫ラルレートオキサイドがある。上記有機錫化合物のなかでも、分子内に硫黄原子を有する有機錫化合物が、(C)成分のイソシアナート化合物を配合した後の可使時間が良好であることから好ましい。
【0077】
上記分子内に硫黄原子を有する有機錫化合物としては、例えば、ジブチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネート、ジオクチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネート、オクチルブチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネート、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレート、ジオクチル錫ビスイソオクチルチオグルコレート、オクチルブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレート等が挙げられる。特に、ジブチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネート、及び、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレートが、硬化性と貯蔵安定性や可使時間のバランスの点からより好ましい。
【0078】
上記アルミキレート化合物としては、エチルアセトアセートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトナート)等が挙げられる。なかでも、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)及びアルミニウムトリス(アセチルアセトナート)が、(C)成分のイソシアナート化合物と配合した後の可使時間が良好で、得られる塗膜の接触角が小さくなるという点から好ましい。
【0079】
上記硬化触媒(D)は単独で用いてもよく、異なるタイプのもの又は同じタイプのものを2種類以上併用してもよい。
【0080】
本発明における上塗り塗料用硬化性組成物には、メルカプト基含有炭化水素及び/又はメルカプトシラン(E)を更に配合してもよい。上記成分(E)は、アクリル系共重合体(A)に配合した際に可使時間を延長させる効果がある。
【0081】
上記メルカプト基含有炭化水素としては、例えば、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン等が挙げられる。上記メルカプトシランとしては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、α−メルカプトメチルペンタメチルジシロキサン、γ−メルカプトプロピルペンタメチルジシロキサン、γ−メルカプトプロピルトリス( トリメチルシロキシ) シラン、(CH3 O)3 Si−S−S−Si(OCH3 )3 、(CH3 O)3 Si−S8 −Si(OCH3 )3 等が挙げられる。なかでも、入手し易さ、及び、有機金属化合物(D)と配合した場合の貯蔵安定性の点から考慮すると、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びγ−メルカプトプロピルトリエトキシシランが好ましい。これら(E)成分は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用することもできる。
【0082】
これらの成分の配合割合を以下に示す。
上記シリコン化合物の部分加水分解縮合物(B)の使用量は、(A)成分100重量部に対して、2〜70重量部であり、好ましくは2〜50重量部、より好ましくは2〜30重量部である。使用量が2重量部未満の場合には、得られる組成物を用いて形成した塗膜の硬化性や耐汚染性の改良効果が不充分になり、また、70重量部を超えると、塗膜の表面光沢等の外観性が低下したり、クラック等が発生したりする。
【0083】
上記イソシアナート化合物(C)の使用量は、(A)成分100重量部に対して、0.1〜50重量部であり、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは1〜25重量部である。0.1重量部未満の場合には、得られる組成物の硬化性が低下する。50重量部を超えると、該組成物を用いて得られた塗膜に未反応のイソシアナート化合物やイソシアナート基が残存し、塗り重ね時にちぢみを生じる原因となるほか、塗膜表面の水との接触角が低下し難くなり、耐汚染性の改良に悪影響を与える。
【0084】
上記硬化触媒(D)の配合量は、(A)成分100重量部に対して、0.2〜20重量であり、好ましくは0.2〜13重量部、より好ましくは0.5〜10部、更に好ましくは0.5〜5重量部である。0.2重量部未満であると、得られる組成物の硬化性が低下し、20重量部を超えると、該組成物を用いて形成した塗膜の表面光沢等の外観性に低下傾向が認められるので好ましくない。
【0085】
更に、上記メルカプト基含有炭化水素及び/又はメルカプトシラン(E)の配合量は、(A)成分100重量部に対して、0〜20重量であり、好ましくは0.2〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部である。
【0086】
本発明における上塗り塗料用硬化性組成物には、通常の塗料に添加される成分を適宜加えてもよい。具体例としては、例えば、酸化チタン、群青、紺青、亜鉛華、ベンガラ、黄鉛、鉛白、カーボンブラック、透明酸化鉄、アルミニウム粉等の無機顔料;アゾ系顔料、トリフェニルメタン系顔料、キノリン系顔料、アントラキノン系顔料、フタロシアニン系顔料等の有機顔料;希釈剤、紫外線吸収剤、光安定剤、タレ防止剤、レベリング剤等の添加剤;ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート等の繊維素;エポキシ樹脂、メラミン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩化ゴム、ポリビニルブチラール、ポリシロキサン等の樹脂等が挙げられる。
【0087】
本発明の塗料調製方法は、上述した(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を二液型の上塗り塗料として調製するにあたり、予め脱水処理した(A)成分に(D)成分を添加して1パックにすることにより主剤を調製し、かつ、(B)成分及び(C)成分を1パックにすることにより硬化剤を調製することを特徴とする。上記主剤及び硬化剤は、例えば、攪拌機等を用いて、均一な組成物となるように攪拌・混合することにより得られる。
【0088】
(B)成分の一部は、(A)成分との相溶性を向上させるために、上記硬化剤だけにではなく、上記主剤にも配合することができる。この配合の方法としては、通常の攪拌・混合の他に、(A)成分に(B)成分の一部をホットブレンドしてもよい。また、(E)成分を用いる場合には、(E)成分は上記主剤に配合する。
【0089】
上記主剤においては、得られる組成物の保存安定性を長期間にわたって優れたものにするために、(A)成分及び所望により配合される(B)成分に、更に脱水剤を配合することにより充分に脱水を行う。
【0090】
上記脱水剤の具体例としては、例えば、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、オルト酢酸エチル、オルトプロピオン酸トリメチル、オルトプロピオン酸トリエチル、オルトイソプロピオン酸トリメチル、オルトイソプロピオン酸トリエチル、オルト酪酸トリメチル、オルト酪酸トリエチル、オルトイソ酪酸トリメチル、オルトイソ酪酸トリエチル等の加水分解性エステル化合物;ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、1,1−ジメトキシプロパン、1,1−ジメトキシブタン;エチルシリケ−ト(テトラメトキシシラン)、メチルシリケ−ト(テトラメトキシシラン)、メチルトリメトキシシラン等が挙げられる。この中では、脱水効果の点から、オルト酢酸メチルが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0091】
上記脱水剤の配合量には特に限定はないが、通常、(A)成分及び所望により配合される(B)成分の樹脂固形分100重量部に対して、脱水剤の合計量が0.5〜20重量部程度であるのが好ましく、より好ましくは2〜10重量部程度である。
【0092】
また、上記脱水剤の添加時期としては特に限定されず、アクリル系共重合体(A)を重合する以前の混合物に加えてもよく、アクリル系共重合体(A)の重合中に加えてもよく、また、得られたアクリル系共重合体(A)とそのほかの成分との混合時に加えてもよい。
【0093】
本発明の塗料調製方法により調製された上塗り塗料は、上記主剤と上記硬化剤を攪拌機等を用いて均一に攪拌・混合した後、例えば、浸漬、吹き付け、刷毛等を用いた塗布等の通常の方法によって被塗物に塗布され、通常、常温でそのまま、又は、30℃程度以上で焼き付けて硬化せしめる。
【0094】
本発明の塗料調製方法により調製された上塗り塗料は、例えば、金属、セラミックス、ガラス、セメント、窯業系成形物、プラスチック、木材、紙、繊維等からなる建築物、家電用品、産業機器等を被覆する上塗り用の塗料として好適に使用される。
【0095】
【実施例】
本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。なお、以下、特に断らないかぎり、部は重量部を表す。
【0096】
製造例1 アクリル系共重合体(A)−1の製造
撹拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下ロ−トを備えた反応器にキシレン30部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した。その後、
スチレン 15部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 13部
メチルメタクリレート 41部
n−ブチルメタクリレート 18部
ヒドロキシエチルメタクリレート 13部
キシレン 25部
2,2′−アゾビスイソブチロニトリル 2.8部
からなる混合物を滴下ロートにより5時間かけて等速滴下した。滴下終了後、
2,2′−アゾビスイソブチロニトリル 0.2部
トルエン 4部
キシレン 4部
からなる混合物を1時間かけて等速滴下した後、110℃で2時間熟成してから冷却した。得られた樹脂にキシレンを加えて、樹脂固形分が50%のアクリル系共重合体(A)−1を得た。
得られたアクリル系共重合体(A)−1の平均分子量は8000であった。
【0097】
製造例2 アクリル系共重合体(A)−2の製造
撹拌機、温度計、還流冷却器、窒素ガス導入管及び滴下ロ−トを備えた反応器にキシレン30部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ110℃に昇温した。その後、
スチレン 15部
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 13部
メチルメタクリレート 41部
n−ブチルメタクリレート 13部
ヒドロキシエチルメタクリレート 18部
キシレン 25部
2,2′−アゾビスイソブチロニトリル 2.8部
からなる混合物を滴下ロートにより5時間かけて等速滴下した。滴下終了後、
2,2′−アゾビスイソブチロニトリル 0.2部
トルエン 4部
キシレン 4部
からなる混合物を1時間かけて等速滴下した後、110℃で2時間熟成してから冷却した。得られた樹脂にキシレンを加えて、樹脂固形分が50%のアクリル系共重合体(A)−2を得た。
得られたアクリル系共重合体(A)−2の平均分子量は8000であった。
【0098】
主剤(主剤1〜10)の調製方法
表1に主剤に配合する成分を示す。(D)成分と(E)成分とを除く成分を混合し、充分に脱水する。その後、(D)成分及び(E)成分を添加し主剤を調製した。
上記各主剤に関して、配合直後、及び、50℃で10日間保存した後の粘度をB型粘度計(東京計器社製)により測定し、その粘度増加倍率を表1に示した。
【0099】
【表1】
【0100】
表1で配合した成分は以下の通りである。
MS56;三菱化学工業社製テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物
MS56S;三菱化学工業社製テトラメトキシシランの部分加水分解縮合物
FR−3;多摩化学社製テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランの部分加水分解縮合物
U350;日東化成社製錫化合物
A189;日本ユニカー社製メルカプトシラン
BYK−380;ビッグケミージャパン社製アクリルポリマー
【0101】
硬化剤(硬化剤1〜7)の調製
表2に示す成分を混合し、硬化剤を調製した。
【0102】
【表2】
【0103】
表2で配合した成分は以下の通りである。
MS56、MS56S、FR−3、U350及びA189は、表1と同じ。
コロネートHX;日本ポリウレタン工業社製イソシアナート化合物
【0104】
実施例1〜5及び比較例1〜5
表3に示す配合割合で主剤及び硬化剤を混合し、キシレンで希釈して塗装粘度とし、上塗り塗料を調製した。
【0105】
【表3】
【0106】
上塗り塗料の塗装
脱脂及び燐酸化成処理を行った鋼板に、自動車用エポキシアミド系カチオン電着プライマー及び中塗りサーフェーサーを塗装して作製した塗板に、アクリルメラミン樹脂塗料(スーパーテックF50白、日本ペイント社製)を塗装し、セッティング後、180℃で30分間焼き付け、下地塗膜を作成した。
得られた下地塗膜に、実施例1〜5及び比較例1〜5の上塗り塗料を塗装し、30分間セッティングした後、70℃で30分間焼き付けた。乾燥膜厚は30〜40μmであった。
各上塗り塗料のポットライフ、並びに、得られた塗膜の硬化性、硬度、耐汚染性及び接触角について、以下の方法に従って評価し、結果は表3に示した。
【0107】
(イ)ポットライフ
塗装粘度に調整した各上塗り塗料を23℃で放置し、その皮バリ又はゲル発生時間を調べた。
(ロ)硬化性
硬化性は、塗膜のゲル分率により評価した。各上塗り塗料をポリエチレン製のシートに塗布し、70℃で30分間焼き付けた後、1日室温で放置した。得られた塗膜を、予め精秤した200メッシュのステンレス製金網(W0 )に包み精秤した(W1 )。その後、アセトン中に24時間浸漬して抽出し、乾燥した後に精秤した(W2 )。以下の式からゲル分率(%)を求めた。
ゲル分率(%)={(W2 −W0 )/(W1 −W0 ) }×100
【0108】
(ハ)硬度
焼き付け後、1日室温で放置した塗板を微少硬度計(松沢精機社製 MXT70)により、荷重10g、荷重保持時間18秒に設定しその硬度を測定した。
(ニ)耐汚染性(ΔL値)
塗膜形成1日後、及び、兵庫県神戸市の屋外で1ケ月間放置(屋外曝露)後の塗膜表面の色彩をCR−300色差計(ミノルタ製)を用いて各々測定し、得られた2つのL値(明度)からその差(ΔL値)を求めた。ΔL値の絶対値が小さいほど、汚れていないことを示す。
(ホ)接触角
得られた塗膜を室温で1日間放置した後、及び、屋外曝露終了後の塗板の洗浄部分の、23℃での水との静的接触角を接触角測定器(協和界面科学株式会社製CA−S150型)で測定した。
【0109】
【発明の効果】
本発明の塗料調製方法は、主剤の良好な貯蔵安定性や、得られる塗膜の硬化性、硬度等の性能を維持しつつ、優れた耐汚染性と長時間のポットライフを確保するものである。従って、上記のような性能が要求される、例えば建材用や自動車用に代表される様々な用途に好適に用いることができる。
Claims (4)
- 下記一般式(1);
下記一般式(2);
(R3O)4−b−Si−R4 b (2)
(式中、R3及びR4は、同一又は異なって、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基及び炭素数7〜10のアラルキル基からなる群より選択された1価の炭化水素基を表す。複数のR3は、同一であっても異なっていてもよい。bは、0又は1を表す。)で表されるシリコン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物(B)2〜70重量部、
イソシアナート基を2個以上有する化合物(C)0.1〜50重量部、
硬化触媒(D)0.1〜20重量部、並びに、
メルカプト基含有炭化水素及び/又はメルカプトシラン(E)
からなる上塗り塗料の調製方法であって、
予め脱水処理を行った前記(A)成分に前記(D)成分及び前記(E)成分を添加して1パックにすることにより主剤を調製し、かつ、前記(B)成分及び前記(C)成分を1パックにすることにより硬化剤を調製することを特徴とする塗料調製方法。 - 硬化触媒(D)は、有機錫化合物である請求項1記載の塗料調製方法。
- 有機錫化合物は、分子内に硫黄原子を含有する有機錫化合物である請求項2記載の塗料調製方法。
- 主剤に、(B)成分の一部を更に配合する請求項1、2又は3記載の塗料調製方法。
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